(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080407
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】ホールセンサ、およびホールセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20230602BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20230602BHJP
H10N 52/80 20230101ALI20230602BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/07
H01L43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193732
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 博稔
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AC06
2G017AC07
2G017AD53
2G017BA05
2G017CB01
5F092AA01
5F092AB01
5F092AC02
5F092BA03
5F092BA06
5F092BA12
5F092BA15
5F092BA23
5F092FA08
(57)【要約】
【課題】磁界の検出感度が向上されたホールセンサを提供する。
【解決手段】第1主面300Aを有するホール素子300と、第1主面300A側に配置された第1磁性体201と、を備え、第1磁性体201は、第1主面300Aと対向する第1面201Aと、該第1面201Aと対向する第2面201Bとを有し、第2面201Bの面積は、第1面201Aの面積よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有するホール素子と、
前記第1主面側に配置された第1磁性体と、を備え、
前記第1磁性体は、前記第1主面と対向する第1面を有し、
前記ホール素子の反対側から平面視したときの前記第1磁性体の投影面の面積は、前記第1面の面積よりも大きい、ホールセンサ。
【請求項2】
前記投影面は、前記第1面と対向する平面である、請求項1に記載のホールセンサ。
【請求項3】
前記第1磁性体の前記第1面に垂直な断面は、T字形状である、請求項2に記載のホールセンサ。
【請求項4】
前記投影面の面積は、前記第1主面の面積以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のホールセンサ。
【請求項5】
前記投影面の面積と、前記第1主面の面積とは同一である、請求項4に記載のホールセンサ。
【請求項6】
前記ホール素子は、前記第1主面と対向する第2主面を有し、
前記ホールセンサは、前記第2主面側に配置された第2磁性体をさらに備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のホールセンサ。
【請求項7】
前記ホールセンサは、前記ホール素子が配置されるフレームを有し、
前記第2磁性体は、前記ホール素子と、前記フレームとの間に配置された、請求項6に記載のホールセンサ。
【請求項8】
前記ホールセンサは、前記フレームに前記第2磁性体とは反対側に配置された第3磁性体をさらに備える、請求項7に記載のホールセンサ。
【請求項9】
前記ホールセンサは、前記ホール素子が配置されるフレームを有し、
前記フレームは、前記ホール素子と、前記第2磁性体との間に配置されている、請求項6に記載のホールセンサ。
【請求項10】
前記ホールセンサは、前記ホール素子が配置されるフレームを有し、
前記フレームは、前記第2磁性体である、請求項6に記載のホールセンサ。
【請求項11】
前記投影面の面積を前記第1面の面積で除算した値は、1.1以上16以下である、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のホールセンサ。
【請求項12】
主面を有するホール素子を準備することと、
凸部と凹部が形成された層間膜を前記主面に形成することと、
前記凸部および前記凹部を覆うように、磁性体を形成することとを備え、
前記磁性体は、前記主面と対向する磁性体面を有し、
前記ホール素子の反対側から平面視したときの前記磁性体の投影面の面積は、前記磁性体面の面積よりも大きい、ホールセンサの製造方法。
【請求項13】
主面を有するホール素子を準備することと、
磁性体面を有する磁性体を形成することと、
前記主面と前記磁性体面とが対向するように、前記ホール素子と、前記磁性体とを接着剤により接着することとを備え、
前記ホール素子の反対側から平面視したときの前記磁性体の投影面の面積は、前記磁性体面の面積よりも大きい、ホールセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホールセンサ、およびホールセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁界を検出するホールセンサが開示されている。このホールセンサは、基板と、該基板上に配置された感磁層と、該感磁層上に配置された磁性膜とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホールセンサは、ビデオ、パソコンなど様々な電子機器に搭載され、磁界の検出感度のさらなる向上が望まれている。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、磁界の検出感度が向上されたホールセンサ、およびホールセンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のホールセンサは、ホール素子と、第1磁性体と、を備える。ホール素子は、第1主面を有する。第1磁性体は、第1主面側に配置されている。第1磁性体は、第1主面と対向する第1面を有する。ホール素子の反対側から平面視したときの第1磁性体の投影面の面積は、第1面の面積よりも大きい。
【0007】
本開示のホールセンサの製造方法は、主面を有するホール素子を準備することと、凸部と凹部が形成された層間膜を主面に形成することと、凸部および凹部を覆うように、磁性体を形成することとを備える。磁性体は、主面と対向する磁性体面を有する。ホール素子の反対側から平面視したときの磁性体の投影面の面積は、磁性体面の面積よりも大きい。
【0008】
本開示のホールセンサの製造方法は、主面を有するホール素子を準備することと、磁性体面を有する磁性体を形成することと、主面と磁性体面とが対向するように、ホール素子と、磁性体とを接着剤により接着することとを備える。ホール素子の反対側から平面視したときの磁性体の投影面の面積は、磁性体面の面積よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、磁界の検出感度が向上されたホールセンサ、およびホールセンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施の形態のホールセンサが適用される磁気センサの構成例である。
【
図3】
図3は、第1磁性体およびホール素子の斜視図である。
【
図4】
図4は、第1磁性体を第2面からZ軸方向から平面視した図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態のホールセンサの集磁効果を説明するための図である。
【
図6】
図6は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図7】
図7は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図8】
図8は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図9】
図9は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図10】
図10は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図11】
図11は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図12】
図12は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図13】
図13は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図14】
図14は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図15】
図15は、別の実施の形態の第1磁性体を説明するための図である。
【
図16】
図16は、別の実施の形態のホールセンサの断面図である。
【
図17】
図17は、別の実施の形態のホールセンサの断面図である。
【
図18】
図18は、別の実施の形態のホールセンサの断面図である。
【
図19】
図19は、別の実施の形態のホールセンサの断面図である。
【
図20】
図20は、ホールセンサの第1の製造方法を説明するための図である。
【
図22】
図22は、ホールセンサの第2の製造方法を説明するための図である。
【
図23】
図23は、第1の製造方法または第2の製造方法のフローチャートである。
【
図24】
図24は、ホールセンサの第3の製造方法を説明するための図である。
【
図26】
図26は、シミュレーション結果の説明で用いる部材を説明するための図である。
【
図27】
図27は、実験例1、実験例5、および実験例6の部材の斜視図である。
【
図31】
図31は、実験例1~実験例6のシミュレーション結果などをまとめた表である。
【
図38】
図38は、シミュレーション結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<第1の実施の形態>
[磁気センサ]
現在、磁気センサは、我々の身の回りにあるビデオ、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、エアコン、洗濯機、および自動車などに使用されている。よって、磁界の検出感度が高いホールセンサが望まれている。本実施の形態では、磁界の検出感度が高いホールセンサを説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に従うホールセンサ100が適用される磁気センサ1000の構成例である。磁気センサ1000は、ホールセンサ100と、検出回路500とを備える。ホールセンサ100は、第1電極351と、第2電極352とを有する。検出回路500は、電流源602と、検出部604と、制御部606とを有する。制御部606は、電流源602および検出部604を制御する。電流源602は、第1電極351と電気的に接続されている。検出部604は、第2電極352と電気的に接続されている。
【0014】
制御部606の制御により、電流源602は、ホールセンサ100に対して駆動電流Jを第1電極351を経由して供給する。ホールセンサ100は、該駆動電流Jにより後述のホール素子に作用する磁界に応じて発生したホール電圧を出力する。該ホール電圧は、第2電極352経由で、検出部604に出力される。検出部604は、ホールセンサ100から出力されたホール電圧に基づいて、ホールセンサ100に作用する磁界を検出する。また、電流源602の代わりに、電圧源を備えるようにしてもよい。電圧源は、ホールセンサ100においてホール電圧を発生させるための駆動電圧をホールセンサ100に供給するものである。
【0015】
[ホールセンサ]
図2は、ホールセンサ100を説明するための図である。本実施の形態においては、ホールセンサ100の厚み方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向と直交する2軸をX軸およびY軸とする。X軸方向は、ホールセンサ100に対して印加される駆動電流Jの方向とする。Y軸方向は、発生するホール電圧の方向とする。
図2は、ホールセンサ100のXZ平面(Y軸に垂直な平面)における断面図である。
【0016】
図2の例では、ホールセンサ100は、ホール素子300と、第1磁性体201と、層間膜321と、ホール素子300と、層間膜305と、第1基板311と、第2基板312と、フレーム313とを備える。
図2の例では、フレーム313、第1基板311、第2基板312、ホール素子300、層間膜321と、第1磁性体201とが積層されている。Z軸方向は、これらの部材の積層方向でもある。
【0017】
フレーム313は、薄板形状を有する。フレーム313に、ホールセンサ100のフレーム313以外の部材(ホール素子300および第1磁性体201など)が配置される。したがって、磁気センサ1000内において、フレーム313以外の部材を安定して配置させることができる。
【0018】
フレーム313の素材は、たとえば、銅である。フレーム313には、第1基板311が配置される。第1基板311は、ガリウム砒素(Gallium Arsenide)基板、ヒ化インジウム(Indium Arsenide)基板、シリコン基板(silicon)基板、または、その他の半導体基板により構成される。ガリウム砒素基板は、「GaAs基板」とも称される。また、ヒ化インジウム基板は、「InAs基板」とも称される。第1基板311の両端には、第1電極351および第2電極352(
図1参照)が形成される。
【0019】
第2基板312は、第1基板311よりも小さい。第2基板312は、第1基板311に配置される。第2基板312は、ガリウム砒素基板、ヒ化インジウム基板、シリコン基板、または、その他の半導体基板により構成される。第1基板311と、第2基板312とは同一の素材としてもよく、異なる素材としてもよい。第2基板312は配線層として機能する。
【0020】
第2基板312上に、ホール素子300および層間膜305が配置される。層間膜305は、たとえば、酸化被膜である。また、ホール素子300は、ガリウム砒素基板、ヒ化インジウム基板、シリコン、アンチモン化インジウム(InSb)およびその他の半導体などにより構成される。
【0021】
本実施形態においては、ホール素子300は、直方体もしくは立法体形状を有する(後述の
図3参照)。なお、ホール素子300は、他の形状としてもよい。他の形状は、たとえば、薄板形状、円柱形状、および多角柱形状などのいずれかの形状である。
【0022】
また、ホール素子300は、第1主面300Aと、第2主面300Bとを有する。第1主面300Aと、第2主面300Bとは、Z軸方向において互いに反対側に位置する面である。より具体的には、第1主面300Aと、第2主面300Bとは、Z軸方向において互いに対向する面としてもよい。典型的には、第1主面300Aと、第2主面300Bとは平面であり、第1主面300Aと第2主面300Bとは平行である。なお、本実施の形態の「平面」は、完全な平面のみならず、磁界の検出感度を向上させる上で若干の凹部または凸部などが形成された面としてもよい。また、本実施の形態の「平行」は、完全な平行のみならず、磁界の検出感度を向上させる上で2つの延長面が接するような関係であってもよい。
【0023】
第1主面300Aは、磁束(磁界)が入力される面である。第1主面300Aに入力された磁束(磁界)に基づいてホール電圧が発生する。
【0024】
ホール素子300は、第2主面300Bが第2基板312と対向するように、該第2基板312に配置される。
【0025】
第1磁性体201は、ホール素子300の第1主面300A側に配置される。第1磁性体201は、第1面201Aと、第2面201Bとを有する。第1面201Aと、第2面201Bとは、Z軸方向において互いに反対側に位置する面である。より具体的には、第1面201Aと、第2面201Bとは、Z軸方向において互いに対向する面としてもよい。典型的には、第1面201Aと、第2面201Bとは平面であり、第1面201Aと第2面201Bとは平行である。
【0026】
第1磁性体201、および後述の第2磁性体、第3磁性体は、磁性半導体、酸化物磁性体、および金属磁性体のいずれかで構成されてもよい。金属磁性体は、たとえば、パーマロイ (permalloy)である。
【0027】
また、第1磁性体201、第2磁性体、および第3磁性体は、GaMnAsにより構成されてもよい。GaMnAsは、GaAs基板上のエピタキシャル成長により形成される。製法は、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)または有機金属気相堆積法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)などが適用される。
【0028】
また、第1磁性体201、第2磁性体、および第3磁性体は、InMnAsにより構成されてもよい。InMnAsは、InAs基板上のエピタキシャル成長により形成される。製法は、MBEやMOCVDなどが適用可能である。第1磁性体201、第2磁性体、および第3磁性体は、同一の素材としてもよく、異なる素材としてもよい。
【0029】
第1磁性体201は、第1面201Aが、第1主面300Aと対向するように、ホール素子300に配置される。
図2では、第1面201Aと、第1主面300Aとの間に層間膜321が介在されている例が示されている。しかしながら、ホールセンサ100は、この層間膜321を備えていなくてもよい。また、
図2の例では、第1磁性体201の第1面201Aに垂直な断面(つまり、XZ平面における断面)は、T字形状である。
【0030】
また、便宜上、第1磁性体201を、第1磁性部251と第2磁性部252とに分けて説明する場合がある。第1磁性部251は、第1磁性体201のうち第1面201Aを有する部材である。第2磁性部252は、第1磁性体201のうち第2面201Bを有する部材である。なお、第1磁性体201は、第1磁性部251と第2磁性部252とが一体化した構造としてもよい。また、第1磁性体201は、第1磁性部251と第2磁性部252とが別個である構造としてもよい。
【0031】
第1磁性部251の厚みL1(Z軸方向の長さ)は、典型的には、5μm以上20μm以下の値であることが好ましいことが、発明者により確認されている。本実施の形態では、L1=15μmである。また、第2磁性部252の厚みL2(Z軸方向の長さ)は、典型的には、0.1μm以上20μm以下の値であることが好ましいことが、発明者により確認されている。本実施の形態では、L2=15μmである。ホール素子300の厚みL3(Z軸方向の長さ)は、典型的には、0.4μm以上1.5μm以下の値である。また、第1磁性部251のX軸方向における長さL4は、たとえば、50μmである。
【0032】
図3は、第1磁性体201およびホール素子300の斜視図である。
図3の例では、第1磁性部251、第2磁性部252、およびホール素子はいずれも直方体形状を有する。
【0033】
図4は、第1磁性体201を第2面201BからZ軸方向から平面視した図である。
図4の例では、第1磁性部251の第1面201Aが破線で示されており、第2磁性部252の第2面201Bが実線で示されている。
図4の例では、第1面201Aおよび第2面201Bは共に矩形状となっている。なお、第1面201Aおよび第2面201Bの少なくとも一方は、他の形状であってもよい。他の形状は、たとえば、円形、三角形、長方形、またはP角形(Pは5以上の整数)としてもよい。また、
図4に示すように、第2面201Bの面積S2の面積は、第1面201Aの面積S1よりも大きい。
【0034】
つまり、以下の式(1)が成立する。
【0035】
S2>S1 (1)
また、本実施の形態では、第2面201Bと第1主面300Aとでは、形状および面積は同一である。したがって、第1主面300Aの面積も面積S2となる。
【0036】
[集磁効果]
図5は、本実施の形態のホールセンサ100の集磁効果を説明するための図である。第1磁性体201に入力される磁束を「磁束φ」とし、第1面201Aの磁束密度を「B1」とし、第2面201Bの磁束密度を「B2」とする。また、
図5で説明したように、第1面201Aの面積は、「S1」であり、第2面201Bの面積は、「S2」である。また、本実施の形態では、面積S2は、190×190μm
2であり、面積S1は、50×50μm
2である。
【0037】
磁束密度B1、磁束密度B2、面積S1、および面積S2を用いると、以下の式(2)が成立する。
【0038】
φ=B1・S1=B2・S2 (2)
したがって、以下の式(3)および式(4)が成立する。
【0039】
B1=φ/S1 (3)
B2=φ/S2 (4)
また、式(1)、式(3)、式(4)から以下の式(5)が成立する。
【0040】
B1>B2 (5)
図5においては、磁束が矢印で示されている。
図5に示すように、第2面201Bから入力された磁束は、第2磁性部252を通過する。そして、第1面201Aを有する第1磁性部251に入力されることにより、磁束密度は増加する。したがって、式(5)に示すように、磁束密度B1は、磁束密度B2よりも大きくなる。
【0041】
また、ホール素子300で生じるホール電圧Vと、ホール素子300に対して掛かる磁界の磁束密度Bとは、以下の式(6)が成立する。
【0042】
V=α・B (6)
ここで、αは1より大きい比例定数である。式(6)に示すように、磁束密度Bが大きいほど、ホール電圧V(またはホール電圧Vの絶対値)は大きくなる。また、ホール素子300に対して掛かる磁界の磁束密度Bは、磁束密度B1と同一とみなすことができる。
【0043】
仮に、第1面積S1と第2面積S2とが同一であるホールセンサ(以下、「比較例のホールセンサ」と称される。)では、B1=B2となることから、ホール電圧Vを大きくできず、ホールセンサの磁界の検出感度を向上させることができない。
【0044】
これに対し、本実施の形態のホールセンサ100においては、式(5)に示すように、磁束密度B1を磁束密度B2よりも大きくすることができる。よって、比較例のホールセンサと比較して、本実施の形態のホールセンサ100は、ホール電圧を大きくすることができる。その結果、ホールセンサ100は、比較例のホールセンサと比較して、磁界の検出感度を向上させることができる。
【0045】
また、第2面201Bの面積は大きいほど、より多くの磁束を第1磁性体201に入力させることができ、その結果、磁束密度B1を大きくすることができる。しかしながら、第2面201Bの面積が過度に大きい場合には、ホールセンサ100のXY平面におけるサイズが巨大化してしまう。
【0046】
また、第2面201Bの第2面積S2は大きいほど、多くの磁束を第1磁性体201に入力させることができる。しかしながら、第2面201Bの第2面積S2が過度に大きいと、ホールセンサ100のサイズの増大化を招く。そこで、本実施の形態では、第2面201Bの第2面積S2は、第1主面300Aの面積と同一である。このような構成により、ホールセンサのサイズを抑制できつつ、第1面の磁束密度B1を高めることができる。
【0047】
なお、変形例として、第2面201Bの第2面積S2は、第1主面300Aの面積未満としてもよい。このような構成によれば、ホールセンサ100のサイズを抑制できる。
【0048】
また、面積S2を面積S1で除算した値(比率P)は、本実施の形態では、14.44である。この比率Pの好ましい範囲は、1.1以上16以下であることが発明者により確認されている。
【0049】
[第1磁性体の他の形状]
次に、第1磁性体201の他の形状を説明する。また、第2面201Bの面積S2が、第1面201Aの面積S1より大きければ、第1磁性体201は他の形状であってもよい。
図6~
図11は、他の形状を有する変形例の第1磁性体201を第2面201BからZ軸方向において平面視した図である。なお、
図6~
図11においては、第1磁性部251の第1面201Aが破線で示されており、第2磁性部252の第2面201Bが実線で示されている。
【0050】
図6の例では、第2面201Bは、円形状である。つまり、第2磁性部252は円柱形状となっている。また、第1面201Aは、矩形状である。つまり、第1磁性部251は直方体形状となっている。
【0051】
図7の例では、第2面201Bは、多角形状(
図7では、六角形状)である。つまり、第2磁性部252は多角柱形状(
図7では、六角柱形状)となっている。また、第1面201Aは、矩形状である。つまり、第1磁性部251は直方体形状となっている。
【0052】
図8の例では、第2面201Bは、矩形状である。つまり、第2磁性部252は直方体形状となっている。また、第1面201Aは、円形状である。つまり、第1磁性部251は円柱形状となっている。
【0053】
図9の例では、第2面201Bは、矩形状である。つまり、第2磁性部252は直方体形状となっている。また、第1面201Aは、六角形形状である。つまり、第1磁性部251は六角柱形状となっている。
【0054】
図10の例では、第2面201Bは、矩形状である。つまり、第2磁性部252は直方体形状となっている。また、第1面201Aは、十字形状である。
図10の例では、第1磁性体201を第2面201BからZ軸方向において平面視した場合に、第1面201Aの十字形状の先端の4つの辺が、それぞれ、第2面201Bの矩形状の4つの辺に接している。
図10の例では、第1磁性部251は、途中が十字形状で底面(第1面201A)が矩形である柱形状となっている。
【0055】
図11の例では、第2面201Bは、矩形状である。つまり、第2磁性部252は直方体形状となっている。また、第1面201Aは、十字形状である。
図11の例では、第1磁性体201を第2面201BからZ軸方向において平面視した場合に、第1面201Aの十字形状の先端が、それぞれ、第2面201Bの矩形状の4つの頂点に接している。
図11の例では、第1磁性部251は、途中が十字形状で底面(第1面201A)が矩形である柱形状となっている。
【0056】
図12~
図15は、他の形状を有する変形例の第1磁性体201をY軸方向において平面視した図である。
図12および
図13の例では、便宜上、第1磁性部251と第2磁性部252との区別のための破線が付されている。
【0057】
図12の例では、第2磁性部252の第1磁性部251との接合箇所にテーパ部254が形成されている。
図13の例では、第2磁性部252から第1面201Aに亘ってテーパ部255が形成されている。換言すると、第1磁性部251の外周面がテーパ面となっている。
【0058】
図14の例では、
図14(A)と、
図14(B)とが示されている。
図14(A)は、変形例の第1磁性体201をY軸方向において平面視した図である。
図14(B)は、該変形例の第1磁性体201を第2面201BからZ軸方向において平面視した図である。
【0059】
図14の第1磁性体201は、
図2などで示したT字形状の第1磁性体201の中央部に穴201Cが形成されたものである。穴201Cの断面は、矩形状である。また、第1面201Aは、矩形状である。
【0060】
図14(B)では、投影面201Xが示されている。ここで、投影面201Xとは、ホール素子300の反対側から(第2面201Bから)第1磁性体201を平面視したときの面である。換言すれば、投影面201Xとは、Z軸方向と垂直な平面に対して、第1磁性体201を投影させた場合に該平面に投影される面である。
図14(B)の例では、投影面201Xは、太線で囲まれた面である。投影面201Xは、第2面201Bに対応する。また、
図14(B)の例では、第1面201Aは破線で示されている。
【0061】
図15の例では、
図15(A)と、
図15(B)とが示されている。
図15(A)は、変形例の第1磁性体201をY軸方向において平面視した図である。
図15(B)は、該変形例の第1磁性体201を第2面201BからZ軸方向において平面視した図である。
【0062】
図15の第1磁性体201は、
図13で示した第1磁性体201の中央部に穴201Dが形成されたものである。穴201Dの断面は、三角形状である。また、第1面201Aは、矩形状である。
図15(B)では、投影面201Xが示されている。また、
図15(B)の例では、第1面201Aは破線で示されている。
【0063】
図14(B)または
図15(B)に示すように、投影面201Xの面積は、第1面201Aの面積よりも大きい。このような構成であれば、投影面201Xの磁束密度BXよりも、磁束密度B1を大きくすることができる。よって、
図14および
図15に示す第1磁性体201を備えるホールセンサであっても、磁界の検出感度を向上させることができる。
【0064】
また、本実施の形態においては、
図6~
図15に記載の第1磁性体201の第1面201Aに垂直な断面(つまり、XZ平面における断面)は、T字形状または略T字形状である。なお、
図6~
図15のうちのいずれかの第1磁性体の断面は、他の形状に属するとしてもよい。たとえば、
図15の第1磁性体201の断面は、V字形状に属するとしてもよい。また、
図6、7、10、11において、第1面201Aは、他の形状であってもよい。他の形状は、たとえば、円形、三角形、長方形またはP角形(Pは5以上の整数)としてもよい。
【0065】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態のホールセンサは、第1磁性体201の他に、第2磁性体202を有する。
図16~
図19は、第2の実施の形態の各例を説明するための図である。
図16~
図19の例では、第2磁性体202は、ホール素子300の第2主面300B側に配置されている。
【0066】
図16は、第1例のホールセンサ100Aの断面図である。ホールセンサ100Aにおいては、第2磁性体202が、第1基板311と、フレーム313との間に配置される。
図16の例では、第2磁性体202は、第2基板312との間に第2磁性体202が配置される。
【0067】
第2磁性体202は、ホール素子300の裏メタルとして形成されてもよい。また、第2磁性体202は、ホール素子300の第2主面300Bに接着剤などにより貼り付けて形成されもよい。
【0068】
ホールセンサ100Aの構成により、第1磁性体201と第2磁性体202とは、第1の実施の形態のホールセンサ100と比較して強固な磁束のループを形成することができる。よって、第1例のホールセンサ100Aは、ホールセンサ100と比較して、磁束密度B1をより増加させることができる。
【0069】
図17は、第2例のホールセンサ100Bの断面図である。ホールセンサ100Bにおいては、フレーム313は、ホール素子300と、第2磁性体202との間に配置されている。換言すれば、第2磁性体202は、フレーム313において、第1磁性体201およびホール素子300とは反対側に配置される。第2磁性体202は、フレーム313に接着剤などにより貼り付けて形成される。
【0070】
ホールセンサ100Bの構成であっても、第1磁性体201と第2磁性体202とは、第1の実施の形態のホールセンサ100と比較して強固な磁束のループを形成することができる。よって、第1例のホールセンサ100Aは、ホールセンサ100と比較して、磁束密度B1をより増加させることができる。
【0071】
図18は、第3例のホールセンサ100Cの断面図である。ホールセンサ100Cの第2磁性体202は、メッキにより形成される。第2磁性体202は、第1基板311と、フレーム313との間に配置される。
【0072】
ここで、磁束のループを形成するためには、第2磁性体202の厚みがある程度確保されていることが好ましい。しかしながら、第2磁性体202は、メッキにより形成されることから、該第2磁性体202の厚みは薄くなる傾向にある。
【0073】
そこで、ホールセンサ100Cは、第3磁性体203も備える。ホールセンサ100Cは、第2磁性体202の厚みに加えて、第3磁性体203の厚みも加わることから、第1磁性体201、第2磁性体202、および第3磁性体203が、磁束のループを形成することができる。また、第3磁性体203についてもメッキにより形成される。また、第3磁性体203は、フレーム313において、第1磁性体201、第2磁性体202、およびホール素子300とは反対側に配置される。
【0074】
ホールセンサ100Cによれば、第2磁性体202がメッキにより形成されることから、磁束のループを形成するための第2磁性体202の厚みを確保することができない場合がある。そこで、ホールセンサ100Cにおいては、第3磁性体203を有する。したがって、第2磁性体202および第3磁性体203がメッキで形成される場合であっても、第1磁性体201とは別の磁性体のある程度の厚みを確保できることから、磁束のループを形成することができる。
【0075】
図19は、第4例のホールセンサ100Dの断面図である。ホールセンサ100Dは、フレーム313が、第2磁性体202である。つまり、フレーム313と、第2磁性体202とが兼用される。ホールセンサ100Dにより、磁束のループを形成することができる。さらに、ホールセンサ100Dにより、フレーム313と、第2磁性体202とが兼用されることから、フレームと第2磁性体とが別個であるホールセンサと比較して、部品点数を抑制できる。
【0076】
[ホールセンサの製造方法]
次に、ホールセンサの製造方法を説明する。
図20は、ホールセンサの第1の製造方法を説明するための図である。なお、
図20、後述の
図21~
図25においては、ホールセンサのうちの第1磁性体201およびホール素子300について示す。また、
図20~
図22、および
図24については、
図2などと比較して、第1磁性体201およびホール素子300の寸法が異なるように記載されている。
【0077】
図20(A)に示すように、第1主面300A(主面)を有するホール素子300が準備される。次に、
図20(B)に示すように、第1主面300A上に層間膜305が形成される。層間膜305は、たとえば、CVD(chemical vapor deposition)法により形成される。
【0078】
次に、
図20(C)に示すように、層間膜305上に、レジスト501が形成される。レジスト501は、たとえば、樹脂(ポリマー)、感光剤、添加剤、および溶剤を主成分とする混合物である。レジスト501は、たとえば、樹脂(ポリマー)、感光剤、添加剤、および溶剤の少なくとも1つを主成分とする混合物である。レジスト501は、層間膜305の両端に形成される。また、レジスト501により、パターンが形成される。このパターンとは、第1磁性体201(
図3参照)を形成するためのパターンである。
【0079】
次に、
図20(D)に示すように、
図20(C)の状態で、層間膜305に対してエッチング処理が実行される。このエッチング処理により、層間膜305に凸部305Aおよび凹部305Bが形成される。このエッチング処理により、凸部305Aと凹部305Bが形成された層間膜305が第1主面300Aに形成される。よって、第1主面300Aに凸部305Aと凹部305Bが形成される。
【0080】
図21は、
図20(D)の状態のホール素子300などをZ軸方向から平面視した図である。
図21の例では、矩形状の第1主面300Aの周縁に層間膜305(凸部305A)が形成されている。また、第1主面300Aの凸部305Aの他の領域は、凹部305Bとなる。換言すれば、層間膜305の中央部に凹部305Bが形成されており、残りの部分が、凸部305Aとなる。
【0081】
次に、
図20(E)に示すように、凸部305Aおよび凹部305Bが覆うように、所定の方法で第1磁性体201(磁性体)が形成される。所定の方法は、たとえば、スパッタリング、蒸着、メッキなどのいずれかの手法である。また、第1磁性体201は、第1主面300Aと対向する第1面201A(磁性体面)を有する。そして、第2面201Bの面積は、第1面201Aの面積よりも大きくなる。
【0082】
なお、特に図示しないが、上述の第2磁性体および第3磁性体が、所定のタイミングで積層されるようにしてもよい。
【0083】
図22は、ホールセンサの第2の製造方法を説明するための図である。第2の製造手法は、
図20(B)および
図20(C)が、それぞれ、
図22(B)および
図22(C)に代替された手法である。
【0084】
図22(B)に示すように、第1主面300Aの中央部にレジスト501が形成される。そして、
図22(C)に示すように、レジスト501および、第1主面300Aのレジスト以外の領域に、所定の方法で層間膜が形成される。この所定の方法は、たとえば、CVD法またはスパッタリングである。
【0085】
次に、
図22(D)に示すように、リフトオフが実行されることにより、レジスト501およびレジスト501を覆っていた層間膜が除去される。
図22(D)の状態は、
図20(D)および
図21の状態と同様である。
【0086】
図23は、第1の製造方法または第2の製造方法のフローチャートである。ステップS2でホール素子300が準備される(
図20(A)または
図22(A))。次に、ステップS4において、凸部305Aと凹部305Bが形成された層間膜305を第1主面300Aに形成される(
図20(D)または
図22(D)参照)。
図20(B)および
図20(C)で説明した処理、または、
図22(B)および
図22(C)で説明した処理が実行されることにより、ステップS4の処理は、実行される。
【0087】
次に、ステップS6において、凸部305Aおよび凹部305Bを覆うように、第1磁性体201が形成される(
図20(E)または
図22(E))。
【0088】
図20~
図23で説明した製造手法により比較的簡易にホールセンサ100は製造されることができる。特に、
図2などで説明したように第1磁性体201の形状は、第1面201Aと、該第1面201Aと対向する第2面201Bとを有することが好ましい。このような第1磁性体201を有するホールセンサは、
図20~
図23で説明した比較的簡易な製造手法により製造されることができる。
【0089】
また、第1磁性体201の第1面201Aに垂直な断面は、T字形状であることが好ましい。このような第1磁性体201を有するホールセンサは、
図20~
図23で説明した比較的簡易な製造手法により製造されることができる。
【0090】
図24は、ホールセンサの第3の製造方法を説明するための図である。
図24(A)に示すように、第1主面300A(主面)を有するホール素子300が準備される。また、第1磁性体201が別の工程で所定の手法により製造される。この所定の手法は、パンチング処理またはエッチング処理(もしくは整形して焼結)という手法である。
【0091】
図24(B)に示すように、第1主面300Aの中央部に接着剤511が塗布される。そして、
図24(C)に示すように、ホール素子300の第1主面300Aと第1磁性体201の第1面201A(磁性体面)とが対向するように、ホール素子300と、第1磁性体201とが接着剤511により接着される。また、
図24の例では、接着剤511はホール素子300に塗布されたが、第1磁性体201の第1面201Aに塗布されるようにしてもよい。
【0092】
図25は、第3の製造方法のフローチャートである。ステップS12でホール素子300が準備される(
図24(A))。次に、ステップS14において、第1磁性体201が形成される。なお、第1磁性体201は予め形成されていてもよい。そして、ホール素子300と、第1磁性体201とが接着剤511により接着される。
【0093】
図24または
図25で説明した第3の製造手法であっても、ホールセンサは製造されることができる。また、
図20~
図25で説明した製造手法により、
図6~
図15で説明した第1磁性体201を有するホールセンサが製造されてもよい。また、
図20~
図25で説明した製造手法により、ホールセンサ100A~ホールセンサ100D(
図16~
図19参照)が製造されてもよい。
【0094】
[シミュレーション結果]
次に、本実施の形態のホールセンサの磁界の検出感度が向上されたことを示すシミュレーション結果を説明する。
図26~
図38は該シミュレーション結果を説明するための図である。
【0095】
図26は、
図27~
図30の構成を説明するための図である。
図26では、第1磁性体201の第2面201BをXY平面で四等分するための直線M1および直線M2が示されている。直線M1は、X軸方向に沿った直線であり、直線M2は、Y軸方向に沿った直線である。
【0096】
また、
図26では、ホール素子300の第1主面300AをXY平面で四等分するための直線N1および直線N2が示されている。直線N1は、X軸方向に沿った直線であり、直線N2は、Y軸方向に沿った直線である。
【0097】
このシミュレーション結果では、磁性体部材201Pと、ホール素子部材300Pとを用いて説明する。磁性体部材201Pは、第1磁性体201を上記四等分した部材である。ホール素子部材300Pは、ホール素子300を上記四等分した部材である。また、直線M1および直線M2の交点が、磁性体部材201Pの頂部201Mとなる。また、直線N1および直線N2の交点が、ホール素子部材300Pの頂部300Mとなる。
【0098】
また、
図26の四等分されていない第1磁性体201およびホール素子について、L1=10μmであり、L2=5μmであり、L3=85μmであり、第2面201Bおよび第1主面300Aの面積は、190×190μm
2であり、第1面201Aの面積は、50×50μm
2である。
【0099】
図27は、実験例1、実験例5、および実験例6の部材の斜視図である。実験例1、実験例5、および実験例6の部材は、磁性体部材201Pと、ホール素子部材300Pとを有する。
図28は、実験例2の部材の斜視図である。実験例2の部材は、第1磁性部251が上記四等分された磁性体部材251Pと、ホール素子部材300Pとを有する。
図29は、実験例3の部材の斜視図である。
図29においては、ホール素子部材300Pを有しており、磁性体部材を有していない。
図30は、実験例4の部材の斜視図である。実験例4の部材は、第2磁性部252が上記四等分された磁性体部材252Pと、ホール素子部材300Pとを有する。
【0100】
図27(実験例1、実験例5、および実験例6)は、本実施の形態のホールセンサに対応する部材であり、
図28~
図30(実験例2~4)は、比較例のホールセンサに対応する部材である。
【0101】
図31は、実験例1~実験例6のシミュレーション結果などをまとめた表である。実験例1~4、6の頂部300Mの初期磁束密度は、100mTである。初期磁束密度は、磁性体部材を装着するまでの頂部300Mの初期密度である。実験例5の頂部300Mの初期磁束密度は、25mTである。
【0102】
図27でも説明したように、実験例1、実験例5、および実験例6の磁性体の種別は、第1磁性体201である。
図28でも説明したように、実験例2の磁性体の種別は、第1磁性部251である。
図29でも説明したように、実験例3においては磁性体は設けられていない。
図30でも説明したように、実験例4の磁性体の種別は、第2磁性部252である。実験例1、実験例2、実験例4、および実験例5の磁性体の比透磁率は、70000である。実験例6の磁性体の比透磁率は、359000である。
【0103】
以上のような、シミュレーション条件において、実験例1の頂部300Mの磁束密度は、641mTとなった。実験例2の頂部300Mの磁束密度は、314mTとなった。実験例3の頂部300Mの磁束密度は、131mTとなった。実験例4の頂部300Mの磁束密度は、200mTとなった。実験例5の頂部300Mの磁束密度は、160mTとなった。実験例6の頂部300Mの磁束密度は、642mTとなった。頂部300Mの磁束密度は、磁束密度B1と同一とみなすことができる。
【0104】
図32~
図37は、それぞれ、実験例1~6のホール素子部材300Pの頂部300Mおよび他の部分の磁束密度を示す図である。
図32~
図37においては、左側に示すように、磁束密度の強度はハッチングの種別およびハッチングを構成する斜線の密度で表現されている。
【0105】
図32は、実験例1の磁束密度を示す図である。
図33は、実験例2の磁束密度を示す図である。
図34は、実験例3の磁束密度を示す図である。
図35は、実験例4の磁束密度を示す図である。
図36は、実験例5の磁束密度を示す図である。
図37は、実験例6の磁束密度を示す図である。
【0106】
図38は、実験例1~実験例6の頂部300Mの磁束密度(磁束密度B1)を示す図である。
図38の縦軸は、実験例3(磁性体を有していない実験例)の頂部300Mの磁束密度を「1」と規格化した場合の数値(以下、「規格化数値」と称される。)である。
【0107】
図38に示すように、実験例3の規格化数値は、1である。実験例4の規格化数値は、約1.5である。実験例2の規格化数値は、約2.4である。実験例1、5、6の規格化数値は、約5である。
【0108】
図38に示すように、本実施形態のホールセンサである実験例1、5、6は、実験例1のホールセンサの約5倍の集磁効果を有する。また、本実施形態のホールセンサである実験例1、5、6は、実験例4のホールセンサの約3.2倍の集磁効果を有する。また、本実施形態のホールセンサである実験例1、5、6は、実験例2のホールセンサの約2倍の集磁効果を有する。以上により、本実施の形態のホールセンサは、磁界の検出感度が向上されていることが証明された。
【0109】
<付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
【0110】
(第1項) 本開示のホールセンサは、第1主面を有するホール素子と、前記第1主面側に配置された第1磁性体と、を備え、前記第1磁性体は、前記第1主面と対向する第1面を有し、前記ホール素子の反対側から平面視したときの前記第1磁性体の投影面の面積は、前記第1面の面積よりも大きい。
【0111】
このような構成によれば、投影面の面積と第1面の面積とが同一であるホールセンサと比較して、ホール素子と対向する第1面の磁束密度を高めることができる。したがって、ホール素子で生じるホール電圧を高めることができることから、磁界の検出感度を向上させることができる。
【0112】
(第2項) 第1項に記載のホールセンサにおいて、前記投影面は、前記第1面と対向する平面である。
【0113】
このような構成によれば、ホールセンサの製造を簡素化できる。
【0114】
(第3項) 第1項に記載のホールセンサにおいて、前記第1磁性体の前記第1面に垂直な断面は、T字形状である。
【0115】
このような構成によれば、ホールセンサの製造を簡素化できる。
【0116】
(第4項) 第1項~第3項のいずれか1項に記載のホールセンサにおいて、前記投影面の面積は、前記第1主面の面積以下である。
【0117】
このような構成によれば、ホールセンサのサイズを抑制できる。
【0118】
(第5項) 第4項に記載のホールセンサにおいて、前記投影面の面積と、前記第1主面の面積とは同一である。
【0119】
このような構成によれば、ホールセンサのサイズを抑制できつつ、第1面の磁束密度を高めることができる。
【0120】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に記載のホールセンサにおいて、前記ホール素子は、前記第1主面と対向する第2主面を有し、前記ホールセンサは、前記第2主面側に配置された第2磁性体をさらに備える。
【0121】
このような構成によれば、磁束のループを形成できることから、第1面の磁束密度を高めることができる。よって、磁界の検出感度をさらに向上させることができる。
【0122】
(第7項) 第6項に記載のホールセンサにおいて、前記ホールセンサは、前記ホール素子が配置されるフレームを有し、前記第2磁性体は、前記ホール素子と、前記フレームとの間に配置されている。
【0123】
このような構成によれば、磁束のループを形成できることから、第1面の磁束密度を高めることができる。よって、磁界の検出感度をさらに向上させることができる。
【0124】
(第8項) 第7項に記載のホールセンサにおいて、前記ホールセンサは、前記フレームに前記第2磁性体とは反対側に配置された第3磁性体をさらに備える。
【0125】
このような構成によれば、第2磁性体をメッキで形成して、該第2磁性体の厚みが薄い場合であっても、第3磁性体を備えていることから、磁束のループを形成できる。よって、第1面の磁束密度を高めることができる。
【0126】
(第9項) 第6項に記載のホールセンサにおいて、前記ホールセンサは、前記ホール素子が配置されるフレームを有し、前記フレームは、前記ホール素子と、前記第2磁性体との間に配置されている。
【0127】
このような構成によれば、磁束のループを形成できることから、第1面の磁束密度を高めることができる。よって、磁界の検出感度をさらに向上させることができる。
【0128】
(第10項) 第6項に記載のホールセンサにおいて、前記ホールセンサは、前記ホール素子が配置されるフレームを有し、前記フレームは、前記第2磁性体である。
【0129】
このような構成によれば、フレームと第2磁性体とが別個であるホールセンサと比較して、部品点数を抑制できる。
【0130】
(第11項) 第1項~第10項のいずれか1項に記載のホールセンサにおいて、前記投影面の面積を前記第1面の面積で除算した値は、1.1以上16以下である。
【0131】
このような構成によれば、ホール素子と対向する第1面の磁束密度を効果的に高めることができる。
【0132】
(第12項) 本開示のホールセンサの製造方法は、主面を有するホール素子を準備することと、主面に形成された凸部と凹部を覆うように、磁性体を形成することとを備え、前記磁性体は、前記主面と対向する磁性体面を有し、前記ホール素子の反対側から平面視したときの前記磁性体の投影面の面積は、前記磁性体面の面積よりも大きい。
【0133】
このような構成によれば、投影面の面積と第1面の面積とが同一であるホールセンサと比較して、ホール素子と対向する第1面の磁束密度を高めることができるホールセンサを製造できる。したがって、ホール素子で生じるホール電圧を高めることができることから、磁界の検出感度を向上させるホールセンサを製造できる。
【0134】
(第13項) 本開示のホールセンサの製造方法は、主面を有するホール素子を準備することと、磁性体面を有する磁性体を形成することと、前記主面と前記磁性体面とが対向するように、前記ホール素子と、前記磁性体とを接着剤により接着することとを備え、前記ホール素子の反対側から平面視したときの前記磁性体の投影面の面積は、前記磁性体面の面積よりも大きい。
【0135】
このような構成によれば、投影面の面積と第1面の面積とが同一であるホールセンサと比較して、ホール素子と対向する第1面の磁束密度を高めることができるホールセンサを製造できる。したがって、ホール素子で生じるホール電圧を高めることができることから、磁界の検出感度を向上させるホールセンサを製造できる。
【0136】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
100,100A,100B,100C,100D ホールセンサ、201 第1磁性体、201A 第1面、201B 第2面、201C,201D 溝部、201M,300M 頂部、201X 投影面、202 第2磁性体、203 第3磁性体、251 第1磁性部、252 第2磁性部、300 ホール素子、300A 第1主面、300B 第2主面、305 層間膜、305A 凸部、305B 凹部、311 第1基板、312 第2基板、313 フレーム、321 層間膜、351 第1電極、352 第2電極、500 検出回路、501 レジスト、511 接着剤、602 電流源、604 検出部、606 制御部、1000 磁気センサ。