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特開2023-80053医薬品容器用ガラス管、およびガラス管の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080053
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】医薬品容器用ガラス管、およびガラス管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/20 20060101AFI20230601BHJP
   C03B 17/04 20060101ALI20230601BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20230601BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C03C4/20
C03B17/04 C
C03C3/091
A61J1/06 A
A61J1/05 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022189896
(22)【出願日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】21211118
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ランゲ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ナース
(72)【発明者】
【氏名】アーネ リーケ
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ケプセル
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エルヴィン アイヒホルツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングスドルフ
【テーマコード(参考)】
4C047
4G062
【Fターム(参考)】
4C047AA02
4C047AA05
4C047AA27
4C047BB01
4C047FF10
4G062AA03
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB03
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FB02
4G062FB03
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH12
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM17
4G062NN29
4G062NN34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガラス管内の望ましくない凝縮物および析出物の問題を解決し、医薬品容器用ガラス管を製造する間のばらつきおよび不安定性を解消する。
【解決手段】医薬品容器用ガラス管であって、内部表面と外部表面とを有し、内径diと外径doとを有し、壁厚WTと長さlaとを有し、長手方向軸を有し、「耐加水分解性」はISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される前記内部表面の区域におけるアルカリ浸出性の、前記壁厚に対する比率として定義され、第1の耐加水分解性は前記ガラス管の第1の個別の区域で特定され、且つ第2の耐加水分解性は前記ガラス管の第2の個別の区域で特定され、前記第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と、前記第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差は0.20μg cm-2mm-1未満である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面と外部表面とを有し、前記ガラス管は内径diと外径doとを有し、前記ガラス管は壁厚WTと長さlaとを有し、前記ガラス管は長手方向軸を有し、
「耐加水分解性」は、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される、前記内部表面の区域におけるアルカリ浸出性の、前記壁厚に対する比率として定義され、
第1の耐加水分解性は前記ガラス管の第1の個別の区域で特定され、且つ第2の耐加水分解性は前記ガラス管の第2の個別の区域で特定され、前記第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と、前記第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差は、0.20μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.10μg cm-2 mm-1未満であり、
前記壁厚は0.4mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.8mm~2.1mm、または1.0mm~1.8mmであり、
前記外径doは6mm~55mm、8mm~50mm、12mm~45mm、16mm~40mm、または20mm~35mmであり、
前記長さは500~3500mmであり、
前記第1の個別の区域および前記第2の個別の区域は、前記長手方向軸に沿って前記内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である、
前記ガラス管。
【請求項2】
前記第1の耐加水分解性および/または前記第2の耐加水分解性が、0.5μg cm-2 mm-1未満、0.4μg cm-2 mm-1未満、0.3μg cm-2 mm-1未満、0.2μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満である、請求項1に記載のガラス管。
【請求項3】
a. 前記ガラス管が壁厚1.0mm~2.0mmを有し、且つ前記第1の耐加水分解性および/または前記第2の耐加水分解性が0.3μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.2μg cm-2 mm-1未満であり、
b. 前記ガラス管が壁厚2.0mm~2.5mmを有し、且つ前記第1の耐加水分解性および/または前記第2の耐加水分解性が0.2μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満であり、且つ/または
c. 前記ガラス管が外径do 16mm~55mmを有し、且つ前記第1の耐加水分解性および/または前記第2の耐加水分解性が0.30μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.20μg cm-2 mm-1未満である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のガラス管。
【請求項4】
a. 第3の耐加水分解性が前記ガラス管の第3の個別の区域で特定され、
b. 第4の耐加水分解性が前記ガラス管の第4の個別の区域で特定され、
c. 第5の耐加水分解性が前記ガラス管の第5の個別の区域で特定され、
d. 第6の耐加水分解性が前記ガラス管の第6の個別の区域で特定され、
e. 第7の耐加水分解性が前記ガラス管の第7の個別の区域で特定され、且つ
f. 第8の耐加水分解性が前記ガラス管の第8の個別の区域で特定され、
前記第3の個別の区域、前記第4の個別の区域、前記第5の個別の区域、前記第6の個別の区域、前記第7の個別の区域、および前記第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って前記内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分であり、
個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られた統計的結果が、0.08μg cm-2 mm-1未満、または0.06μg cm-2 mm-1未満の四分位数間範囲(IQR)によって特徴付けられる、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項5】
ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、およびガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5~20mol%のB23を含むガラスのリストから選択されるガラス組成物を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項6】
ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき、60~85mol%のSiO2、5~20mol%のB23、2~10mol%のAl23、0~2mol%のFe23、2~10mol%のNa2O、0~5mol%のK2O、0~2mol%のBaO、0~2mol%のCaO、0~10mol%のTiO2を含むガラス組成物を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項7】
前記ガラス管が内径di 4~51mmを有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラス管。
【請求項8】
少なくとも50個、好ましくは少なくとも100個の、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラス管を含むセット。
【請求項9】
各々の個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性についての統計的結果が得られ、前記セットのガラス管の少なくとも80%が、以下のパラメータの1つ以上によって特徴付けられる:
・ 四分位数間範囲(IQR)が0.04μg cm-2 mm-1未満、または0.03μg cm-2 mm-1未満である、
・ 上ひげと下ひげとにわたる範囲の外側のデータ点として定義される統計的な外れ値はなく、前記下ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第1四分位数の下で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示し、且つ上ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第3四分位数の上で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示す、
請求項8に記載のセット。
【請求項10】
任意に請求項1から7までのいずれか1項に記載の、ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
a. パイプヘッドを有する、ガラス引き抜きパイプを準備する段階、
b. 前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備する段階、
c. 前記パイプヘッドで、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度を確立し且つ保持する段階、
d. 任意に、前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度を、20%未満、または10%未満の許容差で確立する段階、および
e. 少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度を確立する段階
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記パイプヘッドで10~1000Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階をさらに含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記方法がダンナー法である、請求項10または請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記流量および前記引き抜き速度を、外径doおよび壁厚WTを有するガラス管を得るように調節し、
前記壁厚WTは0.4mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.8mm~2.1mm、または1.0mm~1.8mmであり、
前記外径dは6mm~55mm、8mm~50mm、12mm~45mm、16mm~40mm、または20mm~35mmである、
請求項10から12までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度が得られるように、プルオフ速度を20%未満、または10%未満の許容差で確立する、請求項10から13までのいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項10から14までのいずれか1項に記載の製造方法によって得ることができるか、または製造されたガラス管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品容器用ガラス管、およびガラス管の製造方法に関する。前記ガラス管は内部表面上の均質且つ低いアルカリ浸出性によって特徴付けられる。
【背景技術】
【0002】
医薬品容器用ガラス管は公知であり、且つ医療分野において広く見出される。医薬品容器についての要件および基準は常に増加しており、輸送される医薬品の品質を提供し且つ保証することを目指している。
【0003】
医薬品容器用ガラス管の典型的な製造方法は、ガラス溶融物を必要とし、それが例えば引き抜きによって、マンドレルとも称される特別に設計されたパイプヘッドおよび技術を使用してガラス管へと成形される。
【0004】
医薬品容器用ガラス管に関連して、当該技術分野において公知のいくつかの問題がある。製造の仕方にも依存して、医薬品容器、例えばアンプルおよびバイアルは、ガラス組成物中の揮発性成分に由来する析出物を示すことが多い。ガラス管の熱間成形の間に、揮発性成分が蒸発する。ガラス管のさらなる成形プロセスにおいて、その揮発性成分が凝縮し、ガラス管の内部表面上に析出物を形成することがある。
【0005】
上記の問題は、いくつかの理由により顧客の不満をみちびく。第一に、ガラス組成物に由来する析出物の存在は、医薬品の品質および薬効を阻害することがある。その上さらに、製造方法の間の技術的な不安定性が、ガラス管内の望ましくない凝縮物および析出物の量における許容できない変動をみちびくことがある。これは、医薬品容器の1つのバッチ内での製品の品質に関する大きなずれをもたらすことがある。最悪のシナリオにおいて、これは少数の医薬品容器が特定の品質基準に見合わないからというだけでバッチ全体を廃棄しなければならないことをみちびくことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、当該技術分野において公知の問題を解決し、医薬品容器用ガラス管を製造する間のばらつきおよび不安定性を解消することである。関連する態様において、本発明の課題は、ガラス管全体にわたって均質且つ低減された量の析出物を有する医薬品容器用ガラス管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それらの課題は、特許請求の範囲の対象によって、および以下に記載する対象によって解決される。
【0008】
発明の要約
第1の態様において、本発明は医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面と外部表面とを有し、前記ガラス管は内径diと外径doとを有し、前記ガラス管は壁厚WTと長さlaとを有し、前記ガラス管は長手方向軸を有し、
「耐加水分解性」は、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される、内部表面の区域におけるアルカリ浸出性の、壁厚に対する比率として定義され、
第1の耐加水分解性は前記ガラス管の第1の個別の区域で特定され、且つ第2の耐加水分解性は前記ガラス管の第2の個別の区域で特定され、前記第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と、前記第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差は、0.20μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.10μg cm-2 mm-1未満であり、
前記壁厚は0.4mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.8mm~2.1mm、または1.0mm~1.8mmであり、
前記外径doは6mm~55mm、8mm~50mm、12mm~45mm、16mm~40mm、または20mm~35mmであり、
前記長さは500~3500mmであり、
前記第1の個別の区域および前記第2の個別の区域は、前記長手方向軸に沿って前記内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である、
前記ガラス管に関する。
【0009】
従って、本発明は、ガラス管の内部表面にわたって均質な耐加水分解性および/またはガラス管の内部表面にわたって減少した量の析出物を示す医薬品容器用ガラス管を提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
a. パイプヘッドを有する、ガラス引き抜きパイプを準備する段階、
b. 前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備する段階、
c. 前記パイプヘッドで、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度を確立し且つ保持する段階、
d. 任意に、前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度を、20%未満、または10%未満の許容差で確立する段階、および
e. 少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度を確立する段階
を含む、前記方法に関する。
【0011】
それによって、本発明者らは、ガラス管の内部表面にわたって均質な耐加水分解性と、ガラス管の内部表面にわたって減少した量の析出物との両方を示す製造方法および製造条件を確立した。特に、本発明者らは、ガラス管の製造方法の間に、任意にパイプヘッドでの温度の調節と組み合わせて、正規化された逆拡散密度を調整することが、ガラス管の内部表面上でのアルカリ浸出性の改善をもたらすことを見出した。有利なことに、パイプヘッドでの温度と組み合わせて、正規化された逆拡散密度を調節および/または制御することは、内部表面にわたって均質な耐加水分解性を有する、つまり、内部表面にわたってアルカリ浸出性における変動が低減されているガラス管の製造を可能にする。さらなる、または関連する利点は、正規化された逆拡散密度は、パイプヘッドでの温度と組み合わせて、製造されたガラス管の内部表面上でのアルカリ浸出性の低減をもたらすという知見にある。この理論に束縛されることを望むものではないが、基礎をなすメカニズムは、ガラス溶融物がパイプヘッド上でガラス管の形状へと成形される際にアルカリ含有化合物がガラス溶融物から蒸発し、管がさらに下流で冷却する際にガラス管の内部表面上で析出することであり得る。
【0012】
定義および方法
医薬品容器は、中空のガラス製品、例えばガラス管、ガラスバイアル、ガラスアンプル、ガラスカートリッジまたはガラスシリンジを含み且つそれらに関する。
【0013】
この説明がガラス管の幾何学的パラメータ、例えば内径di、外径do、および壁厚WTに関する場合、それらは平均の幾何学的パラメータ、つまり、それぞれガラス管全体にわたって測定されたかまたは測定できる平均の内径di、平均の外径do、および平均の壁厚WTとして理解されるべきである。
【0014】
「アルカリ浸出性」は一般に、ガラス物品およびその表面が、そのガラス物品と接触する水溶液中にアルカリ金属イオンを放出する特性に関する。この開示においては、「アルカリ浸出性」は、μgでのNa2Oで定量化され、試験に供されたcm2での内部表面積に対して正規化される。医薬品中に浸出するアルカリ金属イオンは、特に生体工学的に製造された大きな分子、例えば抗体にとって問題となりかねない。この開示においては、ISO 4802-2:2010の方法を使用して溶出液中の「アルカリ浸出性」が特定され、それについては「方法および実施例」の節でより詳細に説明する。「アルカリ浸出性」は、ガラス管の内部表面上で、抽出溶液中のアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類酸化物の量を、フレーム原子発光分光法または原子吸光分光法(フレーム分光法)を使用して特定することによって測定される。
【0015】
「ガラス原料」は、他の同様の成分と組み合わせてガラス溶融物を形成し、且つ任意にガラス溶融物中で反応が起きた後にガラス製品を形成するために適した任意のガラス成分として理解されるべきである。本発明に関して使用されるガラス原料の例は、金属および半金属の酸化物、金属および半金属の硝酸塩、および金属および半金属の炭酸塩を含むが、それに限定されない。
【0016】
「ガラス溶融物」は、107.6dPa・s未満の粘度を有するガラス原料のバッチ塊である。ガラス(溶融物)の粘度は例えば、回転粘度計を使用して、例えばDIN ISO 7884-2:1998-2に記載されるとおりに測定できる。粘度の温度依存性は、VFT式(Vogel-Fulcher-Tammann)によって記述される。本発明による製造方法の間に、ガラス溶融物は、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度に加熱され且つ少なくとも一時的に保持される。
【0017】
この説明において、「パイプ」および「マンドレル」、または「ダンナーパイプ」および「ダンナーマンドレル」との用語は同義である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施態様による方法のための製造装置を模式的な断面図で示す。
図2図2は、医薬品容器用ガラス管を示す。
図3図3は、パイプヘッドの寸法を、ガラス管への引き抜きプロセスの間のガラス溶融物と組み合わせて説明する図を示す。
図4図4は、異なるガラス組成物AおよびBについてのアルカリ浸出性を、正規化された逆拡散密度の関数として(パネルA)、および逆伸張(inverse elongation)の関数として(パネルB)示す。
図5図5は、組成物Bから製造されたガラス管についての耐加水分解性を、外径doの関数として、且つ異なる壁厚WTについて示す。パネルAは特定の寸法、つまり壁厚WTおよび外径doの、測定されたガラス管についての8つの個別の区域で特定された耐加水分解性の平均値を示す。典型的には、前記8つの個別の区域は、約1500mmの長さのガラス管から得られ、100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要がある。パネルBは、前記8つの個別の区域からの最小値と最大値との間の耐加水分解性の絶対差を示す。パネルCおよびDは、ダンナー法によって組成物Aから製造されたガラス管についての耐加水分解性についての同様のデータを示す。
図6図6は、組成物Bから製造された個々のガラス管についての耐加水分解性についての箱ひげ図を、異なるガラス管寸法、つまり外径do、および壁厚WTについて示す。各々の箱ひげ図は、耐加水分解性測定に供された8つの異なる切片からのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
1つの態様において、本発明は、医薬品容器用ガラス管であって、前記ガラス管は内部表面と外部表面とを有し、前記ガラス管は内径diと外径doとを有し、前記ガラス管は壁厚WTと長さlaとを有し、前記ガラス管は長手方向軸を有し、
「耐加水分解性」は、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される、内部表面の区域におけるアルカリ浸出性の、前記壁厚に対する比率として定義され、
第1の耐加水分解性は前記ガラス管の第1の個別の区域で特定され、且つ第2の耐加水分解性は前記ガラス管の第2の個別の区域で特定され、前記第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と、前記第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差は、0.20μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.10μg cm-2 mm-1未満であり、
前記壁厚は0.4mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.8mm~2.1mm、または1.0mm~1.8mmであり、
前記外径doは6mm~55mm、8mm~50mm、12mm~45mm、16mm~40mm、または20mm~35mmであり、
前記長さは500~3500mmであり、
前記第1の個別の区域および前記第2の個別の区域は、前記長手方向軸に沿って前記内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である、
前記ガラス管に関する。
【0020】
従って、本発明は、ガラス管の内部表面にわたって均質な耐加水分解性と、ガラス管の内部表面にわたって減少した量の析出物との両方を示す医薬品容器用ガラス管を提供する。
【0021】
「耐加水分解性」は、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される、内部表面上でのアルカリ浸出性の、壁厚に対する比率として定義される。どのように「耐加水分解性」が測定されるかは、「方法および実施例」の節で詳細に説明される。
【0022】
「耐加水分解性」は、例えば約1500mmの長さのガラス管の内部表面上の個別の区域で測定され、100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要がある。比較のために、「耐加水分解性」はガラス管の内部表面上の少なくとも2つの個別の区域で測定されるが、ガラス管の内部表面上の2つ以上の個別の区域、つまり10までの個別の区域で測定されてもよい。第1の個別の区域と前記第2の個別との両方、並びに任意のさらなる個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である。
【0023】
1つの実施態様において、例えば約1500mmの長さのガラス管を準備し、100mmの長さのガラス管の2つの端部は測定から除外される必要があり、ガラス管の内部表面上の少なくとも2つの個別の区域、好ましくは8つの個別の区域または10の個別の区域を分析し、ここで前記個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記ガラス管の環状の断面部分であり、および任意にガラス管の個別の区域から得られた耐加水分解性についての統計データ、例えば四分位数間範囲(IQR)、および任意に外れ値の有無を計算することによって、「耐加水分解性」が特定される。
【0024】
個別の区域のいずれの間にも重複はないこと、および「耐加水分解性」の測定および計算は、各々の個別の区域で1回だけ行われ得ることが理解されるべきである。前記測定方法は、個別のガラス管の区域を特定の容量まで水で充填して、引き続きそのガラス管の区域から浸出性の成分を抽出する処理をすることによって、抽出溶液を生成することに基づく。ガラス管の内径、外径および壁厚とは関わらず、一貫し且つ再現性のある結果をもたらすために、測定が行われる前記管の環状の断面部分は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する。当業者は、環状の断面部分の特定且つ正確な長さは重要ではなく、つまり、測定が行われる管の環状の断面部分は、長手方向軸に沿って内部表面上で60mm、70mm、80mmまたは100mmに延在し得ることを理解し且つ認めている。「耐加水分解性」は内部表面に関するアルカリ浸出性に基づいており、μg cm-2でのNa2O当量として定量化され、次いでガラス管の壁厚で除算されるので、「耐加水分解性」は、測定が行われる管の環状の断面部分の選択された長さからは独立している。
【0025】
これに関し、任意の所定のガラス管について測定され得る個別の区域の最大数は、ガラス管の長さ、および測定が行われる管の環状の断面部分の選択された長さによって制限され、100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要があることが理解されるべきである。これは、測定され得る個別の区域の最大数が、最高でも、ガラス管の長さと環状の断面部分の選択された長さとの商に正確に等しいかまたはそれより小さいことを伴う。
【0026】
第1の耐加水分解性はガラス管の第1の個別の区域で特定され、且つ第2の耐加水分解性は、ガラス管の第2の個別の区域で特定され、100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要がある。任意の所定の長さlaのガラス管について、第1の個別の区域および第2の個別の区域がガラス管内で正確にどこに位置するかは問題ではないことが理解されるべきである。換言すれば、第1の個別の区域と第2の個別の区域との両方は、ガラス管内の任意の可能な位置に位置することができるが、ただし、第1の個別の区域と第2の個別の区域との間に(物理的な)重複はあり得ない。引き続き、第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差を計算する。
【0027】
本発明によれば、第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差は、0.20μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.10μg cm-2 mm-1未満である。有利なことに、前記医薬品容器用ガラス管は、耐加水分解性が特定された正確な位置には関わらず、前記ガラス管の内部表面にわたって均質な耐加水分解性を示す。
【0028】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚WT 0.4mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.8mm~2.1mm、または1.0mm~1.8mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚WT少なくとも0.4mm、少なくとも0.6mm、少なくとも0.8mm、または少なくとも1.0mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚WT2.5mm以下、2.3mm以下、2.1mm以下、または1.8mm以下を有する。
【0029】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は外径do 6mm~55mm、8mm~50mm、12mm~45mm、16mm~40mm、または20mm~35mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は外径do 少なくとも6mm、少なくとも8mm、少なくとも12mm、少なくとも16mm、または少なくとも20mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は外径do 55mm以下、50mm以下、45mm以下、40mm以下、または35mm以下を有する。
【0030】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は長さ500~3500mm、1000~3000mm、または1500~2500mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は長さ少なくとも500mm、少なくとも1000mm、または少なくとも1500mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は長さ3500mm以下、3000mm以下、または2500mm以下を有する。
【0031】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は内径di 4~51mm、6mm~46mm、10mm~41mm、16mm~40mm、または20mm~35mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は内径di 少なくとも4mm、少なくとも6mm、少なくとも10mm、少なくとも14mm、または少なくとも18mmを有する。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は内径di 51mm以下、46mm以下、41mm以下、40mm以下、または35mm以下を有する。
【0032】
1つの実施態様において、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中のNa2O当量として特定される、ガラス管の区域でのアルカリ浸出性の特定は、ガラス管を少なくとも60mmの長さの切片に切断すること、1つの開端部でゴム栓を用いて前記切片をキャップすること、およびキャップされた切片を蒸留水で充填することを含み、蒸留水での充填体積はISO 4802-2:2010のポイント7.2.1またはポイント7.2.2に準拠して特定される。
【0033】
1つの実施態様において、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中のNa2O当量として特定される、ガラス管の区域でのアルカリ浸出性の特定は、ガラス管を、60mm~100mmの長さを有する2つの切片、または8つの切片に切断すること、1つの開端部でゴム栓を用いて前記切片をキャップすること、およびキャップされた切片を蒸留水で充填することを含み、蒸留水での充填体積はISO 4802-2:2010のポイント7.2.1またはポイント7.2.2に準拠して特定される。
【0034】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.5μg cm-2 mm-1未満、0.4μg cm-2 mm-1未満、0.3μg cm-2 mm-1未満、0.2μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満である。第1の耐加水分解性と第2の耐加水分解性とは互いに独立であり、且つ正確に同一ではないことが理解されるべきである。しかしながら、上記に鑑み、第1の耐加水分解性と第2の耐加水分解性とは互いに同様であり、且つ大きくずれはしないことも理解される。
【0035】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、少なくとも0.01μg cm-2 mm-1、少なくとも0.02μg cm-2 mm-1、少なくとも0.03μg cm-2 mm-1、少なくとも0.04μg cm-2 mm-1、または少なくとも0.05μg cm-2 mm-1である。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.01~0.5μg cm-2 mm-1、0.02~0.4μg cm-2 mm-1、0.03~0.3μg cm-2 mm-1、0.04~0.2μg cm-2 mm-1、または0.05~0.1μg cm-2 mm-1である。
【0036】
有利なことに、医薬品容器用ガラス管の耐加水分解性は低くあることができるか、且つ/または従来技術に鑑みて低減されることができ、それは、ガラス管の内部表面上の任意の位置で測定され得る第1の耐加水分解性と第2の耐加水分解性との両方において反映される。それによって、従来技術におけるガラス管に関連する特定の問題が軽減され、且つ/または取り除かれ、特定の汚染物の量が部分的に減少および/または実質的に減少される効果がある。これは、前記ガラス管から製造される医薬品容器における良い影響を有し、例えば医薬品の品質が、経時的により良好に保持されることができ、且つ医薬品容器自体によって損なわれない。
【0037】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚1.0mm~2.0mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.3μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.2μg cm-2 mm-1未満である。第1の耐加水分解性は0.3μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.2μg cm-2 mm-1未満であることができると共に、第2の耐加水分解性は0.3μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.2μg cm-2 mm-1未満である。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚1.0mm~2.0mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、少なくとも0.02μg cm-2 mm-1、少なくとも0.04μg cm-2 mm-1、または少なくとも0.06μg cm-2 mm-1である。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚1.0mm~2.0mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.02~0.3μg cm-2 mm-1、0.04~0.25μg cm-2 mm-1、または0.06~0.2μg cm-2 mm-1である。
【0038】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚2.0mm~2.5mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.2μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満である。1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚2.0mm~2.5mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、少なくとも0.01μg cm-2 mm-1、少なくとも0.02μg cm-2 mm-1、または少なくとも0.03μg cm-2 mm-1である。1つの実施態様において、前記ガラス管は、壁厚2.0mm~2.5mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.01~0.2μg cm-2 mm-1、0.02~0.15μg cm-2 mm-1、または0.03~0.1μg cm-2 mm-1である。
【0039】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、外径do 16mm~55mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、0.30μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.20μg cm-2 mm-1未満である。1つの実施態様において、前記ガラス管は、外径do 16mm~55mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は、少なくとも0.02μg cm-2 mm-1、少なくとも0.04μg cm-2 mm-1、または少なくとも0.06μg cm-2 mm-1である。1つの実施態様において、前記ガラス管は、外径do 16mm~55mmを有し、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性は0.02~0.3μg cm-2 mm-1、0.04~0.25μg cm-2 mm-1、または0.06~0.2μg cm-2 mm-1である。
【0040】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第1の個別の区域と第2の個別の区域とは、互いに少なくとも400mm、少なくとも600mm、少なくとも800mm、または少なくとも1000mm離れている。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第1の個別の区域と第2の個別の区域とは、互いに3100mm以下、2800mm以下、2500mm以下、または2000mm以下離れている。医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第1の個別の区域と第2の個別の区域とは、互いに400mm~3100mm、600mm~2800mm、800mm~2500mm、または1000mm~2000mm離れている。
【0041】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、第3の耐加水分解性が前記ガラス管の第3の個別の区域で特定され、第4の耐加水分解性が前記ガラス管の第4の個別の区域で特定され、第5の耐加水分解性が前記ガラス管の第5の個別の区域で特定され、第6の耐加水分解性が前記ガラス管の第6の個別の区域で特定され、第7の耐加水分解性が前記ガラス管の第7の個別の区域で特定され、且つ第8の耐加水分解性が前記ガラス管の第8の個別の区域で特定され、
前記第3の個別の区域、前記第4の個別の区域、前記第5の個別の区域、前記第6の個別の区域、前記第7の個別の区域、および前記第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分であり、
個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られた統計的結果は、0.08μg cm-2 mm-1未満、または0.06μg cm-2 mm-1未満の四分位数間範囲(IQR)によって特徴付けられる。
【0042】
第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域の耐加水分解性の特定は、上記の説明に沿って行われ、且つ特に第1の個別の区域および第2の個別の区域についてと同じように行われる。
【0043】
1つの実施態様において、第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域で特定される耐加水分解性の絶対差は、第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域についての値からの最大値と最小値との間で、0.20μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.10μg cm-2 mm-1未満である。
【0044】
1つの実施態様において、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って前記内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である。環状の断面部分の特定且つ正確な長さは重要ではなく、つまり、測定が行われる前記管の環状の断面部分は、長手方向軸に沿って内部表面上で60mm、70mm、80mmまたは100mmに延在し得る。
【0045】
1つの実施態様において、第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である。
【0046】
1つの実施態様において、第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々60mm、70mm、80mmまたは100mmに延在する前記管の環状の断面部分である。
【0047】
ガラス管の内部表面上の第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域の間に特定の順はなく且つ特定の距離はないことが理解されるべきである。第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域のいずれの間にも重複はあり得ないことも理解されるべきであり、なぜなら、浸出性成分の測定は一度だけ行われ得るからである。前記方法は、個別のガラス管の区域を特定の容量まで水で充填して、引き続きガラス管の区域から浸出性の成分を抽出する熱処理をすることによって、抽出溶液を生成することに基づく。
【0048】
1つの実施態様において、ガラス管のバッチは、少なくとも10個の個々のガラス管、少なくとも20個の個々のガラス管、少なくとも50個の個々のガラス管、または少なくとも100個の個々のガラス管を含む。1つの実施態様において、ガラス管のバッチは、1000個以下の個々のガラス管、または500個以下の個々のガラス管を含む。
【0049】
統計的結果は、個々のガラス管の8つの個別の区域から、つまり第1の個別の区域、第2の個別の区域、第3の個別の区域、第4の個別の区域、第5の個別の区域、第6の個別の区域、第7の個別の区域、および第8の個別の区域から耐加水分解性について得られる。それらの結果を例えば箱ひげ図分析に供して、そこから例えば四分位数間範囲(IQR)を推定でき、且つ統計的な外れ値の有無を導出できる。
【0050】
箱ひげ図は統計的なデータセットを示す公知の方法であり、典型的にはそのデータセットの最小値、最大値、中央値、第1四分位数、および第3四分位数を含む。統計的な外れ値の有無は、第1四分位数および第3四分位数に依存し、最小値または最大値とはみなされない。中央値はそのデータセットの中央の値であり、50パーセンタイルとして、または第2四分位数とも称される。第1四分位数、または下方四分位数は、そのデータセットの下半分の中央値であり、25パーセンタイルとも称される。第3四分位数、または上方四分位数は、そのデータセットの上半分の中央値であり、75パーセンタイルとも称される。四分位数間範囲(IQR)は、第1四分位数と第3四分位数との間の距離である。パーセンタイルは、最も近いランク間の線形補間法を使用して定数c=0で計算された。
【0051】
本発明において、下ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第1四分位数の下で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示し、且つ上ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第3四分位数の上で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示す。データセット内の統計的な外れ値は、上ひげと下ひげとにわたる範囲の外側のデータ点として定義される。しかしながら、データの表示において(図6参照)、下ひげはデータセットの最小値を超えず、且つ上ひげはデータセットの最大値を超えない。説明された数学的基準に基づき、外れ値が存在する場合、それらの外れ値は最小値または最大値とはみなされない。
【0052】
1つの実施態様において、個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られた統計的結果は、0.08μg cm-2 mm-1未満、または0.06μg cm-2 mm-1未満の四分位数間範囲(IQR)を有する。
【0053】
1つの実施態様において、個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られた統計的結果は、0.01μg cm-2 mm-1以上、または0.02μg cm-2 mm-1以上の四分位数間範囲(IQR)を有する。
【0054】
1つの実施態様において、個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られた統計的結果は、0.01μg cm-2 mm-1~0.08μg cm-2 mm-1、または0.02μg cm-2 mm-1~0.06μg cm-2 mm-1の四分位数間範囲(IQR)を有する。
【0055】
有利なことに、前記医薬品容器用ガラス管は、耐加水分解性が特定された8つの個別の区域の正確な位置には関わらず、前記ガラス管の内部表面にわたって均質な耐加水分解性を示す。
【0056】
ガラス管のセット
さらなる且つ/または関連する態様において、本発明は少なくとも9個のガラス管、または少なくとも50個のガラス管、または少なくとも100個のガラス管を含むセットに関する。1つの実施態様において、本発明は、1000個以下のガラス管、または500個以下のガラス管、または300個以下のガラス管を含むセットに関する。
【0057】
前記セットの1つの実施態様において、各々の個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性についての統計的結果が得られ、前記セットのガラス管の少なくとも90%が、以下のパラメータの1つ以上によって特徴付けられる:
・ 四分位数間範囲(IQR)は0.04μg cm-2 mm-1未満、または0.03μg cm-2 mm-1未満である、
・ 上ひげと下ひげとにわたる範囲の外側のデータ点として定義される統計的な外れ値はなく、前記下ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第1四分位数の下で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示し、且つ上ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第3四分位数の上で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示す。
【0058】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の80%は、0.04μg cm-2 mm-1未満、または0.03μg cm-2 mm-1未満のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0059】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の90%は、0.04μg cm-2 mm-1未満、または0.03μg cm-2 mm-1未満のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0060】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の95%は、0.04μg cm-2 mm-1未満、または0.03μg cm-2 mm-1未満のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0061】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の80%は、0.01μg cm-2 mm-1以上、または0.02μg cm-2 mm-1以上のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0062】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の90%は、0.01μg cm-2 mm-1以上、または0.02μg cm-2 mm-1以上のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0063】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の95%は、0.01μg cm-2 mm-1以上、または0.02μg cm-2 mm-1以上のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0064】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の80%は、0.01μg cm-2 mm-1~0.04μg cm-2 mm-1のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0065】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の90%は、0.01μg cm-2 mm-1~0.04μg cm-2 mm-1のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0066】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の95%は、0.01μg cm-2 mm-1~0.04μg cm-2 mm-1のIQRを有する、個々のガラス管の8つの個別の区域から得られた耐加水分解性によって特徴付けられる。
【0067】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の80%が、上ひげと下ひげとにわたる範囲の外側のデータ点として定義される統計的な外れ値がないパラメータによって特徴付けられ、前記下ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第1四分位数の下で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示し、且つ上ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第3四分位数の上で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示す。
【0068】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の90%が、上ひげと下ひげとにわたる範囲の外側のデータ点として定義される統計的な外れ値がないパラメータによって特徴付けられ、前記下ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第1四分位数の下で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示し、且つ上ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第3四分位数の上で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示す。
【0069】
前記セットの1つの実施態様において、前記セットのガラス管の95%が、上ひげと下ひげとにわたる範囲の外側のデータ点として定義される統計的な外れ値がないパラメータによって特徴付けられ、前記下ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第1四分位数の下で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示し、且つ上ひげはIQRの1.5倍以内の距離にあり、且つ第3四分位数の上で測定されたIQRの1.5倍に最も近い値を示す。
【0070】
ガラス組成物
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5~20mol%のB23を含むガラスのリストから選択されるガラス組成物を含む。
【0071】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管は、5~20mol%のB23および/または2~10mol%のNa2Oを含むガラス組成物を含む。任意に、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき60~85mol%のSiO2、5~20mol%のB23、2~10mol%のAl23、0~2mol%のFe23、2~10mol%のNa2O、0~5mol%のK2O、0~2mol%のBaO、0~2mol%のCaO、および/または0~10mol%のTiO2を含む。
【0072】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも60mol%のSiO2、少なくとも62mol%のSiO2、少なくとも64mol%のSiO2、少なくとも66mol%のSiO2、または少なくとも68mol%のSiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき85mol%以下のSiO2、83mol%以下のSiO2、81mol%以下のSiO2、79mol%以下のSiO2、または77mol%以下のSiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき60~85mol%のSiO2、62~83mol%のSiO2、64~81mol%のSiO2、66~79mol%のSiO2、または68~77mol%のSiO2を含む。
【0073】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも5.0mol%のB23、少なくとも5.5mol%のB23、少なくとも6.0mol%のB23、少なくとも6.5mol%のB23、または少なくとも7.0mol%のB23を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき20.0mol%以下のB23、18.0mol%以下のB23、16.0mol%以下のB23、14.0mol%以下のB23、または12.0mol%以下のB23を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5.0~20.0mol%のB23、5.5~18.0mol%のB23、6.0~16.0mol%のB23、6.5~14.0mol%のB23、または7.0~12.0mol%のB23を含む。
【0074】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも2.0mol%のAl23、少なくとも3.0mol%のAl23、少なくとも4.0mol%のAl23、または少なくとも5.0mol%のAl23を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき10.0mol%以下のAl23、9.0mol%以下のAl23、8.0mol%以下のAl23、または7.0mol%以下のAl23を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき2.0~10.0mol%のAl23、3.0~9.0mol%のAl23、4.0~8.0mol%のAl23、または5.0~7.0mol%のAl23を含む。
【0075】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0mol%のFe23、少なくとも0.2mol%のFe23、または少なくとも0.5mol%のFe23を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき2.0mol%以下のFe23、1.5mol%以下のFe23、または1.2mol%以下のFe23を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0~2.0mol%のFe23、0.2~1.5mol%のFe23、または0.5~1.2mol%のFe23を含む。
【0076】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも2mol%のNa2O、少なくとも4mol%のNa2O、または少なくとも6mol%のNa2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき10mol%以下のNa2O、9mol%以下のNa2O、または8mol%以下のNa2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき2~10mol%のNa2O、4~9mol%のNa2O、または6~8mol%のNa2Oを含む。
【0077】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のK2O、少なくとも0.2mol%のK2O、または少なくとも0.5mol%のK2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき5.0mol%以下のK2O、3.5mol%以下のK2O、2.5mol%以下のK2O、2.0mol%以下のK2O、または1.5mol%以下のK2Oを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~5.0mol%のK2O、0.2~3.5mol%のK2O、または0.5~2.5mol%のK2Oを含む。
【0078】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のBaO、少なくとも0.2mol%のBaO、または少なくとも0.5mol%のBaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき3.0mol%以下のBaO、2.5mol%以下のBaO、または2.0mol%以下のBaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~3.0mol%のBaO、0.2~2.5mol%のBaO、または0.5~2.0mol%のBaOを含む。
【0079】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のCaO、少なくとも0.2mol%のCaO、または少なくとも0.5mol%のCaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき3.0mol%以下のCaO、2.5mol%以下のCaO、または2.0mol%以下のCaOを含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~3.0mol%のCaO、0.2~2.5mol%のCaO、または0.5~2.0mol%のCaOを含む。
【0080】
1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき少なくとも0.0mol%のTiO2、少なくとも1.0mol%のTiO2、少なくとも2.0mol%のTiO2、少なくとも3.0mol%のTiO2、または少なくとも4.0mol%のTiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき10.0mol%以下のTiO2、9.0mol%以下のTiO2、8.0mol%以下のTiO2、7.0mol%以下のTiO2、または6.0mol%以下のTiO2を含む。1つの実施態様において、前記ガラス組成物は、前記ガラス組成物中に存在する全ての酸化物に基づき0.0~10.0mol%のTiO2、1.0~9.0mol%のTiO2、2.0~8.0mol%のTiO2、3.0~7.0mol%のTiO2、または4.0~6.0mol%のTiO2を含む。
【0081】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、前記ガラス管はガラス組成物を含み、前記ガラス組成物は1つ以上の清澄剤、例えば酸化ヒ素、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化セリウム、塩化物、硫酸塩、およびそれらの組み合わせのリストから選択される清澄剤を含む。
【0082】
ガラス組成物中で清澄剤を使用して、医薬品容器用ガラス管の製造プロセスの間に、気泡の形成およびガラス溶融物からの気泡の離脱を可能にすることが有利である。
【0083】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、ガラス組成物は酸化ヒ素、酸化アンチモンおよび酸化スズのリストから選択される清澄剤を含む。
【0084】
医薬品容器用ガラス管の1つの実施態様において、ガラス組成物は塩化物、硫酸塩、およびそれらの組み合わせのリストから選択される清澄剤を含む。
【0085】
製造方法
第2の態様において、本発明は、ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
a. パイプヘッドを有する、ガラス引き抜きパイプを準備する段階、
b. 前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備する段階、
c. 前記パイプヘッドで、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度を確立し且つ保持する段階、および
d. 任意に、前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度を、20%未満、または10%未満の許容差で確立する段階、
e. 少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度を確立する段階
を含む、前記方法に関する。
【0086】
それによって、本発明者らは、ガラス管の内部表面にわたって均質な耐加水分解性と、ガラス管の内部表面にわたって減少した量の析出物との両方を示す医薬品容器用ガラス管の製造を提供する、製造方法および製造条件を確立した。
【0087】
以下の好ましい実施態様は、本発明の第2の態様および第3の態様の製造方法に等しく関係する。
【0088】
前記製造方法の1つの実施態様において、パイプヘッドを有する、ガラス引き抜きパイプを準備することは、ガラス管を引き抜くために適した製造装置を準備することを含み、前記装置はガラス溶融物を含有する供給槽、ガラス溶融物のための出口を含んで、前記ガラス溶融物が回転する円錐形パイプの外部表面上にもたらされる。
【0089】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記円錐形パイプは引き抜き方向に対して本質的に平行な軸周りに回転できる。1つの実施態様において、前記円錐形パイプは下向きに、任意に、水平方向に対して1°~15°の角度、または3°~10°の角度で傾いている。1つの実施態様において、前記円錐形パイプは、動力ユニットによって駆動される。
【0090】
前記製造方法の1つの実施態様において、中空のガラス溶融体が、前記円錐形パイプから所定の方向において前端に向かって引き抜かれる。1つの実施態様において、引き抜きの間、圧縮空気が前記円錐形パイプを通じてガラス管に吹き込まれる。有利なことに、前記円錐形パイプを通じて圧縮空気を吹き込むことは、中空のガラス溶融体がつぶれることを防ぐ。
【0091】
1つの実施態様において、前記製造方法は、前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備する。1つの実施態様において、任意に揮発性成分を含むガラス溶融物を準備する段階は、ガラス溶融物を形成するための溶融槽内で、任意にホウ素酸化物を含むガラス原料のバッチを溶融すること、並びに前記ガラス原料および/またはガラス溶融物を少なくとも1つのバーナーを使用して加熱することを含む。
【0092】
前記製造方法の1つの実施態様において、実質的に一定の流量は、連続プロセスの間の平均流量に基づき、98~102%、または99.5~100.5%、または99.9~100.1%ずれる流量に関する。1つの実施態様において、前記製造方法は、前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備し、前記実質的に一定の流量は、1時間あたり50~1000kgのガラス溶融物、または1時間あたり100~800kgのガラス溶融物である。
【0093】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記パイプヘッドの下端での引き抜き速度は、0.014~16.5m s-1、0.05~11.5m s-1、0.1~3.5m s-1、0.2~1.5m s-1、または0.3~1.0m s-1である。前記製造方法の1つの実施態様において、前記パイプヘッドの下端での引き抜き速度は、少なくとも0.014、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2、または少なくとも0.3である。前記製造方法の1つの実施態様において、前記パイプヘッドの下端での引き抜き速度は、16.5m s-1以下、11.5m s-1以下、3.5m s-1以下、1.5m s-1以下、または1.0m s-1以下である。
【0094】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記パイプヘッドで、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度を確立し且つ/または保持する。有利なことに、この温度範囲は、ガラス溶融物をパイプヘッド上に流す段階の間、実質的に一定の流量を確立し且つ提供する。
【0095】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記パイプヘッドで温度800℃~1300℃、850℃~1200℃、900℃~1100℃、または950℃~1050℃が確立される。
【0096】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度が、前記方法の間の平均引き抜き速度に対して20%未満、10%未満、または5%未満の許容差で確立される。ガラス溶融物の特定の流量で、引き抜き速度は、ガラス管の内径、外径および壁厚によって特徴付けられるガラス管の目標断面積に直接影響する。これに関し、前記方法の間に準備される材料の量が保持されることも理解される。前記方法の間の蒸発から生じる材料損失は無視でき、且つ/またはガラス溶融物の重量に対して0.01%未満であることができる。
【0097】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度が、前記方法の間の平均引き抜き速度に対して少なくとも1%、少なくとも2%、または少なくとも3%の許容差で確立される。前記製造方法の1つの実施態様において、前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度が、1%~20%、2%~10%、または3%~5%の許容差で確立される。
【0098】
前記製造方法の1つの実施態様において、少なくとも0.003且つ0.06未満の逆伸張AZ/ARが得られるような条件が確立され、ここでAzは、前記パイプヘッドから、前記パイプヘッドから約0.15m下流まで延在する最初のガラス管の区域の内部表面積であり、且つARは、前記パイプヘッドから約0.8m下流で始まる等質量のガラス溶融物の内部表面積である。
【0099】
図3を参照すると、Azは、定義上、0.00mの距離であるパイプヘッドから、前記パイプヘッドから約0.15m下流まで延在する最初のガラス管の区域の内部表面積であり、従って約0.15mの長さLKをカバーしている。ARは、前記パイプヘッドから約0.8m下流での等質量のガラス溶融物の内部表面積であり、つまり図3に関して、この例示的な場合においては約0.8mから約1.2mまでの、つまりおよそ0.40mの長さLをカバーする。
【0100】
逆伸張は、測定、見積もりおよび計算によって得ることができ、例えば以下の式
【数1】
を介して得ることができ、前記式中、2Ri,Kはパイプヘッド下端での内径であり、2doは最終的なガラス管の外径であり、2diは最終的なガラス管の内径であり、WTは最終的なガラス管の壁厚であり、且つDKはパイプヘッドの下端での壁厚である。
【0101】
当業者は、特定の逆伸張を達成するために、並びに特定の寸法、例えば内径d、外径d、および壁厚WTを有するガラス管を達成するために、引き抜き速度および互いに対する流量をどのように確立し且つ調節するのかを知っている。
【0102】
前記製造方法の1つの実施態様において、逆伸張AZ/ARは、少なくとも0.003、少なくとも0.006、または少なくとも0.01である。前記製造方法の1つの実施態様において、逆伸張AZ/ARは、0.06以下、0.05以下、または0.04以下である。前記製造方法の1つの実施態様において、逆伸張AZ/ARは、0.003~0.06、0.006~0.05、または0.01~0.04である。選択的な実施態様において、逆伸張AZ/ARは、0.003~0.02である。選択的な実施態様において、逆伸張AZ/ARは、0.02~0.06、または0.03~0.05である。
【0103】
1つの実施態様において、本発明は、ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
a. パイプヘッドを有する、ガラス引き抜きパイプを準備する段階、
b. 前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備する段階、
c. 前記パイプヘッドで、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度を確立し且つ保持する段階、
d. 前記流量の、前記ガラス管の目標断面積に対する比率に相応する引き抜き速度を、20%未満、または10%未満の許容差で確立する段階、
e. 少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度が得られるように、プルオフ速度を20%未満、または10%未満の許容差で確立する段階、および
f. 少なくとも0.003且つ0.06未満の逆伸張AZ/ARが得られることを確立する段階であって、ここでAzは、前記パイプヘッドから、前記パイプヘッドから約0.15m下流まで延在する最初のガラス管の区域の内部表面積であり、且つARは、前記パイプヘッドから約0.8m下流での等質量のガラス溶融物の内部表面積である、前記段階
を含む、前記方法に関する。
【0104】
第3の態様において、本発明は、ガラス管の製造方法であって、以下の段階:
a. パイプヘッドを有する、ガラス引き抜きパイプを準備する段階、
b. 前記パイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れるガラス溶融物を準備する段階、
c. 前記パイプヘッドで、前記ガラス溶融物の粘度106.5dPa・sに相応するT6.5温度と、前記ガラス溶融物の粘度104.5dPa・sに相応するT4.5温度との間にある温度を確立し且つ保持する段階、および
d. プルオフ速度を、20%未満、または10%未満の許容差で確立する段階、
e. 少なくとも0.003且つ0.06未満の逆伸張AZ/ARが得られることを確立する段階であって、ここでAzは、前記パイプヘッドから、前記パイプヘッドから約0.15m下流まで延在する最初のガラス管の区域の内部表面積であり、且つARは、前記パイプヘッドから約0.8m下流での等質量のガラス溶融物の内部表面積である、前記段階
を含む、前記方法に関する。
【0105】
プルオフ速度は、パイプヘッドの下端から引き抜かれるガラス溶融物の量として定義される。本開示内で、プルオフ速度は2つの条件に関連付けられる。第1に、プルオフ速度は、20%未満、または10%未満の許容差として表される最低限の揺らぎしか受けないように制御される。第2に、プルオフ速度は、少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度に影響し且つそれを提供し、つまり、プルオフ速度およびその揺らぎには関わらず、少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度が得られる。
【0106】
正規化された逆拡散密度vRNは、
【数2】
に等式化でき、前記式中、定数c1は経験的モデルに基づく最適化により確立され、且つ約0.46h m-3である。
【数3】
は、定義上、パイプヘッドの下端から出発して、パイプヘッドから0.8m下流までの区域における、いわゆるドローイングオニオン(drawing onion)における吹き込み空気の体積流量である。1つの実施態様において、定数c1は約0.46h m-3であり、且つ許容差±20%、または±10%を有する。定数c1は主に、製造の間のガラス管のストランド内の空気温度に依存し、従って変化し得る。1つの実施態様において、定数c1は0.37~0.55h m-3である。
【0107】
本発明者らは、正規化された逆拡散密度vRNと、得られたガラス管のアルカリ浸出性との間の正の相関を確立した。有利なことに、少なくとも0.005且つ0.1未満の正規化された逆拡散密度は、製造されたガラス管の優れた結果~良好な結果を提供する。
【0108】
前記製造方法の1つの実施態様において、正規化された逆拡散密度は、少なくとも0.005、または少なくとも0.01である。前記製造方法の1つの実施態様において、正規化された逆拡散密度は、0.10以下、または0.06以下である。前記製造方法の1つの実施態様において、正規化された逆拡散密度は、0.005~0.1、または0.01~0.06である。選択的な実施態様において、正規化された逆拡散密度は、0.005~0.06である。選択的な実施態様において、正規化された逆拡散密度は、0.02~0.05である。
【0109】
前記製造方法の1つの実施態様において、正規化された逆拡散密度は、逆伸張AZ/ARを最小化すると同時にパイプヘッドでの温度を低下させることにより、および吹き込み空気の体積の低減を可能にする管の内径に従って管の寸法を選択することにより、最小化される。
【0110】
前記製造方法の1つの実施態様において、プルオフ速度は、50~1000kg h-1、100~900kg h-1、200~800kg h-1、300~700kg h-1、または400~600kg h-1である。前記製造方法の1つの実施態様において、プルオフ速度は、少なくとも50kg h-1、少なくとも100kg h-1、少なくとも200kg h-1、少なくとも300kg h-1、または少なくとも400kg h-1である。前記製造方法の1つの実施態様において、プルオフ速度は、1000kg h-1以下、900kg h-1以下、800kg h-1以下、700kg h-1以下、または600kg h-1以下である。
【0111】
1つの実施態様において、前記製造方法は、パイプヘッドの下端で0~1000Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。ガラス溶融物はまずパイプヘッド上に実質的に一定の流量で流れること、およびガラス溶融物の引き抜きは、パイプヘッドの端部から、パイプヘッドの下端から約0.15m下流まで延在する最初のガラス管の区域を確立し且つ提供することが理解されるべきである。これに関し、パイプヘッドの下端で、引き抜かれた最初のガラス管の区域の外側に比して、引き抜かれた最初のガラス管の区域の内側で有効である0~1000Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持することが望ましいことがある。
【0112】
1つの実施態様において、前記製造方法は、吹き込み空気の体積流量
【数4】
【0113】
0.2~12m3-1、0.4~10m3-1、0.8~8.0m3-1、または1.2~6.0m3-1、または2.0~4.0m3-1を確立し且つ/または保持する段階を含む。
【0114】
有利なことに、パイプヘッドの下端での過剰圧力を最小化すること、および/または製造方法の間の複込み空気の体積流量を最小化することは、得られるガラス管のアルカリ浸出性を低減できる。パイプヘッドの下端での過剰圧力は、製造の間のガラス管内の吹き込み空気の体積流量と正の相関がある。正規化された逆拡散密度vRNに影響するパラメータに鑑みると(上記の式を参照)、吹き込み空気の体積流量における増加は、正規化された逆拡散密度の高まりをもたらすことが明らかになる。
【0115】
1つの実施態様において、前記製造方法は、引き抜かれた最初のガラス管の区域の外側に比して、引き抜かれた最初のガラス管の区域の内側で0~1000Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。
【0116】
1つの実施態様において、前記製造方法は、パイプヘッドの下端で少なくとも10Pa、少なくとも50Pa、または少なくとも100Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。1つの実施態様において、前記製造方法は、パイプヘッドの下端で1000Pa以下、500Pa以下、または300Pa以下の過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。1つの実施態様において、前記製造方法は、パイプヘッドの下端で10Pa~1000Pa、50Pa~500Pa、または100Pa~300Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。
【0117】
1つの実施態様において、前記製造方法は、引き抜かれた最初のガラス管の区域の外側に比して、引き抜かれた最初のガラス管の区域の内側で少なくとも10Pa、少なくとも50Pa、または少なくとも100Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。1つの実施態様において、前記製造方法は、引き抜かれた最初のガラス管の区域の外側に比して、引き抜かれた最初のガラス管の区域の内側で1000Pa以下、400Pa以下、または300Pa以下の過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。1つの実施態様において、前記製造方法は、引き抜かれた最初のガラス管の区域の外側に比して、引き抜かれた最初のガラス管の区域の内側で10Pa~1000Pa、50Pa~500Pa、または100Pa~300Paの過剰圧力を確立し且つ/または保持する段階を含む。
【0118】
前記製造方法の1つの実施態様において、前記方法はダンナー法である。
【0119】
前記製造方法の1つの実施態様において、流量および引き抜き速度を、外径do 6~55mmおよび壁厚0.4mm~2.5mmを有するガラス管を得るように調節する。有利なことに、前記製造方法は、得られるガラス管の寸法を消費者のニーズに応じて制御および操作できるように流量および引き抜き速度を調節することを可能にする。
【0120】
前記製造方法の1つの実施態様において、流量および引き抜き速度を、外径do 6~55mmおよび壁厚WT 0.4mm~2.5mm、外径do 8~50mmおよび壁厚WT 0.6mm~2.3mm、外径do 12~45mmおよび壁厚WT 0.6mm~2.3mm、外径do 16~30mmおよび壁厚WT 1.0mm~1.2mm、または外径do 20~35mmおよび壁厚WT 1.0mm~1.8mmを有するガラス管を得るように調節する。
【0121】
さらなる実施態様において、本発明は本発明による製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管に関する。
【0122】
1つの実施態様において、前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、前記ガラス管の第1の個別の区域で特定される第1の耐加水分解性と、前記ガラス管の第2の個別の区域で特定される第2の耐加水分解性とを有し、前記第1の個別の区域で特定された耐加水分解性と、前記第2の個別の区域で特定された耐加水分解性との絶対差は、0.20μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.10μg cm-2 mm-1未満であり、壁厚WTは0.4mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.8mm~2.1mm、または1.0mm~1.8mmであり、外径doは6mm~55mm、8mm~50mm、12mm~45mm、16mm~40mm、または20mm~35mmであり、長さは500~3500mmであり、前記第1の個別の区域および前記第2の個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分である。
【0123】
1つの実施態様において、前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性が、0.5μg cm-2 mm-1未満、0.4μg cm-2 mm-1未満、0.3μg cm-2 mm-1未満、0.2μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満であることによって特徴付けられる。
【0124】
1つの実施態様において、前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、
前記ガラス管が壁厚1.0mm~2.0mmを有し、且つ第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性が0.3μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.2μg cm-2 mm-1未満であるか、または
前記ガラス管が壁厚2.0mm~2.5mmを有し、且つ且つ第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性が0.2μg cm-2 mm-1未満、0.15μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満であるか、または
前記ガラス管が外径do 16mm~55mmを有し、且つ第1の耐加水分解性および/または第2の耐加水分解性が0.30μg cm-2 mm-1未満、0.25μg cm-2 mm-1未満、または0.20μg cm-2 mm-1未満である
ことによって特徴付けられる。
【0125】
1つの実施態様において、前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られた統計的結果が0.04μg cm-2 mm-1未満、または0.03μg cm-2 mm-1未満の四分位数間範囲(IQR)によって特徴付けられることによって、特徴付けられる。
【0126】
1つの実施態様において、任意に前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、前記ガラス管が5~20mol%のB23および/または2~10mol%のNa2Oを含むガラス組成物を含み、前記ガラス管は第1の個別の区域で特定された第1の耐加水分解性と、第2の個別の区域で特定された第2の耐加水分解性との絶対差が0.20μg cm-2 mm-1未満であることによって特徴付けられ、壁厚WTは1.0mm~1.8mmであり、外径doは20mm~35mmであり、長さは1000~2500mmであり、前記第1の耐加水分解性および/または前記第2の耐加水分解性は、0.5μg cm-2 mm-1未満、0.4μg cm-2 mm-1未満、0.3μg cm-2 mm-1未満、0.2μg cm-2 mm-1未満、または0.1μg cm-2 mm-1未満である。
【0127】
1つの実施態様において、任意に前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、前記ガラス管が5~20mol%のB23および/または2~10mol%のNa2Oを含むガラス組成物を含み、前記ガラス管は第1の個別の区域で特定された第1の耐加水分解性と、第2の個別の区域で特定された第2の耐加水分解性との絶対差が0.20μg cm-2 mm-1未満であることによって特徴付けられ、壁厚WTは1.0mm~1.8mmであり、外径doは20mm~35mmであり、長さは1000~2500mmであり、前記第1の耐加水分解性および/または前記第2の耐加水分解性は、0.5μg cm-2 mm-1未満であり、第3の耐加水分解性が前記ガラス管の第3の個別の区域で特定され、第4の耐加水分解性が前記ガラス管の第4の個別の区域で特定され、第5の耐加水分解性が前記ガラス管の第5の個別の区域で特定され、第6の耐加水分解性が前記ガラス管の第6の個別の区域で特定され、第7の耐加水分解性が前記ガラス管の第7の個別の区域で特定され、且つ第8の耐加水分解性が前記ガラス管の第8の個別の区域で特定され、前記第1の個別の区域、前記第2の個別の区域、前記第3の個別の区域、前記第4の個別の区域、前記第5の個別の区域、前記第6の個別の区域、前記第7の個別の区域、および前記第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分であり、個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られる統計的結果は、0.08μg cm-2 mm-1未満、または0.06μg cm-2 mm-1未満の四分位数間範囲(IQR)によって特徴付けられる。
【0128】
1つの実施態様において、任意に前記製造方法によって得ることができるか、または得られたガラス管は、前記ガラス管が5~20mol%のB23および/または2~10mol%のNa2Oを含むガラス組成物を含み、前記ガラス管は第1の個別の区域で特定された第1の耐加水分解性と、第2の個別の区域で特定された第2の耐加水分解性との絶対差が0.20μg cm-2 mm-1未満であることによって特徴付けられ、壁厚WTは1.0mm~1.8mmであり、外径doは20mm~35mmであり、長さは1000~2500mmであり、第3の耐加水分解性が前記ガラス管の第3の個別の区域で特定され、第4の耐加水分解性が前記ガラス管の第4の個別の区域で特定され、第5の耐加水分解性が前記ガラス管の第5の個別の区域で特定され、第6の耐加水分解性が前記ガラス管の第6の個別の区域で特定され、第7の耐加水分解性が前記ガラス管の第7の個別の区域で特定され、且つ第8の耐加水分解性が前記ガラス管の第8の個別の区域で特定され、前記第1の個別の区域、前記第2の個別の区域、前記第3の個別の区域、前記第4の個別の区域、前記第5の個別の区域、前記第6の個別の区域、前記第7の個別の区域、および前記第8の個別の区域は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分であり、個々のガラス管の8つの個別の区域から耐加水分解性について得られる統計的結果は、0.08μg cm-2 mm-1未満、または0.06μg cm-2 mm-1未満の四分位数間範囲(IQR)によって特徴付けられる。
【0129】
図面の詳細な説明
図1は、本発明の実施態様による方法のための製造装置を模式的な断面図で示す。
【0130】
図1の製造装置21は、ダンナー法によってガラス管22を引き抜くための装置を示す。前記装置21は、ガラス溶融物24を含有する供給槽23を含む。前記供給槽において、ガラス溶融物24は典型的には少なくとも900℃、好ましくは1000℃を上回る温度を有し、且つ出口25を介して、ダンナーパイプまたはマンドレルと称される回転する円錐形マンドレル26の表面上に施与される。ダンナーマンドレルは引き抜き方向に対して本質的に平行な軸周りに回転できる。
【0131】
前記図からわかるとおり、円錐形マンドレル26は斜め下向きに傾斜しており、動力ユニット27によって駆動される。ガラス溶融物24は、出口25から円錐形マンドレル26の外部表面上を流れ、その上で中空のガラス溶融体28を形成する。出口25から円錐形マンドレル26に向かって流れている間に溶融ガラスのストランドが最初に円錐形マンドレル26に接触する位置を、濡れ領域と称する。中空のガラス溶融体28は、円錐形マンドレル26から所定の方向において前端に向かって引き抜かれる。さらに、円錐形マンドレル26を通じて圧縮空気を吹き込み、中空のガラス溶融体28がつぶれることを防ぐ。円錐形マンドレル26の前端で、いわゆるドローイングオニオン29(ドイツ語では「Ziehzwiebel」)が形成され、そこからガラス管22が熱間成形によって製造される。
【0132】
形成されたガラス管22を、一連の支持ローラ30上で、円錐形マンドレル26から120m以下離れて位置する引き抜き装置31によって引き抜き、それにより、ガラス管22を種々の品質パラメータ、例えば壁厚、気泡等に関して監視する監視ユニット32を通過する。ラインの最後で、切断装置33が、形成されたガラス管22を単独のガラス管34へと切断する。
【0133】
施与されたガラス溶融物24の濡れ領域をカメラ35によって連続的に記録して、出口25から流れる溶融物のデータを収集する。収集されたデータを分析ユニット(図示せず)によって分析する。その結果に基づき、出口25に対する円錐形マンドレル26の水平方向の位置、出口25に対する円錐形マンドレル26の垂直方向の位置、供給槽23における攪拌速度、ガラス温度、円錐形マンドレル26の傾斜角および/または円錐形マンドレル26の回転速度からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを調節して、引き抜き方向に対して本質的に平行な方向におけるガラスストランドの端部の空間的な変動を低減する。
【0134】
図2は、外径do、内径di、長さlaおよび壁厚WTを有するガラス管(1)を示す。前記ガラス管は、内部表面(2)、外部表面(3)、および長手方向軸(4)、並びに、第1の個別の区域(11)、第2の個別の区域(12)、第3の個別の区域(13)、第4の個別の区域(14)、第5の個別の区域(15)、第6の個別の区域(16)、第7の個別の区域(17)、および第8の個別の区域(18)を有する。8つの個別の区域(11)~(18)は、長手方向軸に沿って内部表面上で各々少なくとも60mmに延在する前記管の環状の断面部分であり、典型的には約1500mmの長さのガラス管に基づき典型的には約100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要がある。前記8つの個別の区域の中で、必要とされる互いに対する特定の順または距離はない。前記8つの個別のいずれの間にも重複はない。
【0135】
図3は、パイプヘッドの寸法を、ガラス管への引き抜きプロセスの間のガラス溶融物と組み合わせて説明する図を示す。連続プロセスにおいて、再現されたパラメータは不変である。Az(図示せず)は、パイプヘッドの下端から0.00mから約0.15m下流までの距離に沿って延びる、パイプヘッドの下端から最初のガラス管の区域の内部表面積であり、長さLKをカバーする。AR(図示せず)は、パイプヘッドの下端から約0.8m下流での等質量のガラス溶融物の内部表面積であり、長さLをカバーする。
【0136】
図4は、異なるガラス組成物AおよびBについてのアルカリ浸出性を、正規化された逆拡散密度の関数として(パネルA)、および逆伸張の関数として(パネルB)示す。逆伸張は、パイプヘッドでの温度および引き抜き速度の調節を介して操作される。
【0137】
図5は、組成物Bから製造されたガラス管についての耐加水分解性を、外径doの関数として、且つ異なる壁厚WTについて示す。パネルAは特定の寸法、つまり壁厚WTおよび外径doの、測定されたガラス管についての8つの個別の区域で特定された耐加水分解性の平均値を示す。典型的には、前記8つの個別の区域は、約1500mmの長さのガラス管から得られ、100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要がある。パネルBは、前記8つの個別の区域からの最小値と最大値との間の耐加水分解性の絶対差を示す。パネルCおよびDは、ダンナー法によって組成物Aから製造されたガラス管についての耐加水分解性についての同様のデータを示す。
【0138】
図6は、組成物Bから製造された個々のガラス管についての耐加水分解性についての箱ひげ図を、異なるガラス管寸法、つまり外径do、および壁厚WTについて示す。各々の箱ひげ図は、耐加水分解性測定に供された8つの異なる切片からのデータを示す。
【実施例0139】
方法および実施例
ガラス管の製造
2つのホウケイ酸ガラス組成物を使用して本発明によるガラス管を製造し、製造方法はダンナー法(図1参照)に基づく。引き抜き速度および吹き込み圧力を介して、パイプヘッドでの温度に対して制御される正規化された逆拡散密度0.005~0.1を確立した。そのように製造されたガラス管を、耐加水分解性測定(以下の節で説明)に供する。図4Aを参照すると、ガラス管の製造の間の正規化された逆拡散密度における増加は、内部表面上のアルカリ浸出性における増加と相関する。
【0140】
耐加水分解性
耐加水分解性は、ガラス管の内部表面上で測定され、内部表面上のアルカリ浸出性の、ガラス管の壁厚に対する比率として定義される。内部表面上のアルカリ浸出性は、ISO 4802-2:2010に準拠して調製される溶出液中でのNa2O当量として特定される。この測定されたパラメータを次に、ISO 4802-2:2010の方法の間に溶出液と接触された内部表面に関連付け、さらにガラス管の壁厚で除算する。
【0141】
その試験を実施するために、ガラス管を2~10の切片に切断し、各々の切片は少なくとも60mmの長さを有する一方で、選択的に75mmおよび100mmの長さも可能である。各々のガラスは典型的には少なくとも約1500mmの長さを有し、且つ前記切片は前記管から切り出され、100mmの長さの2つの端部は測定から除外される必要がある。個々のガラス管における各々の試験のために、典型的には8つの個別の切片を測定して、統計的に分析する。
【0142】
ISO 4802-2:2010のポイント8.3を参照し、各々のガラス管切片を、定義上、底端部と称される1つの開端部から、シリコーンゴムの栓を用いてキャップする。試験水を充填した後、ガラス管切片を、他の開端部でアルミニウム箔を用いてキャップする。それらを最初に使用する前に、シリコーンゴムの栓を洗浄し、シリコーンゴムの栓からのアルカリ浸出性がないことを確認する。各々の使用後、シリコーンゴムの栓を洗浄する。蒸留水での充填体積は、ISO 4802-2:2010のポイント7.2.1またはポイント7.2.2に準拠して、それぞれ、ガラス管切片の内径(または内腔)、つまりdi≦20mmまたはdi>20mmに依存して特定される。
【符号の説明】
【0143】
1 ガラス管
2 内部表面
3 外部表面
4 長手方向軸
i 内径
o 外径
a 長さ
WT 壁厚
11 第1の個別の区域
12 第2の個別の区域
13 第3の個別の区域
14 第4の個別の区域
15 第5の個別の区域
16 第6の個別の区域
17 第7の個別の区域
18 第8の個別の区域
21 製造装置
22 ガラス管
23 供給槽
24 ガラス溶融物
25 出口
26 円錐形マンドレル
27 動力ユニット
28 中空のガラス溶融体
29 ドローイングオニオン
30 一連の支持ローラ
31 引き抜き装置
32 監視ユニット
33 切断装置
34 単独のガラス管
35 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
【外国語明細書】