(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080230
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20230601BHJP
B60Q 1/12 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/12 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065015
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2019042217の分割
【原出願日】2019-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018185203
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 清隆
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 範彦
(57)【要約】
【課題】明暗境界による見づらさを軽減し、多様な配光パターンを形成する車両用前照灯を提供する。
【解決手段】光源を有する空間光変調器と、前記空間光変調器を制御する制御装置とを備え、前記光源からの出射光を、空間光変調器を介して前方に照射することにより所望の配光パターンを形成する車両用前照灯において、前記制御装置による前記空間光変調器の制御により、照射する所望の配光パターン内に、高光度領域と、前記高光度領域の外縁に隣接して前記高光度領域よりも光度の低い低光度領域とが形成され、前記低光度領域は、前記高光度領域の外縁から前記低光度領域の外側へ向かって光度が階調的に低下するよう構成されており、前記制御装置は、該制御装置が搭載された車両の走行状況に適応させて、前記高光度領域及び前記低光度領域の大きさ、光度、位置の少なくとも一つを相対的に変化させるよう前記空間光変調器を制御することを特徴とする車両用前照灯を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する空間光変調器と、前記空間光変調器を制御する制御装置と、を備え、前記光源からの出射光を、前記空間光変調器を介して前方に照射することにより所望の配光パターンを形成する車両用前照灯において、
前記制御装置による前記空間光変調器の制御により、照射する所望の配光パターン内に、高光度領域と、前記高光度領域の外縁に隣接して前記高光度領域よりも光度の低い低光度領域とが形成され、
前記低光度領域は、前記高光度領域の外縁から前記低光度領域の外側へ向かって光度が階調的に低下するよう構成されており、
前記制御装置は、該制御装置が搭載された車両の走行状況に適応させて、前記高光度領域及び前記低光度領域の大きさ、光度、位置の少なくとも一つを相対的に変化させるよう前記空間光変調器を制御し、
前記空間光変調器は、個別に独立して制御可能な複数の前記光源がマトリクス状配置された光源ユニットであり、
前記制御装置が前記光源の点消灯及び前記光源の輝度を個別に制御することにより、前記光源の照射光から所望の配光パターンが形成される、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記光源ユニットにおいて、単位面積あたりに存在する前記光源のうち実際に点灯する光源の割合を第1点灯率として、所望の配光パターン内の所定領域の形成に対応する部位の第1点灯率を、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する部位の第1点灯率よりも下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記光源の輝度を、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する前記光源の輝度よりも、下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/高光度領域が形成される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記制御装置は、自身が搭載された前記車両の走行速度が所定値を超えた際には、前記高光度領域を縮小させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記制御装置は、自身が搭載された前記車両の走行速度が所定値を超えた際には、前記高光度領域の光度を高める制御を行う、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記制御装置は、自身が搭載された前記車両の走行速度が所定値を超えた際には、前記低光度領域を減少させ、前記低光度領域の外縁に前記低光度領域の最小光度領域と等しい又は以下の光度を備える第2低光度領域を形成する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記制御装置は、自身が搭載された前記車両が曲路へ向かい際には、前記曲路の屈曲方向とは左右逆の方向に形成される前記低光度領域を増大させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記制御装置は、自身が搭載された前記車両が曲路へ向かう際には、前記曲路の屈曲方向とは左右同じの方向に形成される前記低光度領域を減少させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
前記制御装置は、自身が搭載される車両の操舵角が増加するに従って、前記高光度領域を前記空間光変調器の照射可能エリアの端部に移動させ、かつ、前記高光度領域の光度を低下させる、
ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は車両に搭載されて光を照射する車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の配光パターンにおいて、視認性向上のため、配光パターン内にスポット的な高光度領域が形成されている。例えば、特許文献1では、低輝度光源と高輝度光源の両方を備え、スポット的な高光度領域を配光パターン内に形成しつつ、車両の運転状態に適応させて多様な配光パターンを形成する車両用前照灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スポット的な高光度領域は、低光度領域との明暗境界を明確にし、逆に運転手に見づらさをもたらしてしまう。
【0005】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、必要な部分の高光度領域を備えつつ、明暗境界による見づらさを軽減し、多様な配光パターンを形成する車両用灯具を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の構成による車両用前照灯のある態様では、光源を有する空間光変調器と、前記空間光変調器を制御する制御装置とを備え、前記光源からの出射光を、空間光変調器を介して前方に照射することにより所望の配光パターンを形成する車両用前照灯において、前記制御装置による前記空間光変調器の制御により、照射する所望の配光パターン内に、高光度領域と、前記高光度領域の外縁に隣接して前記高光度領域よりも光度の低い低光度領域とが形成され、前記低光度領域は、前記高光度領域の外縁から前記低光度領域の外側へ向かって光度が階調的に低下するよう構成されており、前記制御装置は、該制御装置が搭載された車両の走行状況に適応させて、前記高光度領域及び前記低光度領域の大きさ、光度、位置の少なくとも一つを相対的に変化させるよう前記空間光変調器を制御するよう構成した。この態様によれば、明暗境界がぼやかされ、必要な部分の高光度領域を備えつつ、明暗境界による見づらさを軽減し、多様な配光パターンを形成できる。
【0007】
またある態様では、前記空間光変調器は、前記光源から出射した光を反射する二軸方向に回動可能なミラーを有し、前記ミラーを回動しながら反射した前記光源からの光を走査する走査機構であり、前記制御装置が、前記光源の点消灯のタイミング、前記光源の輝度、前記ミラーの回動方向、前記ミラーの回動範囲、および前記ミラーの回動速度を制御することにより、前記走査機構からの走査光が積層されて所望の配光パターンが形成されるよう構成した。
【0008】
またある態様では、前記ミラーによる反射光が所望の配光パターン内の所定の領域を走査する際に、所望の配光パターン内の該所定領域外での前記ミラーの回動速度に比して前記ミラーの回動速度上げる/下げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0009】
またある態様では、前記ミラーによる反射光が所望の配光パターン内の所定領域を走査する際に、前記光源の輝度を、所望の配光パターン内の該所定領域外での前記光源の輝度に比して下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0010】
またある態様では、前記空間光変調器は、前記光源から出射した光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転し、回転しながら反射した前記光源の光を走査する反射面が設けられた回転リフレクタを有する回転機構であり、
前記制御装置が、前記光源の点消灯のタイミング、前記光源の輝度、及び前記回転リフレクタの回転速度を制御することにより、前記回転リフレクタからの反射光が所定領域に照射されて所望の配光パターンが形成されるよう構成した。
【0011】
またある態様では、前記回転リフレクタによる反射光が所望の配光パターン内の所定領域を走査する際に、所望配光パターン内の該所定領域外を走査する際の前記回転リフレクタの回転速度に比して、前記回転リフレクタの回転速度を上げる/下げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0012】
またある態様では、前記回転リフレクタによる反射光が所望の配光パターン内の所定領域を走査する際に、所望配光パターン内の該所定領域外を反射光が走査する際の前記光源の輝度よりも、前記光源の輝度を下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0013】
またある態様では、前記回転リフレクタは、その反射光の走査速度が局地的に早まる又は遅くなるよう構成された湾曲した反射面を複数有し、局理的な反射光の分散/集中により、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるゆう構成した。
【0014】
またある態様では、前記空間光変調器は、個別に独立して制御可能な複数の前記光源がマトリクス状配置された光源ユニットであり、前記制御装置が前記光源の点消灯及び前記光源の輝度を個別に制御することにより、前記光源の照射光から所望の配光パターンが形成されるよう構成した。
【0015】
またある態様では、前記光源ユニットにおいて、単位面積あたりに存在する前記光源のうち実際に点灯する光源の割合を第1点灯率として、所望の配光パターン内の所定領域の形成に対応する部位の第1点灯率を、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する部位の第1点灯率よりも下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0016】
またある態様では、所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記光源の輝度を、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する前記光源の輝度よりも、下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/高光度領域が形成されるよう構成した。
【0017】
またある態様では、前記空間光変調器は、バックライトとしての前記光源と、第1液晶層とを備えた透過型液晶装置であり、 前記第1液晶層は与えられた印加電圧の大きさに応じて、前記バックライトから入射した光を透過させる第1状態と、前記バックライトから入射した光の変更を透過させない第2状態とが、単位要素ごとに諧調的に切替え可能であり、 前記制御装置が前記第1晶層へ印加する電圧を単位要素ごとに制御して単位要素ごとの透過率を制御することにより、前記バックライトから出射して前記第1液晶層で透過した光から所望の配光パターンが形成されるよう構成した。
【0018】
またある態様では、所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記第1液晶層の所定部位においては、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する前記第1液晶層の部位への印加電圧よりも、印加電圧を下げて/上げて、前記バックライトから入射した光の透過率を上げる/下げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0019】
またある態様では、前記第1液晶層において、単位面積当たりに存在する単位要素のうち光を透過させる第1状態である単位要素の割合を第2点灯率として、所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記第1液晶層の所定部位においては、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する第1液晶層の部位における第2点灯率よりも、第2点灯率を下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0020】
またある態様では、前記空間光変調器は、フロントライトとしての前記光源と第2液晶層とを備えた反射型液晶装置であり、 前記第2液晶層は与えられた印加電圧の大きさに応じて、前記フロントライトから入射した光を反射させる第1状態と、前記フロントライトから入射した光の変更を反射させない第2状態とが、単位要素あたりで諧調的に切替え可能な反射型液晶装置であり、 前記制御装置が前記第2液晶層へ印加する電圧を単位要素ごとに制御して前記第2液晶層の反射率を単位要素ごとに制御することにより、前記フロントライトから出射して前記第2液晶層で反射した光から所望の配光パターンが形成されるよう構成した。
【0021】
またある態様では、前記制御装置が、所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記第2液晶層の所定部位においては、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する前記第2液晶層の部位への印加電圧よりも、印加電圧を上げて/下げて、前記フロントライトから入射した光の反射率を上げる/上げる制御を行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0022】
またある態様では、前記第2液晶層において、単位面積当たりに存在する単位要素のうち光を反射させる第1状態である単位要素の割合を第3点灯率として、所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記第2液晶層の所定部位おいては、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する、前記第2液晶層の部位における第3点灯率よりも、第3点灯率を下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0023】
またある態様では、前記空間光変調器は、回動することにより個別に入射した光を選択的に反射可能な複数の反射素子が表面に設けられた光偏向装置を有する光偏向機構であり、前記光偏向機構は、前記光源からの出射光を前記反射素子により選択的に車両前方へ反射可能であるよう配置され、前記制御装置が、前記光源の点消灯のタイミング、及び前記反射素子の回動を個別に制御することにより所望の配光パターンが形成されるよう構成した。
【0024】
またある態様では、前記光偏向機構において、単位面積あたりに存在する前記反射素子のうち光源からの光を車両前方に反射するよう選択される前記反射素子の割合を光偏向率として、所望の配光パターン内の所定領域の形成に対応する部位の光偏向率を、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する部位の光偏向率よりも下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/前記高光度領域が形成されるよう構成した。
【0025】
またある態様では、前記反射素子は回動制御により車両前方への反射の選択/非選択を高速で切替え可能であり、所望の配光パターン内の所定領域に対応する前記反射素子においては、所望の配光パターン内の該所定領域外に対応する前記反射素子よりも車両前方への反射が選択される時間比率を下げる/上げる制御を前記制御装置が行うことにより、前記低光度領域/高光度領域が形成されるよう構成した。上記のように構成することで、配光パターンの光度及び光度勾配が局地的かつ諧調的に調整可能となり、配光パターン内の所望の領域に、低輝度領域/高光度領域を形成できる。
【0026】
またある態様では、前記制御装置は、自身が搭載された車両の走行速度が所定値を超えた際には、前記高光度領域を増大させる制御を行うよう構成した。この態様によれば、高速運転時の見易さが向上し、状況に応じた視認性の向上がなされる。
【0027】
またある態様では、前記制御装置は、自身が搭載された車両の走行速度が所定値を超えた際には、前記高光度領域の光度を高める制御を行うよう構成した。この態様によれば、高速運転時には遠方が強調され、状況に応じた視認性の向上がなされる。
【0028】
またある態様では、自身が搭載された車両の走行速度が所定値を超えた際には、前記低光度領域を減少させ、前記低光度領域の外縁に前記低光度領域の最小光度領域と等しい又は以下の光度を備える第2低光度領域を形成する制御を行うよう構成した。この態様によれば、曲路での進行方向が明るくなり視認性が向上する。
【0029】
またある態様では、前記制御装置は、自身が搭載された車両が曲路へ向かい際には、前記曲路の屈曲方向とは左右逆の方向に形成される前記低光度領域を増大させる制御を行うよう構成した。この態様によれば、曲路での進行方向が明るくなり視認性が向上する。
【0030】
またある態様では、前記制御装置は、自身が搭載された車両が曲路へ向かう際には、前記曲路の屈曲方向とは左右同じの方向に形成される前記低光度領域を減少させる制御を行うように構成した。この態様によれば、配光パターン端部の明暗強調がなくなり、運転時の違和感が改善される。
【0031】
またある態様では、前記制御装置は、自身が搭載される車両の操舵角に応じて、前記高光度領域の光度を低下させる制御を行うよう構成した。この態様によれば、操舵角が大きい場合に発生する配光パターン端部での明暗強調が緩和され、曲路での運転手の違和感が改善される。
【0032】
またある態様では、前記制御装置は、自身が搭載される車両周囲の状況に適応させて、前記配光パターン内に、その周辺の領域よりも光度の低い第3低光度領域を形成する制御を行うよう構成した。この態様によれば、グレアを防止できる。
【0033】
またある態様では、前記制御装置は、前記第3低光度領域の光度が、前記第3低光度領域の外縁から該第3低光度領域の内側に向かうほど低下するよう制御を行うよう構成した。この態様によれば、明暗境界による視界の違和感が改善される。
【0034】
またある態様では、前記制御装置は、前記車両周囲の状況に適応させて、前記第3低光度領域の光度勾配を調整する制御を行うよう構成した。この態様によれば、より注視すべき対象が明確となり、より深い注意を運転手に促すことができる。
【0035】
またある態様では、前記制御装置は、前記車両周囲の状況に適応させて、前記配光パターン内に、その周辺の領域よりも光度の高い第2高光度領域を形成する制御を行うよう構成した。この態様によれば、注視すべき対象が明確となり、運転の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、必要な部分の高光度領域を備えつつ、見づらさを軽減し、多様な配光パターンを形成する車両用前照灯を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係る車両用前照灯を説明するための概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車両前照灯(走査機構)の平面図である。
【
図4】描画パターンの点灯領域の一例を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る車両用前照灯(回転機構)の平面図である。
【
図8】同車両用前照灯の変形例であるポリゴンミラーの一例を示す平面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る車両用前照灯(光源ユニット)の斜視図である。
【
図10】第4の実施形態に係る車両用前照灯(透過型液晶装置)の平面図である。
【
図11】第5の実施形態に係る車両用前照灯(反射型液晶装置)の平面図である。
【
図12】第6の実施形態に係る車両用前照灯(光偏向装置)の平面図である。
【
図13】光偏向装置本体を示し、(A)が正面図、(B)が
図13(A)のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【
図14】車両用前照灯の構成を示すブロック図である。
【
図15】(A)は基本配光パターンを示す。(B)は
図15(A)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。
【
図16】(A1)(A2)は配光パターンの一例である。(B1)は
図16(A1)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。(B2)は
図16(A2)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。
【
図17】(A1)(A2)は配光パターンの一例である。(B1)は
図17(A1)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。(B2)は
図17(A2)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。
【
図18】ステアリングの操舵角に対する高光度領域A1の光度の変化を示す。
【
図19】(A1)(A2)は配光パターンの一例である。(B1)は
図19(A1)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。(B2)は
図19(A2)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。
【
図20】(A1)(A2)は配光パターンの一例である。(B1)は
図20(A1)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。(B2)は
図20(A2)中のB-B線に沿った光度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0039】
(前照灯の構成)
図1は本発明の実施形態にかかる車両用前照灯の概略を示す。車両用前照灯1は、右側前照灯であり、灯室内に光源30を有する空間光変調器40、制御装置10、および投影光学部材50を備える。
【0040】
光源30は、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、EL(Electro Luminescence)素子などの半導体発光素子や、電球、白熱灯(ハロゲンランプ)、放電管(ディスチャージランプ)等であり、後述する空間光変調器40の具体的な構成に合わせたものが用いられる。
【0041】
投影光学部材50は、例えば、前方側表面及び後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなり、投影光学部材50の後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として車両用前照灯1前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影光学部材50は、その後方焦点が空間光変調器40の光の出射面(あるいは反射面)近傍に位置するように配置される。
【0042】
空間光変調器40は光源30の照射光を用いて所望の描画パターンを形成可能であり、投影光学部材50の光軸上に配置される。空間光変調器40によって形成された描画パターンが投影光学部材50を介して車両の前面に配光パターンとして投影される。
【0043】
制御装置10は、空間光変調器40、及びこれに備えられた光源30を制御して、所望の配光パターン内に高光度領域A1および高光度領域A1よりも光度の低い低光度領域A2を形成させる。また制御装置10は搭載された車両の走行状況に適応させて配光パターンを決定し、高光度領域A1及び低光度領域A2の大きさ、光度、位置の少なくとも一つを相対的に変化させる(後述)。
【0044】
(第1の実施形態:走査機構)
空間光変調器40の具体的な形態例について説明する。
図2は第1の実施形態に係る車両用前照灯101であり、空間光変調器40として走査機構140を用いている。
【0045】
走査機構140は、光源130と走査機構本体120を備える。光源130はレーザーダイオードであり、光源130からの出射光は集光レンズにより集光して平行光として走査機構本体120に入射する。走査機構本体120は入射光を二軸方向に回動可能に支持された反射鏡を有し、反射鏡を回動しながら反射した光を走査することで、所望の描画パターンを形成する。
【0046】
図3は走査機構本体120の斜視図である。本実施形態では一例としてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを採用している。
【0047】
走査機構本体120は、ベース157、第1回動体158、第2回動体159、第1トーションバー150、第2トーションバー151、一対の第1永久磁石152、一対の第2永久磁石153、および端子部154を有する。第2回動体159は、板状に形成された反射鏡であり、第2回動体159の前面には、銀蒸着やスパッタリング処理などによって反射面156が形成される。
【0048】
板状の第1回動体158は、第1トーションバー150によって左右(Y軸周り)に回動可能に支持されて、第2回動体159は、一対の第2トーションバー151によって上下(X軸周り)に回動可能な状態で第1回動体158に支持される。一対の第1永久磁石152及び一対の第2永久磁石153は、ベース157において一対の第1及び第2トーションバー(150、151)の延びる方向にそれぞれ設けられる。一対の第1及び第2回動体(158、159)にはそれぞれ端子部154を介して通電される第1及び第2のコイル(図示せず)が設けられている。不図示の第1及び第2のコイルは、制御装置110によってそれぞれ独立した電通制御をされる。
【0049】
第1回動体158は、第1コイル(図示せず)への通電オン又は通電オフに基づいて第1トーションバーの軸線(Y線)回りに往復傾動し、第2回動体159は、第2コイル(図示せず)への通電のオン又は通電オフに基づいて第2トーションバー151の軸線(X軸)回りに往復傾動する。反射面156は、第1又は第2コイル(図示せず)への電通に基づいて上下左右に傾動して光源130からの入射光を反射させる。
【0050】
制御装置110は、光源130の出力、走査機構本体120の各コイルの通電を制御する。即ち、制御装置110は光源130の点消灯のタイミング、光源130の輝度、及び走査機構本体120の反射面156の回動方向、回動範囲、回動速度を制御する。
【0051】
走査機構本体120は、光源130から出射された光が反射面156で反射され投影光学部材50に入射可能な位置に配置されている。走査機構本体120は、反射面156往復運動により、光で投影光学部材50の入射面を走査する。走査された光が積層されて描画パターンとして形成され、投影光学部材50を介して所望の投影場所に照射される。
【0052】
なお、制御装置110は、走査機構本体120による光での走査に合わせて、光源130の光の出射を制御してもよい。例えば、走査機構本体120は、反射面156の回動位置が、形成すべき描画パターンに係る領域よりも広い範囲で反射面156を回動させる。そして、制御装置110は、反射面156の回動位置が、形成すべき描画パターンに係る領域と対応する位置にあるとき光源130を点灯させる。このような制御によっても、所望の描画パターンを形成することができる。
【0053】
図4は走査機構140によって形成される描写パターンの一例であるロービーム配光に係る点灯領域Laを示す図である。点灯領域Laは投影光学部材50の入射面に形成される。
【0054】
本実施形態に係る走査機構140は、矩形の走査範囲SA内を光で走査可能である。制御装置110は、走査機構140の走査位置が点灯領域La内である場合に、光源130を点灯させ、点灯領域La外にある場合に、光源130を消灯させる。線像を上下に積層された点灯領域Laは、投影光学部材50を通過して、車両前方の路面に照射される。点灯領域Laは投影光学部材50を介して上下左右反転されて投影され、ロービーム配光として形成される。
【0055】
ここで、例えば点灯領域La内の領域Lbを光が走査する際には、制御装置110が光源130輝度を下げる制御を行うことで、形成される配光パターン内に、他の領域よりも光度の低い低光度領域A2を形成することができる。あるいは逆に光が領域Lbを走査するときのみ、制御装置110が光源130の輝度を上げる制御を行うことで、形成される配光パターン内に他の領域よりも光度の高い高光度領域A1を形成することもできる。光源130の輝度は、制御装置110の出力調整により諧調的に制御され、光の走査のタイミングに合わせて光源130の輝度を制御することにより、配光パターン内に所望の光度勾配をもつ領域を形成することができる。
【0056】
あるいは、反射面156の回動速度を調整することにより、所望の配光パターン内に低光度領域A2/高光度領域A1を形成することができる。光の走査速度が遅くなると、その分光が残像として長く留まるため、形成される配光パターンの光度は高まる。領域Lbを光が走査するときのみ、制御装置110が反射面156の回動速度を下げる制御を行うことで、ロービーム配光内に高光度領域A1を形成することができる。逆に領域Lbにおいては反射面156の回動速度を上げる制御が行われると、ロービーム配光内に低光度領域A2が形成される。第1及び第2コイル(図示せず)への通電量を調整することで、形成される配光パターンの光度を制御できる。
【0057】
(第2の実施形態:回転機構)
走査機構140に限られず、空間光変調器40には様々な周知の技術を用いることができる。
図5および
図6は第2の実施形態に係る車両用前照灯201であり、空間光変調器40として回転機構240を用いた構成を示す。
図6では制御装置210を省略している。
【0058】
回転機構240は、回転リフレクタ220と、光源230とを備える。回転リフレクタ220は、不図示のモータ等の駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ220は、光源230から出射した光を回転しながら反射し、所望の配光パターンを形成するように構成された反射面を備えている。
【0059】
回転リフレクタ220は、反射面として機能する、形状の同じ3枚のブレード220aが筒状の回転部220bの周囲に設けられている。回転リフレクタ220の回転軸Rは、光軸Mに対して斜めになっており、光軸Mと光源230とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向走査する光源230の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。ここで、走査平面とは、例えば走査光である光源230の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。
【0060】
回転リフレクタ220のブレード220aの形状は、反射による光源230の二次光源が投影光学部材50の焦点付近に形成されるように構成されている。さらに、ブレード220aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれ、光軸Mと反射面とがなす角が変化するようにねじられた形状を有している。これにより、回転リフレクタ220は、光源230の光を用いて車両前方を左右方向に走査することが可能となる。
【0061】
上記のように構成することで、回転機構240は、光源230の光を回転リフレクタ220で反射させ、反射した光で前方を走査することで実質的に水平方向に横長形状の配光パターンを形成することができる。
【0062】
制御装置210は、光源230の点消灯のタイミング、光源230の輝度、及び回転リフレクタ220の回転速度を制御する。ここで、光源230の点消灯のタイミングや輝度の変化を回転リフレクタ220の回転と同期させることで、所望の配光パターンを形成することができる。
【0063】
即ち、走査機構140同様、所望の配光パターン内の所定領域を光が走査する際には、光源230の輝度を下げる/上げる制御を行うことにより、配光パターン内に低光度領域A2/高光度領域A1を形成できる。あるいは、回転リフレクタ220の回転速度を上げる/下げることにより、低光度領域A2/高光度領域A1を形成してもよい。回転速度は諧調的な制御であるため、形成される配光パターンの光度勾配の制御が可能である。
【0064】
図7は、回転機構240の変形例として、ポリゴンミラー220Aを用いた構成を示す。略多角柱形状であるポリゴンミラー220Aは、回転軸Rを鉛直方向にもち、水平方向に配置された光源230からの出射光を、反射面として機能する側面で回転しながら反射して、反射光を水平方向へ走査して配光パターンを形成する。
【0065】
図8はポリゴンミラー220Aの例を平面図で示している。従来公知の構成ではポリゴンミラーは正多角柱形状であるが、本実施形態では、側面の一部は平面ではなく湾曲した曲面、あるいは平面であっても異なる大きさの側面を有する非正多角柱となっている。反射面である側面が湾曲していることから、走査光の速度は一定とならず局地的に遅く/早くなり、あるいは不揃いな平面により反射光が分散/集中して、所望の配光パターン内に局地的な低光度領域A2/高光度領域A1が形成される。
【0066】
ポリゴンミラー230A1、230A2のように側面の曲率は曲面ごとで異ならしめる、あるいはポリゴンミラー230A3のように、正多角柱ではなく一辺の長さ(大きさ)の異なる多角柱を用いても良く、多様な形状を用いることができる。
【0067】
(第3の実施形態:マトリクスLED)
図9は第3の実施形態に係る車両用前照灯301であり、空間光変調器40としてマトリックスLED340を用いた構成を示す。
【0068】
マトリックスLED340は、複数の光源330がマトリックス状に配置されたもので、各光源330の点消灯のタイミングや点灯強度(輝度)は、個々に制御装置310で制御される。光源330は白色LEDであり、どの光源330を点灯させるかの選択、さらに点灯させる光源330の輝度を調整することにより、所望の配光パターンが形成できる。
【0069】
例えば、所望の配光パターン内のある領域の形成に寄与する光源330の輝度を他よりも下げる/上げる制御を行うことで、所望の配光パターン内に低光度領域A2/高光度領域A1を形成することが出来る。
【0070】
また輝度調整に代わって、光源330の全ての輝度は一律同じとして、点灯する光源330を間引くことで、光度勾配を表現できる。即ち、マトリックスLED340の単位面積あたりに存在する光源330のうち実際に点灯する光源の割合を第1点灯率E1として、所望の配光パターン内のある領域に対応する、マトリックスLED340の所定領域の第1点灯率E1を、他の領域での第1点灯率E1よりも下げる/上げる制御を行うことにより、配光パターンの光度を制御して、低光度領域A2/高光度領域A1を形成することもできる。
【0071】
(第4の実施形態:透過型液晶装置)
図10は第4の実施形態に係る車両用前照灯401であり、空間光変調器として透過型液晶装置440を用いた構成を示す。
【0072】
透過型液晶装置440は、光源として白色光を出射するバックライト430及び第1液晶層420備える。複数の異なる光色のための個別のカラーフィルターを有さないため、単色の透過型液晶装置として構成されることで、高い光透過率を有する。
【0073】
第1液晶層420は、バックライト430の光が照射する面前、かつ投影光学部材50の背面の後方焦点位置に配置される。バックライト430は蛍光灯やLEDなど、従来公知のバックライトを使用することができる。第1液晶層420は、互いに対して90度回転して配置されている二つの偏光フィルターと、二つの偏光フィルターの間に配置されるマトリクス状に形成している液晶素子を有する。液晶素子にかける電圧を調整することで、バックライト430からの入射光を透過させる光の透過率の高い第1状態と、入射光を透過させない透光率の低い状態と作り出すことが可能である。この二つの状態は印加される電圧の大きさにより中間的な状態を諧調的に作り出す(液晶素子の単位要素ごとに透過率を諧調的に変化せる)こともでき、第1液晶層420の光の透過率を調整して車両前方に照射される光の光度を調整することができる。制御装置410が液晶素子のマトリクスの単位要素(画素)ごとに独立して電圧を制御することで、所望のモノクロ画像(本実施形態においては配光パターン)を形成することができる。透過型液晶装置440には、このようなTN型液晶のみならず、幅広く公知の液晶表示装置を用いることができる。
【0074】
ここで形成される配光パターン内のある領域においては、その領域に対応する位置にある第1液晶層420(液晶素子)に印加する電圧を、他の領域の印加電圧よりも下げる/上げることで、バックライト430から入射した光の透過率を下げる/上げる制御を行うことにより、配光パターン内に低光度領域A2/高光度領域A1を形成することができる。
【0075】
あるいは、液晶素子に印加する電圧はどの領域においても一律であるとして、点灯させる第1液晶層420の液晶素子を間引くことで、光の濃淡を表現することができる。即ち、第1液晶層420の単位面積あたりに存在する単位要素(画素)のうち、光を透過させる単位要素の割合を第2点灯率E2として、第1液晶層420のある領域においては第2点灯率E2を他の領域よりも下げる/上げる制御を行うことで、所定の配光パターン内に低光度領域A2/高光度領域A1を形成することができる。
【0076】
(第5の実施形態:反射型液晶装置)
図11は第5の実施形態に係る車両用前照灯501であり、空間光変調器として反射型液晶装置540を用いた構成を示す。
【0077】
反射型液晶装置540は、光源として白色光を出射し、かつ光を透過する性質を有するフロントライト530、およびフロントライト530背面に配置される第2液晶層520を備える。
【0078】
第2液晶層520は、互いに対して90度回転して二つの偏光フィルターと、二つの偏光フィルターの間に配置するマトリクス状に形成している液晶素子と、さらにフロントライト530の配置される前面と対向する面にアルミニウムを材料とした反射膜とを有する。第1液晶層420同様、液晶素子に印加される電圧の大きさを調整することで、入射光を透過させる光の透過率の高い第1状態と、透過させない透過率の低い第2状態との、その中間状態を諧調的に作り出すことができる。制御装置510が液晶素子のマトリクスの単位要素(画素)ごとに独立して電圧を制御することで、これを利用して所望のモノクロ画像(本実施形態においては配光パターン)を形成することができる。第1液晶層420と異なり反射膜を有するため、形成された光は反射膜で光の入射面であるフロントライト530へ向かって反射し、フロントライト530を透過してフロントライト530露出面から出射する。即ち、液晶素子に印加する電圧を制御することで、第2液晶層520の光の反射率を制御することができる。
【0079】
フロントライト530は従来公知のフロントライトを使用することができ、本実施形態では一例としてLED530aと導光体530bから構成されるサイドライト式を使用している。LED530aから導かれた光は、導光体530bの中を反射しながら伝搬して第2液晶層520に入射し、一部が第2液晶層520の反射膜で反射し、もう一度フロントライト530に入射して、フロントライト530表面から外部に出射する。導光体530bの表面には、導光体530bに導かれた光が効率よく第2液晶層520に入射するように凹凸が形成されている。導光体530bの凹凸は微細加工としてもよい。フロントライト530は、光源からの光を第2液晶層520に入射させる光学系を用いても良い。
【0080】
ここで反射型液晶装置540によって形成される配光パターン内のある領域においては、その領域の形成に対応する位置にある液晶素子に印加する電圧を、他の液晶素子への印加電圧よりも下げる/上げることで、フロントライト530から入射した光の第2液晶層520での反射率を下げる/上げる制御を行うことにより、低光度領域A2/高光度領域A1を形成することができる。
【0081】
あるいは、液晶素子への印加電圧は一律同等として、点灯させる第2液晶層の単位要素を間引くことで、光の濃淡を表現することができる。即ち、第2液晶層520の単位面積あたりに存在する液晶素子の単位要素(画素)のうち、光を反射させる画素の割合を第3点灯率E3として、第2液晶層のある領域においては第3点灯率E3を他の領域よりも下げる/上げる制御を行うことで、所定の配光パターン内に低光度領域A2/高光度領域A1を形成することができる。
【0082】
(第6の実施形態:光偏向装置)
図12は第6の実施形態に係る車両用前照灯601であり、空間光変調器として光偏向装置640を用いた構成を示す。
【0083】
光偏向装置640は、光源630と、反射光学部材650と、光偏向装置本体620と、光吸収部材660とを備える。
【0084】
反射光学部材650は、光源630から出射した光を光偏向装置本体620の反射面に導くように構成されており、内面が所定の反射面650aとなっている反射鏡が用いられる。なお、光源630から出射した光を光偏向装置本体620の反射面に直接導ける場合には、反射光学部材650を設けなくても良い。
【0085】
光偏向装置本体620は、投影光学部材50の光軸上に配置され、光源630から出射した光を選択的に投影光学部材50へ反射するように構成されている。
【0086】
光偏向装置本体620は、複数の微小なミラー素子621をマトリックス状に表面に配列したものである。これらの複数のミラー素子621の反射面の角度をそれぞれ制御することで、光源630から出射した光の反射方向を選択的に変えることができる。つまり、光源630から出射した光の一部を投影光学部材50へ向けて出射し、それ以外の光を配光として有効に利用されないような方向へ向けて反射することができる。ここで、有効に利用されないような方向とは、例えば、反射光の影響が少ない方向(例えば所望の配光パターンの形成に殆ど寄与しない方向)や光吸収部材(遮光部材)に向かう方向と捉えることができ、本実施形態においては、光吸収部材660へ向かう方向を指す。
【0087】
光吸収部材660は、表面に無反射塗装が施されており、光偏向装置本体620からの反射光を反射も透過もさせずに吸収する。
【0088】
光源630から出射した光は、反射光学部材650の反射面650aによって光偏向装置本体620へ反射され、一部が光偏向装置本体620によって前方に反射され(その他の光は光吸収部材660に向かい反射されて吸収される)、投影光学部材50を通過して、車両前方に出射する。
【0089】
光偏向装置本体620について、詳しく説明する。
図13(A)に示すように、光偏向装置本体620は、複数の微小なミラー素子621がマトリックス状に配置されたマイクロミラーアレイ622を備える。ミラー素子621は四角形(例えば正方形、ひし形、長方形、平行四辺形など)であり、表面に光を反射させる反射面621aを有している。光偏向装置本体620は、ミラー素子621の反射面621aの前方側に配置された透明なカバー材623を有する。カバー材623は、例えば、ガラスやプラスティック等である。
【0090】
マイクロミラーアレイ622の各ミラー素子621は、光源630から出射された光を所望の配光パターンとして利用されるように投影光学部材50へ向けて反射する第1の状態としてのON状態(
図13(B)に示す実線位置)と、光源630から出射された光が配光として有効に利用されないように光吸収部材660へ向けて反射する第2の状態であるOFF状態(
図13(b)に示す破線位置)とに切り替え可能に構成されている。
【0091】
図12には、光偏向装置本体620のミラー素子621をON状態にした時の光偏向装置本体620による反射光(実線で示す)と、OFF状態にしたときの反射光(破線で示す)とが示されている。
【0092】
各ミラー素子621は、ミラー素子621をほぼ等分する回動軸を有している。各ミラー素子621は、回動軸を中心に、ON状態とOFF状態とを切り替え可能に構成されている。
【0093】
それぞれのミラー素子621のON/OFF状態を独立に制御して、光源630から出射した光の反射位置を選択的に変えることで、所望の投影画像や反射画像、配光パターン等を得ることができる。
【0094】
また、ミラー素子621の制御はON/OFFの2値制御であるが、ON/OFFの切り替えを高速で行った際のON/OFFの時間比率や、あるエリアでのON状態のミラー素子621を増加/減少させることによるON状態のミラー素子621の密度調整により、光の明暗の階調表現が可能である。即ち、投影画像をグレースケールで階調表現することができる。
【0095】
光偏向装置本体620の単位面積あたりに存在するミラー素子621のうち、ON状態となるミラー素子621の割合を光偏向率E4として、光偏向装置640によって形成される配光パターン内のある領域においては、その領域の形成に対応する位置にあるミラー素子621の光偏向率E4を他の領域よりも下げる/上げる制御を行うことで、所望の配光パターン内に低光度領域A/高光度領域A1を形成することができる。
【0096】
あるいは、ON/OFF操作でONとなる時間の比率を時間比率E5として、光偏向装置640によって形成される配光パターン内のある領域においては、その領域の形成に対応する位置にあるミラー素子621の時間比率E5を他の領域よりも下げる/上げる制御を行うことで、所望の配光パターン内に低光度領域A/高光度領域A1を形成することができる。
【0097】
また、投影画像をカラーで表現する場合には、光源630に赤色、緑色、青色等の三色以上の光源ユニットを用いて、時分割で光偏向装置本体620へ照射し、各ミラー素子621を、投影したい色が照射されているタイミングでON状態とする。ミラー素子621は1秒間に数千回の割合でON/OFF状態を切り替えることができるため、人間の目の錯覚(残像効果)によって、各ミラー素子621の反射光は混合光として認識される。光源ユニットの各色の点灯時間と、ミラー素子621のON/OFF時間比率を組み合わせて、様々なカラー画像が表現可能である。
【0098】
空間光変調器40として具体的な例を述べたが、これに限られず、多様な従来公知の構成を用いることができる。また各種空間変調器40の低光度領域A2および高光度領域A1の形成方法は組み合わせることができる。
【0099】
(ブロック図)
次に、
図14を用いて、制御装置10を中心とした車両用前照灯1の制御系の構成を説明する。制御装置10は、ハードウェア構成としてはコンピューターのCPUやメモリとをはじめとする素子や回路で構成され、ソフトウェア構成としては、コンピュータープログラム等によって実現される。メモリに記憶された制御プログラムをCPUにおいて実行し、各種制御信号を生成する。
【0100】
制御装置10は、空間光変調器40の制御を実施する。例えば走査機構140においては走査機構本体120の回動の範囲や回動速度、光源130の点消灯のタイミングや出力調整など、各形態に応じた制御を行い、所望の配光パターンを形成する。
【0101】
制御装置10には、制御装置10へ情報信号を入力するデバイスとして、道路情報通信システム11、速度計12、ターンシグナルランプスイッチ13、ステアリング動作検出機構14、雨滴センサ15、ナビゲーションシステム16、アクセル開度検出機構17、画像処理装置18が接続される。画像処理装置18には、道路監視カメラ9、車載カメラ19が接続される。
【0102】
道路情報通信システム11は、走行中の道路の雨量や、道路の凍結状況等、走行中の路面状況に関するデータをインターネット等の通信回線を介して受け、制御装置10に送る。
【0103】
速度計12は自車両の走行速度を、ターンシグナルランプスイッチ13は左右いずれのターンシグナルランプがONにされたかの信号を、ステアリング動作検出機構14はステアリングが左右いずれかの方向にどれだけ回されたかの信号を、雨滴センサ15は車両走行時の雨量に関する信号を、ナビゲーションシステム16は例えば図示しないGPSや地図データ等を有することにより自車両の現在位置を、アクセル開度検出機構17はアクセル踏み量を、それぞれ検知してデータ信号を制御装置10に送る。
【0104】
道路監視カメラ9には、交差点に配置される交差点カメラや、道路の近辺に設置されて、路面状況、歩行者、自転車、バイク、自動車等の車両、障害物等を動画または静止画で撮影する監視カメラなどが含まれ、車載カメラ19には、自車または他者に車載されて車両周辺を動画または静止画で撮影するカメラなどが含まれる。画像処理装置18は、インターネット等の通信回線を介して道路監視カメラ9に接続され、道路監視カメラ9による映像及び画像データを取得する。画像処理装置18は、車載カメラ19や道路監視カメラ9等によって撮影された映像等を解析処理したデータとして制御装置10に送る。
【0105】
制御装置10は、上記検出機器から受けとったデータ信号により、対向車、前方車両及び歩行者の位置、標識や看板などの再帰性反射物の位置、道路形状、天候などの、自車両の走行状態や自車両周囲の状態を把握し解析して、これら状態に基づいて適切な配光パターンを決定し、光源30と空間光変調器40に制御信号を送る。これにより都度最適な配光を実施することができる。
【0106】
(配光パターン)
図15(A)は、車両用前照灯1によって形成される基本配光パターンである。
図15(A)に示すように、制御装置10は光源30と空間光変調器40を制御して、比較的光度の高い高光度領域A1と、高光度領域A1より光度の低い低光度領域A2を形成する。
【0107】
高光度領域A1は閉領域であり、周辺領域との境界線である外縁を有する。この外縁に隣接して、高光度領域A1を取り囲むように、低光度領域A2が形成される。低光度領域A2は、高光度領域A1の上方に上端幅GU、下方に下端幅GD、右方に右端幅GR、左方に左端幅GLをもって、帯状に形成される。前述したように、制御装置10による各実施形態における光源30と空間光変調器40の制御により、各領域は配光パターン内に精度良く形成される。
【0108】
図15(B)は、
図15(A)に示すB-B線上の光度を示すものである。B-B線に沿って、配光パターンの左端から右端に向かって、光度は最少光度P
minから徐々に増加し、最高光度P
maxを保って、再び最少光度P
minまで減少している。
【0109】
低光度領域A2の光度は、左右方向だけでなく上下方向においても同様に構成され、高光度領域A1において、光度PA1は一定値をとり(PA1=Pmax)、低光度領域A2においては、高光度領域A1との境界から自領域の外側に向けて、その光度が光度PmaxからPminまで徐々に減少するよう構成されている。低光度領域A2の光度変化は、直線的でも良いが、中間に変曲点を有するなめらかな曲線的な変化が好ましい。
【0110】
前述では空間光変調器40の具体的な実施形態では、単純な低光度領域A2/高光度領域A1の形成方法を述べたが、実際の低光度領域A2の光度は一定ではなく、曲線的に変化する光度勾配を有する。どの実施形態においても配光パターンの光度は階調的な制御が可能であり、例えば走査機構140を用いた場合、低光度領域A2においては、高光度領域A1との境界から低光度領域A2の外縁に向かって、制御装置10が走査される光の光度(光源30の輝度)を徐々に減少させる制御することにより実施される。また、例えばマトリックスLED340など、点灯光源を間引いて光の濃淡を表す場合、領域の外縁に向かって間引く量を増加させる、即ち第1点灯率E1を徐々に下げることによって、光度変化をつけることができる。
【0111】
高光度領域A1、いわゆるスポット領域は視認性を向上させるもののはずが、明暗境界線が路面や道路標識などにはっきりと投影された場合、本来の目的とは逆に視認性が低下してしまう。上記のように構成することで、明暗境界がぼかされ、かつスポット領域は維持され、視認性が良好となる。
【0112】
(実施例1:高速道路)
車両用前照灯1により形成される配光パターンは、
図15の配光パターンを基本として、車両用前照灯1が搭載される車両の周囲の状況や走行状態に応じて高光度領域A1及び低光度領域A2の大きさ、光度、位置が相対的に変化する。
図16~
図20は配光パターンの実施例を示す。
【0113】
図16は、配光パターンの第1の実施例として、高速道路走行時の配光パターンを示す。速度計12により、車両速度が所定の値を超えたことが検知されると、制御装置10は高光度領域A1を縮小し、かつ高光度領域A1の光度P
A1を高める制御を行う。
【0114】
図16(A1)では、高光度領域A1の縮小に伴い、低光度領域A2が拡大し、上端幅GU、下端幅GD、左端幅GL、及び右端幅GRの全てが低速時よりも増加している。
【0115】
図16(A2)では、高光度領域A1の縮小に伴って低光度領域A2の範囲も縮小し、上端幅GU、下端幅GD、左端幅GL、及び右端幅GRは低速時より小さくなり、低光度領域A2の外縁に隣接して、低光度領域A2よりも更に光度の低い第2低光度領域A3が形成される。本実施例では、第2低光度領域A3の光度P
A3は一定(P
A3=P
min)であるが、低光度領域A2同様、境界線から外縁に向かって光度が低下するよう構成してもよい。
【0116】
このような配光パターンが形成されることで、例えば市街地などの低速運転時には、拡散照射により周囲を注意し易く、高速道路などの高速運転時には遠方強調がなされ、状況に応じた視認性の向上がなされる。
【0117】
(実施例2:曲路)
図17は、第2の実施例として、曲路における配光パターンを示す。(A2)の曲路は(A1)の曲路よりも曲率半径が小さい。
【0118】
図17(A1)及び
図17(A2)に示すように、ステアリング動作検出機構14から信号を受けると、制御装置10は、曲路の進行方向(例えば
図17(A1)及び(A2)においては右側)へ高光度領域A1を集中させ、視認性を向上させる制御を実施する。
【0119】
具体的には、高光度領域A1を曲路の進行方向へ移動させるため、右端幅GRを減少させ、左端幅GLを増大させ、かつ高光度領域A1の光度PA1を減少させる。このように構成することにより、曲路でのスポット領域による煩わしさを減少させ、曲路での運転手の配光の違和感を低減させる。
【0120】
曲路においては、高光度領域の光度P
A1は、ステアリング動作検出機構14によって検出されるステアリング動作量、即ち操舵角に応じて決定される。
図18は、操舵角と高光度領域A1の光度P
A1との関係を示す図である。操舵角が増加するに従って、光度P
A1が減少するように構成される。例えば走査機構140を用いた実施形態においては、制御装置10は光源130の出力強度を減少させる、あるいは走査機構本体120の回動速度、即ち光の走査速度を速める制御を行う。操舵角が大きくなるほど、高光度領域A1は、照射可能エリアの端部に移動するため、明暗境界が見えやすくなってしまう(例えば
図17(A2)の右端)。高光度領域A1の光度P
A1を低下させることで、明暗境界により生じる違和感を緩和することができる。
【0121】
(実施例3:減光領域)
図19は、第3の実施例として、先行車両や対向車両、または歩行者等が車両の各種検出機構により検出された場合の配光パターンを示す。
【0122】
図19(A1)に示すように、先行車両41が検出されると、先行車両41との相対位置が解析され、車両の照明光が先行車両41に届く位置まで接近した時点で、配光パターン内の先行車両41に対応する位置に、光度の低い減光領域A4が形成される。減光領域A4は、閉領域であれば矩形に限らず丸形等どのような形状でも構わない。減光領域A4により、先行車両41に与えるグレアを未然に防止できる。減光領域A4は、車両41の位置で決定されるため、高光度領域A1と低光度領域A2をまたぐように形成されても構わない。
【0123】
減光領域A4は、自領域の外縁から自領域内側に向かって光度が低下するよう構成されている。減光領域A4に全く配光されないでいると、他領域との境界線(明暗境界線)が際立ち、運転手の視界に違和感を生じさせる。これを防止するため、境界線をわざとぼかすように、減光領域A4の光度は領域の内側に向かい低下していくよう構成されている。
【0124】
図19(A2)は、歩行者42が検出された場合の配光パターンを示す。車両に備えられた各種検出機構により歩行者42が検知されると、歩行者42に対するグレアを防止するため、減光領域A5が配光パターン内に形成される。減光領域A5は、減光領域A4同様、内側に向かって徐々に光度が低下するよう構成されている。ここで歩行者42のために形成される減光領域A5は、先行車両41のために形成される減光領域A4よりも、領域を明確にするよう調整されている。
【0125】
具体的には減光領域A5の徐々に減光している部分の光度の変化率である光度勾配は、減光領域A4の同光度勾配よりも、大きくなるよう構成されている。光度勾配が大きくなると、光度の急激な変化により、減光領域A5が際立つ効果を得ることができる。
【0126】
グレアを防止する為、対向車、先行車両、再帰性反射物、先行車両が検出され、あるいは歩行者や自転車などが検出される。制御装置10は、検出された物体のうち、運転手に高い注意を促すべきものは、その重要度に応じて、減光領域の光度勾配を調整する。
【0127】
本実施形態では、減光領域A4,A5の光度(減光領域内最低光度)PA4,PA5は等しくなるよう構成されているが、検出した物体の重要度が上がるほど、減光領域の最低光度と同程度、またはそれよりも低くするよう構成してもよい。より注視すべき物体には、低光度領域A2の最低光度PA2(min)よりもさらに低い光度の減光領域を形成するように構成してもよい。これにより、運転手に一層の注意を促すことができる。
【0128】
(実施例4:強調領域)
図20は、第4の実施例として、夜間の縁石や山道の側溝など、注視すべき物体が検出された場合の配光パターンを示す。
【0129】
図20(A1)に示すように、夜間や雨天、濃霧等の視界不良時に、縁石43が検出されると、配光パターン内に光度の高い強調領域A6が形成される。強調領域A6により、視認性が向上し、運転手は縁石43の位置を把握できる。
【0130】
図20(A2)に示すように、山道の側溝44が検出されると、側溝44に沿って、強調領域A7が形成される。このとき、さらに前方に落石45が検出された場合は、第2の強調領域A8が同時に配光パターン内に形成される。強調領域や減光領域は、配光パターン内に両者同時に形成されても構わず、それぞれ複数個形成されても構わない。
【0131】
強調領域A6,A7,A8の光度は周囲の領域の光度よりも高くなるよう構成されており、視認性を向上させ、運転手の安全な運転に助する。
【0132】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1 車両用前照灯
10 制御装置
30 光源
40 空間光変調器
130 光源
140 走査機構
156 反射面
220 回転リフレクタ
230 光源
240 回転機構
340 マトリックスLED
420 第1液晶層
430 バックライト
440 透過型液晶装置
520 第2液晶層
530 フロントライト
540 反射型液晶装置
620 光偏向装置本体
630 光源
640 光偏向装置
A1 高光度領域
A2 低光度領域
A3 第2の低光度領域
A4,A5 減光領域
A6,A7,A8 強調領域
E1 第1点灯率
E2 第2点灯率
E3 第3点灯率
E4 光偏向率
E5 時間比率
P 光度