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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080350
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20230601BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 9/44 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230601BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 33/10 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230601BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/44
A61K9/48
A61K9/70
A61K45/00
A61P3/06
A61P5/38
A61P7/02
A61P9/10 103
A61P9/12
A61P19/08
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/16
A61P25/20
A61P25/36
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/10
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 113
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066898
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2020555294の分割
【原出願日】2017-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】520234969
【氏名又は名称】ラクソン メディカル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Laxxon Medical AG
【住所又は居所原語表記】Im Stetterfeld 2, 5608 Stetten, Switzerland
(71)【出願人】
【識別番号】518374376
【氏名又は名称】エクセンティス クノウレッジ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュネーベルガー、アヒム
(72)【発明者】
【氏名】キューネ、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ケルシュバウマー、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ファシック、スルダン
(57)【要約】
【課題】用途に合わせた、治療に合わせた、および/またはAPI固有の放出プロファイルを用いた、1つ以上の医薬品有効成分の体への制御された投与を可能にする、より効率的な薬物送達システムを提供する。
【解決手段】1つ以上の医薬品有効成分(API)の制御された投与のための薬物送達システムは、体液に可溶な基剤成分と、体液に可溶な別個の第1の成分とを含み、第1の成分は、治療有効量の第1のAPIを含み、第1の成分は、基剤成分中に不均質に配置され、第1の成分又はマーカー成分は、基剤成分と光学的に異なり、薬物送達システムの表面に二次元パターンを形成するように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の医薬品有効成分(API)の制御された投与のための薬物送達システムであって、
体液に可溶な基剤成分と、
体液に可溶な別個の第1の成分と、
を含み、
前記第1の成分は、治療有効量の第1のAPIを含み、
前記第1の成分は、前記基剤成分中に不均質に配置され、
前記第1の成分又はマーカー成分は、前記基剤成分と光学的に異なり、前記薬物送達システムの表面に二次元パターンを形成するように配置される、薬物送達システム。
【請求項2】
前記基剤成分は、三次元体であり、前記第1の成分は、前記基剤成分にわたって不均質に配置される、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項3】
前記第1のAPIの濃度は、前記薬物送達システムにわたって変化する、請求項1または2に記載の薬物送達システム。
【請求項4】
前記第1のAPIの濃度は、前記薬物送達システムの中心、端部、または中間領域で最大である、請求項3に記載の薬物送達システム。
【請求項5】
前記第1のAPIの濃度勾配は、前記薬物送達システムの中心に向かって、または前記薬物送達システムの中心から離れるにつれて増加する、請求項3または4に記載の薬物送達システム。
【請求項6】
前記薬物送達システムにおける前記第1のAPIの濃度プロファイルは、高濃度領域への滑らかな遷移を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項7】
前記薬物送達システムにおける前記第1のAPIの濃度プロファイルは、複数の高濃度領域を有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項8】
前記薬物送達システムにおける前記第1のAPIの濃度の振幅は、5%以上である、請求項3~7のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項9】
前記薬物送達システムにおける前記第1のAPIの濃度の振幅は、100%以下である、請求項3~8のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項10】
前記第1のAPIの濃度プロファイルは、前記薬物送達システムの適用時に、前記第1のAPIが所定の放出プロファイルで前記薬物送達システムから放出されるように構成される、請求項3~9のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項11】
前記所定の放出プロファイルは、一定速度で放出される部分を含む、請求項10に記載の薬物送達システム。
【請求項12】
前記第1のAPIの濃度プロファイルは、前記薬物送達システムの適用時に、前記第1のAPIが2つ以上の投薬量で放出されるよう構成され、前記投薬量のうち一方での前記第1のAPIの放出は、他方の投薬量での前記第1のAPIの放出の1秒~10日前に開始される、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項13】
前記基剤成分は、前記薬物送達システムを包み、前記第1の成分は、前記薬物送達システムの外面に配置されない、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項14】
体液に可溶な別個の第2の成分を含み、
前記第2の成分は、治療有効量の第2のAPIを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項15】
前記第2の成分は、前記基剤成分中に不均質に配置される、請求項14に記載の薬物送達システム。
【請求項16】
前記薬物送達システムにおける前記第1のAPIの濃度プロファイルは、前記薬物送達システムにおける前記第2のAPIの濃度プロファイルと異なる、請求項14または15に記載の薬物送達システム。
【請求項17】
前記第1の成分および前記第2の成分は、前記薬物送達システムの適用時に、前記第1のAPIの放出が前記第2のAPIの放出前に開始されるように、前記薬物送達システムに配置され、前記第1のAPIの放出は、前記第2のAPIの放出の1秒~10日前に開始される、請求項14~16のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項18】
前記第1の成分および前記第2の成分は、前記薬物送達システムの適用時に、前記第1のAPIの放出プロファイルが、前記第2のAPIの放出プロファイルと異なるように、前記薬物送達システムに配置される、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項19】
前記第1の成分及び前記第2の成分のうち1つ以上は、セラミック、金属、ポリマー、ミネラル、充填剤、湿式結合剤、乾式結合剤、および/または滑剤を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項20】
前記第1の成分及び前記第2の成分のうち1つ以上は、崩壊剤を含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項21】
前記崩壊剤は、
セルロース、
クロスカルメロースナトリウム、
クロスポビドン、
デンプン、
架橋ポリビニルピロリドン、
デンプングリコール酸ナトリウム、および/または
カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項20に記載の薬物送達システム。
【請求項22】
前記薬物送達システムにおける前記第1のAPIの総量は、1μg~100gである、請求項1~21のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項23】
前記第1の成分は、
管状、
スポット状、
楕円形状、
板状、および/または
多角形状である幾何学的形状を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項24】
前記二次元パターンは外部から視認可能である、請求項1~23のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項25】
前記二次元パターンは、前記薬物送達システムの由来を確認可能にする、請求項1~24のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項26】
前記二次元パターンは、不連続パターンである、請求項1~25のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項27】
前記薬物送達システムは、
錠剤、
カプセル、
ディスク、
フィルム、
インプラント、
皮下インプラント、
パッチ、ペレット、または
顆粒の形態である、請求項1~26のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項28】
前記第1のAPIは、駆虫剤、麻薬および麻薬拮抗剤、抗ヒスタミン剤、アドレナリン作動剤、アドレナリン遮断剤、鎮静催眠剤、CNS剤、鎮痛剤、抗パーキンソン病剤、ステロイド、冠血管拡張剤、抗凝固剤、抗高コレステロール血症剤、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、骨成長促進剤、抗がん剤、ビタミン、抗炎症剤、降圧剤から選択されるいずれかを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【請求項29】
前記第1のAPIは、プレガバリン、ルラシドン、フェンタニル、リバロキサバン、シルデナフィル/タダラフィル、デサチニブ、ソラフェニブ、バレニクリン、メマンチン、デキスランソプラゾール、スニチニブ、ネビボロール、ゾルミトリプタン、シタグリプチン、ラコサミド、デスベンラファキシン、レナリドミド、レディパスビル/ソフォスブビル、アリピプラゾール、レボドパ、またはオンダンセトロン/グラニセトロンから選択されるいずれかを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の医薬品有効成分の体への制御された投与、好ましくは全身投与のため、(限定されないが)特に経口投与のための、薬物送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物または医薬品は一般に、疾患の診断、治療、処置、または予防に使用される。医薬品有効成分(API)は、その効果を生み出す薬物の一部である。いくつかの薬物には、さまざまな症状を治療したり、さまざまな方法で作用したりする多様なAPIが含まれる。したがって、薬物によって1つ以上のAPIが送達され得る。薬物の送達、または薬物送達は、所望の(治療)効果を安全に達成するため、必要に応じた、患者の体内への医薬化合物の輸送を指す場合がある。患者の体内への薬物の送達または投与は、さまざまな方法で行われる。投与経路には、静脈内経路(静脈穿刺による血液区画への侵入)および経口経路(患者の口、例えば、口腔粘膜からの侵入、または胃腸管を通過し、胃または腸の粘膜を介して血液区画に到達)が含まれる。また、薬物は、組織への注射(皮下注射、筋肉内注射など)、または局所塗布(例えば、皮膚用クリーム)による吸入により、投与することができる。薬物は、さまざまな剤形で提供することができる。剤形としては、丸剤、錠剤、カプセル、溶液、分散液、乳濁液、インプラントなどが挙げられる。
【0003】
錠剤は医薬剤形である。錠剤は、任意に含まれる適切な賦形剤と、APIとを含む医薬品の固体単位剤形である。錠剤は、成形または圧縮によって調製することができる。錠剤の製造時は、通常、適切な量の医薬品有効成分が各錠剤に含まれることが主なガイドラインとなる。このため、全ての成分をよく混合する必要がある。これにより、成分の均質な混合物が得られる。次いで、錠剤を得るために、例えば特定の量の混合物を圧縮する。これにより、APIは通常、錠剤全体またはその一部に均質に分散される。
【0004】
錠剤を適用、例えば経口投与すると、錠剤が溶解し、APIが放出される。その後、錠剤は腸粘膜を通過して血液区画に到達し、最終的に作用組織に到達する。一般的な薬物送達システムでは、血液区画内のAPIの濃度は通常、所定期間のみ、APIの有効性閾値を超える。この期間中の薬物送達システムから胃腸管へのAPIの放出量は、通常、実際に必要な量よりはるかに多いため、過剰量のAPIが、(i)膜を十分に通過できず、体に回収されて排泄される可能性や、(ii)血液区画や組織に到達して毒性作用を引き起こす可能性がある。
【0005】
APIの放出プロファイルは、薬物適用のそれぞれの背景、または特定の治療プログラムに応じて、特定のプロファイルを有することが望ましい。例えば、長期間にわたって一定の速度でAPIを放出することが望ましい場合がある。また、APIの有効性閾値をわずかに超えた放出速度で、APIを緩やかに体に放出することが望ましく、放出速度は時間にほぼ依存しない場合がある。また、APIを特定の間隔で、例えば時間をかけて断続的に放出することが望ましい場合がある。さらには、API固有の放出プロファイルにより、複数のAPIを順次、またはそれぞれの放出速度で同時に放出することが望ましい場合がある。
【0006】
従来の製造技術の要件と制限によるAPIの均質分布により特徴づけられる一般的な錠剤からのAPIの放出は、主に崩壊する錠剤のサイズ、特に周囲の流体に曝される表面によって決まる。このように、APIの放出プロファイルは、例えば最初に多量放出され、時間の経過とともに減少するように、錠剤の形状とサイズによって予め定められ、固定されている。結果、APIの血液/組織濃度は、それぞれの有効性閾値以上の所望の濃度期間が得られるように、閾値を大きく超え得る。
【0007】
このような放出プロファイルは、治療濃度域が狭い(治療線量と毒性線量の差がほとんどない)APIには特に不利である。治療指数(NTI)の狭いAPIとしては、アミノグリコシド、シクロスポリン、カルバマゼピン、ジゴキシン、ジギトキシン、フレカイニド、リチウム、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシン、テオフィリン、ワルファリンなどが挙げられる。
【0008】
米国特許第3,854,480号明細書には、長期間にわたって制御された速度で医薬品有効成分を放出するための薬物送達システムが記載されている。この薬物送達システムは、内部に薬物の固体粒子が分布する固体内部マトリックス材料と、体液に透過性かつ不溶性であり、内部マトリックスを覆う外部高分子膜とを含む。外部高分子膜は、内部マトリックス材料からシステムの外部への薬物の流れを、制御された一定の速度で長期間にわたって連続的に計測する。しかしながら、米国特許第3,854,480号明細書による薬物送達システムでは、複雑な放出プロファイルを使用することができない。また、患者の体への不溶性高分子膜の投与は望ましくない。
【0009】
米国特許第5,674,530号明細書は、薬物送達システムに関し、第1の水透過性カプセルの半分が、薬物および浸透剤で充填されている。米国特許出願公開第2010/0068271号明細書は、2つの使用可能な半強度の錠剤に分割可能な、錠剤で使用される浸透性送達システムに関する。浸透圧効果による放出は、患者における薬物送達システムの環境に依存し、所望の標的での正確な薬物放出が困難である。したがって、このようなシステムでは制御された正確な薬物放出を達成することは難しい。さらに、このシステムでは、複雑な放出プロファイルを使用することができない。
【0010】
国際公開第1993/007861号は、マイクロカプセルまたはミクロスフェアを含む薬物送達システムに関し、多相ミクロスフェアは、高分子マトリックス内の固定油に含まれる分子化合物を含むことが記載されている。分子化合物は、ミクロスフェアの外に拡散する前に、水油バリアを通過し、高分子マトリックスの高分子バリアを通過する必要がある。これにより、ミクロスフェアの高薬物負荷効率を犠牲にすることなく、分子化合物の一定かつ固定された送達速度を得ることができる。しかしながら、この従来のシステムでは、より複雑な放出プロファイルを使用することができない。
【0011】
国際公開第1999/008662号は、有効成分の2段階放出を促進する経口投与に適した薬物送達システムに関する。この薬物送達システムは、第1の薬物区画、第1の薬物区画を実質的に包む第1のポリマー区画、第1のポリマー区画を包む第2の薬物区画、および第2の薬物区画を包む第2のポリマー区画を含む。第2のポリマー区画は、例えば1つ以上の水不溶性ポリマーからなり、第2の薬物区画からの有効成分の放出を制御する。しかしながら、この従来のシステムでは、より複雑な放出プロファイルを使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,854,480号明細書
【特許文献2】米国特許第5,674,530号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0068271号明細書
【特許文献4】国際公開第1993/007861号
【特許文献5】国際公開第1999/008662号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明における課題の1つは、用途に合わせた、治療に合わせた、および/またはAPI固有の放出プロファイルを用いた、1つ以上の医薬品有効成分の体への制御された投与を可能にする、より効率的な薬物送達システムを提供することである。本発明のさらなる目的は、複数のAPIが所定の方法で、好ましくは所望のAPI固有の放出プロファイルで、それぞれ放出されるような、APIの体への制御された投与を可能にする薬物送達システムを提供することである。本発明の目的は、薬物動態および薬力学を最適化するように構成される。
【0014】
以下の説明から当業者に明らかであるこれらの目的および他の目的は、請求項1及び請求項1に従属するいくつかの従属請求項による薬物送達システムによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、薬物送達システムに関する。薬物送達システムは、例えば薬物であり、所望の治療効果を安全に達成するために必要に応じて患者の体内での医薬品有効成分(API)の輸送を可能にする。薬物送達システムは、1つのAPI、または複数のAPI、またはビタミンやミネラルなどの他の成分を含み得る。薬物送達システムは、例えば生体侵食性薬物送達システムである。すなわち、薬物送達システムは、患者の体に適用されると侵食、例えば患者の口内で溶解してもよい。本発明の薬物送達システムは、1つ以上のAPIの体への制御された投与に特に適している。体とは、例えば人や動物などの患者の体である。特に、薬物送達システムは、1つ以上のAPIの体への経口投与に使用され、システムは患者の口内で溶解し得る。したがって、本発明の薬物送達システムによれば、特定の治療または適用事例に応じて、APIを制御された方法で投与することができる。
【0016】
本発明の薬物送達システムは、体液に可溶な基剤成分を含む。体液は、例えば、血液または体組織液を含む。遭遇する体液は投与経路によって異なる。経口摂取の場合、外層の組成により、薬物送達システムの溶解が口内で始まるか(唾液への溶解)、システムが胃腸管、特に胃(酸性環境)、回腸、空腸などを通過する過程で始まるかが決まる。また、薬物送達システムは、組織(例えば、皮下、筋肉内)または体腔(例えば、胸膜腔)または脳脊髄液腔に直接配置することもできる。脳室に配置する場合、薬物送達システムが脳脊髄液内で溶解し、放出されたAPIが脳組織に到達し得る。体腔(例えば、胸膜腔、腹膜腔)への配置は、これらの位置に多量のAPIが到達することを意味する。別の可能性としては、吸入時に気道内で溶解することも考えられる。当業者であれば、薬物送達システムの溶解特性が、それぞれの治療または適用に応じて、APIの適切な放出が得られるように選択され得ることを理解するであろう。これにより、即効型の溶解や遅延型の溶解を選択することができる。
【0017】
さらに、本発明の薬物送達システムは、体液に可溶な別個の第1の成分を含む。したがって、第1の成分は、基剤成分と同様に溶解することができる。基剤成分および第1の成分は、同じ体液に可溶であることが好ましい。第1の成分は、古典的な方法で基剤成分と混合されて均質な混合物を形成するのではなく、基剤成分とは別個の成分として与えられる。したがって、薬物送達システム内では、基剤成分と第1の成分を区別することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、第1の成分は、治療有効量の第1の医薬品有効成分を含む。したがって、第1の成分は、薬物送達システムにより送達または投与されるAPIを含む。第1のAPIは、第1の成分内に均質に分布してもよい。当業者であれば、第1の成分が、第1の成分内に均質に分布するいくつかのAPIを含み得ることを理解するだろう。また、基剤成分は、医薬品有効成分を含んでもよい。
【0019】
さらに、本発明によれば、第1の成分は、基剤成分中に不均質に配置される。したがって、基剤成分および別個の第1の成分は、薬物送達システムにおいて均質な混合物として提供されるのではなく、好ましくは特定の方法で、第1の成分が基剤成分中に不均質に配置された別個の成分として提供される。第1の成分は、基剤成分において、1つ、2つ、最も好ましくは3つの空間または直交方向に沿って、不均質または不連続に配置される。このように成分を配置することで、制御された望ましい方法でシステムに第1の成分が配置され、システム全体にわたって第1の成分(第1のAPI)が均質に分布されなくなる。代わりに、成分の特定の配置により不均質性が構成される。基剤成分と第1の成分は別個の成分として提供されるが、第1の成分は、基剤成分からなるマトリックス内に不均質に配置することができる。例えば、基剤成分中に配置された第1の成分の量は、システム全体にわたって特定の方向に沿って徐々に増加する。
【0020】
基剤成分は、三次元体であり、別個の第1の成分は、該基剤成分にわたって不均質に配置されてもよい。したがって、薬物送達システムの本体が基剤成分で構成されてもよく、例えば所定のサイズの薬物送達システムの1つ以上の部分が第1の成分で構成されてもよい。基剤成分および第1の成分は、仮想の二次元または三次元グリッド上に配置されてもよく、グリッドの各ピクセルは、基剤成分または第1の成分によって占められてもよい。このように、第1の成分は、基剤成分に不均質に配置されているため、薬物送達システム自体にも不均質に配置される。このような各ピクセルのサイズまたは体積は、1μm~1cmの範囲、好ましくは10μm~100mmの範囲、好ましくは100μm~10mmの範囲、最も好ましくは約1mmである。第1の成分および基剤成分は、薬物送達システムの成分から構成される二次元または三次元構造が好ましくは10dpi~10000dpiの範囲、より好ましくは100dpi~5000dpi、さらに好ましくは200dpi~2000dpi、さらに好ましくは500dpi~1000dpiの解像度となるように配置される。
【0021】
基剤成分と第1の成分の特定の配置により、第1のAPIを所望の通りに放出することができる。基剤成分と第1の成分はどちらも体液に可溶であるため、基剤成分に対する第1の成分の不均質配置を調整することで、第1のAPIが薬物送達システムから放出される時間と速度を制御することができる。これにより、所与のAPIの体への制御された投与のための最適なAPI放出が可能な薬物送達システムを得ることができる。APIの放出は、好ましくは、成分の溶解特性および薬物送達システムの形態によってのみ決まる。APIを放出するための浸透圧性薬剤などのさらなる放出剤は不要である。
【0022】
薬物送達システムにおけるAPIの均質分布という共通原則がないため、システムにおいてAPIを特定の形に配置し、カスタマイズされたAPIの放出プロファイルを有する薬物送達システムを得ることができる。APIを含む成分は、好ましくは血液/組織濃度がAPIの有効性閾値をわずかに超えた状態で、APIが安定して放出されるように配置されてもよい。これにより、本発明の薬物送達システムでは、均質なAPI分布を有する一般的な薬物送達システムと比較して、必要とされるAPIが効果的により少量となり、より低い副作用で同等の臨床結果を維持することができる。
【0023】
本発明によれば、薬物送達システムにおけるAPIの不均質分布が標準的に利用され、これにより、成分の特定の配置が選択または設定される。これにより、本明細書に説明されるように、有利な放出プロファイルを有する薬物送達システムを提供することができる。成分の配置の標準化、決定、または規格化、すなわちAPIの不均質性の標準化、決定、または規格化により、このような薬物送達システムを均一に大量生産することができる。
【0024】
薬物送達システムの成分のいずれかまたは全ては、例えば、水、ポリビニルピロリドン、クエン酸、ヒプロメロース、ステアリン酸塩、ケイ酸、グリセロール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、セルロースクロスカラメロース、グリコール、結晶ゼラチン、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、炭化水素、ラクチド、乳酸、シリカ、ポロキサマー、キシリトール、エリスリトール、エタノール、イソプロパノール、トリアセチン、アスパルテーム、重炭酸ナトリウム、および/またはアセトンを含む。
【0025】
好ましい実施形態では、第1のAPIの濃度は、薬物送達システムにわたって変化し、さらに好ましくは、基剤成分からなる本体にわたって変化する。例えば、第1の成分は、薬物送達システムの中央部分にのみ設けられる。したがって、薬物送達システムのある領域は、高濃度の第1のAPIを有すると識別されてもよく、また、ある領域は、低濃度の第1のAPIを有する(または全く有さない)と識別されてもよい。これにより、薬物送達システムの形態または形状、ならびに、基剤成分および第1の成分の溶解特性を考慮しながら、最終的にAPIがいつどのように放出されるかを正確に制御することができる。
【0026】
さらに好ましくは、第1のAPIの濃度は、システムの中心、端部、または中間領域で最大である。したがって、例えば、薬物送達システムが錠剤の形態である場合、第1の成分は、第1のAPIのピーク濃度が錠剤の中心または中心部分にくるように配置されてもよい。これにより、薬物送達システムの形状にもよるが、錠剤の投与、および、基剤成分と第1の成分の溶解時に、第1のAPIの放出を時間が経つにつれて増加させるか、時間によらずほぼ一定とすることができる。これにより、APIの特定の放出が可能となる。
【0027】
さらに好ましくは、第1のAPIの濃度勾配は、薬物送達システムの中心に向かって、または中心から離れるにつれて増加する。例えば、第1の成分の量は、薬物送達システムの中心に向かって増加してもよい。例えば、薬物送達システムが球状の錠剤の形態である場合、第1の成分、延いては第1のAPIは、濃度が錠剤の中心に向かって増加していれば、薬物送達システムの適用時に放出速度がほぼ一定になり得る。薬物送達システムにおけるAPIの濃度プロファイルを調整することにより、APIの放出プロファイルを適切に制御することができる。
【0028】
さらに好ましくは、システムにおける第1のAPIの濃度プロファイルは、高濃度領域への滑らかな遷移を有する。したがって、濃度プロファイルは、低濃度(または濃度ゼロ)の領域と高濃度の領域との間の滑らかな遷移を有してもよい。例えば、第1の成分の量は、薬物送達システムの中心に向かって徐々に増加してもよい。ここで、滑らかな遷移とは、濃度プロファイルに急激な段差や不連続な段差がないことと定義できる。濃度プロファイルとは、薬物送達システムを斜めに、例えばシステムの一端からその中心まで通る、あるいは薬物送達システム全体に及ぶ、第1のAPIの濃度のプロファイルを表す。このような滑らかな遷移により、各成分の溶解時にAPIの放出開始をスムーズに行うことができる。
【0029】
さらに好ましくは、システムにおける第1のAPIの濃度プロファイルは、複数の高濃度領域を有する。これにより、薬物送達システムを用いて、複数の投与量でAPIを経時的に投与することができる。特に、溶解方向(例えば、端から中心に向かう方向)に沿った薬物送達システムにおける第1のAPIの量は、オニオンスキン式に不連続かつ反復的であることが好ましい。このようなシステムの各シェルでは、好ましくは第1のAPIの放出が突然開始されないように、また、放出が徐々に開始および/または終了するように、第1の成分が不均質に配置される。これにより、第1のAPIの放出量が多い間隔の後に、放出量が少ない、あるいは放出がない間隔が続く、APIの放出の波が生じる。さらに、APIを複数のフェーズで経時的に投与することができる。これらのフェーズ(特にその開始)は、システム内の高濃度領域の配置を調整することによって制御することができる。
【0030】
さらに好ましくは、システムにおける第1のAPIの濃度の振幅は、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくはほぼ100%である。さらに好ましくは、システムにおける第1のAPIの濃度の振幅は、ほぼ100%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。濃度の振幅は、基剤成分に対する第1の成分の局所配置によって制御可能に設定することができ、これにより所望の通りに第1のAPIを投与することが可能となる。尚、第1のAPIの濃度の振幅とは、システムにおけるAPIの最大濃度と最小濃度の差として定義できる。ここで、濃度とは、例えば質量濃度であってよい。濃度を測定するためのそれぞれのサンプル体積は、任意の適切な体積であってよく、例えば1μmである。例えば、システムのサンプル体積の最高濃度が約80%で、システムのサンプル体積の最低濃度が約10%の場合、濃度の振幅は70%である。したがって、例えば、薬物送達システム全体にわたって第1のAPIの濃度は10%以上であり、薬物送達システムの中央部分で第1のAPIの濃度は80%まで増加してもよい。
【0031】
さらに好ましくは、第1のAPIの濃度プロファイルは、システムの適用時に、第1のAPIが所定の放出プロファイルでシステムから放出されるように構成され、さらに好ましくは、放出プロファイルは、一定速度で放出される部分を含む。したがって、第1の成分は、薬物送達システムの適用時に、基剤成分および第1の成分が溶解する際に、好ましい実施形態における一定速度の放出部分を含むAPIの特定の放出プロファイルが得られるように、基剤成分内に配置されてもよい。
【0032】
特に好ましくは、第1の成分は、システムまたは成分の溶解時に、システムの外表面における第1のAPIの総量が所定の時間ほぼ一定であるように、基剤成分中に配置される。所定の時間は、好ましくは、1秒~180日の範囲である。例えば、第1の成分の量は、薬物送達システムの中心部分に向かって増加してもよい。当業者であれば、それぞれの用途および薬物送達システムの形態に応じて、長期または短期の放出が適用可能であることを理解するだろう。例えば、薬物送達システムがインプラントの形態である場合、最大180日間の長い期間、APIを放出してもよい。例えば、薬物送達システムが錠剤の形態である場合、最大12時間の期間、APIを放出してもよい。一定放出の時間は、好ましくは5秒~24時間、さらに好ましくは10秒~12時間、さらに好ましくは1分~6時間、さらに好ましくは10分~1時間の範囲である。球状の錠剤の一例では、第1のAPIの濃度勾配が内向きであれば、システムが溶解しても、すなわちシステムの体積や表面が収縮しても、システムの表面上のAPIの量を一定とすることができる。したがって、第1の成分は、最終的に第1のAPIの濃度がシステムの表面までの距離に依存するように配置することができる。したがって、第1の成分を基剤成分に不均質に配置することにより、第1のAPIの一定放出を設定することができる。
【0033】
さらに好ましくは、第1のAPIの濃度プロファイルは、システムの適用時に、第1のAPIが2つ以上の投薬量で放出されるよう構成され、投薬量のうち一方での第1のAPIの放出は、他方の投薬量での第1のAPIの放出の、好ましくは1秒~10日(上限値は、例えば薬物送達システムがインプラントである場合に適用される)、より好ましくは2秒~1日、より好ましくは5秒~12時間、より好ましくは10秒~6時間、より好ましくは20秒~2時間、より好ましくは1分~1時間、最も好ましくは10分~30分前に開始される。例えば、第1の成分は、薬物送達システムの中心に向かう方向において、複数の離れた位置に配置されてもよい。これにより、例えば、薬物送達システムが錠剤の形態である場合、錠剤の経口投与時に、投与後すぐに第1のAPIを第1の投与量で放出し、その後、第1のAPIを第2の投与量で放出することができる。これらの投与量は均一であっても、互いに異なっていてもよい。ここで述べられるAPIの放出期間は、例えばUSPガイドライン「General Chapter<711>Dissolution」に従って、溶出試験によって測定することができる。
【0034】
さらに好ましくは、基剤成分は、システムを包み、第1の成分は、システムの外面に配置されない。したがって、第1のAPIを含む第1の成分は、少なくともシステムの適用前は外部から接触を受けないように配置されてもよい。これにより、第1のAPIが環境から効果的に密閉され、汚染リスクを低減することができる。さらに、例えば錠剤の形態である場合、まず基剤成分が(少なくとも部分的に)溶解する必要があるため、経口投与時に第1の成分の溶解が遅延する。これにより、第1のAPIの遅延投与が可能になる。好ましくは、薬物送達システムは、薬物送達システムの適用後、第1のAPIの放出が、1秒~1日、より好ましくは10秒~12時間、さらに好ましくは30秒~6時間、さらに好ましくは1分~4時間、さらに好ましくは10分~2時間、さらに好ましくは30分から1時間後に開始するように構成される。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、薬物送達システムは、体液に可溶な別個の第2の成分をさらに含み、第2の成分は、治療有効量の第2のAPIを含む。これにより、薬物送達システムは、特定の適用における複数のAPIの制御された投与が可能となる。これらのAPIは、それぞれの成分の溶解後に相互作用し、体に相乗効果をもたらし得る。第1および第2のAPIは、形状や濃度が互いに異なってもよい。
【0036】
当業者であれば、第1の成分および第1のAPIに関する説明が、第2の成分および第2のAPIに同様に適用され得ることを理解するだろう。また、当業者であれば、薬物送達システムが、第3のAPIを含む第3の成分や第4のAPIを含む第4の成分などの、さらなる医薬品有効成分を含むさらなる成分を有し得ることを理解するだろう。
【0037】
さらに好ましくは、第2の成分は、基剤成分中に不均質に配置される。これにより、基剤成分中の第1の成分および第2の成分の不均質配置を制御することで、薬物送達システムからの第1のAPIおよび第2のAPIの放出を相対的に制御することができる。不均質配置に関しては、上記の説明が同様に適用される。
【0038】
さらに好ましくは、システムにおける第1のAPIの濃度プロファイルは、システムにおける第2のAPIの濃度プロファイルと異なる。例えば、第1の成分の量は薬物送達システムの中心に向かって増加し、第2の成分の量は薬物送達システムの中心に向かって減少してもよい。このように、薬物送達システムでは、第1のAPIおよび第2のAPIが異なる投与量で体に放出されるように設計することができる。
【0039】
さらに好ましくは、第1の成分および第2の成分は、典型的に端側から起こるシステムの溶解開始時に、第1の活性物質がある期間放出されるように、薬物送達システムに不連続に配置される。例えば、オニオンスキン式の配置のように、第1の成分を含む層が、APIを含まない、あるいは、第2のAPIを含む別の層と隣接して配置されてもよい。層の厚さ、組成、および層内のAPIの分布などのパラメーターを変更することにより、APIの放出を制御することができる。
【0040】
さらに好ましくは、第1の成分および第2の成分は、システムの適用時に、第1のAPIの放出が第2のAPIの放出前に開始されるように、システムに配置される。例えば、第2の成分は薬物送達システムの中心側に配置されてもよく、第1の成分は薬物送達システムの端側に配置されてもよい。第1のAPIの放出は、第2のAPIの放出の、好ましくは1秒~10日(上限値は、例えば薬物送達システムがインプラントである場合に適用される)、より好ましくは2秒~1日、より好ましくは5秒~12時間、より好ましくは10秒~6時間、より好ましくは20秒~2時間、より好ましくは1分~1時間、最も好ましくは10分~30分前に開始される。したがって、好ましくは溶解方向に関して、基剤成分中に第1および第2の成分を不均質または不連続に配置することにより、第1および第2のAPIが放出される時間を相対的に制御することができる。各層内の第1および第2のAPIの空間配置に応じて、2つのAPIの放出を所定の時間間隔で分けてもよく、第2のAPIの放出開始時に第1のAPIの放出を継続させてもよい。これにより、APIの相乗効果を得ることができる。通常、APIは、適用の形態に応じて、数時間、数日、または数か月以内に体内に放出される。
【0041】
好ましくは、第1の成分および第2の成分は、システムの適用時に、第1のAPIの放出プロファイルが、第2のAPIの放出プロファイルと異なるように、システムに配置される。例えば、第1のAPIは一定速度で放出され、第2のAPIは断続的に放出されてもよい。これにより、複雑な薬物送達システムを設計することができる。
【0042】
好ましい実施形態では、システムにおける第1のAPIの総量は、1μg~100g、好ましくは10μg~10g、より好ましくは100μg~1g、より好ましくは500μg~500mg、より好ましくは1mg~100mg、より好ましくは10mg~50mgである。当業者であれば、第1のAPIに関する説明が、薬物送達システムの第2の成分または他の成分に含まれ得る第2のAPIまたは他のAPIにも適用できることを理解するだろう。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、成分のうち1つ以上は、セラミック、金属、ポリマー(好ましくはポリアクリレート)、および/またはミネラルを含む。
【0044】
また、好ましい実施形態では、成分のうち1つ以上は、各成分の溶解を促進する崩壊剤を含む。崩壊剤は、例えば、セルロース(好ましくは微結晶セルロース)、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプン(加工デンプン)、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、および/またはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0045】
好ましくは、成分の1つ以上は、着色料、甘味料、香料、抗菌防腐剤(例えば、ソルビン酸、安息香酸、パラベン、スクロース、塩化ベンザルコニウム)、APIの化学的安定性を高めるために使用される化学安定剤(例えば、アスコルビン酸やメタ重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤)、粒子の沈降を抑えるために使用される粘度調整剤(例えば、高分子材料や粘土などの無機材料)、懸濁液中の増粘剤として使用されるセルロース系材料(例えば、セルロース、セルロースエーテル、アルギン酸)から選択される1つ以上を含む。
【0046】
好ましくは、成分の1つ以上は、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、セルロース)、湿式結合剤(例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール)、乾式結合剤(例えば、セルロース、ポリエチレングリコール、メチルセルロース)、滑剤(例えば、シリカ、ステアリン酸マグネシウム、タルク)から選択される1つ以上の賦形剤を含む。
【0047】
好ましくは、第1の成分は、幾何学的形状を有する。この形状は、好ましくは、管状(中空円筒状)、スポット状(局所的な集合、塊状)、楕円形状(例えば、開円または楕円状)、板状、および/または多角形状(例えば、四角形状)である。これにより、第1の成分は、第1のAPIの所望の放出を可能とする形状を有し得る。システムの他の成分に配置された他のAPIに関しても同様である。特定の幾何学的形状において、APIの濃度は変化してもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、薬物送達システムは、基剤成分と光学的に異なるマーカー成分を更に含む。マーカー成分は、システムの表面に、好ましくは外部から視認可能な、二次元パターンを形成するように配置される。マーカー成分は、基剤成分と異なる色を有してもよい。マーカー成分に所望の二次元パターンを付すことにより、薬物送達システムに所定の記号、ロゴ、ブランド名などを設けることができる。これにより、ユーザーが薬物送達システムの由来を確認できる一種のセキュリティ機能を提供することができる。
【0049】
別の好ましい実施形態では、第1の成分は、基剤成分と光学的に異なり、システムの表面に、好ましくは外部から視認可能な、二次元パターンを形成するように配置される。第1の成分は、基剤成分と異なる色を有してもよい。この場合、第1の成分によってロゴなどが形成され、セキュリティ機能が提供される。
【0050】
さらに好ましくは、二次元パターンは、例えば基剤成分内の各成分の不均質配置による、不連続パターンである。これにより、セキュリティ機能の認証レベルの強度を高め、製品に対するユーザーの信頼度を高めることができる。
【0051】
好ましい実施形態では、薬物送達システムは、錠剤、カプセル、ディスク、フィルム、インプラント、皮下インプラント、パッチ、ペレット、または顆粒の形態である。これにより、さまざまな形態で本発明の薬物送達システムを提供することができ、これにより、特定の治療用途に応じたAPIの所望の投与および所望の放出が可能になる。
【0052】
好ましくは、薬物送達システムは、構造化された表面を有する。例えば、薬物送達システムの表面上に凸部や凹部が形成されてもよい。これにより、薬物送達システムの表面を拡張することができ、その結果、それぞれのAPIの放出量を上げることができる。本発明の薬物送達システムでは、APIは特定のAPIに限定されないことが理解されるだろう。一般に、基剤成分内で不均質に配置される各成分に設けられる任意の適切なAPIを使用することができる。例えば、APIは、抗感染剤、抗炎症剤、心臓作用剤、神経遮断剤、または栄養剤であってもよい。当業者であれば、APIはこれらに限定されないことを理解するだろう。さらに、本発明の薬物送達システムは、添加剤などのさらなる成分または物質を含み得る。
【0053】
好ましい実施形態では、第1のAPIは、駆虫剤、麻薬および麻薬拮抗剤、抗ヒスタミン剤、アドレナリン作動剤、アドレナリン遮断剤、鎮静催眠剤、CNS剤、鎮痛剤、抗パーキンソン病剤、ステロイド、冠血管拡張剤、抗凝固剤、抗高コレステロール血症剤、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、骨成長促進剤、抗がん剤、ビタミン、抗炎症剤、降圧剤から選択されるいずれかを含む。また、好ましい実施形態では、第1のAPIは、プレガバリン、ルラシドン、フェンタニル、リバロキサバン、シルデナフィル/タダラフィル、デサチニブ、ソラフェニブ、バレニクリン、メマンチン、デキスランソプラゾール、スニチニブ、ネビボロール、ゾルミトリプタン、シタグリプチン、ラコサミド、デスベンラファキシン、レナリドミド、レディパスビル/ソフォスブビル、アリピプラゾール、レボドパ、またはオンダンセトロン/グラニセトロンを含む。当業者であれば、これらに限定されないことを理解するだろう。
【0054】
好ましい実施形態では、薬物送達システムは、スクリーン印刷技術で製造される。このようなスクリーン印刷技術を用いることで、薬物送達システムの基剤成分中の第1の成分の配置を正確に制御することができる。薬物送達システムの成分をスクリーン印刷技術で配置するには、メッシュを使用することができる。これにより、成分をペーストの形態として、これらのペーストをスクリーン印刷技術で相対的に配置することができる。この場合、APIはそれぞれのペーストに可溶であってよい。
【0055】
さらに好ましくは、システムは、基剤成分を含む基剤ペーストをスクリーン印刷および硬化する工程と、第1の成分を含む第1のペーストをスクリーン印刷および硬化する工程とを交互に行うことによって製造される。当業者であれば、例えば、第2のAPIを含む第2の成分を得るため、さらなるペーストを使用できることを理解するだろう。
【0056】
本発明はさらに、1つ以上のAPIの体への制御された投与のための薬物送達システムの使用に関する。
【0057】
以下、図面を参照して本発明の例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の薬物送達システムのいくつかの設計を示す図である。
図2】本発明の薬物送達システムのさらなる設計およびその濃度プロファイルを示す図である。
図3】本発明の薬物送達システムのいくつかのAPI放出プロファイルを示す図である。
図4】本発明の薬物送達システムのさらなる設計を示す図である。
図5】本発明の薬物送達システムのさらなる設計を示す図である。
図6】本発明の薬物送達システムのさらなる設計を示す図である。
図7】本発明の構造化された薬物送達システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、本発明の薬物送達システムの9つの設計例を示している。図に示されるように、これらの設計は全て、それぞれの薬物送達システム(DDS)の本体を形成するマトリックスとしての基剤成分を含み、この基材成分中に、さらなる成分が配置される。これらの成分は、成分A、成分B、成分C、および成分Dとして表され、それぞれが治療有効量の別個の医薬品有効成分(API)を含み得る。したがって、成分A~Dはいずれも、本発明における第1の成分と見なすことができる。基剤成分と成分A~Dは体液に可溶である。
【0060】
図1のDDS(a)の設計は、丸い形状を有する。DDS(a)は、錠剤やディスクなどの形態であってもよく、例えば15mmの直径Dを有する。DDS(a)の基剤成分内には、第1のAPIを含む第1の成分A、第2のAPIを含む第2の成分B、および第3のAPIを含む第3の成分Cが配置される。図に示されるように、各APIは薬物送達システムにわたって均質には分布せず、成分A、B、Cが薬物送達システム内の特定の位置に置かれることで、基剤成分内に不均質に配置される。成分A、B、Cは、六角形状断面を有する多角形状である。
【0061】
DDS(a)の適用および溶解時、システムの端側から溶解が始まるため、まず基剤成分が溶解する。所定時間後、成分C、成分Bが溶解し始め、これによってそれぞれのAPIが放出される。その後、成分Aが最後に溶解し始め、これによって第1のAPIが放出される。このように、薬物送達システムにおける成分の特定の配置により、薬物送達システムの適用後、異なるAPIが異なる投薬量で異なる段階で放出される。また、DDS(a)内の異なる成分の特定の配置により、各APIは、個別のAPI固有の放出プロファイルで薬物送達システムの適用から所定時間後に放出される。
【0062】
図1のDDS(b)の設計は、例えば高さ2.5mm、直径15mmの錠剤として形成される。本発明によれば、それぞれAPIを含む2つの成分BおよびCが、基剤成分内に不均質に配置される。システムの適用時、放出増フェーズ間の滑らかな遷移を特徴とする、成分BおよびCに含まれるAPIの特定の放出プロファイルが得られる。
【0063】
図1のDDS(c)の設計は、DDS(a)の設計と類似しているが、基剤成分に加えて、それぞれAPIを含む2つの成分BおよびCのみを含む。システムの適用時、放出増フェーズ間の滑らかな遷移を特徴とする、成分BおよびCに含まれるAPIの特定の放出プロファイルが得られる。
【0064】
図1のDDS(d)の設計では、APIを有する2つの成分が管状に形成される。また、これらの成分は、積層状に形成されてもよい。
【0065】
図7のDDS(e)は、APIを含む成分が基剤成分内にスポット状に配置されるよう設計される。システムの適用時、放出増フェーズ間の滑らかな遷移を特徴とする、成分BおよびCに含まれるAPIの特定の放出プロファイルが得られる。
【0066】
図1のDDS(f)は、例えば高さ25mmの設計を有しており、APIを含む1つの成分のみが、管状に基剤成分中に不均質に配置される。また、この成分は板状に配置されてもよい。
【0067】
図1のDDS(g)はDDS(e)と類似しているが、APIを含む成分はよりランダムに配置される。システムの適用時、放出増フェーズ間の滑らかな遷移を特徴とする、成分BおよびCに含まれるAPIの特定の放出プロファイルが得られる。
【0068】
図1のDDS(h)は、APIを含む成分が、基剤成分内に円形状に配置された設計を有する。薬物送達システムの適用時、基剤成分と第1の成分が交互に溶解し、第1のAPIが断続的に、例えば周期的に放出される。第1のAPIが完全に放出された後、第2の成分が溶解し始め、第2のAPIが放出される。図に示されるように、成分Aの円は同心ではなく、厚さも均一ではない。この不均質配置により、放出増フェーズ間の滑らかな遷移を特徴とする、特定の放出プロファイルが得られる。
【0069】
図1のDDS(i)は、APIを含む成分が、基剤成分に配置された添加剤のマトリックス内に特定のパターンで配置された設計を有する。
【0070】
当業者であれば、図1を参照して説明した各システムが、内部に配置されたAPIに関して特定の放出特性を有することを理解するだろう。また、治療用途に応じて、当業者は、本発明による基剤成分中のAPIの不均質配置を有する、適切な設計を選択することを理解するだろう。
【0071】
図2は、本発明の薬物送達システムのさらなる設計を示す。ここで、APIを含む成分と基剤成分は、各「ピクセル」がAPI成分または基剤成分のいずれかによって定義されるグリッド構造に配置される。図に示されるように、これらの2つの成分は、薬物送達システムの中心部分で「APIピクセル」の密度が高くなるように配置される。これは、図2に示されているAPI濃度プロファイルからも明らかである。このプロファイルでは、システムの中心でAPI濃度が高くピークとなり、システムの端側ではAPI濃度が低くなる。端側の低API濃度から中心の高API濃度への遷移は、急な段差がなく、滑らかである。このような薬物送達システムにより、2つの成分が溶解した際のシステムの放出プロファイルを、所望の方法で調整または構成することができる。
【0072】
図3は、APIが均質に分布した一般的な薬物送達システムの放出プロファイル(図3のグラフ(1))と、本発明による薬物送達システムの2つの放出プロファイル(図3のグラフ(2)および(3))を示す。それぞれの薬物送達システムの設計はグラフの横に示される。薬物送達システムは、丸い形状であり、例えば経口投与により溶解する錠剤である。それぞれのグラフは、それぞれの薬物送達システムのAPIの放出を経時的に示している。
【0073】
図3のグラフ(1)に関して、薬物送達システムは、APIがシステム全体に均質に分布するよう設計されている。一般的な従来の薬物送達システムの特徴であるこの均質性は、対応する製造工程に由来する。従来の薬物送達システムが分解すると、APIが放出される。均質なシステムの溶解特性とシステムの形状により、特定の固定された放出プロファイルが得られる。図3のグラフ(1)からわかるように、APIの放出は時間とともに徐々に増加し、最大値に達した後、徐々に減少する。
【0074】
本発明のAPIの不均質配置により、異なる放出プロファイルを得ることができる。図3のグラフ(2)に関する設計は、APIが薬物送達システムの端側に配置されており、図3のグラフ(1)に関する設計とは異なる。したがって、APIがシステム内に不均質に、ここではシステムの端側において高濃度で配置されているため、システム内でのAPIの均質分布の原則が適用されない。APIの濃度は、システムの中心に向かって滑らかに減少する。図3のグラフ(2)に関する薬物送達システムを適用すると、APIがまず多量に放出され、その後徐々に減少していく。当業者には理解されるように、このような初期の多量API放出は、特定の適用にとって有益となる。
【0075】
図3のグラフ(3)に関する設計では、APIは薬物送達システムの中心部分に蓄積されている。したがって、API濃度はシステムの中心で最大となり、濃度勾配はシステムの端から中心に向かう。図3のグラフ(3)からわかるように、放出は長時間にわたって徐々に増加し、一般的な設計と比べて、最大放出速度が遅延する。一般的な設計と比較すると、APIの放出は、長期間にわたってより一定となると考えられる。このような放出プロファイルは、当業者によって理解されるように、特定の用途にとって有益である。
【0076】
図4は、本発明の薬物送達システムのさらなる設計例を示す。システムの全体的な形状は、直径5~25mm、好ましくは20mmまたは15mm、厚さ0.5~15mm、好ましくは2mmまたは6mmの丸いディスク形状である。錠剤の切欠きは、錠剤内の成分の配置を可視化するためのものである。
【0077】
図4のDDS(j)の設計では、第1のAPIを含む第1の成分が錠剤の中心部分に配置され、基剤成分で囲まれており、錠剤全体が被膜でコーティングされている。被膜は、親水性被膜であってもよく、あるいは、例えば腸溶性であってもよい。錠剤内のAPIの濃度は、錠剤の中心で最大である。APIの濃度プロファイルは、錠剤の端から錠剤の中心に向かって滑らかな遷移を有するように構成される。
【0078】
図4のDDS(k)の設計では、第1のAPIを含む第1の成分と、第2のAPIを含む第2の成分が基剤成分内に配置されており、被膜も設けられている。第2の成分は、球状に配置され、第2のAPIの濃度は球の表面で最大であり、球の中心に向かって滑らかに減少する。第2の成分からなる球体の内部には、第1の成分が配置される。これにより、錠剤の適用および成分の溶解時に、第2のAPIが第1のAPIの前に放出され、遷移中に両方のAPIが放出される。
【0079】
図4のDDS(l)の設計は、2つの異なるAPIを有しており、第2のAPIは錠剤の中心部分に位置し、第1のAPIは第2のAPIの周りに位置する。これらのAPIの界面領域では、両方のAPIが配置されるようにAPIが重複して存在する。これにより、滑らかなクロスオーバーが得られる。さらに、システム内に延在する層、例えば疎水性層が設けられる。
【0080】
図4のDDS(m)の設計には、被膜が含まれない。APIは、API濃度が異なる領域が形成されるように、錠剤内に不均質に配置される。
【0081】
図5は、本発明の薬物送達システムのさらなる設計例を示す。システムの全体的な形状は、特定の厚さを有する丸いディスク形状である。図からわかるように、システムには、1つ以上のマークが少なくとも部分的に錠剤の表面に設けられている。マークは、錠剤の表面に視認可能な二次元パターンを形成する。図5に示すように、マークのパターンは不連続なパターンであってもよい。パターンは、例えば、滑らかな曲線や鋭いエッジを含む。したがって、パターンは、不均質に配置され得る。マークは、特定のマーク成分、またはAPIを含む成分によって形成することができる。このような複雑なマークを薬物送達システムに設けることにより、ユーザーが薬物送達システムの由来を確認できるセキュリティ機能を得ることができる。
【0082】
図6は、本発明の薬物送達システムのさらなる設計例を示す。このシステムは球状であり、疎水性被膜を有する。被膜は、1μm~500μmのサイズの親水性細孔を含む。薬物送達システム内には、基剤成分と3つの異なる医薬品有効成分、API A、API B、API Cが設けられている。API Cは、システムの中心部分に位置し、辺縁パターンを有する。他の2つのAPI AおよびBはAPI Cを囲んでいる。API Bは、APIが均質に分布した中空の球体として設けられる。また、API Aは、API Cを囲んで不均質に分布している。そのため、API Aの濃度は、図示された薬物送達システムの端部に向かって減少する。
【0083】
図7は、本発明の薬物送達システムの断面を示している。図示されるように、薬物送達システムの表面は構造化されており、一方の側面に6つの凸部とその間に凹部が形成されている。このように表面を増やすことにより、薬物送達システムの溶解、すなわちAPIの放出を強化することができる。当業者であれば、薬物送達システムの表面全体、またはその一部分もしくは複数部分のみが構造化され得ることを理解するだろう。
【0084】
このように、当業者であれば、本発明の薬物送達システムにより、APIの所望の放出を達成するために、システム内の1つ以上のAPIの特定の不均質分布を調整することを理解するだろう。また、当業者であれば、APIの即時放出または遅延放出を得ることができることを理解するだろう。さらに、特定の単一のAPIを、例えば断続的に、長期間にわたって異なる投薬量で放出することが可能であり、これにより、段階的にAPIを放出することができる。
【0085】
さらに、単一の新しい薬物送達システムを用いることで、異なるAPIを異なる段階で放出することができる。例えば、第2のAPIの放出前に第1のAPIが放出されるようにシステムを設計することができる。2つまたはそれ以上のAPIを組み合わせたシステムの例としては、プロトンポンプ阻害剤や抗ヒスタミンなどの胃保護剤と、イブプロフェンやジクロフェナクなどの非ステロイド性抗炎症物質との組み合わせが挙げられる。別の例としては、鎮吐薬(オンダンセトロン、ドンペリドンなど)と鎮痛薬、特に中枢神経系の構造に作用するもの(トラマドール塩酸塩など)の組み合わせが挙げられる。別の例としては、カルビドパとレボドパの組み合わせ、すなわち、医薬活性成分の分解を防ぐ薬剤の組み合わせが挙げられる。当業者であれば、これらの2つのAPIの放出が特定の相乗効果をもたらし得ることを理解するだろう。さらに、制御された放出は、例えば、薬物送達システムを午後10時に投与し、好ましくは6時間後にステロイドを放出する、コルチゾン療法のような生理学的模倣を意味し得る。ステロイドは午前4時に投与することが望ましいので、前日の夜に服用し、夜間の所望の時間にAPIが放出されるように設計された本発明の薬物送達システムを用いて、ステロイドを投与することができる。同様に、本発明の薬物送達システムによれば、例えば、長期間(例えば数日)にわたって段階的に抗生物質の適切な投与を確保することができる。これにより、処方された投与ルーチンを無視する患者の悪影響を軽減することができる。
【0086】
薬物送達システムにおける1つ以上のAPIの不均質配置の概念から生じる設計例は多様である。当業者であれば、上記の例を組み合わせて、特定の用途または治療に最適化された放出プロファイルを有するさらに複雑な設計を得ることができることを理解するだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7