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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080081
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】付加製造によって製造される医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3201 20060101AFI20230601BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 17/122 20060101ALI20230601BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230601BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230601BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20230601BHJP
【FI】
A61B17/3201
A61B17/28
A61B17/122
B33Y80/00
B33Y10/00
B22F10/20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040288
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2019550745の分割
【原出願日】2018-03-12
(31)【優先権主張番号】102017105706.4
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514129877
【氏名又は名称】エースクラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスハウプト,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】コラー,トビアス
(57)【要約】
【課題】費用対効果が高く自動化の程度が高い方法によって製造される医療器具を提供する。
【解決手段】本発明は、互いに相対的に移動可能な少なくとも第1器具ブランチ(3)と第2器具ブランチ(2)とを有する医療器具(1)であって、第1器具ブランチ(3)は、オス軸受部分(9)を備えるオス器具ブランチ(3)として構成され、第2器具ブランチ(2)は、貫通開口部(10)を有するメスの軸受部分(6)を備えるメス器具ブランチ(2)として構成され、第1器具ブランチ(3)は、オス軸受部分(9)がメス軸受部分(6)の貫通開口部(10)を貫通するように、第2器具ブランチ(2)に配置されものにおいて、器具(1)が付加製造法を使用して製造されることを特徴とする医療器具(1)に関する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対的に移動可能な少なくとも第1器具ブランチ(3)と第2器具ブランチ(2)とを有する医療器具(1)であって、
前記第1器具ブランチ(3)は、オス軸受部分(9)を備えるオス器具ブランチ(3)として構成され、前記第2器具ブランチ(2)は、貫通開口部(10)を有するメス軸受部分(6)を備えるメス器具ブランチ(2)として構成され、
前記第1器具ブランチ(3)は、前記オス軸受部分(9)が前記メス軸受部分(6)の前記貫通開口部(10)を貫通するように、前記第2器具ブランチ(2)に配置されたものにおいて、
前記医療器具(1)が付加製造法を使用して製造され、
前記両器具ブランチ(2,3)の一方は、これら両器具ブランチ(2,3)の揺動位置決めのために、他方の器具ブランチ(2,3)の方向に隆起するとともに、他方の器具ブランチ(2,3)に形成された対応の円弧形状の凹部(16)に係合する、案内突起(17)を有することを特徴とする医療器具(1)。
【請求項2】
前記メス軸受部分(6)は前記貫通開口部(10)を完全に包囲している請求項1に記載の医療器具(1)。
【請求項3】
前記第2器具ブランチ(2)に対する前記第1器具ブランチ(3)の製造位置において、前記第1器具ブランチ(3)の前記オス軸受部分(9)と前記第2器具ブランチ(2)の前記メス軸受部分(6)との間に、互いに対して接触無く配置されるような、遊びが設けられ、
両器具ブランチ(2,3)の軸受部分(6,9)のそれぞれは中央軸受部分を有し、
前記製造位置において、二つの前記器具ブランチ(2,3)は、前記中央軸受部分においてのみ互いに重なり合う請求項1または2に記載の医療器具(1)。
【請求項4】
製造位置において前記メス軸受部分(6)によってカバーされる前記オス軸受部分(9)の領域(11)は、前記貫通開口部(10)よりも低い高さ(h)を有する請求項1または3に記載の医療器具(1)。
【請求項5】
製造位置において前記第1器具ブランチ(3)と前記第2器具ブランチ(2)との間に、80度~120度の角度が形成される請求項1~4の何れか一項に記載の医療器具(1)。
【請求項6】
製造位置から偏移した使用位置において、前記第1器具ブランチ(3)と前記第2器具ブランチ(2)との間で相互接続を確立するために、前記第1器具ブランチ(3)および/又は前記第2器具ブランチ(2)に接触構造(12,13,17,18)が形成されており、
両器具ブランチ(2,3)の軸受部分(6,9)のそれぞれは、二つの前記器具ブランチ(2,3)が前記使用位置及び前記製造位置において互いに重なり合う中央軸受部分と、二つの前記器具ブランチ(2,3)が前記使用位置においてのみ互いに重なり合う、両側に隣接する側方軸受部分とを有する請求項1~5の何れか一項に記載の医療器具(1)。
【請求項7】
前記医療器具(1)は、当該医療器具(1)が、使用位置から製造位置へと移行される時に、前記両器具ブランチ(2,3)の相対移動が規制され、これがユーザによる前記規制を超える操作力によって克服されなければならないように構成された規制構造を有する請求項1~6のいずれかに記載の医療器具(1)。
【請求項8】
前記案内突起(17)及び前記凹部(16)は、前記第1器具ブランチ(3)及び前記第2器具ブランチ(2)の回転の中心に対して同心状に配置されている請求項1に記載の医療器具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して移動可能な第1器具ブランチと第2器具ブランチとを少なくとも有し、前記第1器具ブランチがオス軸受部分を備えるオス器具ブランチであり、前記第2器具ブランチが貫通開口部を有するメス軸受部分を備えるメス器具ブランチとして形成され、前記第1器具ブランチが第2器具ブランチ上に、前記オス軸受部分が前記メス軸受部分の貫通口を貫通するように配設されている医療器具に関する。本発明は、更に、付加製造法によって医療器具を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ボックスロックを備える従来の外科器具の製造は不利な点で比較的複雑である。ボックスロックを備えるそのような器具としては、ハサミ、クランプ、鉗子、その他、互いに対して、特に揺動、によって位置決め可能な二つの器具ブランチ/器具部分を有するその他類似の器具がある。前記二つの器具ブランチは、それらの一方が他方に貫通するように設計および取り付けられており、一方のブランチが他方のボックスに挿入されるため、「ボックスロック」という名称が付けられているとも言える。通常、これら二つの器具ブランチは、例えば、変形および/又は加工、によって予め別々に製造される。このようにして予め製造された前記ブランチは、その後、前記メス器具ブランチの閉鎖部分を拡張することによって互いに対して挿入され、押し付けられる。穿孔、研削、レベリング、硬化および/又はブラッシング等の、追加の作業工程が必要な場合もある。
【0003】
そのような公知の器具の製造において、一般に、多数の作業によって多量の時間と手間とが必要であることが不利な点である。その結果、自動化の可能性がほぼ存在せず、多大な手作業の手間さえ必要となるかもしれない点においてその製造はコスト高で工具集約性の高いものとなる。ボックスロックを備える従来の外科器具のもう一つの欠点は、比較的互いに対して移動可能なそれらのブランチが通常(枢支)軸を介して互いに接続されていることにある。したがって、上述した互いに対する回転とは別に、前記ブランチ間には、洗浄又は殺菌の目的のためのアクセスが困難である領域が常に存在し、相対的位置決めのための他の可能性は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に対する本発明の基礎となる目的は、製造工学に関する上述した従来技術の問題点が無い医療器具を提供することにある。特に、その製造は、費用対効果が高く、自動化の程度が高く、好ましくは、(大部分)工具無し組立てを可能にする。更に、前記器具は、従来技術と比較して、洗浄および殺菌に対するその適性において改善されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、互いに相対的に移動可能な少なくとも第1の器具ブランチ/器具部分と第2の器具ブランチ/器具部分とを有する医療器具によって解決される。
前記第1器具ブランチは、オス軸受部分を備えるオス器具ブランチとして構成されている。前記第2器具ブランチは、貫通開口部(プッシュスルーボックス)を有するメスの軸受部分を備えるメス器具ブランチとして構成されている。前記第1器具ブランチは、前記オス軸受部分が前記メス軸受部分の貫通開口部(プッシュスルーボックス)を貫通するように、前記第2器具ブランチに配置される。本発明による器具は、それ(少なくとも前記第1器具ブランチ)が付加製造法(additive manufacturing)を使用して製造されるという事実によって特徴付けられる。
【0006】
方法に関しては、前記目的は、医療器具、特に本発明による器具、特に添付の請求項の1つによる器具を製造する方法により、付加製造方法により解決され、これによれば、少なくとも、オス軸受部分を備える第1オス器具ブランチ/器具部分と、貫通開口部を有するメス軸受部分(プッシュスルーボックス)を備えるメス器具ブランチとしての第2器具ブランチ/器具部分とが形成され、ここで、少なくとも前記オスの軸受部が、前記メス軸受部の前記貫通開口部を貫通するように、(一般的に知られている生成的(generative)/付加(additive)製造方法に従って)付加的に製造される。
【0007】
付加製造法によって互いに対して挿入された二つの器具ブランチを製造することがうまくゆく理由は、例えば、前記器具のある開放位置においては、これら二つの器具ブランチ間の距離が、製造中においてこれらブランチが交わることなく、その後、互いに対して移動/揺動可能である。本発明によれば、前記ブランチは、単一の製造工程において互いに別々作り出されるように製造される。このことは、両ブランチが同時に製造されるということを意味し、それによって、それらが互いに意図される構成及び配置、即ち、ボックスロックを備えて、付加的又は生成的に直接組み立てられる。また、前記二つのブランチがまず互いに対して別々に作られて、その後に、互いに組み付けられるという従来技術と異なり、本発明によれば、前記二つのブランチは、所望の方法でのそれらの製造中に互いに対して接続されており、具体的には、それらを意図されるように互いに対して位置決め可能なように、接続/インタロックされる。有利なことに、以前に必要であった、ツール集約型の2つのブランチの最終組み立て手順(インタロック)が不要になる。さらなる利点は、本発明が、現在の製造方法と比較して必要な製造工程の数を大幅に削減でき、時間とコストを節約できることである。しかしながら、それでも、それぞれの要件に応じて、付加製造後に前記器具を硬化、ドリル、リベット、および/または表面処理することは可能である。本発明は、ボックスロックを備えるほぼすべてのタイプの手術器具、例えば、鉗子、クランプ、はさみ等をカバーする。
【0008】
本発明による前記器具は、好ましくは、当該器具の前記二つのブランチが接続又は結合される閉鎖領域を有する。この閉鎖領域/結合領域/接続領域は、前記第1ブランチの前記オス軸受部分(これは、結合部、接続部または閉鎖部とも呼ぶことができる)と、前記第2ブランチの前記メス軸受部分/プッシュスルーボックス(これは結合部、接続部、またはクロージャ部とも呼ぶことができる)とによって形成される。前記オス部分は、前記メス部分の貫通開口部に収容されるか、それを貫通する。
【0009】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項においてもクレームされ、以下においてより詳細に説明される。
【0010】
本発明の好ましい実施例において、前記メス軸受部分は前記貫通開口部を完全に包囲または取り囲んでいる。これによって、前記二つのブランチの互いに対する特に安定的で正確な案内が可能となる。
【0011】
別の好適実施例において、前記器具がその位置で製造されることから製造位置とも称することが可能な、前記第1器具ブランチの前記第2器具ブランチに対する相対位置において、前記第1器具ブランチと前記第2器具ブランチとを互いに対する又は互いの内部への接触無しで配置することが可能となるように、前記第1器具ブランチの前記オス軸受部分と前記第2器具ブランチの前記メス軸受部分との間に遊びが設けられる。具体的には、前記両器具部分の前記軸受部分は、三つの個別の部分領域を備えることができる、即ち、前記二つの器具ブランチが全ての位置(機能位置と製造位置)において互いに重なり合う中央軸受領域または閉鎖領域、そして、例えば、前記器具の前記閉鎖状態において、これら二つのブランチが前記製造位置以外の互いに異なる角度位置(機能位置)にある場合にのみ、互いに重なり合う、互いに対する両側の隣接する側方軸受領域又は閉鎖領域、を有することができる。もしも、好適実施例により、前記製造位置において前記メス軸受部分によってカバーされる前記オス軸受部分の領域が、前記貫通開口部の正幅よりも小さな高さを有するように構成するならば、付加製造の枠組み内における前記二つのブランチ間の相互接触を防止することを更に容易にすることが可能となる。特に、前記二つの器具部分を、たとえば、80度~120度の、ある開放位置(製造位置)において、それらが、前記完全閉鎖領域において互いから離間し、互いに接触しないように構成することができる。
これは、例えば、前記オス器具部分の前記中央閉鎖領域および/又は前記メス器具部分の前記中央閉鎖領域を各側方閉鎖領域よりも薄くすることによって達成することができる。
これにより、前記二つの器具部分の前記中央閉鎖領域はいなかる位置においても互いに触れ合うことがなくなり、それによって、製造中におけるこれら二つの器具部分の材料接続が回避される。前記器具がある程度(機能位置)閉じられる時、前記側方閉鎖領域は、(直接的に、又は、後により詳細に記載するように、例えば接触構造又は接触部材によって間接的に)互いに重なり合う、或いは、互いに接触すらするが、これらは、前記製造位置/状態においては重なり合わず、それらは互いに触れ合うこともできない。
【0012】
一好適実施例によれば、前記製造位置において、前記第1器具ブランチと前記第2器具ブランチとの間には、約80度~約120度、好ましくは、約85度~約115度、そして特に好ましくは、約90度~約110度、の角度が形成される。好ましくは、前記製造位置において、これら器具ブランチは、互いに対して、前記器具が実際に意図されるように使用される時には低い可能性でしかおこらない角度又は位置にある。これによって、前記器具が安全に機能する(機能位置(単数又は複数)における良好な揺動案内)ように保証することが特に容易となる。
【0013】
本発明の有利な実施形態によれば、前記第1器具ブランチおよび/または前記第2器具ブランチに接触構造が形成される。これらは、前記製造位置から外れた機能/使用位置において、前記第1器具ブランチと前記第2器具ブランチとの間の相互接触を確立するのに役立つ。これにより、前記製造によって生じる前記両ブランチの互いからの空間的分離にも拘らず、実際の使用中において、両ブランチの互いへの、又、互いに対する、規定された、確実で安定した案内を達成することができる。一実施例に依れば、前記オスブランチは、前記閉鎖領域又は前記オス軸受部分において、隆起又は小ベンチの形状の、少なくとも1つの接触構造を備え、これは、前記器具が閉じられた時に、前記器具閉鎖における前記遊びを減少させる。好ましくは、二つのそのような小ベンチ又は隆起が、各側に形成又は配置される。本発明に依れば、前記隆起又は前記小ベンチの領域において、弾性舌部を形成することによって、同時の容易な作動に対する特に効果的な遊び補償を達成することができる。従って、前記両ブランチ間にバネ力が付与され、その強度が前記器具の作動力と案内とを決定する。プラグを備える以下に記載の実施例のケースにおいて、前記二つの部分の互いに対する明確な移動を規定するべく、前記両ブランチに形成された対応の凹部を通過する、別体の軸部材によって、互いに対して配置及び固定されるようにすることが実用的である。
【0014】
前記第1器具ブランチと前記第2器具ブランチとは、プッシュスルー(押し通し)軸によって、互いに揺動可能に配置することができる。原則的に、このようなプッシュスルー軸はリベットとして構成することができる。
【0015】
或いは、前記器具ブランチの一方は、他方の器具ブランチの方向に上昇するガイド突起を備えることができ、これは、両器具ブランチの揺動位置決めのために、前記他方の器具ブランチの対応の円弧形状凹部に係合する(モーションリンク案内)。特に、前記凹部は、前記メス軸受部分、特に両側、に形成することができる。前記案内突起は、前記オス軸受部分、特に両側、に形成することができる。
【0016】
特に大きな利点は、そのような実施例は、軸、プッシュスルー軸又はリベットを必要としないことにある。他方、これによって、前記器具のコンポーネントが一つ減り、その結果、前記プッシュスルー軸を備える器具と比較して、その製造において少なくとも一つの作業工程が省略される。もう一つの本質的かつ重要な利点は、前記器具を、所定の閉じ力/開放力/作業力で製造することが可能であることにある。これは、前記オスおよびメスブランチの相互作用、特にそれらの相互適合の結果として、それらの間に作用する力が、リベットスルー軸を有する器具では困難を伴ってのみ達成可能な、所定の方法で、生成可能であるという事実による。リベット締めプロセスでは、オスブランチの閉鎖ボックスの両側が通常変形、特に圧縮される。変形に、影響を与えることが不可能であるか、もしくは、困難を伴って所定の方法でのみ影響を与えることが可能で、それによって、ある力(閉鎖力、開放力、作動力)に関しては、リベット締めプロセスの検証を不十分にしか行うことができないことは不利である。実際には、この問題は、複数のリベット締め機が生産で使用される場合、たとえ機械とそのパラメータの両方が同一であっても、各機械が異なる動きで器具を生産するという範囲に及ぶ。これによって、ほぼ同一の閉鎖力、即ち、ほぼ同一の運動、が達成可能な程度までの広範囲な再加工によってのみ修正が可能な、その動き(作動力)において互いに大きく異なる器具が作り出される。上述した問題を、モーションリンク案内を備える実施例によって回避可能であることは大きな利点である。特に、付加製造、特に、レーザ焼成プロセス、特に、前記オスおよびメス器具部分の前記側方閉鎖領域又は軸受部分の両側表面、において、前記突起および溝、特に、円弧形状の突起とそれらに対応の円弧形状の溝、を形成することができる。これは、前記二つの器具ブランチの回転の意図される中心に対して同心状に配置される。前記溝および突起が、更にアプローチ面取り部を備え、前記二つの器具ブランチが前記製造位置から前記使用位置へと移動される時に、それぞれの突起が対応の溝内に漏斗的に挿入可能に構成することが特に有利である。前記溝と突起との同心性によって、別のコンポーネントとしての軸が不要となり、製造工程を省略することが可能となる。前記突起は、連続する円弧、又は、一つの突起或いは対応の円弧上に配置された複数の個々の突起の形状とすることができる。一実施例の特徴構成に依れば、溝および/又は突起は、摩擦低減層を備えている。或いは、それらは、PEEK,PE,等の適当な材料から形成することができ、前記側方閉鎖部分に配置することができる。更に、前記円弧形状溝および/又は前記円弧形状突起の側方端部に傾斜面を設けることができる。これらは、前記突起の前記溝への侵入を促進する一種の入口漏斗を形成する。これらの傾斜面を、前記器具が前記閉じ位置にある直前になって初めて真の閉鎖(すなわち、二つの部分間に、もはやぐらつきが無くなる状態)が形成されるように構成することも可能である。
【0017】
好適実施例に依れば、前記器具は規制構造を有する。これは、前記器具が、使用中に、その機能/使用位置の一つから、製造位置に、容易又は不意に、移動することができないように保証する。従って、前記規制構造は、器具が使用位置から製造位置へと移行される時に、両器具ブランチの相対移動が禁止され(移動に対する抵抗/閾値)、それを克服するには、ユーザによってより大きな操作力を加えなければならないように構成される。又、このようにすることで、器具の開放移動のための乗り越え可能なストップが形成される、ともいうことができる。これは、通常の使用中は、器具はある点を超えては開放せず、従って、それが誤って製造位置に移行することが防止される、という利点を有する。しかしながら、前記規制を克服する操作力を加えることによって、前記器具を製造位置へと持って行くことが容易に可能である。前記製造位置において、前記両器具ブランチ(規制内で)互いに複数の方向に移動および/又は回転させて、それによって容易で効果的なクリーニング、メンテナンスおよび殺菌を容易にする。同時に、器具の通常の使用中には、誤って製造位置に到達することがないように保証される。前記規制又は乗り越え可能ストップは、例えば、異なる溝深さを形成することによって達成することができる。或いは、それは、凹部および突起を、それらが互いに対して選択的に、即ち、両ブランチの開放角度に応じて、互いに係合させることが可能に配置することによって達成可能である。例えば、複数の同心の対応の溝と突起をもうけることが出来る。仮想揺動軸心が、溝と突起とによって形成される場合、前記側方閉鎖面の残り領域は部分的にのみ、或いは、互いに全く接触することができない。
【0018】
前記両ブランチは、特に、金属および/又はセラミックから構成又は、形成することができる。
【0019】
好適実施例に依れば、前記ブランチの少なくとも一方、特に、前記軸受部分の少なくとも一方、に、凹部を形成することができる。これにプラグを押し込むことができ、これによって、前記器具の移動又は操作力が決まる。前記プラグは、前記器具部分とは別の材料、たとえば、PEEK,PE,PA等のプラスチック材、或いは、オーステナイト鋼等の別の金属材料、から製造することができる。
【0020】
前記2つの中央閉鎖領域/軸受部分間の(側方)距離は、付加製造に使用される機械の製造精度に依存する。この距離は、好ましくは0.05mm~0.3mmである。前記2つの器具パーツは、3D CADモデルで既に互いに挿入されるように構成することができる。この3D CADモデルは、レーザ焼結機などの付加製造に使用される機械のベースとすることができる。
【0021】
本発明によって、器具部分又は器具ブランチをボックスロック内で互いに接続することなく、特に、材料ロック状態で互いに接続又は合流することなく、外科器具を付加製造又生成的製造法を使用して製造することが初めて可能になる、ということができる。装置全体は、生成的または付加製造法を使用して製造される。本発明は、そのような器具の製造方法と、更に、適切に形成されたボックスロックを備える前記器具自身との両方に関する。
【0022】
以下、図面を例として本発明をより詳細に説明する。これらは以下を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】メス器具ブランチを示した2つの異なる斜視図である。
図2】オス器具ブランチを示した斜視図である。
図3】軸受部分の領域におけるオス器具ブランチの拡大詳細図である。
図4】製造位置にある器具を示した平面図である。
図5】製造位置における両方の軸受部分の領域を拡大した断面図である。
図6】製造位置における両方の軸受部分の領域を示した斜視図である。
図7】製造位置における実施形態の両方の軸受部分の領域を示した斜視図である。
図8】製造位置における実施形態の両方の軸受部分の領域を示した斜視図である。
図9】製造位置における一実施形態の両方の軸受部分の領域を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前記図面は本質的に概略図に過ぎず、本発明を理解するためにのみ役立つものである。
【0025】
図1および図2は、本発明による器具1の例として、外科用クランプ1を示す。図1はそのメスブランチ2を示し、図2はそのオスブランチ3を示す。メスブランチ2は、ハンドル部分4と、クランプ部分5と、それらの間に配置されたメス軸受部分(プッシュスルーボックス)6とを有する。同様に、前記オスブランチ3は、ハンドル部分7と、クランプ部分8と、それらの間に配置されたオス軸受部分9とを有する。前記メス軸受部分6は、プッシュスルー/スルー開口部10を有する。図1および図2は2つのブランチ2、3をより明確に提示および説明するためにのみ提供されているが、本発明によって付加的または生成的製造方法を使用して製造される、本発明のクランプ1は分解/組み立てすることができない、すなわち、前記2つのブランチ2,3は破壊されることなく互いに分離することはできないものであることが、銘記される。
【0026】
図3は、側面図で拡大された前記オス軸受部分9を示している。当該オス軸受部分9は、3つの個別のパーツ、即ち、前記2つの器具ブランチ2,3がそのあらゆる相対位置で互いに重なり合う中央軸受領域または閉鎖領域11、そして、その両側に隣接して位置し、前記二つのブランチ2,3が、それらが、製造位置(図4に図示)、例えば、前記器具1の閉じ状態、に於けるのと異なる角度位置に或る場合にのみ重なり合う、側方軸受領域または閉鎖領域12又は13、を有する。前記中央のオス軸受部11は、前記メス軸受部の貫通開口部10の高さHよりも小さい高さhを有する(特に図5を参照)。この形成の結果、前記製造位置において、前記オスブランチ3と前記メスブランチ2との間に、それぞれ、例えば、0.05mm~0.3mmの空隙高さである、(ダブル)空隙が存在し、従って、それらの間の接触が無い。従って、前記二つのブランチ2,3は、特に接続又は焼き付けられることなく、レーザ焼結等の、付加的又はジェネラティブ製造法によって、製造位置において製造することができ、これらの二つのブランチ2,3の互いに対する相対的移動性が確保される。
【0027】
前記器具1を使用するときに前記ブランチ2,3の所望の相互案内を達成するために、図6に図示の実施例に依れば、前記側方軸受または閉鎖領域12,13は、前記中央軸受部分11との比較で増大された高さh’を備えて形成される。当該高さh’は、前記貫通開口部9の高さHに実質的に対応するので、前記二つのブランチ2,3は、前記製造位置から外れた位置、即ち、使用位置、において互いに支持し合い、それにより、前記所望の案内を達成する。
【0028】
尚、前記器具1の前記付加製造は、図4に図示の製造位置において行われ、それによって、前記二つのブランチ2,3は、挿入状態で付加的に構築される。このことは、前記両ブランチ2,3がそれぞれ個別に製造されてその後、互いに接続/挿入されるのではなく、それらの付加的構築が、前記所望のボックスロックと同時に行われる、ということを意味する。図4は、両ブランチ2,3間の前記角度αが約90度である製造位置を図示している。
【0029】
図6の実施例の前記二つのブランチ2,3が、これらブランチ2,3の対応の軸穴19を通して挿入されるプッシュスルー軸14によって互いに揺動可能に接続されるのに対して、図7は、そのような軸を備えない点でその構成から異なる実施例を図示している。前記オス軸受部分9は、その両側に、2つの実質的に円弧形状の隆起部15を備えている。
メス軸受部6には、それに対応して、貫通開口部10の両側に円弧状凹部16が設けられている。これら隆起部15と前記凹部16とは、それらによって、前記二つのブランチ2,3が、揺動時に機能位置において互いに対して案内される、案内構造又はゲートウエイ、を形成するように、互いに係合するように構成されている。もしも、両ブランチ2,3が機能位置にではなく製造位置にあるならば、前記凹部16と前記隆起部15とは係合せず、従って、両ブランチ2,3間の接触はない。
【0030】
図8は、前記オス軸受部分9において、好ましくは、凹部(これらはナブ(nubs)の形態で接着可能)内に挿入又は押し込まれるプラグ17の形態で接触構造が形成されている器具1の実施例を図示している。前記プラグ17は、前記器具1の移動又は操作力を決めるように構成されており、前記器具のパーツとは異なる材料、例えば、PEEK、PE、PAなどのプラスチック、またはオーステナイト鋼などの別の金属材料から形成することができる。
【0031】
図9は、前記接触構造が弾性舌部18の形態で形成される更なる実施形態を示し、その自由端部には、プラグ又はナブ17を、好ましくは、図8のように配置することが可能である。
【0032】
又、図7の支持軸無しの実施例を、図8又は9の前記接触構造と組み合わせることが可能であることも銘記される。又、図7の軸無し実施例に関して、図3のように形成された軸受領域を有利に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 器具、クランプ
2 メスブランチ/器具部分
3 オスブランチ/器具部分
4 ハンドル部分
5 クランプ部分/切断部分
6 メス軸受部分/プッシュスルーボックス
7 ハンドル部分
8 クランプ部分/切断部分
9 オス軸受部分/ブッシュ-スルー部分
10 貫通開口/長手スリット
11 中央軸受部分(ブッシュ-スルー部分の)
12 側方軸受部分/接触構造(ブッシュ-スルー部分の)
13 側方軸受部分/接触構造(ブッシュ-スルー部分の)
14 プッシュスルー軸/リベット
15 隆起部
16 凹部
17 プラグ/接触構造/ボルト/ピン/ナブ
18 バネ舌部/接触構造
19 軸開口部
α 角度
h 高さ
h’ 高さ
H 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9