(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080395
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】触媒前駆体、それを用いた触媒、化合物の製造方法及び触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/887 20060101AFI20230602BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230602BHJP
C07C 57/05 20060101ALI20230602BHJP
C07C 51/21 20060101ALI20230602BHJP
C07C 47/22 20060101ALI20230602BHJP
C07C 45/35 20060101ALI20230602BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
B01J23/887 Z
B01J37/08
C07C57/05
C07C51/21
C07C47/22 A
C07C45/35
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193716
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香川 主
(72)【発明者】
【氏名】奥村 成喜
(72)【発明者】
【氏名】保田 将吾
(72)【発明者】
【氏名】日野 由美
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA05
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC05A
4G169BC06A
4G169BC10A
4G169BC16A
4G169BC19A
4G169BC22A
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC26A
4G169BC35A
4G169BC43A
4G169BC50A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD05A
4G169CB10
4G169CB17
4G169CB63
4G169CB72
4G169CB74
4G169DA05
4G169EA04Y
4G169EB14Y
4G169EC27
4G169FB30
4G169FB62
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC45
4H006AC46
4H006BA02
4H006BA13
4H006BA14
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA30
4H006BB61
4H006BB62
4H006BC10
4H006BE30
4H039CA62
4H039CA65
4H039CC40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】選択性および目的生成物の収率が高い触媒を得ることができる触媒前駆体、当該触媒前駆体を用いた触媒を提供することを課題とする。
【解決手段】落下処理を行った0.04gの触媒前駆体について、円相当径が10μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の粒子の個数密度が16.0~36.7個/mm
2であるモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む触媒前駆体。また、好ましくは、前記触媒前駆体は以下式(1)で表される組成を有する。
Mo
a1Bi
b1Ni
c1Co
d1Fe
e1X
f1Y
g1Z
h1O
i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン等、Yはカリウム等、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味する)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下処理を行った0.040gの触媒前駆体について、円相当径が10.0μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の粒子の個数密度が16.0~36.7個/mm2であるモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む触媒前駆体。
【請求項2】
下記式(1)で表される触媒組成を有する請求項1に記載の触媒前駆体。
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1Xf1Yg1Zh1Oi1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0<e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
前駆体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の触媒前駆体を成型、焼成して得られる触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の触媒前駆体が不活性担体に担持された触媒。
【請求項5】
前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
触媒が不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物製造用である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の触媒を用いた不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物の製造方法。
【請求項8】
不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸であり、共役ジエンがブタジエンである請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の触媒前駆体を使用する触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高活性であり、高収率で目的物を得られる新規触媒に関するものであり、特に不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸、又は共役ジエンを酸化的に製造する際に、触媒活性が高い領域においても安定して高収率な製造を可能とする触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法や、ブテン類から1,3-ブタジエンを製造する気相接触酸化方法は工業的に広く実施されており、ビスマスおよびモリブデンを主成分とした複合金属酸化物触媒の使用が当業者にとって公知である。
特に、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法に関しては、その収率を向上する手段として多くの報告がなされている(例えば特許文献1、2等)。上記のような手段をもって改良をはかっても、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等の部分酸化反応により対応する不飽和アルデヒド及び/又は不飽和カルボン酸の製造において、さらなる収率の改善が求められている。例えば、目的生成物の収率は、製造に要するプロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等の使用量を左右し製造コストに多大な影響を与える。
【0003】
また、触媒そのものの生産性を向上させ触媒のコストを低減させる目的で、調合工程において触媒原料を種々混合させてできる母液を乾燥させる際、スプレードライヤーを用いることが当業者にとって公知である。前記複合金属酸化物触媒を得る場合、スプレードライヤーによる乾燥以外の方法として母液を蒸発乾固またはゲル化させるものも挙げられるが、工程後の半製品が増粘した、または固化した状態であり、工業スケールでの製法としてはハンドリングが難しく、触媒のコストも高くなる傾向にある。
【0004】
前記スプレードライヤーによる乾燥工程においては、プロセス制御因子を最適化することにより触媒の改良が可能であり、例えば特許文献3には流動床用途としての顆粒状の複合金属酸化物触媒の中空粒子率が23%以下であることで、機械的強度が向上する旨が記載されている。また特許文献4では調合液の粘度および仮焼体の嵩密度を規定することで機械的強度が高い成型触媒を得る旨が記載されている。しかしながら、これらの方法ではシリカゾルを添加することやホモジナイザーを使用することにより、調合工程の母液が増粘しスプレードライヤーへ送液すること自体が困難になりがちで、結果的に生産性が低くなる傾向にある。すなわち、調合工程において母液を増粘させず、得られた母液を安定にスプレードライヤーにて乾燥でき、そうして得られた触媒前駆体としてどのような物性が、最終的な触媒の高収率化のために重要なのか、は不明確な状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/136882号
【特許文献2】日本国特開2017-024009号公報
【特許文献3】日本国特許第6621569号公報
【特許文献4】日本国特許第6204862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、選択性および目的生成物の収率が高い触媒を得ることができる触媒前駆体、当該触媒前駆体を用いた触媒を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの研究によれば、触媒活性成分原料を含む混合溶液またはスラリーを乾燥した触媒前駆体が一定の耐衝撃性を有し、その耐衝撃性パラメーターと最終的な触媒の性能、特に目的化合物の収率に関係があることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、以下1)~9)に関する。
1)
落下処理を行った0.040gの触媒前駆体について、円相当径が10.0μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の粒子の個数密度が16.0~36.7個/mm2であるモリブデン、ビスマスおよび鉄を含む触媒前駆体。
2)
下記式(1)で表される触媒組成を有する上記1)に記載の触媒前駆体。
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1Xf1Yg1Zh1Oi1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0<e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
前駆体。
3)
上記1)または2)に記載の触媒前駆体を成型、焼成して得られる触媒。
4)
上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の触媒前駆体が不活性担体に担持された触媒。
5)
前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである上記4)に記載の触媒。
6)
触媒が不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物製造用である上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の触媒。
7)
上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の触媒を用いた不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物の製造方法。
8)
不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸であり、共役ジエンがブタジエンである上記7)に記載の製造方法。
9)
上記1)または2)に記載の触媒前駆体を使用する触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の触媒前駆体は、気相接触酸化反応における触媒活性の向上、及び収率向上に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の触媒前駆体(落下処理後)の顕微鏡写真(0.060mm
2)である。
【
図2】比較例2の触媒前駆体(落下処理後)の顕微鏡写真(0.060mm
2)である。
【
図3】実施例1の触媒の顕微鏡写真について、画像処理によって円相当径が10μm以上であり、かつ円形度が0.95以上のものを示した図である。丸で囲った4つの粒子が該当し、カウント対象である。
【
図4】比較例1の触媒の顕微鏡写真について、画像処理によって円相当径が10μm以上であり、かつ円形度が0.95以上のものを示した図である。丸で囲った1つの粒子が該当し、カウント対象である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、特に触媒活性の高い触媒及びその製造方法等に関するが、前記触媒は前記触媒前駆体を経由して製造され、または当該触媒前駆体はそのまま酸化触媒として使用することもできる為、触媒前駆体そのものも本発明として記載する。
[落下処理]
本発明の触媒前駆体は特定の落下処理を行った後の形状のパラメーターに関し、これは耐衝撃性に関するものと考えることができる。
前記特定の落下処理とは、135mmの高さから落下させる処理であるが、より詳細には、0.2barに減圧した内径260mm、高さ135mmの円柱状容器に触媒前駆体を0.040g±0.001g投入する処理である。
【0012】
[耐衝撃性パラメーター]
本発明の触媒前駆体は、前記落下処理を行った後、走査電子顕微鏡(SEM)によって1000倍で観察した1.5mm2の範囲に関して、円相当径が10.0μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の個数密度が16.0~36.7個/mm2である。なお、本明細書においては、1.50mm2は相互に重複しない0.060mm2の範囲の写真を25枚撮影し、画像を解析することで円相当径、円形度、個数密度を得るが、1.50mm2の範囲における解析であれば、分割方法は特に問わない。
ここで、円相当径とは、粒子と同じ面積を持つ円の直径であり、
円相当径(μm)={4×(粒子の面積)÷π}の正の平方根
によって一義的に特定できる。ここで、πは円周率を指す。
また、円形度とは、粒子の丸さを意味し、真円の円形度は1で細長い粒子の円形度は0に近くなり、市販の画像処理ソフトによって容易に計算することができるが、本件においては、Particle Metricソフトフェア(PHENOM WORLD社製)を用いて、円形度を求めている。なお、円形度は、
円形度=4π×(粒子の面積)÷(周囲長)2の式から求められる。
そして、上記円相当径、円形度を満たす触媒前駆体は、16.0~36.7個/mm2存在する場合に優れた触媒性能を実現できるが、その下限として好ましい数は、順に16、18、20、22、24であり、特に好ましくは26である。また上限として好ましい数は、順に36.7、35、34、32、30であり、特に好ましくは28である。従って最も好ましい数は26~28である。なお、本明細書において「~」は前後の数値を含むものとする。
【0013】
上記耐衝撃性パラメーターの測定について、さらに詳述する。
落下させて得られた触媒前駆体を走査電子顕微鏡(SEM:PHENOM WORLD社製 Phenom ProX)によって1000倍で観察する。0.060mm2の撮影を、撮影箇所を重複せず25回行った場合の観察範囲において、円相当径が10.0μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の個数を数える。ただし、写真の端で見切れている粒子は含まない。また、解像度は1μm以上の粒子が認識できれば特に限定はされないが、精密に測定するため、例えば2048×2048ピクセルなど高い方が望ましい。加速電圧も粒子が認識できれば特に限定はされないが、5~10kVで測定することが望ましい。粒子の計測はParticle Metricソフトフェア(PHENOM WORLD社製)を用いて行い、設定パラメーターをMin contrast0.5、Merge shared borders0.3,Exclude edge 有効,Conductance0.45,Mindetection size3.35%とした。Mindetection sizeを3.35%とすることで円相当径が10μm以上の大きさの粒子のみが自動認識され、その他の設定パラメーターは粒子を認識するためのパラメーターである。ただし、円相当径が10μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の個数を数えられる方法であれば測定方法は限定されない。
【0014】
一般に、上記触媒前駆体に関する上記パラメーター(触媒前駆体の耐衝撃性パラメーター)を変化させるためには、以下に述べる通り調合工程におけるpHの調整や、乾燥工程における条件設定、その他の方法によって実現可能であるが、特に有効な方法は調合工程におけるpHの調整である。
【0015】
[pHの調整について]
すなわち、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む各供給源化合物を溶媒または溶液に添加し一体化および加熱することにより調合液とする調合工程において、鉄原料の投入前に調合液のpHを1.0~7.5の範囲に調整する方法である。pHの調整方法としては、詳細は後述するが硝酸などの添加によりpHを下げる方法、またはアンモニア水などの添加によりpHを上げる方法による。
pHの下限としてより好ましくは、1.5であり、さらに好ましい順に1.8、2.0、2.2、2.5、2.7、3.0、3.1、3.2、3.5、3.7、3.8、3.9である。またpHの上限としてより好ましくは、7.3であり、さらに好ましい順に7.0、6.7、6.5、6.3、6.1、6.0、5.9、5.8、5.5、5.3、5.0、4.8、4.5である。すなわちpHの値としてより好ましい範囲は、上記上下限によって設定され、例えば1.5以上7.3以下であり、最も好ましくは3.9以上4.5以下である。本発明において、鉄原料の投入前に特にpH調整剤を添加せずとも、上記pHの範囲内に入ることがあるが、本発明の本質は鉄原料の投入前にpH調整剤を添加してpHを上記範囲内に調整することにある。
pH調整剤に関しては、pHを下げる方法においては硝酸、硫酸、塩酸、シュウ酸など当業者であれば触媒原料として使用する一般的なpH調整のための酸の他、後述する触媒活性成分の元素組成を変えない範囲内であればリン酸やホウ酸、モリブデン酸、硝酸鉄など焼成後に元素が残留するpH調整剤も含まれるものとするが、最も好ましくは硝酸である。pHを上げる方法においてはアンモニア水、ピリジン、炭酸アンモニウム水溶液など当業者であれば触媒原料として使用する一般的なpH調整のための塩基の他、後述する触媒活性成分の元素組成を変えない範囲内であれば水酸化カリウムや水酸化セシウムなど焼成後に元素が残留するpH調整剤も含まれるものとするが、最も好ましくはアンモニア水である。
またこの方法を実施する場合、鉄原料を投入し攪拌後にビスマス原料を調合液に投入するという順でスラリーを調製方法が最も好ましい実施態様である。
pH調整剤の滴下に際しては、攪拌動力として0.010~5.00kw/m3で攪拌しながら投入するものとなるが、攪拌動力の下限として好ましくは0.050kw/m3、0.10kw/m3、0.50kw/m3、1.00kw/m3であり、攪拌動力の上限として好ましくは4.50kw/m3、4.00kw/m3、3.50kw/m3、3.00kw/m3である。すなわち最も好ましい攪拌動力の範囲としては、1.00~3.00kw/m3となる。
pH調整剤の滴下時間に関しては、1秒から5分の間であるが、滴下時間の下限として好ましくは5秒、10秒、15秒であり、滴下時間の上限として好ましくは4分、3分、2分30秒、2分、1分30秒、1分、45秒、30秒である。すなわち最も好ましい滴下時間の範囲としては、15~30秒となる。
pH調整剤の滴下時の調合液の液温としては、5~80℃であるが、液温の下限として好ましくは10℃、20℃、30℃であり、液温の上限として好ましくは70℃、60℃、50℃、40℃である。すなわち液温として最も好ましい範囲としては、30~40℃となる。
【0016】
[乾燥条件について]
上述の通り、本発明の触媒を得るためには、調合工程におけるpHの調整によって実現可能であるが、そのほかに有効な方法は噴霧乾燥による場合の噴霧器(アトマイザー)の回転数の最適化である。最適なアトマイザーの回転数は、アトマイザーや噴霧乾燥器の構造、乾燥させる液体の温度やpH、粘度、および触媒構成成分の配合比率などに影響されるため一概には言えないが、好ましくは10,000rpm以上18,000rpm以下である。更に好ましいアトマイザー回転数の上限は、17,000pmであり、特に好ましくは16,000rpmであり、最も好ましくは15,000rpmである。また更に好ましい下限は、11,000rpmであり、特に好ましい下限は12,000rpmであり、最も好ましい下限は13,000rpmである。すなわち最も好ましいアトマイザー回転数の範囲は13,000rpm以上15,000rpm以下である。
また、アトマイザーの回転数は相対遠心加速度によっても表され、6000G以上20000G以下であることが好ましい。より好ましい下限としては、順に7500G、8500G、10000Gであり、より好ましい上限としては、順に18000G、16000G、14000Gである。すなわち最も好ましいアトマイザーの回転数の範囲は10000G以上14000G以下である。
更に噴霧乾燥の噴霧器の入口温度、出口温度も上記パラメーター(触媒前駆体の平均粒子径、触媒前駆体中空率、触媒前駆体水分量)に影響を与える。入口温度としては、180℃以上320℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に200℃、220℃、230℃であり、より好ましい上限は順に300℃、280℃、270℃である。すなわち入口温度として最も好ましくは230℃以上270℃以下である。
また、出口温度としては、100℃以上150℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に101℃、102℃、103℃、104℃、105℃であり、より好ましい上限は順に140℃、130℃、120℃である。すなわち入り口温度として最も好ましくは105℃以上120℃以下である。
さらに、入口温度と出口温度の差としては、30℃以上220℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に50℃、80℃、100℃、120℃であり、より好ましい上限は順に200℃、180℃、165℃、150℃である。すなわち入口温度として最も好ましくは120℃以上150℃以下である。
さらに、本発明の触媒前駆体の製法として以下式で与えられるパラメーターSDの範囲は、22以上51以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に26、28、30、32、34、35であり、より好ましい上限は順に48、44、42、40である。すなわちSDとして最も好ましくは35以上40以下である。
SD=51.3+0.0766×{(スプレードライヤーの入口温度、単位:℃)―(スプレードライヤーの出口温度、単位:℃)}-0.00173×(アトマイザー回転数、単位:rpm)
すなわち本発明の触媒は、上述した調合工程におけるpH制御および乾燥工程における乾燥条件を適切に制御することにより得ることができる。更に本発明の触媒は、以下に述べるその他の方法を必要に応じ組み合わせることによって得ることもできる。
【0017】
[その他の方法について]
その他、本発明の触媒を得る手段として、後述する各製造工程での各条件を変更しても制御できるが、例えば、(I)触媒組成を変更する方法、(II)焼成条件を変更する方法、(III)焼成後の降温条件を変更する方法、(IV)触媒製造の全工程において、触媒およびその前駆体に機械的強度を加えないよう制御する方法、(V)純度の高い原料を使用する方法、および(I)から(VIII)を組み合わせる方法があげられる。なお方法(VI)、方法(VIII)の詳細については後述する。
方法(I)に関しては、後述する組成式(1)において、e1/b1の上限として1.90、好ましくは1.80、e1/b1の下限は望ましい順に、0.10、0.50、1.00、1.40、1.50であり、d1/b1の上限として望ましい順に、9.0、8.0、7.0、6.0であり、d1/b1の下限として望ましい順に、2.0、3.0、4.0、5.0、5.5であり、c1/e1の上限として望ましい順に、4.0、3.0、2.5であり、c1/e1の下限として望ましい順に、1.5、1.7、1.9であり、c1/d1の上限として望ましい順に、2.0、1.0、0.8であり、c1/d1の下限として望ましい順に、0.4、0.5であり、g1/d1の上限として望ましい順に、0.10、0.05、0.04、0.03であり、g1/d1の下限として、0.01であり、g1/c1の上限として望ましい順に、0.041、0.039であり、g1/c1の下限として望ましい順に、0.017、0.019、0.021となる。
方法(II)に関しては、後述する予備焼成および本焼成、およびそれらの両方において、200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下、より好ましくは460℃以上550℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下、より好ましくは2時間以上15時間以下、最も好ましくは2時間以上9時間以下となり、その雰囲気としては酸素濃度が10容量%以上40容量%以下、好ましくは15容量%以上30容量%以下、最も好ましくは空気雰囲気となる。
方法(III)に関しては、後述する予備焼成および本焼成、およびそれらの両方において、焼成工程中の最高到達温度(予備焼成温度もしくは本焼温度)から、室温に低下するまでの触媒表面の温度の低下速度(降温速度)が、1℃/分以上200℃/分以下、好ましくは5℃/分以上150℃/分以下、より好ましくは10℃/分以上120℃/分以下、最も好ましくは50℃/分以上100℃/分以下、となる。上述した降温速度範囲を達成するために一般に工業的に取られる降温手法、たとえば焼成炉から取り出した焼成後の触媒を不活性雰囲気や不活性な溶媒によるミストに暴露する手法や、あらかじめ十分に冷却された室内に焼成後の触媒を急速に移動させる手法はすべて、本発明実施の範疇となる。
方法(IV)に関しては、後述する触媒前駆体および/または各工程で形成された顆粒に対して、機械的な衝撃およびせん断応力等を加えないよう制御する手法であり、この機械的な衝撃およびせん断応力等の好ましい範囲としては、100kgf以下、好ましくは50kgf以下、より好ましくは20kgf以下、さらに好ましくは10kgf以下、最も好ましくは5kgf以下に制御することとなる。
方法(V)に関しては、試薬級の高純度な原料を使用する方法であればその詳細を問わないが、たとえば硫黄およびその化合物、リチウム、ハロゲンおよびその化合物、鉛の含有量が10000重量ppm以下、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは100重量ppm、最も好ましくは10重量ppm以下であることとなる。
方法(VI)に関しては、後述するように触媒前駆体をいったん顆粒として得て、これを成型する方法が挙げられる。触媒前駆体を顆粒として得ることで、触媒の各成分をより均一に製造することができる。
方法(VII)に関しては、後述する触媒の調合工程において、コバルト原料とニッケル原料が調合釜の中で混合、反応、スラリー化、滞留する時間をなるべく短くなるよう制御する方法であり、より具体的にはモリブデンやアルカリ金属を除いた金属塩原料が調合釜中になく、コバルト原料とニッケル原料が存在する状況での上記滞留時間を短くする方法、あるいは調合釜中のpHが特定の範囲を取る際に、コバルト原料とニッケル原料が存在する状況での上記滞留時間を短くする方法である。上記滞留時間としては、24時間が好ましく、1時間がさらに好ましく、30分がさらに好ましく、10分が最も好ましい。上記pHの範囲としては1以上14以下、好ましくは2以上10以下、より好ましくは2以上8以下、最も好ましくは3以上7以下となる。鉄原料とビスマス原料、モリブデン原料とビスマス原料に関しても同様となる。
方法(VII)に関しては、後述する触媒の調合工程において、各原料を調合工程の中で分割せず一括で投入する方法、あるいは調合液中の硝酸濃度を下げる方法が挙げられる。上記の一括で投入する方法とは、各原料の必要量を全て投入したのちに次の原料を投入することを意味する。また上記の調合液中の硝酸濃度に関しては、調合完了し次工程に進む際の調合液において、その硝酸イオンとしての質量%での濃度が、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは25質量%以下、となる。
【0018】
[組成]
本発明の触媒前駆体は、下記式(1)で表される組成を有する。
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1Xf1Yg1Zh1Oi1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
【0019】
上記式(1)において、a1=12としたときのb1~h1の好ましい範囲は以下である。
b1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり、上限としては好ましい順に、6.0、5.0、4.0、3.0、2.0、1.8、1.5、1.2である。すなわちb1として最も好ましい範囲は、1.0以上1.2以下である。
c1の下限としては好ましい順に、0.2、0.5、0.8、1.0、1.5、1.8、2.0、2.5、2.8、3.0であり、上限としては好ましい順に、8.0、7.0、6.0、5.0、4.0、3.5、3.3である。すなわちc1として最も好ましい範囲は、3.0以上3.3以下である。
d1の下限としては好ましい順に、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0であり、上限としては好ましい順に、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0である。すなわちd1として最も好ましい範囲は、5.0以上6.0以下である。
c1+d1の下限としては好ましい順に、0.0、2.0、4.0、6.0、8.0、8.3であり、上限としては好ましい順に、20.0、15.0、12.5、11.0、10.0、9.0である。すなわち、として最も好ましい範囲は、8.3以上9.0以下である。
e1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.5、0.8、1.0、1.5、1.7であり、上限としては好ましい順に、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.9である。すなわちe1として最も好ましい範囲は、1.7以上1.9以下である。
f1の上限としては好ましい順に、1.8、1.5、1.0、0.8、0.5であり、下限としては、0が好ましい。すなわちf1としてより好ましい範囲は、0以上0.5以下であり、0が最も好ましい。
g1の下限としては好ましい順に、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.09であり、上限としては好ましい順に、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、0.13である。すなわちg1として最も好ましい範囲は、0.09以上0.13以下である。
h1の上限としては好ましい順に、4.0、3.0、2.0、1.8、1.5、1.0、0.8、0.5であり、下限としては、0が好ましい。すなわちh1としてより好ましい範囲は、0以上0.5以下であり、0が最も好ましい。
【0020】
式(1)におけるXとしては、タングステン、アンチモン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、セリウムが好ましく、アンチモン、亜鉛が特に好ましい。
式(1)におけるYとしては、ナトリウム、カリウム、セシウムが好ましく、カリウム、セシウムが更に好ましく、カリウムが特に好ましい。
式(1)におけるZとしては、リンが好ましい。
【0021】
乾燥温度としては、水分を除去できるものであれば特に制限はなく、圧力や時間を調整する場合には、常温(25℃)であっても良い、しかし、より確実に、短時間で水分を除去する為には、80℃以上が好ましく、更に好ましくは90℃以上である。また圧力を調整しない場合には100℃以上が好ましく、更に好ましくは150℃以上である。
予備焼成としては、200℃~600℃程度の温度で1~12時間程度の焼成を行う。焼成時の雰囲気や昇温速度は当業者の知る範囲であれば特に制限はないが、例えば空気雰囲気、窒素などの不活性雰囲気、メタノールやエタノールなどの有機化合物を0%より多く含んだ含有機化合物雰囲気であり、昇温速度は0.01℃/分以上10℃/分以下となる。
【0022】
[担持について]
触媒調製後に予備焼成を行った予備焼成粉体を不活性担体に担持させた触媒は、本発明の触媒として特に効果の優れたものである。
不活性担体の材質としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、炭化ケイ素、炭化物、およびこれらの混合物など公知の物を使用でき、さらにその粒径、吸水率、機械的強度、各結晶相の結晶化度や混合割合なども特に制限はなく、最終的な触媒の性能、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。担体と予備焼成粉体の混合の割合は、各原料の仕込み質量により、下記式より担持率として算出される。なお、本操作において触媒成型助剤や強度向上剤等を用いる場合には、総量(分母)に算入する。
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100
【0023】
上記担持率としての好ましい上限は、80質量%であり、さらに好ましくは60質量%である。
また好ましい下限は、20質量%であり、さらに好ましくは30質量%である。すなわち担持率として最も好ましい範囲は、30質量%以上60質量%以下である。
なお不活性担体としては、シリカ及び/又はアルミナが好ましく、シリカとアルミナの混合物が特に好ましい。
なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成型性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉体100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は10~30質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉末は成型機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。
【0024】
[触媒の製造方法等について]
本発明の触媒前駆体や触媒を構成する各元素の出発原料としては特に制限されるものではないが、例えばモリブデン成分の原料としては三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、パラモリブデン酸アンモニウム、メタモリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸またはその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸またはその塩などを用いることができる。
【0025】
ビスマス成分の原料としては硝酸ビスマス、炭酸ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマスのようなビスマス塩、三酸化ビスマス、金属ビスマスなどを用いることができる。これらの原料は固体のままあるいは水溶液や硝酸溶液、それらの水溶液から生じるビスマス化合物のスラリーとして用いることができるが、硝酸塩、あるいはその溶液、またはその溶液から生じるスラリーを用いることが好ましい。
【0026】
その他の成分元素の出発原料としては、一般にこの種の触媒に使用される金属元素のアンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、次炭酸塩、酢酸塩、塩化物、無機酸、無機酸の塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の塩、硫酸塩、水酸化物、有機酸塩、酸化物またはこれらの混合物を組み合わせて用いればよいが、アンモニウム塩および硝酸塩が好適に用いられる。
【0027】
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。スラリー液は、各活性成分含有化合物と水とを均一に混合して得ることができる。スラリー液における水の使用量は、用いる化合物の全量を完全に溶解できるか、または均一に混合できる量であれば特に制限はない。乾燥方法や乾燥条件を勘案して、水の使用量を適宜決定すれば良い。通常、スラリー調製用化合物の合計質量100質量部に対して、100質量部以上2000質量部以下である。水の量は多くてもよいが、多過ぎると乾燥工程のエネルギーコストが高くなり、又完全に乾燥できない場合も生ずるなどデメリットが多い。
【0028】
上記各成分元素の供給源化合物のスラリー液は上記の各供給源化合物を、(イ)一括して混合する方法、(ロ)一括して混合後、熟成処理する方法、(ハ)段階的に混合する方法、(ニ)段階的に混合・熟成処理を繰り返す方法、および(イ)~(ニ)を組み合わせた方法により調製することが好ましい。ここで、上記熟成とは、「工業原料もしくは半製品を、一定時間、一定温度などの特定条件のもとに処理して、必要とする物理性、化学性の取得、上昇あるいは所定反応の進行などをはかる操作」のことをいう。なお、本発明において、上記の一定時間とは、5分以上24時間以下の範囲をいい、上記の一定温度とは室温以上の水溶液ないし水分散液の沸点以下の範囲をいう。このうち最終的に得られる触媒の活性及び収率の面で好ましいのは(ハ)段階的に混合する方法であり、更に好ましいのは段階的に母液に混合する各原料は全溶した溶液とする方法であり、最も好ましいのはモリブデン原料を調合液またはスラリーとした母液に、アルカリ金属溶液、硝酸塩の各種混合液を混合する方法である。ただし、この工程で必ずしもすべての触媒構成元素を混合する必要はなく、その一部の元素または一部の量を以降の工程で添加してもよい。
【0029】
本発明において、必須活性成分を混合する際に用いられる攪拌機の攪拌翼の形状は特に制約はなく、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、スクリュー翼、アンカー翼、リボン翼、大型格子翼などの任意の攪拌翼を1段あるいは上下方向に同一翼または異種翼を2段以上で使用することができる。また、反応槽内には必要に応じてバッフル(邪魔板)を設置しても良い。
【0030】
次いで、このようにして得られたスラリー液を乾燥する。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の出口における温度が70℃以上150℃以下である。
【0031】
上記のようにして得られた触媒前駆体は予備焼成し、成形を経て、本焼成することで、成形形状を制御、保持することが可能となり、工業用途として特に機械的強度が優れた触媒が得られ、安定した触媒性能を発現できる。
【0032】
成形は、シリカ等の担体に担持する担持成形と、担体を使用しない非担持成形のいずれの成形方法も採用できる。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。成形品の形状としては、例えば、円柱状、リング状、球状等が運転条件を考慮して適宜選択可能であるが、球状担体、特にシリカやアルミナ等の不活性担体に触媒前駆体を担持した、平均粒径3.0mm以上10.0mm以下、好ましくは平均粒径3.0mm以上8.0mm以下の担持触媒であるとよい。担持方法としては転動造粒法、遠心流動コーティング装置を用いる方法、ウォッシュコート方法等が広く知られており、予備焼成粉体が担体に均一に担持できる方法で有れば特に限定されないが、触媒の製造効率等を考慮した場合、転動造粒法が好ましい。具体的には、固定円筒容器の底部に、平らな、あるいは凹凸のある円盤を有する装置で、円盤を高速で回転させることにより、容器内にチャージされた担体を、担体自体の自転運動と公転運動の繰り返しにより激しく撹拌させ、ここに予備焼成粉体を添加することにより粉体成分を担体に担持させる方法である。なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等がより好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液がさらに好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成型性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉体100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は15~50質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉体は成型機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。また、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。なお、成形において添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
【0033】
予備焼成方法や予備焼成条件または本焼成方法や本焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。予備焼成や本焼成は、通常、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させない気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。尚、触媒を使用して不飽和アルデヒド、及び/又は不飽和カルボン酸を製造する際の反応条件等に応じて、特に本焼成における最適な条件は異なり、本焼成工程の工程パラメーターすなわち雰囲気中の酸素含有率、最高到達温度や焼成時間等の変更を行うことは当業者にとって公知であるため、本発明の範疇に入るものとする。また、本焼成工程は前述の予備焼成工程よりも後に実施されるものとし、本焼成工程における最高到達温度(本焼温度)は、前述の予備焼成工程における最高到達温度(予備焼成温度)よりも高いものとする。焼成の手法は流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。
【0034】
本発明の触媒は、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を製造する為の触媒として使用される場合が好ましく、より好ましくは不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用いることが更に好ましく、プロピレンからアクロレインを製造する為の触媒として用いることが特に好ましい。不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を製造するような発熱反応のプロセスでは、実プラントにおいては反応により生じる発熱で触媒自身が劣化するのを防ぐ目的で、反応管入口側から反応管出口側に向けて活性が高くなるよう異なる触媒種を多層で充填することが当業者にとっては公知である。本発明の触媒は、反応管入り口側および反応管出口側、およびその中間の触媒層のいずれでも使用できるが、たとえば反応管の最も出口側、すなわち反応管内の全触媒層の中で最も高活性な触媒に用いることが最も好ましい。なお、多層充填においては、2層又は3層充填が特に好ましい態様である。
【0035】
[第二段目触媒について]
本発明の触媒を、第一段目の触媒、すなわち不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用いた場合、第二段目の酸化反応を行い、不飽和カルボン酸化合物を得ることができる。
この場合、第二段目の触媒としては、本願発明の触媒を用いることもできるが、下記式(2)で表される触媒を用いることが好ましい。
Mo12Va2Wb2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2Oh2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Zはニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ示す。またa2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
【0036】
上記式(2)で表される触媒の製造にあたっては、この種の触媒、例えば酸化物触媒、ヘテロポリ酸又はその塩構造を有する触媒を調製する方法として一般に知られている方法が採用できる。触媒を製造する際に使用できる原料は特に限定されず、種々のものが使用できる。例えば、三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸又はその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸又はその塩などを用いることができる、アンチモン成分原料としては特に制限はないが、三酸化アンチモンもしくは酢酸アンチモンが好ましい。バナジウム、タングステン、銅等、その他の元素の原料としてはそれぞれの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、金属等が使用できる。
【0037】
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
次いで前記で得られたスラリー液を乾燥し、触媒前駆体固体とする。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられ、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の入口のおける温度が140~400℃、出口における温度が70~150℃であり、入口温度が出口温度より高くなる。また、この際得られるスラリー液乾燥体の平均粒子径が10~700μmとなるように乾燥するのが好ましい。
【0039】
前記のようにして得られた第二段目の触媒前駆体固体は、そのまま被覆用混合物に供することができるが、焼成すると成形性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~350℃、好ましくは150~300℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。このようにして得られた焼成後の固体は成形前に粉砕されることが好ましい。粉砕方法として特に制限はないが、ボールミルを用いると良い。
【0040】
また、前記第二段目のスラリーを調製する際の活性成分を含有する化合物は、必ずしも全ての活性成分を含んでいる必要はなく、一部の成分を下記成形工程前に使用してもよい。
【0041】
前記第二段目の触媒の形状は特に制約はなく、酸化反応において反応ガスの圧力損失を小さくするために、柱状物、錠剤、リング状、球状等に成型し使用する。このうち選択性の向上や反応熱の除去が期待できることから、不活性担体に触媒前駆体固体を担持し、担持触媒とするのが特に好ましい。この担持は以下に述べる転動造粒法が好ましい。この方法は、例えば固定容器内の底部に、平らなあるいは凹凸のある円盤を有する装置中で、円盤を高速で回転することにより、容器内の担体を自転運動と公転運動の繰返しにより激しく攪拌させ、ここにバインダーと触媒前駆体固体並びに、必要により、これらに他の添加剤例えば成型助剤、強度向上剤を添加した担持用混合物を担体に担持する方法である。バインダーの添加方法は、1)前記担持用混合物に予め混合しておく、2)担持用混合物を固定容器内に添加するのと同時に添加、3)担持用混合物を固定容器内に添加した後に添加、4)担持用混合物を固定容器内に添加する前に添加、5)担持用混合物とバインダーをそれぞれ分割し、2)~4)を適宜組み合わせて全量添加する等の方法が任意に採用しうる。このうち5)においては、例えば担持用混合物の固定容器壁への付着、担持用混合物同士の凝集がなく担体上に所定量が担持されるようオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい。バインダーは、水やエタノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、セルロース類及びエチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、特にグリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。い。これらバインダーの使用量は、担持用混合物100質量部に対して通常2~60質量部、好ましくは10~50質量部である。
【0042】
上記担持における担体の具体例としては、炭化珪素、アルミナ、シリカアルミナ、ムライト、アランダム等の直径1~15mm、好ましくは2.5~10mmの球形担体等が挙げられる。これら担体は通常は10~70%の空孔率を有するものが用いられる。担体と担持用混合物の割合は通常、担持用混合物/(担持用混合物+担体)=10~75質量%、好ましくは15~60質量%となる量を使用する。担持用混合物の割合が大きい場合、担持触媒の反応活性は大きくなるが、機械的強度が小さくなる傾向にある。逆に、担持用混合物の割合が小さい場合、機械的強度は大きいが、反応活性は小さくなる傾向がある。なお、前記において、必要により使用する成型助剤としては、シリカゲル、珪藻土、アルミナ粉末等が挙げられる。成型助剤の使用量は、触媒前駆体固体100質量部に対して通常1~60質量部である。また、更に必要により触媒前駆体固体及び反応ガスに対して不活性な無機繊維(例えば、セラミックス繊維又はウィスカー等)を強度向上剤として用いることは、触媒の機械的強度の向上に有用であり、ガラス繊維が好ましい。これら繊維の使用量は、触媒前駆体固体100質量部に対して通常1~30質量部である。なお、第一段目の触媒の成形においては、添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
【0043】
前記のようにして得られた担持触媒はそのまま触媒として気相接触酸化反応に供することができるが、焼成すると触媒活性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~450℃、好ましくは270~420℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。
【0044】
[触媒の用途等]
本発明の触媒を、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する反応、特にプロピレンを分子状酸素又は分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化してアクロレイン、アクリル酸を製造する反応に使用する場合において、触媒活性、および収率の向上をすることができ、公知の方法と比較して製品の価格競争力の向上に非常に有効である。また、炭素原子数4以上のモノオレフィン(ブテン類等)と分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィン(1,3-ブタジエン等)を製造する場合の酸化触媒、酸化脱水素触媒としても、当該触媒は有用である。
【0045】
また、本発明の触媒を使用することで、安全に、安定して、低コストで気相接触酸化方法の長期運転を実現しうる。また、本発明の触媒は特に触媒活性が高い領域、または触媒活性が高くない領域においても収率向上に有効でありうるほか、ΔT(ホットスポット温度と反応浴温度の差)の低減のような発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性にも向上効果が期待できる。更に、本発明の触媒は、環境や最終製品の品質に悪影響の生じる副生成物、たとえば一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)、アセトアルデヒドや酢酸、ホルムアルデヒドの低減にも有効でありうる。
【0046】
こうして得られた本発明の触媒は、例えばプロピレンを、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化して、アクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する際に使用できる。本発明の製造方法において原料ガスの流通方法は、通常の単流通法でもあるいはリサイクル法でもよく、一般に用いられている条件下で実施することができ特に限定されない。たとえば出発原料物質としてのプロピレンが常温で1~10容量%、好ましくは4~9容量%、分子状酸素が3~20容量%、好ましくは4~18容量%、水蒸気が0~60容量%、好ましくは4~50容量%、二酸化炭素、窒素等の不活性ガスが20~80容量%、好ましくは30~60容量%からなる混合ガスを反応管中に充填した本発明の触媒上に250~450℃で、常圧~10気圧の圧力下で、空間速度300~5000h-1で導入し反応を行う。
【0047】
本明細書において触媒活性の向上とは、特に断りがない限り同じ反応浴温度で触媒反応を行って比較をしたときに原料転化率が高いことを指す。
本発明において収率が高いとは、特に断りがない限り、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして酸化反応を行った場合には、対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の合計収率が高いことを指す。また、特に断りがない限り、収率とは後述する有効収率を指す。
本発明所において触媒前駆体とは、特に断りがない限り上述のスラリー液を乾燥および必要に応じ粉砕することで得られる乾燥粉体を指す。
本明細書において触媒前駆体の構成元素とは、特に断りがない限り、上記触媒製造工程において使用するすべての元素を指すが、本焼工程の最高温度以下にて消失、昇華、揮発、燃焼する原料およびその構成元素は、触媒の活性成分の構成元素に含めないものとする。また、成形工程における成形助剤や担体に含まれるケイ素およびその他の無機材料を構成する元素も、触媒の活性成分の構成元素として含まれないものとする。
本発明においてホットスポット温度とは、多管式反応管内の長軸方向に熱電対を設置し、測定される触媒充填層内の温度分布の最高温度であり、反応浴温度とは反応管の発熱を冷却する目的で使用される熱媒の設定温度である。上記温度分布の測定の点数には特に制限はないが、例えば触媒充填長を均等に10から1000に分割する。
本明細書において不飽和アルデヒドおよび不飽和アルデヒド化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのアルデヒドを有する有機化合物であり、たとえばアクロレイン、メタクロレインである。本発明において不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのカルボキシ基、またはそのエステル基を有する有機化合物であり、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチルである。本明細書において共役ジエンとは、1つの単結合によって二重結合が隔てられ化学的に共役したジエンであり、たとえば1,3-ブタジエンである。
【実施例0048】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例において、転化率、有効収率、有効選択率、担持率は以下の式に従って算出した。
原料転化率(%)=(反応したプロピレンのモル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
有効収率(%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸の合算モル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
有効選択率(%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸の合算モル数)/(反応したプロピレンのモル数)×100
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100
【0049】
[実施例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.51質量部を純水4.6質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄33質量部、硝酸コバルト80質量部及び硝酸ニッケル43質量部を60℃に加温した純水83質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス25質量部を60℃に加温した純水27質量部に硝酸(60質量%)6.4質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14000rpm、入口温度240℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.1:1.8:5.8:3.1:0.11)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒1を得た。
【0050】
[実施例2]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.13質量部を純水1.1質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)18.8質量部を加えpH=3になるようにした。次に、硝酸第二鉄38質量部、硝酸コバルト88質量部及び硝酸ニッケル32質量部を60℃に加温した純水84質量部に溶解させた(母液2)。続いて硝酸ビスマス18質量部を母液2に加え、溶解するまで攪拌した。この母液2を母液1に加え母液3を得た。この母液3をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14200rpm、入口温度245℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:2.0:6.4:2.3:0.03)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、530℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒2を得た。
【0051】
[実施例3]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄36質量部、硝酸コバルト92質量部及び硝酸ニッケル27質量部を60℃に加温した純水83質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス18質量部を60℃に加温した純水19質量部に硝酸(60質量%)4.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで13500rpm、入口温度240℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:1.9:6.7:2.0:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒3を得た。
【0052】
[実施例4]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)18.8質量部を加えpH=3になるようにした。次に、硝酸第二鉄31質量部、硝酸コバルト80質量部及び硝酸ニッケル43質量部を60℃に加温した純水81質量部に溶解させた(母液2)。続いて硝酸ビスマス25質量部を母液2に加え、溶解するまで攪拌した。この母液2を母液1に加え攪拌し母液3を得た。この母液3をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14000rpm、入口温度240℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.1:1.6:5.8:3.1:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、530℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒4を得た。
【0053】
[実施例5]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄31質量部、硝酸コバルト84質量部及び硝酸ニッケル40質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス18質量部を60℃に加温した純水19質量部に硝酸(60質量%)4.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14000rpm、入口温度250℃、出口温度120℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:1.6:6.1:2.9:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒5を得た。
【0054】
[実施例6]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄32質量部、硝酸コバルト82質量部及び硝酸ニッケル38質量部を60℃に加温した純水81質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス23質量部を60℃に加温した純水24質量部に硝酸(60質量%)5.8質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで15000rpm、入口温度250℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.0:1.7:6.0:2.8:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒6を得た。
【0055】
[実施例7]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄31質量部、硝酸コバルト84質量部及び硝酸ニッケル41質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス25質量部を60℃に加温した純水27質量部に硝酸(60質量%)6.4質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14500rpm、入口温度255℃、出口温度115℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.1:1.6:6.1:3.0:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒7を得た。
【0056】
[参考例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.45質量部を純水45質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄38質量部、硝酸コバルト71質量部及び硝酸ニッケル38質量部を60℃に加温した純水76質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス36質量部を60℃に加温した純水41質量部に硝酸(60質量%)9.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14000rpm、入口温度240℃、出口温度115℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.6:2.0:5.2:2.8:0.10)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、530℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒8を得た。
【0057】
[比較例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.17質量部を純水1.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄41質量部、硝酸コバルト89質量部及び硝酸ニッケル33質量部を60℃に加温した純水85質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス16質量部を60℃に加温した純水17質量部に硝酸(60質量%)4.1質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.2:6.5:2.4:0.04)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、550℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒9を得た。
【0058】
[比較例2]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.37質量部を純水3.5質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄34質量部、硝酸コバルト81質量部及び硝酸ニッケル44質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス21質量部を60℃に加温した純水24質量部に硝酸(60質量%)5.8質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒10を得た。
【0059】
[比較例3]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.31質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄35質量部、硝酸コバルト84質量部及び硝酸ニッケル36質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス17質量部を60℃に加温した純水18質量部に硝酸(60質量%)4.4質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:1.9:6.1:2.6:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒11を得た。
【0060】
触媒1から触媒7、および触媒9から触媒11を用いて、以下の方法によりプロピレンの酸化反応を実施し、原料転化率および有効収率を求めた。内径28mmステンレス鋼反応管のガス入り口側に触媒8を33.4mL充填し、ガス出口側に触媒1から触媒7および触媒9から触媒11の各々を47.3mL充填し、ガス体積比率がプロピレン:酸素:水蒸気:窒素=1.00:1.65:1.27:9.53の混合ガスを反応管内の全触媒に対するプロピレン空間速度100hr-1で導入し、プロピレンの酸化反応を実施した。反応浴温度315℃にて反応開始から20時間以上のエージング反応後、反応浴温度320℃における反応管出口ガスの分析より、表1に示す原料転化率および有効収率を求めた。
【0061】
【0062】
表中、球形粒子数の測定方法は以下の通りである。
まず、内径260mm、高さ135mmの円柱状容器の底部中央にSEM台を設置し、その上に両面テープを取り付ける。その後、容器内部を0.2barに減圧し、容器上面部から触媒前駆体を0.040g±0.001g投入する。両面テープ上の触媒前駆体を走査電子顕微鏡(SEM:PHENOM WORLD社製 Phenom ProX)によって1000倍で観察した。0.06mm2の撮影を、撮影箇所を重複せず25回行った場合の観察範囲において、円相当径が10μm以上であり、かつ円形度が0.95以上の個数を数えた。ただし、写真の端で見切れている粒子は含まない。粒子の計測はParticle Metricソフトフェア(PHENOM WORLD社製)を用いて行い、設定パラメーターをMin contrast0.5、Merge shared borders0.3,Exclude edge 有効,Conductance0.45,Mindetection size3.35%とした。Mindetection sizeを3.35%とすることで円相当径が10μm以上の大きさの粒子のみが自動認識され、その他の設定パラメーターは粒子を認識するためのパラメータである。
本発明の触媒を使用することにより、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を酸化的に製造する場合に、触媒活性が高い領域において高収率で得ることが可能である。