IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 仁科工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-方向切換弁 図1
  • 特開-方向切換弁 図2
  • 特開-方向切換弁 図3
  • 特開-方向切換弁 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008038
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】方向切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
F16K31/06 305J
F16K31/06 305L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111278
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】390017352
【氏名又は名称】仁科工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 亮
(72)【発明者】
【氏名】中島 滋人
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 陽仁
(72)【発明者】
【氏名】木下 浩一
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA02
3H106DA13
3H106DA25
3H106DB02
3H106DB13
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC09
3H106DC19
3H106DD02
3H106EE34
3H106GA23
3H106GB06
3H106KK03
(57)【要約】
【課題】スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能で、且つ、小型、軽量化および構造の簡素化と、燃費性能の向上が可能な方向切換弁を提供する。
【解決手段】本発明に係る方向切換弁1は、外部供給源2から送出される圧力流体を流入させる流入ポート16および圧力流体を流出させる流出ポート18A、18Bに連通する筒状のスプール孔20と、スプール孔20内において軸線方向に移動可能に設けられて圧力流体の流出量を変化させるスプール22と、スプール22を駆動するソレノイド駆動部30とを備え、ソレノイド駆動部30の可動子22は、一部材から加工されることによりスプール22と一体構造である構成と、スプール22がスプール孔20内に摺動可能に保持される構成とを有することによって、ソレノイド駆動部30のケース32内に設けられる内部部材に対して非接触の状態で軸線方向に移動可能に保持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部供給源から送出される圧力流体を流入させる流入ポートおよび前記圧力流体を流出させる流出ポートに連通する筒状のスプール孔と、前記スプール孔内において軸線方向に移動可能に設けられて前記圧力流体の流出量を変化させるスプールと、前記スプールを駆動するソレノイド駆動部と、を備える方向切換弁であって、
前記ソレノイド駆動部の可動子は、一部材から加工されることにより前記スプールと一体構造である構成と、前記スプールが前記スプール孔内に摺動可能に保持される構成とを有することによって、前記ソレノイド駆動部のケース内に設けられる内部部材に対して非接触の状態で軸線方向に移動可能に保持される構成であること
を特徴とする方向切換弁。
【請求項2】
前記圧力流体は、最大圧力が10MPa以上で、且つ、最大流量が60リットル/min以上に設定されていること
を特徴とする請求項1記載の方向切換弁。
【請求項3】
前記可動子は、前記スプールの外径と同径の外径に形成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の方向切換弁。
【請求項4】
前記ソレノイド駆動部は、前記可動子をコイル励磁時に吸引される方向と逆方向に付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力を前記可動子に伝達する伝達部材と、を有し、
前記伝達部材は、前記可動子に連結させずに当接させる構成であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の方向切換弁。
【請求項5】
前記ソレノイド駆動部の固定鉄心を構成する第1ベースは、前記軸線方向に第1端部および第2端部を有すると共に、前記第2端部における外周面が前記第1端部に向かって拡径するテーパ面を有すること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の方向切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトや建設機械等に例示される作業用車両は、圧力流体(以下、単に「流体」と称する場合がある)によって駆動されるフォークやバケット等の作業装置を備えて構成されている。このような作業装置の駆動を制御するために、従来より、流体の通流方向の切換や停止を行う方向切換弁が用いられている。
【0003】
特に、大きな出力を発生させる作業装置を備える作業用車両においては、方向切換弁によって制御する流体の圧力および流量が相対的に大きく設定されている。このような流体の制御に好適な、電磁比例式減圧弁を備えたパイロット式切換弁が開発されている。
【0004】
一例として、特許文献1(特開2004-232764号公報)に開示されるパイロット式切換弁は、パイロット圧を生成する減圧弁と、この減圧弁を制御する比例ソレノイドと、パイロット圧に応じて駆動(移動)されるスプールとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-232764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に例示される電磁比例式減圧弁を備えたパイロット式切換弁によれば、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能となるため、作業装置の大出力化を図る際に好適である。しかしながら、その一方で、電磁比例式減圧弁を備えるために、体格が大型となり重量が増加すると共に構造が複雑化するという課題が生じる。さらに、スプール駆動用のパイロット圧(待機圧力)を常時、発生させておく必要があるために、搭載車両における燃費(電費を含む)性能が悪化するという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能で、且つ、小型、軽量化および構造の簡素化と、燃費性能の向上が可能な方向切換弁を提供することを目的とする。
【0008】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
開示の方向切換弁は、外部供給源から送出される圧力流体を流入させる流入ポートおよび前記圧力流体を流出させる流出ポートに連通する筒状のスプール孔と、前記スプール孔内において軸線方向に移動可能に設けられて前記圧力流体の流出量を変化させるスプールと、前記スプールを駆動するソレノイド駆動部と、を備える方向切換弁であって、前記ソレノイド駆動部の可動子は、一部材から加工されることにより前記スプールと一体構造である構成と、前記スプールが前記スプール孔内に摺動可能に保持される構成とを有することによって、前記ソレノイド駆動部のケース内に設けられる内部部材に対して非接触の状態で軸線方向に移動可能に保持される構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
開示の方向切換弁によれば、体格を大型化する手法によることなく、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能となる。したがって、従来と同等能力を有する方向切換弁を、小型、軽量で簡素な構成により実現することが可能となる。また、電磁比例式減圧弁を設けない構成によって待機圧力が不要となるため、搭載車両における燃費性能の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る方向切換弁の例を示す正面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図2におけるIII部拡大図である。
図4図3におけるIV部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る方向切換弁1の例を示す正面図(概略図)である。また、図2は、図1におけるII-II線断面図であるが、説明のために周辺機器および回路を一部追加して図示している。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
本実施形態に係る方向切換弁1は、一例として、作業用車両における作業装置を駆動する作動シリンダの作動制御、すなわち作動シリンダの作動に用いられる流体の通流方向の切換や停止を行うものである。
【0014】
先ず、本願発明者らは、前述した課題の解決を図るため、比較例に係る方向切換弁として、直動式切換弁、すなわち、スプールを直接、移動させるソレノイド駆動部を備える切換弁の採用について検討を行った。このような構成によれば、減圧弁とその制御用比例ソレノイドを省略できるため、小型、軽量化および構造の簡素化が可能となり、スプール駆動用のパイロット圧(待機圧力)低減による燃費性能の向上が可能となるためである。
【0015】
試作、実験等による検討の結果、直動式切換弁は、流体の圧力および流量が相対的に小さい場合(流体の最大圧力10MPa程度以下、最大流量50リットル/min程度以下のいわゆる小流量、中流量と称される場合)において、スプールの移動が安定的に行える知見が得られた。しかしながら、流体の圧力および流量が相対的に大きい場合(流体の最大圧力10MPa程度以上、最大流量60リットル/min程度以上のいわゆる大流量と称される場合)において、スプールの移動が不能もしくは不安定となる課題が明らかとなった。
【0016】
さらに研究を行い、上記の課題は、スプールと、ソレノイド駆動部における可動子や固定鉄心との軸ずれにより、可動子に生じる推力が偏芯してラジアル荷重が発生していることに起因するものであることを究明した。すなわち、このラジアル荷重がスプールに伝達されて、スプール孔内におけるスプールの摺動抵抗が増加し、移動不能もしくは不安定の原因となっていることを究明した。
【0017】
当該問題の解決を図る方法として、仮に、ソレノイド駆動部を大型化(一例として、直径80mm程度以上)して可動子の推力を高めれば、スプールの摺動抵抗が増加したとしても移動させることは可能となる。しかしながら、体格の小型化という主要課題の一つを解決できない結果に帰着する。
【0018】
そこで、本実施形態に係る方向切換弁1は、以下の構成を備えることにより、これまで述べた複合的な課題に対してその解決を可能としている。
【0019】
先ず、本実施形態に係る方向切換弁1の全体構成について説明する。図1図2に示すように、方向切換弁1は、圧力流体(ここでは、圧油)の外部供給源(ここでは、油圧源)であるメイン油圧ポンプ2と、フォークやバケット等の作業装置を作動させる作動シリンダ4との間に配設され、作動シリンダ4に供給される流体の流路および流量を制御する作用をなすものである。これによって、作業装置における作動方向、作動量、作動速度が設定される。
【0020】
方向切換弁1は、ハウジング10とソレノイド駆動部30とを備えて構成されている。このハウジング10には、外部供給源(メイン油圧ポンプ)2から送出される流体を流入させる流入ポート16、および当該流体を作動シリンダ4へ流出させる流出ポート18A、18Bが設けられている。さらに、ハウジング10には、流入ポート16および流出ポート18A、18Bに連通する筒状のスプール孔20と、当該スプール孔20内において軸線方向に移動可能に設けられて圧力流体の流出量を変化、停止させるスプール22(後述の可動子22と一体部材)とが設けられている。なお、流出ポート18A、18Bは作動シリンダ4から排出される流体を流入させるポートとしても用いられる。
【0021】
また、ソレノイド駆動部30は、スプール22を駆動(移動)する作用をなす部材であり、本実施形態においては、ハウジング10の両側面に対称となる配置で2個取付けられている。作動例として、オペレータが操作レバー5を操作すると、制御部6を介して操作に応じた駆動信号が対応するソレノイド駆動部30に送信され、当該ソレノイド駆動部30が駆動して、可動子22(およびスプール)が移動される(作動原理の詳細は後述する)。
【0022】
また、ハウジング10には、スプール22が収容される空間部であるスプール孔20と、流入ポート16に連通する第1流路11と、タンク3に連通する第2流路12A、12Bと、流出ポート18A、18Bにそれぞれ連通する第3流路13A、13Bとが設けられている。なお、スプール22およびスプール孔20は、断面円形状に形成されており、スプール孔20は、ハウジング10の一側面から他側面まで貫通形成されている。
【0023】
ここで、第1流路11は、メイン油圧ポンプ2と接続され、メイン油圧ポンプ2からの圧油を供給するための流路である。また、第2流路12A、12Bは、タンク3と接続され、圧油をタンク3に排出するための流路である。また、第3流路13A、13Bは、作動シリンダ4と接続され、作動シリンダ4に圧油を供給すると共に作動シリンダ4からの圧油を戻すための流路である。
【0024】
上記の第1流路11、第2流路12A、12B、および第3流路13A、13Bは、スプール孔20と連通する構成となっている。なお、一例として、第1流路11は、第3流路13A、13B間に配置されている。また、第3流路13Aは、第1流路11と第2流路12Aとの間に配置されている。また、第3流路13Bは、第1流路11と第2流路12Bとの間に配置されている。
【0025】
次に、スプール22は、断面円形状に形成されており、ハウジング10のスプール孔20に軸線方向に移動可能に(より詳しくは、所定の嵌めあい公差で摺動可能に)収容されている。
【0026】
特に図示はしないが、スプール22の外周面には、第1流路11と第3流路13A、13Bとを連通させる複数のノッチと、第2流路12A、12Bと第3流路13A、13Bとを連通させる複数のノッチとが設けられている。
【0027】
なお、必要な各所に、シール部材14(一例として、ゴム、エラストマー等からなるOリング)が配設されている。
【0028】
次に、スプール22の両端には、スプール22を移動させるソレノイド駆動部30がそれぞれ設けれられている。2つのソレノイド駆動部30は、基本的な構成が同一であるため、一方のソレノイド駆動部30(図2のIII部)を例に挙げて詳しく説明する。なお、本実施形態においては、ソレノイド駆動部30として、いわゆる「プル型比例ソレノイド」の構成を例に挙げて説明する。ただし、「プッシュ型」、「プッシュプル型」の構成も採用可能である(不図示)。さらに、流量の調整が不要であって方向の切換のみで十分な場合等においては、「比例ソレノイド」に代えて、「オンオフソレノイド」の構成も採用可能である(不図示)。
【0029】
図2におけるIII部拡大図を図3に示す。本実施形態に係るソレノイド駆動部30は、ケース32の内部に、長尺な導体部材を絶縁しつつボビン34に巻回したコイル36と、コイル36の励磁により生じる磁束線を通す固定鉄心38と、コイル36の励磁により生じる磁束線を通し、磁束線に起因して生じる吸引力によってコイル36の軸線方向(すなわち、ボビン34に巻回したコイル36の中心軸に沿う方向であり、以下同じ)に沿って移動する可動子22(前述のスプール22と一体部材)とを備えている。
【0030】
ケース32は、コイル36、固定鉄心38、および可動子22等を収容する筒状(ここでは円筒状であるが、角筒状も採用し得る)の部材であり、一例として、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。このケース32は、ハウジング10の側面にボルト等(不図示)を用いて固定される構成となっている。
【0031】
コイル36は、絶縁被覆された長尺な導体部材がボビン34に巻回された構成を備えている。当該導体部材は、一例として、銅合金等を用いて断面が円形、正方形等に形成された線材であるが、テープ材、シート材等(不図示)を用いても良い。
【0032】
固定鉄心38は、コイル36の励磁により生じる磁束線を通して可動子22を吸引する部材であり、一例として、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。本実施形態においては、固定鉄心38として、コイル36の軸線方向に互いに離間するように配置されたベースとステータ38Cとを備えている。ここで、当該ベースとして、いずれも円筒状で、第1端部38aに径方向に延設された鍔状部を有する形状の第1ベース38Aと、第1ベース38A内に嵌設される第2ベース38Bとを備えている。一方、ステータ38Cは、円筒状で、第1端部38cに径方向に延設された鍔状部を有する形状に形成されている。
【0033】
ここで、本実施形態に係る第1ベース38Aは、軸線方向に第1端部38aおよび第2端部38bを有しており、当該第1ベース38Aの第2端部38bにおいて、外周面が第1端部38aに向かって拡径するテーパ面38dを有している。これによれば、当該第2端部38bにおける磁束密度を高めて、可動子22の位置によらず吸引力を一定にしようとする効果が得られる。
【0034】
また、第2ベース38Bの内部には、ブッシュ44を介して軸線方向に移動可能に支持された伝達部材(ピン)40、および当該伝達部材40を可動子22に向かって付勢する付勢部材42が設けられている。一例として、伝達部材40、ブッシュ44共に非磁性材料(ステンレス合金、樹脂材料等)を用いて形成されている。なお、付勢部材42は、例えばコイルバネ等を備えて構成された、いわゆる復帰バネであり、可動子22がコイル36の励磁時に固定鉄心38に吸引される方向に対して、その逆方向に可動子22を移動させる力を付与するものである。
【0035】
可動子22は、コイル36が励磁された際に発生する磁束線が通過し、当該磁束線に起因して生じる固定鉄心38に向かう吸引力によってコイル36の軸線方向に沿って移動する部材である。一例として、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。
【0036】
上記の構成によれば、本実施形態に係るソレノイド駆動部30のコイル36を励磁することで、固定鉄心38が可動子22を吸引する力が生じて、可動子22を所定方向(この場合、第1ベース38Aの第2端部38bから第1端部38aへ向かう方向)に移動させる作用が生じる。また、コイル36を消磁することで、固定鉄心38が可動子22を吸引する力が消滅し、付勢部材42の付勢力によって可動子22を中立位置に戻す方向に移動させる作用が生じる。
【0037】
より詳しい作動原理として、バッテリー等からの通電によってコイル36が励磁されると、磁場(磁界)が生成される。この磁場の磁束線は、第1ベース38Aから、ギャップG(図4参照)、可動子22、ステータ38C、およびケース32を通過して第1ベース38Aに戻る閉ループを形成する。このとき、ギャップGは寸法が小さい程エネルギー的に安定するため、コイル36の軸線方向に沿ってギャップGが小さくなる方向に可動子22を移動させる作用が生じる。一方、通電の停止によってコイル36が消磁されると、コイル36励磁時に生成されていた前記磁場が消失する。したがって、前述の付勢部材42によって可動子22は、励磁時と逆方向に移動させる作用が生じる。
【0038】
なお、本実施形態に係るソレノイド駆動部30は「比例ソレノイド」であるため、操作レバー5の操作量に応じた強さの磁場(つまり、可動子22に対する吸引力)が発生する。したがって、可動子22は、当該吸引力と付勢部材42の付勢力がつり合う位置まで移動されて停止する。すなわち、オペレータの操作に応じてスプール22の移動量が設定され、これによって方向切換弁による流体の流量が設定され、作動シリンダ4の作動が制御される。
【0039】
ここで、従来の方向切換弁においては、可動子とスプールとをネジ固定等の方法で連結することによって、可動子の移動作用をスプールに伝達させる構成となっていた。このような2部品構成であることにより、各部品の加工公差、組付け公差が相乗的に作用して、スプールと、ソレノイド駆動部における可動子や固定鉄心との軸ずれが起こり、可動子に生じる推力が偏芯してラジアル荷重が発生すると共に、スプールに伝達されてスプール孔内におけるスプールの摺動抵抗が増加する問題を生じさせていた。このような問題は、減圧弁を備えたパイロット式の方向切換弁においては生じない。しかしながら、本実施形態のように直動式切換弁として実現するに際し、作動を不安定とする大きな要因となった。
【0040】
この問題に対して、本実施形態に係る方向切換弁1においては、ソレノイド駆動部30の可動子22を、スプール22と一体(一部材から加工された一体構造)に形成された構成で、且つ、スプール22がスプール孔20内に摺動可能に保持される構成とすることによって、ソレノイド駆動部30のケース32内に設けられる内部部材に対して当該可動子22が非接触の状態で軸線方向に移動可能に保持される構成としている。このとき、スプール孔20の軸心と固定鉄心38(ベース38A、38Bおよびステータ38C)の軸心とが一致した状態となるように組付けられている。なお、上記の「内部部材に対して非接触の状態」とは、伝達部材40を除いて、ケース32内に設けられる一切の部材と非接触の状態であることを指し、より具体的には、筒状に形成される固定鉄心38の内周面すなわちベース(第1ベース38A)およびステータ38Cの内周面に対して微小な隙間を有した非接触の状態で、且つ、当該の内周面との間に摺接用のブッシュ等も介在していない状態であることを指す。
【0041】
また、可動子22の外径(最外径)は、スプール22の外径(最外径)と同径に形成されている。これによれば、スプール孔20の軸心と固定鉄心38(ベース38A、38Bおよびステータ38C)の軸心とを極めて高い精度(後述のクリアランス寸法未満)で一致した状態となるように組付けを行うことが可能となる。
【0042】
上記の構成によれば、スプール22がスプール孔20内に摺動可能に保持された状態において、可動子22と固定鉄心38(特に磁束密度の高い第1ベース38Aの第2端部38bの内周面)との隙間(クリアランス)C(図4参照)を偏芯なく周方向に亘って均等で且つ極めて微小な寸法(0.1mm)に設定しつつ、固定鉄心38に対して可動子22が常に非接触で移動可能な状態を実現することができる。したがって、コイル36が励磁されて、可動子22が固定鉄心38に吸引された際に、スプール22と、ソレノイド駆動部30における可動子22や固定鉄心38との軸ずれによって可動子22に生じる推力の偏芯に起因するラジアル荷重の発生を防止でき、当該ラジアル荷重に起因するスプール孔20内におけるスプール22の摺動抵抗の発生を防止できる。
【0043】
その結果、流体の圧力および流量を大流量(ここでは、流体の最大圧力10MPa以上、最大流量60~160リットル/min程度を想定)に設定した場合であっても、ソレノイド駆動部30を大型化する解決方法によることなく、直接、スプール22を移動させる構成が実現可能となる。
【0044】
なお、コイル36が消磁して、可動子22が固定鉄心38に吸引されなくなった際には、前述の通り、付勢部材42の付勢力が伝達部材40を介して可動子22に伝達されて、可動子22がコイル36励磁時に吸引される方向と逆方向に可動子22を移動させる作用が生じる。このとき、本実施形態においては、伝達部材40を可動子22に連結させずに当接させる構成となっている。これにより、可動子22の吸引が解かれてスプール22が中立位置に戻ろうとする際にも、伝達部材40によって可動子22に生じる推力が偏芯することを防止できる。したがって、可動子22にラジアル荷重が発生することを防止でき、スプール22の摺動抵抗が増加することを防止できる。
【0045】
以上説明した通り、開示の方向切換弁によれば、体格を大型化する手法によることなく、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能となる。したがって、従来と同等能力を有する方向切換弁を、小型、軽量で簡素な構成により実現することが可能となる。また、電磁比例式減圧弁を設けない構成により待機圧力が不要となるため、搭載車両における燃費性能の向上が可能となる。
【0046】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 方向切換弁
2 メイン油圧ポンプ
3 タンク
4 作動シリンダ
10 ハウジング
11 第1流路
12A、12B 第2流路
13A、13B 第3流路
16 流入ポート
18A、18B 流出ポート
20 スプール孔
22 可動子/スプール(一体部材)
30 ソレノイド駆動部
32 ケース
36 コイル
38 固定鉄心
38A 第1ベース
38B 第2ベース
38C ステータ
40 伝達部材
42 付勢部材
図1
図2
図3
図4