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  • 特開-アモルファステコビリマット調製 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080234
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】アモルファステコビリマット調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/76 20060101AFI20230601BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230601BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C07D209/76
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/14
A61K31/4035
A61P31/12
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023065084
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2020195121の分割
【原出願日】2014-07-11
(31)【優先権主張番号】61/856,240
(32)【優先日】2013-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509322904
【氏名又は名称】シガ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャンタクマール・アール・チャヴァナギマット
(72)【発明者】
【氏名】エヌ・ケー・ピーター・サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・パズ
(72)【発明者】
【氏名】イン・タン
(72)【発明者】
【氏名】デニス・イー・フルビー
(57)【要約】
【課題】1つには、結晶形態からアモルファスST-246を生成する有効なプロセスを提供すること。
【解決手段】ウイルス感染およびこれと関連する疾患、特にオルソポックスウイルスにより引き起こされるそれらのウイルス感染および関連疾患の治療または予防のための、アモルファスN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドの調製のための方法が開示される。N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物の調製のための方法もまた、開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミド、少なくとも1つのポリマおよび溶媒を含む液体溶液を調製すること;ならびに
(b)前記液体溶液を噴霧乾燥し、よって前記アモルファス固体分散物を生成させること
を含む、方法。
【請求項2】
前記液体溶液が、テトラヒドロフラン、アルコール、酢酸エチル、メチルエーテルケトン、ジクロロメタン、水およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマが、メタクリル酸コポリマ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP-H55、CAP、PVAP、HPMCAS-L、HPMCAS-M、HPMCAS-H、ヒプロメロース、ポビドン、コポビドン、HPC、ポロクサマー、PVP-VA、PVP(中性)、クルーセル、メトセル、エトセル、プラスドン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物を生成するための方法であって、前記方法が、
(a)固体形態のN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを、少なくとも1つのポリマの存在下、融解を引き起こし、液体溶液を生成させるために196℃~230℃の温度で加熱すること;および
(b)工程(a)の溶液を0℃より低い温度に冷却し、よって、前記アモルファス固体分散物を生成させること
を含む、方法。
【請求項5】
前記ポリマが、ポリエチレングリコール、ゲルシレ、モノおよびジステアリン酸グリセロール、メタクリル酸コポリマ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP-H55、CAP、PVAP、HPMCAS-L、HPMCAS-M、HPMCAS-H、ヒプロメロース、ポビドン、コポビドン、HPC、ポロクサマー、PVP-VA、PVP(中性)、クルーセル、メトセル、エトセル、プラスドン、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体溶液が、界面活性剤を含む、請求項1または4に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液中のN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドの前記ポリマに対する重量比が、1:50~1:1である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項8】
前記冷却工程が、-50℃より低い温度で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記冷却工程が、液体窒素中で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記固体形態が、結晶形または多形を含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年7月19日に出願された米国仮特許出願番号第61/856,240号(これにより、その全体が、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に対し優先権を主張する。
【0002】
技術分野
ウイルス感染およびこれと関連する疾患、特にオルソポックスウイルスにより引き起こされるそれらのウイルス感染および関連疾患の治療または予防のためのアモルファステコビリマットの調製のための方法が本明細書で記載される。テコビリマットはST-246(登録商標)の商標名を有し、N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドの化学名を有する。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
この発明は、生物医学先端研究開発局(BARDA)により与えられた契約番号:HHSO100201100001Cの下、米国政府支援によりなされた。米国政府はこの発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
オルソポックス属(オルソポックスウイルス科(Orthopoxviridae))はポックスウイルス科ファミリーおよびコロポキシビリナエ(Choropoxivirinae)サブファミリーの一員である。この属は、ヒトおよび動物集団において重大な疾患を引き起こす多くのウイルスから構成される。オルソポックス属のウイルスには、牛痘、サル痘、ワクチニア、および痘瘡(天然痘)が含まれ、これらの全てはヒトに感染し得る。
【0005】
天然痘(痘瘡)ウイルスは特に重要である。生物兵器としての天然痘ウイルスの使用に関する最近の懸念は、オルソポックスウイルスを標的とする小分子治療薬の開発の必要性を強調している。痘瘡ウイルスは非常に伝染性であり、ヒトに重篤な疾患を引き起こし、高い死亡率をもたらす(Henderson et al. (1999) JAMA. 281:2127-2137)。その上、生物兵器としての痘瘡ウイルスの使用には先例がある。フレンチインディアン戦争(1754-1765)中、英国の兵士が病気を流行させるために、天然痘患者が使用した毛布をアメリカ先住民に配布した(Stern, E. W. and Stern, A. E. 1945. The effect of smallpox on the destiny of the Amerindian. Boston)。その結果の大流行は、いくつかのインディアンの部族に50%の死亡率を引き起こした(Stern, E. W. and Stern, A. E.)。最近になって、ソビエト政府は、エアロゾル化した懸濁液中の高い毒性の兵器化した形態の痘瘡を製造するプログラムを発動した(Henderson、上記)。さらに心配なことは、ポックスウイルスの組換え型が開発され、これはワクチン接種した動物に病気を引き起こす潜在力をもっているという観察結果である(Jackson et al. (2001) J. Virol., 75:1205-1210)。
【0006】
天然痘ワクチンプログラムは1972年に終了し;したがって、多くの個体はもはや天然痘感染に対して免疫がない。ワクチン接種された個体でさえ、もはや完全に保護されているわけではなく、とりわけウイルスの高い毒性のまたは組換え株に対してはそうである(Downie and McCarthy. (1958) J Hyg. 56:479-487; Jackson、上記)。したがって、もしも、痘瘡ウイルスが計画的にまたは偶発的にヒト集団再び導入された場合には、死亡率は高くなるであろう。
【0007】
痘瘡ウイルスはエアロゾル化された液滴を介して呼吸粘膜に自然に伝染し、そこで、リンパ組織中での複製が無症候性感染を引き起こし、これが1-3日続く。ウイルスは、リンパから皮膚へ広がり、そこで微小皮膚血管中での複製と、それに続く近隣上皮細胞の感染及び溶解が皮膚病変を引き起こす(Moss, B. (1990) Poxviridae and Their Replication, 2079-2111. In B. N. Fields and D. M. Knipe (eds.), Fields Virology. Raven Press, Ltd., New York)。2つの形態の疾患が痘瘡ウイルス感染と関連する;大痘瘡(最も一般的な形態の疾患であり、これは30%の死亡率をもたらす)および小痘瘡(これはほとんど流行せず、死に至ることもまれである(<1%))。死亡率は播種性血管内凝固、低血圧、および心血管虚脱の結果であり、これはまれな出血性型の天然痘における凝固欠陥により悪化し得る(Moss、上記)。
【0008】
サル痘ウイルスの最近の大流行は、オルソポックス属のウイルスを標的にする小分子治療薬の開発の必要性を強調している。米国でのサル痘の出現は、新興感染を表す。サル痘および天然痘はヒトにおいて同様の疾患を引き起こすが、しかしながら、サル痘の死亡率は低い(1%)。
【0009】
ワクチン接種は、オルソポックスウイルス疾患、特に天然痘疾患を防止するための現在の手段である。天然痘ワクチンは、ワクチニアウイルスの弱毒株を用いて開発され、これは、ワクチン接種された個体の95%超で局所的に複製し、痘瘡ウイルスに対する防御免疫を提供する(Modlin (2001) MMWR (Morb Mort Wkly Rep) 50:1-25)。ワクチン接種と関連する有害事象は頻繁に発生し(1:5000)、全身性ワクチニアおよびワクチニアのワクチン接種部位からの偶発性の転移が含まれる。より重篤な合併症、例えば脳炎は1:300,000の割合で発生し、これはしばしば致命的である(Modlin、上記)。有害事象のリスクは免疫低下個体においてより一層顕著である(Engler et al. (2002) J Allergy Clin Immunol. 110:357-365)。よって、ワクチン接種はAIDSまたはアレルギー性皮膚疾患を有する人々にとって禁忌である(Engler et al.)。防御免疫は長年持続するが、天然痘ワクチン接種に対する抗体応答は、接種後10~15年で著しく低減する(Downie、上記)。加えて、ワクチン接種はオルソポックスウイルスの組換え型に対しては防御できない可能性がある。最近の研究は、IL-4を発現するマウス痘ウイルスの組換え型は、ワクチン接種されたマウスに死をもたらすことを示した(Jackson、上記)。ワクチン接種に関連する副作用、免疫低下個体の禁忌、およびウイルスの組換え株に対し防御することができないことを考慮すると、天然痘ウイルス感染の治療のためのより良好な予防薬および/または新規治療薬が必要である。
【0010】
ワクチニアウイルス免疫グロブリン(VIG)はワクチン接種後の合併症の治療のために用いられてきた。VIGはワクチニアウイルスワクチンを受けた個体からの血漿の免疫グロブリン画分の等張滅菌溶液である。これは、種痘性湿疹およびいくつかの形態の進行性ワクチニアを治療するために使用される。この製品は限られた量でしか得られず、入手するのが困難なので、広汎な天然痘大流行の場合に用いるようには示されていない(Modlin、上記)。
【0011】
シドフォビル([(S)-1-(3-ヒドロキシ-2-ホスホニルメトキシプロピル)シトシン][HBMPC])は、AIDS患者のCMV網膜炎の治療に認可されたヌクレオシド類似体である。シドフォビルは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ヘパドナウイルス、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、およびオルソポックスウイルスを含む多くのDNA含有ウイルスに対してインビトロで活性を有することが示されている。(Bronson et al. (1990) Adv. Exp. Med. Biol. 278:277-83; De Clercq et al. (1987) Antiviral Res. 8:261-272; de Oliveira et al. (1996) Antiviral Res. 31:165-172; Snoeck et al. (2001) Clin Infect. Dis. 33:597-602)。シドフォビルはまた、標準の痘瘡ウイルス複製を阻害することが見出されている(Smee et al. (2002) Antimicrob. Agents Chemother. 46:1329-1335)。
【0012】
しかしながら、シドフォビル投与には多くの問題が伴う。シドフォビルはバイオアベイラビリティに乏しく、静脈内投与しなければならない(Laezari et al. (1997) Ann. Intern. Med. 126:257-263)。その上、シドフォビルは静脈内投与すると、用量規制腎毒性を生じさせる(Lalezari et al.)。加えて、シドフォビル耐性が複数のウイルスに対して指摘されている。シドフォビル耐性の牛痘、サル痘、ワクチニア、およびラクダ痘ウイルス変異株が薬物の存在下での継代培養により研究室で単離されている(Smee、上記)。シドフォビル耐性は、オルソポックスウイルス複製を処置するためにこの化合物を用いることの重大な限界を示している。よって、低いバイオアベイラビリティ、静脈内投与の必要性、および耐性のウイルスの流行は、オルソポックスウイルス感染を治療するための追加のおよび代替の治療法の開発の必要性を強調している。
【0013】
ウイルスポリメラーゼ阻害剤、例えばシドフォビルに加えて、多くの他の化合物が、オルソポックスウイルス複製を阻害することが報告されている(De Clercq. (2001) Clin Microbiol. Rev. 14:382-397)。歴史的には、メチサゾン、原型のチオセミカルバゾンが天然痘感染の予防的治療に用いられてきた(Bauer et al. (1969) Am. J Epidemiol. 90:130-145)。しかしながら、この化合物クラスは、一般に容認できない副作用、例えば重篤な悪心および嘔吐によって、天然痘の根絶以来大きな注目を集めていない。作用機序研究により、メチサゾンがL遺伝子の翻訳を妨げることが示唆される(De Clercq (2001)、上記)。シドフォビルのように、メチサゾンはかなり非特異的な抗ウイルス化合物であり、アデノウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、アルボウイルス、およびミクソウイルスを含む多くの他のウイルスを阻害することができる(同上)。
【0014】
ポックスウイルスの治療に潜在的に有用な別のクラスの化合物は、アデノシルホモシステインヒドロラーゼ(SAH)の阻害剤により代表される。この酵素はS-アデノシルホモシステインのアデノシンおよびホモシステインへの変換を担っており、これは、ウイルスmRNAのメチル化および成熟に必要な工程である。この酵素の阻害剤は、インビトロおよびインビボでワクチニアウイルスを阻害するのに効力を示している(De Clercq et al. (1998) Nucleosides Nucleotides. 17:625-634)。構造的には、今日までに報告された全ての活性な阻害剤は、ヌクレオシドアデノシンの類似体である。多くは炭素環状誘導体であって、ネオプラナシン(Neplanacin)Aおよび3-デアザネオプラナシンAによって例示される。これらの化合物は、動物モデルにおいていくらか効果を示すが、多くのヌクレオシド類似体と同様に、それらは、一般毒性および/または劣る薬物動態特性の問題がある(Coulombe et al. (1995) Eur. J Drug Metab Pharmacokinet. 20:197-202; Obara et al. (1996) J Med. Chem. 39:3847-3852)。これらの化合物を経口投与できることはとてもありそうもなく、天然痘感染に対して予防的に作用し得るかどうか現在のところ不明である。SAHヒドロラーゼ、および他の化学的に扱いやすい痘瘡ウイルスゲノム標的の非ヌクレオシド阻害剤であって、経口により生物学的に利用可能であり、望ましい薬物動態(PK)および吸収、分配、代謝、排出(ADME)特性を有するものの同定は、報告されているヌクレオシド類似体を超える顕著な進歩となるであろう。要約すると、天然痘ウイルス複製を阻害する現在のところ利用可能な化合物は、一般に非特異的であり、毒性および/または疑わしい効能によって使用が限定されている。
【0015】
米国特許第6,433,016号(2002年8月13日)および米国特許出願公開2002/0193443A1号(2002年12月19に公開)には、一連のイミドジスルファミド誘導体が、オルソポックスウイルス感染に有用であると記載されている。
【0016】
新しい療法および予防薬がオルソポックスウイルス感染によって引き起こされる感染症および疾患に対して明らかに必要とされている。
【0017】
共有されるPCT公開WO2004/112718号(2004年12月29日に公開)は、ウイルス感染およびこれと関連する疾患、特にオルソポックスウイルスにより引き起こされるそれらのウイルス感染および関連疾患の治療または予防のための、二、三、および四環系アシルヒドラジド誘導体および類似体、ならびにこれらを含む医薬組成物の使用を開示する。共有される米国特許公開2008/0004452号(2008年1月3日に公開)はさらに、ST-246を生成するためのプロセスを開示する。最後に、共有されるPCT公開WO2011/119698号は、様々な結晶形態のST-246を調製するプロセスを開示する。
【0018】
アモルファス形態のST-246は、より速い溶解速度を有し、過飽和を達成し、よって、用量を低減させる可能性を与えることにより、結晶形態に勝る利点を提供し、ならびに、食品効果を回避する、ならびに薬物動態可変性を低減させることもできる。よって、特に結晶形態からアモルファスST-246を生成する有効なプロセスを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Henderson et al. (1999) JAMA. 281:2127-2137
【発明の概要】
【0020】
本発明は、アモルファスN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを生成するための方法を提供し、前記方法は下記を含む:
(a)固体形態のN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを、融解を引き起こすのに十分な温度で加熱すること;ならびに
(b)融解形態のN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを冷却し、よってアモルファスN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを生成させること。
【0021】
本発明はまた、N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物を生成するための方法を提供し、前記方法は下記を含む:
(a)N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミド、少なくとも1つのポリマおよび溶媒を含む液体溶液を調製すること;ならびに
(b)前記液体溶液を噴霧乾燥し、よって前記アモルファス固体分散物を生成させること。
【0022】
本発明はさらに、N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物を生成するための方法を提供し、前記方法は下記を含む:
(a)N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミド、少なくとも1つのポリマおよび溶媒を含む液体溶液を調製すること;ならびに
(b)前記液体溶液を噴霧乾燥し、よって前記アモルファス固体分散物を生成させること。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例7で記載されるアモルファスST-246およびPEG-4000固体分散物のXRPDディフラクトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ST-246を生成するためのプロセスが本明細書で記載される。ST-246に対する化学名は、N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドであり、下記式を有する:
【化1】
【0025】
定義
この詳細な説明によれば、下記略語および定義が適用される。本明細書では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。
【0026】
本発明におけるST-246の「多形性形態、多形、多形形態、結晶形態、物理的形態または結晶多形」という用語は、ST-246の結晶変態を示し、これは、分析法、例えばX線粉末回折パターン、(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)により、その融点分析または赤外分光法(FTIR)または偏光顕微鏡法により特徴付けることができる。
【0027】
「水和物」という用語は、本明細書では、さらに非共有結合性分子間力により結合された化学量論または非化学量論量の水を含む、化合物またはその塩を意味する。水和物は、1つ以上の水の分子の物質の1つの分子との組み合わせにより形成され、ここで、水はHOとしてのその分子状態を保持し、そのような組み合わせは1つ以上の水和物を形成することができる。「半水和物」という用語は本明細書では、物質1分子あたり0.5分子のHOを有する固体を示す。
【0028】
「医薬組成物」または「医薬製剤」という用語は、活性成分(複数可)、担体を構成する薬学的に許容される賦形剤、ならびに材料成分の任意の2つ以上の組み合わせ、複合体形成または凝集から直接または間接的に得られる任意の生成物を含む医薬品を包含することが意図される。したがって、本発明の医薬組成物は活性成分、活性成分分散物または複合体、追加の活性成分(複数可)、および薬学的に許容される賦形剤を混合することにより製造される任意の組成物を包含する。
【0029】
PCT公開WO2011/119698号は、様々な水和度を有するST-246に対する6つの多形または結晶構造を開示する。上記のように、アモルファス形態のST-246は結晶形態よりも望ましく、というのも、より速い溶解速度を有し、過飽和濃度を達成することができるからである。したがって、最近、アモルファスST-246は、固体または結晶形のST-246を、融解を引き起こすのに十分な温度で加熱し、続いて、急速冷却することにより調製することができることが発見されている。ST-246の融解温度は約196℃である。
【0030】
好ましくは、固体または結晶形のST-246の加熱は、ST-246の熱分解を最小に抑えるために、少なくとも約196℃、かつ最大約230℃までの温度で実施される。
【0031】
また好ましくは、融解したST-246の冷却工程は、約0℃より低い温度で、より好ましくは約-50℃より低い温度で、最も好ましくは液体窒素中で実施される。
【0032】
重ねて好ましくは、ST-246の開始材料は、多形、例えば一水和物多形を含む。そのような多形水和物の例としては、ST-246の多形形態I(約7.63、10.04、11.47、14.73、15.21、15.47、16.06、16.67、16.98、18.93、19.96、20.52、20.79、22.80、25.16、26.53、27.20、27.60、29.60、30.23、30.49、30.68、31.14、33.65、34.33、35.29、35.56、36.30、37.36、38.42、38.66°の反射角2θで特性ピークを有するX線粉末回折パターンを示す)およびST-246の多形形態III(約6.71、9.05、12.49、13.03、13.79、14.87、15.72、16.26、16.74、18.10、18.43、19.94、21.04、21.51、23.15、23.51、25.32、26.24、26.87、27.32、27.72、28.55、29.08、29.50、29.84、31.27、33.48、35.36、39.56°の反射角2θで特性ピークを有するX線粉末回折パターンを示す)が挙げられる。
【0033】
N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物は、下記により調製することができることもまた、発見されている:(a)N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミド、少なくとも1つのポリマおよび溶媒を含む液体溶液を調製すること;ならびに(b)前記液体溶液を噴霧乾燥し、よって前記アモルファス固体分散物を生成させること。噴霧乾燥のために使用される典型的な機器が市販されており、Buchi Corporation製のBuchi B290が挙げられるが、それに限定されない。
【0034】
好ましくは、液体溶液は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含む:テトラヒドロフラン、エチルアルコール、酢酸エチル、メチルエーテルケトン、ジクロロメタン、水およびそれらの混合物。より好ましくは、溶媒はテトラヒドロフラン、メタノールまたはアセトンである。
【0035】
また、好ましくは、ポリマは下記からなる群より選択される:メタクリル酸コポリマ(coplolymer)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP-H55、CAP、PVAP、HPMCAS-L、HPMCAS-M、HPMCAS-H、ヒプロメロース、ポビドン、コポビドン、HPC、ポロクサマー、PVP-VA、PVP(中性)、クルーセル、メトセル、エトセル、プラスドン、およびそれらの混合物。より好ましくは、ポリマは(ヒドロキシプロピル)メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートである。
【0036】
重ねて好ましくは、液体溶液は界面活性剤を含む。より好ましくは、界面活性剤は下記からなる群より選択される:ポリソルベート、クレモフォールおよびコリフォール。
【0037】
また、好ましくは、前記溶液中の、N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのポリマに対する重量比は約1:50~約1:1、より好ましくは約1:9または約1:2である。
【0038】
さらに、N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのアモルファス固体分散物は、下記により調製することができることが発見されている:(a)固体形態のN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを少なくとも1つのポリマの存在下、融解を引き起こし、液体溶液を生成させるのに十分な温度で加熱すること;ならびに(b)工程(a)の溶液を冷却し、よって、前記アモルファス分散物を生成させること。
【0039】
好ましくは、ポリマは下記からなる群より選択される:ポリエチレングリコール、ゲルシレ、モノおよびジステアリン酸グリセロール、メタクリル酸コポリマ(coplolymer)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP-H55、CAP、PVAP、HPMCAS-L、HPMCAS-M、HPMCAS-H、ヒプロメロース、ポビドン、コポビドン、HPC、ポロクサマー、PVP-VA、PVP(中性)、クルーセル、メトセル、エトセル、プラスドン、およびそれらの混合物。より好ましくは、ポリマは、ポリエチレングリコールである。
【0040】
重ねて好ましくは、液体溶液は界面活性剤を含む。より好ましくは、界面活性剤は、下記からなる群より選択される:ポリソルベート、クレモフォールおよびコリフォール。
【0041】
また、好ましくは、前記溶液中のN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドのポリマに対する重量比は、約1:50~約1:1、より好ましくは約1:9または約1:2である。
【0042】
また、好ましくは、融解したST-246の冷却工程は、約0℃より低い温度で、より好ましくは約-50℃より低い温度で、最も好ましくは液体窒素中で実施される。
【0043】
本発明はまた、精製または単離アモルファスN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを含み、さらに、担体、賦形剤、希釈剤、添加物、フィラー、潤滑剤およびバインダからなる群より選択される1つ以上の薬学的に許容される材料成分を含む医薬組成物を提供し、ここで、前記N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%はアモルファスである。好ましくは、医薬組成物は経口投与のために製剤化される。
【0044】
本発明はさらに、オルソポックスウイルス感染または種痘性湿疹を治療する方法を提供し、これは、治療の必要な患者に、治療的有効量の、精製アモルファスN-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドを投与することを含み、ここで、前記N-[(3aR,4R,4aR,5aS,6S,6aS)-3,3a,4,4a,5,5a,6,6a-オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,6-エテノシクロプロプ[f]イソインドール-2(1H)-イル]-4-(トリフルオロメチル)-ベンズアミドの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%はアモルファスである。
【0045】
製剤および投与
アモルファスST-246の製剤は、薬剤学分野で知られているプロセスにより調製することができる。下記実施例(以下)は、当業者が本発明をより明確に理解し、実行することができるように提供される。これらは、発明の範囲を制限するものとして考えられるべきではなく、単に、それを例示し、代表するものにすぎないと考えるべきである。
【0046】
本発明のアモルファス塩は様々な経口および非経口剤形で投与することができる。経口剤形は、錠剤、コーティング錠、ハードおよびソフトゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、シロップ、または懸濁液とすることができる。非経口投与は静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内投与を含む。加えて、本発明の塩は、経皮(浸透促進剤を含み得る)、頬側、経鼻および坐薬経路により投与することができる。
【0047】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は固体または液体のいずれかとすることができる。固体形態調製物としては、粉末、錠剤、丸薬、ハードおよびソフトゼラチンカプセル、カシェ剤、坐薬、および分散性顆粒が挙げられる。固体担体は、1つ以上の物質とすることができ、これはまた、希釈剤、香味剤、潤滑剤、懸濁剤、バインダ、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても作用することができる。
【0048】
粉末では、担体は微細化固体であり、これは、微細化活性成分との混合物の形態とされる。錠剤では、活性成分は、必要とされる結合特性を有する担体と好適な割合で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。
【0049】
錠剤、コーティング錠、およびハードゼラチンカプセルのための好適な賦形剤は、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、コーンスターチおよびその誘導体、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、タルク、および脂肪酸またはそれらの塩、例えば、ステアリン酸である。所望であれば、錠剤またはカプセルは腸溶または徐放製剤であってもよい。ソフトゼラチンカプセルのための好適な賦形剤は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールである。液体形態調製物は、溶液、懸濁液、停留浣腸、およびエマルジョンを含む。非経口注射では、液体調製物は溶液中、水中、または水/ポリエチレングリコール溶液中で製剤化させることができる。
【0050】
経口用途に好適な水溶液は、活性成分を水に溶解し、好適な着色剤、香味、安定化、および増粘剤を要望通り添加することにより調製することができる。経口用途に好適な水性懸濁液は、微細化活性成分を水中に、粘性材料、例えば天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および他のよく知られた懸濁剤と共に分散させることにより製造することができる。
【0051】
組成物はまた、活性成分に加えて、着色剤、香味、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調整するための塩、マスキング剤、抗酸化剤など含むことができる。
【0052】
本発明の化合物は、生理食塩水(例えば、約3~8のpHに緩衝される)中で静脈内投与することができる。従来の緩衝剤、例えばリン酸塩、重炭酸塩またはクエン酸塩が、本組成物中で使用され得る。
【0053】
固体形態調製物もまた含まれ、これらは、使用少し前に、経口投与のための液体形態調製物に変換されることが意図される。そのような液体形態としては溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。坐薬を調整するために、好適な賦形剤は天然および硬化油、ワックス、脂肪酸グリセリド、半液体または液体ポリオールを含む。溶融均質混合物をその後、好都合なサイズのモールドに注ぎ入れ、冷却させ、これにより、固化させる。好適な医薬担体、賦形剤およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, E. W. Martin編, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Paに記載される。
【0054】
用量は広範な限界内で変動する可能性があり、当然、各特定の場合において、患者の個々の要求および治療される病状の重症度に応じて調整される。典型的な調製物は約5%~約95%活性化合物(w/w)を含む。経口投与では、約0.01~約100mg/kg体重/日の間の1日用量が、単独療法および/または併用療法において適切なはずである。好ましい1日用量は約0.1~約300mg/kg体重、より好ましくは1~約100mg/kg体重、最も好ましくは1.0~約50mg/kg体重/日である。
【0055】
一般に、治療はより少ない用量で開始され、これは化合物の最適用量未満である。その後、用量は、少しずつ、その状況下での最適効果に達するまで増加される。1日用量は、単一用量または分割用量、典型的には1~5用量/日で投与することができる。
【0056】
医薬調製物は、好ましくは単位剤形形態である。そのような形態では、調製物は、適切な量の活性成分を含む単位用量に分割される。単位剤形はパッケージ調製物とすることができ、パッケージは、別々の量の調製物、例えばパック入り錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末を含む。また、単位剤形はカプセル、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジ自体とすることができ、または、パッケージ形態の、適切な数のこれらのいずれかとすることができる。
【0057】
適切な用量は当業者により容易に認識されるであろう。治療における使用のために必要とされる発明の多形の量は治療される病状の性質および患者の年齢および病状と共に変動し、最終的に、付添い医師または獣医師の裁量によるであろうことが認識されるであろう。発明の多形は、他の抗菌薬、例えばペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミドまたはエリスロマイシンとの組み合わせで使用することができる。
【0058】
以上で言及される組み合わせは、便宜上、医薬製剤の形態で使用するために提供することができ、よって以上で規定される組み合わせを薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬製剤は、発明のさらなる態様を構成する。そのような組み合わせの個々の成分は、順次または同時のいずれかで、別々の、または併用医薬製剤にて、任意の好都合な経路により投与され得る。
【0059】
投与が順次である場合、発明のアモルファスST-246化合物または第2の治療薬のいずれかが最初に投与され得る。投与が同時である場合、組み合わせは、同じかまたは異なる医薬組成物で投与され得る。
【0060】
以上で記載される投与経路および方法ならびに用量および本明細書において以下で記載される剤形を使用して、本発明のアモルファス形態のST-246を、ヒトにおける様々な疾患および病状の防止および治療のために使用することができる。例として、限定はしないが、オルソポックスウイルス感染および関連疾患の場合、これは、オルソポックスウイルス感染を患う前記治療の必要な患者に、アモルファスST-246(実質的に多形形態または多形の混合物を含まない)および不活性担体または希釈剤を含む組成物を投与することにより達成され、前記組成物は前記ウイルス感染を防止または治療するのに有効な量で投与される。
【0061】
この発明によれば、アモルファスST-246(実質的に多形形態または多形の混合物を含まない)は、オルソポックスウイルス感染を防止または治療するのに有効な量で投与される。そのようなウイルス感染を防止または治療するのに必要とされる、任意の有効量のそのようなアモルファス形態(実質的に多形形態または多形の混合物を含まない)が、この組成物において使用され得る。一般に、経口剤形の場合、約0.5mg/kg~約5.0mg/kgの体重/日の用量が使用される。しかしながら、投与される経口単位用量中のそのようなアモルファス形態(実質的に多形形態または多形の混合物を含まない)の量はウイルス感染の状態、および患者の体重に大きく依存し、もちろん、医師の判断次第である。
【0062】
この発明によれば、所定のアモルファス形態(実質的に多形形態または多形の混合物を含まない)を含む経口単位剤形は、好ましくは約30mg~800mg/日、より好ましくは約50mg~約600mg/日、最も好ましくは約300mgまたは400mg/日の用量で、1日1回~3回、または必要に応じて投与することができる。
【0063】
発明のいくつかの態様では、本発明のアモルファス形態はまた、下記との組み合わせで使用することができる:(1)ワクチン;(2)シドフォビル、注射用抗ウイルス薬(非環状ヌクレオシドホスホネートであり、よって、ウイルス酵素によるリン酸化と関係なく、種痘性湿疹(EV)、ワクチニアウイルス感染の生命を危うくする合併症、および他の関連障害を治療する);および/または(3)CMX001(ヘキサデシルオキシプロピル-シドフォビル)、脂質、3-ヘキサデシルオキシ-1-プロパノールをシドフォビルのホスホン酸基に連結させることにより形成される、天然起源の脂質、リゾレシチンの模倣物。
【0064】
発明はまた、アモルファス形態のST-246で充填された1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。任意でそのような容器(複数可)に、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する行政機関により規定される形態の通知を関連させることができ、その通知はヒト投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映する。
【0065】
実施例1:融解および急冷によるアモルファスST-246の調製
およそ20gのST-246一水和物(多形形態I)を、Drieriteを有するデシケーターにおいて、真空下、乾燥オーブン内で50℃にて2日間脱水させ、脱水ST-246を得た。
【0066】
グローブボックス内では、窒素雰囲気下(RH<5%)、5.2gの脱水ST-246をビーカー中に秤量し、シリコーン油浴中で浴温度を215℃に維持しながら加熱し、5分間または材料が完全に融解するまで維持した。ビーカーを、シリコーン油浴から取り出し、液体窒素に浸漬させることにより直ちに急冷した。ビーカーを1分間液体窒素中で維持し、その後直ちに、窒素雰囲気下(RH<5%)のグローブボックスに移した。生成物をガラスビーカーから、10mL琥珀ガラスビンに移し、PTFE裏張りキャップで密閉した。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。生成物は淡黄色であり、収量は、5.1gであった。
【0067】
急冷させたST-246を、下記分析を用いて特徴付けた:カールフィッシャー滴定による含水量、偏光顕微鏡法、HPLCによる純度、およびXRPD。生成物の含水量を、0.09%で測定した。最終生成物の試料は偏光下では複屈折を示さず、生成物がアモルファスであることが示された。純度はHPLCにより99.1%であった(224nmでの面積%)。最後に、XRPDディフラクトグラムはピークのないハロパターンを示し、生成物がアモルファスであることが示された。
【0068】
実施例2:融解によるアモルファスST-246の調製
約5.0gのST-246一水和物を、25mLパイレックス(登録商標)試験管中に秤量し、周囲温度のシリコーン油浴に入れた。シリコーン油浴を、2時間にわたって210℃まで加熱した。低流量の窒素を、加熱プロセス中、試験管にタイゴンチューブを使用して送達させた。油浴温度が202℃に到達した時に、ST-246が融解し始めた。油浴温度が210℃に到達した時に、ST-246が融解して透明の無色液体となった。ST-246をその後熱から取り出し、試験管を直ちに氷浴に入れ、5分間保持し、その間、低流量の窒素を試験管中に吹き込み続けた。これを、その後、氷浴から取り出し、窒素雰囲気下(<10%RH)のグローブボックスに移した。生成物をその後、琥珀ガラスビンに移し、PTFE裏張りキャップで密閉した。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。生成物は、ガラス状無色固体であった。
【0069】
生成物を純度に対して分析し、これはHPLCにより97.9%であった。
【0070】
実施例3:融解および急冷によるアモルファスST-246の調製
約2.00gのST-246一水和物を、鋼ビーカーに添加し、室温のシリコーン油浴に入れた。油浴を加熱し、撹拌ホットプレートを用いて撹拌した。加熱した油浴温度は、2時間にわたって160℃に到達し、25分にわたって205℃まで増加した。浴温度が、205℃に到達すると、ST-246は徐々に融解し始めた。浴温度はその後、次の20分にわたり、215℃まで上昇した。油浴温度が215℃に到達すると、ST-246は完全に融解した。ビーカーをその後、油浴から出し、液体窒素に入れ、およそ1分間維持した。ビーカーの内側の生成物は黄色であり、直ちに硬化した。生成物を含むビーカーをその後、窒素雰囲気下(相対湿度10%未満)のグローブボックスに入れた。生成物をその後、琥珀ガラスビンに移し、PTFE裏張りキャップで密閉した。収量は、1.8gの生成物であった。生成物は黄色ガラスであった。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。純度はHPLCにより98.1%であった(224nmでの面積%)。XRPDディフラクトグラムはピークのないハロパターンを示し、生成物がアモルファスであることが示された。
【0071】
実施例4:PVPとのアモルファスST-246噴霧乾燥分散物の調製
約2.0gのST-246一水和物および4.0gのコリドン30(PVP)を、45mLのメタノールに溶解した。得られた溶液をBuchi B290ミニスプレードライヤーおよびBuchi B-295インタートループ(Intert Loop)を用いて、下記パラメータに設定し、噴霧乾燥させた:
アスピレーター:100%;窒素流速:30m/hr;送り速度:30%;ならびに入口温度:65℃。
【0072】
得られた生成物は白色の綿毛状の粉末であった。純度はHPLCにより99.9%であった(224nmでの面積%)。生成物をその後、琥珀ガラスビンに移しPTFE裏張りキャップで密閉した。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。XRPDディフラクトグラムはピークのないハロパターンを示し、生成物がアモルファスであることが示された。
【0073】
実施例5:HPMCAS-MとのアモルファスST-246噴霧乾燥分散物の調製
約0.50gのST-246一水和物および4.50gのHPMCAS-Mを、約300mLの95:5THF:水(v/v)に溶解した。溶液をその後、Buchi B290ミニスプレードライヤーおよびBuchi B-295インタートループを用いて、下記パラメータに設定し、噴霧乾燥させた:
アスピレーターp:100%;窒素流速:40m/hr;送り速度:40%;ならびに入口温度:60℃。
【0074】
生成物は、HPLCにより99.8%の純度を有する(224nmでの面積%)白色の綿毛状の粉末であった。生成物をその後、琥珀ガラスビンに移しPTFE裏張りキャップで密閉した。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。XRPDディフラクトグラムはピークのないハロパターンを示し、生成物がアモルファスであることが示された。
【0075】
実施例6:HPMCとのアモルファスST-246噴霧乾燥分散物の調製
約4.50gの(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(粘度2600-5600cp)を、約400mLのTHFおよび100mlの水に溶解した。別のフラスコで、約0.50gのST-246一水和物を、10mLのTHFに溶解した。ST-246溶液を、HPMC溶液に添加した。得られた溶液をBuchi B290ミニスプレードライヤーおよびBuchi B-295イナートループ(Inert Loop)を用い、下記パラメータに設定し、噴霧乾燥させた:
アスピレーター:100%;窒素流速:40m/hr;送り速度:40%;ならびに入口温度:65℃。
【0076】
生成物は、HPLCにより99.8%の純度を有する(224nmでの面積%)白色の綿毛状の粉末であった。生成物をその後、琥珀ガラスビンに移し、PTFE裏張りキャップで密閉した。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。XRPDディフラクトグラムはピークのないハロパターンを示し、生成物がアモルファスであることが示された。
【0077】
実施例7:PEG-4000とのホットメルト押出成形(HMS)によるアモルファスST-246の調製
約4.0gのポリ(エチレングリコール)m.w.4000を、125mL鋼ビーカー中に移し、撹拌しながら、150℃に設定した撹拌ホットプレート上に置いた。PEG4000が急速に融解した。約1.0gのST-246一水和物をその後添加し、被覆したまま10分間撹拌し続けた。その後、温度を175℃まで上昇させた。175℃で30分撹拌した後、透明な溶液が得られた。溶液を熱から取り出し、直ちに液体窒素中のビーカーに入れ、およそ2分間保持した。
【0078】
生成物は、HPLCにより99.7%の純度を有する(224nmでの面積%)白色半透明ガラスであった。生成物をその後、琥珀ガラスビンに移し、PTFE裏張りキャップで密閉した。これをフリーザー内で-20℃にて貯蔵した。図1のXRPDディフラクトグラムは、著しく欠陥のあるピークを示し、生成物が不規則結晶材料または中間相であることが示された。
【0079】
本明細書で引用される全ての参考文献は、全ての目的のために、それらの全体が、本明細書で参照により組み込まれる。
【0080】
発明をその好ましい実施形態の観点から説明してきたが、当業者に理解されるように、より広く適用可能である。発明の範囲は下記特許請求の範囲によってのみ制限される。
図1
【外国語明細書】