(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000802
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】粘着シートの使用方法および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221222BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221222BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101827
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】戸田 航介
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AB01
4J040HA076
4J040JB09
(57)【要約】
【課題】必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シートの使用方法を提供すること、また、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の粘着シートの使用方法は、基材と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層とを備える粘着シートを用意する工程と、被着体の表面に、前記粘着シートを貼着する工程と、所定時間以上の間、前記粘着シートを前記被着体に貼着した状態を保持する工程と、前記被着体から、前記粘着シートを剥離する工程とを有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層とを備える粘着シートを用意する工程と、
被着体の表面に、前記粘着シートを貼着する工程と、
所定時間以上の間、前記粘着シートを前記被着体に貼着した状態を保持する工程と、
前記被着体から、前記粘着シートを剥離する工程とを有することを特徴とする粘着シートの使用方法。
【請求項2】
前記所定時間は、10分間以上である請求項1に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項3】
前記粘着剤層は、前記有効成分として、少なくとも銀塩を含む請求項1または2に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項4】
前記粘着剤層は、前記有効成分として、少なくとも金属塩とモリブデンオキソ化合物のアルカリ塩とを反応させて得られる塩を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項5】
前記粘着剤層中における前記有効成分の含有率は、0.5質量%以上10質量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項6】
ステンレス鋼板の表面に対する前記粘着剤層の粘着力が、0.02N/25mm以上30N/25mm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項7】
前記粘着シートは、前記被着体に貼着した状態において、目視できる部位に情報が記載されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項8】
前記情報は、前記粘着シートの使用方法に関する情報である請求項7に記載の粘着シートの使用方法。
【請求項9】
所定時間以上の間、被着体の表面に貼着した状態を保持した後、前記被着体から剥離される粘着シートであり、
基材と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層とを備えることを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートの使用方法および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人々の衛生、清潔に対する意識が高まっており、目に見える汚れ以外の面での清潔感までもが求められる傾向にある。
【0003】
例えば、多数の人が頻繁に触れるような箇所では、菌やウイルスが付着しやすく、清潔が損なわれやすい。これらの部分を清潔に保つためには、使用の都度、清掃等を行うことが望ましいが、使用の都度、清掃等を行うことは、極めて煩雑である。そのため、清掃等の頻度を低減することが求められている。そこで、物品の表面に塗布することで、当該物品の表面に抗菌性を付与することのできる塗料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、抗菌性を有する塗料が塗布された物品の表面は、曝露された状態であり、十分に清潔な状態が保たれていない場合がある。また、抗菌性等が求められる物品の表面に塗膜が形成されるため、その物品が持っている質感等が阻害される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シートの使用方法を提供すること、また、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 基材と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層とを備える粘着シートを用意する工程と、
被着体の表面に、前記粘着シートを貼着する工程と、
所定時間以上の間、前記粘着シートを前記被着体に貼着した状態を保持する工程と、
前記被着体から、前記粘着シートを剥離する工程とを有することを特徴とする粘着シートの使用方法。
【0008】
(2) 前記所定時間は、10分間以上である上記(1)に記載の粘着シートの使用方法。
【0009】
(3) 前記粘着剤層は、前記有効成分として、少なくとも銀塩を含む上記(1)または(2)に記載の粘着シートの使用方法。
【0010】
(4) 前記粘着剤層は、前記有効成分として、少なくとも金属塩とモリブデンオキソ化合物のアルカリ塩とを反応させて得られる塩を含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の粘着シートの使用方法。
【0011】
(5) 前記粘着剤層中における前記有効成分の含有率は、0.5質量%以上10質量%以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の粘着シートの使用方法。
【0012】
(6) ステンレス鋼板の表面に対する前記粘着剤層の粘着力が、0.02N/25mm以上30N/25mm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の粘着シートの使用方法。
【0013】
(7) 前記粘着シートは、前記被着体に貼着した状態において、目視できる部位に情報が記載されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の粘着シートの使用方法。
【0014】
(8) 前記情報は、前記粘着シートの使用方法に関する情報である上記(7)に記載の粘着シートの使用方法。
【0015】
(9) 所定時間以上の間、被着体の表面に貼着した状態を保持した後、前記被着体から剥離される粘着シートであり、
基材と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層とを備えることを特徴とする粘着シート。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シートの使用方法を提供すること、また、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】粘着シートが適用される被着体を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】粘着シートを被着体に貼着した状態を示す模式的な縦断面図である。
【
図4】粘着シートを被着体に貼着した状態を示す模式的な平面図である。
【
図5】粘着シートを被着体から剥離した状態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
図2は、粘着シートが適用される被着体を示す模式的な縦断面図である。
図3は、粘着シートを被着体に貼着した状態を示す模式的な縦断面図である。
図4は、粘着シートを被着体に貼着した状態を示す模式的な平面図である。
図5は、粘着シートを被着体から剥離した状態を示す模式的な縦断面図である。
【0019】
[1]粘着シートの使用方法
以下、本発明の粘着シートの使用方法について説明する。
【0020】
本実施形態の粘着シート10の使用方法は、基材11と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層12とを備える粘着シート10を用意する粘着シート用意工程と、対象体である被着体100の表面に、粘着シート10を貼着する貼着工程と、所定時間以上の間、粘着シート10を被着体100に貼着した状態を保持する保持工程と、被着体100から、粘着シート10を剥離する剥離工程とを有する。
【0021】
これにより、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シート10の使用方法を提供することができる。また、必要時においては、被着体100から粘着シート10を剥離するため、被着体100が持っている質感等が阻害されることもない。
【0022】
前記必要時としては、例えば、対象物の表面に触れる可能性がある動きを伴う動作、作業を行う際等が挙げられる。特に、被着体100に触れて被着体100を使用する場合等が挙げられる。
【0023】
なお、本発明において、「抗菌」とは、細菌および真菌類の殺菌また除菌、もしくはこれらの発生・生育・増殖を抑制することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、いかなる意味においても限定されない。
【0024】
また、「抗ウイルス」とはウイルスの感染予防およびウイルスの不活化およびウイルスの増殖を抑制することを含めて、最も広義に解釈されるべきであり、いかなる意味においても限定されない。
また、本明細書において「シート」には、フィルムの概念が含まれるものとする。
【0025】
以下、各工程について詳細に説明する。
[1-1]粘着シート用意工程
粘着シート用意工程では、基材11と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層12とを備える粘着シート10を用意する。
【0026】
本工程で用意する粘着シート10は、基材11と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層12とを備えるものであればよいが、
図1に示すように、粘着剤層12が剥離ライナー13で保護されたものであるのが好ましい。
【0027】
これにより、後の貼着工程の前に、粘着剤層12に埃等が付着することが効果的に防止される。また、粘着剤層12が揮発性の成分を含む場合に、当該揮発成分が貼着工程の前に不本意に揮発することを効果的に防止することができる。特に、前記揮発成分が前記有効成分である場合、本発明の効果をより効果的に発揮させる上で、粘着剤層12が剥離ライナー13で保護されているのが好ましい。
なお、粘着シート10については、後に詳述する。
【0028】
[1-2]貼着工程
貼着工程では、被着体100の表面に、粘着剤層12が接触するように粘着シート10を貼着する。
【0029】
粘着シート10が剥離ライナー13を有している場合には、剥離ライナー13を粘着剤層12から剥離してから貼着する。
【0030】
[1-2-1]被着体
粘着シート10が貼着される被着体100の構成材料は、特に限定されないが、被着体100の表面(粘着剤層12と接触する部位)は、木材、ガラス、金属またはプラスチックで構成されたものであるのが好ましい。
【0031】
これにより、後の剥離工程で、粘着シート10を被着体100から好適に剥離することができる。
【0032】
被着体100の表面の構成材料としての金属としては、例えば、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。
【0033】
被着体100の表面の構成材料としてのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル系樹脂、ABS樹脂等の各種エンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0034】
被着体100としては、特に限定されないが、例えば、1人または複数の人が、頻繁に触れる部位を有するものが挙げられる。
【0035】
このような被着体100は、その表面が菌やウイルスによって汚染されやすく、本発明による効果をより顕著に発揮させることができる。
【0036】
被着体100として具体的には、例えば、テーブル、椅子;調理台、まな板、トレイ;携帯端末のタッチパネル;電気機器の操作パネル、操作ボタン、リモートコントローラー;固定電話;ドアノブ、取手、手すり;トイレの便座、蓋、ペーパーホルダー、洗浄ボタン;パソコンのキーボード、マウス;カラオケのマイク等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
携帯端末としては、例えば、タブレット、携帯電話、スマートフォン、飲食店の注文用端末、商品管理用端末等が挙げられる。
【0038】
電気機器としては、例えば、エレベーター、自動販売機、エアコン、テレビ、照明機器、ATM(現金自動預け払い機)等が挙げられる。
【0039】
図2に示すように、被着体100の表面には、菌やウイルスを含む汚れ101が付着している。菌やウイルスを含む汚れ101は、一般的には、目では見えない汚れであるが、添付図面においては、可視化して示している。
【0040】
そして、
図3に示すように、この汚れ101を覆うように、粘着剤層12を対向させて被着体100に粘着シート10を貼着する。
【0041】
粘着シート10は、貼着される被着体100の形状、大きさに応じて予めカットされたものであってもよい。
これにより、貼着工程をより効率よく行うことができる。
【0042】
また、粘着シート10を被着体100に貼着した後に、被着体100の形状、大きさに応じて粘着シート10をカットしてもよい。
【0043】
被着体100に粘着シート10を貼着した後、基材11の上から手等により押圧することが好ましい。
【0044】
これにより、粘着剤層12と被着体100との密着性をより確実に高めることができ、本発明による効果がより確実に発揮される。
【0045】
また、
図4に示すように、本実施形態においては、粘着シート10は印刷層14を有しており、粘着シート10を被着体100に貼着した状態において、目視できる部位、特に、被着体100の正常な形態での使用時において視認される部位に、情報(印刷層14による情報)が表示される。この情報は、例えば、粘着シート10の使用方法等に関する情報である。
【0046】
[1-3]保持工程
保持工程では、所定時間以上の間、粘着シート10を被着体100に貼着した状態を保持する。
【0047】
被着体100の表面に、有効成分を含有する粘着剤層12を接触させるだけではなく、被着体100の表面が、粘着剤層12が密着して覆われた状態で、所定時間以上保持することで、被着体100の表面に対し有効成分を十分に作用させることができ、その結果、本発明による効果が発揮される。
【0048】
前記所定時間は、特に限定されないが、10分間以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、4時間以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0049】
所定時間以上の間、粘着シート10を被着体100に貼着した状態を保持する方法としては、例えば、飲食店において、営業終了後にテーブルや椅子、トレイに粘着シート10を貼着しておき、次の営業日の営業開始前に剥離することや、宿泊施設において、チェックアウト後の清掃終了後にトイレの便座等に粘着シート10を貼着しておき、次の宿泊者が使用前に剥離すること等が挙げられる。
【0050】
これにより、より長時間にわたって確実に、粘着シート10を被着体100に貼着した状態を保持することができる。その結果、前述した効果がさらに顕著に発揮される。
【0051】
[1-4]剥離工程
剥離工程では、被着体100から、粘着シート10を剥離する。
【0052】
図5に示すように、被着体100から粘着シート10を剥離することで、被着体100を十分に清潔な状態とすることができる。より具体的には、所定時間以上の間、粘着剤層12と接触していたことにより、被着体100は、有効成分による抗菌性、抗ウイルス性の作用が発揮された状態となっている。また、もともと被着体100の表面に付着していた汚れを、粘着シート10に転写し、除去することができる。また、粘着剤層12の構成等によっては、剥離後においても、被着体100の表面に有効成分を残存させることができ、粘着シート10の剥離から比較的長期間にわたって抗菌性、抗ウイルス性を好適に維持することができる。
【0053】
被着体100から粘着シート10を剥離するタイミングとしては、所定時間の経過後であれば、特に限定されないが、被着体100を使用する直前であるのが好ましい。
【0054】
これにより、粘着シート10を剥離してから使用するまでの間に、被着体100の表面が再び汚染されてしまうことを防止でき、より清潔な状態で使用に供することができる。
【0055】
[2]粘着シート
以下、本発明に係る粘着シート10について、詳細に説明する。
【0056】
粘着シート10は、所定時間以上の間、対象体である被着体100の表面に貼着した状態を保持した後、被着体100から剥離されるものであり、基材11と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分を含む粘着剤層12とを備える。
【0057】
これにより、必要時に対象体の表面を十分に清潔な状態にすることが可能な粘着シート10を提供することができる。また、必要時においては、被着体100から粘着シート10を剥離するため、被着体100が持っている質感等が阻害されることもない。
【0058】
図1に示すように、粘着シート10は、基材11と、基材11の一方の面に設けられた粘着剤層12とを有する。
【0059】
[2-1]基材
基材11は、粘着シート10を被着体100に貼着した状態において表面側を向く第1の面111と、粘着剤層12に対向する第2の面112とを有する単層体である。
基材11は、粘着剤層12を支持する機能を有する。
【0060】
基材11は、いかなる材料で構成されていてもよく、基材11の構成材料としては、各種樹脂材料、紙系材料、金属材料等が挙げられる。
【0061】
基材11を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ-p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、基材11は、ポリエステル、ポリオレフィンのうち少なくとも一方を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0062】
これにより、粘着シート10により好適なコシを持たせることができ、粘着シート10の取り扱いのし易さ(例えば、被着体100への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)をより向上させることができる。また、粘着シート10を被着体100から剥離する際の粘着シート10の不本意な破壊等を効果的に防止することができる。また、粘着シート10を介して、被着体100の状態をより好適に認識することができる。
【0063】
基材11が紙系材料で構成される場合の具体例としては、グラシン紙、コート紙、上質紙、無塵紙、含浸紙等の紙基材や、紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0064】
また、基材11は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤、抗菌剤、抗ウイルス剤等が挙げられる。
【0065】
また、基材11の第1の面111および第2の面112のうちの少なくとも一方には、印刷層14や粘着剤層12との密着性を高めるための表面処理が施されていてもよい。
【0066】
これにより、例えば、粘着剤層12と被着体100との密着力に対して、基材11と粘着剤層12との密着力を、特に大きくすることができ、粘着シート10を被着体100から剥離する際の糊残りの発生や、基材11と粘着剤層12との間での界面剥離、基材11と粘着剤層12との間での不本意な剥離等をより効果的に防止することができる。
【0067】
このような表面処理としては、ポリエステル系、アクリル系およびポリウレタン系等の
易接着性樹脂を塗布する方法、コロナ処理等が挙げられる。
【0068】
基材11の厚さは、特に限定されないが、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましく、25μm以上75μm以下であるのがさらに好ましい。
【0069】
これにより、上述したような基材11を備えることによる効果を十分に発揮しつつ、例えば、被着体100の表面の形状に対する粘着シート10の追従性をより向上させることができ、例えば、被着体100の表面(粘着シート10が貼着される部位)が、曲率半径の小さい曲面や凹凸のある面等であっても優れた密着性を確保することができる。
【0070】
[2-2]粘着剤層
粘着剤層12は、基材11に対向する第1の面121と、第1の面121とは反対側の面(被着体100に接触する面)である第2の面122とを有する単層体である。
【0071】
粘着剤層12は、粘着剤組成物により構成されている。特に、本実施形態では、粘着剤組成物は、粘着剤と、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種の有効成分とを含んでいる。このように、粘着剤層12は、被着体100の表面に密着し、粘着シート10を被着体100に固定する機能とともに、有効成分を保持ないし担持する機能も有している。
【0072】
[2-2-1]粘着剤
粘着剤層12を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0073】
アクリル系粘着剤は、アクリル系のモノマーを構成モノマーとして含んでいればよく、アクリル系以外のモノマーを含んでいてもよいが、アクリル系粘着剤を構成する全モノマーのうちアクリル系のモノマーが占める割合は、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0074】
合成ゴム系粘着剤の具体例としては、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、イソブチレン-イソプレン、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0075】
ウレタン系粘着剤の具体例としては、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。
【0076】
シリコーン系粘着剤の具体例としては、シリコーンゴムとシリコーンレジンを含有するもの等が挙げられる。
【0077】
粘着剤層12を構成する粘着剤は、特に限定されず、例えば、溶剤系粘着剤、エマルション系粘着剤、ホットメルト型粘着剤等が挙げられるが、エマルション系粘着剤であると、粘着シート10の被着体100に対する粘着力や、粘着シート10の生産性を優れたものとしつつ、粘着シート10の製造過程で用いられる有機溶媒の量を抑制することができ、環境負荷を低減することができる。
【0078】
粘着剤層12中における粘着剤の含有率は、特に限定されないが、80質量%以上98.5質量%以下であるのが好ましく、82質量%以上98質量%以下であるのがより好ましく、85質量%以上97質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0079】
これにより、粘着剤層12中における有効成分の含有率を十分に高くし、十分な抗菌性および/または抗ウイルス性を維持しつつ、粘着剤層12の基材11に対する密着性を向上させることができ、例えば、曲げ等の応力が加わった場合でも、粘着剤層12が不本意に剥離してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。また、被着体100から粘着シート10の剥離時には、被着体100から粘着剤層12を好適に剥離することができる。
【0080】
[2-2-2]有効成分
有効成分は、抗菌剤および抗ウイルス剤よりなる群から選択される少なくとも1種であり、粘着剤層12に抗菌性および/または抗ウイルス性を付与する。
【0081】
粘着剤層12中における有効成分の含有率は、特に限定されないが、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、2質量%以上8質量%以下であるのがより好ましく、2.5質量%以上6質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0082】
これにより、粘着剤層12中における有効成分の含有率を好適な値とすることができ粘着シート10による抗菌性および/または抗ウイルス性をより優れたものとすることができるとともに、粘着剤層12中における粘着剤の含有率を十分に高いものとすることができ、粘着剤層12の基材11に対する密着性を十分に優れたものとすることができ、例えば、曲げ等の応力が加わった場合でも、粘着剤層12が不本意に剥離してしまうこと等をより効果的に防止することができる。
【0083】
以下の説明では、便宜上、有効成分として、抗菌剤と抗ウイルス剤とを分けて説明するが、抗菌性および抗ウイルス性の性質を併せ持つ成分を有効成分として用いてもよい。
【0084】
有効成分としては、抗菌性を有する抗菌剤、抗ウイルス性を有する抗ウイルス剤であれば、いかなるものでも使用可能である。
【0085】
[2-2-2-1]抗菌剤
抗菌剤としては、例えば、各種無機系抗菌剤、各種有機系抗菌剤やこれらの複合材料(無機・有機ハイブリッド系抗菌剤)等が挙げられる。
【0086】
有機系抗菌剤としては、例えば、フェノールエーテル系抗菌剤、イミダゾール系抗菌剤、ピリチオン系抗菌剤、スルホン系抗菌剤、N-ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール系抗菌剤、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、チアゾリン系抗菌剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系化合物、イソチアゾリン系化合物)等が挙げられる。
【0087】
より具体的には、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-フルオルジクロロメチルチオ-フタルイミド、2,3,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、N-トリクロロメチルチオ-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシイミド、8-キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、10,10’-オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、N,N-ジメチル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)-N’-フェニルスルファミド、ポリ-(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ-2-2’-ビス(ベンズメチルアミド)、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、ヘキサヒドロ-1,3-トリス-(2-ヒドロキシエチル)-S-トリアジン、p-クロロ-m-キシレノール等が挙げられる。
【0088】
また、有機系抗菌剤としては、例えば、天然系抗菌剤を用いてもよい。天然系抗菌剤としては、例えば、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサン、ワサビ抽出物、モウソウチク抽出物等が挙げられる。
【0089】
無機系抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、金、白金、チタン、ニッケル等の各種金属等が挙げられる。
【0090】
また、無機系抗菌剤としては、例えば、前記金属の化合物(金属化合物)が挙げられる。
【0091】
金属化合物としては、例えば、前記金属の酸化物、硫化物、硫酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。
【0092】
また、抗菌剤としては、前記金属やそのイオン(金属イオン)、金属化合物を担体に担持させたものが挙げられる。
【0093】
担体としては、例えば、天然ゼオライト、合成ゼオライト等のゼオライト類;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン等の水酸化物または含水酸化物;リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、アパタイト(リン灰石)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸マンガン、リン酸鉄等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム等のチタン酸類;ハイドロタルサイト類等の塩基性塩や複合含水酸化物;モリブドリン酸アンモニウム等のヘテロポリリン酸類;ヘキサシアノ鉄(III)塩;ヘキサシアノ亜鉛;アルミナ;シリカ;ベントナイト;クレー;タルク;雲母;アミノ酸;ガラス等が挙げられる。
【0094】
より具体的には、金属や金属イオンを担体に担持させた無機系抗菌剤としては、例えば、ゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩-四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられる。
【0095】
無機・有機ハイブリッド系抗菌剤としては、例えば、陽イオン交換性無機化合物にイソチアゾリン化合物等の金属錯塩を坦持させた抗菌剤等が挙げられる。
【0096】
これにより、粘着シート10の抗菌性をより向上させることができる。また、粘着剤層12中に抗菌剤をより均一に含ませることができ、各部位での抗菌性の不本意なばらつきの発生を効果的に防止することができる。
【0097】
粘着剤層12は、少なくとも銀塩を含むことが好ましい。
これにより、抗菌性をより優れたものとすることができる。また、このような成分は、優れた抗ウイルス性も発揮することできる。
銀塩としては、例えば、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀等が挙げられる。
【0098】
また、粘着剤層12は、少なくとも金属塩とモリブデンオキソ化合物のアルカリ塩とを反応させて得られる塩を含むことが好ましい。
【0099】
これにより、抗菌性をより優れたものとすることができる。また、このような成分は、優れた抗ウイルス性も発揮することができる。
【0100】
前記金属塩としては、銀塩、銅塩、亜鉛塩が挙げられる。
銀塩としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀等が挙げられる。銅塩としては、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅等が挙げられる。亜鉛塩としては、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、銀塩が好ましい。
【0101】
モリブデンオキソ化合物のアルカリ塩としては、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸アンモニウム、ポリモリブデン酸ナトリウム、イソポリモリブデン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0102】
金属塩とモリブデンオキソ化合物との反応方法としては、例えば、金属塩水溶液にモリブデンオキソ化合物のアルカリ塩水溶液を添加する方法が挙げられる。あるいは、この逆の方法でもよい。
【0103】
得ようとする金属塩とモリブデンオキソ化合物との塩の平均粒子径は、反応条件により変えることができる。例えば、平均粒子径の小さいものを得るには、モリブデンオキソ化合物のアルカリ塩水溶液または金属塩水溶液の濃度を低くすること、または撹拌速度を速くすることにより、任意に平均粒子径をコントロールすることができる。
【0104】
このようにして得られた好ましい平均粒子径を有する、金属塩とモリブデンオキソ化合物との塩は、例えば、反応液スラリーから水をろ別し、乾燥することにより粉末状のものとして好適に得られる。
【0105】
このように、抗菌性金属である銀、銅および亜鉛よりなる群のうちの少なくとも1種とモリブデンオキソ化合物とを反応させモリブデンオキソ化合物の銀、銅、亜鉛の塩にすることにより、銀、銅、亜鉛の適度の溶出性と、銀、銅、亜鉛の化学的安定比が達成され、抗菌効力の発現、効力の長期持続性、耐変色性に優れたものとなる。
【0106】
[2-2-2-2]抗ウイルス剤
抗ウイルス剤としては、抗ウイルス作用を有するものであれば、特に限定されず、有機系の抗ウイルス剤、無機系の抗ウイルス剤が挙げられる。
【0107】
有機系の抗ウイルス剤としては、例えば、抗ウイルス性の樹脂、スルホン酸系界面活性剤、銅のアルコキシド等が挙げられる。
【0108】
無機系の抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等をゼオライトやシリカゲル、スルホン酸系界面活性剤等で担持した担持体や、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン等の金属酸化物等が挙げられる。
【0109】
粘着剤層12は、少なくとも銀塩を含むことが好ましい。
これにより、抗ウイルス性をより優れたものとすることができる。また、このような成分は、優れた抗菌性も発揮することできる。
銀塩としては、例えば、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀等が挙げられる。
【0110】
粘着剤層12は、金属塩とタングステンオキソ化合物のアルカリ塩とを反応させて得られる1種以上の塩を含むことが好ましい。
【0111】
これにより、抗ウイルス性をさらに優れたものとすることができる。また、このような成分は、優れた抗菌性も発揮することできる。
【0112】
金属塩としては、銀、亜鉛および銅よりなる群から選択される1種以上の塩が挙げられる。
【0113】
銀塩としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀等が挙げられる。亜鉛塩としては、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。銅塩としては、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅等が挙げられる。これらの中でも、銀塩が好ましい。
【0114】
タングステンオキソ化合物のアルカリ塩としては、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム、ポリタングステン酸ナトリウム、イソポリタングステン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0115】
金属塩とタングステンオキソ化合物のアルカリ塩との反応方法としては、例えば、金属塩水溶液に、タングステンオキソ化合物のアルカリ塩水溶液を添加する方法が挙げられる。あるいは、この逆の方法でもよい。
【0116】
得ようとする、金属塩とタングステンオキソ化合物との塩の平均粒子径は、反応条件によって変えることが可能である。例えば、平均粒子径の小さいものを得るには、タングステンオキソ化合物のアルカリ塩水溶液および金属塩水溶液の濃度を低くすること、または撹拌速度を速くすることにより、任意に平均粒子径をコントロールすることができる。
【0117】
金属塩とタングステンオキソ化合物との塩の平均粒子径は、10μm以下であるのが好ましい。これにより、被着体100の物性面への影響を抑えつつ、抗ウイルス性をより好適なものとすることができる。
【0118】
このようにして得られた、好ましい平均粒子径を有する、金属塩とタングステンオキソ化合物との塩は、反応液スラリーから水をろ別し、乾燥することにより粉末状で得られる。
【0119】
[2-2-2-3]粘着剤層中における有効成分の状態
上述したような有効成分は、粘着剤層12中において、例えば、粘着剤と相溶した状態であってもよいが、粘着剤層12中(粘着剤中)に分散しているのが好ましい。
【0120】
これにより、有効成分による抗菌性および/または抗ウイルス性をより効果的に発揮させることができる。また、より長期間にわたって優れた抗菌性および/または抗ウイルス性を発揮することができ、粘着シート10の耐久性を向上させることができる。
【0121】
特に、粘着剤層12中に含まれる有効成分は、粒状をなし、その平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であるのが好ましい。
【0122】
これにより、粘着剤層12中において、より好適に有効成分を分散させることができ、有効成分による抗菌性および/または抗ウイルス性をさらに効果的に発揮させることができる。また、さらに長期間にわたって優れた抗菌性および/または抗ウイルス性を発揮することができ、粘着シート10の耐久性を向上させることができる。
【0123】
このように、粒状をなす有効成分の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上7μm以下であるのがより好ましく、0.5μm以上5μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0124】
なお、本明細書において、平均粒子径とは、体積基準の平均粒子径のことを指す。平均粒子径は、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(例えば、COULTERELECTRONICS社製MULTISIZER3)にて、50μmのアパチャーを用いた測定により求めることができる。
【0125】
有効成分は、粘着剤層12中に均一に含まれていてもよいし、所定の領域に偏在していてもよい。有効成分は、粘着剤層12中の外表面、すなわち、被着体100に接触する第2の面122側の領域に偏在しているのが好ましいが、特に、粘着剤層12の厚さ方向での有効成分の含有率が最大となる領域は、粘着剤層12の外表面であるのが好ましい。
これにより、前述した効果がさらに顕著に発揮される。
【0126】
[2-2-3]その他の成分
粘着剤層12は、粘着剤および有効成分を含むものであればよく、これら以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0127】
その他の成分としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、改質剤、防錆剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤等が挙げられる。
【0128】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系
架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、およびアミノ樹脂系架橋剤が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0130】
充填剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。
【0131】
酸化防止剤としては、例えば、アニリド系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、チオエステル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0132】
ただし、粘着剤層12中におけるその他の成分の含有率は、10.0質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0133】
[2-2-4]その他の条件
粘着剤層12の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
【0134】
これにより、粘着剤層12中に十分な量の有効成分を含有させることができ、粘着シート10の抗菌性および/または抗ウイルス性をより優れたものとすることができる。また、粘着剤層12の粘着力をより好適なものとすることができ、被着体100の表面の形状に対する追従性、密着性を向上させることができる。例えば、被着体100の表面(粘着シート10が貼着される部位)が、曲率半径の小さい曲面や凹凸のある面等であっても優れた密着性を確保することができ、粘着剤層12が不本意に剥離してしまうこと等をさらに効果的に防止することができる。また、被着体100から粘着シート10の剥離時には、被着体100から粘着剤層12を好適に剥離することができる。
【0135】
基材11の厚さをT1[μm]、粘着剤層12の厚さをT2[μm]としたとき、1<T1/T2の関係を満足するのが好ましく、1.5<T1/T2<3の関係を満足するのがより好ましい。
【0136】
これにより、基材11が粘着剤層12を確実に支持するとともに、基材11の屈曲ないし湾曲、および、粘着剤層12の変形をより好適に行うことができる。その結果、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0137】
また、ステンレス鋼板の表面に対する粘着剤層12の粘着力は、特に限定されないが、0.02N/25mm以上30N/25mm以下であるのが好ましく、0.1N/25mm以上25N/25mm以下であるのがより好ましく、1N/25mm以上20N/25mm以下であるのがさらに好ましい。
【0138】
これにより、一般に、多様な被着体100に貼着した状態で、不本意に当該被着体100から剥離してしまうことをより効果的に防止しつつ、当該被着体100からの剥離時においては、剥離力が必要以上に大きくならずに、粘着剤層12を好適に剥離することができる。
【0139】
なお、上記粘着力は、23℃において、JIS Z0237:2009に準拠して測定することができる。
【0140】
[2-3]剥離ライナー
未使用の粘着シート10の粘着剤層12の表面(第2の面122)は、剥離ライナー13によって覆われている。
【0141】
これにより、未使用の粘着シート10をシート状のまま保管、輸送することができる。そのため、粘着シート10の取扱いが容易となるとともに、被着体100に貼着される前の粘着剤層12を好適に保護でき、保管時や輸送時等における埃等の付着や、不本意な部位への付着等を効果的に防止することができる。
【0142】
剥離ライナー13としては、グラシン紙にシリコーンを塗布したもの、グラシン紙または上質紙にポリエチレンを貼り合せてシリコーンを塗布したもの、ポリエステルフィルムにシリコーンを塗布したもの等が挙げられる。
【0143】
また、剥離ライナー13は、型抜きされ個片化された粘着シート10を、複数枚まとめて支持するものであってもよい。
【0144】
[2-4]印刷層
図1に示すように、粘着シート10は、基材11の第1の面111に、印刷層14が設けられている。
【0145】
これにより、
図4に示すように、粘着シート10を被着体100に貼着した状態において、目視できる部位に情報を記載することができる。
【0146】
その結果、その観察者等に情報を与えることができる。なお、本明細書において、情報とは、文字、記号、マーク、キャラクター等の絵柄等のほか、装飾模様等の各種模様も含む概念である。また、前記情報は、例えば、単なる色情報であってもよく、印刷層14は、単色のベタ印刷等であってもよい。
【0147】
情報(印刷層14による表示内容)は、特に限定されないが、粘着シート10の使用方法に関する情報であるのが好ましい。
【0148】
このような、粘着シート10の使用方法に関する情報としては、特に限定されないが、例えば、被着体100の表面に対し、抗菌および/または抗ウイルスの処理中であることを示すもの(例えば、「抗菌・抗ウイルス処理中」)が挙げられる。これにより、貼着した者以外の人物によって、抗菌および/または抗ウイルスの処理中であることを知らずに、不本意に剥離されてしまうことを防止できる。
【0149】
また、前記情報としては、例えば、被着体100の使用前に被着体100から粘着シート10を剥離することを促すもの(例えば、「使用前にはがしてください」)が挙げられる。これにより、粘着シート10が貼着された状態のままで、被着体100が使用に供されることを防止できる。
【0150】
また、前記情報としては、例えば、時間的な情報が挙げられる。より具体的には、例えば、抗菌および/または抗ウイルスの処理の開始時期についての情報(例えば、「〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時処理開始」等)、前記所定時間が経過するタイミングについての情報(例えば、「〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時以降に、はがしてください。」等)、粘着シート10の有効期限についての情報(例えば、「有効期限:〇〇年〇〇月〇〇日」等)等が挙げられる。
【0151】
これにより、より好適な形態での粘着シート10の使用を使用者等に促したり、誤って廃棄されたりすることをより効果的に防止したりすることができる。
このような情報の少なくとも一部は、使用者等が、記載してもよい。
【0152】
印刷層14は、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、レーザビーム乾式電子写真印刷、溶融型または昇華型熱転写印刷等の各種印刷法により形成することができる。
【0153】
印刷層14を形成するのに用いるインクは、特に限定されず、例えば、油性インク、水性インク、光硬化型インク(紫外線硬化型インク、電子線硬化型インク)等が挙げられる。特に光硬化型インクを用いて形成されたものである場合、粘着シート10が水で濡れた場合であっても好適な印刷状態を保持することができる。
【0154】
紫外線硬化型インクとしては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等のオリゴマー、紫外線重合開始剤や顔料等の着色剤、分散剤、添加剤、単官能性または多官能性のモノマー等が配合されたもの等が挙げられる。印刷層14を紫外線硬化型インクで形成する場合には、当該インクを用いて印刷した後、紫外線(UV)ランプによりUVを照射して硬化させる。インクとして光硬化型インクを用いることにより、製造工程の無溶剤化が可能となり、環境に留意しつつ、印刷層14をより安価にかつ生産効率よく製造することができる。また、インクの乾燥に要する時間を省略することができ、粘着シート10の生産性をより優れたものとすることができる。
【0155】
図示の構成では、印刷層14が基材11の全面に設けられているが、印刷層14は、基材11の表面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0156】
[2-5]粘着シートの製造方法
粘着シート10は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、剥離ライナー13に粘着剤層12を構成する粘着剤組成物を付与する粘着剤組成物付与工程と、剥離ライナー13に付与された粘着剤組成物上に基材11を被覆する転写工程とを備える方法を用いて好適に製造することができる。
【0157】
粘着剤組成物付与工程では、剥離ライナー13に、粘着剤と有効成分とを含む粘着剤組成物を付与する。
【0158】
通常、粘着剤組成物には、予め上述した架橋剤が含まれている。また、粘着剤組成物には、必要に応じて、乳化剤やその他の成分が添加されている。
【0159】
粘着剤組成物は、公知の塗工方法により、剥離ライナー13に塗工することができる。
塗工方法としては、例えば、カーテンコーター、ホットメルトコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、グラビアコーター、エアナイフコーター等の塗布装置による方法を採用することができる。
【0160】
本工程では、剥離ライナー13に付与された粘着剤組成物から、希釈に使用した水や有機溶媒を除去してもよい。
【0161】
転写工程では、剥離ライナー13に付与された粘着剤組成物上に基材11を被覆する。これにより、粘着剤組成物により形成された粘着剤層12が基材11に転写される。
【0162】
上記の説明では、粘着剤組成物を剥離ライナー13上に付与した後に基材11に転写する場合について説明したが、粘着剤組成物を基材11上に直接的に付与してもよい。
【0163】
また、上記の説明では、有効成分を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層12を形成した場合について代表的に説明したが、有効成分を含まない粘着剤組成物を用いて粘着剤層12を形成し、粘着剤層12の表面に、有効成分を含む組成物を接触させることで、粘着剤層12中に有効成分を拡散させてもよい。
【0164】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されない。
【0165】
例えば、本発明に係る粘着シートは、基材と粘着剤層との間に、少なくとも1層の中間層を有していてもよい。また、基材の外表面側に少なくとも1層のコート層が設けられていてもよい。
【0166】
また、前述した実施形態では、印刷層が基材の外表面、すなわち、粘着剤層に対向する面とは反対の面に設けられている場合について説明したが、印刷層の形成部位は、特に限定されず、例えば、基材の粘着剤層に対向する面に設けられていてもよい。また、上記のような中間層やコート層を有する場合、印刷層は、これらの表面に設けられていてもよい。また、本発明において、粘着シートは、印刷層を有していなくてもよい。
【0167】
また、前述した実施形態では、基材が単層体である場合について代表的に説明したが、基材は、複数の層を備える積層体であってもよい。
【0168】
また、前述した実施形態では、粘着剤層が単層体である場合について代表的に説明したが、粘着剤層は、複数の層を備える積層体であってもよい。
【0169】
また、例えば、本発明の粘着シートは、いかなる方法で製造されたものであってもよく、前述した実施形態で述べたような方法で製造されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0170】
10…粘着シート
11…基材
111…第1の面
112…第2の面
12…粘着剤層
121…第1の面
122…第2の面
13…剥離ライナー
14…印刷層
100…被着体
101…汚れ