IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベルコ建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業機械 図1
  • 特開-作業機械 図2
  • 特開-作業機械 図3
  • 特開-作業機械 図4
  • 特開-作業機械 図5
  • 特開-作業機械 図6
  • 特開-作業機械 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080403
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
E02F9/22 R
E02F9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193728
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】三好 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 康輔
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003BB02
2D003BB03
2D003CA04
2D003CA10
2D003DA03
2D003DA04
2D003DB02
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】油圧アクチュエータにおけるキャビテーションを確実に防止することが可能な作業機械の提供。
【解決手段】油圧ショベル1は、可変容量型の油圧ポンプ4と、油圧シリンダ5と、油圧シリンダ5によって動作するバケットと、ヘッド圧センサ61S及びロッド圧センサ63Sと、コントロールバルブ6と、操作レバー7と、パイロット圧センサ7Sと、コントローラ2とを備える。コントローラ2は、ヘッド圧センサ61Sで検出したヘッド圧と、ロッド圧センサ63Sで検出したロッド圧とを比較し、油圧シリンダ5においてヘッド側51とロッド側53とのうち低圧側を特定する。また、コントローラ2は、パイロット圧センサ7Sで検知した操作量に基づいて、油圧シリンダ5の作動油流入側が低圧状態となる低圧操作が行われたと判断した場合に、ポンプ容量を増加させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
可変容量型の油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出する作動油が供給される油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータによって動作する作業装置と、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器と、
前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に配置されるコントロールバルブと、
前記コントロールバルブを操作するための操作手段と、
前記操作手段への操作量を検知する操作検知センサと、
前記姿勢検出器で検出した姿勢情報と前記操作検知センサで検知した操作量とに基づいて前記油圧アクチュエータの作動油流入側が低圧状態となる低圧操作が行われたと判断した場合に、前記ポンプ容量を増加させる制御部と、
を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記油圧アクチュエータは、油圧シリンダであり、
前記姿勢検出器は、前記油圧シリンダのヘッド側のヘッド圧と、前記油圧シリンダのロッド側のロッド圧とをそれぞれ検知するシリンダ圧検知センサであり、
前記制御部は、前記操作量に基づいて前記油圧シリンダの低圧側に前記作動油が流入していると判断した場合に、前記低圧操作が行われたと判断することを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記油圧ポンプを駆動するエンジンを更に備え、
前記制御部は、前記低圧操作が行われたと判断した場合に、前記エンジンの回転数の減少に伴って前記ポンプ容量を大きく増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記エンジンの回転数が所定回転数以下の場合に、前記ポンプ容量を大きく増加させることを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプのポンプ容量を制御する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械の分野において、バケットシリンダや旋回モータの圧油供給側へのメイクアップ流量が不足して低圧状態になるのを防止する(すなわち、キャビテーションを防止する)技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、第2油圧ポンプ(3)の吐出流量が少ない揚合は、第2油圧ポンプ(3)の吐出流量を増大させるだけでなく、第1油圧ポンプ(2)の吐出流量も増大させる。これに伴い、タンク油路(33)の圧油の流量が増加してタンク油路(33)の圧力が上昇し、メイクアップ用のチェックバルブ(47c)を通ってバケットシリンダ(7)のボトム側へメイクアップ(補給)される圧油の流量が増加する。その結果、バケットシリンダ(7)のボトム側における圧油の不足が解消し、バケットシリンダ(7)のボトム側が負圧になることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-75045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、第1油圧ポンプ(2)の吐出流量を増大させることによりメイクアップされる圧油が増加するものの、増加した圧油がタンク(37)に流れるため、キャビテーションの防止効果を十分に得られない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、油圧アクチュエータにおけるキャビテーションを確実に防止することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械であって、可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出する作動油が供給される油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータによって動作する作業装置と、前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出器と、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に配置されるコントロールバルブと、前記コントロールバルブを操作するための操作手段と、前記操作手段への操作量を検知する操作検知センサと、前記姿勢検出器で検出した姿勢情報と前記操作検知センサで検知した操作量とに基づいて前記油圧アクチュエータの作動油流入側が低圧状態となる低圧操作が行われたと判断した場合に、前記ポンプ容量を増加させる制御部と、を備えることを特徴とする作業機械を提供している。
【0008】
ここで、前記油圧アクチュエータは、油圧シリンダであり、前記姿勢検出器は、前記油圧シリンダのヘッド側のヘッド圧と、前記油圧シリンダのロッド側のロッド圧とをそれぞれ検知するシリンダ圧検知センサであり、前記制御部は、前記操作量に基づいて前記油圧シリンダの低圧側に前記作動油が流入していると判断した場合に、前記低圧操作が行われたと判断するのが好ましい。
【0009】
また、前記油圧ポンプを駆動するエンジンを更に備え、前記制御部は、前記低圧操作が行われたと判断した場合に、前記エンジンの回転数の減少に伴って前記ポンプ容量を大きく増加させるのが好ましい。
【0010】
また、前記制御部は、前記エンジンの回転数が所定回転数以下の場合に、前記ポンプ容量を大きく増加させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、姿勢検出器で検出した姿勢情報と操作検知センサで検知した操作量とに基づいて油圧アクチュエータの作動油流入側が低圧状態となる低圧操作が行われたと判断した場合に、ポンプ容量が増加する。そのため、油圧アクチュエータにおけるキャビテーションを確実に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルの一部を示すシステム構成図。
図2】排土姿勢から掘削動作が行われる場合の油圧シリンダの状態を示す図。
図3】抱え込み姿勢から排土動作が行われる場合の油圧シリンダの状態を示す図。
図4】掘削動作におけるポンプ容量の制御の流れを示すフローチャート。
図5】排土動作におけるポンプ容量の制御の流れを示すフローチャート。
図6】パイロット圧に対するエンジン回転数別のポンプ容量を示したグラフ。
図7】変形例に係る油圧ショベルの一部を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.実施形態>
本発明の実施形態による作業機械について、図1から図6に基づいて説明する。以下では、作業機械の一例として、図1に示す油圧ショベル1を例示する。
【0014】
図1に示すように、油圧ショベル1は、エンジン3と、油圧ポンプ4と、油圧シリンダ5と、コントロールバルブ6と、操作レバー7と、バケット8(図2及び図3参照)とを備えて構成される。
【0015】
油圧ポンプ4は、エンジン3によって駆動する可変容量型の油圧ポンプである。後述するように、油圧ポンプ4のポンプ容量は、コントローラ2によって制御される。
【0016】
油圧シリンダ5は、油圧ポンプ4から吐出する作動油がコントロールバルブ6を介して供給される油圧アクチュエータである。具体的には、油圧シリンダ5は、バケット8を動作(詳細には、掘削動作や排土動作)させるためのバケットシリンダである。
【0017】
バケット8は、油圧シリンダ5の伸縮に応じて回動し、掘削や排土などの作業を行う作業装置である。
【0018】
コントロールバルブ6は、油圧ポンプ4から吐出された作動油の流入方向を切り替える調整弁である。具体的には、コントロールバルブ6は、操作レバー7の操作に伴って、油圧シリンダ5のヘッド側51に作動油を供給する状態と、油圧シリンダ5のロッド側53に供給する状態とを切り替えるように構成されている。
【0019】
また、コントロールバルブ6は、作動油の出入口の開き加減によって作動油の流量を調節して動作(油圧シリンダ5のロッドの伸縮動作及びバケット8の回動動作)の速度を制御する。
【0020】
操作レバー7は、コントロールバルブ6を操作することで油圧シリンダ5を伸縮させ、バケット8を動作させる。なお、操作レバー7は、本発明に係る「操作手段」の一例である。
【0021】
図1に示すように、コントローラ2には、エンジン3の回転数を設定するためのエンジン回転数設定装置31が接続されている。コントローラ2は、エンジン回転数設定装置31によって設定された回転数でエンジン3を駆動する。
【0022】
油圧シリンダ5のヘッド側51は、油路61を介してコントロールバルブ6に接続されている。また、油圧シリンダ5のロッド側53は、油路63を介してコントロールバルブ6に接続されている。
【0023】
油路61には、ヘッド圧を検知するヘッド圧センサ61Sが設けられている。また、油路63には、ロッド圧を検知するロッド圧センサ63Sが設けられている。なお、ヘッド圧センサ61S及びロッド圧センサ63Sは、いずれも、本発明に係る「シリンダ圧検知センサ」の一例である。
【0024】
ヘッド圧センサ61Sはコントローラ2に接続されている。コントローラ2には、ヘッド圧センサ61Sで検知したヘッド圧が入力される。同様に、ロッド圧センサ63Sはコントローラ2に接続されている。コントローラ2には、ロッド圧センサ63Sで検知したロッド圧が入力される。
【0025】
また、操作レバー7には、操作レバー7に対する操作量に応じたパイロット圧を検知するパイロット圧センサ7Sが設けられている。パイロット圧センサ7Sはコントローラ2に接続されている。コントローラ2には、パイロット圧センサ7Sで検知された操作量が入力される。なお、パイロット圧センサ7Sは、本発明に係る「操作検知センサ」の一例である。ただし、これに限定されず、パイロット圧センサ7Sに代えて、操作レバー7の傾動角度を検出するものを「操作検知センサ」として採用してもよい。
【0026】
次に、図2を参照しながら、排土姿勢にあるバケット8を掘削動作させる場合の油圧シリンダ5の状態変化について説明する。
【0027】
図2(A)に示すように、油圧シリンダ5のロッドを収縮させると、バケット8は排土姿勢(収容口下向き)になる。油圧シリンダ5のロッドを収縮させるためには、ロッド側53に油圧ポンプ4から作動油を供給し、ヘッド側51の作動油をタンクに戻す必要がある。その場合、ロッド側53のロッド圧がヘッド側51のヘッド圧よりも高くなる。
【0028】
上述した排土姿勢から掘削動作を行う場合、油圧シリンダ5のロッドを収縮した状態(図2(A))から伸長させる必要がある。そして、油圧シリンダ5のロッドを伸長させるためには、ヘッド側51に油圧ポンプ4から作動油を供給し、ロッド側53の作動油をタンクに戻さなければならない。
【0029】
つまり、排土姿勢から掘削動作を行う場合、ロッド側53よりも低圧状態にあるヘッド側51に作動油を供給しなければならない。その際、バケット8には重力も加わるため、ヘッド側51への作動油の供給が追いつかず、ヘッド側51が低圧状態(負圧)になる可能性が高い。
【0030】
そこで、本実施形態では、コントローラ2において、ヘッド側51が低圧状態(負圧)となる操作(低圧操作)を前もって検知し、ポンプ容量を増加させる制御が行われる。当該制御について、図4のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0031】
まず、図4のステップS11において、コントローラ2は、ヘッド圧センサ61Sで検知したヘッド圧とロッド圧センサ63Sで検知したロッド圧とを比較する。ここで、ロッド圧がヘッド圧よりも高いと判定されると(ステップS11でYES)、コントローラ2は、バケット8が排土姿勢(収容口下向き)であると推定する(ステップS12)。
【0032】
次に、コントローラ2は、油圧シリンダ5のヘッド側51に作動油が供給される操作(低圧操作)が行われたか否かをパイロット圧センサ7Sの値に基づいて判定する(ステップS13)。ここで、油圧シリンダ5のヘッド側51に作動油が供給される操作(低圧操作)が行われたと判定されると(ステップS13でYES)、処理はステップS14に進む。
【0033】
ステップS14において、コントローラ2は、エンジン回転数が所定回転数よりも高いか否かを判定する。ここで、エンジン回転数が所定回転数よりも高いと判定されると(ステップS14でYES)、コントローラ2は、油圧ポンプ4のポンプ容量をパイロット圧に応じて設定する(ステップS15)。
【0034】
具体的には、図6の「エンジン回転数 高」(エンジン回転数が所定回転数よりも高いケース)のグラフに示すように、コントローラ2は、パイロット圧センサ7Sによって検知されたパイロット圧の増加に伴ってポンプ容量を増加させる。なお、パイロット圧の最小を含む範囲及び/又は最大を含む範囲に不感帯が設定されている。
【0035】
一方、ステップS14において、エンジン回転数が所定回転数よりも低いと判定されると(ステップS14でNO)、コントローラ2は、油圧ポンプ4のポンプ容量をパイロット圧及びエンジン回転数の双方に基づいて設定する(ステップS16)。
【0036】
具体的には、図6の「エンジン回転数 中」や「エンジン回転数 低」(エンジン回転数が所定回転数よりも低いケース)のグラフに示すように、コントローラ2は、パイロット圧センサ7Sにより検知されたパイロット圧の増加に伴ってポンプ容量を増加させると共に、エンジン回転数の減少に応じてパイロット圧の増加に伴うポンプ容量の増加率を大きくする。
【0037】
より詳細には、コントローラ2は、エンジン回転数が中程度の場合(図6の「エンジン回転数 中」)、エンジン回転数が高い場合(図6の「エンジン回転数 高」)よりも、パイロット圧の増加に伴うポンプ容量の増加率を大きくする。
【0038】
さらに、コントローラ2は、エンジン回転数が低い場合(図6の「エンジン回転数 低」)の場合、エンジン回転数が中程度の場合(図6の「エンジン回転数 中」)よりも、パイロット圧の増加に伴うポンプ容量の増加率を大きくする。
【0039】
続いて、図3を参照しながら、抱え込み姿勢にあるバケット8を排土動作させる場合の油圧シリンダ5の状態変化について説明する。
【0040】
図3(B)に示すように、油圧シリンダ5のロッドを伸長させると、バケット8が抱え込み姿勢(収容口上向き)になる。油圧シリンダ5のロッドを伸長させるためには、ヘッド側51に油圧ポンプ4から作動油を供給し、ロッド側53の作動油をタンクに戻す必要がある。その場合、ロッド側53のロッド圧がヘッド側51のヘッド圧よりも低くなる。
【0041】
上述した抱え込み姿勢から排土動作を行う場合、油圧シリンダ5のロッドを伸長した状態(図3(B))から収縮させる必要がある。そして、油圧シリンダ5のロッドを収縮させるためには、ヘッド側51の油圧ポンプ4をタンクに戻し、ロッド側53に油圧ポンプ4からの作動油を供給する必要がある。
【0042】
つまり、抱え込み姿勢から排土動作を行う場合、ヘッド側51よりも低圧状態にあるロッド側53に作動油を供給しなければならない。その際、バケット8には重力も加わるため、ロッド側53への作動油の供給が追いつかず、ロッド側53が低圧状態(負圧)になる。
【0043】
そこで、本実施形態では、コントローラ2において、ロッド側53が低圧状態(負圧)となる操作(低圧操作)を前もって検知し、ポンプ容量を増加させる制御が行われる。当該制御について、図5のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0044】
まず、図5のステップS21において、コントローラ2は、ヘッド圧センサ61Sで検知したヘッド圧とロッド圧センサ63Sで検知したロッド圧とを比較する。ここで、ロッド圧がヘッド圧よりも低いと判定されると(ステップS21でYES)、コントローラ2は、バケット8が抱え込み姿勢(収容口上向き)であると推定する(ステップS22)。
【0045】
次に、コントローラ2は、油圧シリンダ5のロッド側53に作動油が供給される操作(低圧操作)が行われたか否かをパイロット圧センサ7Sの値に基づいて判定する(ステップS23)。ここで、油圧シリンダ5のヘッド側51に作動油が供給される操作(低圧操作)が行われたと判定されると(ステップS23でYES)、処理はステップS24に進む。
【0046】
図5のステップS24~S26は、上述した図4のステップS14~S16の処理と同じである。そのため、ステップS24~S26の説明については省略する。
【0047】
上述した実施形態によれば、排土姿勢においてヘッド側51に作動油を供給する操作(負圧を発生させる操作)が行われたと判断した場合(図4のステップS13でYES)にポンプ容量が増加する(図4のステップS15又はステップS16)。また、抱え込み姿勢においてロッド側53に作動油を供給する操作(負圧を発生させる操作)が行われたと判断した場合(図5のステップS23でYES)にポンプ容量が増加する(図5のステップS25又はステップS26)。そのため、メイクアップラインを用いることなく、油圧シリンダ5における負圧の発生(キャビテーション)を確実に防止することが可能である。
【0048】
また、上述した実施形態によれば、ヘッド圧センサ61Sで検知したヘッド圧とロッド圧センサ63Sで検知したロッド圧とに基づいてバケット8の姿勢(排土姿勢又は抱え込み姿勢)が推定される。端的に言えば、バケット8の姿勢を定量的に推定することができる。そのため、油圧シリンダ5において低圧状態(負圧)を誘発する操作が行われたか否かをより正確に判断することが可能である。
【0049】
また、上述した実施形態によれば、エンジン回転数の減少に伴ってポンプ容量が大きく増加する(図6参照)。端的に言えば、エンジン回転数が低いほどポンプ容量が大きく増加するように制御される。よって、エンジン回転数が大きく低下した場合であっても、油圧シリンダ5における負圧の発生(キャビテーション)を確実に防止することが可能である。
【0050】
なお、ポンプ吐出量は、エンジン回転数が所定回転数(閾値)よりも低い場合に不十分になる傾向にある。この点、上述した実施形態によれば、エンジン回転数が所定回転数よりも低い場合、すなわち、ポンプ吐出量が不十分になる場合に限りに、エンジン回転数の減少に応じてポンプ容量が大きく増加する。そのため、エンジン回転数が閾値よりも高く、作動油の吐出量が十分な場合にまでポンプ容量を大きく増加させずに済む。
【0051】
<2.変形例>
本発明による作業機械は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、単一の油圧ポンプ4によって作動油が油圧シリンダ5に供給される場合を例示したが、これに限定されず、複数の油圧ポンプによって作動油が油圧シリンダ5に供給されるようにしてもよい。
【0053】
例えば、図7に示すように、油圧ショベル1は、2つの油圧ポンプ41,42と、油圧ポンプ41から吐出された作動油に油圧ポンプ42から吐出された作動油を合流させる合流弁9とを備えるようにしてもよい。そして、コントローラ2は、上述した低圧操作が行われたと判断した場合には(図4のステップS13でYES又は図5のステップS23でYES)、2つの油圧ポンプ41,42の双方又は一方のポンプ容量を増加させるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、姿勢検出器の一例として、油圧シリンダ5のヘッド圧を検知するヘッド圧センサ61Sと、油圧シリンダ5のロッド圧を検知するロッド圧センサ63Sとを例示した。そして、ロッド圧がヘッド圧よりも高い場合に排土姿勢(収容口下向き)と推定し(図4のステップステップS12)、逆に、ロッド圧がヘッド圧よりも低い場合に抱え込み姿勢(収容口上向き)と推定する(図5のステップS22)場合を例示したが、これらの態様に限定されない。
【0055】
例えば、姿勢検出器として、バケット8や図示しないブーム、アームにそれぞれ角度センサを設けるようにしてもよい。そして、個々の角度センサの値から排土姿勢(収容口下向き)や抱え込み姿勢(収容口上向き)を推定するようにしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、エンジン回転数に応じてポンプ容量の増加量を決定する場合を例示したが、これに限定されず、エンジン回転数に関係なくポンプ容量を一定量だけ増加させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように本発明に係る作業機械は、油圧ポンプのポンプ容量を制御するのに適している。
【符号の説明】
【0058】
1 油圧ショベル
2 コントローラ
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 油圧シリンダ
6 コントロールバルブ
7 操作レバー
7S パイロット圧センサ
8 バケット
9 合流弁
31 エンジン回転数設定装置
41,42 油圧ポンプ
51 ヘッド側
53 ロッド側
61,63 油路
61S ヘッド圧センサ
63S ロッド圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7