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▶ ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080074
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】抗TREM-1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230601BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230601BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230601BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230601BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P1/04
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P13/12
A61P17/00
A61P9/00
A61P31/04
A61P29/00
A61P3/10
A61P25/00
A61P11/00
A61P37/08
A61P11/06
A61K35/12
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K45/00
A61K47/68
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/02
C12N15/13
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039342
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2020553642の分割
【原出願日】2019-04-01
(31)【優先権主張番号】62/651,605
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】パシン アチャル
(72)【発明者】
【氏名】ゴスラン マイケル エル
(72)【発明者】
【氏名】ヤムニウク アーロン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ デレック エー
(72)【発明者】
【氏名】チェン グオドン
(72)【発明者】
【氏名】マディア プリヤンカ アプルヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン リチャード ユチェン
(72)【発明者】
【氏名】カール スティーブン マイケル
(57)【要約】
【課題】TREM-1に特異的に結合してTREM-1機能を阻害することができるが、初期の抗TREM-1抗体の問題点を有さない、抗TREM-1抗体が必要とされている。
【解決手段】TREM-1に特異的に結合してTREM-1シグナル伝達を阻害する抗体またはその抗原結合部分が提供され、これらの抗体は、1つ以上のFcγRに結合せず、炎症性サイトカインを産生するようにミエロイド細胞を誘導しない。治療適用、例えば、自己免疫性疾患の処置における、かかる抗体またはその抗原結合部分の使用もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含む、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体-1(TREM-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記IgG1重鎖定常領域が、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体。
【請求項2】
重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1を遮断するための結合についてmAb 0318と交差競合する単離された抗体であって、前記IgG1重鎖定常領域が、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体。
【請求項3】
mAb 0318と同じTREM-1エピトープに結合する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号1のD38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44、L45、E46、K47、F48、A49、S50、S51、Q52、K53、A54、W55、Q56、Y90、H91、D92、H93、G94、L95およびL96からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基を含むTREM-1エピトープに特異的に結合する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸D38~L45、E46~Q56および/またはY90~L96を含むTREM-1エピトープに特異的に結合する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、A330S、P331S、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離された抗体。
【請求項10】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体であって、前記重鎖CDR3が、DMGIRRQFAY(配列番号26)または1つもしくは2つの置換を除いたDMGIRRQFAY(配列番号26)を含む、抗体。
【請求項11】
前記重鎖CDR3が、DQGIRRQFAY(配列番号72)を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体であって、前記重鎖CDR2が、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)または1つもしくは2つの置換を除いたRIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)を含む、抗体。
【請求項13】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体であって、前記重鎖CDR1が、TYAMH(配列番号24)または1つもしくは2つの置換を除いたTYAMH(配列番号24)を含む、抗体。
【請求項14】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の抗体であって、前記軽鎖CDR1が、RASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)または1つもしくは2つの置換を除いたRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)を含む、抗体。
【請求項15】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体であって、前記軽鎖CDR2が、RASNLES(配列番号28)または1つもしくは2つの置換を除いたRASNLES(配列番号28)を含む、抗体。
【請求項16】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗体であって、前記軽鎖CDR3が、QQSNQDPYT(配列番号29)または1つもしくは2つの置換を除いたQQSNQDPYT(配列番号29)を含む、抗体。
【請求項17】
前記VHが、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
前記VLが、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項19】
重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗体であって、前記VHが配列番号14を含み、前記VLが配列番号15を含む、抗体。
【請求項20】
重鎖および軽鎖を含む、請求項19に記載の抗体であって、前記重鎖が、配列番号50、配列番号51、配列番号52または配列番号53を含む、抗体。
【請求項21】
重鎖および軽鎖を含む、請求項20に記載の抗体であって、前記軽鎖が、配列番号54を含む、抗体。
【請求項22】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、L234A、L235EおよびG237Aからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、
抗体。
【請求項23】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、
抗体。
【請求項24】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、
抗体。
【請求項25】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、
抗体。
【請求項26】
TREM-1が、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項27】
配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、またはそれらの任意の組み合わせに対する減少した結合親和性を有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項28】
配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)に対する、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下または10分の1以下に減少した結合親和性を有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項29】
配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、免疫原性が低い、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項30】
TREM-1への結合の際に、刺激因子の非存在下で、TREM-1シグナル伝達をアゴナイズしない、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項31】
未成熟樹状細胞(iDC)を前記抗体の存在下かつ刺激因子の非存在下でインキュベートした場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、前記細胞における炎症性サイトカインの発現を誘導しない、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項32】
細胞を前記抗体および刺激因子の両方の存在下で活性化した場合に、前記細胞における炎症性サイトカインの産生を遮断する、請求項1~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項33】
前記刺激因子がTREM-1リガンドである、請求項30~31のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項34】
前記炎症性サイトカインが、IL-6、TNF-α、IL-8、IL-1β、IL-12、キチナーゼ-3様タンパク質1(CHI3L1)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項31または32に記載の抗体。
【請求項35】
pH依存的様式で、ヒトFcRn、カニクイザルFcRnおよび/またはマウスFcRnに結合する、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項36】
キャピラリー示差走査熱量計(CAP-DSC)によって測定した場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む参照抗体と比較して、より熱的に安定である、請求項1~35のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項37】
前記抗体の約10%~20%、約20%~30%(例えば、24%)または約30%~40%が、77℃に加熱した場合に可逆的である、請求項1~36のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項38】
配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、より高い融解温度(Tm)を有する、請求項36または37に記載の抗体。
【請求項39】
80mg/mLの濃度で、5cP未満、4cP未満、3cP未満、2.5cP未満、2.4cP未満、2.3cP未満、2.2cP未満、2.1cP未満、2cP未満、1.9cP未満、1.8cP未満、1.7cP未満、1.6cP未満、1.5cP未満、1.4cP未満、1.3cP未満、1.2cP未満、1.1cP未満、1.0cP未満、0.9cP未満、0.8cP未満、0.7cP未満、0.6cP未満、0.5cP未満、0.4cP未満、0.3cP未満、0.2cP未満または0.1cP未満の粘度を有する、請求項1~38のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項40】
130mg/mLの濃度で、10cP未満(例えば、9cP)の粘度を有する、請求項1~38のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項41】
Biacoreによって測定した場合に、4nM未満(例えば、3.4nM)のKDでヒトTREM-1に結合する、請求項1~40のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項42】
Biacoreによって測定した場合に、1nM未満(例えば、0.91nM)のKDでカニクイザルTREM-1に結合する、請求項1~41のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項43】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって観察した場合に、モノマーである、請求項1~42のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項44】
2次元液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(2D-LC/MS)、または液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS)を使用するインタクト質量分析によって観察した場合に、断片化の最小のリスクを示す、請求項1~43のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項45】
8~9(例えば、8.75)の等電点を有する、請求項1~44のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項46】
ヒスチジン、スクロース、アルギニンおよびNaClを含む製剤中で安定である、請求項1~45のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項47】
20mMのヒスチジン、150mMのスクロース、25mMのアルギニンおよび50mMのNaClを含む製剤中で少なくとも2ヶ月間にわたって安定である、請求項46に記載の抗体。
【請求項48】
前記製剤が、6.0のpHである、および/または前記製剤が、4℃、25℃もしくは40℃で貯蔵される、請求項46または47に記載の抗体。
【請求項49】
第2の結合特異性を有する分子に連結された請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体を含む二特異性分子。
【請求項50】
請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項51】
請求項50に記載の核酸を含むベクター。
【請求項52】
請求項51に記載のベクターを含む細胞。
【請求項53】
薬剤に連結された請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体を含むイムノコンジュゲート。
【請求項54】
請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体、請求項49に記載の二特異性分子、請求項50に記載の核酸、請求項51に記載のベクター、請求項52に記載の細胞または請求項53に記載のイムノコンジュゲート、および担体を含む、組成物。
【請求項55】
請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体、請求項49に記載の二特異性分子、請求項50に記載の核酸、請求項51に記載のベクター、請求項52に記載の細胞または請求項53に記載のイムノコンジュゲート、および使用のための指示書を含む、キット。
【請求項56】
請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体、請求項49に記載の二特異性分子、請求項50に記載の核酸、請求項51に記載のベクター、請求項52に記載の細胞または請求項53に記載のイムノコンジュゲートを対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象においてTREM-1活性を阻害する方法。
【請求項57】
請求項1~48のいずれか1項に記載の抗体、請求項49に記載の二特異性分子、請求項50に記載の核酸、請求項51に記載のベクター、請求項52に記載の細胞または請求項53に記載のイムノコンジュゲートを対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象において炎症性疾患または自己免疫性疾患を処置する方法。
【請求項58】
前記炎症性疾患または前記自己免疫性疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、血管炎、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アレルギー、喘息、急性炎症または慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
1つ以上のさらなる治療薬を投与するステップをさらに含む、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記さらなる治療薬が、抗IP-10抗体または抗TNF-α抗体である、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
EFS-Webを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願と共に提出された、ASCIIテキストファイル(名称:3338_092PC01_SeqListing.txt;サイズ:106,162バイト;および作成日:2019年3月27日)で電子的に提出された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
TREM-1は、単球、マクロファージおよび好中球上で発現される活性化受容体である。これらの細胞は、炎症を駆動するサイトカインおよび他のメディエーターを放出することによって、慢性炎症性疾患において中心的な役割を果たす。TREM-1のmRNAおよびタンパク質発現は、関節リウマチ(rheumatic arthritis)(RA)および炎症性腸疾患(IBD)を有する患者において上方調節され、TREM-l陽性細胞は、疾患の重症度と相関して、炎症の部位において蓄積する。Bouchon et al., Nature 410:1103-1107 (2001);Schenk et al., Clin Invest 117:3097-3106 (2007);およびKuai et al., Rheumatology 48:1352-1358 (2009)を参照のこと。活性化された好中球によって主に発現されるペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)は、TREM-1のリガンドであり、結合の際にTREM-1シグナル伝達を媒介する。
in vitroで、TREM-1の結合は、TNF、IL-8および単球走化性タンパク質-1を含む炎症促進性サイトカインの分泌を誘発する。さらに、TREM-1シグナル伝達は、複数のToll様受容体(TLR)と相乗して、炎症促進性シグナルをさらにブーストする。次に、これは、TREM-1の発現を上方調節して、炎症を増幅する悪循環をもたらす。Bouchon et al., J Immunol 164:4991-4995 (2000)を参照のこと。ますます多くの証拠が、TLRが、慢性炎症性疾患、例えば、RAおよびIBDの発症および進行に寄与することを示している。
【0003】
ヒトおよびカニクイザルの両方のTREM-1の機能を阻害するヒト化抗TREM-1 mAbは、他の場所に開示されている。WO2013/120553およびWO2016/009086を参照のこと。しかし、かかる抗体は、製造プロセスを妨害し得る粘度プロファイルを有するか、それらの治療潜在力を制限し得る他の問題点(例えば、サイトカインストームおよびADCC)を有するかのいずれかである。Shire et al., J. Pharm. Sci. 93:1390-1402 (2004);およびWarncke et al., J Immunol. 188:4405-11 (2012)を参照のこと。従って、TREM-1に特異的に結合してTREM-1機能を阻害することができるが、初期の抗TREM-1抗体の問題点を有さない、抗TREM-1抗体が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体-1(TREM-1)に特異的に結合し、望ましい機能的特性を有する、単離された抗体、例えば、モノクローナル抗体、特に、ヒト(例えば、モノクローナル)抗体が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、この抗体は、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含み、このIgG1重鎖定常領域は、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、この抗体は、TREM-1を遮断するための結合についてmAb 0318と交差競合し、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含み、このIgG1重鎖定常領域は、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、この抗体は、mAb 0318と同じTREM-1エピトープ(eptiope)に結合する。一部の実施形態では、この抗体は、配列番号1のD38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44、L45、E46、K47、F48、A49、S50、S51、Q52、K53、A54、W55、Q56、Y90、H91、D92、H93、G94、L95およびL96からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基を含むTREM-1エピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、この抗体は、配列番号1のアミノ酸D38~L45、E46~Q56および/またはY90~L96を含むTREM-1エピトープに特異的に結合する。
【0005】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体のIgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、このIgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、A330S、P331S、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、このIgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、このIgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0006】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み、この重鎖CDR3は、DMGIRRQFAY(配列番号26)または1つもしくは2つの置換を除いたDMGIRRQFAY(配列番号26)を含む。一部の実施形態では、この重鎖CDR3は、DQGIRRQFAY(配列番号72)を含む。
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み、この重鎖CDR2は、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)または1つもしくは2つの置換を除いたRIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)を含む。
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み、この重鎖CDR1は、TYAMH(配列番号24)または1つもしくは2つの置換を除いたTYAMH(配列番号24)を含む。
【0007】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含み、この軽鎖CDR1は、RASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)または1つもしくは2つの置換を除いたRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)を含む。一部の実施形態では、この軽鎖CDR2は、RASNLES(配列番号28)または1つもしくは2つの置換を除いたRASNLES(配列番号28)を含む。一部の実施形態では、この軽鎖CDR3は、QQSNQDPYT(配列番号29)または1つもしくは2つの置換を除いたQQSNQDPYT(配列番号29)を含む。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体のVHは、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体のVLは、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHおよびVLは、それぞれ配列番号14および15を含む。
一部の実施形態では、本開示の抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号50、配列番号51、配列番号52または配列番号53を含む。一部の実施形態では、この軽鎖は、配列番号54を含む。
【0009】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、この重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、L234A、L235EおよびG237Aからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体が、本明細書で提供される。
【0010】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、この重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、抗体が、本明細書で提供される。
【0011】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、この重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体が、本明細書で提供される。
【0012】
重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、この重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体が、本明細書で提供される。
一部の実施形態では、TREM-1は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号7のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、またはそれらの任意の組み合わせに対する減少した結合親和性を有する。一部の実施形態では、この抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)に対する、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下または10分の1以下に減少した結合親和性を有する。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、免疫原性が低い。一部の実施形態では、この抗体は、TREM-1への結合の際に、刺激因子の非存在下で、TREM-1シグナル伝達をアゴナイズしない。一部の実施形態では、この抗体は、未成熟樹状細胞(iDC)をこの抗体の存在下かつ刺激因子の非存在下でインキュベートした場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、この細胞における炎症性サイトカインの発現を誘導しない。
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、細胞をこの抗体および刺激因子の両方の存在下で活性化した場合に、この細胞における炎症性サイトカインの産生を遮断する。一部の実施形態では、この刺激因子は、TREM-1リガンドである。一部の実施形態では、この炎症性サイトカインは、IL-6、TNF-α、IL-8、IL-1β、IL-12、キチナーゼ-3様タンパク質1(CHI3L1)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、pH依存的様式で、ヒトFcRn、カニクイザルFcRnおよび/またはマウスFcRnに結合する。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、キャピラリー示差走査熱量計(CAP-DSC)によって測定した場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む参照抗体と比較して、より熱的に安定である。一部の実施形態では、この抗体の約10%~20%、約20%~30%(例えば、24%)または約30%~40%は、77℃に加熱した場合に可逆的である。一部の実施形態では、この抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、より高い融解温度(Tm)を有する。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、80mg/mLの濃度で、5cP未満、4cP未満、3cP未満、2.5cP未満、2.4cP未満、2.3cP未満、2.2cP未満、2.1cP未満、2cP未満、1.9cP未満、1.8cP未満、1.7cP未満、1.6cP未満、1.5cP未満、1.4cP未満、1.3cP未満、1.2cP未満、1.1cP未満、1.0cP未満、0.9cP未満、0.8cP未満、0.7cP未満、0.6cP未満、0.5cP未満、0.4cP未満、0.3cP未満、0.2cP未満または0.1cP未満の粘度を有する。一部の実施形態では、この抗体は、130mg/mLの濃度で、10cP未満(例えば、9cP)の粘度を有する。
一部の実施形態では、この抗体は、Biacoreによって測定した場合に、4nM未満(例えば、3.4nM)のKDでヒトTREM-1に結合する。一部の実施形態では、この抗体は、Biacoreによって測定した場合に、1nM未満(例えば、0.91nM)のKDでカニクイザルTREM-1に結合する。
【0016】
一部の実施形態では、この抗体は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって観察した場合に、モノマーである。一部の実施形態では、この抗体は、2次元液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(2D-LC/MS)、または液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS)を使用するインタクト質量分析(intact mass analysis)によって観察した場合に、断片化の最小のリスクを示す。一部の実施形態では、この抗体は、8~9(例えば、8.75)の等電点を有する。
【0017】
一部の実施形態では、この抗体は、ヒスチジン、スクロース、アルギニンおよびNaClを含む製剤中で安定である。一部の実施形態では、この抗体は、20mMのヒスチジン、150mMのスクロース、25mMのアルギニンおよび50mMのNaClを含む製剤中で少なくとも2ヶ月間にわたって安定である。一部の実施形態では、この製剤は、6.0のpHである、および/またはこの製剤は、4℃、25℃もしくは40℃で貯蔵される。
第2の結合特異性を有する分子に連結された本開示の抗TREM-1抗体を含む二特異性分子もまた、本明細書で提供される。
本明細書で開示される抗体をコードする核酸、この核酸を含むベクター、およびこのベクターで形質転換された細胞が、本明細書で提供される。
薬剤に連結された本明細書で開示される抗TREM-1抗体を含むイムノコンジュゲートが、本明細書で提供される。
【0018】
本明細書に記載される抗TREM-1抗体もしくはその抗原結合部分、二特異性分子またはイムノコンジュゲート、および担体を含む、組成物が、本明細書で提供される。本明細書に記載される抗TREM-1抗体もしくはその抗原結合部分、二特異性分子またはイムノコンジュゲート、および使用のための指示書を含む、キットもまた、本明細書で提供される。
本開示の抗TREM-1抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞またはイムノコンジュゲートを投与するステップを含む、それを必要とする対象においてTREM-1活性を阻害する方法が、本明細書で提供される。
【0019】
本開示の抗TREM-1抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞またはイムノコンジュゲートを投与するステップを含む、それを必要とする対象において炎症性疾患または自己免疫性疾患を処置する方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、この炎症性疾患または自己免疫性疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、血管炎、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群(Sjogrens’s syndrome)、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アレルギー、喘息、急性炎症または慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、この方法は、1つ以上のさらなる治療薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、このさらなる治療薬は、抗IP-10抗体または抗TNF-α抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1Aおよび1Bは、全てのmAb 0318バリアントが、元のmAb 0318抗体(IgG4)と類似の親和性でヒトおよびカニクイザルTREM-1に結合することを示す。図1Aは、ヒト(上の横列)およびカニクイザル(下の横列)の両方のTREM-1に対する、318-IgG1.3fバリアントについての結合親和性データを示す。
図1B図1Aおよび1Bは、全てのmAb 0318バリアントが、元のmAb 0318抗体(IgG4)と類似の親和性でヒトおよびカニクイザルTREM-1に結合することを示す。図1Bは、ヒトTREM-1に対するいくつかの異なるmAb 0318バリアントについての結合親和性データを示す。示された異なるバリアントには、以下が含まれる:(i)318-IgG1.1f、(ii)318-IgG1.3f、(iii)318-IgG4-Aba、(iv)318-IgG1-Abaおよび(v)318-IgG1.1f(MからQへの変異体)。mAb 0318抗体(IgG4 AおよびB)についての結合親和性データを、図1B中に比較目的で提供した。
図2A図2Aおよび2Bは、TREM-1結合後の種々の時点における、CD14+単球上に発現されたTREM-1への結合の際のmAb 0318-IgG1.3fの内在化を示す。図2Aでは、TREM-1受容体発現を、結合の0、6および24時間後に分析した。
図2B図2Aおよび2Bは、TREM-1結合後の種々の時点における、CD14+単球上に発現されたTREM-1への結合の際のmAb 0318-IgG1.3fの内在化を示す。図2Bでは、TREM-1受容体発現を、結合の0、4および20時間後に分析した。図2Bは、TREM-1への結合について0318抗体バリアントと競合しないTREM26抗体を使用したデータもまた提供する。TREM26抗体は、それが内在化された後のTREM-1受容体の運命(例えば、それが分解されるか、表面にリサイクルされて戻されるか)を評価するために使用した。
図3図3は、CHO-CD32あり(「両方」)またはCHO-CD32なし(「BWZ 36のみ」)でレポーター細胞株をインキュベートしたとき、BWZ/hTREM-1レポーター細胞アッセイによって測定した場合に、mAb 0318バリアントがTREM-1シグナル伝達をアゴナイズしないことを示す。示されたバリアント抗体には、以下が含まれる:(i)318-IgG1.1f(「IgG1.1f」)、(ii)318-IgG1.3f(「IgG1.3f」)、(iii)318-IgG4-Aba(「FcAba-4」)、(iv)318-IgG1-Aba(「FcAba-1」)。TREM-1シグナル伝達の公知のアゴニストであるMAB1278抗体を、陽性対照抗体として使用した(挿入された囲みを参照のこと)。5C8(アイソタイプコントロール)抗体を、陰性対照として使用した。
図4図4は、異なるヒト細胞による炎症性サイトカインのTREM-1媒介性産生を遮断する際の、異なるmAb 0318バリアントのポテンシーを示す。図4に示されるmAb 0318抗体バリアントは、異なるヒト細胞型:PBMC、単球、好中球およびRBC沈降全血(即ち、赤血球の大部分が、実施例に記載されるデキストランベースRBC沈降プロトコールを使用して除去された)からの、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-6またはIL-8)のTREM-1媒介性放出を阻害する。炎症性サイトカインを産生するために、細胞を、プレート結合したPGRP1およびTLR2活性を欠く可溶性ペプチドグリカン(「PGRP+PGN-Ecndss」)、またはホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)刺激したPGRP1発現好中球(「PMA刺激好中球内因性PGRP」)のいずれかで刺激した。示されたバリアント抗体には、以下が含まれる:(i)0318-IgG4、(ii)0318-IgG1.3f、(iii)0318-IgG1.1f、(iv)0318-IgG1-Abaおよび(v)318-IgG4-Aba。「N/D」は、特定の炎症性サイトカインの発現レベルが決定されなかったことを示す。
図5A図5Aおよび5Bは、NOD2阻害剤の存在下で、PGRP1ありまたはなしでのPGNによる刺激後の、全血からのIL-8産生を遮断するmAb 0318-IgG1.3fのポテンシーを示す。図5Aは、実施例に記載される全血薬力学アッセイを使用して生成された阻害データを提供する。
図5B図5Aおよび5Bは、NOD2阻害剤の存在下で、PGRP1ありまたはなしでのPGNによる刺激後の、全血からのIL-8産生を遮断するmAb 0318-IgG1.3fのポテンシーを示す。図5Bは、実施例に記載される全血細胞内サイトカインアッセイを使用して生成された阻害データを提供する。
図6A図6A~6Cは、変動する濃度のmAb 0318-IgG1.3f(0~1nM)の存在下で刺激した全血からのキチナーゼ-3様タンパク質1(「CHI3L1」)(図6A)、IL-1β(図6B)およびIL-6(図6C)のRNA発現レベルを示す。全血を、3人の異なるドナー(126番、290番および322番)から収集し、可溶性PGRP1およびTLR2活性を欠く可溶性ペプチドグリカン(「可溶性PGRP+可溶性PGN-Ecndss」)で刺激した。図6A~6Cの各々において、RNA発現レベル(y軸)は、%阻害(右の縦列)およびΔΔCt(参照遺伝子の値と試験サンプルの値との間の差異)(左の縦列)の両方として示される。0318-IgG1.3f抗体の異なる濃度が、x軸上に示される。
図6B図6A~6Cは、変動する濃度のmAb 0318-IgG1.3f(0~1nM)の存在下で刺激した全血からのキチナーゼ-3様タンパク質1(「CHI3L1」)(図6A)、IL-1β(図6B)およびIL-6(図6C)のRNA発現レベルを示す。全血を、3人の異なるドナー(126番、290番および322番)から収集し、可溶性PGRP1およびTLR2活性を欠く可溶性ペプチドグリカン(「可溶性PGRP+可溶性PGN-Ecndss」)で刺激した。図6A~6Cの各々において、RNA発現レベル(y軸)は、%阻害(右の縦列)およびΔΔCt(参照遺伝子の値と試験サンプルの値との間の差異)(左の縦列)の両方として示される。0318-IgG1.3f抗体の異なる濃度が、x軸上に示される。
図6C図6A~6Cは、変動する濃度のmAb 0318-IgG1.3f(0~1nM)の存在下で刺激した全血からのキチナーゼ-3様タンパク質1(「CHI3L1」)(図6A)、IL-1β(図6B)およびIL-6(図6C)のRNA発現レベルを示す。全血を、3人の異なるドナー(126番、290番および322番)から収集し、可溶性PGRP1およびTLR2活性を欠く可溶性ペプチドグリカン(「可溶性PGRP+可溶性PGN-Ecndss」)で刺激した。図6A~6Cの各々において、RNA発現レベル(y軸)は、%阻害(右の縦列)およびΔΔCt(参照遺伝子の値と試験サンプルの値との間の差異)(左の縦列)の両方として示される。0318-IgG1.3f抗体の異なる濃度が、x軸上に示される。
図7図7は、318-IgG1.1f(四角)および318-IgG1.3f(丸)バリアント抗体の両方の粘度-濃度プロファイルを示す。粘度プロファイルを、一定温度で各ポイントについて3ポイント剪断スイープ(sweep)を使用して、Rheosense m-VROCダイナミック粘度計を使用して、希釈スキームから生成した。実線は、示されたデータについての最良の非線形曲線フィットを提供する。点線は、効力のための最大の許容可能な粘度レベルを提供する。
図8図8は、318-IgG1.1fおよび318-IgG1.3fバリアント抗体の両方が、免疫原性について低い~中間のリスクを有することを示す。VL6(免疫原性IL-21R mAb)およびKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)を、陽性対照として使用した。Avastinを、陰性対照として使用した。
図9A図9Aおよび9Bは、全てのmAb 0318バリアントが、pH依存的様式で、FcRn(ヒト(黒色)、カニクイザル(白色)およびマウス(灰色))に結合することが可能であることを示す。図9Aは、FcRn結合を%Rmax(最大FcRn結合能)として提供する。
図9B図9Aおよび9Bは、全てのmAb 0318バリアントが、pH依存的様式で、FcRn(ヒト(黒色)、カニクイザル(白色)およびマウス(灰色))に結合することが可能であることを示す。図9Bは、FcRn結合をセンサーグラムとして提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1-Aba、(ii)IgG4-Aba、(iii)IgG1.1fおよび(iv)IgG1.3f。mAb 0318(IgG4)抗体もまた、比較目的のために示される。
図10A図10Aおよび10Bは、全てのmAb 0318抗体バリアントが、ヒトFcγR(即ち、CD64、CD32a-H131バリアント、CD32a-R131バリアント、CD32b、CD16a-V158バリアントおよびCD16B-NA2バリアント)のうち1つ以上への減少した結合を実証することを示す。図10Aは、結合親和性を%Rmax(最大FcγR能)として示す。
図10B図10Aおよび10Bは、全てのmAb 0318抗体バリアントが、ヒトFcγR(即ち、CD64、CD32a-H131バリアント、CD32a-R131バリアント、CD32b、CD16a-V158バリアントおよびCD16B-NA2バリアント)のうち1つ以上への減少した結合を実証することを示す。図10Bは、センサーグラムを示す。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1-Aba、(ii)IgG4-Aba、(iii)IgG1.1fおよび(iv)IgG1.3f。mAb 0318(IgG4)抗体は、比較目的のために示される。複数のFcγRに結合することが公知の1F4-hIgG1f抗体を、対照として使用した。
図11A図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11A、11Bおよび11Cは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたIL-6の量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11B図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11A、11Bおよび11Cは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたIL-6の量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11C図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11A、11Bおよび11Cは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたIL-6の量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11D図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11D、11Eおよび11Fは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたTNF-αの量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11E図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11D、11Eおよび11Fは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたTNF-αの量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11F図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11D、11Eおよび11Fは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたTNF-αの量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11G図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11G、11Hおよび11Iは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたIL-12の量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11H図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11G、11Hおよび11Iは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたIL-12の量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図11I図11A~11Iは、0318バリアント抗体が、未成熟樹状細胞と共に培養したとき、異なる炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-αおよびIL-12)の放出によって測定した場合に、それら自体では(即ち、刺激の非存在下では)アゴニスト性でないことを示す。図11G、11Hおよび11Iは、それぞれドナーD179、D276およびD341から単離された未成熟樹状細胞について産生されたIL-12の量を提供する。示された0318抗体バリアントには、以下が含まれる:(i)IgG1.1f、(ii)IgG1.3fおよび(iii)IgG1-Aba。使用した抗体の投薬量(μg/mL)は、丸括弧中に示される。未成熟樹状細胞を、膜CD32aを発現するCHO細胞(Fc架橋結合を刺激するため)ありおよびなしで、抗TREM-1抗体バリアントと共に培養した。PGRP+PGN、CD40Lトリマー(「トリマー」)およびPfizerの抗CD40アゴニスト抗体(「CP870」)を、陽性対照として使用した。アイソタイプ抗体(「CHIL-6」)を、陰性対照として使用した。点線は、アッセイについての検出下限を示す。
図12図12は、皮下投与後のカニクイザルにおける単回用量mAb 0318-IgG1.3fバリアントの薬物動態を示す。動物の各々は、以下の用量のうち1つを受けた:(i)0.1mg/kg(n=4)(「1」)、(ii)0.5mg/kg(n=4)(「2」)、(iii)2mg/kg(n=3)(「3」)または(iv)10mg/kg(n=4)(「4」)。データは、平均±標準偏差として示される。
図13図13は、カニクイザルにおける薬物動態(PK)、薬力学(PD)および受容体占有率(RO)データを記載するために使用した標的介在性薬物動態模式図を示す。
図14図14Aおよび14Bは、カニクイザルにおけるmAb 0318-IgG1.3fバリアントの単回用量(皮下(sc)または静脈内(iv)投与)後の、単球(図14A)および顆粒球(図14B)上の総TREM-1受容体密度を示す。TREM-1受容体密度は、抗体の投与前のTREM-1受容体密度のパーセンテージとして示される。動物の各々は、以下の用量のうち1つを受けた:(a)0.1mg/kg(sc)(n=4)(「A」)、(b)0.5mg/kg(n=4)(sc)(「B」)、(c)2mg/kg(n=3)(sc)(「C」)、(d)2mg/kg(n=3)(iv)(「D」)または(e)10mg/kg(n=4)(sc)(「E」)。データは、平均±標準偏差として示される。
図15図15Aおよび15Bは、カニクイザルにおけるmAb 0318-IgG1.3fバリアントの単回用量後の、単球(図15A)および顆粒球(図15B)上のTREM-1受容体占有率を示す。受容体占有率データは、細胞上に発現された総TREM-1受容体のパーセンテージとして示される。動物の各々は、以下の用量のうち1つを受けた:(a)0.1mg/kg(sc)(n=4)(「A」)、(b)0.5mg/kg(n=4)(sc)(「B」)、(c)2mg/kg(n=3)(sc)(「C」)、(d)2mg/kg(n=3)(iv)(「D」)または(e)10mg/kg(n=4)(sc)(「E」)。データは、平均±標準偏差として示される。点線は、85%の受容体占有率を示す。
図16A図16Aおよび16Bは、中央コンパートメントにおけるTMDDを用いた2-コンパートメントPKモデルによって記載される、カニクイザルにおけるmAb 0318-IgG1.3fバリアントの単回用量後の、観察された(白抜き丸)およびモデル予測された(実線)PK(左上パネル)、PD(右上パネル)、RO(左下パネル)、および総表面TREM-1受容体発現(右下パネル)を示す。図16Aでは、サルの各々は、単回用量の0.1mg/kgの抗体を皮下で受けた。
図16B図16Aおよび16Bは、中央コンパートメントにおけるTMDDを用いた2-コンパートメントPKモデルによって記載される、カニクイザルにおけるmAb 0318-IgG1.3fバリアントの単回用量後の、観察された(白抜き丸)およびモデル予測された(実線)PK(左上パネル)、PD(右上パネル)、RO(左下パネル)、および総表面TREM-1受容体発現(右下パネル)を示す。図16Bでは、動物は、単回用量の10mg/kgの抗体を皮下で受けた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本記載がより容易に理解できるように、ある特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の至る所に示される。
【0022】
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実態のうち1つ以上を指すことに留意すべきである;例えば、「1つの(a)ヌクレオチド配列」は、1つ以上のヌクレオチド配列を示すと理解される。このように、用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書で相互交換可能に使用され得る。
【0023】
さらに、「および/または」は、本明細書で使用する場合、他方を伴うまたは伴わない、2つの特定された特色または構成要素の各々の具体的な開示として解釈すべきである。従って、用語「および/または」は、本明細書の「Aおよび/またはB」などの語句において使用する場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含む意図である。同様に、用語「および/または」は、「A、Bおよび/またはC」などの語句において使用する場合、以下の態様の各々を包含する意図である:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
態様が言葉「含む」を用いて本明細書に記載される場合には、「~からなる」および/または「本質的に~からなる」という言い回しで記載される他の点では類似した態様もまた提供されることが理解される。
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が関する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に、本開示で使用される用語の多くの、一般的な辞書を提供する。
【0024】
単位、接頭辞および記号は、それらの国際単位系(SI)で認められた形態で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に示さない限り、ヌクレオチド配列は、左から右に、5’から3’の配向で書かれる。アミノ酸配列は、左から右に、アミノからカルボキシの配向で書かれる。本明細書で提供される見出しは、全体として本明細書を参照して得ることができる本開示の種々の態様の限定ではない。従って、すぐ下で定義した用語は、本明細書をその全体で参照して、より完全に定義される。
用語「約」は、およそ、大まかに、おおよそ、またはその辺りであることを意味するために、本明細書で使用される。用語「約」が数値範囲と併せて使用される場合、これは、示された数値の上および下の境界を拡張させることによって、その範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、例えば、10パーセント上または下(より高いまたはより低い)の相違分、述べられた値の上および下の数値を修飾することができる。
【0025】
用語「ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体1」(TREM1、TREM-1およびCD354としても公知)は、単球、マクロファージおよび好中球上で発現される受容体を指す。TREM-1の主なリガンドには、ペプチドグリカン(PGN)結合タンパク質(PGRP)のファミリーに属するペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)が含まれる。活性化されると、TREM-1は、ITAM含有シグナル伝達アダプタータンパク質DAP12と会合する。下流のシグナル伝達には、炎症促進性サイトカイン産生の上方調節を引き起こす、NFAT転写因子の活性化が含まれ得る。用語「TREM-1」は、細胞によって天然に発現されるTREM-1の任意のバリアントまたはアイソフォームを含む。従って、一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ヒト以外の種由来のTREM-1(例えば、カニクイザルTREM-1)と交差反応できる。
【0026】
ヒトTREM-1の3つのアイソフォームが同定されている。アイソフォーム1(アクセッション番号NP_061113.1;配列番号1)は、234アミノ酸からなり、カノニカル配列を示す。アイソフォーム2(アクセッション番号NP_001229518.1;配列番号2)は、225アミノ酸からなり、アミノ酸残基201~234においてカノニカル配列とは異なる。これらのアミノ酸残基は、膜貫通ドメインの一部および細胞質側ドメインをコードする。アイソフォーム3(アクセッション番号NP_001229519;配列番号3)は、150アミノ酸からなり、可溶性である。これは、膜貫通ドメイン、細胞質側ドメイン、および細胞外ドメインの一部をコードするアミノ酸残基151~234を欠く。アミノ酸残基138~150もまた、上記カノニカル配列とは異なる。
【0027】
以下は、3つの公知のヒトTREM-1アイソフォームのアミノ酸配列である。
(A)ヒトTREM-1アイソフォーム1(アクセッション番号NP_061113.1;配列番号1;アクセッション番号NM_018643を有するヌクレオチド配列;配列番号4によってコードされる):
MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFSGTPGSNENSTQNVYKIPPTTTKALCPLYTSPRTVTQAPPKSTADVSTPDSEINLTNVTDIIRVPVFNIVILLAGGFLSKSLVFSVLFAVTLRSFVP(シグナル配列は下線付きである);
(B)ヒトTREM-1アイソフォーム2(アクセッション番号NP_001229518.1;配列番号2;アクセッション番号NM_001242589を有するヌクレオチド配列;配列番号5によってコードされる):
MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFSGTPGSNENSTQNVYKIPPTTTKALCPLYTSPRTVTQAPPKSTADVSTPDSEINLTNVTDIIRYSFQVPGPLVWTLSPLFPSLCAERM(シグナル配列は下線付きである);
(C)ヒトTREM-1アイソフォーム3(アクセッション番号NP_001229519;配列番号3;アクセッション番号NM_001242590を有するヌクレオチド配列;配列番号6によってコードされる):
MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFRCSTLSFSWLVDS(シグナル配列は下線付きである)。
【0028】
カニクイザルTREM-1タンパク質(アクセッション番号XP_001082517;配列番号7)は、以下のアミノ酸配列を有すると予測される:
MRKTRLWGLLWMLFVSELRATTELTEEKYEYKEGQTLEVKCDYALEKYANSRKAWQKMEGKMPKILAKTERPSENSHPVQVGRITLEDYPDHGLLQVQMTNLQVEDSGLYQCVIYQHPKESHVLFNPICLVVTKGSSGTPGSSENSTQNVYRTPSTTAKALGPRYTSPRTVTQAPPESTVVVSTPGSEINLTNVTDIIRVPVFNIVIIVAGGFLSKSLVFSVLFAVTLRSFGP(シグナル配列は下線付きである)。
本開示は、TREM-1に特異的に結合しその機能を遮断する抗体に関する。これらの抗体は、TREM-1活性化および下流のシグナル伝達を低減/遮断することによって、TREM-1機能を遮断する。
【0029】
本開示の抗TREM-1抗体は、TREM-1を直接的または間接的に遮断するいくつかの異なる機構のうち1つまたはその組み合わせによって、TREM-1シグナル伝達を遮断する。一実施形態では、これらの抗体は、TREM-1の天然リガンドであるペプチドグリカン認識タンパク質1(PGLYRP1)が、TREM-1との機能的複合体を創出するのを防止する。別の実施形態では、これらの抗体は、個々のTREM-1分子がダイマーもマルチマーも形成しないように防止することによって、TREM-1を遮断する。一部の実施形態では、TREM-1のダイマー化またはマルチマー化は、さもなくばTREM-1ダイマーの界面中に存在するTREM-1の一部分に結合し、それによって、個々のTREM-1分子が互いに会合するのを防止することが可能な抗TREM-1抗体によって、低減または防止される。他の実施形態では、TREM-1のダイマー化またはマルチマー化は、TREM-1とそのリガンドとの相互作用を妨害する抗TREM-1抗体によって低減または防止される。
【0030】
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、TREM-1の、PGLYRP1誘導性の活性化を遮断できる。PGLYRP1は、シグナルペプチドおよびペプチドグリカン結合ドメインからなる、高度に保存された196アミノ酸長のタンパク質であり、好中球において発現され、それらの活性化の際に放出される。PGLYRP1のアミノ酸配列(アクセッション番号NP_005082.1;配列番号8)は、以下に提供される:
MSRRSMLLAWALPSLLRLGAAQETEDPACCSPIVPRNEWKALASECAQHLSLPLRYVVVSHTAGSSCNTPASCQQQARNVQHYHMKTLGWCDVGYNFLIGEDGLVYEGRGWNFTGAHSGHLWNPMSIGISFMGNYMDRVPTPQAIRAAQGLLACGVAQGALRSNYVLKGHRDVQRTLSPGNQLYHLIQNWPHYRSP(シグナル配列は下線付きである)。
【0031】
従って、一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、ミエロイド細胞(例えば、樹状細胞および単球)からの炎症促進性サイトカインの放出を下方調節または遮断する。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、本明細書で開示されるように、マクロファージ、好中球、滑膜組織細胞および/またはレポーター細胞からのTNF-α、MIP-1ベータ、MCP-1、IL-1ベータ、GM-CSF、IL-6および/またはIL-8の放出を遮断する。
【0032】
外来抗原に応答した炎症性サイトカインの制御された放出は、有益であり得るが(例えば、有効な適応免疫応答を開始させる)、過度の炎症性サイトカイン放出は、悲惨な結果を有し得る。例えば、細胞表面免疫受容体に対するある特定の抗体(例えば、抗ヒトCD3抗体、例えばOKT3)のin vivo投与で観察された1つの一般的な毒性の臨床的合併症は、循環中への種々のサイトカイン(例えば、TNF-アルファ、IFN-ガンマおよびIL-2)の過剰な放出と関連するサイトカイン放出症候群(CRS)である。CRSは、そのコグネート抗原(例えば、T細胞上のCD3)(抗体の可変領域を介して)ならびにアクセサリー細胞(例えば、抗原提示細胞)上のFc受容体(例えば、FcγR)および/または補体受容体(抗体の定常領域を介して)への抗体の同時結合の結果として生じ得る。この相互作用は、細胞(例えば、T細胞および/またはアクセサリー細胞)の活性化、ならびに低血圧、発熱(pyrexia)および悪寒(rigors)を特徴とする全身性炎症応答を生じる種々のサイトカインの放出を生じる。CRSの他の症状には、発熱(fever)、悪寒(chill)、悪心、嘔吐および呼吸困難が含まれる。
【0033】
炎症性サイトカインの、PGLYRP1誘導性の産生を遮断することに加えて、一実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、それを必要とする対象に投与された場合に、サイトカイン放出症候群の発生率を低減させる、またはその発生率を生じさせない。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、細胞(例えば、樹状細胞)を抗体単独の存在下でインキュベートした場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、これらの細胞による炎症性サイトカインの発現を誘導しない。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、1つ以上のFcγRへの減少した結合を有し、これが、CSRの発生の低減を補助し得る。
【0034】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1および別の種由来のTREM-1の両方に結合する。従って、用語「TREM-1」は、本明細書で使用する場合、任意の適切な生物に由来し得るTREM-1の任意の天然に存在する形態を包含する。例えば、本明細書に記載される使用のためのTREM-1は、脊椎動物TREM-1、例えば、哺乳動物TREM-1、例えば、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、カニクイザルまたはアカゲザル);げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、ウサギ類(例えば、ウサギ)または偶蹄類(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタまたはラクダ)由来のTREM-1であり得る。ある特定の実施形態では、TREM-1は、配列番号1(ヒトTREM-1、アイソフォーム1)である。このTREM-1は、TREM-1の成熟形態、例えば、適切な細胞内で翻訳後プロセシングを受けたTREM-1タンパク質であり得る。かかる成熟TREM-1タンパク質は、例えば、グリコシル化され得る。このTREM-1は、全長TREM-1タンパク質であり得る。
【0035】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、Bリンパ球の単一クローンに直接的または間接的に由来するという意味で、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、例えば、国際出願公開番号WO2013/120553の実施例に記載される方法を使用して、産生、スクリーニングおよび精製される。簡潔に述べると、適切なマウス、例えば、TREM-1またはTREM-l/TREM-3ノックアウト(KO)マウスが、TREM-1、TREM-1発現細胞、または両方の組み合わせによって免疫される。別の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、本明細書で開示されるモノクローナル抗体の混合物であるという意味で、ポリクローナル抗体である。
【0036】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、原核生物細胞または真核生物細胞において組換え発現される。一部の実施形態では、この原核生物細胞は、E.coliである。ある特定の実施形態では、この真核生物は、酵母、昆虫または哺乳動物細胞、例えば、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、カニクイザルまたはアカゲザル)、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、ウサギ類(例えば、ウサギ)または偶蹄類(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタまたはラクダ)である生物に由来する細胞である。適切な哺乳動物細胞株には、HEK293細胞、CHO細胞およびHELA細胞が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、当業者に公知の他の方法、例えば、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイによっても産生され得る。産生されると、抗体は、国際出願公開番号WO2013/120553の実施例に記載された方法を使用して、例えば、全長TREM-1またはその変異体への結合についてスクリーニングされ得る。
【0037】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、抗原(TREM-1)またはその一部分に特異的に結合することが可能な、生殖系列免疫グロブリン配列に由来するタンパク質を指す。この用語は、任意のクラスまたはアイソタイプ(即ち、IgA、IgE、IgG、IgMおよび/またはIgY)の全長抗体およびそれらの任意の単一の鎖または断片を含む。抗原またはその部分に特異的に結合する抗体は、その抗原もしくはその部分に排他的に結合し得、または限定数の相同な抗原もしくはその部分に結合し得る。全長抗体は通常、ジスルフィド結合によって相互連結された、少なくとも4つのポリペプチド鎖:2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。医薬的に特に目的とされる1つの免疫グロブリンサブクラスは、IgGファミリーである。ヒトでは、IgGクラスは、それらの重鎖定常領域の配列に基づいて、4つのサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に下位分割され得る。軽鎖は、それらの配列組成における差異に基づいて、2つの型、カッパおよびラムダへと分割され得る。IgG分子は、2つ以上のジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖、および1つのジスルフィド結合によって重鎖に各々結合された2つの軽鎖から構成される。重鎖は、1つの重鎖可変領域(VH)および最大で3つの重鎖定常(CH)領域:CH1、CH2およびCH3を含み得る。軽鎖は、1つの軽鎖可変領域(VL)および1つの軽鎖定常領域(CL)を含み得る。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が介在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに下位分割され得る。VH領域およびVL領域は、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の超可変領域は、抗原と相互作用することが可能な結合ドメインを形成するが、抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(エフェクター細胞)、Fc受容体および古典的補体系の第1成分(C1q)が含まれるがこれらに限定されない宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。本発明の抗体は、単離され得る。用語「単離された抗体」は、それが産生された環境中の他の構成要素から分離および/もしくは回収された、ならびに/またはそれが産生された環境中に存在する構成要素の混合物から精製された、抗体を指す。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されているので、抗体のある特定の抗原結合断片は、本発明に照らして適切であり得る。
【0038】
抗体の「抗原結合部分」という用語は、本明細書に記載される、抗原、例えば、TREM-1に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)S、Fv(典型的には、抗体の単一のアームのVLおよびVHドメイン)、単鎖Fv(scFv;例えば、Bird et al., Science 242:42S-426 (1988);Huston et al., PNAS 85: 5879-5883 (1988)を参照のこと)、dsFv、Fd(典型的には、VHおよびCH1ドメイン)、およびdAb(典型的には、VHドメイン)断片;VH、VL、VhHおよびV-NARドメイン;単一のVHおよび単一のVL鎖を含む一価分子;ミニボディ(minibody)、ディアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)およびカッパボディ(kappa body)(例えば、Ill et al., Protein Eng 10:949-57 (1997)を参照のこと);ラクダIgG;IgNAR;ならびに、単離されたCDRまたは抗原結合残基もしくはポリペプチドが、機能的抗体断片を形成するように一緒に会合または連結され得る、1つ以上の単離されたCDRまたは機能的パラトープ、が含まれる。種々の型の抗体断片は、例えば、Holliger and Hudson, Nat Biotechnol 2S :1126-1136 (2005);国際出願公開番号WO2005/040219、ならびに米国特許出願公開第2005/0238646号および同第2002/0161201号において記載または概説されている。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して取得され得、これらの断片は、インタクトな抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングされ得る。
【0039】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、この定常領域も、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダムもしくは部位特異的変異誘発によってin vitroで、または体細胞変異によってin vivoで導入された変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体は含まない意図である。用語「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体は、同義語として使用される。
【0040】
「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する1つ以上の配列(CDR領域またはその一部)を含むヒト/非ヒトキメラ抗体を指す。従って、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が少なくとも、所望の特異性、親和性、配列組成および機能性を有する、非ヒト種由来の、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類由来の抗体(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基で置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。かかる改変の例は、典型的にはドナー抗体に由来するアミノ酸残基である、1つ以上のいわゆる逆変異の導入である。抗体のヒト化は、当業者に公知の組換え技術を使用して実施され得る(例えば、Antibody Engineering, Methods in Molecular Biology, vol. 248, edited by Benny K. C. Loを参照のこと)。軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインに適切なヒトレシピエントフレームワークは、例えば、配列または構造的相同性によって同定され得る。あるいは、固定されたレシピエントフレームワークが、例えば、構造、生物物理学的および生化学的特性の知識に基づいて、使用され得る。レシピエントフレームワークは、生殖系列由来であり得る、または成熟抗体配列に由来し得る。ドナー抗体由来のCDR領域は、CDRグラフティングによって移入され得る。CDRグラフトされたヒト化抗体は、ドナー抗体由来のアミノ酸残基の再導入(逆変異)がヒト化抗体の特性に対して有益な影響を有する重要なフレームワーク位置の同定によって、例えば、親和性、機能性および生物物理学的特性についてさらに最適化され得る。ドナー抗体由来の逆変異に加えて、ヒト化抗体は、CDR領域またはフレームワーク領域中の生殖系列残基の導入、免疫原性エピトープの排除、部位特異的変異誘発、親和性成熟などによって操作され得る。
【0041】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを含み、ここで、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR残基の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものもまた、任意に含み得る。用語「ヒト化抗体誘導体」は、ヒト化抗体の任意の改変された形態、例えば、抗体と別の薬剤または抗体とのコンジュゲートを指す。
【0042】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、組換え手段によって調製、発現、創出または単離された全てのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマル(transchromosomal)な動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングが関与する任意の他の手段によって調製、発現、創出または単離された抗体、を含む。かかる組換えヒト抗体は、生殖系列遺伝子によってコードされる特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列を利用する可変領域および定常領域を含むが、例えば抗体の成熟化の間に生じる引き続く再編成および変異を含む。当該分野で公知のように(例えば、Lonberg Nature Biotech. 23(9): 1117- 1125 (2005)を参照のこと)、可変領域は、外来抗原に対して特異的な抗体を形成するように再編成される種々の遺伝子によってコードされる抗原結合ドメインを含む。再編成に加えて、可変領域は、外来抗原に対する抗体の親和性を増加させるために、複数の単一アミノ酸変化(体細胞変異または高頻度変異と呼ばれる)によってさらに改変され得る。定常領域は、抗原にさらに応答して変化する(即ち、アイソタイプスイッチ)。従って、抗原に応答して再編成され体細胞変異された、軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする核酸分子は、元の核酸分子に対する配列同一性は有し得ないが、その代わり、実質的に同一または類似である(即ち、少なくとも80%の同一性を有する)。
「キメラ抗体」は、可変領域が1つの種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来する抗体を指す。
【0043】
一実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、IgG抗体である。「IgG抗体」、例えば、ヒトIgG1は、本明細書で使用する場合、ある特定の実施形態では、天然に存在するIgG抗体の構造を有する、即ち、同じサブクラスの天然に存在するIgG抗体と同じ数の重鎖および軽鎖ならびにジスルフィド結合を有する。例えば、TREM-1 IgG1抗体は、2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)からなり、これら2つの重鎖および軽鎖は、天然に存在するIgG1抗体中に存在するジスルフィド架橋と同じ数および位置のジスルフィド架橋によって連結される(抗体がジスルフィド架橋を改変するように変異していない限り)。
本明細書で使用する場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgE抗体)を指す。
【0044】
「アロタイプ」は、特定のアイソタイプ群内の天然に存在するバリアントを指し、これらのバリアントは、いくつかのアミノ酸が異なる(例えば、Jefferis et al., mAbs 1:1 (2009)を参照のこと)。本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、任意のアロタイプのものであり得る。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号9)と比較して、EU番号付けに従って、L234A、L235EおよびG237Aからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む「IgG1.3f」アロタイプのものである。他の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号9)と比較して、EU番号付けに従って、L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む「IgG1.1f」アロタイプのものである。ある特定の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号9)と比較して、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む「IgG1-Aba」アロタイプのものである。さらなる実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、野生型IgG4アイソタイプ(例えば、配列番号10)のCH1ドメインならびにIgG1のCH2およびCH3ドメインを含む「IgG4-Aba」アロタイプのものである。一部の実施形態では、このIgG4-Abaアロタイプ抗体は、野生型IgG1アイソタイプ(例えば、配列番号9)と比較して、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に対して特異的な抗体」は、本明細書で、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と相互交換可能に使用される。
「単離された抗体」は、本明細書で使用する場合、それが産生された環境中の他の構成要素から分離および/もしくは回収された、ならびに/またはそれが産生された環境中に存在する構成要素の混合物から精製された、抗体を指す意図である。
【0045】
「エフェクター機能」は、抗体Fc領域とFc受容体もしくはリガンドとの相互作用、またはそれから生じる生化学的事象を指す。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、FcγR媒介性エフェクター機能、例えば、ADCCおよび抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、ならびに細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節が含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とする。一実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、1つ以上のFcγRに結合しないFc領域を含み、従って、エフェクター機能を欠く(即ち、エフェクターなし)。
【0046】
「Fc受容体」または「FcR」は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRは、それらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的スプライシングされた形態を含む、FcγRファミリーの受容体を含む。FcγRファミリーは、3つの活性化受容体(マウスではFcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIV;ヒトではFcγRIA、FcγRIIAおよびFcγRIIIA)および1つの阻害性受容体(FcγRIIB)からなる。ヒトFcγRの種々の特性は、当該分野で公知である。自然エフェクター細胞型の大部分は、1つ以上の活性化FcγRおよび阻害性FcγRIIBを共発現するが、ナチュラルキラー(NK)細胞は、1つの活性化Fc受容体(マウスではFcγRIII、ヒトではFcγRIIIA)を選択的に発現し、マウスおよびヒトでは阻害性FcγRIIBを発現しない。ヒトIgG1は、ほとんどのヒトFc受容体に結合し、それが結合する活性化Fc受容体の型に関して、マウスIgG2aと等価とみなされる。
「Fc領域」(結晶性断片領域)または「Fcドメイン」または「Fc」は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置するFc受容体への結合または古典的補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介する、抗体の重鎖のC末端領域を指す。従って、Fc領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1またはCL)を除外した、抗体の定常領域を含む。
【0047】
IgGでは、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCH2およびCH3ならびにCH1ドメインとCH2ドメインとの間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界の定義は、本明細書で定義されるように変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、IgG1についてはアミノ酸残基D221、IgG2についてはV222、IgG3についてはL221およびIgG4についてはP224から、重鎖のカルボキシ末端まで延びると定義され、ここで、番号付けは、KabatのEUインデックスに従う。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、アミノ酸237からアミノ酸340まで延び、CH3ドメインは、Fc領域中でCH2ドメインのC末端側に位置付けられる、即ち、CH3ドメインは、IgGのアミノ酸341からアミノ酸447または446(C末端リジン残基が存在しない場合)もしくは445(C末端グリシンおよびリジン残基が存在しない場合)まで延びる。本明細書で使用する場合、Fc領域は、任意のアロタイプバリアントを含むネイティブ配列Fc、またはバリアントFc(例えば、天然に存在しないFc)であり得る。Fcは、切り離された、または、「Fc融合タンパク質」とも呼ばれる、Fc含有タンパク質ポリペプチド、例えば、「Fc領域を含む結合タンパク質」(例えば、抗体またはイムノアドヘシン(immunoadhesion))との関連での、この領域もまた指し得る。
【0048】
「ネイティブ配列Fc領域」または「ネイティブ配列Fc」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。ネイティブ配列ヒトFc領域には、ネイティブ配列ヒトIgG1 Fc領域;ネイティブ配列ヒトIgG2 Fc領域;ネイティブ配列ヒトIgG3 Fc領域;およびネイティブ配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然に存在するバリアントが含まれる。ネイティブ配列Fcには、種々のアロタイプのFcが含まれる(例えば、Jefferis et al., mAbs 1: 1 (2009)を参照のこと)。
【0049】
「バリアント配列Fc領域」または「天然に存在しないFc」は、その機能的特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、タンパク質安定性および/もしくは抗原依存性細胞性細胞傷害のうち1つ以上を典型的には変更するための改変、またはとりわけ、それらの欠如を含む。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、抗体の1つ以上の機能的特性を再度変更するために、化学的に改変され得る(例えば、1つ以上の化学的部分が抗体に結合され得る)、またはそのグリコシル化を変更するように改変され得る。一実施形態では、この抗TREM-1抗体は、IgG1アイソタイプであり、それぞれ、ある特定のFc受容体に対する減少した親和性を生じる変異(L234A、L235EおよびG237A)および低減されたC1q媒介性補体結合を生じる変異(A330SおよびP331S)のうち1つ以上、おそらくは全てを含む、改変されたFcドメインを保有する(EUインデックスに従う残基番号付け)。
【0050】
用語「ヒンジ」、「ヒンジドメイン」、「ヒンジ領域」および「抗体ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに接合させる重鎖定常領域のドメインを指し、ヒンジの上、中央および下の部分を含む(Roux et al., J Immunol 161:4083 (1998))。ヒンジは、抗体の結合領域とエフェクター領域との間の変動するレベルの可動性を提供し、2つの重鎖定常領域間の分子間ジスルフィド結合のための部位もまた提供する。本明細書で使用する場合、ヒンジは、全てのIgGアイソタイプのGlu216で始まり、Gly237で終わる(Roux et al., J Immunol 161:4083 (1998))。野生型IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4ヒンジの配列は、当該分野で公知である(例えば、国際PCT公開番号WO2017/087678)。一実施形態では、抗TREM-1抗体のCH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更される、例えば、増加または減少されるように、改変される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。
【0051】
定常領域は、例えば、二価抗体が2つの一価VH-VL断片へと分離するリスクを低減させるために、抗体を安定化するように改変され得る。例えば、IgG4定常領域では、残基S228(EUインデックスに従う残基番号付け)は、ヒンジにおける重鎖間ジスルフィド架橋形成を安定化するために、プロリン(P)残基に変異され得る(例えば、Angal et al., Mol Immunol. 30: 105-8(1995)を参照のこと)。抗体またはその断片は、それらの相補性決定領域(CDR)の観点からも定義され得る。用語「相補性決定領域」または「超可変領域」は、本明細書で使用する場合、抗原結合に関与するアミノ酸残基が位置する抗体の領域を指す。超可変性の領域またはCDRは、抗体可変ドメインのアミノ酸アラインメントにおいて最も高い可変性を有する領域として同定することができる。データベース、例えば、Kabatデータベースが、CDR同定のために使用され得、CDRは、例えば、軽鎖可変ドメインのアミノ酸残基24~34(CDR1)、50~59(CDR2)および89~97(CDR3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31~35(CDR1)、50~65(CDR2)および95~102(CDR3)を含むと定義される(Kabat et al. 1991 ; Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。あるいは、CDRは、「超可変ループ」由来の残基(軽鎖可変ドメイン中の残基26~33(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol 196 : 901-917 (1987))として定義され得る。典型的には、この領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.、上記に記載される方法によって実施される。本明細書の「Kabat位置」、「Kabat残基」および「Kabatに従う」などの語句は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについての、この番号付けシステムを指す。このKabat番号付けシステムを使用して、ペプチドの実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのフレームワーク(FR)もしくはCDRの短縮に対応するより少ないもしくはさらなるアミノ酸、またはその中への挿入を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後に、アミノ酸挿入(Kabatに従って残基52a、52bおよび52c)を含み得、重鎖FR残基82の後に、挿入された残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準的な」Kabat番号付けされた配列との、その抗体の配列の相同性の領域におけるアラインメントによって、所与の抗体について決定され得る。
【0052】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、例えば、それを同定するために使用した具体的な方法によって定義される、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原(例えば、TREM-1)上の部位を指す。エピトープは、連続アミノ酸(通常は、線状エピトープ)、またはタンパク質の三次フォールディングによって隣接した非連続アミノ酸(通常は、コンフォメーションエピトープ)の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、変性溶媒への曝露の際に、常にではないが典型的には保持され、一方で、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理の際に失われる。エピトープは、典型的には、独自の空間的コンフォメーション中に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸を含む。どのエピトープが所与の抗体によって結合されるかを決定するための方法(即ち、エピトープマッピング)は、当該分野で周知であり、これには、例えば、イムノブロッティングおよび免疫沈降アッセイが含まれ、ここで、(例えば、TREM-1由来の)重複するまたは連続するペプチドは、所与の抗体(例えば、抗TREM-1抗体)との反応性について試験される。エピトープの空間的コンフォメーションを決定する方法には、当該分野のおよび本明細書に記載される技術、例えば、x線結晶解析、抗原変異分析、2次元核磁気共鳴およびHDX-MSが含まれる(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)を参照のこと)。
【0053】
2つ以上の抗体に言及して、「同じエピトープに結合する」という用語は、それらの抗体が、所与の方法によって決定した場合に、アミノ酸残基の同じセグメントに結合することを意味する。抗体が本明細書に記載される抗体と「TREM-1上の同じエピトープ」に結合するかどうかを決定するための技術には、例えば、エピトープマッピング法、例えば、エピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析、および水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)が含まれる。他の方法が、抗原断片または抗原の変異バリエーションへの抗体の結合をモニタリングし、ここで、抗原配列内のアミノ酸残基の改変に起因する結合の喪失は、エピトープ構成要素の現れとしばしばみなされる。さらに、エピトープマッピングのための計算的コンビナトリアル法もまた使用され得る。これらの方法は、目的の抗体が、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから、特異的な短いペプチドを親和性単離する能力に依存する。同じVHおよびVLまたは同じCDR1、2および3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予測される。
【0054】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他の抗体の結合を(部分的または完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するかどうか、即ち、一方の抗体が標的への他方の抗体の結合を阻害するかどうかおよびその程度は、公知の競合実験、例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用して決定され得る。ある特定の実施形態では、抗体は、標的への別の抗体の結合と競合し、それを少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害する。阻害または競合のレベルは、どちらの抗体が「遮断抗体」(即ち、標的と最初にインキュベートされる寒冷抗体)であるかに依存して異なり得る。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harb Protoc ; 2006; doi: 10.1101/pdb.prot4277またはChapter 11 of "Using Antibodies" by Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1999に記載されるように実施され得る。2つの抗体が、互いに双方向で少なくとも50%遮断する場合、即ち、一方の抗体が競合実験において抗原と最初に接触するか他方の抗体が競合実験において抗原と最初に接触するかにかかわらず、これらの抗体は、「交差競合する」。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」は、所定の抗原上のエピトープへの抗体結合を指す。典型的には、抗体は、(i)例えば、分析物として所定の抗原、例えば組換えヒトTREM-1を使用し、リガンドとして抗体を使用するBIACORE(登録商標)2000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーによって、または抗原陽性細胞への抗体の結合のScatchard分析によって決定した場合に、およそ10-7M未満、例えば、およそ10-8M、10-9Mもしくは10-10M未満またはさらに低い平衡解離定数(KD)で結合する、および(ii)所定の抗原または密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのその親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で、所定の抗原に結合する。従って、「ヒトTREM-1に特異的に結合する」抗体は、10-7M以下、例えば、およそ10-8M、10-9Mもしくは10-10M未満またはさらに低いKDで、可溶性または細胞結合型ヒトTREM-1に結合する抗体を指す。「カニクイザルTREM-1と交差反応する」抗体は、10-7M以下、例えば、およそ10-8M、10-9Mもしくは10-10M未満またはさらに低いKDで、カニクイザルTREM-1に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、非ヒト種由来のTREM-1と交差反応しないかかる抗体は、標準的な結合アッセイにおいて、これらのタンパク質に対する本質的に検出不能な結合を示す。
【0056】
本明細書の用語「結合特異性」は、分子、例えば、抗体またはその断片と、単一の排他的な抗原または限定数の高度に相同な抗原(もしくはエピトープ)との相互作用を指す。対照的に、TREM-1に特異的に結合することが可能な抗体は、非類似の分子に結合することが不可能である。本発明に従う抗体は、ナチュラルキラー細胞p44関連タンパク質Nkp44に結合することが不可能であり得る。
相互作用の特異性および平衡結合定数の値は、周知の方法によって直接的に決定され得る。リガンド(例えば、抗体)がそれらの標的に結合する能力を評価するための標準的なアッセイは、当該分野で公知であり、これには、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIAおよびフローサイトメトリー分析が含まれる。抗体の結合速度論および結合親和性もまた、当該分野で公知の標準的なアッセイ、例えばSPRによって評価され得る。
【0057】
2つの抗体が結合について競合または交差競合するかどうかを決定するための競合的結合アッセイには、以下が含まれる:例えば、実施例に記載されるようなフローサイトメトリーによる、TREM-1を発現するミエロイド細胞への結合についての競合。他の方法には、以下が含まれる:SPR(例えば、BIACORE(登録商標))、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242 (1983)を参照のこと);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614 (1986)を参照のこと);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)を参照のこと);1-125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al., Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)を参照のこと);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546 (1990));および直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「ビン」は、参照抗体を使用して定義される。第2の抗体が、参照抗体と同時に抗原に結合することができない場合、この第2の抗体は、参照抗体と同じ「ビン」に属すると言われる。この場合、参照抗体および第2の抗体は、抗原の同じ部分に競合的に結合し、「競合抗体」と呼ばれる。第2の抗体が、参照抗体と同時に抗原に結合することが可能である場合、この第2の抗体は、別々の「ビン」に属すると言われる。この場合、参照抗体および第2の抗体は、抗原の同じ部分に競合的に結合せず、「非競合抗体」と呼ばれる。
【0059】
抗体「ビニング」は、エピトープについての直接的な情報を提供しない。競合抗体、即ち、同じ「ビン」に属する抗体は、同一のエピトープ、重複するエピトープまたはさらには別々のエピトープを有し得る。後者は、抗原上のそのエピトープに結合した参照抗体が、第2の抗体が抗原上のそのエピトープに接触するのに必要とされる空間を占める場合に当てはまる(「立体障害」)。非競合抗体は、一般に、別々のエピトープを有する。
本明細書の用語「結合親和性」は、2つの分子間、例えば、抗体またはその断片と抗原との間の非共有結合相互作用の強度の尺度を指す。用語「結合親和性」は、一価相互作用(固有の活性)を記載するために使用される。
一価相互作用を介した、2つの分子間、例えば、抗体またはその断片と抗原との間の結合親和性は、平衡解離定数(KD)の決定によって定量化され得る。次に、KDは、例えば、SPR法による、複合体の形成および解離の速度論の測定によって決定され得る。一価複合体の会合および解離に対応する速度定数は、それぞれ、会合速度定数ka(またはkon)および解離速度定数kd(またはk0ff)と呼ばれる。KDは、方程式KD=kd/kaを介して、kaおよびkdと関連付けられる。上記定義によれば、異なる分子相互作用と関連する結合親和性、例えば、所与の抗原に対する異なる抗体の結合親和性の比較は、個々の抗体/抗原複合体についてのKD値の比較によって比較され得る。
【0060】
本明細書で使用する場合、IgG抗体について「高い親和性」という用語は、標的抗原に対する10-8M以下、10-9M以下または10-10M以下のKDを有する抗体を指す。しかし、「高い親和性」の結合は、他の抗体アイソタイプについて変動し得る。例えば、IgMアイソタイプについての「高い親和性」の結合は、10-10M以下または10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
抗体またはその抗原結合断片を使用するin vitroまたはin vivoアッセイとの関連での「EC50」という用語は、最大応答の50%、即ち、最大応答とベースラインとの間の中間である応答を誘導する、抗体またはその抗原結合部分の濃度を指す。
用語「天然に存在する」は、目的語に適用して本明細書で使用する場合、目的語が天然に見出され得るという事実を指す。例えば、天然の供給源から単離され得、実験室において人によって故意に改変されていない、生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0061】
「ポリペプチド」は、少なくとも2つの連続して連結されたアミノ酸残基を含む鎖を指し、鎖の長さについて上限はない。タンパク質中の1つ以上のアミノ酸残基が、例えば、グリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合形成であるがこれらに限定されない改変を含み得る。「タンパク質」は、1つ以上のポリペプチドを含み得る。
用語「核酸分子」は、本明細書で使用する場合、DNA分子およびRNA分子を含む意図である。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得、cDNAであり得る。
【0062】
「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基による、アミノ酸残基の置換を指す。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。ある特定の実施形態では、抗TREM-1抗体中の予測された非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えられる。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を同定する方法は、当該分野で周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993);Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);およびBurks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)を参照のこと)。
【0063】
核酸について、用語「実質的な相同性」は、2つの核酸またはそれらの指定された配列が、最適にアラインおよび比較された場合に、適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴って、ヌクレオチドの少なくとも約80%、ヌクレオチドの少なくとも約90%~95%または少なくとも約98%~99.5%が同一であることを示す。あるいは、セグメントが、選択的ハイブリダイゼーション条件下でその鎖の相補体にハイブリダイズする場合に、実質的な相同性が存在する。
ポリペプチドについて、用語「実質的な相同性」は、2つのポリペプチドまたはそれらの指定された配列が、最適にアラインおよび比較された場合に、適切なアミノ酸挿入または欠失を伴って、アミノ酸の少なくとも約80%、アミノ酸の少なくとも約90%~95%または少なくとも約98%~99.5%が同一であることを示す。
【0064】
2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、それらの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(即ち、%相同性=同一の位置の数/位置の総数×100)。2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、以下の非限定的な例に記載されるように、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0065】
2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70または80のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5または6のレングスウェイトを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(worldwideweb.gcg.comにおいて入手可能)を使用して決定され得る。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、PAM120ウェイト残基テーブル(weight residue table)、12のギャップレングスペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれたE. Meyers and W. Miller (CABIOS, 4: 11-17 (1989))のアルゴリズムを使用して決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5または6のレングスウェイトを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(worldwideweb.gcg.comにおいて入手可能)中に組み込まれたNeedleman and Wunsch (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))アルゴリズムを使用して決定され得る。
【0066】
本明細書に記載される核酸およびタンパク質配列は、例えば、関連配列を同定するために公のデータベースに対して検索を実施するための「クエリー配列」として、さらに使用され得る。かかる検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。BLASTヌクレオチド検索は、本明細書に記載される核酸分子に対して相同なヌクレオチド配列を取得するために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を用いて実施され得る。BLASTタンパク質検索は、本明細書に記載されるタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を取得するために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を用いて実施され得る。比較目的のためにギャップ付きアラインメントを取得するために、Gapped BLASTが、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されるように利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用され得る。worldwideweb.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0067】
核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分的に精製された形態でもしくは実質的に純粋な形態で、存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当該分野で周知の他のものを含む標準的な技術によって、他の細胞性構成要素または他の混入物、例えば、他の細胞性核酸(例えば、染色体の他の部分)またはタンパク質から精製された場合、「単離された」または「実質的に純粋にされた」。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照のこと。
【0068】
核酸、例えばcDNAは、遺伝子配列を提供するために、標準的な技術に従って変異され得る。コード配列について、これらの変異は、所望によりアミノ酸配列に影響を与え得る。特に、本明細書に記載されるネイティブV、D、J、定常、スイッチおよび他のかかる配列に対して実質的に相同なまたはそれに由来するDNA配列が企図される(ここで、「由来する」は、配列が、別の配列と同一であることまたは別の配列から改変されていることを示す)。
【0069】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す意図である。1つの型のベクターは、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがその中にライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノム中にライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが中に導入された宿主細胞において自律複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、それによって、宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することが可能である。かかるベクターは、本明細書で「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。プラスミドは、ベクターの最も一般に使用される形態であるので、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、相互交換可能に使用され得る。しかし、等価な機能を果たす他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)もまた含まれる。
【0070】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書で使用する場合、細胞中には天然に存在しない核酸を含む細胞を指す意図であり、組換え発現ベクターが中に導入された細胞であり得る。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫もまた指す意図であることを理解すべきである。ある特定の改変が、変異または環境的影響のいずれかに起因して、引き続く世代において生じ得るので、かかる子孫は、実際には、親細胞と同一ではあり得ないが、本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」の範囲内になおも含まれる。
本明細書で使用する場合、用語「連結された」は、2つ以上の分子の会合を指す。連結は、共有結合的または非共有結合的であり得る。連結はまた、遺伝的(即ち、組換え融合された)であり得る。かかる連結は、広範な種々の当該分野で認識された技術、例えば、化学的コンジュゲーションおよび組換えタンパク質産生を使用して達成され得る。
【0071】
本明細書で使用する場合、「投与すること」は、当業者に公知の種々の方法および送達系のいずれかを使用した、治療剤を含む組成物の、対象への物理的導入を指す。本明細書に記載される抗TREM-1抗体のための異なる経路の投与には、例えば、注射または注入による、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または他の非経口経路の投与が含まれる。語句「非経口投与」は、本明細書で使用する場合、通常は注射による、経腸および外用投与以外の投与の様式を意味し、これには、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内(intrasternal)の注射および注入、ならびにin vivoエレクトロポレーションが含まれるがこれらに限定されない。あるいは、本明細書に記載される抗体は、非-非経口(non-parenteral)経路、例えば、外用、表皮または粘膜経路の投与を介して、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または外用で投与され得る。投与することはまた、例えば、1回、複数回、および/または1つ以上の延長された期間にわたって、実施され得る。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「阻害する」または「遮断する」(例えば、細胞上のTREM-1へのTREM-1リガンドの結合の阻害/遮断を指す)は、相互交換可能に使用され、部分的および完全な阻害/遮断の両方を包含する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば、本明細書にさらに記載されるように決定した場合に、TREM-1へのTREM-1リガンドの結合を、少なくとも約50%、例えば、約60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%阻害する。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、例えば、本明細書にさらに記載されるように決定した場合に、TREM-1へのTREM-1リガンドの結合を、50%以下、例えば、約40%、30%、20%、10%、5%または1%阻害する。
【0073】
用語「処置する」、「処置すること」および「処置」は、本明細書で使用する場合、疾患と関連する症状、合併症、状態もしくは生化学的兆候の進行、発症、重症度もしくは再発を、逆転、軽減、寛解、阻害または減速もしくは予防すること、あるいは全生存を増強することを目的として、対象に対して実施される任意の型の介入もしくはプロセス、または対象に活性薬剤を投与することを指す。処置は、疾患を有する対象または疾患を有さない対象(例えば、予防のため)の処置であり得る。
【0074】
用語「有効用量」または「有効投薬量」は、所望の効果を達成するまたは少なくとも部分的に達成するのに十分な量として定義される。薬物または治療剤の「治療有効量」または「治療有効投薬量」は、単独でまたは別の治療剤と組み合わせて使用した場合に、疾患症状の重症度における減少、疾患症状なし期間の頻度および持続時間における増加、または疾患の苦痛に起因する機能障害もしくは能力障害の予防によって明らかな疾患退縮を促進する、薬物の任意の量である。薬物の治療有効量または投薬量は、「予防有効量」または「予防有効投薬量」を含み、これは、単独でまたは別の治療剤と組み合わせて、疾患を発症するリスクがある対象または疾患の再発に罹患するリスクがある対象に投与した場合に、疾患の発症または再発を阻害する、薬物の任意の量である。治療剤が疾患退縮を促進する能力または疾患の発症もしくは再発を阻害する能力は、例えば、臨床試験の間にヒト対象において、ヒトでの効力を予測する動物モデル系において、当業者に公知の種々の方法を使用して、またはin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって、評価され得る。
用語「患者」は、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。例えば、本明細書に記載される方法および組成物は、がんを有する対象を処置するために使用され得る。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
本明細書で使用する場合、用語「ug」および「uM」は、それぞれ、「μg」および「μΜ」と相互交換可能に使用される。
本明細書に記載される種々の態様は、以下のサブセクションにさらに詳細に記載される。
【0075】
I.抗TREM-1抗体
特定の機能的特色または特性を特徴とする抗体、例えば、完全ヒト抗体が、本明細書に記載される。例えば、本開示の抗体は、ヒトTREM-1、より具体的には、ヒトTREM-1の細胞外ドメイン内の特定のドメイン(例えば、機能的ドメイン)に、特異的に結合する。一実施形態では、これらの抗体は、TREM-1リガンド(例えば、PGLYRP1)が結合するTREM-1上の部位に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、これらの抗体は、アンタゴニスト抗体である、即ち、これらは、細胞、例えば、単球、マクロファージおよび好中球上のTREM-1の活性を阻害または抑制する(即ち、結合の際にアゴナイズしない)。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、1つ以上の非ヒト霊長類由来のTREM-1、例えば、カニクイザルTREM-1と交差反応する。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、活性化の際に、細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、好中球)による炎症性サイトカイン(例えば、IL-6、TNF-α、IL-8、IL-1β、IL-12、およびそれらの組み合わせ)の産生を遮断する。他の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、1つ以上のFcγRに結合しないFc領域を含む。さらなる実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、ミエロイド細胞(例えば、樹状細胞)による炎症促進性サイトカインの放出を誘導せず、それによって、それを必要とする対象への抗TREM-1抗体の投与後の、炎症性サイトカインストームの発生を低減または予防する。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に記載される特定の抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1への結合についてmAb 0318と交差競合する抗体、例えば、モノクローナル、組換えおよび/またはヒト抗体である。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、カニクイザルTREM-1への結合についても、mAb 0318と交差競合する。言い換えれば、本開示の抗TREM-1抗体は、ある特定の実施形態では、mAb 0318と同じ「ビン」に属する。
mAb 0318抗体は、配列番号14を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号15を含む軽鎖可変領域(VL)を有する。国際出願公開番号2016/009086を参照のこと。mAb 0318はまた、それぞれ配列番号14のアミノ酸31~35、50~68および101~110に対応する重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を有する。mAb 0318抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3は、配列番号15のアミノ酸24~38、54~60および93~101に対応する。
【0077】
従って、一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、それぞれ配列番号14および15のVHおよびVLを含む。別の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHは、配列番号14のアミノ酸31~35(TYAMH)のCDR1配列を含み、これらのアミノ酸のうち1つは、異なるアミノ酸によって置換され得る。ある特定の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHは、配列番号14のアミノ酸50~68(RIRTKSSNYATYYAASVKG)のCDR2配列を含み、これらのアミノ酸のうち1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸によって置換され得る。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHは、配列番号14のアミノ酸101~110(DMGIRRQFAY)のCDR3配列を含み、これらのアミノ酸のうち1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸によって置換され得る。
【0078】
一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVLは、配列番号15のアミノ酸24~38(QQSNQDPYT)のCDR1配列を含み、これらのアミノ酸のうち1つ、2つまたは3つは、異なるアミノ酸によって置換され得る。他の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVLは、配列番号15のアミノ酸54~60(RASNLES)のCDR2配列を含み、これらのアミノ酸のうち1つまたは2つは、異なるアミノ酸によって置換され得る。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVLは、配列番号15のアミノ酸93~101(QQSNQDPYT)のCDR3配列を含み、これらのアミノ酸のうち1つまたは2つは、異なるアミノ酸によって置換され得る。
【0079】
抗体のCDR中のメチオニン残基は酸化され得、抗体の潜在的な化学的分解、および結果として生じる、そのポテンシーにおける低減を生じる。従って、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、重鎖および/または軽鎖CDR中の1つ以上のメチオニン残基が、酸化的分解を受けないアミノ酸残基で置き換えられていてもよい。一部の実施形態では、重鎖CDR1およびCDR3内のメチオニン残基は、酸化的分解を受けないアミノ酸残基(例えば、グルタミンまたはロイシン)で置き換えられる。従って、一実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHは、配列番号81のアミノ酸101~110(DQGIRRQFAY)または配列番号82のアミノ酸101~110(DLGIRRQFAY)のCDR3配列を含む。他の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHは、配列番号83のアミノ酸31~35(TYAQH)または配列番号84のアミノ酸31~35(TYALH)のCDR1配列を含む。同様に、一部の実施形態では、脱アミド部位は、特にCDR中で、抗TREM-1抗体から除去され得る。
【0080】
一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHおよびVLは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際出願公開番号WO2017/152102に開示される抗TREM-1抗体のVHおよびVL配列を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体のVLは、WO2017/152102の配列番号9~27からなる群から選択されるCDR1配列、WO2017/152102の配列番号28~40からなる群から選択されるCDR2配列および/またはWO2017/152102の配列番号41~119からなる群から選択されるCDR3配列を含む。一実施形態では、この抗TREM-1抗体のVHは、WO2017/152102の配列番号120~143からなる群から選択されるCDR1配列、WO2017/152102の配列番号144~172からなる群から選択されるCDR2配列および/またはWO2017/152102の配列番号173~247からなる群から選択されるCDR3配列を含む。
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、mAb 0318抗体のCDRおよび/または可変領域配列に対して少なくとも80%の同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも95%または少なくとも99%の同一性)を有するCDRおよび/または可変領域配列を含む。
【0081】
一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、それぞれ配列番号14および15を含む重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含み、このHCは、配列番号50、配列番号51、配列番号52または配列番号53を含む。一部の実施形態では、このLCは、配列番号54を含む。
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、WO2017/152102の配列番号396~475からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)および/またはWO2017/152102の配列番号316~395からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0082】
一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖および軽鎖は、表7に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号50に示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。
【0083】
本明細書に示される重鎖または軽鎖のいずれか、例えば、配列番号50~54に対して少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%または80%同一なアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖が、所望の特徴を有する抗TREM-1抗体、例えば、本明細書にさらに記載されるものを形成するために使用され得る。
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、重鎖および軽鎖を含み、この重鎖は、配列番号50、51、52または53に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号54に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0084】
一部の実施形態では、この抗TREM1抗体は、重鎖定常領域を含み、この重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、D356E、L358M、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖定常領域を含み、この重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、A330S、P331S、D356E、L358M、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖定常領域を含み、この重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229S、P238S、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、重鎖定常領域を含み、この重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229S、P238S、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、この抗TREM-1抗体は、例えば、表面プラズモン共鳴を使用して決定した場合に、ヒトTREM-1のバリアント(例えば、TREM-1アイソフォーム2および3、それぞれ、配列番号2および3)に結合することが可能である。別の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、例えば、表面プラズモン共鳴を使用して決定した場合に、カニクイザルTREM-1(配列番号7)に結合することが可能である。
【0085】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、高い親和性で、例えば、BIACORE(商標)(例えば、実施例に記載される)によって決定した場合に、10-7M以下、10-8M以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7Mまたは10-9M~10-7MのKDで、ヒトTREM-1に結合する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、例えば、BIACORE(商標)(例えば、実施例に記載される)によって決定した場合に、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7Mまたは10-9M~10-7MのKDで、カニクイザルTREM-1に結合する。
【0086】
一実施形態では、本開示の抗体は、mAb 0318抗体と同じエピトープのうち1つ以上において、抗TREM-1に結合する。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1(例えば、アイソフォーム1、配列番号1)の、(i)A21、T22、K23、L24、T25、E26、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基、ならびに(ii)A49、S50、S51、Q52、K53、A54、W55、Q56、157、158、R59、D60、G61、E62、M63、P64、K65、T66、L67、A68、C69、T70、E71、R72、P73、S74、K75、N76、S77、H78、P79、V80、Q81、V82、G83、R84、185、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基、ならびに(iii)C113、V114、1115、Y116、Q117、P118、P119、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基に、特異的に結合することが可能である。WO2016/009086を参照のこと。
【0087】
一実施形態では、この抗TREM-1抗体は、例えば、HX-MSまたはX線回折を使用して決定した場合に、配列番号1(ヒトTREM-1)のアミノ酸D38~F48に特異的に結合することが可能である。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、例えば、HX-MSまたはX線回折を使用して決定した場合に、配列番号1(ヒトTREM-1)のアミノ酸残基D38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44およびL45のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは全てならびに配列番号1(ヒトTREM-1)のE46、K47およびF48からなる群から選択されるアミノ酸残基のうち1つ、2つまたは全てを含むエピトープを有する。ある特定の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、TREM-1のバリアントおよび表面プラズモン共鳴を使用して決定した場合に、配列番号1(ヒトTREM-1)のD42、E46、D92およびH93からなる群から選択されるアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つまたは全てを含むエピトープを有する。
【0088】
一実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、TREM-1のバリアントおよび表面プラズモン共鳴を使用して決定した場合に、配列番号1(ヒトTREM-1)の少なくともアミノ酸残基E46および/またはD92を含むエピトープを有する。別の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、配列番号1(ヒトTREM-1)のL31、186およびV101からなる群から選択されるアミノ酸残基のうち1つ、2つまたは全てを含む。ある特定の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、例えば、HX-MSまたはX線回折を使用して決定した場合に、カニクイザルTREM-1(配列番号7)のアミノ酸残基E19~L26を含むポリペプチドに特異的に結合することが可能である。
一実施形態では、この抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に特異的に結合することが可能であり、この抗体のエピトープは、配列番号1のV39、K40、C41、D42、Y43、L45、E46、K47、F48およびA49からなる群から選択されるアミノ酸残基のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは全てを含む。
【0089】
一実施形態では、この抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に特異的に結合することが可能であり、この抗体のエピトープは、配列番号1のD42を含む。他の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、ヒトTREM-1に特異的に結合することが可能であり、この抗体のエピトープは、配列番号1のE46を含む。一部の実施形態では、この抗体のエピトープは、配列番号1のV39、C41、D42、Y43、L45を含み得る。さらなる実施形態では、この抗体のエピトープは、配列番号1のE46、K47およびA49を含み得る。具体的な実施形態では、この抗TREM-1抗体のエピトープは、配列番号1のF48をさらに含み得る。
【0090】
一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、mAb 0318抗体のものと類似の粘度プロファイルを有する。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、80mg/mLの濃度で、5cP未満、4cP未満、3cP未満、2.5cP未満、2.4cP未満、2.3cP未満、2.2cP未満、2.1cP未満、2cP未満、1.9cP未満、1.8cP未満、1.7cP未満、1.6cP未満、1.5cP未満、1.4cP未満、1.3cP未満、1.2cP未満、1.1cP未満、1.0cP未満、0.9cP未満、0.8cP未満、0.7cP未満、0.6cP未満、0.5cP未満、0.4cP未満、0.3cP未満、0.2cP未満または0.1cP未満の粘度を有する。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、130mg/mLの濃度で、10cP未満(例えば、9cP)の粘度を有する。
【0091】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、抗体の軽鎖CDR1およびCDR3領域中の1つ以上の負に荷電した残基が非荷電の残基で置換される変異を含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、配列番号15のアミノ酸残基D1、D30、D33、D74、D98、E27およびE97のうち1つ以上において、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システインおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基による置換を含む。これらの変異は、本明細書で「電荷パッチ(charge patch)」変異と呼ばれる。
【0092】
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、Fab-Fabダイマー化を低減させるために、配列番号14のFab-Fab相互作用領域中に変異を含む。抗体は2つのFabを含むので、マルチマー化が粘度に影響を与え得ることが、mAb 0318抗体で以前に示されている。これらの変異は、「Fab-Fab相互作用」変異と呼ばれる。ある特定の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、配列番号14の残基Y32、R52、S55、S56、N57、A59、M102、I104およびR106または配列番号15のF32、D33、Y34、Y53、R54およびD98のうちいずれか1つにおいて、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基による変異を含む。
【0093】
一実施形態では、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、配列番号15の位置32において変異を含み、ここで、フェニルアラニンが、アミノ酸残基グリシン、セリン、スレオニン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸に変異される。かかる変異は、配列番号1の位置Y90におけるAla置換が、TREM-1に対する配列番号3の親和性を改善したという観察に基づく。Y90は、配列番号15のフェニルアラニン残基と相互作用することが見出された。Fab-TREM-1相互作用を改善するための配列番号15の変異は、「Fab-TREM-1相互作用」変異と呼ばれる。その可変領域がFc、例えば、任意のアロタイプまたはイソアロタイプ、例えば、IgG1については:G1m、G1m1(a)、G1m2(x)、G1m3(f)、G1m17(z);IgG2については:G2m、G2m23(n);IgG3については:G3m、G3m21(g1)、G3m28(g5)、G3m11(b0)、G3m5(b1)、G3m13(b3)、G3m14(b4)、G3m10(b5)、G3m15(s)、G3m16(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v);およびKについては:Km、Km1、Km2、Km3のものであり得るIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fcなどに連結された(例えば、共有結合的に連結されたまたは融合された)抗TREM-1抗体が、本明細書で提供される(例えば、Jeffries et al. (2009) mAbs 1:1を参照のこと)。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗TREM-1抗体の可変領域は、エフェクターなしまたはほぼエフェクターなしのFc、例えば、IgG1に連結される。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体の可変領域は、1つ以上のFcγRへの低減された結合を有するまたは1つ以上のFcγRに結合することが不可能なFcに連結される。
【0094】
一実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体のVHドメインは、例えば、本明細書にさらに記載される、天然に存在するまたは改変されたヒトIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の定常ドメイン(即ち、Fc)に融合され得る。例えば、VHドメインは、ヒトIgG、例えば、IgG1、定常領域、例えば、以下の野生型ヒトIgG1定常ドメインアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)または以下のアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号77;アロタイプ特異的なアミノ酸残基は、太字かつ下線付きである)を有する配列番号9のアロタイプバリアントのアミノ酸配列に融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0095】
一実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体のVHドメインは、エフェクターなし定常領域、例えば、以下のエフェクターなしヒトIgG1定常ドメインアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号78;EU番号付けに従う、下線付きの置換L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sを含む「IgG1.1f」)または
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号79;EU番号付けに従う、下線付きの置換L234A、L235EおよびG237Aを含む「IgG1.3f」)に融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0096】
例えば、IgG1のアロタイプバリアントは、配列番号77~79中のものに従って番号付けして、K97R、D239Eおよび/またはL241M(上で下線付きかつ太字)を含む。全長重鎖領域内で、EU番号付けに従うと、これらのアミノ酸置換は、K214R、D356EおよびL358Mと番号付けされる。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体の定常領域は、配列番号77~79中と同様に番号付けしてアミノ酸L117、A118、G120、A213およびP214(上で下線付き)、またはEU番号付けに従ってL234、A235、G237、A330およびP331において、1つ以上の変異または置換をさらに含む。さらなる実施形態では、この抗TREM-1抗体の定常領域は、配列番号77~79のアミノ酸L117A、A118E、G120A、A213SおよびP214S、またはEU番号付けに従ってL234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sにおいて、1つ以上の変異または置換を含む。この抗TREM-1抗体の定常領域はまた、配列番号9のL117A、A118EおよびG120A、またはEU番号付けに従ってL234A、L235EおよびG237Aにおいて、1つ以上の変異または置換を含み得る。
【0097】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体のVHドメインは、以下のアミノ酸配列:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKVEPKSCDKTHTPPPAPELLGGSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11;EU番号付けに従って、下線付きの置換K214R、C226S、C229SおよびP238Sを含む「IgG1-Aba」);または
ASTKGPSVFPLAPSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTTYCNVHKPSNTKVDKVEPKSCDKTHTPPPAPELLGGSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号12;EU番号付けに従って、下線付きの置換S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sを含む「IgG4-Aba」)を含むIgG1定常ドメインに融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含む。
【0098】
本明細書に記載されるVLドメインは、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖の定常ドメインに融合され得る。例えば、抗TREM-1抗体のVLドメインは、以下のヒトIgG1カッパ軽鎖アミノ酸配列:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号13)に融合された、本明細書に記載される任意のVLドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、この重鎖定常領域は、C末端においてリジンまたは別のアミノ酸を含む、例えば、以下の最後のアミノ酸:重鎖中のLSPGK(配列番号48)を含む。ある特定の実施形態では、この重鎖定常領域は、C末端において1つ以上のアミノ酸を欠いており、例えば、C末端配列LSPG(配列番号49)またはLSPを有する。
一実施形態では、この抗TREM-1抗体の可変領域は、エフェクターなしまたはほぼエフェクターなしのFcに連結される。ある特定の実施形態では、この抗TREM-1抗体の可変領域は、本明細書に記載されるように、IgG1.1f、IgG1.3f、IgG1-AbaおよびIgG4-Abaからなる群から選択されるFcに連結される。
【0100】
一般に、本明細書に記載される可変領域は、抗体の1つ以上の機能的特性、例えば、Fc受容体結合、炎症性サイトカイン放出、血清半減期、補体結合および/または抗原依存性細胞性細胞傷害を典型的には変更するための1つ以上の改変を含むFcに連結され得る。さらに、本明細書に記載される抗体は、抗体の1つ以上の機能的特性を変更するために、化学的に改変され得(例えば、1つ以上の化学的部分が、抗体に結合され得る)、またはそのグリコシル化を変更するように改変され得る。これらの実施形態の各々は、以下にさらに詳細に記載される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。
Fc領域は、定常領域の断片、アナログ、バリアント、変異体または誘導体を含む、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、ならびに他のクラス、例えば、IgA、IgD、IgEおよびIgM)の定常領域に由来するドメインを包含する。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリンC末端領域に対して相同な、天然に存在するまたは合成により産生されたポリペプチドとして定義され、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを、別々にまたは組み合わせて含み得る。
【0101】
Ig分子は、複数のクラスの細胞性受容体と相互作用する。例えば、IgG分子は、IgGクラスの抗体に対して特異的な3つのクラスのFcγ受容体(FcγR)、即ち、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIと相互作用する。IgGのFcγR受容体への結合にとって重要な配列は、CH2ドメインおよびCH3ドメイン中に位置すると報告されている。抗体の血清半減期は、その抗体がFc受容体(FcR)に結合する能力によって影響される。
一実施形態では、これらの抗TREM-1抗体のFc領域は、バリアントFc領域、例えば、望ましい構造的特色および/または生物学的活性を提供するために、親Fc配列(例えば、バリアントを生成するために引き続いて改変される未改変のFcポリペプチド)と比較して、(例えば、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入によって)改変されたFc配列である。
【0102】
例えば、親Fcと比較して、(a)増加もしくは減少した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を有する、(b)増加もしくは減少した補体媒介性細胞傷害(CDC)を有する、(c)C1qに対する増加もしくは減少した親和性を有する、および/または(d)Fc受容体に対する増加もしくは減少した親和性を有するFcバリアントを生成するために、Fc領域中に改変を行うことができる。かかるFc領域バリアントは、一般に、Fc領域中に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。アミノ酸改変を組み合わせることが、特に望ましいと考えられる。例えば、バリアントFc領域は、その中に、例えば、本明細書で同定された具体的なFc領域位置の、2つ、3つ、4つ、5つなどの置換を含み得る。
【0103】
バリアントFc領域は、ジスルフィド結合形成に関与するアミノ酸が除去されたまたは他のアミノ酸で置き換えられた配列変更もまた含み得る。かかる除去は、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を産生するために使用される宿主細胞中に存在する他のシステイン含有タンパク質との反応を回避し得る。システイン残基が除去された場合であっても、単鎖Fcドメインは、非共有結合的に一緒に維持されるダイマーFcドメインをなおも形成できる。他の実施形態では、Fc領域は、選択された宿主細胞とより適合性になるように改変され得る。例えば、典型的なネイティブFc領域のN末端近傍の、E.coliにおける消化酵素、例えば、プロリンイミノペプチダーゼによって認識され得るPA配列を除去することができる。他の実施形態では、Fcドメイン内の1つ以上のグリコシル化部位が除去され得る。典型的にはグリコシル化される残基(例えば、アスパラギン)が、細胞溶解応答を付与し得る。かかる残基は、欠失され得、またはグリコシル化されていない残基(例えば、アラニン)で置換され得る。他の実施形態では、補体との相互作用に関与する部位、例えば、C1q結合部位が、Fc領域から除去され得る。例えば、ヒトIgG1のEKK配列を欠失または置換することができる。ある特定の実施形態では、Fc受容体への結合に影響を与える部位、好ましくは、サルベージ受容体結合部位以外の部位が除去され得る。他の実施形態では、Fc領域は、ADCC部位を除去するために改変され得る。ADCC部位は、当該分野で公知である;IgG1中のADCC部位に関しては、例えば、Sarmay et al., Molec. Immunol. 29 (5): 633-9 (1992)を参照のこと。バリアントFcドメインの具体的な例は、例えば、WO97/34631およびWO96/32478に開示されている。
【0104】
一実施形態では、Fcのヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更される、例えば、増加または減少されるように改変される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。Fcのヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリを促進するため、または抗体の安定性を増加もしくは減少させるために、変更される。一実施形態では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるために変異される。より具体的には、抗体が、ネイティブFc-ヒンジドメインSpA結合と比較して、損なわれたブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を有するように、1つ以上のアミノ酸変異が、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域中に導入される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号に、さらに詳細に記載されている。
【0105】
なお他の実施形態では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによって変更される。例えば、抗体が、エフェクターリガンドに対する変更された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するように、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320、322、330および/または331から選択される1つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る。それに対する親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、共にWinterによる米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に、さらに詳細に記載されている。
【0106】
別の例では、抗体が変更されたC1q結合および/または低減もしくは消失した補体依存性細胞傷害(CDC)を有するように、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号に、さらに詳細に記載されている。
別の例では、アミノ酸位置231および239内の1つ以上のアミノ酸残基が、抗体が補体を固定する能力をそれによって変更するために変更される。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開番号WO94/29351に、さらに記載されている。
【0107】
なお別の例では、Fc領域は、以下の位置:234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438または439において1つ以上のアミノ酸を改変することによって、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を減少させるためおよび/またはFcγ受容体に対する親和性を減少させるために改変され得る。例示的な置換には、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332Dおよび332Eが含まれる。例示的なバリアントには、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324Tおよび267E/268F/324Tが含まれる。FcγRおよび補体との相互作用を増強するための他の改変には、置換298A、333A、334A、326A、2471、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、3051および396Lが含まれるがこれらに限定されない。これらおよび他の改変は、Strohl, 2009, Current Opinion in Biotechnology 20:685-691に概説されている。
【0108】
Fcに対してなされ得る他のFc改変は、FcγRおよび/または補体タンパク質への結合を低減または消失させ、それによって、Fc媒介性エフェクター機能、例えば、ADCC、ADCPおよびCDCを低減または消失させるためのものである。例示的な改変には、234位、235位、236位、237位、267位、269位、325位、328位、330位および/または331位(例えば、330位および331位)における置換、挿入および欠失が含まれるがこれらに限定されず、ここで、番号付けは、EUインデックスに従う。例示的な置換には、234A、235E、236R、237A、267R、269R、325L、328R、330Sおよび331S(例えば、330Sおよび331S)が含まれるがこれらに限定されず、ここで、番号付けは、EUインデックスに従う。Fcバリアントは、236R/328Rを含み得る。FcγRおよび補体との相互作用を低減させるための他の改変には、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233Pおよび234V、ならびに変異的もしくは酵素的手段による、またはタンパク質をグリコシル化しない細菌などの生物における産生による、297位におけるグリコシル化の除去が含まれる。これらおよび他の改変は、Strohl, 2009, Current Opinion in Biotechnology 20:685-691に概説されている。
【0109】
任意に、Fc領域は、当業者に公知のさらなるおよび/または代替的な位置において、天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号;同第6,277,375号;同第6,737,056号;同第6,194,551号;同第7,317,091号;同第8,101,720号;国際出願公開番号WO00/42072;WO01/58957;WO02/06919;WO04/016750;WO04/029207;WO04/035752;WO04/074455;WO04/099249;WO04/063351;WO05/070963;WO05/040217、WO05/092925およびWO06/0201 14を参照のこと)。
【0110】
そのリガンドに対するFc領域の親和性および結合特性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunoabsorbent assay)(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))または速度論(例えば、BIACORE分析)、ならびに他の方法、例えば、間接的結合アッセイ、競合的阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)が含まれるがこれらに限定されない、当該分野で公知の種々のin vitroアッセイ法(生化学的または免疫学的ベースアッセイ)によって決定され得る。これらおよび他の方法は、試験されている構成要素のうち1つ以上の上の標識を利用し得る、および/または発色、蛍光、発光もしくは同位体標識が含まれるがこれらに限定されない種々の検出法を使用し得る。結合親和性および速度論の詳細な記載は、抗体-免疫原相互作用に焦点を当てた、Paul, W. E., ed., Fundamental immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)中に見出すことができる。
【0111】
ある特定の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、FcγRへの低減された結合を有するまたはFcγRに結合することが不可能なFcを含む。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、またはそれらの任意の組み合わせに対する減少した結合親和性を有する。一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)に対する、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下または10分の1以下に減少した結合親和性を有する。
【0112】
一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、以下を含むIgG1 Fcバリアントを含む:(a)EU番号付けに従って、L234A、L235E、G237A、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換;(b)EU番号付けに従って、L234A、L235E、G237A、A330S、P331S、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換;(c)EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229S、P238S、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換;または(d)EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229S、P238S、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換。
【0113】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、(a)IgG1アイソタイプを有し、N297A、N297Q、D270A、D265A、L234A、L235A、C226S、C229S、P238S、E233P、L234V、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、L234F、L235E、P331S、T394D、A330L、M252Y、S254T、T256E、L328E、P238D、S267E、L328F、E233D、G237D、H268D、P271G、A330R、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸残基において、Fc領域中に1つ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、残基の番号付けは、EUもしくはKabat番号付けに従い、またはグリシン236に対応する位置において、Fc領域中にアミノ酸欠失を含む;(b)IgG2アイソタイプを有し、P238S、V234A、G237A、H268A、H268Q、H268E、V309L、N297A、N297Q、A330S、P331S、C232S、C233S、M252Y、S254T、T256E、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸残基において、Fc領域中に1つ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、残基の番号付けは、EUもしくはKabat番号付けに従う;あるいは(c)IgG4アイソタイプを有し、E233P、F234V、L234A/F234A、L235A、G237A、E318A、S228P、L236E、S241P、L248E、T394D、M252Y、S254T、T256E、N297A、N297Q、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸残基において、Fc領域中に1つ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、残基の番号付けは、EUもしくはKabat番号付けに従う。一部の実施形態では、(a)Fc領域は、A330L、L234F;L235E、P331S、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸残基において、1つ以上のさらなるアミノ酸置換をさらに含み、ここで、残基の番号付けは、EUもしくはKabat番号付けに従う;(b)Fc領域は、M252Y、S254T、T256E、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される位置において、1つ以上のさらなるアミノ酸置換をさらに含み、ここで、残基の番号付けは、EUもしくはKabat番号付けに従う;または(c)Fc領域は、EUもしくはKabat番号付けに従って、S228Pアミノ酸置換をさらに含む。WO2017/152102を参照のこと。
ある特定の実施形態では、低減された補体結合を有するFcが選択される。低減された補体結合を有する例示的なFc、例えば、IgG1 Fcは、以下の2つのアミノ酸置換を有する:A330SおよびP331S。
【0114】
ある特定の実施形態では、エフェクター機能を本質的に有さないFcが選択される、即ち、かかるFcは、FcγRへの低減された結合および低減された補体結合を有する。エフェクターなしの例示的なFc、例えば、IgG1 Fcは、以下の5つの変異を含む:L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331S。
【0115】
II.抗体の物理的特性
抗TREM-1抗体、例えば、本明細書に記載されるものは、本明細書に記載される特異的抗TREM-1抗体の物理的特徴、例えば、実施例に記載される特徴の、一部または全てを有する。
特に可変領域内のグリコシル化部位は、抗体の増加した免疫原性、または変更された抗原結合に起因する抗体のpKの変更を生じ得る(Marshall et al., (1972) Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala and Morrison (2004) J. Immunol 172:5489-94;Wallick et al., (1988) J Exp Med 168: 1099-109;Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R;Parekh et al., (1985) Nature 316:452-7;Mimura et al., (2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフにおいて生じることが公知である。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、可変領域グリコシル化を含まない、または低減された可変領域グリコシル化を有する。これは、可変領域中にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択すること、またはグリコシル化領域内の残基を変異させることによって、達成され得る。従って、一部の実施形態では、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、免疫原性が低い。
一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、アスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミドは、N-GまたはD-G配列上で生じ得、ポリペプチド鎖中にねじれを導入し、その安定性を減少させるイソアスパラギン酸残基の創出を生じる(イソアスパラギン酸効果)。
【0116】
各抗体は、一般には6と9.5との間のpH範囲に入る、独自の等電点(pi)を有する。IgG1抗体についてのpiは、典型的には、7~9.5のpH範囲内に入り、IgG4抗体についてのpiは、典型的には、6~8のpH範囲内に入る。正常範囲の外側のpiを有する抗体は、in vivo条件下で、いくらかのアンフォールディングおよび不安定性を有し得ると推論される。従って、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、正常範囲(例えば、8~9)に入るpi値を含み得る。これは、正常範囲内のpiを有する抗体を選択すること、または荷電した表面残基を変異させることによって、達成され得る。
【0117】
各抗体は、特徴的な融解温度を有し、より高い融解温度は、in vivoでのより高い全体的安定性を示す(Krishnamurthy R and Manning M C (2002) Curr Pharm Biotechnol 3:361-71)。一般に、TMi(初期アンフォールディングの温度)は、60℃よりも高い、65℃よりも高い、または70℃よりも高い場合がある。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、より高い融解温度を有する。従って、一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、例えば、キャピラリー示差走査熱量計(CAP-DSC)によって測定した場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む参照抗体と比較して、熱的に安定である。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chen et al., (2003) Pharm Res 20: 1952-60;Ghirlando et al.,(1999) Immunol Lett 68:47-52)または円二色性(Murray et al., (2002) J. Chromatogr Sci 40:343-9)を使用して測定され得る。一部の実施形態では、抗体の約10%~20%、約20%~30%(例えば、24%)または約30%~40%は、77℃に加熱した場合に可逆的である。
一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、迅速には分解しない。抗体の分解は、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI-MSを使用して測定され得る(Alexander A J and Hughes D E (1995) Anal Chem 67:3626-32)。
【0118】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、望ましくない免疫応答および/または変更されたもしくは好ましくない薬物動態特性の誘発をもたらし得る最小の凝集効果を有する。一般に、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下の凝集を有する抗体が許容される。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および動的光散乱(DLS)を含むいくつかの技術によって測定され得る。一部の実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって観察した場合に、モノマーである。一部の実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、2次元液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(2D-LC/MS)、または液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS)を使用するインタクト質量分析によって観察した場合に、断片化の最小のリスクを示す。
【0119】
III.核酸、ベクターおよび細胞
本明細書に記載される別の態様は、本明細書に記載される抗TREM-1抗体をコードする核酸分子に関する。これらの核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分的に精製された形態でもしくは実質的に純粋な形態で、存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動および当該分野で周知の他のものを含む標準的な技術によって、他の細胞性構成要素または他の混入物、例えば、他の細胞性核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば、単離されたDNAに事実上連結された染色体DNA)またはタンパク質から精製された場合、「単離された」または「実質的に純粋にされた」。F. Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照のこと。本明細書に記載される核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。一部の実施形態では、この核酸は、cDNA分子である。
【0120】
本明細書に記載される核酸は、標準的な分子生物学の技術を使用して取得され得る。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載される、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから分離されたハイブリドーマ)によって発現される抗体について、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって取得され得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)取得される抗体について、この抗体をコードする核酸は、ライブラリーから回収され得る。
一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸は、本開示の抗TREM-1抗体のVH配列およびVL配列をコードする核酸である。VH配列およびVL配列をコードする例示的なDNA配列は、それぞれ、配列番号58~61および62~65に示される。
本明細書で開示される抗TREM-1抗体を作製するための方法は、シグナルペプチドと共に、重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列、例えば、それぞれ、配列番号58~61および62~65を含む細胞株において、重鎖および軽鎖を発現させるステップを含み得る。これらのヌクレオチド配列を含む宿主細胞は、本明細書に包含される。
【0121】
VHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNA断片が取得されると、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作され得る。これらの操作では、VLコードDNA断片またはVHコードDNA断片は、別のタンパク質、例えば、抗体定常領域または可動性リンカーをコードする別のDNA断片に、作動可能に連結される。用語「作動可能に連結された」は、この文脈で使用する場合、2つのDNA断片が、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままになるように接合されることを意味する意図である。
【0122】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHコードDNAを、重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2および/またはCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結させることによって、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得され得る。この重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域、例えば、IgG2および/またはIgG4定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子について、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に、作動可能に連結され得る。
【0123】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLコードDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結させることによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照のこと)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得され得る。この軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0124】
本明細書に記載される別の態様は、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を(例えば、組換え)発現する細胞(例えば、宿主細胞)、ならびに関連のポリヌクレオチドおよび発現ベクターに関する。抗TREM-1抗体またはその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターもまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、これらのベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞において、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を組換え発現するために使用され得る。一部の実施形態では、これらのベクターは、遺伝子治療に使用され得る。
本開示に適切なベクターには、発現ベクター、ウイルスベクターおよびプラスミドベクターが含まれる。一部の実施形態では、このベクターは、ウイルスベクターである。
本明細書で使用する場合、発現ベクターは、適切な宿主細胞中に導入された場合の、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合には、複製および翻訳に必要なエレメントを含む、任意の核酸構築物を指す。発現ベクターには、プラスミド、ファージミド、ウイルス、およびそれらの誘導体が含まれ得る。
【0125】
本開示の発現ベクターは、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分のコード配列は、発現制御配列に動作可能に連結される。本明細書で使用する場合、2つの核酸配列が、各構成要素核酸配列がその機能性を保持するのを可能にするような方法で共有結合的に連結されている場合、それらは、動作可能に連結されている。コード配列および遺伝子発現制御配列が、コード配列の発現または転写および/もしくは翻訳を遺伝子発現制御配列の影響下または制御下に配置するような方法で共有結合的に連結されている場合、それらは、動作可能に連結されていると言われる。5’遺伝子発現配列中のプロモーターの誘導が、コード配列の転写を生じる場合、および2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入を生じない場合、(2)コード配列の転写を指示するプロモーター領域の能力を妨害しない場合、または(3)タンパク質へと翻訳される対応するRNA転写物の能力を妨害しない場合、これら2つのDNA配列は、動作可能に連結されていると言われる。従って、得られた転写物が所望の抗体またはその抗原結合部分へと翻訳されるように、遺伝子発現配列がそのコード核酸配列の転写をもたらすことが可能であった場合、この遺伝子発現配列は、コード核酸配列に動作可能に連結されている。
【0126】
ウイルスベクターには、以下のウイルス由来の核酸配列が含まれるがこれらに限定されない:レトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルスおよびラウス肉腫ウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;ならびにRNAウイルス、例えば、レトロウイルス。当該分野で周知の他のベクターを容易に使用することができる。ある特定のウイルスベクターは、非必須遺伝子が目的の遺伝子で置き換えられた非細胞変性真核生物ウイルスに基づく。非細胞変性ウイルスには、レトロウイルスが含まれ、その生活環には、DNAへのゲノムウイルスRNAの逆転写と、宿主細胞性DNA中への引き続くプロウイルス組込みが関与する。レトロウイルスは、ヒト遺伝子治療試験のために承認されている。複製欠損(即ち、所望のタンパク質の合成を指示することは可能であるが、感染性粒子を製造することが不可能である)レトロウイルスが、最も有用である。かかる遺伝子変更されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの遺伝子の高い効率の形質導入のために、一般的な有用性を有する。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準的なプロトコール(プラスミド中への外因性遺伝子材料の取り込み、プラスミドによるパッケージング細胞株のトランスフェクション、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の収集、およびウイルス粒子による標的細胞の感染のステップを含む)は、Kriegler, M., Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, W.H. Freeman Co., New York (1990)およびMurry, E. J., Methods in Molecular Biology, Vol. 7, Humana Press, Inc., Cliffton, N.J. (1991)に提供されている。
【0127】
一部の実施形態では、このウイルスは、二本鎖DNAウイルスであるアデノ随伴ウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損であるように操作され得、広範な細胞型および種に感染することが可能である。これは、熱および脂質溶媒安定性;造血細胞を含む多様な系譜の細胞における高い形質導入頻度;ならびに複数の一連の形質導入を可能にする重複感染阻害の欠如などの利点をさらに有する。報告によれば、アデノ随伴ウイルスは、部位特異的様式でヒト細胞性DNA中に組み込まれ得、それによって、レトロウイルス感染に特徴的な挿入変異誘発の可能性および挿入された遺伝子の発現の可変性を最小化する。さらに、野生型アデノ随伴ウイルス感染は、選択圧の非存在下で100継代よりも長きにわたって、組織培養物中で追跡されており、これは、アデノ随伴ウイルスのゲノム組込みが比較的安定な事象であることを暗示している。アデノ随伴ウイルスは、染色体外様式でも機能し得る。
【0128】
IV.イムノコンジュゲート
本開示は、本明細書で開示される抗TREM-1抗体のいずれかを含むイムノコンジュゲートもまた提供する。一部の実施形態では、このイムノコンジュゲートは、薬剤に連結された抗体または抗原結合部分を含む。一部の実施形態では、このイムノコンジュゲートは、薬剤(例えば、治療剤または診断剤としての)に連結された本明細書で開示される二特異性分子を含む。
【0129】
診断目的のために、適切な薬剤は、全身画像化のための放射性同位体、ならびに放射性同位体、酵素、蛍光標識およびサンプル試験のための他の適切な抗体タグが含まれる検出可能な標識である。本明細書に記載される任意の抗TREM-1抗体に連結され得る検出可能な標識は、金属ゾル、例えば、コロイド金を含む粒状標識、同位体、例えば、N22、N3SまたはN4型のペプチド性キレート剤に例えば提示されるI125またはTc99、蛍光マーカー、発光マーカー、リン光マーカーなどを含む発色団、ならびに所与の基質を検出可能なマーカーに変換する酵素標識、およびポリメラーゼ連鎖反応などによる増幅後に明らかになるポリヌクレオチドタグを含む、in vitro診断学の分野で現在使用されている種々の型のいずれかであり得る。適切な酵素標識には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが含まれる。例えば、標識は、1,2ジオキセタン基質、例えば、アダマンチルメトキシホスホリルオキシフェニルジオキセタン(AMPPD)、3-(4-(メトキシスピロ{l,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ{3.3.1.13,7}デカン}-4-イル)フェニルリン酸二ナトリウム(CSPD)、ならびにCDPおよびCDP-STAR(登録商標)の変換後の化学発光の存在または形成を測定することによって検出される酵素アルカリホスファターゼ、または当業者に周知の他の発光基質、例えば、適切なランタニド、例えば、テルビウム(III)およびユーロピウム(III)のキレートであり得る。検出手段は、選択された標識によって決定される。標識またはその反応産物の外観は、標識が粒状であり、適切なレベルで蓄積される場合には、肉眼を使用して達成され得、または全て標準的な実務に従って、分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計などの機器を使用して達成され得る。
【0130】
一部の実施形態では、コンジュゲーション法は、実質的に(またはほとんど)非免疫原性である連結、例えば、ペプチド連結(即ち、アミド連結)、スルフィド連結、(立体障害される)、ジスルフィド連結、ヒドラゾン連結およびエーテル連結を生じる。これらの連結は、ほとんど非免疫原性であり、血清内で合理的な安定性を示す(例えば、Senter, P. D., Curr. Opin. Chem. Biol. 13 (2009) 235-244;WO2009/059278;WO95/17886を参照のこと)。
【0131】
部分および抗体の生化学的性質に依存して、異なるコンジュゲーション戦略が使用され得る。この部分が、50アミノ酸~500アミノ酸の間の、天然に存在するまたは組換えである場合、当業者が容易に従うことができる、タンパク質コンジュゲートの合成のための化学を記載する教科書中に、標準的な手順が存在する(例えば、Hackenberger, C. P. R., and Schwarzer, D., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 47 (2008) 10030-10074を参照のこと)。一部の実施形態では、マレイミド(maleinimido)部分と、抗体または部分内のシステイン残基との反応が、使用される。これは、例えば、抗体のFabまたはFab’断片が使用される場合、特に適したカップリング化学である。あるいは、一部の実施形態では、抗体または部分のC末端へのカップリングが実施される。タンパク質、例えば、Fab断片のC末端改変は、記載されるように実施され得る(Sunbul, M. and Yin, J., Org. Biomol. Chem. 7 (2009) 3361-3371)。
【0132】
一般に、部位特異的反応および共有結合カップリングは、天然のアミノ酸を、存在する他の官能基の反応性に対してオルソゴナルな反応性を有するアミノ酸へと変形させることに基づく。例えば、まれな配列コンテクスト内の特定のシステインは、アルデヒドへと酵素的に変換され得る(Frese, M. A., and Dierks, T., ChemBioChem. 10 (2009) 425-427を参照のこと)。ある特定の酵素と所与の配列コンテクスト中の天然のアミノ酸との特異的酵素反応性を利用することによっても、所望のアミノ酸改変を取得することが可能である(例えば、Taki, M. et al., Prot. Eng. Des. Sel. 17 (2004) 119-126;Gautier, A. et al. Chem. Biol. 15 (2008) 128-136を参照のこと;プロテアーゼ触媒されるC-N結合形成が、Bordusa, F., Highlights in Bioorganic Chemistry (2004) 389-403によって使用される)。部位特異的反応および共有結合カップリングは、末端アミノ酸と適切な改変試薬との選択的反応によっても達成され得る。
N末端システインとベンゾニトリルとの反応性(Ren, H. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 48 (2009) 9658-9662を参照のこと)が、部位特異的共有結合カップリングを達成するために使用され得る。
ネイティブの化学的ライゲーションもまた、C末端システイン残基に依存し得る(Taylor, E. Vogel; Imperiali, B, Nucleic Acids and Molecular Biology (2009), 22 (Protein Engineering), 65-96)。
米国特許第6437095号は、負に荷電したアミノ酸のストレッチ内のシステインと、正に荷電したアミノ酸のストレッチ中に位置するシステインとのより速い反応に基づくコンジュゲーション法を記載している。
【0133】
この部分はまた、合成ペプチドまたはペプチド模倣物であり得る。ポリペプチドが化学的に合成される場合、オルソゴナルな化学反応性を有するアミノ酸が、かかる合成の間に取り込まれ得る(例えば、de Graaf, A. J. et al., Bioconjug. Chem. 20 (2009) 1281-1295を参照のこと)。多種多様なオルソゴナル官能基が関連し、それらは合成ペプチド中に導入することができるので、かかるペプチドのリンカーへのコンジュゲーションは、標準的な化学である。
【0134】
モノ標識されたポリペプチドを取得するために、1:1の化学量論を有するコンジュゲートが、クロマトグラフィーによって、他のコンジュゲーション副産物から分離され得る。この手順は、色素標識された結合対メンバーおよび荷電したリンカーを使用することによって促進され得る。この種の標識され高度に負に荷電した結合対メンバーを使用することによって、モノコンジュゲートされたポリペプチドは、非標識ポリペプチドおよび1つよりも多くのリンカーを保有するポリペプチドから容易に分離されるが、それは、電荷および分子量における差異が分離のために使用できるからである。蛍光色素は、標識された一価バインダーなどの未結合の構成要素から複合体を精製するために、有用であり得る。
一部の実施形態では、抗TREM-1抗体に結合される部分は、結合部分、標識化部分および生物学的に活性な部分からなる群から選択される。
【0135】
本明細書に記載される抗TREM-1抗体はまた、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などのイムノコンジュゲートを形成するために、治療剤にコンジュゲートされ得る。適切な治療剤には、代謝拮抗物質、アルキル化剤、DNA副溝バインダー、DNAインターカレーター、DNAクロスリンカー、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、ヒートショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および抗有糸分裂剤が含まれる。ADCでは、抗体および治療剤は、好ましくは、切断可能なリンカー、例えば、ペプチジル、ジスルフィドまたはヒドラゾンリンカーを介してコンジュゲートされる。一部の実施形態では、このリンカーは、ペプチジルリンカー、例えば、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val(配列番号80)、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、SerまたはGluである。ADCは、米国特許第7,087,600号;同第6,989,452号;および同第7,129,261号;PCT公開番号WO02/096910;WO07/038658;WO07/051081;WO07/059404;WO08/083312;およびWO08/103693;米国特許出願公開第20060024317号;同第20060004081号;および同第20060247295号に記載されるように調製され得る。
【0136】
抗TREM-1抗体、例えば、本明細書に記載されるものは、TREM-1、例えば、ヒトTREM-1、例えば、組織または組織サンプル中のヒトTREM-1を検出するためにも使用され得る。これらの抗体は、例えば、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーにおいて使用され得る。一部の実施形態では、抗TREM-1抗体は、特異的結合が生じるのに適切な時間にわたって、細胞、例えば、組織中の細胞と接触され、次いで、試薬、例えば、抗TREM-1抗体を検出する抗体が添加される。例示的なアッセイは、実施例に提供される。この抗TREM-1抗体は、完全ヒト抗体であり得、またはキメラ抗体、例えば、ヒト可変領域およびマウス定常領域もしくはそれらの一部分を有する抗体であり得る。サンプル(細胞または組織サンプル)中のTREM-1、例えば、ヒトTREM-1を検出するための例示的な方法は、(i)サンプル中のTREM-1への抗TREM-1抗体の特異的結合を可能にするのに十分な時間にわたって、サンプルを抗TREM-1抗体と接触させるステップ、および(2)サンプルを、検出試薬、例えば、抗TREM-1抗体、例えば、抗TREM-1抗体のFc領域に特異的に結合する抗体と接触させ、それによって、抗TREM-1抗体が結合したTREM-1を検出するステップ、を含む。洗浄ステップが、抗体および/または検出試薬とのインキュベーション後に含められ得る。別々の検出剤を使用することができるので、これらの方法における使用のための抗TREM-1抗体は、標識または検出剤に連結される必要はない。
例えば、単独療法または併用療法としての、抗TREM-1抗体についての他の使用は、本明細書の他の場所、例えば、併用処置に関するセクションに提供される。
【0137】
V.二特異性分子
本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、二特異性分子を形成するために使用され得る。抗TREM-1抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二特異性分子を生成するために、誘導体化され得る、または別の機能的分子、例えば、別のペプチドもしくはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に連結され得る。例えば、抗TREM-1抗体は、併用処置のための潜在的な標的として使用され得る任意のタンパク質、例えば、本明細書に記載されるタンパク質に特異的に結合する抗体またはscFv(例えば、IP-10またはTNF-αに対する抗体)に連結され得る。本明細書に記載される抗体は、実際に、2つよりも多くの異なる結合部位および/または標的分子に結合する多特異性分子を生成するために、誘導体化され得、または1つよりも多くの他の機能的分子に連結され得る;本明細書で使用する場合、かかる多特異性分子もまた、用語「二特異性分子」によって包含される意図である。本明細書に記載される二特異性分子を創出するために、本明細書に記載される抗体は、二特異性分子が生じるように、1つ以上の他の結合分子、例えば、別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合性模倣物に、(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合的会合または他の方法によって)機能的に連結され得る。
従って、TREM-1に対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二特異性分子が、本明細書で提供される。二特異性分子が多特異性である本明細書に記載される一部の実施形態では、この分子は、第3の結合特異性をさらに含み得る。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書に記載される二特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体、または例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvもしくは単鎖Fv(scFv)を含むその抗体断片を含む。この抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖ダイマー、またはそれらの任意の最小断片、例えば、Ladnerらの米国特許第4,946,778号に記載されるような、Fvもしくは単鎖構築物であり得る。
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本明細書に記載される二特異性分子において使用され得る他の抗体は、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
【0139】
本明細書に記載される二特異性分子は、構成成分の結合特異性を、当該分野で公知の方法を使用してコンジュゲートすることによって、調製され得る。例えば、二特異性分子の各結合特異性は、別々に生成され得、次いで、互いにコンジュゲートされ得る。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、種々のカップリングまたは架橋結合剤が、共有結合コンジュゲーションのために使用され得る。架橋結合剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン(cyclohaxane)-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が含まれる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160: 1686;Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照のこと)。他の方法には、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132;Brennan et al. (1985) Science 229:81-83およびGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375に記載されるものが含まれる。一部のコンジュゲート剤は、SATAおよびスルホ-SMCCであり、これらは共に、Pierce Chemical Co.(Rockford、IL)から入手可能である。
結合特異性が抗体である場合、これらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介してコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、コンジュゲーション前に、奇数の、好ましくは1つのスルフヒドリル残基を含むように改変される。
【0140】
あるいは、両方の結合特異性が、同じベクター中にコードされ得、同じ宿主細胞中で発現およびアセンブルされ得る。この方法は、二特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、mAb×(scFv)2、Fab×F(ab’)2またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。二特異性抗体は、各重鎖のC末端にscFvを含む抗体を含み得る。本明細書に記載される二特異性分子は、1つの単鎖抗体および1つの結合決定基を含む単鎖分子、または2つの結合決定基を含む単鎖二特異性分子であり得る。二特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含み得る。二特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0141】
それらの特異的標的への二特異性分子の結合は、当該分野で認識された方法、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害)またはウエスタンブロットアッセイを使用して確認され得る。これらのアッセイの各々は、一般に、目的の複合体に対して特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を使用することによって、特に目的のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0142】
VI.キット
本明細書に記載される1つ以上の抗TREM-1抗体もしくはその抗原結合部分、それらの二特異性分子またはイムノコンジュゲートを含むキットが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物の成分のうち1つ以上、例えば、本明細書で提供される1つ以上の抗体またはその抗原結合部分が満たされた1つ以上の容器、任意の、使用のための指示を含む、医薬パックまたはキットが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、これらのキットは、本明細書に記載される医薬組成物および任意の予防剤または治療剤、例えば、本明細書に記載されるものを含む。
【0143】
VII.組成物および製剤
本明細書で開示される抗TREM-1抗体(抗TREM-1抗体をコードおよび/または発現するポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞を含む)のうち1つ以上を含む組成物(例えば、医薬組成物)および製剤が、本明細書でさらに提供される。例えば、一実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化された、本明細書で開示される1つ以上の抗TREM-1抗体を含む医薬組成物を提供する。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性の、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。一部の実施形態では、この担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適切である。投与の経路に依存して、活性化合物、即ち、抗体、イムノコンジュゲートまたは二特異性分子は、化合物を不活性化し得る酸および他の天然の条件の作用から化合物を保護するための材料でコーティングされ得る。
【0144】
従って、本開示の1つの目的は、抗TREM-1抗体の安定性を改善し、従って、それらの長期貯蔵を可能にする、医薬製剤を提供することである。一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬製剤は、以下を含む:(a)抗TREM-1抗体;(b)緩衝剤;(c)安定化剤;(d)塩;(e)増量剤(bulking agent);および/または(f)界面活性剤。一部の実施形態では、この医薬製剤は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも5年間またはそれ以上にわたって、安定である。一部の実施形態では、この製剤は、4℃、25℃または40℃で貯蔵された場合に安定である。
【0145】
緩衝剤
本発明のために有用な緩衝剤は、別の酸または塩基の添加後に、溶液の酸性度(pH)を、選択された値の近傍に維持するために使用される、弱酸または弱塩基であり得る。適切な緩衝剤は、製剤のpH制御を維持することによって、医薬製剤の安定性を最大化し得る。適切な緩衝剤はまた、生理的適合性を確実にし得るまたは溶解度を最適化し得る。レオロジー、粘度および他の特性もまた、製剤のpHに依存し得る。一般的な緩衝剤には、ヒスチジン、シトレート、サクシネート、アセテートおよびホスフェートが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、緩衝剤は、等張剤(isotonicity agent)と共にヒスチジン(例えば、L-ヒスチジン)を含み、潜在的に、当該分野で公知の酸または塩基によるpH調整を伴う。ある特定の実施形態では、この緩衝剤は、L-ヒスチジンである。ある特定の実施形態では、製剤のpHは、約2と約10との間または約4と約8との間に維持される。
【0146】
安定化剤
安定化剤が、その製品を安定化させるために、医薬製品に添加される。かかる薬剤は、いくつかの異なる方法でタンパク質を安定化することができる。一般的な安定化剤には、アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、リジン、アルギニンもしくはスレオニン、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、トレハロース、ラフィノース(raffmose)もしくはマルトース、ポリオール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリンもしくは任意の種類および分子量のデキストラン(destran)、またはPEGが含まれるがこれらに限定されない。本発明の一態様では、この安定化剤は、凍結乾燥された調製物中のFIXポリペプチドの安定性を最大化するために選択される。ある特定の実施形態では、この安定化剤は、スクロースおよび/またはアルギニンである。
増量剤
増量剤は、製品に体積および質量を付加し、それによって、その正確な計量および取り扱いを促進するために、医薬製品に添加され得る。一般的な増量剤としては、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムが含まれるがこれらに限定されない。
【0147】
界面活性剤
界面活性剤は、親液性基および疎液性基を有する両親媒性物質である。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性または非イオン性であり得る。非イオン性界面活性剤の例には、アルキルエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アミンエトキシレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールもしくはオレイルアルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリソルベート、またはドデシルジメチルアミンオキシドが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、この界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0148】
一部の実施形態では、本開示の医薬製剤は、
(a)約0.25mg/mL~250mg/mL(例えば、10~200mg/mL)の抗TREM-1抗体;
(b)約20mMのヒスチジン;
(c)約150mMのスクロース;
(d)約25mMのアルギニン;および
(e)約50mMのNaCl
を含む。
この製剤は、緩衝系、防腐剤、等張化剤、キレート剤、安定剤および/または界面活性剤のうち1つ以上、ならびにそれらの種々の組み合わせをさらに含み得る。医薬組成物における防腐剤、等張剤、キレート剤、安定剤および界面活性剤の使用は、当業者に周知である。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995が参照され得る。
【0149】
一部の実施形態では、この医薬製剤は、水性製剤である。かかる製剤は、典型的には、溶液または懸濁物であるが、これにはコロイド、分散物、エマルジョンおよび多相材料もまた含まれ得る。用語「水性製剤」は、少なくとも50質量%の水を含む製剤として定義される。同様に、用語「水性溶液」は、少なくとも50質量%の水を含む溶液として定義され、用語「水性懸濁物」は、少なくとも50質量%の水を含む懸濁物として定義される。
一部の実施形態では、この医薬製剤は、医師または患者が使用前にそれに溶媒および/または希釈剤を添加する、フリーズドライ製剤である。
【0150】
本明細書に記載される医薬組成物はまた、併用療法において、即ち、他の薬剤と組み合わせて、投与され得る。例えば、併用療法は、少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせた、本明細書に記載される抗TREM-1抗体を含み得る。併用療法において使用され得る治療剤の例には、疾患または障害(例えば、炎症性障害)の処置のために使用される他の化合物、薬物および/または薬剤が含まれ得る。かかる化合物、薬物および/または薬剤には、例えば、炎症性サイトカインの産生を遮断または低減させる抗炎症性薬物または抗体が含まれ得る。一部の実施形態では、治療剤には、抗IP-10抗体、抗TNF-α抗体(例えば、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標)))、インターフェロンベータ-1a(例えば、AVONEX(登録商標)、REBIF(登録商標))、インターフェロンベータ-1b(例えば、BETASERON(登録商標)、EXTAVIA(登録商標))、酢酸グラチラマー(例えば、COPAXONE(登録商標)、GLATOPA(登録商標))、ミトキサントロン(例えば、NOVANTRONE(登録商標))、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)、鎮痛薬、コルチコステロイド、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0151】
本明細書に記載される医薬化合物は、1つ以上の薬学的に許容される塩を含み得る。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、所望されない毒物学的影響を少しも与えない、塩を指す(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照のこと)。かかる塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに非毒性有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などに由来するものが含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに非毒性有機アミン、例えば、Ν,Ν’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものが含まれる。
【0152】
本明細書に記載される医薬組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤もまた含み得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例には、以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
本明細書に記載される医薬組成物において使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0153】
これらの組成物は、補助剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤もまた含み得る。微生物の存在の予防は、上記無菌化手順、ならびに種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることの両方によって、確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることもまた望ましい場合があり得る。さらに、注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって、もたらされ得る。
【0154】
薬学的に許容される担体には、無菌の水性溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製のための無菌粉末が含まれる。医薬的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合性である場合を除き、本明細書に記載される医薬組成物におけるその使用が企図される。医薬組成物は、防腐剤を含み得る、または防腐剤を欠き得る。補足的活性化合物が、この組成物中に取り込まれ得る。
【0155】
治療的組成物は、典型的には、無菌であり、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならない。この組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適切な他の秩序だった構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。多くの場合、これらの組成物は、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含み得る。注射可能な組成物の延長された吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって、もたらされ得る。
【0156】
無菌の注射可能な溶液は、上述の成分のうち1つまたは組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要な量で活性化合物を取り込み、その後、必要に応じて無菌化精密濾過を行うことによって、調製され得る。一般に、分散物は、活性化合物を、基礎的分散媒および本明細書で述べたものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に取り込むことによって、調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の一部の方法は、前もって無菌濾過されたその溶液から、活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
単一の投薬形態を産生するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、処置されている対象、および投与の特定の様式に依存して変動する。単一の投薬形態を産生するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、約0.01パーセント~約99パーセントの活性成分、約0.1パーセント~約70パーセントまたは約1パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0157】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、単一のボーラスが投与され得、いくつかの分割された用量が経時的に投与され得、または用量は、治療状況の緊急の要求によって示される場合、比例的に低減または増加され得る。投与の容易さおよび投薬量の一様性のために、非経口組成物を投薬単位形態で製剤化することが、特に有利である。投薬単位形態は、本明細書で使用する場合、処置される対象のための単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指す;各単位は、必要な医薬担体と関連して、所望の治療効果を生じるための計算された所定の量の活性化合物を含む。本明細書に記載される投薬単位形態の仕様は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためにかかる活性化合物を配合する分野における固有の制限、によって決定され、それらに直接的に依存する。
【0158】
例えば本明細書に記載される、抗TREM-1抗体の投与のために、投薬量は、宿主体重1kg当たり約0.0001~100mg、より通常は0.01~5または10mgの範囲である。例えば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重もしくは10mg/kg体重であり得、または1~10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な処置レジームは、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月毎に1回、または3~6ヶ月毎に1回の投与を必要とする。本明細書に記載される抗TREM-1抗体のための例示的な投薬レジメンには、静脈内投与を介した1mg/kg体重または3mg/kg体重が含まれ、この抗体は、以下の投薬スケジュールのうち1つを使用して与えられる:(i)6回の投薬量については4週間毎、次いで、3ヶ月毎;(ii)3週間毎;(iii)3mg/kg体重を1回、その後3週間毎に1mg/kg体重。
一部の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、フラット用量(フラット用量レジメン)で投与される。他の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、別の抗体と共に固定された用量で投与される。ある特定の実施形態では、この抗TREM-1抗体は、体重に基づいた用量で投与される。
一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、この場合、投与される各抗体の投薬量は、示された範囲内に入る。抗体は通常、複数の機会に投与される。単一投薬量間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月毎または毎年であり得る。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することによって示される場合、不規則であり得る。一部の方法では、投薬量は、約1~1000μg/mlの血漿抗体濃度、一部の方法では、約25~300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するために調整される。
【0159】
抗体は、徐放性製剤として投与され得、この場合、あまり頻繁な投与は必要とされない。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変動する。一般に、ヒト抗体は、最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が後に続く。投与の投薬量および頻度は、その処置が予防的であるか治療的であるかに依存して変動し得る。予防的適用では、比較的低い投薬量が、長い期間にわたって、比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、残りの生涯にわたって処置を受け続ける。治療的適用では、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、時折、疾患の進行が低減もしくは終結されるまで、または患者が疾患の症状の部分的もしくは完全な寛解を示すまで、必要とされる。その後、患者には、予防レジームが投与され得る。
【0160】
本明細書に記載される医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって毒性であることなしに、特定の患者、組成物、および投与の様式について、所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために、変動され得る。選択された投薬量レベルは、使用される本明細書に記載される特定の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用されている特定の化合物の排泄の速度、処置の持続時間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、総体的な健康および以前の医療歴などの、医学分野で周知の因子を含む種々の薬物動態因子に依存する。
【0161】
本明細書に記載される組成物は、当該分野で公知の種々の方法のうち1つ以上を使用して、投与の1つ以上の経路を介して投与され得る。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変動する。本明細書に記載される抗TREM-1抗体のための投与の経路には、例えば、注射または注入による、静脈内、筋肉内、真皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口経路の投与が含まれ得る。語句「非経口投与」は、本明細書で使用する場合、通常は注射による、経腸および外用投与以外の投与の様式を意味し、これには、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入が含まれるがこれらに限定されない。
あるいは、本明細書に記載される抗体は、潜在的に、非-非経口経路、例えば、外用、表皮または粘膜経路の投与を介して、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または外用で投与され得る。
【0162】
活性化合物は、移植物、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤など、迅速な放出に対して化合物を保護する担体を用いて調製され得る。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用され得る。かかる製剤の調節のための多くの方法は、特許されているか、または当業者に一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。
【0163】
治療的組成物は、当該分野で公知の医療用デバイスを用いて投与され得る。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載される治療的組成物は、無針皮下注射デバイス、例えば、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号に開示されるデバイスを用いて投与され得る。本明細書に記載される抗TREM-1抗体との使用のための周知の移植物およびモジュールの例には、以下が含まれる:制御された速度で薬物療法を分配するための移植可能な微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を介して医薬を投与するための治療的デバイスを開示する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で薬物療法を送達するための薬物療法注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続した薬物送達のための変流移植可能注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号;および浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。多くの他のかかる移植物、送達系およびモジュールが、当業者に公知である。
【0164】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗TREM-1抗体は、in vivoでの適切な分布を確実にするために製剤化され得る。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高度に親水性の化合物を排除する。本明細書に記載される治療的化合物がBBBを横切ることを確実にするために(所望により、例えば、脳がんのために)、これらは、例えば、リポソーム中に製剤化され得る。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または臓器中に選択的に輸送される1つ以上の部分を含み得、そうして、標的化された薬物送達を増強する(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照のこと)。例示的な標的化部分には、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらに対する米国特許第5,416,016号を参照のこと);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153: 1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357: 140;M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39: 180);サーファクタントプロテインA受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233: 134);pl20(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が含まれる;K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346: 123;J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273もまた参照のこと。
【0165】
VIII.使用および方法
本開示の抗TREM-1抗体およびかかる抗体を含む組成物(例えば、医薬組成物、製剤、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞)は、(例えば、TREM-1活性を阻害することによる)炎症性疾患の処置のために使用され得る。
【0166】
従って、一態様では、本開示は、治療有効用量の抗TREM-1抗体を対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象において炎症性疾患を処置するための方法を提供する。本発明の抗TREM-1抗体で処置され得る炎症性疾患の例には、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アレルギー、喘息、および急性炎症または慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患が含まれるがこれらに限定されない。
【0167】
一実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、炎症性腸疾患を有する個体の処置における使用に適切である。炎症性腸疾患(IBD)は、口から肛門までの胃腸管のいずれの部分にも影響を与え得、広範な種々の症状を引き起こす疾患である。IBDは、腹部疼痛、下痢(血性である場合がある)、嘔吐または体重減少を主に引き起こすが、胃腸管の外側での合併症、例えば、皮疹、関節炎、眼の炎症、疲労および集中力の欠如もまた引き起こし得る。IBDを有する患者は、2つの主要なクラス:潰瘍性大腸炎(UC)を有する患者およびクローン病(CD)を有する患者に分割され得る。CDは一般に、回腸および結腸に影響し、腸のいずれの領域にも影響を与え得るが、しばしば非連続性である(腸の至る所に広がった、疾患の集中した領域)。UCは常に、直腸(結腸)に影響し、より連続性である。CDでは、炎症は、全層性であり、膿瘍、瘻孔および狭窄を生じるが、UCでは、炎症は、典型的には、粘膜に限定される。クローン病については、医薬的治癒も外科的治癒も公知ではないが、UCを有する一部の患者は、結腸の外科的除去によって治癒され得る。処置選択肢は、症状の制御、軽快の維持および再燃の予防に限定される。診療所における炎症性腸疾患における効力は、CDについてのクローン病活動性指数(CDAI)スコアにおける低減として測定され得、この指数は、実験室試験および生活の質質問票に基づくスコアリングスケールである。動物モデルでは、効力は、体重増加およびまた疾患活動性指数(DAI)によって大部分は測定され、この指数は、便の硬さ、体重および血便の組み合わせである。
【0168】
一実施形態では、本開示の抗TREM-1抗体は、関節リウマチを有する個体の処置における使用に適切である。関節リウマチ(RA)は、身体の全てではないがほぼ全てに影響を与える全身性疾患であり、関節炎の最も一般的な形態の1つである。これは、疼痛、こわばり、温感、発赤および腫脹を引き起こす、関節の炎症を特徴とする。この炎症は、関節に浸潤する炎症性細胞の結果であり、これらの炎症性細胞は、骨および軟骨を消化し得る酵素を放出する。結果として、この炎症は、他の生理学的影響の中でも、重症の骨および軟骨損傷ならびに関節の悪化および重症の疼痛をもたらし得る。影響された関節は、その形状およびアラインメントを喪失し得、疼痛および動きの喪失を生じる。関節リウマチについていくつかの動物モデルが、当該分野で公知である。例えば、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルでは、マウスは、ヒト関節リウマチと似た炎症性関節炎を発症する。CIAは、RAと類似の免疫学的および病理学的特色を共有するので、このことにより、このモデルは、潜在的なヒト抗炎症性化合物をスクリーニングするための適切なモデルになっている。このモデルにおける効力は、関節腫脹における減少によって測定される。診療所におけるRAにおける効力は、関節腫脹、赤血球沈降速度、C反応性タンパク質レベル、および血清因子、例えば抗シトルリン化タンパク質抗体のレベルの組み合わせとして測定される患者における症状を低減させる能力によって測定される。
【0169】
一実施形態では、本明細書で開示される抗TREM-1抗体は、乾癬を有する個体の処置における使用に適切である。乾癬は、かなりの不快感を引き起こし得る皮膚のT細胞媒介性炎症性障害である。これは、現在治癒が存在しない疾患であり、全ての年齢の人に影響を与える。軽度の乾癬を有する個体は、外用剤によって自身の疾患を制御することができる場合が多いが、世界中で100万人よりも多い患者が、紫外線光処置または全身性免疫抑制療法を必要とする。残念ながら、紫外線照射の不便さおよびリスクならびに多くの治療薬の毒性が、それらの長期使用を制限している。さらに、患者は通常、乾癬の再発を有し、一部の場合には、免疫抑制療法を停止した直後にリバウンドする。CD4+T細胞の移入に基づく乾癬の最近開発されたモデルは、ヒト乾癬の多くの局面を模倣し、従って、乾癬の処置における使用に適切な化合物を同定するために使用され得る(Davenport et al., Internat. Immunopharmacol 2 : 653-672, 2002)。このモデルにおける効力は、スコアリングシステムを使用して、皮膚病理における低減によって測定される。同様に、患者における効力は、皮膚病理における減少によって測定される。
【0170】
一実施形態では、これらの抗TREM-1抗体は、乾癬性関節炎を有する個体の処置における使用に適切である。乾癬性関節炎(PA)は、乾癬を有する患者のサブセットにおいて生じる炎症性関節炎の1つの型である。これらの患者では、皮膚の病理/症状に、関節リウマチにおいて見られるものと類似の関節腫脹が伴う。これは、鱗屑化を伴う、皮膚炎症の斑状の隆起した赤い領域を特色とする。乾癬は、肘および膝の先端、頭皮、臍、ならびに生殖器部または肛門の周囲に影響を与える場合が多い。乾癬を有する患者のおよそ10%は、関節の関連する炎症もまた発症する。
【0171】
本開示に関して、予防的、対症的(palliative)、対症的(symptomatic)および/または治癒的処置は、本開示の別々の態様を示し得る。本発明の抗体は、非経口、例えば、静脈内、例えば、筋肉内、例えば、皮下投与され得る。あるいは、本発明の抗体は、非-非経口経路を介して、例えば、経口的にまたは外用で投与され得る。本発明の抗体は、予防的に投与され得る。本発明の抗体は、(要求により)治療的に投与され得る。
以下の実施例は、例示目的で提供されるのであって、限定目的ではない。本出願を通じて引用される全ての参考文献の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例0172】
(実施例1)
表面プラズモン共鳴によるヒトおよびカニクイザルの両方のTREM-1に対する318抗体バリアントについての相互作用速度論の分析
ヒトTREM-l-Fc(hTREM-1)およびカニクイザルTREM-l-Fc(cTREM-1)に対するmAb 0318バリアントの結合速度論を決定した。結合研究を、表面プラズモン共鳴を介してリアルタイムで分子相互作用を測定するProteOn Analyzer(BioRad)で実施した。実験を25℃で実施し、サンプルを、サンプルコンパートメント中で15℃で貯蔵した。ProteOnによって報告されたシグナル(RU、応答単位)は、6個の並行フローセルにおける個々のセンサーチップ表面上の質量と直接的に相関する。BiacoreのヒトまたはマウスFc捕捉キットからの抗ヒトFcモノクローナル抗体または抗マウスFcポリクローナル抗体を、製造業者の指示に従って、GLMセンサーチップのフローセル上に水平方向で固定化した。捕捉抗体の最終固定化レベルは、各実験においておよそ2600~6000RUであった。精製されたモノクローナルマウスまたは組換え発現された抗hTREM-1抗体の捕捉を、ランニング緩衝液(10mMのHepes 0、15MのNaCl、5mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20、pH7.4)中に5~10nMになるように抗体を希釈し、その後60秒間にわたって30μl/分で垂直方向で注入し、抗Fc抗体のみが固定化された、全てのフローセルに隣接する参照インタースポット(interspot)を創出することによって実施した。これは、典型的には、およそ100~300RUの試験抗体の最終捕捉レベル、および30~90RUの分析物のRmax値を生じた。hTREM-1またはcTREM-1タンパク質の結合を、水平方向で全てのフローセルに分析物(抗原)を注入することによって実施して、参照インタースポットへの結合と比較した、異なる捕捉された抗TREM-1抗体への結合の比較分析を可能にした。hTREM-1またはcTREM-1タンパク質を、1.2~100nMになるように、またはランニング緩衝液中に、1:3で段階希釈し、100μl/分で250秒間にわたって注入し、600秒間解離させた。GLM表面を、100μl/分での、10mMのグリシン、pH1.7および50mMのNaOHの2回の18秒間注入を介して、分析物の各注入サイクル後に再生させた。この再生ステップは、固定化された捕捉抗体表面から抗TREM-1抗体および任意の結合したTREM-1タンパク質を除去し、次の相互作用サンプル対の引き続く結合を可能にした。再生手順は、チップ表面から、直接的に固定化された抗Fc捕捉抗体を除去しなかった。
【0173】
抗体と抗原との間の結合親和性を、複合体の形成および解離の速度論の測定によって決定される平衡解離定数(KD)の決定によって定量化した。一価複合体の会合および解離に対応する速度定数、例えば、ka(会合速度)およびkd(解離速度)を、データ分析のためにProteOn評価ソフトウェアを使用して1:1 Langmuirモデルにデータをフィットさせることによって取り出した。KDは、方程式KD=kd/kaを介して、kaおよびkdと関連付けられる。
結合曲線を、データ分析前に、二重参照(捕捉された抗TREM-1抗体についての、参照表面シグナルおよびブランク緩衝液注入の減算)によって処理した。これは、サンプル注入の間の機器ノイズ、バルクシフトおよびドリフトについての補正を可能にした。
図1Aおよび1Bに示されるように、mAb 0318バリアント(即ち、318-IgG1.1f、318-IgG1.3f、318-IgG4-Abaおよび318-IgG1-Aba)は全て、mAb0318-IgG4と類似の、ヒトTREM-l-Fcに対する親和性を有することが見出された。0318-IgG1.3fバリアントは、ヒトTREM-1と比較してわずかに低減された親和性ではあるが、カニクイザルTREM-1にも結合した。図1Aを参照のこと。
【0174】
(実施例2)
TREM-1受容体への結合の際のmAb 0318-IgG1.3fの内在化分析
mAb 0318-IgG1.3fバリアント抗体を、レーザー走査型共焦点顕微鏡(データ示さず)およびAmnis ImageStream(登録商標)Imaging Flow Cytometry Analysisの両方を使用して、初代ヒト単球におけるその内在化について試験した。図2Aに示されるように、0時間では、TREM-1は、単球の表面上に主に発現される。しかし、抗体結合の24時間後までに、顕著なパーセンテージ(約36%)のTREM-1受容体(0318-IgG1.3f染色によって明らか)が内在化され、これは、mAb 0318-IgG1.3f抗体結合の際に、抗体-受容体複合体全体が細胞内に内在化されることを示唆している。
【0175】
次に、内在化された後のTREM-1受容体の運命を決定するために、TREM26抗体(カタログ番号314902、Biolegend;米国特許出願公開第20150274825号の[0005]段落を参照のこと)を、比較のために使用した。TREM26抗体は、本開示に記載される0318抗体バリアントと競合しない。図2Bに示されるように、0時間と比較して、20時間の時点で、TREM26+発現における顕著な低減(約51%)が存在した。(mAb 0318-IgG1.3f処理後)20時間の時点で、TREM26+MFI(平均蛍光インデックス)における顕著な低減(4分の1)もまた存在し、これは、TREM-1受容体が内在化の際に分解されることを示唆している。しかし、一度抗体が除去されると、抗体曝露の際のTREM-1受容体発現のこの喪失は、可逆的である(データ示さず)。
【0176】
(実施例3)
BWZ/hTREM-1レポーター細胞アッセイを使用した、TREM-1活性化を効率的に遮断するmAb 0318バリアントの分析
抗TREM-1 mAb 0318バリアントがヒトTREM-1シグナル伝達を阻害する能力を、例えば、米国特許第9,550,830号および国際出願公開番号WO2016/009086に記載されるように、BWZ.36/hTREM-1DAP12:NFAT-LacZ細胞株(本明細書で「BWZ/hTREM-1レポーター細胞」とも呼ぶ)アッセイを使用して決定した。簡潔に述べると、およそ40,000個のhTREM-1/BWZ.36細胞/ウェルを、最大下の陽性シグナルを提供するために2.5μg/mlのPGN-ECndi(カタログ番号tlrl-kipgn、Invivogen San Diego、Calif.、USA)と共に75ng/mlのPGLYRP1(配列番号8)の存在下で、あるいは、陽性シグナルを提供するために最大下レベル(1μg/ml)のプラスチック吸着された抗TREM-1モノクローナル抗体(カタログ番号MAB1278、R&D Systems、Minneapolis、Minn.、USA)の存在下で、透明底の黒色96ウェルプレートにプレートした。
【0177】
mAb 0318バリアント(即ち、0318-IgG1.3f;0318-IgG1.1f;0318-IgG1-Aba;および0318-IgG4-Aba)を、10μg/mlで開始して5回の段階2倍希釈でアッセイ中に滴定した。このアッセイを、37℃で一晩インキュベートし、Beta Gloプロトコールに従ってBeta Glo(カタログ番号E4740、Promega Madison、Wis.、USA)で引き続いて発色させ、発光を記録した。データをプロットして、Beta Glo相対発光単位 対 試験抗体濃度を示した。非中和陰性対照mIgG1(カタログ番号MAB002、R&D Systems Minneapolis、Minn.、USA)および中和陽性対照ポリクローナルヤギ抗hPGLYRP1抗体(カタログ番号AF2590、R&D Systems、Minneapolis、Minn.、USA)を、各アッセイプレート上に流した。TREM-1シグナル伝達の公知のアゴニストであるMAB1278抗体(カタログ番号MAB1278、R&D Systems;米国特許出願公開20150274825号の[0005]段落を参照のこと)もまた、陽性対照として使用した(挿入された囲み図を参照のこと)。
図3に示されるように、全てのmAb 0318バリアントは、国際出願公開番号WO2016/009086においてmAb 0318 IgG4抗体で以前に観察されたように、ヒトTREM-1シグナル伝達を阻害するにあたり強力であった。
【0178】
(実施例4)
異なる初代ヒト細胞による炎症性サイトカインのTREM-1媒介性産生を阻害する際の、mAb 0318抗体バリアントのポテンシーのin vitro分析
抗TREM-1 mAb 0318バリアントのアンタゴニスト特性をさらに評価するために、活性化されたヒト初代細胞からの種々の炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-6またはIL-8)の放出を遮断するそれらのポテンシーを評価した。初代単球、好中球および末梢血単核球(PBMC)を、ヒト全血から単離し、プレート結合したPGRP1および可溶性ペプチドグリカン(PGN-ECndss;TLR2活性を有さないペプチドグリカンの一形態)で刺激した。
【0179】
図4に示されるように、全てのmAb 0318バリアント(即ち、IgG1.3f、IgG1.1f、IgG1-AbaおよびIgG4-Aba)は全て、PBMCおよび単球からのTNF-αのTREM-1媒介性放出を阻害するにあたり強力であった(約10~20pMの範囲のIC50値)。これらのmAb 0318バリアントのポテンシーは、mAb 0318-IgG4抗体で観察されたものと類似であった。mAb 0318-IgG1.3f抗体は、IL-6産生を阻害するにあたっても強力であった(約32pMのIC50値)。好中球について、mAb 0318-IgG1.3fバリアントは、好中球からのTREM-1媒介性IL-8産生を遮断するにあたり、mAb 0318-IgG4抗体と比較してより良好であるようであった(図4を参照のこと)。
【0180】
抗TREM-1 mAb 0318抗体バリアントのアンタゴニスト特性のさらなる実証として、単球-好中球共培養アッセイもまた使用した。単球と共培養した場合、好中球関連PGRP1は、TREM-1受容体を結合することができ、単球由来のTNF-α産生を生じる。図4に示されるように、全てのmAb 0318抗体バリアントは、この内因性の活性化を有効に遮断した(19~44pMの範囲のIC50値)。類似の結果がRBC沈降全血で観察された(図4を参照のこと)。
【0181】
(実施例5)
刺激された全血からのIL-8産生を遮断するmAb 0318-IgG1.3fのポテンシーのin vitro分析
抗TREM-1抗体バリアントのアンタゴニスト特性を測定するための全血薬力学(PD)アッセイの開発に対する主要な課題の1つは、PGN刺激から生じる高い背景である。この問題への取り組みを助けるために、全血を、NOD2阻害剤(PGNによるNOD2刺激によって生じる背景サイトカインを遮断するため)の存在下で、予め複合体化させたPGRP1+PGNで刺激した。IL-8レベルを、標準的なリガンド結合薬力学アッセイ(HTRF(登録商標))(図5A)または細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイ(図5B)を使用して測定した。
【0182】
図5Aおよび5Bに示されるように、0318-IgG1.3f抗体は、約60~90%の範囲のパーセント阻害で、TREM-1媒介性IL-8産生を有効に遮断した(図5Aを参照のこと)。観察されたIC50値(HTRFでは12pMの、ICSでは19.6pMの平均値)は、他の機能的アッセイで観察されたものと類似であった(例えば、実施例4を参照のこと)。
【0183】
(実施例6)
刺激された全血における異なる炎症性メディエーターのmRNA発現を遮断するmAb 0318-IgG1.3fのポテンシーのin vitro分析
mAb 0318-IgG1.3fのアンタゴニスト特性をさらに実証するために、選択された炎症性メディエーター(即ち、キチナーゼ-3様タンパク質1(「CHI3L1」)、IL1βおよびIL6)の発現レベルを、リアルタイムPCR(qPCR)によって測定した。簡潔に述べると、3人の正常な健康なボランティア(ドナー番号126、290および322)からEDTAチューブ中に収集したヒト全血を、変動する濃度のmAb 0318-IgG1.3f(0~1nM)の存在下で、予め複合体化させたhPGRP1(50μg/ml)およびPGN-ECndss(10μg/ml)(Invivogen tlrl-ksspgn)で一晩刺激した。刺激後、血漿を回収し、サイトカイン測定のために凍結した。mRNAを、製造業者のプロトコールに従ってMagMax-96 Blood Isolation Kit(ThermoFisher AM1837)を使用して、サンプルから単離した。次いで、単離されたmRNAを、SuperScript VILO Master Mix(Thermo Fisher 11755250)を利用して、cDNAに変換した。次に、qPCRを、以下のプローブを使用して実施した:HPRT1(Hs99999909_m1)(Thermo Fisher 4351370)、CHI3L1(Hs01072228_m1)(Thermo Fisher 4331182)、IL1β(Hs00174097_m1)(Thermo Fisher 4331182)およびIL6(Hs00985639_m1)(Thermo Fisher 4331182)ならびにTaqMan Fast Universal Master Mix(2×)(Thermo Fisher 4366072)。遺伝子発現値を、HPRT1に対して標準化し、ΔΔCT値を生成した。次いで結果をプロットし、IC50値を決定した。
【0184】
図6A~6Cに示されるように、また上述の実施例と一致して、mAb 0318-IgG1.3fは、ヒト全血における異なる炎症性メディエーターのTREM-1媒介性発現を阻害することができた。この阻害は、用量依存的のようであった。IC50値は、以下の表1に示される。
集合的に、上記結果は、本開示に記載されるmAb 0318抗体バリアントが、アンタゴニスト的であり、種々のヒト細胞からの炎症性サイトカインのTREM-1媒介性産生を有効に遮断できることを実証している。
【0185】
【表1】
【0186】
(実施例7)
mAb 0318バリアントの粘度
サンプルを、緩衝液交換し、最適な製剤(20mMのヒスチジン、150mMのスクロース、25mMのアルギニン、50mMの塩化ナトリウム、pH6.0)中に透析し、その後、Amicon Ultra遠心分離分子量カットオフフィルターを使用して濃縮した。サンプルの凝集状態を、濃縮の際のモノマー性(monomericity)における潜在的な変化について制御するために、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定したが、そのような変化は観察されなかった。濃度依存的粘度を、測定した各濃度について、3ポイント上行剪断スイープを使用して、RheoSense m-VROC溶液粘度計を使用して決定した。濃度を、希釈シリーズおよび外挿を使用してnanoDropによって280nmにおける吸光度を測定することによって決定した。
【0187】
図7に示されるように、318-IgG1.1fバリアントおよび318-IgG1.3fバリアントは共に、類似の粘度プロファイルを有した。約130mg/mLの濃度では、0318-IgG1.3fバリアントは、約9cPの粘度値を有した。かかる粘度プロファイルは、mAb 0318-IgG4で以前に観察されたものと酷似していた(国際出願公開番号WO2016/009086を参照のこと)。
【0188】
(実施例8)
mAb 0318バリアントの免疫原性潜在力
図8および表2(以下)に示されるように、318-IgG1.1fおよび318-IgG1.3fバリアントは、ヒト患者において免疫原性の低い~中間のリスクを有した。ドナーの約22~30%のみが、これらの抗体に対する免疫原性応答(in vitro CD4+T細胞増殖によって測定される)を有した。0318-IgG1-Abaおよび0318-IgG4-Abaバリアントに対する免疫原性は、それぞれ10%および42.5%であった。表2(以下)を参照のこと。対照的に、mAb 0318-IgG4は、ヒト患者においてさらに免疫原性であった(55%)。陽性対照として使用したKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)およびVL6(IL-21R mAb)は、ヒト患者において高度に免疫原性であった(それぞれ100%および40%)。
【表2】
【0189】
(実施例9)
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用したFcRnへのmAb 0318バリアントの結合分析
異なるmAb 0318バリアントがFcRnに結合できるかどうかを決定するために、FcRn受容体(マウス、ヒトおよびカニクイザル)を、アミンカップリングを介して、400応答単位(RU)のレベルになるように、BIAcore CM5-バイオセンサーチップ(GE Healthcare Bioscience、Uppsala、Sweden)上に固定化した。このアッセイを、ランニングおよび希釈緩衝液としてPBS、0.05%のTween-20(商標)pH6.0(GE Healthcare Bioscience)を用いて、室温で実施した。異なるmAb 0318バリアント(200nM)を、室温でpH6.0で50μL/分の流速で注入した。会合時間は180秒間であり、解離段階(これもまたpH6.0)は、360秒間かかった。ベースラインに戻すチップ表面の再生を、50mMのTris、pH8.0および150mMのNaClの短時間の注入によって達成した。SPRデータの評価を、注入の180秒後および注入の300秒後における生物学的応答シグナルの高さの比較によって実施した。対応するパラメーターは、RU maxレベル(注入の180秒後)および後期安定性(注入の終了の300秒後)である。
【0190】
図9Aおよび9Bに示されるように、mAb 0318抗体バリアント(IgG1-Aba mod、IgG4-Aba mod、IgG1.1fおよびIgG1.3f)は全て、pH依存的様式でヒト、マウスおよびカニクイザルFcRnに結合できた。これは、mAb 0318抗体(IgG4)についても当てはまった。
【0191】
(実施例10)
1つ以上のFcγRへのmAb 0318バリアントの結合分析
既に議論したように、ある特定の細胞表面免疫受容体に対する抗体のin vivo投与は、サイトカイン放出を誘導する潜在力を有し、これは、サイトカイン放出症候群(CRS)として公知の一般的な毒性の臨床的合併症の誘導を生じ得る。FcγR結合が架橋結合を介して潜在的なTREM-1アゴニスト性活性をもたらし得るという懸念に起因して、mAb 0318-IgG4を、本開示に記載されるバリアントフォーマット(即ち、IgG1.1f、IgG1.3f、IgG1-AbaまたはIgG4-Aba)のうち1つへと再操作した。次いで、0318抗体バリアントが異なるFcγRに結合する能力を評価した。
【0192】
図10Aおよび10Bに示されるように、318-IgG1.1fおよび318-IgG1.3fバリアントは、FcγR(即ち、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32a-H131およびCD32a-R131バリアント)、FcγRIIB(CD32b)、FcγRIIIA(CD16a-V158バリアント)およびFcγRIIIB(CD16b-NA2バリアント))の全てに対して最小の結合を有した。318-IgG1-Abaおよび318-IgG4-Abaバリアントは、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIAおよびFcγRIIIBに結合しなかったが、FcγRIには結合した。対照的に、mAb 0318(IgG4)は、全てのFcγRへの顕著な結合を示した。
【0193】
(実施例11)
mAb 0318バリアントによる炎症性サイトカインの誘導の分析
mAb 0318バリアントによるin vivo処置がサイトカイン放出症候群のリスクをもたらすかどうかをさらに決定するために、8人のヒトドナーから全血を収集し、単球を単離した。次いで、単球(4×106細胞/ウェル)をプレートし、IL-4およびGM-CSF(100ng/mL)を含む分化培地中でそれらを培養することによって、これらの単球を未成熟樹状細胞へと分化させた。プレートしたおおよそ2~3日後に、分化培地のおよそ半分を、新鮮な培地で置き換えた。7日目に、細胞を収集し、分化効率を、フローサイトメーターを使用して細胞上のCD14発現を分析することによって評価した。次に、未成熟樹状細胞を、平底プレート上にプレートし(0.8×105細胞/ウェル)、mAb 0318バリアントをそれぞれのウェルに添加した(CHO-CD32aありまたはなしで)。PGRP+PGNで刺激した未成熟樹状細胞を、陽性対照として使用した。次いで、これらの細胞を、37℃で一晩インキュベートした。次の日、上清をウェルから収集し、産生されたTNF-α、IL-6およびIL-12の量を、ELISAアッセイを使用して評価した。
【0194】
代表的なドナーからの結果は、図11A~11Iに示される。異なるmAb 0318バリアント(0318-IgG1.1f、0318-IgG1.3fおよび0318-IgG1.1 Aba)の添加は、未成熟樹状細胞による最小のIL-6(図11A、11Bおよび11C)、TNF-α(図11D、11Eおよび11F)およびIL-12(図11G、11Hおよび11I)産生を生じた。これらの結果は、実施例9の結果と共に、本明細書で開示される抗TREM-1抗体が、患者にin vivoで投与された場合に、サイトカイン放出症候群を誘導する低いリスクを有することを実証している。
【0195】
(実施例12)
mAb 0318バリアントのさらなる特徴
0318-IgG1.3fバリアントの生物物理学的特徴は、表3(以下)に提供される。
【表3】
【0196】
mAb 0318-IgG1.3fバリアントの生物物理学的特性は、臨床開発に有益である。抗体の正体を、質量分析(インタクト質量分析およびペプチドマッピング)によって確認した。抗体は、サイズ排除クロマトグラフィーによって試験した場合に、>96%モノマーであった。単一のN-グリコシル化部位が、CHO発現されるモノクローナル抗体のグリカンプロファイル(G0F、G1FおよびG2F)と一致するグリカンプロファイルで、重鎖上のN301において確認された。mAb 0318-IgG1.3fの熱安定性(Tm1=66.2℃;Tm2=78.4℃;Tm3=83.2℃)および熱可逆性(77℃で24%)は、典型的なヒトIgG1.3モノクローナル抗体についての範囲内であった。
【0197】
mAb 0318-IgG1.3fバリアントの安定性特徴は、表4(以下)に提供される。
【表4】
【0198】
記載された製剤(20mMのヒスチジン、150mMのスクロース、50mMの塩化ナトリウム、25mMのアルギニン、pH6.0)中150mg/mLで、凍結-解凍ストレス(3サイクル)の間に、物理的安定性の問題は観察されなかった。150mg/mLでの研究製剤における強制分解研究を、4、25および40℃(最大で3ヶ月間)に設定した。CDRの化学的改変は、SPRによって決定した場合に、全ての温度条件を通じて低いままであり、活性に対して影響を与えなかった。VSNK脱アミドは、IgG1.3fフレームワークの他のモノクローナル抗体と比較して、予測を下回り(40℃での貯蔵で3%/月の増加)、それに対する変化は、時間および温度依存的であった。全ての他の化学的改変(酸化、脱アミド、異性化)もまた、安定性研究の間モニタリングした場合に、低いままであった。注目すべきことに、40℃での貯蔵は、HMWバリアントおよびLMWバリアントの両方の形成を示す(それぞれ1.2%/月および2.4%/月を実証する)。観察された変化は、時間および温度依存的であり、研究期間にわたる4℃での貯蔵下で、HMWは0.25%/月増加し、LMWは未変化のままであった。40℃での貯蔵下での低いLMW形成は、高分解能の正確な質量測定を有する2D-LC/MSによって、1つのFabの喪失の累積種、ならびに推定では上部ヒンジ領域中の保存された配列におけるFabアームとして特徴付けられた。
【0199】
(実施例13)
カニクイザルにおけるmAb 0318-IgG1.3fバリアントについてのPK/TK/PD研究
抗TREM-1 0318-IgG1.3f抗体についての単回用量薬物動態(PK)、毒物動態学(TK)および薬力学(PD)研究を、カニクイザルにおいて実施した。動物の一部は、2mg/kgの0318-IgG1.3f抗体を静脈内で受けた(n=3)。他の動物は、以下の用量のうち1つの0318-IgG1.3f抗体を皮下で受けた:(i)0mg/kg(即ち、対照)(n=4)、(ii)0.1mg/kg(n=4)、(iii)0.5mg/kg(n=4)、(iv)2mg/kg(n=3)または(v)10mg/kg(n=4)。抗体投与の際に、薬物動態、抗薬物抗体(ADA)、TREM-1受容体占有率(RO)およびex vivo薬力学応答を、所定の時点で試験した。
【0200】
薬物動態(PK)
薬物動態を評価するために、0318-IgG1.3f抗体の血清濃度を、捕捉試薬としてビオチン化組換えTREM-1タンパク質を使用し、検出試薬として市販のポリクローナルヤギ抗TREM-1抗体を使用するリガンド結合アッセイを用いて、動物において評価した。
図12に示されるように、0318-IgG1.3f抗体の薬物動態は、標的媒介性のクリアランス(即ち、TREM-1受容体への結合の際の抗体の内在化および分解;実施例2を参照のこと)に主に起因して、0.1mg/kgと10mg/kgとの間で非線形であることが決定された。
【0201】
非コンパートメント分析ベースPKパラメーターは、表5(静脈内投与)および表6(皮下投与)に示される。簡潔に述べると、用量における100倍の増加は、血清曝露(AUC)における830倍の増加を生じた。表6を参照のこと。2mg/kgのIV用量後のクリアランスは、サルにおいて0.1±0.02mL/時間/kgであり、他のIgG1ベースmAbと類似していた。表4を参照のこと。36±5mL/kgにおけるVssは、血漿容積と類似であり、これは、限定的な血管外分布を示している。0318-IgG1.3f抗体の半減期は、0.1mg/kg用量についての2日間から、2および10mg/kgにおける10日間まで増加した(単回皮下用量投与)。表6を参照のこと。皮下投与(2mg/kg)後の0318-IgG1.3f抗体のバイオアベイラビリティは、84%で高かった。
【0202】
【表5】
【0203】
【表6】
【0204】
抗薬物抗体(ADA)
血清ADAは、単回用量後に(投与の経路にかかわらず)ほとんどのサル(18匹のうち16匹)において検出されたが、0318-IgG1.3f抗体の曝露およびTREM-1受容体占有率(RO)は、ADA陽性動物の大部分において損なわれなかった。表4および表5を参照のこと。ADAの形成を伴う0318-IgG1.3f抗体の終末曝露における加速した減衰は、2匹のサルでのみ観察された(1匹は7日目に0.1mg/kg用量群中、1匹は21日目に0.5mg/kg用量群中)。ADAは、終末期におけるこれら2匹のサルにおける曝露に影響を与えたので、対応するデータポイントは、PK分析については排除した。
【0205】
TREM-1受容体占有率(RO)および総TREM-1受容体レベル
次に、末梢血単球および顆粒球上で発現されるTREM-1受容体の占有率を評価した。図15Aおよび15Bに示されるように、試験した全ての用量について、占有された(即ち、抗TREM-1抗体に結合した)TREM-1受容体のパーセンテージは、単球と顆粒球との間で類似であった。さらに、受容体占有率の持続時間は、動物に投与した0318-IgG1.3f抗体の用量に依存するようであった。0.5mg/kgでは、抗体投与後最大で2週間にわたり、≧85%のROが観察された。対照的に、2および10mg/kgでは、TREM-1受容体の≧85%が、投与後少なくとも1ヶ月間にわたって、占有されたままであった。
0318-IgG1.3f抗体投薬後、総TREM-1受容体レベルは、単球および顆粒球の両方上で低減された。図14Aおよび14Bを参照のこと。既に議論したように、この低減は、抗体結合後の増加した受容体ターンオーバーにおそらくは起因する。表面TREM-1受容体発現における減少は可逆的であり、表面受容体喪失の持続時間は、少なくとも試験した用量レベルにおいては、受容体占有率の持続時間と相関した。
【0206】
可溶性TREM-1(sTREM-1)のレベルは、試験した全ての用量群で、mAb 0318 mAb-IgG1.3fバリアントの単回用量後に10倍~50倍増加するようであった(データ示さず)。sTREM-1レベルにおける増加が抗TREM-1抗体投与と関連するか、研究の過程の間の動物の全般的な取り扱いに関連するかは、不明である。いずれの場合にも、薬物濃度はsTREM-1レベルをはるかに超えた(>1000倍)ので、可溶性標的は、細胞表面TREM-1へのmAb 0318 mAb-IgG1.3fバリアントの結合をもたらさないと見込まれる。
【0207】
(実施例14)
中央コンパートメントにおけるTMDDを用いた2-コンパートメントPKモデルによって記載される、カニクイザルにおけるmAb 0318-IgG1.3fバリアントについてのPK/TK/PD研究
サルのPK、RO、総受容体レベルおよびPDデータを、観察された非線形PKに適応させた中央コンパートメントにおける飽和可能な標的介在性薬物動態(TMDD)を用いた2-コンパートメントPKモデルを使用して記載した(実施例12および図13を参照のこと)。直接効果阻害性モデルを使用して、PD応答を記載した。このモデルは、サルにおいて観察されたPK/RO/PDの時間経過を有効に捕捉できた。観察された(白抜き丸)およびモデル予測されたエンドポイント(実線)は、図16A(0.1mg/kgの皮下投薬)および図16B(10mg/kgの皮下投薬)に提供される。表7は、推定されたPK/PDパラメーターを提供する。mAb0318-IgG1.3fバリアントの血清曝露およびTREM-1のROデータを全てのサルからプールしたところ、ROにおける濃度依存的増加が観察された。図16Aおよび図16Bを参照のこと。濃度-RO関係を記載するために使用したEmaxモデルは、in vivo RO EC50を1.6±0.2nMと推定した。
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】

本PCT出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年4月2日出願の米国仮特許出願第62/651,605号の優先権の利益を主張する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図11I
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
【配列表】
2023080074000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含む、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体-1(TREM-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記IgG1重鎖定常領域が、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本開示の抗TREM-1抗体、二特異性分子、核酸、ベクター、細胞またはイムノコンジュゲートを投与するステップを含む、それを必要とする対象において炎症性疾患または自己免疫性疾患を処置する方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、この炎症性疾患または自己免疫性疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、血管炎、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群(Sjogrens’s syndrome)、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アレルギー、喘息、急性炎症または慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、この方法は、1つ以上のさらなる治療薬を投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、このさらなる治療薬は、抗IP-10抗体または抗TNF-α抗体である。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含む、ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体-1(TREM-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記IgG1重鎖定常領域が、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体。
〔2〕重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1を遮断するための結合についてmAb 0318と交差競合する単離された抗体であって、前記IgG1重鎖定常領域が、野生型IgG1重鎖定常領域(配列番号9)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む、抗体。
〔3〕mAb 0318と同じTREM-1エピトープに結合する、前記〔1〕または〔2〕に記載の抗体。
〔4〕配列番号1のD38、V39、K40、C41、D42、Y43、T44、L45、E46、K47、F48、A49、S50、S51、Q52、K53、A54、W55、Q56、Y90、H91、D92、H93、G94、L95およびL96からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基を含むTREM-1エピトープに特異的に結合する、前記〔1〕または〔2〕に記載の抗体。
〔5〕配列番号1のアミノ酸D38~L45、E46~Q56および/またはY90~L96を含むTREM-1エピトープに特異的に結合する、前記〔1〕または〔2〕に記載の抗体。
〔6〕前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔7〕前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、A330S、P331S、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔8〕前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔9〕前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の単離された抗体。
〔10〕重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記重鎖CDR3が、DMGIRRQFAY(配列番号26)または1つもしくは2つの置換を除いたDMGIRRQFAY(配列番号26)を含む、抗体。
〔11〕前記重鎖CDR3が、DQGIRRQFAY(配列番号72)を含む、前記〔10〕に記載の抗体。
〔12〕重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記重鎖CDR2が、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)または1つもしくは2つの置換を除いたRIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)を含む、抗体。
〔13〕重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記重鎖CDR1が、TYAMH(配列番号24)または1つもしくは2つの置換を除いたTYAMH(配列番号24)を含む、抗体。
〔14〕重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記軽鎖CDR1が、RASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)または1つもしくは2つの置換を除いたRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)を含む、抗体。
〔15〕重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記軽鎖CDR2が、RASNLES(配列番号28)または1つもしくは2つの置換を除いたRASNLES(配列番号28)を含む、抗体。
〔16〕重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記軽鎖CDR3が、QQSNQDPYT(配列番号29)または1つもしくは2つの置換を除いたQQSNQDPYT(配列番号29)を含む、抗体。
〔17〕前記VHが、配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一なアミノ酸配列を含む、前記〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔18〕前記VLが、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一なアミノ酸配列を含む、前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔19〕重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、前記〔1〕~〔18〕のいずれか1項に記載の抗体であって、前記VHが配列番号14を含み、前記VLが配列番号15を含む、抗体。
〔20〕重鎖および軽鎖を含む、前記〔19〕に記載の抗体であって、前記重鎖が、配列番号50、配列番号51、配列番号52または配列番号53を含む、抗体。
〔21〕重鎖および軽鎖を含む、前記〔20〕に記載の抗体であって、前記軽鎖が、配列番号54を含む、抗体。
〔22〕重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、L234A、L235EおよびG237Aからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、
抗体。
〔23〕重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、
抗体。
〔24〕重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、
抗体。
〔25〕重鎖CDR1、CDR2、CDR3;軽鎖CDR1、CDR2、CDR3;およびIgG1重鎖定常領域を含む、TREM-1に特異的に結合する単離された抗体であって、
前記重鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれTYAMH(配列番号24)、RIRTKSSNYATYYAASVKG(配列番号25)およびDMGIRRQFAY(配列番号26)を含み;
前記軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3が、それぞれRASQSVDTFDYSFLH(配列番号27)、RASNLES(配列番号28)およびQQSNQDPYT(配列番号29)を含み;
前記IgG1重鎖定常領域が、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、
抗体。
〔26〕TREM-1が、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号7のアミノ酸配列を含む、前記〔1〕~〔25〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔27〕配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)、またはそれらの任意の組み合わせに対する減少した結合親和性を有する、前記〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔28〕配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、FcγRI(CD64)に対する、2分の1以下、3分の1以下、4分の1以下、5分の1以下、6分の1以下、7分の1以下、8分の1以下、9分の1以下または10分の1以下に減少した結合親和性を有する、前記〔1〕~〔26〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔29〕配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、免疫原性が低い、前記〔1〕~〔28〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔30〕TREM-1への結合の際に、刺激因子の非存在下で、TREM-1シグナル伝達をアゴナイズしない、前記〔1〕~〔29〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔31〕未成熟樹状細胞(iDC)を前記抗体の存在下かつ刺激因子の非存在下でインキュベートした場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、前記細胞における炎症性サイトカインの発現を誘導しない、前記〔1〕~〔30〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔32〕細胞を前記抗体および刺激因子の両方の存在下で活性化した場合に、前記細胞における炎症性サイトカインの産生を遮断する、前記〔1〕~〔31〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔33〕前記刺激因子がTREM-1リガンドである、前記〔30〕~〔31〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔34〕前記炎症性サイトカインが、IL-6、TNF-α、IL-8、IL-1β、IL-12、キチナーゼ-3様タンパク質1(CHI3L1)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔31〕または〔32〕に記載の抗体。
〔35〕pH依存的様式で、ヒトFcRn、カニクイザルFcRnおよび/またはマウスFcRnに結合する、前記〔1〕~〔34〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔36〕キャピラリー示差走査熱量計(CAP-DSC)によって測定した場合に、配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む参照抗体と比較して、より熱的に安定である、前記〔1〕~〔35〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔37〕前記抗体の約10%~20%、約20%~30%(例えば、24%)または約30%~40%が、77℃に加熱した場合に可逆的である、前記〔1〕~〔36〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔38〕配列番号76に示されるアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体と比較して、より高い融解温度(Tm)を有する、前記〔36〕または〔37〕に記載の抗体。
〔39〕80mg/mLの濃度で、5cP未満、4cP未満、3cP未満、2.5cP未満、2.4cP未満、2.3cP未満、2.2cP未満、2.1cP未満、2cP未満、1.9cP未満、1.8cP未満、1.7cP未満、1.6cP未満、1.5cP未満、1.4cP未満、1.3cP未満、1.2cP未満、1.1cP未満、1.0cP未満、0.9cP未満、0.8cP未満、0.7cP未満、0.6cP未満、0.5cP未満、0.4cP未満、0.3cP未満、0.2cP未満または0.1cP未満の粘度を有する、前記〔1〕~〔38〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔40〕130mg/mLの濃度で、10cP未満(例えば、9cP)の粘度を有する、前記〔1〕~〔38〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔41〕Biacoreによって測定した場合に、4nM未満(例えば、3.4nM)のK D でヒトTREM-1に結合する、前記〔1〕~〔40〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔42〕Biacoreによって測定した場合に、1nM未満(例えば、0.91nM)のK D でカニクイザルTREM-1に結合する、前記〔1〕~〔41〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔43〕サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって観察した場合に、モノマーである、前記〔1〕~〔42〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔44〕2次元液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(2D-LC/MS)、または液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS)を使用するインタクト質量分析によって観察した場合に、断片化の最小のリスクを示す、前記〔1〕~〔43〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔45〕8~9(例えば、8.75)の等電点を有する、前記〔1〕~〔44〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔46〕ヒスチジン、スクロース、アルギニンおよびNaClを含む製剤中で安定である、前記〔1〕~〔45〕のいずれか1項に記載の抗体。
〔47〕20mMのヒスチジン、150mMのスクロース、25mMのアルギニンおよび50mMのNaClを含む製剤中で少なくとも2ヶ月間にわたって安定である、前記〔46〕に記載の抗体。
〔48〕前記製剤が、6.0のpHである、および/または前記製剤が、4℃、25℃もしくは40℃で貯蔵される、前記〔46〕または〔47〕に記載の抗体。
〔49〕第2の結合特異性を有する分子に連結された前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体を含む二特異性分子。
〔50〕前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸。
〔51〕前記〔50〕に記載の核酸を含むベクター。
〔52〕前記〔51〕に記載のベクターを含む細胞。
〔53〕薬剤に連結された前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体を含むイムノコンジュゲート。
〔54〕前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体、前記〔49〕に記載の二特異性分子、前記〔50〕に記載の核酸、前記〔51〕に記載のベクター、前記〔52〕に記載の細胞または前記〔53〕に記載のイムノコンジュゲート、および担体を含む、組成物。
〔55〕前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体、前記〔49〕に記載の二特異性分子、前記〔50〕に記載の核酸、前記〔51〕に記載のベクター、前記〔52〕に記載の細胞または前記〔53〕に記載のイムノコンジュゲート、および使用のための指示書を含む、キット。
〔56〕前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体、前記〔49〕に記載の二特異性分子、前記〔50〕に記載の核酸、前記〔51〕に記載のベクター、前記〔52〕に記載の細胞または前記〔53〕に記載のイムノコンジュゲートを対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象においてTREM-1活性を阻害する方法。
〔57〕前記〔1〕~〔48〕のいずれか1項に記載の抗体、前記〔49〕に記載の二特異性分子、前記〔50〕に記載の核酸、前記〔51〕に記載のベクター、前記〔52〕に記載の細胞または前記〔53〕に記載のイムノコンジュゲートを対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象において炎症性疾患または自己免疫性疾患を処置する方法。
〔58〕前記炎症性疾患または前記自己免疫性疾患が、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、過敏性腸症候群、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、血管炎、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、I型糖尿病、グレーブス病、多発性硬化症(MS)、自己免疫性心筋炎、川崎病、冠動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、自己免疫性甲状腺炎、強皮症、全身性硬化症、変形性関節症、アトピー性皮膚炎、白斑、移植片対宿主病、シェーグレン症候群、自己免疫性腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、アレルギー、喘息、急性炎症または慢性炎症のいずれかの結果である他の自己免疫性疾患、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、前記〔57〕に記載の方法。
〔59〕1つ以上のさらなる治療薬を投与するステップをさらに含む、前記〔56〕~〔58〕のいずれか1項に記載の方法。
〔60〕前記さらなる治療薬が、抗IP-10抗体または抗TNF-α抗体である、前記〔59〕に記載の方法。
【外国語明細書】