IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューロナノ アーベーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080174
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】神経組織内へ挿入するデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/262 20210101AFI20230601BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 5/265 20210101ALI20230601BHJP
   A61B 5/266 20210101ALI20230601BHJP
【FI】
A61B5/262
A61M1/16 100
A61B5/265
A61B5/266
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063120
(22)【出願日】2023-04-10
(62)【分割の表示】P 2019564817の分割
【原出願日】2018-05-22
(31)【優先権主張番号】1700104-1
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】508194652
【氏名又は名称】ニューロナノ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショウエンボリ、イェンス
(57)【要約】
【課題】軟組織へ挿入する時に、挿入中及び挿入時の溶解を制御した、体液中に溶解可能な摩擦低減材料で覆われたデバイスを提供すること。
【解決手段】軟組織に挿入する、微小電極、温度センサ、光学センサ、光ファイバ、温度制御素子、及び微小透析用プローブより選択されるデバイスは、遠位末端部を備える本体と、末端部に接する水性体液によってゲルを形成することができるゼラチンなどの薬剤の層とを備える。末端部及びゲル形成層の温度は、挿入前から挿入までの時間、30℃超えで体温未満である。挿入方法、挿入組立体、及びデバイスの使用法も開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電極、温度センサ、光学センサ、光ファイバ、温度制御素子、微小透析用プローブより選択される、軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ挿入するデバイスであって、
遠位端及び近位端の間に延在し、前記遠位端から近位方向に延出する遠位末端部を具備するデバイス本体と、
任意選択で、前記遠位末端部又はその一部に配置される、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の材料の1層又は複数の層と、
前記遠位末端部を覆う、水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の層と
を備え、前記遠位末端部、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の材料の前記1層又は複数の層、及び水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の前記層は、挿入前から挿入までの時間、体温を実質的に下回る温度、具体的には30℃を超え、より好ましくは40℃を超えて、体温未満の温度を有し、前記遠位末端部、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の材料の前記1層又は複数の層、及び水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の前記層は、任意選択で氷層に覆われる、デバイス。
【請求項2】
前記遠位末端部は、挿入前の状態で、前記遠位末端部が氷層で覆われていないことを条件として、-7℃から3℃、特に-3℃から1℃、さらにより好ましくは-1℃から0℃の範囲に含まれる温度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスの前記遠位部分は、挿入前の状態で、前記遠位末端部が氷層で覆われていることを条件として、-7℃から0℃、特に-3℃から0℃、さらにより好ましくは-1℃から0℃など、-20℃から0℃の範囲に含まれる温度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記遠位部分の前記範囲に含まれる前記温度は、径方向に高くなる、請求項2又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスの近位部の前記温度は、前記遠位末端部の前記温度より低く、特に2℃又は5℃以上低い、請求項2から4までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイス本体は導電性材料でできた電極本体であり、水性体液と接触状態では溶解も膨潤もしない1種又は複数種類の材料の前記1層又は複数の層は、電気絶縁材料でできている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項7】
前記電極本体の近位部分に取り付けられ、前記電極本体と熱が伝導するよう接触する冷却手段を備える、請求項6に記載の微小電極。
【請求項8】
前記冷却手段はヒート・シンクであるか又は前記ヒート・シンクを備える、請求項7に記載の微小電極。
【請求項9】
前記ヒート・シンクは、金属、具体的には銅、鉄、鋼、鉛、クロム、ニッケル、銀、金、及びその合金など、比重の大きい合金の金属でできている、請求項8に記載の微小電極。
【請求項10】
前記冷却手段はペルチェ素子であるか又は前記ペルチェ素子を備える、請求項7に記載の微小電極。
【請求項11】
前記ペルチェ素子は、前記微小電極に取り付け可能であり、且つ前記微小電極から取外し可能である、請求項10に記載の微小電極。
【請求項12】
前記冷却手段は、低温で冷却剤、具体的にはドライ・アイスで少なくとも部分的に満たされた空隙を有するコンテナを備える、請求項7に記載の微小電極。
【請求項13】
前記コンテナは閉じている、請求項12に記載の微小電極。
【請求項14】
前記冷却剤はドライ・アイスであり、前記コンテナの空隙は、前記電極本体内、又は水性体液と接触した状態でゲルを形成することができる材料の前記層内に配置されるチャネルの一端と連通し、前記チャネルの他端は周囲へ開口している、請求項12に記載の微小電極。
【請求項15】
前記コンテナは、前記微小電極に取り付け可能であり、且つ前記微小電極から取外し可能である、請求項12に記載の微小電極。
【請求項16】
微小電極の束又はアレイを含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の微小電極。
【請求項17】
前記デバイス本体は、前記末端部を構成するか、又は前記末端部に備えられる、UV、可視、又はIR光の検出器であるか又は備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の光学センサ。
【請求項18】
前記デバイス本体は、熱電対であるか、又は前記熱電対を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項19】
前記デバイス本体は、光ファイバの遠位末端部分であるか、又は前記遠位末端部分を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の光導体。
【請求項20】
前記デバイス本体は、任意選択で、ヒート・シンク、ペルチェ素子、熱伝導のやり方でその遠位端に取り付けられた、ドライ・アイスなどの冷却剤で満たされたコンテナのいずれかを備える、細長い金属棒である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の温度制御素子。
【請求項21】
前記デバイス本体は、半透膜部を設けられた水性流体の導管を備える前記プローブで構成される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の微小透析用プローブ。
【請求項22】
水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の前記層は、薬理学的活性剤を含む、請求項1から21までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
水性体と接触状態でゲルを形成することができる材料の前記層は、その膨潤及び溶解特性に関して異なる2層以上の副層を備える、請求項1から22までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
内層は、水性体液と接触した状態で、外層より容易に膨潤及び溶解する、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
デバイスと、管腔を備える外科用カニューレ又は針を含む、前記デバイスとは別個の冷却手段とを備え、前記管腔内の前記デバイスは使い捨てである、請求項1から24までのいずれか一項に記載の前記デバイスを軟組織内に挿入する組立体。
【請求項26】
前記デバイスを備える前記カニューレの温度は、30℃又は40℃以上で体温未満の温度など、実質的に体温未満である、請求項25に記載の組立体。
【請求項27】
軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ、請求項1から24までのいずれか一項に記載のデバイスを挿入する方法であって、
管腔を具備する外科用カニューレ又は針を備えるステップと、
前記デバイスの遠位端が前記カニューレの遠位開口部に向かう状態で、前記デバイスを前記管腔内に配置するステップと、
前記カニューレを、体温未満の30℃又は40℃の温度など、実質的に体温未満の温度に、前記カニューレを前記温度にするのに十分な時間冷却するステップと、
前記冷却されたカニューレを、所望の深さまで前記組織内に挿入するステップと、
前記カニューレの前記遠位開口部から前記デバイスを排出し、次いで前記カニューレを引き抜くか、又は前記デバイスを前記所望の位置に維持しながら前記カニューレを引き抜くステップと
を含む、方法。
【請求項28】
軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ、請求項1から24までのいずれか一項に記載のデバイスを挿入する方法であって、
前記組織内に、生体適合材料、具体的にはゼラチンの水性ゲルで満たされたチャネルを設けるステップと、
たとえば注射器を用いて、前記デバイスを前記チャネル内に挿入するステップと
を含む、方法。
【請求項29】
軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ、又は生体適合剤、具体的にはゼラチンの水性ゲルで満たされた前記組織内のチャネルの中へ挿入する、請求項1から24までのいずれか一項に記載の前記デバイス又は請求項25及び26に記載の前記組立体の使用法。
【請求項30】
本発明のデバイスを2つ以上備える組立体。
【請求項31】
壁、下端部、及び上端部、前記上端部から前記下端部に向かって延在し、開口する上端部、及び遠位端がいちばん先にある状態で挿入されることによってデバイスを受容するよう適合される直径を有するチャネルを備え、装置は、冷却流体用の開口端を具備する導管を備え、前記壁の温度を、前記装置の下端部から前記装置の上端部に向かって低くするようなやり方で制御するよう設計される、請求項1から24までのいずれか一項に記載の前記デバイスを冷却する装置。
【請求項32】
前記導管は、前記装置の上側部分から下側部分に延出する、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記導管は、前記下端部に向かって細くなっている、請求項31又は32に記載の装置。
【請求項34】
前記壁の質量は、前記下端部に向かって増加する、請求項30から33までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
前記流体は、-5℃より高い温度、特に-10℃又は-20℃より高い温度では凝固しない液体である、請求項30から34までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
外科用カニューレ又は針、及び本発明のデバイスを軟組織内に挿入するための針のチャネルへの挿入部の組合せであって、同一平面又は同一湾曲面を有する、接合される遠位箇所の組合せを設けるように、前記チャネル内での前記挿入部の遠位への移動を止めることができる手段を備える、組合せ。
【請求項37】
前記遠位箇所は非対称である、請求項36に記載の組合せ。
【請求項38】
前記遠位箇所は対称である、請求項36に記載の組合せ。
【請求項39】
前記針の遠位部分は、水性体液との接触でゲルを形成することができる薬剤で覆われる、請求項36から38までのいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項40】
前記遠位部分上のゲルを形成することができる前記薬剤は、氷で覆われる、請求項39に記載の組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織、詳細には神経組織又は内分泌組織内に挿入する診断及び/又は治療デバイス、このデバイス及び挿入手段を備える挿入組立体、このデバイスを神経組織内へ挿入する方法、並びにその使用法に関する。デバイスの好ましい実施例は、微小電極である。このデバイスの他の実施例は、温度及び光学センサ、光ファイバ、温度制御素子、微小透析用プローブなどである。
【背景技術】
【0002】
微小電極又は他のデバイスの、軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内への挿入には、組織の損傷が伴う。挿入時、確実に電極が適切に機能するようにするには、過度の損傷を防ぐことが最も重要である。損傷を最小限に抑えるために、電極の直径を小さくすることに重点を置いた微小電極の設計や、電極に低摩擦係数の材料の被覆を施すなど、様々な措置を講じることができる。摩擦低減材料は、電極本体の大部分を覆う電気絶縁材料のように恒久的であっても、電極の挿入時及び挿入中でさえも溶解する材料のように一時的であってもよい。挿入中及び挿入時に体液中で溶解するように設計された摩擦低減材料に伴う問題は、挿入の際の摩擦低減材料の早すぎる溶解又は剥離を制御することである。具体的には、摩擦低減材料はゼラチンである。ゼラチンには、微小電極の一時的な被膜として使用すると、細胞の損傷を軽減するというさらなる利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ挿入する時に、挿入中及び挿入時の溶解を制御した、具体的には遅らせた状態にある、体液中に溶解可能な摩擦低減材料で覆われた、前述の種類のデバイス、具体的には微小電極を提供することである。
【0004】
別の目的は、この種のデバイス、具体的には微小電極、及び組織内へ微小電極を挿入するための別個の手段を備える組立体を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、かかる微小電極の束及びアレイ、並びにかかる束のアレイを提供することである。
【0006】
本発明のさらに別の目的は、別個の挿入手段を使用して、本発明のデバイス、具体的には微小電極を神経組織内に挿入する方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、以下の課題を解決するための手段、図面に示す多くの好ましい実施例、及び添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゲル形成生体適合剤、具体的にはゼラチンと、温血のヒト又は動物の水性体液との接触により生じるゲルの溶解を、接触部位の温度を下げることにより遅らせることができるという洞察に基づく。
【0009】
加えて、本発明は、軟組織内に挿入されている医療デバイスと接触状態である軟組織の温度を下げると、組織が損傷から保護されるという洞察に基づく。本発明によれば、組織に挿入されているデバイスと接触する組織の温度は、30℃以上、具体的には40℃以上で組織温度未満の温度などの、実質的に組織温度未満の温度であるデバイスによって冷却される。
【0010】
ゲル形成生体適合剤は、神経組織又は内分泌組織など、軟組織内への微小電極などの医療デバイスの埋込みに有用である。ゲル形成剤は、デバイス上に単層又は多層の形態で塗布され、水性体液と接触した状態で膨潤する被膜を形成し、次いで流体内で溶解するか、又は分解時に流体内で溶解する。このように覆われた医療デバイスを軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内に挿入することにより、組織が損傷から保護される。埋込み部位の温度を適度に、たとえば5℃、10℃、又は15℃だけ下げるだけで、2倍以上の時間など、ゲルの溶解を実質的に遅らせるのに十分である場合が多い。
【0011】
温血動物のゼラチンは、体温で水性体液と接触すると急速に膨潤し、生来の体温で溶解する一方、約30℃以下の温度で、且つ/又はゼラチンを架橋することにより、ゼラチンの溶解は実質的に減少する。20℃未満の温度では、さらに溶解が遅れる。冷血動物のゼラチン、特に魚のゼラチンは、温血動物の体温未満の温度など、より低い温度で既に溶解している。これは、本発明で使用するゼラチンを選択する際に考慮しなければならない。相異なる供給源からのゼラチンと架橋されたゼラチンとの組合せを使用することも、本発明の範囲内にある。300未満のブルーム強度のゼラチンの使用が好ましい。
【0012】
他の好ましいゲル形成材料には、天然及び架橋形態のヒアルロン酸、ホエイプロテイン、大豆プロテイン、カゼイン、アラビノキシラン、ガラクタン、ガラクトマンナン、リケナン、キシラン、ヒドロキシメチルプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、キトサン、アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プルラン、ポリビニルピロリドン、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、トラガカント、アルギン酸、キチン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸とポリ乳酸の共重合体、ポリ乳酸とポリエチレンオキシドの共重合体、ポリエチレングリコール、ポリジオキサノン、フマル酸ポリプロピレン、ポリ(エチルグルタメート-co-グルタミン酸)、ポリ(tert-ブチルオキシカルボニルメチルグルタメート)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン-co-ブチルアクリレート)、ポリヒドロキシブチレート及びその共重合体、ポリ(D、L-ラクチド-co-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリデプシドペプチド、無水マレイン酸共重合体、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリ[(7.5%ジメチル-トリメチレンカーボネート)-co-(2.5%トリメチレンカーボネート)]、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールのホモポリマー、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシル又はアミノ末端ポリエチレングリコール、メタクリル酸やメタクリルアミドなどのアクリレート系共重合体、ヘパラン硫酸、RGDペプチド、ポリエチレンオキシド、コンドロイチン硫酸、YIGSRペプチド、ケラタン硫酸、VEGF生体模倣ペプチド、パールカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン2)、ラミニンα-1鎖ペプチドを含むIle-Lys-Val-Ala-Val(IKVAV)、修飾されたヘパリン、フィブリンの断片、及びその組合せが含まれる。
【0013】
ゲル形成生体適合剤の層又は被膜には、1種又は複数種類の薬理学的活性剤が含まれ得る。好ましい薬剤には、アルブミン、ヘパリン、小分子神経伝達物質などの神経伝達物質(たとえば、アセチルコリン、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミン、ノルエピネフリン、及びエピネフリン)、アミノ酸(たとえば、GABA、グリシン、及びグルタミン酸)、神経活性ペプチド(たとえば、ブラジキニン、サブスタンスP、ニューロテンシン、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、ニューロペプチドY、ソマトスタチン、コレシストキニン)及び可溶性の気体(たとえば、一酸化窒素)が含まれる。他の好ましい薬剤には、第VIII因子又はその機能的誘導体などの凝固因子、第IX因子と、第II因子と、第VII因子と、第X因子との組合せ、第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子と第VIII因子との組合せ、第VIIa因子又はヒト繊維素原が含まれる。さらに好ましい薬理学的活性剤は、NO、特にニトログリセリン又はその機能的誘導体の生成を促進する薬物など、血管収縮を制御する薬剤である。影響を受けた血管の詰まりによる局所血管収縮が脳梗塞を引き起こすリスクがある場合、たとえば、クロピドグレル、チクロピジン、アセチルサリチル酸、ジピラミドール、イロプロスト、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバンなど、血小板凝集に対する薬物を使用することができる。
【0014】
ゲル形成生体適合剤の層若しくは被膜、又は2層以上の層の最外層若しくは被膜は、溶解を遅らせる層、具体的には、トリラウリン酸グリセリルを含む、若しくはトリラウリン酸グリセリルからなる層などの脂質層、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトポリマーの層、又は粘液の層で覆うことができる。
【0015】
水性体と接触状態でゲルを形成することができる材料の層又は被膜は、その膨潤及び溶解特性に関して異なる2層以上の副層、具体的には外層より容易に膨潤し溶解できる内層を備えることができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、ゲル形成剤の層又は被膜は、組織内に挿入される前に氷の被膜を備えることができる。氷層を設けるために、微小電極を、-10℃又は-20℃未満、或いはさらに-60℃又は-80℃未満など、0℃を大幅に下回って冷却し、次いで0.5秒又は1秒、さらには5秒又は10秒間以上など、短い時間冷水に浸し、取り出す必要がある。
【0017】
本発明はさらに、かかる溶解の遅延に必要な温度低下を、埋め込まれるべきデバイスによって実現することができるという洞察に基づく。デバイスの埋込みにおいて温度を低くすることで恩恵を受ける、ゼラチンなどの水性体液と接触状態でゲルを形成することができる薬剤を有する又は備えるデバイスには、微小電極、温度センサ、光学センサ、光ファイバ、温度制御素子、微小透析用プローブなどが含まれる。
【0018】
本発明によれば、本発明のデバイスの例示的な実施例として、軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内に挿入するための微小電極が提供され、微小電極は、遠位端と近位端との間に延在する細長い電極本体と、近位端から延出する電極本体の一部の電気絶縁層の第1の部分と、絶縁層の少なくとも遠位部分を覆うように電極本体の遠位端から延出し、水性体液と接触状態でゲルを形成する薬剤の層とを備え、電極本体及び層の挿入温度は、挿入前から挿入までの時間に、実質的に体温より低い挿入温度、具体的には30℃を超え、より好ましくは40℃を超えて体温未満の温度である。
【0019】
本発明の微小電極は、100μm以下、具体的には50μm以下、30μm以下、又は12μm以下の好ましい幅を有する。
【0020】
本発明の微小電極の長さは、その所期の挿入深さに適合されることが好ましい。
【0021】
本発明の微小電極は、単一の微小電極か、若しくは微小電極の束又はアレイ、さらには微小電極の束のアレイにも関係するものであり得る。微小電極の束は、恒久的又は一時的なやり方で、互いにほぼ並列に取り付けられた2つ以上の微小電極を備え、ここで一時的なやり方とは、神経組織又は内分泌組織内に挿入された時、具体的には組織内の体液と接触する時に、微小電極が取り付けから外されることを意味する。
【0022】
微小電極の本体は、金、白金、イリジウム、銀、銅、ステンレス鋼、タングステンなどの熱伝導性及び電気伝導性の良い金属でできているか、かかる金属を含むか、又はその合金であることが好ましいが、導電性ポリマー、炭素、又はその組合せでできていてもよい。
【0023】
好ましい実施例によれば、微小電極本体の近位端は、体温よりもかなり低い温度、具体的には10℃未満、より好ましくは5℃未満、さらにより好ましくは0℃未満、さらに-10℃未満又は-20℃未満の温度のヒート・シンクなどの冷却源と、熱的に接触状態にある。特定の好ましい実施例によれば、冷却源はペルチェ素子であるか、又はペルチェ素子を含む。
【0024】
本発明の好ましい実施例によれば、挿入直前又は直後の状態のデバイスの近位部分は、遠位部分のためのヒート・シンクとして機能するように、デバイスの遠位部分よりも低い温度であり、それによってデバイスが温まるのを遅らせる。
【0025】
より一般的には、本発明は、微小電極、温度センサ、光学センサ、光ファイバ、温度制御素子、微小透析用プローブより選択される、軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ挿入するデバイスによって具現化され、以下を備える。
- 遠位端と近位端との間に延在し、遠位端から近位方向に延出する遠位末端部を具備するデバイス本体。
- 任意選択で、遠位末端部又はその一部に配置される、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の非導電性材料の1層又は複数の層。
- 遠位末端部を覆う、水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の層。
ここで、遠位末端部、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の材料の1層又は複数の層、及び水性体液と接触状態でゲルを形成できる材料の層は、挿入前から挿入までの時間、体温を実質的に下回る温度、具体的には30℃を超え、より好ましくは40℃を超えて、体温未満の温度であり、
ここで、遠位末端部、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の材料の1層又は複数の層、及び水性体液と接触状態でゲルを形成できる材料の層は、任意選択で氷層に覆われる。
【0026】
水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない、1種又は複数種類の材料の1層又は複数の層は、電気絶縁体、すなわち非導電性であることが好ましい。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、遠位末端部は、挿入前の状態で、遠位部が氷層で覆われていないことを条件として、-7℃から3℃、特に-3℃から1℃、さらにより好ましくは-1℃から0℃の範囲に含まれる温度である。
【0028】
本発明の別の好ましい態様によれば、遠位末端部は、挿入前の状態で、遠位末端部が氷層で覆われていることを条件として、-7℃から0℃、特に-3℃から0℃、さらにより好ましくは-1℃から0℃など、-20℃から0℃の範囲に含まれる温度である。
【0029】
遠位末端部の温度は、径方向に高くなることが好ましい。
【0030】
デバイスの温度が、特に2℃以下、5℃以下、又はそれ以上の範囲内で、遠位末端部から近位方向に低くなることも好ましい。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、デバイスは微小電極であり、その本体は導電性材料であるか、又は導電性材料を含み、ここで、水性体液と接触した状態では溶解も膨潤もしない1種又は複数種類の材料の前記1層又は複数の層は、電気絶縁材料でできているか、又は電気絶縁材料を含む。微小電極は、ヒート・シンク、具体的には銅、鉄、鋼、鉛、クロム、ニッケル、銀、金、及びその合金など、比重の大きい金属又は金属合金の1種などの冷却手段を備えることが好ましい。冷却手段は、電極本体の近位部分に取り付けられ、電極本体に熱が伝導するよう接触していることが好ましい。冷却手段は、好ましくは電極に取り付け可能で、且つ電極から取外し可能なペルチェ素子であるか、ペルチェ素子を備えることが好ましい。冷却手段は、低温の冷却剤、具体的にはドライ・アイスで少なくとも部分的に満たされた空隙を有するコンテナ、特に閉じたコンテナを備えることも好ましい。冷却剤としてドライ・アイスを用いる好ましい実施例では、コンテナの空隙は、電極本体内、又は水性体液と接触した状態でゲルを形成できる材料の層内に配置されるチャネルの一端と連通し、チャネルの他端は周囲へ開口している。コンテナは、電極に取り付け可能であり、電極から取外し可能であることが好ましい。
【0032】
本発明の微小電極は、微小電極の束又はアレイに含まれてもよい。
【0033】
開示する本発明のデバイスは、やはり以下の形態である。
- 前記末端部を構成するか又は末端部に具備される、UV、可視、又はIR放射線の検出器で構成されるか又は検出器を具備する本体を備える光学センサ。
- 熱電対で構成されるか又は熱電対を具備する本体を備える温度センサ。光ファイバの遠位末端部分によって構成されるか又は遠位末端部分を具備する本体を備える光ファイバ。
- 任意選択で、熱伝導のやり方でその遠位端に取り付けられた、ヒート・シンク、ペルチェ素子、及び/又はドライ・アイスなどの冷却剤で満たされたコンテナをさらに具備する、細長い金属棒の形態のデバイス本体で構成されるか又はデバイス本体を備える温度制御素子。
- 半透膜を具備する、水性流体導管を具備するデバイス本体で構成されるか又はデバイス本体を備える微小透析用プローブ。
【0034】
本発明の2つ以上のデバイスを含む任意の組合せ、たとえば、微小電極と光ファイバとの組合せなどは、本発明の範囲内にある。
【0035】
デバイスが使い捨てである場合に、デバイスと、管腔を備える外科用カニューレ又は針を含む、デバイスとは別個の冷却手段とを備える、本発明のデバイスを軟組織内に挿入する組立体も開示する。デバイスを軟組織内に挿入する前に、デバイスを備えるカニューレの温度は、30℃又は40℃以上で体温未満の温度など、ほぼ体温未満である。
【0036】
本発明によれば、本発明のデバイス、具体的には微小電極を冷却する装置も開示し、この装置は、壁、下端部、及び上端部、上端部から下端部に向かって延在し、開口する上端部及び遠位端がいちばん先にある状態で挿入されることによってデバイスを受容するよう適合される直径を有するチャネルを備える。この装置は、冷却流体用の開口端を具備する導管を備え、壁の温度を、装置の下端部から装置の上端部に向かって低くするようなやり方で制御するよう設計される。
【0037】
導管は、その上側部分から下側部分まで延出し、且つ/又は下端部に向かって細くなることが好ましい。装置の壁の質量は、下端部に向かって増加することが好ましい。冷却流体は、エタノールやグリコールなどの液体で、約-5℃より高い温度、特に約-10℃又は-20℃より高い温度では凝固しないことが好ましい。
【0038】
さらに、本発明のデバイスを軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内に挿入する方法を開示し、以下を含む。
- 管腔を備えた外科用カニューレ又は針を備えるステップ。
- デバイスの遠位端がカニューレの遠位開口部に向かう状態で、デバイスを管腔内に配置するステップ。
- カニューレを、体温未満で30℃又は40℃の温度など、実質的に体温未満の温度に、カニューレをその温度にするのに十分な時間冷却するステップ。
- 冷却されたカニューレを、所望の深さまで組織内に挿入するステップ。
- カニューレの遠位開口部からデバイスを排出し、次いでカニューレを引き抜くか、又はデバイスを所望の位置に維持しながらカニューレを引き抜くステップ。
【0039】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のデバイスを軟組織内に挿入するための外科用カニューレ又は針は、水性体液、具体的には生来の又は修飾されたゼラチンと接触するとゲルを形成することができる薬剤の層で覆われる。任意選択で、ゲル形成剤の層は氷層で覆われる。氷層は、挿入直前に加えることができるが、挿入のかなり前に加えることもでき、その場合、氷で覆われたデバイスは、-10°以下の温度、特に約-20°以下の温度などの低温で保存され、挿入直前に約0℃の温度など、所望の温度まで温めることができる。
【0040】
さらに、本発明によれば、本発明のデバイスを軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内に挿入する方法は、以下を含む。
- 組織内に、生体適合材料、具体的にはゼラチンの水性ゲルで満たされたチャネルを設けるステップ。
- たとえば注射器を用いて、デバイスをチャネル内に挿入するステップ。
【0041】
本発明のデバイス又は組立体を使用して、軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内へ、或いは生体適合剤、具体的にはゼラチンの水性ゲルで満たされたかかる組織内のチャネルの中へ、デバイスを挿入することができる。
【0042】
本発明のさらに他の好ましい態様にしたがって、本発明のデバイスを軟組織内に挿入するための、外科用カニューレ又は針と、カニューレ又は針のチャネルへの挿入部との組合せを開示し、カニューレ及び挿入部の遠位面部に形成された、同一平面又は同一湾曲面を有する、接合される遠位の針先又は先端部の組合せを設けるように、チャネル内での挿入部の遠位への移動を止めることができる協働手段を備える。接合される針先は、非対称又は対称である。針の遠位部分、具体的には遠位端から近位方向に延出する部分は、水性体液と接触するとゲルを形成することができる薬剤で覆われ、針全体又は針の遠位部分がゲルを形成することができる薬剤で覆われ、任意選択で、氷層に覆われていることが好ましい。
【0043】
微小電極などの医療デバイスを軟組織、具体的には神経組織又は内分泌組織内に埋め込むための本発明の方法は、以下を含む。
- チャネル及びチャネル内に配置される挿入部を具備する、外科用カニューレ又は針を備えるステップであって、挿入部は、針と接合される遠位箇所を形成する時に、さらに遠位に移動するのを止める手段を具備するステップ。
- 接合された遠位箇所が形成された状態で、針を挿入部と共に軟組織内に挿入するステップ。
- 針から挿入部を引き抜くステップ。
- 針のチャネル内に医療デバイスを挿入するステップ。
- 組織から針を引き抜くステップ。
【0044】
次に、本発明を、図面に示すいくつかの好ましい実施例を参照することによりさらに詳細に説明することにするが、図面は原寸に比例しておらず、本発明を原理的に示すことだけを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】冷却環境に配置された、微小電極の形態の本発明のデバイスの第1の実施例の、(図2のA-A断面図に対応する)軸方向断面図である。
図2】微小電極の形態の本発明のデバイスの第2の実施例の、軸方向A-A断面図である。
図3】微小電極の形態の本発明のデバイスの第3の実施例の、図2のA-A断面図に対応する軸方向断面図である。
図4】微小電極の形態の本発明のデバイスの第4の実施例の、軸方向断面図である。
図4a図4の微小電極に取り付け可能な冷却剤コンテナの、軸方向B-B断面図である。
図4b】冷却剤が装填された図4aのコンテナの、水平に配置されているが同じ断面図である。
図4c図4の微小電極に取り付けられた、図4bの冷却剤が充填されたコンテナを示す図である。
図5】軟組織内へデバイスを挿入するために冷却針の管腔内に配置された、微小電極の形態の本発明のデバイスの第5の実施例の、針挿入の中間段階での、軸方向B-B断面図である。
図5a】軟組織内へデバイスを挿入するために冷却針の管腔内に配置された、微小電極の形態の本発明のデバイスの第5の実施例の、針が完全に挿入された時の、軸方向B-B断面図である。
図5b】軟組織内へデバイスを挿入するために冷却針の管腔内に配置された、微小電極の形態の本発明のデバイスの第5の実施例の、針引抜きの中間段階での、軸方向B-B断面図である。
図5c】軟組織内へデバイスを挿入するために冷却針の管腔内に配置された、微小電極の形態の本発明のデバイスの第5の実施例の、針が完全に引き抜かれた時の、軸方向B-B断面図である。
図5d図5図5bの状態で、外すことが可能なプランジャがその近位端に取り付けられた微小電極の遠位末端部分の拡大断面図である。
図6】温度センサの形態の本発明のデバイスの第6の実施例の、軸方向断面図である。
図7】光学センサの形態の本発明のデバイスの第7の実施例の、軸方向断面図である。
図8】光ファイバの形態の本発明のデバイスの第8の実施例の、軸方向断面図である。
図9】組織温度制御素子の形態の本発明のデバイスの第9の実施例の、軸方向断面図である。
図10】微小透析用プローブの形態の本発明のデバイスの第10の実施例を示す図である。
図11】微小電極の形態の本発明のデバイスを冷却する装置の、軸方向断面図である。
図11a】微小電極の形態の本発明のデバイスを冷却する装置の、径方向断面図である。
図12図11図11a、図13の装置内の中央チャネル内への挿入に寸法的に適合された微小電極の、軸方向断面図である。
図13】微小電極の形態の本発明のデバイスを冷却する装置の、軸方向断面図である。
図14】軟組織内への挿入開始時及び挿入時の、外科用針と、針のチャネル内に配置される円筒形の挿入部との組合せの、軸方向断面である。
図14a】軟組織内への挿入開始時及び挿入時の、外科用針と、針のチャネル内に配置される円筒形の挿入部との組合せの、軸方向断面である。
図14b】針の引抜き時に組織内に挿入されている挿入部の、同じ断面図である。
図14c】組織内に配置された挿入部のチャネル内に挿入された微小電極の、同じ断面図である。
図14d】挿入部の引抜き時に組織内に配置される微小電極の、同じ断面図である。
図15図5~5dの様々な微小電極の、同じ断面図である。
図15a図5~5dの様々な微小電極の、同じ断面図である。
図16図14図14cの様々な挿入部の、同じ断面図である。
図16a図14図14cの様々な挿入部の、同じ断面図である。
図17図14図14aの外科用針161と円筒形の挿入部163との様々な組合せの遠位末端部分の、同じ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0046】
図1は、細くなった遠位先端部6を具備する、たとえば、銀、金、白金、又はイリジウムでできた細長い円筒形の金属電極本体2と、その遠位端に取り付けられた柔軟な電気リード3とを備える、当技術分野の微小電極1を示す。電極本体2は、先端部6を除いて、ポリウレタン又はパリレンCなどのポリマー材料の層4によって電気的に絶縁されている。近位端から延出する部分を除いて、電極本体2及び先端部6は、ブルーム強度120の乾燥ゼラチンの層5で覆われている。電極1を、その遠位先端部6がいちばん先にある状態で、試験管の形状の冷却容器7に挿入して示す。断熱され得る(図示せず)容器7には、その底部にドライ・アイス8が置かれ、装填される。電極1は、ドライ・アイス8から蒸発したガス状の二酸化炭素9により冷却される。容器内の二酸化炭素9の雰囲気の温度は、熱電対10によって監視される。代替的又は追加的に、電極1の温度を、電極1に取り付けられた、又は電極1に組み込まれた熱電対10によって監視することができる。柔軟な導体10’を使って熱電対10は表示ユニット(図示せず)に接続され、そこで測定温度を読み取ることができる。熱電対10が、冷却容器7内に挿入された時に所望の低温に達するのに必要な時間は、実験的に容易に決定することができる。微小電極1は、その温度に達すると容器7から引き抜かれ、挿入開始時の温度が容器7からの引き抜いた時の微小電極の温度とほぼ同じ、たとえば-10℃又は-20℃の温度となるように、遅滞なく神経組織内に挿入される。冷たい微小電極を軟部組織内に挿入すると、低温によって、周囲の体液から水分を取り込むのが遅くなる。これにより、微小電極を神経組織内で、ゼラチン層7が膨潤し溶解する前に、その標的、具体的には1つ又は1群の神経細胞に対して、より正確に配置することが可能となる。アルギン酸塩などの膨潤性の他の生体適合材料は、層7内に組み込むか、層7を構成することができる。
【0047】
別法として、微小電極からの信号は、埋め込まれたマイクロ波送信機又は電磁誘導器を使って、体外のディスプレイ・ユニットに無線で送信することができる。
【実施例0048】
図2において、軸方向のA-A断面図に示す本発明の微小電極11の設計は、熱連通する(thermally communicating)やり方で、その近位端で電極本体12に取り付けられる、ヒート・シンク17の形態の冷却手段を除いて、実施例1の微小電極1の設計に実質的に一致する。微小電極11を埋め込む前に、ヒート・シンク17は、電極11と共に、又は別々に、電極11が冷却される温度、若しくはさらに低い温度又は大幅により低い温度などの低温まで、冷却される。ヒート・シンク17が、電極11よりも低温の場合、電極本体12からヒート・シンク17に熱が流れ、したがって電極11を冷却し、それによって体液と接触している時、電極本体12の大部分を覆う絶縁層14上のゼラチン状又は他の膨潤性の層15の膨潤及び溶解を遅らせる。好適なヒート・シンク材料には、鋼、銅、クロム、及びフェノールホルムアルデヒドポリマーが含まれる。電極本体12は、絶縁された柔軟なリード13を用いて電源(図示せず)及び/又は電圧変動を検出する機器(図示せず)と電気的に接続される。挿入手順は、基本的に図1のデバイス1の手順と一致する。軟組織内へ挿入する前の、そのヒート・シンク17による微小電極11の冷却は、微小電極1について実施例1で説明したのと同じやり方で実行できるが、ヒート・シンク17を別々に冷却することも可能である。かかる場合、ヒート・シンク17は、コンテナ、具体的には断熱コンテナの形態を有することができ、そこを通してドライ・アイスや、さらには液体窒素などの冷却媒体をコンテナに装填し、次いで閉じることができるロックを備える。
【実施例0049】
図3において、図2の実施例の軸方向のA-A断面図に対応する軸方向の断面図で示す本発明の微小電極21の設計は、熱連通するやり方で、ヒート・シンクの代わりに、その近位端で電極本体22に取り付けられている、ペルチェ素子27の形態の冷却手段を除いて、実施例2の微小電極11の設計にほぼ一致する。ペルチェ素子27は、絶縁された柔軟な電気リード28を介して通電される。微小電極21は、電極本体22上に、同様に配置された絶縁性の層24及び膨潤性の層25を備え、微小電極の細くなった遠位末端部分26には同様に、絶縁体24がない。電極本体22は、電気的に絶縁された柔軟なリード23を用いて電源(図示せず)及び/又は電圧変動を検出する機器(図示せず)と電気的に接続される。挿入手順が完了すると、ペルチェ素子27を加温モードに切り替えて、今度は膨潤した膨潤性の層25の溶解を促進することにより、冷却された組織を体温にすることができる。
【実施例0050】
図4において、図2の実施例の軸方向のA-A断面図に対応する軸方向の断面図に示す本発明の微小電極31の設計は、冷却手段及び遠位末端部分40、41を除いて、実施例2の微小電極11の設計にほぼ一致する。微小電極31は、その細長い電極本体32上に、同様に配置された電気絶縁性の層34及び膨潤性の層35を備える。同様に、電極本体32の細くなった遠位末端部分36には、同様に絶縁体34がない。電極本体32は、電気的に絶縁された柔軟なリード33を用いて、電源(図示せず)及び/又は電圧変動を検出する機器(図示せず)と電気的に接続される。
【0051】
冷却手段は、図4aに示す別個のドライ・アイス・コンテナ45を備え、以下のやり方で電極31の遠位末端部分40、41に取り付けることができる。円筒形状のドライ・アイス・コンテナ45は、整列された底部開口部49と上部開口部50とを備える。近位末端部41、42は、いちばん先にあるその近位端を、コンテナ45の底部開口部49の中へ挿入することができる。部分的に挿入された末端部分41、42を、末端部分41を上部開口部50と整列するやり方で、上部開口部50に向かってさらに移動させることにより、末端部分41の近位端を上部開口部50の中に挿入し、次いで末端部分を短い距離だけ上部開口部から突出させることができる。この移動は、開口部49、50の円筒形の壁に設けられた溝に配置された環状ゴム・シール51、52と係合する、末端部分40及び41の周方向の溝42、43によって行き止まる。シール51と52との間の軸方向の距離は、溝42と43との軸方向距離と一致する。コンテナ46は、鋼若しくはアルミニウムなどの金属、又は強化ポリマーでできていることが好ましい。コンテナ45は、断熱されていることが好ましい。これは図4aでのみ示す。コンテナ45は、使用前に、図4bに示す装填済みコンテナ45’を形成するために、その中心軸B-Bに対してほぼ水平に配置され、コンテナの開口部の1つ、好ましくはより大きな底部開口部49を通してドライ・アイス53が装填される。同じ配置で、微小電極の本体32の近位末端部分40、41を、底部開口部49を通して挿入し、同じ方向にさらに移動させた後、近位末端部分41を上部開口部の中に挿入し、溝42、43と密閉してロックするゴム・リング51、52によって、この配置で固定する。それにより、電極本体32内の軸方向に延在する第1のチャネル37は、ドライ・アイス53から蒸発したガス状の二酸化炭素で満たされたコンテナ45の密閉された内部空間48’’と連通するようになる。軸方向に延在する第2のチャネル38は、第1のチャネル37と並列に、半円形チャネル・ブリッジ39によってその遠位端で第1のチャネルと連通するよう配置される。コンテナ45の密閉された内部空間48’’内に蓄積する圧力は、冷たい二酸化炭素をその開口部37’を通して第1のチャネル37の中へ押し込み、次いで二酸化炭素を、第1のチャネル37、チャネル・ブリッジ39、及び第2のチャネル38を連続的に通過させ、その開口端38’で大気中に流れるままにしておく。二酸化炭素は、チャネル37、38及びチャネル・ブリッジ39を通る途中で、電極本体32を冷却し、それにより膨潤性のゼラチン層35の膨潤を遅らせる。
【実施例0052】
図5図5cは、微小電極61を遠位方向に移動させるために、挿入用プランジャ・アーム69、69’の遠位側の把持爪68、68’と連結する、周方向に延出する隆起部67、67’を備えることを除いて、図1の微小電極と一致する微小電極61を示す。微小電極61は、たとえば、銀、金、白金、若しくは他の貴金属又は貴金属合金でできている細長い円筒形の金属電極本体62と、細くなった遠位先端部66及びその遠位端に取り付けられた柔軟な電気リード63とを備える。電極本体62は、先端部66を除いて、ポリウレタン又はパリレンCなどのポリマー材料の層64によって電気的に絶縁されている。近位端から延出する部分を除いて、電極本体62及び先端部66は、乾燥ゼラチンの層65で覆われている。図5では、微小電極61を、注射針70のチャネル72内にほぼ完全に配置して示す。挿入する前に、針70及び微小電極61は、図5に示す配置で、低温、たとえば0℃に冷却される。把持用隆起部67、67’及び柔軟な絶縁されたリード63を備えた微小電極61の短い近位末端部分だけが、近位の管腔の開口部から延出する。リード63は、たとえば制御ユニット(図示せず)との電気通信を可能にする。針70の傾斜した遠位端面は、鋭い先端部71で終わる。円筒形の微小電極61(図5aの軸B-B)の外径は、チャネル72の直径よりいくらか小さい。これにより、著しい抵抗に遭うことなく、微小電極61をチャネル72内で遠位方向又は近位方向に移動させることができる。微小電極61が針の遠位から軟組織73(図示せず)内に押し出されると、移動に対する抵抗が大幅に増加する。隆起部67とプランジャ69、69’の爪68、68’とが協働する設計により、隆起部67を把持する爪68、68’が管腔72内に配置される限り、微小電極61にかなりの圧力をかけることができ、微小電極の径方向の移動は、チャネル72の壁へ当接することで制限される。
【0053】
針70の挿入が所望の深さに達した後、微小電極61はプランジャ69、69’によって適所に保持され、一方で針70は近位方向に引き抜かれる(図5b)。微小電極61と管腔72の壁との間の隙間77は、針70を引き抜く間に、容易に圧力を釣り合わせるのに十分な広さであることが重要である。微小電極は、実質的に体温未満の温度で軟組織内に挿入され、それにより微小電極のゼラチン層65の溶解を遅らせる。針70を完全に引き抜くと、プランジャ69、69の爪68、68’は、隆起部67、67’から容易に外され、微小電極61を所望の挿入位置に残す(図5c)。図5dは、微小電極61の近位末端部の拡大図である。
【0054】
その冷却能力を高めるために、針70は、その近位端に、実施例2のヒート・シンク17などのヒート・シンク(図示せず)、又は実施例3のペルチェ素子27などのペルチェ素子(図示せず)を設けることができる。
【実施例0055】
図6に示す温度センサ80は、その遠位端で、半田づけ箇所81で接合された2つの異なる剛性の絶縁された導体82、83からなる熱電対を備える。導体82、83は、半田づけ箇所81から近位方向にほぼ並列に延出し、それらの近位端で絶縁された電気リード84、85を使って、半田づけ箇所81の温度を読み取ることができる体外ディスプレイ(図示せず)に接続される。熱電対81、82、83は、乾燥ゼラチンの円筒形マトリックス86内に埋め込まれる。デバイス80を、その中にデバイスが挿入前に配置され冷却される外科用注射器を用いて、軟組織内に挿入することができる。別法として、温度センサからの信号は、埋め込まれたマイクロ波送信機又は電磁誘導器を使って、体外のディスプレイ・ユニットに無線で送信することができる。
【実施例0056】
図7に示す光学センサ90は、その遠位面に配置されたフォトダイオード98又はフォトトランジスタ98を具備するセンサ・ユニット91を備える。UV、可視、又は赤外光によって引き出される電気信号は、体外ディスプレイ・ユニット(図示せず)との電気通信をもたらす柔軟な絶縁されたリード94、95と、その遠位端で接続される、近位方向に並列に延出する絶縁された剛性の導体92、93を使って伝導される。センサ・ユニット91及び剛性の導体92、93は、乾燥ゼラチンの第2のマトリックス96で覆われた、乾燥ゼラチンの第1の円筒形マトリックス97に埋め込まれ、これらのマトリックスは、物理的性質が異なる。マトリックス96、97は、内側の第1のマトリックス97が架橋ゼラチンでできており、外側の第2のマトリックス96が非架橋ゼラチンでできているという点で異なる。第2のマトリックス96は、第1のマトリックス97よりも溶解に対する耐性が低く、したがって、第1のマトリックスの膨潤及び溶解は遅れる。デバイス90を、その中にデバイスが挿入前に配置され冷却される外科用注射器を用いて、軟組織内に挿入することができる。ほぼ円筒形のデバイスの中心軸C-Cは、実施例6及び実施例8~実施例10の同様のほぼ円筒形のデバイスの典型である。
【0057】
別法として、光学センサからの信号は、埋め込まれたマイクロ波送信機又は電磁誘導器を使って、体外のディスプレイ・ユニットに無線で送信することができる。
【実施例0058】
図8に示す光ファイバ100は、本発明のデバイスの重要要素を成す。光ファイバは、実施例7の光学センサと同じやり方で、2つの層106、107で覆われ、外層107はやはり非架橋ゼラチンでできており、内層106は架橋ゼラチンでできている。光ファイバ100の形態の本発明のデバイスは、ゼラチン107、106で覆われたファイバ100の遠位末端部分によって画定される。ファイバ100の覆われていない近位部分は、ファイバの体外の他端に配置された光検出器又は光源(図示せず)との光学的接続をもたらす。別法として、光源は、光ファイバから放射される光の標的となるべき組織ボリューム内を除いて、組織内に埋め込むことができる。
【実施例0059】
図9に示す組織温度制御素子110は、その遠位端に向かって細くなった、細長い円筒形の金属コア111を備える。短い末端の近位部分を除いて、金属コア111は架橋ゼラチン116の層で覆われる。保持又は取り付け要素112は、その遠位端から延出し、それを使用して温度制御素子110を保持することができるか、又はヒート・シンクやペルチェ要素などを取り付けることができる。ゼラチン層116を、任意選択で、体温よりわずかに高い融点のトリグリセリド層など、軟組織内へ挿入する間にゼラチン層116を水性体液との接触から保護する材料の層119で覆うことができる。組織温度制御素子110は、外科用注射器の管腔内に配置され、この配置で所望の温度まで冷却され、次いでその温度で軟組織内に注入され得る。別法として、組織温度制御素子110は、実施例12のデバイス温度調節のための装置を用いて、温度調節することができる。
【実施例0060】
図10に示す微小透析用プローブ120は、プローブ120の遠位端が半円形である配置で、管状半透膜121を備え、管状半透膜の端部で、並列に軸方向に延出する金属又は非透過性ポリマー導体122、123に接続され、この導体は、その近位端で柔軟なポリマー管124、125と接合される。膜121及びポリマー導体122、123は、乾燥ゼラチンのマトリックス127内に埋め込まれており、それにより円筒形の鈍い遠位端を備える微小透析用プローブ120を形成する。微小透析用プローブ120は、その鈍い端部がいちばん先にある状態で外科用カニューレ又は針(図示せず)の管腔内に配置され、所望の温度まで冷却され、次いでカニューレを用いて軟組織内に挿入されることができ、続いてカニューレから排出され、カニューレは引き抜かれる。ゼラチン・マトリックス127がゲル化すると、要素124、122、121、123、125によって形成された導管を通して、矢印で示す方向にリンゲル溶液などの水性流体129を流すことができる。半透膜部121を通過する時、周囲の体液から膜を通過する薬剤は、水性流体129によって押し流され、収集され分析され得る。流体129を、冷却された状態でデバイスに供給し、それにより、デバイスの周りに形成されたゲルの層の溶解を制御することができる。
【実施例0061】
ここでは微小電極で例示する本発明のデバイス上に配置される、乾燥ゼラチンなどの水性ゲルを形成することができる薬剤(「ゲル形成剤」)の層又は被膜は、氷の被膜と共に、軟組織内への挿入直前に設けられる。別法として、本発明のデバイスは、最初に、実質的に0℃未満の温度、具体的には-10℃、-20℃、又はさらに低い温度まで冷却される。次いで、冷却された微小電極は、約0℃の温度の冷水に、0.5秒若しくは1秒間、10秒まで、又は20秒まで、などの短時間漬けられ、次いで取り出されてすぐに組織内に挿入される。浸漬中に大きな氷の結晶が形成されるのを防ぐため、浸漬された電極を垂直方向に上下に、具体的には短い距離にわたって移動させる。電極上に氷のより厚い層を設けるために、このプロセスを繰り返してもよい。微小電極を漬ける水は、温度安定化のために氷片を含むことが好ましい。氷層の厚さは、主に浸漬前のゲルの被膜を備える電極の温度によって制御される。一定の浸漬期間では、浸漬前にゲル形成剤で被覆された微小電極の温度が低いほど、より一層厚い氷層が得られるようになる。所与の低温で、ゲル形成剤で覆われた微小電極の浸漬時間を短くすると、周辺方向、すなわち低温の電極の中心部分から、より高い温度のゲル形成剤の被膜の周辺部分への、径方向の温度勾配が増加することになる。ただし、ゲル形成剤の被膜の周辺部分の温度が、その上の氷層が溶けてしまうまで0℃以下であることを条件とする。
【0062】
別法として、本発明のデバイスは、挿入の数時間前、1日前、数日前、又はもっと以前など、挿入前に0℃より大幅に低い温度までよく冷却され、任意選択で、ゲル形成剤の層上に氷層が設けられ、冷凍庫の温度が約-18℃など、大幅にゼロより低い温度で保管される。氷層が設けられた後、かかる層なしに保管された場合、軟組織内に挿入する前に、デバイスは、約0℃の温度まで温められ得る。
【実施例0063】
図11図11a及び図13は、微小電極140の形態の本発明のデバイスを、その近位端140’から遠位端140’’に向かってデバイスの温度勾配を高くするようなやり方で冷却する装置130を示す。装置130は、中心軸N-Nを有する一般的な円筒の形である。装置130は、その下端部138と上端部139との間に延在する壁131を備える。装置130は、上端部139から下端部138に向かって延出する中央の円筒形の孔又はチャネル137を備え、孔137の上端部137’は開口しており、孔137は、その下端部の近くに、点137’’’で終わる収束部137’’を備える。孔137の直径は、微小電極の尖った遠位端140’’がいちばん先にある状態で挿入されることで、微小電極140を受容するよう設計されている。孔137は、円筒形の微小電極140の直径よりわずかに大きい直径を有する。微小電極140は、孔137の中にぴったり嵌め込まれるよう設計されており、それにより、微小電極140と孔137の壁131との間に熱的な接触をもたらす。壁131がポリテトラフルオロエチレンやシリコーンなどの低摩擦材料でできている場合、壁131と電極140との間の小さな隙間151は、凍結時に微小電極140に付着し、微小電極と共に孔137から引き抜かれ得る、水性流体で満たすことができる。装置130は、壁131内に配置された概ねU字形の導管134、135、136をさらに備え、開口端には、エタノールなどの冷却流体を供給し、除去するためのパイプ・ソケット132、133が設けられる。導管の横部分134、136は、孔137と並列に延出しており、円筒の壁131の上端部139に向かって広がっている。その結果、微小な水平方向の壁131の断面部の質量は同じ方向に減少する。したがって、導管134、135、136内を流れる液体の冷却効果は、下側部分よりも壁131の上側部分をより効率的に冷却し、壁131の温度を下端部138から上端部138’に向かって、温度勾配を形成するように低下させる。熱伝導性により、温度勾配は、微小電極140又は孔137内に配置される他のデバイスに伝達される。図11aは、収束部137’’と装置の上端部139との中間にある、装置140の径方向M-M断面図を示す。
【0064】
図12の微小電極140は、中心軸P-Pを有する円筒形である。微小電極は、金又は白金などの金属の導電性コア141を備える。その尖った遠位端140’’及び尖った端部140’’から近位方向に延出する遠位末端部141’を除いて、コア141には、たとえばポリウレタン、ポリエチレン、シリコーン、又はポリテトラフルオロエチレンの電気絶縁被膜142が施される。微小電極140は、その近位端140’で、半田づけ箇所144でコア142に留められた、絶縁された柔軟な金属ワイヤ143を使って、制御及び/又は通電する器具(図示せず)に接続される。
【0065】
図13は、装置130の中央の孔137内に完全に挿入された微小電極140を示す。エタノールなどの冷却剤151は、導管134、135、136内を流れ、ソケット132の端部から入り、ソケット133から出る。冷却剤151の流れの方向を、矢印で示す。
【実施例0066】
図15に示す、図5の微小電極61の別種171は、細くなった遠位先端部176及びその近位端に取り付けられた柔軟な電気リード173を備える円筒形の電極本体172に加えて、遠位先端部から近位方向に延出する部分172’を除いて電極本体172を覆う、ポリウレタンやパリレンCなどのポリマー材料の電気絶縁層174を備える。電極本体172の絶縁層174及び非絶縁部分172’は、乾燥ゼラチンの層175で覆われている。微小電極61と同様に、微小電極171は、その近位端に、遠位方向又は近位方向に微小電極を移動させるための挿入用プランジャ・アームの把持爪と連結する、把持用隆起部を備える。図5の微小電極61とは対照的に、ゼラチン層175は、氷層176で完全に又は部分的に覆われ、電極本体162のゼラチンに(直接的に、又は中間の電気絶縁層164と共に)埋め込まれた部分の温度は、0℃から-3℃又は-7℃である。氷層176は、たとえば、0℃未満、具体的には-3℃以下の温度の図5の微小電極61を、冷水、具体的には+1℃から0℃までの水の中に浸し、次いですぐに微小電極を取り出すことにより、付着される。別法として、対応する冷却された微小電極61は、90%又は95及び/又は99%以上の湿度などの高湿度の、空気、窒素、又は他の好適な気体で満たされたチャンバ内に、最大10秒間又は最大30秒間などの短時間導入され、チャンバ内の気体は、0℃から3℃などの0℃に近い低温、特に微小電極61の温度よりわずかに高い温度で維持される。
【実施例0067】
図14図14cは、軟組織73内に本発明の微小電極61又は他のデバイスを埋め込むための、その近位(後)端部にハンドル168が設けられた外科用針161と、針161の円筒形のチャネル162(図14cの軸O)内に移動可能に配置された円筒形挿入部163との組合せを示す。図5の針70とは対照的に、針161の壁は、チャネル162の軸Oに向かって遠位方向に対称に傾斜している。挿入部163は、ノブ165を備えたその近位端の近くに、チャネル162内への挿入部の挿入深さを制限する、径方向に延在する止めフランジ166を備え、挿入部の先端部164の軸方向傾斜面を、針161の遠位末端部161’の軸方向傾斜面にぴったり嵌め込ませ、針161と挿入部163との組合せの、1種の複合又は接合先端部161’、164を備え、それにより組織に優しい挿入を実現する。したがって、挿入部163の完全に挿入された位置では、挿入部163の傾斜面及び針161は、共通の湾曲面を形成する。挿入部161とチャネル162の壁との間の隙間167は、挿入部163を引き抜く際に、圧力を釣り合わせるのに十分な広さであることが重要である。引き抜く時に圧力が釣り合うよう補助する別の手法(図示せず)は、挿入部163内に、遠位末端又は先端面からその近位面まで延在する細いチャネルを設けることである。
【0068】
針と挿入部との組合せ161、163による、軟組織73内への微小電極61の埋込みを、図14図14dに示す。このプロセスは、挿入部163が完全にチャネル162に挿入された状態で、遠位方向Rにある組合せ161、163を軟組織内に(図14の挿入方向Fに)挿入することにより開始される。所望の挿入深さに達すると、挿入を停止する(図14a)。次いで、挿入部163が引き抜かれ、一方で針161は挿入された位置に残される(図14b)。次に、微小電極61をチャネル162内に完全に挿入し(図14c)、次いで、協働する隆起部67’で微小電極を保持する挿入用プランジャ・アーム69、69’の把持爪68、68’によって微小電極61を挿入された位置に維持しながら、針163を近位方向Rに引き抜く(図14c)。組織73が微小電極61の周りに迫ってきて微小電極を適所に保持すると、末端挿入状態に達する(図14d)。
【0069】
図17にその遠位末端部分だけを示す、外科用針191と円筒形の挿入部193との組合せの別種190は、接合遠位先端部を形成する、傾斜した同一平面の遠位面198、199を有するその遠位箇所によって、図14図14cの組合せ161、163とは異なり、それ以外は、その近位部分は、組合せ161、163の設計と同じ設計である。針191の円筒形の外面には、氷層195で覆われたゼラチンの層194が同様に設けられる。針191のチャネルの壁と挿入部193との間の隙間197は、神経組織内への埋込み時に挿入部193を容易に引き抜くことができるように十分に広くなければならない。
【実施例0070】
図15図15aに示す微小電極171は、ゼラチン層175上に配置された氷層176によって、微小電極61とは異なる。参照番号172、172’、173、及び174は、それぞれ、電極本体及びその遠位末端部、並びに絶縁層を特定する。氷層176は、たとえば、実質的に0℃未満の温度の微小電極61を冷水に漬けて、次いですぐに取り出すことで、設けることができる。
【実施例0071】
図16、16aは、図14図14dの針161と同じ種類の外科用針181を示す。針181は、チャネルの軸Qを有する円筒形のチャネル182を備え、またゼラチンの層184を備え、任意選択で、冷却された状態で、ゼラチン層184上に氷層185を備える。この修正形態により、軟組織内への組織に優しい挿入が実現する。
図1
図2
図3
図4
図4a
図4b
図4c
図5
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図11a
図12
図13
図14
図14a
図14b
図14c
図14d
図15
図15a
図16
図16a
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電極、温度センサ、光学センサ、光ファイバ、温度制御素子、微小透析用プローブより選択される、軟組織内へ挿入するデバイスであって、
遠位端及び近位端の間に延在し、前記遠位端から近位方向に延出する遠位末端部を具備するデバイス本体と、
少なくとも前記遠位末端部を覆う、水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の層と
を備え、前記遠位末端部は、氷層に覆われる、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスの前記遠位末端部は、挿入前の状態で、-20℃から0℃の範囲の温度を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記遠位末端部の前記範囲に含まれる前記温度は、径方向に高くなる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスの近位部の前記温度は、前記遠位末端部の前記温度より低い、請求項2又は3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイスは微細電極であり、導電性材料でできた電極本体を備え前記微細電極は、前記遠位末端部に配置される、前記遠位末端部又はその一部に配置される水性体液と接触状態では溶解も膨潤もしない1種又は複数種類の材料の1層又は複数の層をさらに備える、請求項1記載のデバイス
【請求項6】
前記電極本体の近位部分に取り付けられ、前記電極本体と熱が伝導するよう接触する冷却手段を備える、請求項5に記載のデバイス
【請求項7】
前記冷却手段はヒート・シンクであるか又は前記ヒート・シンクを備える、請求項6に記載のデバイス
【請求項8】
前記ヒート・シンクは、金属又は合金でできている、請求項7に記載のデバイス
【請求項9】
前記冷却手段はペルチェ素子であるか又は前記ペルチェ素子を備える、請求項6に記載のデバイス
【請求項10】
前記ペルチェ素子は、前記微小電極に取り付け可能であり、且つ前記微小電極から取外し可能である、請求項9に記載のデバイス
【請求項11】
前記冷却手段は、低温で冷却剤により少なくとも部分的に満たされた空隙を有するコンテナを備える、請求項6に記載のデバイス
【請求項12】
前記コンテナは閉じている、請求項11に記載のデバイス
【請求項13】
前記冷却剤はドライ・アイスであり、前記コンテナの空隙は、前記電極本体内、又は水性体液と接触した状態でゲルを形成することができる材料の前記層内に配置されるチャネルの一端と連通し、前記チャネルの他端は周囲へ開口している、請求項11に記載のデバイス
【請求項14】
前記コンテナは、前記微小電極に取り付け可能であり、且つ前記微小電極から取外し可能である、請求項11に記載のデバイス
【請求項15】
微小電極の束又はアレイを含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載のデバイス
【請求項16】
前記デバイスは光学センサであり、前記デバイス本体の前記遠位末端部は、UV、可視、又はIR光の検出器を備える、請求項1記載のデバイス
【請求項17】
前記デバイスは温度センサであり、前記デバイス本体は熱電対を備える、請求項1記載のデバイス
【請求項18】
前記デバイスは光導体であり、前記デバイス本体は、光ファイバの遠位末端部分を備える、請求項1記載のデバイス
【請求項19】
前記デバイスは温度制御素子であり、前記デバイス本体は、細長い金属棒である、請求項1記載のデバイス
【請求項20】
前記デバイスは微小透析用プローブであり、前記デバイス本体は、半透膜部設けられた冷却流体用の導管を備える前記微小透析用プローブで構成される、請求項1記載のデバイス
【請求項21】
水性体液と接触状態でゲルを形成することができる材料の前記層は、薬理学的活性剤を含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
水性体と接触状態でゲルを形成することができる材料の前記層は、複層の膨潤及び溶解特性に関して異なる2層以上の副層、少なくとも1つの内側の副層と外側の副層を備える、請求項1から21までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記内側の副層は、水性体液と接触した状態で、前記外側の副層より容易に膨潤及び溶解する、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記デバイスと、前記デバイスとは別個の管腔を備える外科用カニューレ又は針を含む冷却手段とを備え、前記デバイスは前記管腔内に配置される、請求項1から23までのいずれか一項に記載の前記デバイスを軟組織内に挿入する組立体。
【請求項25】
前記デバイスを備える前記外科用カニューレの温度は、実質的に体温未満である、請求項24に記載の組立体。
【請求項26】
請求項1に記載のデバイスを2つ以上備える組立体。
【外国語明細書】