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特開2023-8007電動パワーステアリング装置及びアキシャルギャップ型電動モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008007
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置及びアキシャルギャップ型電動モータ
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111214
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 悠亮
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB16
3D333CC06
3D333CC14
3D333CC25
3D333CC38
3D333CC47
3D333CD04
3D333CD06
3D333CD16
(57)【要約】
【課題】部品点数を減らしても、モータロータの回転が安定する、電動パワーステアリング装置及びアキシャルギャップ型電動モータを提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、ラックバーと、ラックバーとかみ合うピニオンギアと、ピニオンギアを回転させるアキシャルギャップ型電動モータと、を含む。アキシャルギャップ型電動モータは、励磁コイルを備えるモータステータと、励磁コイルの励磁状態に応じて回転するモータロータと、モータロータと直結され、モータロータに連動して回転するシャフトと、を含む。シャフトの延びる方向に沿う軸方向にモータロータとモータステータとが、ギャップを介して対向し、シャフトは、ピニオンギアに直結している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックバーと、
前記ラックバーとかみ合うピニオンギアと、
前記ピニオンギアを回転させるアキシャルギャップ型電動モータと、を含み、
前記アキシャルギャップ型電動モータは、モータハウジングと、モータハウジング内に固定され、かつ励磁コイルを備えるモータステータと、前記励磁コイルの励磁状態に応じて回転するモータロータと、前記モータロータと直結され、前記モータロータに連動して回転するシャフトと、前記モータロータの外周と、前記モータハウジングの内側との間に配置され、前記モータロータを回転可能に支持する、第1軸受と、を含み、
前記シャフトの延びる方向に沿う軸方向に前記モータロータと前記モータステータとが、ギャップを介して対向し、
前記シャフトは、前記ピニオンギアに直結している、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの回転に連動して回転し、かつ前記ピニオンギアと連結しているピニオンシャフトと、を含み、
前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトは、前記ピニオンシャフトと連結している、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記アキシャルギャップ型電動モータは、前記ピニオンギアのピニオンエンド側に配置されている、
請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記ピニオンギアとは、異なる位置に取り付けられる第1ピニオンギアと、
ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトの回転に連動して回転し、かつ前記第1ピニオンギアと連結しているピニオンシャフトと、を含み、
前記ピニオンギアは、第2ピニオンギアであって、前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトは、前記第2ピニオンギアと直接連結している、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトの軸端側には、前記アキシャルギャップ型電動モータの動作を制御する制御装置が取り付けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトの軸端が、放熱フィンである、
請求項5に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトの軸端には、回転角度センサの部品が取り付けられている、
請求項5又は6に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記アキシャルギャップ型電動モータは、第1アキシャルギャップ型電動モータであり、
前記第1アキシャルギャップ型電動モータとは、異なる第2アキシャルギャップ型電動モータと、
ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、を含み、
前記第2アキシャルギャップ型電動モータのシャフトは、前記ステアリングシャフトと連動して回転する、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記第1軸受は、外輪と、転動体と、前記転動体を挟む内輪とを含み、
前記外輪は、前記モータハウジングの内側に固定されており、
前記内輪は、前記モータロータの外周に固定されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
前記第1軸受は、スラスト軸受である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項11】
前記シャフトを回転可能に支持する第2軸受をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項12】
モータハウジングと、
モータハウジング内に固定され、かつ励磁コイルを備えるモータステータと、
前記励磁コイルの励磁状態に応じて回転するモータロータと、
前記モータロータと直結され、前記モータロータに連動して回転するシャフトと、
前記モータロータの外周と、前記モータハウジングの内側との間に配置され、前記モータロータを回転可能に支持する、第1軸受と、
を含む、アキシャルギャップ型電動モータ。
【請求項13】
前記シャフトを回転可能に支持する第2軸受をさらに備える、請求項12に記載のアキシャルギャップ型電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置及びアキシャルギャップ型電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シングルピニオンアシスト方式又はデュアルピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置が記載されている。特許文献1の技術では、電動モータがウォーム減速機構を介して、ピニオンを回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-039032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、電動モータとピニオンとの間にウォーム減速機構が介在するため、モータ慣性がウォーム減速機構の減速比の2乗で大きくなる。ウォーム減速機構ではウォームホイールに樹脂材を使用するケースが多いため、モータ慣性に耐えられるようにウォームホイールの耐荷重が確保されなければならない。その結果、ウォーム減速機構が大きくなるとともに、製造コストを抑制し難い。
【0005】
一方、ウォーム減速機構を取り除くと、ラックアンドピニオンの噛み合いの変化がモータロータの回転に直接影響を与える可能性がある。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、部品点数を減らしても、モータロータの回転が安定する、電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、ラックバーと、前記ラックバーとかみ合うピニオンギアと、前記ピニオンギアを回転させるアキシャルギャップ型電動モータと、を含み、前記アキシャルギャップ型電動モータは、モータハウジングと、モータハウジング内に固定され、かつ励磁コイルを備えるモータステータと、前記励磁コイルの励磁状態に応じて回転するモータロータと、前記モータロータと直結され、前記モータロータに連動して回転するシャフトと、前記モータロータの外周と、前記モータハウジングの内側との間に配置され、前記モータロータを回転可能に支持する、第1軸受と、を含み、前記シャフトの延びる方向に沿う軸方向に前記モータロータと前記モータステータとが、ギャップを介して対向し、前記シャフトは、前記ピニオンギアに直結している。
【0008】
これにより、アキシャルギャップ型電動モータは、ウォーム減速機構を介さずとも、ピニオンギアを回転させることができる。モータ慣性は、ラックアンドピニオンの構造体で荷重を受けるので、ステアリング装置としては、耐荷重性の向上が見込める。そして、ステアリング装置は、部品点数の削減ができ、小型になる。ラックアンドピニオンの噛み合いの変化は、第1軸受で抑制される。その結果、モータロータ20の回転変動が小さくなり、操作者に違和感を引き起こさせにくくなる。
【0009】
望ましい態様として、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトの回転に連動して回転し、かつ前記ピニオンギアと連結しているピニオンシャフトと、を含み、前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトは、前記ピニオンシャフトと連結している。
【0010】
これにより、ウォーム減速機構がなくても、アキシャルギャップ型電動モータがピニオンシャフトへモータトルクを伝達できる。そして、ステアリング装置は、シングルピニオンアシスト方式であっても、小型になる。
【0011】
望ましい態様として、前記アキシャルギャップ型電動モータは、前記ピニオンギアのピニオンエンド側に配置されている。
【0012】
アキシャルギャップ型電動モータは、ラジアルギャップ型電動モータよりも、制御周波数を低減できるので、低周波数の演算素子でも制御設計が可能となる。その結果、制御装置のコスト削減をすることができる。
【0013】
望ましい態様として、前記ピニオンギアとは、異なる位置に取り付けられる第1ピニオンギアと、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトの回転に連動して回転し、かつ前記第1ピニオンギアと連結しているピニオンシャフトと、を含み、前記ピニオンギアは、第2ピニオンギアであって、前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトは、前記第2ピニオンギアと直接連結している。
【0014】
これにより、ウォーム減速機構がなくても、アキシャルギャップ型電動モータが第2ピニオンへモータトルクを伝達できる。そして、ステアリング装置は、デュアルピニオンアシスト方式であっても、小型になる。
【0015】
望ましい態様として、前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトの軸端側には、前記アキシャルギャップ型電動モータの動作を制御する制御装置が取り付けられている。
【0016】
アキシャルギャップ型電動モータは、径方向に大きくすることでモータトルクを稼ぐことが可能である。これにより、径方向の設置面積が広がるので、制御装置の回路基板サイズの制限が小さくなる。
【0017】
望ましい態様として、前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトの軸端が、放熱フィンである。
【0018】
アキシャルギャップ型電動モータの発熱が抑制される。
【0019】
望ましい態様として、前記アキシャルギャップ型電動モータの前記シャフトの軸端には、回転角度センサの部品が取り付けられている。
【0020】
シャフトの延びる方向に沿う軸方向の大きさが抑制できる。
【0021】
望ましい態様として、前記アキシャルギャップ型電動モータは、第1アキシャルギャップ型電動モータであり、前記第1アキシャルギャップ型電動モータとは、異なる第2アキシャルギャップ型電動モータと、
ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトと、を含み、前記第2アキシャルギャップ型電動モータのシャフトは、前記ステアリングシャフトと連動して回転する。
【0022】
望ましい態様として、前記第1軸受は、外輪と、転動体と、前記転動体を挟む内輪とを含み、前記外輪は、前記モータハウジングの内側に固定されており、前記内輪は、前記モータロータの外周に固定されている。
【0023】
この構造によれば、モータロータの外周が第1軸受に回転可能に支持されているので、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとの噛み合い変動を抑制し、モータロータとモータステータとの間のギャップの変動を抑制することができる。
【0024】
望ましい態様として、前記第1軸受は、スラスト軸受である。
【0025】
この構造によれば、モータロータの軸方向の変動が抑制されるので、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとの噛み合い変動を抑制し、モータロータとモータステータとの間のギャップの変動を抑制することができる。
【0026】
望ましい態様として、前記シャフトを回転可能に支持する第2軸受をさらに備える。
【0027】
この構造によれば、ラックアンドピニオンの噛み合いの変化は、第1軸受及び第2軸受で抑制される。
【0028】
上記の目的を達成するため、他の態様に係るアキシャルギャップ型電動モータは、モータハウジングと、モータハウジング内に固定され、かつ励磁コイルを備えるモータステータと、前記励磁コイルの励磁状態に応じて回転するモータロータと、前記モータロータと直結され、前記モータロータに連動して回転するシャフトと、前記モータロータの外周と、前記モータハウジングの内側との間に配置され、前記モータロータを回転可能に支持する、第1軸受と、を含む。
【0029】
この構造によれば、モータロータの外周が第1軸受に回転可能に支持されているので、シャフトの軸方向に外部から力が入っても、モータロータの振れ周りが抑制される。
【0030】
望ましい態様として、前記シャフトを回転可能に支持する第2軸受をさらに備える。
【0031】
この構造によれば、第1軸受及び第2軸受により、シャフトの軸方向に外部から力が入っても、さらにモータロータの振れ周りが抑制される。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、部品点数を減らしても、モータロータの回転が安定する、電動パワーステアリング装置及びアキシャルギャップ型電動モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施形態1の電動パワーステアリング装置を説明するための模式図である。
図2図2は、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。
図3図3は、比較例のラジアルギャップ型電動モータを説明するための模式図である。
図4図4は、比較例のラジアルギャップ型電動モータにおいて、モータ回転数とモータトルクとの関係の例を概念的に説明するための説明図である。
図5図5は、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータにおいて、モータ回転数とモータトルクとの関係の例を概念的に説明するための説明図である。
図6図6は、実施形態1の変形例のアキシャルギャップ型電動モータを説明するための模式図である。
図7図7は、実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。
図8図8は、実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータのシャフトの軸端部を説明するための説明図である。
図9図9は、実施形態2の変形例のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。
図10図10は、実施形態3の電動パワーステアリング装置を説明するための模式図である。
図11図11は、実施形態3のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。
図12図12は、実施形態3の変形例のアキシャルギャップ型電動モータを説明するための模式図である。
図13図13は、実施形態4の電動パワーステアリング装置を説明するための模式図である。
図14図14は、実施形態4のアキシャルギャップ型電動モータ及び操舵反力発生装置を説明するための模式図である。
図15図15は、実施形態5のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0035】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電動パワーステアリング装置を説明するための模式図である。図2は、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、ピニオンシャフト87と、ステアリングギア88と、タイロッド89とを備える。また、ステアリング装置80は、制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)90と、トルクセンサ91aと、アキシャルギャップ型電動モータ1を備える。車速センサ91bは、車両に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU90に出力する。
【0036】
ステアリングシャフト82は、一方の端部でステアリングホイール81に連結され、他方の端部でユニバーサルジョイント84に連結される。
【0037】
ロアシャフト85は、一方の端部でユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部でユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部でユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部でトルクセンサ91aに連結される。トルクセンサ91aは、一方の端部でピニオンシャフト87に連結され、他方の端部でアキシャルギャップ型電動モータ1のシャフト25(図2参照)に連結されている。
【0038】
ステアリングギア88は、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとを備える。第1ピニオンギア88aは、ピニオンシャフト87に連結される。ラックバー88bは、第1ピニオンギア88aに噛み合う。ステアリングギア88は、第1ピニオンギア88aに伝達された回転運動をラックバー88bで直進運動に変換する。タイロッド89は、ラックバー88bに連結される。すなわち、ステアリング装置80は、ラックアンドピニオン式である。
【0039】
アキシャルギャップ型電動モータ1は、例えばブラシレスモータであるが、ブラシ(摺動子)及びコンミテータ(整流子)を備えるモータであってもよい。図2に示すように、アキシャルギャップ型電動モータ1は、ウォーム減速装置を介さず、第1ピニオンギア88aを回転できる。すなわち、ステアリング装置80は、シングルピニオン方式である。
【0040】
トルクセンサ91aは、ステアリングホイール81を介してステアリングシャフト82に伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ91bは、ステアリング装置80が搭載される車両の走行速度(車速)を検出する。アキシャルギャップ型電動モータ1と、トルクセンサ91aと、車速センサ91bとがECU90に、電気的に接続される。
【0041】
ECU90は、アキシャルギャップ型電動モータ1の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ91a及び車速センサ91bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ91aから操舵トルクTを取得し、かつ車速センサ91bから車両の車速信号Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいてアキシャルギャップ型電動モータ1へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、アキシャルギャップ型電動モータ1から誘起電圧の情報又はアキシャルギャップ型電動モータ1に設けられたレゾルバ等の回転検出装置から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
【0042】
ステアリングホイール81に入力された操作者(運転者)の操舵力は、トルクセンサ91aに伝わる。このとき、ECU90は、操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、かつ車速信号Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、アキシャルギャップ型電動モータ1の動作を制御する。アキシャルギャップ型電動モータ1が作り出した補助操舵トルクは、第1ピニオンギア88aに伝達される。
【0043】
第1ピニオンギア88aに伝達された操舵力は、ステアリングギア88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。
【0044】
図2に示すように、アキシャルギャップ型電動モータ1は、モータハウジング15と、モータステータ10と、軸受16と、軸受50と、シャフト25と、モータロータ20とを備える。モータハウジング15は、ピニオンハウジング88s及びラックハウジング88hと連結されている。ピニオンハウジング88sは、第1ピニオンギア88aを収容している。ラックハウジング88hは、ラックバー88bを収容している。モータステータ10は、モータハウジング15の内部に配置され、モータハウジング15に固定されている。モータステータ10は、ステータコア11と、励磁コイル12とを備える。ステータコア11は、電磁鋼板を重ねて形成されている。
【0045】
シャフト25は、軸受16を介して、モータハウジング15に対し回転可能に支持されている。モータロータ20は、シャフト25に固定されており、モータロータ20の回転に応じて、シャフト25も回転する。モータロータ20は、ロータコア21と、マグネット22を備える。ロータコア21は、電磁鋼板を重ねて形成されている。ロータコア21は、円板状である。マグネット22は、サマリウムコバルト、ネオジム系磁石等で形成されている。実施形態1では、モータロータ20が1枚であるが、モータステータ10と、モータロータ20とを軸方向に交互に配置して、モータロータ20を複数配置してもよい。これにより、配置スペースが大きくなるが、モータロータ20を複数配置することで、トルクが大きくなる。
【0046】
軸受50は、外輪51と、複数の転動体53と、転動体53を挟む内輪52とを含む。内輪52は、モータロータ20の外周に固定され、モータロータ20の回転に連動して、回転可能である。外輪51は、モータハウジング15の内側に固定されている。モータロータ20の外周が軸受50に回転可能に支持されているので、シャフト25の軸方向に外部から力が入っても、モータロータ20の振れ周りが抑制される。モータロータ20の外周が軸受50に回転可能に支持されているので、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとの噛み合い変動を抑制し、モータロータ20とモータステータ10との間のギャップの変動を抑制することができる。
【0047】
シャフト25の延びる方向に沿う方向を軸方向とすると、モータロータ20は、2つのモータステータ10に挟まれ、軸方向にモータロータ20とモータステータ10とが、ギャップを介して対向している。このような構造によれば、互いのモータステータ10の励磁する磁界の位相をずらし、又はマグネットにスキューを考慮した異形することができる。これにより、比較例のラジアルギャップ型電動モータのスキュー溝のように複雑な構造をとらなくても、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1は、モータロータ20のトルクの変動を抑制できる。
【0048】
自動車製品では、機能継続の要求よりシステムの冗長系を設計することが実践されている。比較例のラジアルギャップ型電動モータでは、3相電流で制御する構造の制約から、コイルを3の倍数で多極化することで、冗長化することが行われている。また、比較例のラジアルギャップ型電動モータでは、一つの固定子に複数の(冗長系の3相電流)が流れるため、それぞれの電流制御では、相互インダクタンスの影響を考慮した設計が必要である。これに対して、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1では、1つのモータロータ20に対して、2つのモータステータ10が作用するので、一方のモータステータ10が機能しなくなっても、他方のモータステータ10が機能すれば、機能継続できる。さらに、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1では、複数のモータステータ10のそれぞれを独立して制御することが可能である。そのため、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1では、比較例のラジアルギャップ型電動モータと比較して、相互インダクタンスの影響が小さい。
【0049】
実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1において、レゾルバ30が、シャフト25の回転を検出する。レゾルバ30は、レゾルバロータ31と、レゾルバステータ32を含む。シャフト25の周りには、レゾルバロータ31が取り付けられている。レゾルバロータ31は、支持部材35に取り付けられたレゾルバステータ32と、ギャップを介して径方向に対向している。
【0050】
レゾルバステータ32は、複数のステータ磁極が円周方向に等間隔に形成された環状の積層鉄心を有し、各ステータ磁極にレゾルバコイルが巻回されている。レゾルバロータ31は、中空環状の積層鉄心により構成されている。モータロータ20が回転すると、モータロータ20と共にシャフト25が回転し、連動してレゾルバロータ31も回転する。これにより、レゾルバロータ31と、レゾルバステータ32との間のリラクタンスが連続的に変化し、シャフト25の回転が検出される。
【0051】
ECU90は、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1とトルクセンサ91aとの間にある。レゾルバ30、ECU90の回路基板90a及びトルクセンサ91aは、ECU90の筐体95内に、収容されている。これにより、トルクセンサ91aの筐体は簡略化できるので、部品点数を削減できる。また、回路基板90aとレゾルバ30を結ぶハーネス、回路基板90aとトルクセンサ91aとを結ぶハーネスを短くすることができるので、電磁的ノイズ耐性が向上する。特許文献1のように、ウォーム減速機構の側面に、ECU90の筐体95を配置しなくてよいので、実施形態1のステアリング装置80のレイアウト性が向上する。なお、図2において、回転検出装置であるレゾルバ30は、トルクセンサ91aとモータハウジング15との間の配置に限定されず、第1ピニオンギア88aと、軸受16との間、又は第1ピニオンギア88aのピニオンエンド側であってもよい。
【0052】
図3は、比較例のラジアルギャップ型電動モータを説明するための模式図である。図4は、比較例のラジアルギャップ型電動モータにおいて、モータ回転数とモータトルクとの関係の例を概念的に説明するための説明図である。図5は、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータにおいて、モータ回転数とモータトルクとの関係の例を概念的に説明するための説明図である。図4及び図5に示すモータ回転数とモータトルクとの関係は、あくまで理想的なカーブであり、概念的に関係を示す曲線を示したものである。
【0053】
図3に示すように、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200は、モータロータとモータステータとは、径方向にギャップを介して対向している。比較例のラジアルギャップ型電動モータ200と、実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1とで同じ出力を得る場合、磁石の使用量を同じとすると、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200よりも実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1の方が体積を約30%低減することができる。特に、軸方向の大きさは、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200よりも実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1の方が半減できるとすると、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200と同等の軸方向の大きさを有する実施形態1のアキシャルギャップ型電動モータ1は、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200よりも約2倍の出力トルクを得ることができる。
【0054】
図4に示すように、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200がウォーム減速機構を介して、モータトルクを発生させている場合、モータ回転数は例えば1000rpmから2500rpmとなり、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200のモータロータを高速回転させる。比較例のラジアルギャップ型電動モータ200が高速回転するには、マグネット22の多極対数化が有効である。マグネット22の多極対数化を進めると、制御周波数は最低でも4~10kHzにまで要求されている。ただし、この制御周波数を満足に運用できる演算素子(特に自動車製品用の演算素子)は市場には少なく高コスト化しやすい傾向にある。
【0055】
これに対して、図5に示すように、アキシャルギャップ型電動モータ1では、ウォーム減速機構を介さずとも、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200よりも低速回転で、大きなモータトルクが発生する。アキシャルギャップ型電動モータ1では、制御周波数を1/10~1/20まで低減できる。これにより低周波数の演算素子でも制御設計が可能となるため、ECU90(図1参照)のコスト削減も見込まれる。
【0056】
以上説明したように、ステアリング装置80は、ラックバー88bと、ラックバー88bとかみ合う第1ピニオンギア88aと、第1ピニオンギア88aを回転させるアキシャルギャップ型電動モータ1と、を含む。アキシャルギャップ型電動モータ1は、励磁コイル12を備えるモータステータ10と、励磁コイル12の励磁状態に応じて回転するモータロータ20と、モータロータ20と直結され、モータロータ20に連動して回転するシャフト25と、シャフト25を回転可能に支持する軸受16(第2軸受)と、モータロータ20の外周と、モータハウジング15の内側との間に配置され、モータロータ20を回転可能に支持する、軸受50(第1軸受)と、を含む。そして、シャフト25の延びる方向に沿う軸方向にモータロータ20とモータステータ10とが、ギャップを介して対向している。また、シャフト25は、第1ピニオンギア88aに直結している。シャフト25は、第1ピニオンギア88aと同軸で回転する。なお、軸受16(第2軸受)は、2つあり、軸受16(第2軸受)は、第1ピニオンギア88a側と、ピニオンシャフト87側のそれぞれに設けられ、シャフト25を回転可能に支持する。アキシャルギャップ型電動モータ1は、軸受50(第1軸受)を備えるので、2つの、軸受16(第2軸受)のうち1つを省略してもよい。このとき、第1ピニオンギア88a側の軸受16(第2軸受)を省略することが、シャフト25の回転の安定上、好ましい。
【0057】
これにより、アキシャルギャップ型電動モータ1は、ウォーム減速機構を介さずとも、第1ピニオンギア88aを回転させることができる。モータ慣性は、ラックアンドピニオンの構造体で荷重を受けるので、ステアリング装置80としては、耐荷重性の向上が見込める。そして、ステアリング装置80は、部品点数の削減ができ、小型になる。ウォーム減速機構を取り除くと、ラックアンドピニオンの噛み合いの変化がモータロータの回転に直接影響を与える可能性があるが、ラックアンドピニオンの噛み合いの変化は、軸受16及び軸受50で抑制される。その結果、モータロータ20の回転変動が小さくなり、操作者に違和感を引き起こさせにくくなる。
【0058】
アキシャルギャップ型電動モータ1は、ギャップはシャフト25と直交する平面に存在するため、比較例のラジアルギャップ型電動モータ200に比べて、モータステータ10とモータロータ20との同軸度の設計要求は低くなる。このため、ピニオンハウジング88sとモータハウジング15を一体で成形し、モータステータ10とモータロータ20との間のギャップを管理して組み立てることが可能となる。アキシャルギャップ型電動モータ1では、磁石の材料や、磁極のレイアウトなどの種々の工夫により、さらにトルクの増加を見込むことができる。
【0059】
(実施形態1の変形例)
図6は、実施形態1の変形例のアキシャルギャップ型電動モータを説明するための模式図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態1の変形例のアキシャルギャップ型電動モータ1Aでは、モータロータ20が複数あり、2つモータロータ20が軸方向にギャップを介して、モータステータ10を挟む。軸方向に、モータロータ20を増やすことにより、モータトルクを増加させることができる。
【0060】
(実施形態2)
図7は、実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。なお、上述した実施形態1及び変形例で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0061】
実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータ1Bは、第1ピニオンギア88aのピニオンエンド側に配置されている。トルクセンサ91aは、一方の端部でピニオンシャフト87に連結され、他方の端部で第1ピニオンギア88aに連結されている。これにより、シャフト25は、一方の端部で第1ピニオンギア88aに連結され、他方の軸端部は、トルクセンサ91aに連結されない。その結果、モータハウジング15の他方の軸端部側に、ECU90を固定配置できる。
【0062】
比較例のラジアルギャップ型電動モータは軸長を長くすることでモータトルクを稼ぐことが可能である。ただし、重量の制限があることから、体積を抑えるため、径方向は細くなる傾向にある。そのため、モータの軸端部にECU90を配置しようとすると、回路基板90aのサイズは限定される。これにより、多くの場合、ECU90の回路基板90aを立体的に設計しなければならないため、回路の設計条件はとても厳しいものとなる。これに対し、アキシャルギャップ型電動モータ1Bは、径方向に大きくすることでモータトルクを稼ぐことが可能である。つまり、ECU90の設置面積を広く設けることができるため、回路基板90aのサイズ制限は緩くなる。
【0063】
実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータ1Bは、レゾルバ30が、シャフト25の回転を検出する。レゾルバ30は、レゾルバロータ31と、レゾルバステータ32を含む。シャフト25の他方の軸端部には、レゾルバロータ31が取り付けられている。レゾルバロータ31は、支持部材35に取り付けられたレゾルバステータ32と、ギャップを介して径方向に対向している。この構造により、ステアリング装置80の軸方向の大きさは抑制される。また、実施形態1と比較して、トルクセンサ91aと、レゾルバ30との距離が離れることから、トルクセンサ91aとレゾルバ30とが相互に干渉しにくくなる。なお、図7において、回転検出装置であるレゾルバ30は、トルクセンサ91aと第1ピニオンギア88aとの間、第1ピニオンギア88aと、軸受16との間に配置されてもよい。
【0064】
第1ピニオンギア88aは、ピニオンハウジング88sの内部の軸受17、実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータ1Bの2つの軸受16、及び軸受50で回転可能に支持される。この構造により、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとの噛み合い変動が抑制される。
【0065】
図8は、実施形態2のアキシャルギャップ型電動モータのシャフトの軸端部を説明するための説明図である。シャフト25の軸方向の軸端部は、放熱性が高いことが望ましい。図8に示すように、実施形態2のシャフト25は、軸方向の軸端部に、溝25Sと、溝25Sの底よりも軸方向に突出する凸部25Pとを備える。溝25S及び凸部25Pは、放熱フィンを構成し、放熱性を高める。
【0066】
以上説明したように、ステアリング装置80は、ラックバー88bと、ラックバー88bとかみ合う第2ピニオンギア88eと、第2ピニオンギア88eを回転させるアキシャルギャップ型電動モータ1Bと、を含む。アキシャルギャップ型電動モータ1Bは、励磁コイル12を備えるモータステータ10と、励磁コイル12の励磁状態に応じて回転するモータロータ20と、モータロータ20と直結され、モータロータ20に連動して回転するシャフト25と、を含む。そして、シャフト25の延びる方向に沿う軸方向にモータロータ20とモータステータ10とが、ギャップを介して対向している。また、シャフト25は、第2ピニオンギア88eに直結している。
【0067】
これにより、アキシャルギャップ型電動モータ1Bは、ウォーム減速機構を介さずとも、第2ピニオンギア88eを回転させることができる。モータ慣性は、ラックアンドピニオンの構造体で荷重を受けるので、ステアリング装置80としては、耐荷重性の向上が見込める。そして、ステアリング装置80は、部品点数の削減ができ、小型になる。
【0068】
(実施形態2の変形例)
図9は、実施形態2の変形例のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。なお、上述した実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態2の変形例のアキシャルギャップ型電動モータ1Cでは、シャフト25の軸端部に回転検出用磁石90mを有している。回転検出用磁石90mの半分がS極、半分がN極に着磁されている。
【0069】
回転検出用磁石90mの軸方向に対向する位置に、センサ基板90bに実装された回転角度センサ90sが配置される。回転角度センサ90sは、回転検出用磁石90mの回転を検出可能であればよい。回転角度センサ90sは、例えば、スピンバルブセンサである。スピンバルブセンサは、反強磁性層等で磁化の向きが固定された強磁性体のピン層と、強磁性体のフリー層とで非磁性層を挟んだ素子で、磁束の向きの変化を検出できるセンサである。スピンバルブセンサには、GMR(Giant Magneto Resistance)センサ、TMR(Tunnel Magneto Resistance)センサがある。例えば、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)センサ、又はホールセンサでもよい。
【0070】
以上の構造によれば、シャフト25と沿う軸方向の大きさが抑制される。その結果、ステアリング装置80のレイアウト性が向上する。
【0071】
(実施形態3)
図10は、実施形態3の電動パワーステアリング装置を説明するための模式図である。図11は、実施形態3のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。なお、上述した実施形態1、実施形態2及びこれらの変形例で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0072】
実施形態3のステアリング装置80は、第1ピニオンギア88aに加え、第2ピニオンギア88eを備える。実施形態3のステアリング装置80は、デュアルピニオンアシスト方式である。トルクセンサ91aは、第1ピニオンギア88aに取り付けられている。トルクセンサ91aは、第1ピニオンギア88aに伝達された操舵トルクをECU90に出力する。
【0073】
図11に示すように、アキシャルギャップ型電動モータ1Dは、ウォーム減速装置を介さず、第2ピニオンギア88eを回転できる。第2ピニオンギア88eは、ラックバー88bに対し、直交配置であってもよく、直交からずれた斜交配置であってもよい。
【0074】
ステアリングホイール81に入力された操作者(運転者)の操舵力は、トルクセンサ91aに伝わる。このとき、ECU90は、操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、かつ車速信号Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、アキシャルギャップ型電動モータ1の動作を制御する。アキシャルギャップ型電動モータ1が作り出した補助操舵トルクは、第2ピニオンギア88eに伝達される。第2ピニオンギア88eは、アシストピニオンギアとも言える。
【0075】
アキシャルギャップ型電動モータ1Dは、ピニオンシャフト87に連結されていないので、ラックハウジング88hの周りの配置の制約が少ない。第2ピニオンギア88eは、ラックバー88bの延びる方向に直交する配置及びラックバー88bの延びる方向に直交する配置のどちらでもよい。
【0076】
アキシャルギャップ型電動モータ1Dは、ウォーム減速装置を介さず、第2ピニオンギア88eを回転できる。このため、ウォーム減速装置の部品点数の削減をすることができる。
【0077】
(実施形態3の変形例)
図12は、実施形態3の変形例のアキシャルギャップ型電動モータを説明するための模式図である。上述した実施形態1、実施形態2、これらの変形例、及び実施形態3で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態3の変形例のアキシャルギャップ型電動モータ1Eでも、ウォーム減速装置を介さず、第2ピニオンギア88eを回転できる。
【0078】
シャフト25は、一方の端部で第1ピニオンギア88aに連結され、他方の軸端部は、トルクセンサ91aに連結されない。その結果、モータハウジング15の他方の軸端部側に、ECU90を固定配置できる。
【0079】
(実施形態4)
図13は、実施形態4の電動パワーステアリング装置を説明するための模式図である。図14は、実施形態4のアキシャルギャップ型電動モータ及び操舵反力発生装置を説明するための模式図である。実施形態1、実施形態2、実施形態3及びこれらの変形例、実施形態3で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0080】
ステアリング装置80は、運転者が操舵を行う操舵反力生成装置(FFA:Force Feedback Actuator)40と、車両の舵を切るタイヤ転舵装置(RWA:Road Wheel Actuator)60とを有している。操舵反力生成装置40と、タイヤ転舵装置60とが機械的に分離されている。そして、操舵反力生成装置40とタイヤ転舵装置60とがECU90を介して電気的に接続され、電気信号によって操舵反力生成装置40とタイヤ転舵装置60と間の制御が行われる。このため、実施形態4のステアリング装置80は、ステアバイワイヤ(SBW:Steer By Wire)式とよばれる。
【0081】
タイヤ転舵装置60は、ステアリングギア88と、アキシャルギャップ型電動モータ1D(第1アキシャルギャップ型電動モータ)とを備える。実施形態3で説明したように、図11に示すアキシャルギャップ型電動モータ1Dは、ウォーム減速装置を介さず、第2ピニオンギア88eを回転できる。
【0082】
操舵反力生成装置40は、トルクセンサ91aと、舵角センサ91cと、アキシャルギャップ型電動モータ1F(第2アキシャルギャップ型電動モータ)とを備える。舵角センサ91cは、ステアリングホイール81の操舵角θを検出する。
【0083】
ステアリングホイール81に入力された操作者(運転者)の操舵力は、トルクセンサ91a及び舵角センサ91cに伝わる。このとき、ECU90は、操舵トルクTをトルクセンサ91aから取得し、操舵角θを舵角センサ91cから取得し、かつ車速信号Vを車速センサ91bから取得する。そして、ECU90は、アキシャルギャップ型電動モータ1D及びアキシャルギャップ型電動モータ1Fの動作を制御する。アキシャルギャップ型電動モータ1Dが作り出した補助操舵トルクは、第2ピニオンギア88eに伝達される。
【0084】
ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクT、操舵角θ及び車速信号Vに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいてアキシャルギャップ型電動モータ1Dへ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、アキシャルギャップ型電動モータ1Dから誘起電圧の情報又はアキシャルギャップ型電動モータ1Dに設けられたレゾルバ等の回転検出装置から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
【0085】
ECU90は、動作情報Yに基づいて、車両の運動状態に応じてた反力トルクを演算する。ECU90は、反力トルクに基づいてアキシャルギャップ型電動モータ1Dへ供給する電力値Zを調節する。電力値Zに応じて、アキシャルギャップ型電動モータ1Fが動作し、操作者には、ステアリングホイール81の反力が伝達される。
【0086】
ステアリングシャフト82と、アキシャルギャップ型電動モータ1Fのシャフト25は、ウォーム減速装置を介さず、連結されている。このため、アキシャルギャップ型電動モータ1Fは、ウォーム減速装置を介さず、第2ピニオンギア88eを回転できる。
【0087】
操舵反力生成装置40では、ウォーム減速機構を介して電動モータからの反力がステアリングホイール81へ伝達されていない。このため、ウォーム減速機構のバックラッシュに起因した、切り出し又は切り返し時のトルク変動や歯打ち音が発生する可能性が小さくなる。そして、操舵反力生成装置40では、アキシャルギャップ型電動モータ1Fからの反力が直接操作者に伝達されることで、ドライバーに違和感を与えにくい。
【0088】
(実施形態5)
図15は、実施形態5のアキシャルギャップ型電動モータ及びラックギアを説明するための模式図である。実施形態1、実施形態2、実施形態3、実施形態4及びこれらの変形例で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0089】
図15に示すように、アキシャルギャップ型電動モータ1Gは、モータハウジング15と、モータステータ10と、軸受16と、軸受50Aと、シャフト25と、モータロータ20とを備える。
【0090】
軸受50Aは、保持器55と、保持器55の内部に保持される複数の転動体56と、転動体56を軸方向両側から挟む軌道盤54とを含む。保持器55は、モータロータ20の外周に固定され、モータロータ20の回転に連動して、回転可能である。軌道盤54は、モータハウジング15の内側に固定されている。
【0091】
軸受50Aは、スラスト軸受であり、軸方向の荷重を受けることができる。モータロータ20は、シャフト25に固定されており、シャフト25は、第1ピニオンギア88aに直結している。第1ピニオンギア88aが回転すると、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとの噛み合いの変動で、シャフト25は、シャフト25の延びる方向に沿う軸方向に、荷重を受けることがある。軸受50Aは、第1ピニオンギア88aと、ラックバー88bとの噛み合い変動を抑制し、モータロータ20とモータステータ10との間のギャップの変動を抑制することができる。
【0092】
軸受50Aは、スラスト軸受であれば、上述したスラスト玉軸受の他に、スラストアンギュラ玉軸受であってもよい。上述した実施形態5の説明は、実施形態1の軸受50を軸受50Aとしてものであるが、実施形態2、実施形態3、実施形態4及びこれらの変形例の軸受50を軸受50Aとしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F アキシャルギャップ型電動モータ
10 モータステータ
11 ステータコア
12 励磁コイル
15 モータハウジング
16、17 :軸受
20 モータロータ
21 ロータコア
22 マグネット
25 シャフト
40 操舵反力生成装置
50、50A 軸受
51 外輪
52 内輪
53、56 転動体
54 軌道盤
55 保持器
60 タイヤ転舵装置
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
87 ピニオンシャフト
88 ステアリングギア
88a 第1ピニオンギア
88b ラックバー
88e 第2ピニオンギア
88h ラックハウジング
88s ピニオンハウジング
89 タイロッド
90 ECU
90a 回路基板
90b センサ基板
90m 回転検出用磁石
90s 回転角度センサ
91a トルクセンサ
91b 車速センサ
91c 舵角センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15