(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080413
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】太陽電池パネル、太陽電池モジュール、及び太陽電池パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20230602BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 262
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193740
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】森川 尚展
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151BA11
5F151CB25
5F151DA03
5F151EA19
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA14
5F151FA15
5F151FA16
5F151FA21
5F251AA02
5F251BA11
5F251CB25
5F251DA03
5F251EA19
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA14
5F251FA15
5F251FA16
5F251FA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、太陽電池の集電極と配線部材との間で十分な接着強度を確保できる太陽電池パネル、太陽電池ストリングの取出電極と取出側配線部材との間で十分な接着強度を確保できる太陽電池モジュール、及び配線部材の溶け込み深さを制御しやすい太陽電池パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】第1集電極を有する第1太陽電池と、第2集電極を有する第2太陽電池と、第1集電極と第2集電極を接続する配線部材を有し、第1集電極と配線部材との接続部位には、配線部材の表面から第1集電極に向かって深さをもつ穴部があり、穴部の底部には、隆起部があり、穴部の開口形状と隆起部の外郭形状は、穴部の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっており、穴部の開口形状は、穴部の深さ方向から視たときに、最小包含円が隆起部と重なる構成とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電極を有する第1太陽電池と、第2集電極を有する第2太陽電池と、前記第1集電極と前記第2集電極を接続する配線部材を有し、
前記第1集電極と前記配線部材との接続部位には、前記配線部材の表面から前記第1集電極に向かって深さをもつ穴部があり、
前記穴部の底部には、隆起部があり、
前記穴部の開口形状と前記隆起部の外郭形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっており、
前記穴部の開口形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、最小包含円が前記隆起部と重なる、太陽電池パネル。
【請求項2】
前記第1集電極と前記配線部材は、それぞれ同一の金属又は合金を主成分とする、請求項1に記載の太陽電池パネル。
【請求項3】
前記第1集電極と前記配線部材は、それぞれ銅又は銅合金を主成分とする、請求項2に記載の太陽電池パネル。
【請求項4】
前記隆起部と前記配線部材は、一部が融着して連続している、請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項5】
前記第1集電極は、前記穴部の深さ方向から視たときに、前記穴部の底部と重なる位置に凹部を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項6】
前記配線部材は、板状又はフィルム状であって、所定の方向に延びており、
前記穴部を複数有し、
前記穴部は、前記配線部材の延び方向に間隔を空けて配されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項7】
前記配線部材の前記第1集電極に対する剥離強度は、1.5N以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の太陽電池パネル。
【請求項8】
取出電極と接続された太陽電池ストリングと、外部ケーブルが接続された端子台を有する端子ボックスと、前記太陽電池ストリングに接続された前記取出電極と前記端子ボックスの前記端子台を接続する取出側配線部材を有し、
前記取出電極と前記取出側配線部材との接続部位には、前記取出側配線部材の表面から前記取出電極に向かって深さをもつ穴部があり、
前記穴部の底部には、隆起部があり、
前記穴部の開口形状と前記隆起部の外郭形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっており、
前記穴部の開口形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、最小包含円が前記隆起部と重なる、太陽電池モジュール。
【請求項9】
第1集電極を有する第1太陽電池と、第2集電極を有する第2太陽電池と、前記第1集電極と前記第2集電極を接続する配線部材を有する太陽電池パネルの製造方法であって、
前記第1集電極上に前記配線部材を載置する載置工程と、
前記第1太陽電池を基準として、前記配線部材側から前記第1集電極に向かってレーザー光を照射する照射工程を含み、
前記レーザー光は、固相状態の前記配線部材の吸収率が10%以上80%以下である、太陽電池パネルの製造方法。
【請求項10】
前記レーザー光は、液相状態の前記配線部材の吸収率が前記固相状態の前記配線部材の吸収率の1倍以上5倍以下である、請求項9に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項11】
前記レーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーである、請求項9又は10に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【請求項12】
前記レーザー光は、出力が250W以上400W以下であって、かつ、パルス幅が1ms以上25ms以下のパルスレーザー光である、請求項9~11のいずれか1項に記載の太陽電池パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル、太陽電池モジュール、及び太陽電池パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的な太陽電池の集電極の形成には銀材料が用いられているが、銀は原材料が高価であるため、代替材料として銅材料を用いた集電極が検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、集電極が銅材料を使用することで、従来配線に使用していた集電極-配線材料間の半田接合を用いることが困難となる問題が生じていた。すなわち、銀を集電極として用いた太陽電池では、配線接続を半田付けにより行っているが、半田付けの接着強度は、半田と金属の相性に依存し、銅材料同士を接着する場合には接着強度が小さくなり、剥がれやすい。そのため、仮に銅材料同士を接着できたとしても長期信頼性を損なうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、太陽電池の集電極と配線部材との間で十分な接着強度を確保できる太陽電池パネル、太陽電池ストリングの取出電極と取出側配線部材との間で十分な接着強度を確保できる太陽電池モジュール、及び配線部材の溶け込み深さを制御しやすい太陽電池パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために本発明者は、金属同士の接合方法として溶接を検討した。その結果、溶接の中でも、基板温度が高熱となり太陽電池へのダメージを与えるアーク溶接や抵抗溶接ではなく、溶け込み深さの制御が可能なレーザー溶接に注目した。
銅材料は、一般的な溶接に用いられるファイバーレーザーやCO2レーザーの波長領域(赤外光)での吸収率が5%以下と低く、かつ、融解して液相になると吸収率が著しく上昇する。そのため、銅材料を用いた場合、溶け込み深さを制御することが難しく、レーザー溶接が困難である。
そこで、レーザー光について鋭意検討した結果、特定条件のレーザー光を照射することで溶け込み深さを制御しながら溶接することができることを発見した。
また、当該特定条件のレーザー光で溶接した溶接個所は、異なる条件のレーザーによる溶接個所に比べて特徴的な形状をしており、その接着強度も高いことを発見した。
さらに、自動機で溶接個所の検査をする場合、通常のレーザーによる溶接個所は1mm以下と小さく、形状が平坦であったり不規則な形状であったりすると、一様な照明条件では誤検知や未検出が生じる可能性がある。一方、当該特定条件のレーザー光で溶接した溶接個所は、一様な照明条件でも溶接個所と非溶接個所との間で明確な境界が形成されており、自動機によって溶接個所を特定しやすく、検査しやすくなっていた。
【0007】
上記発見を元に導き出された本発明の一つの様相は、第1集電極を有する第1太陽電池と、第2集電極を有する第2太陽電池と、前記第1集電極と前記第2集電極を接続する配線部材を有し、前記第1集電極と前記配線部材との接続部位には、前記配線部材の表面から前記第1集電極に向かって深さをもつ穴部があり、前記穴部の底部には、隆起部があり、前記穴部の開口形状と前記隆起部の外郭形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっており、前記穴部の開口形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、最小包含円が前記隆起部と重なる、太陽電池パネルである。
【0008】
ここでいう「略円形状」とは、真円形状だけではなく、長円形状や楕円形状なども含む。以下、同様とする。
ここでいう「最小包含円」とは、全ての部分を含む最小の円をいう。
【0009】
本様相によれば、同種の金属材料又は合金材料を接着する場合に、従来のはんだ接合を行う場合に比べて太陽電池の集電極と配線部材の間の接着強度が高い。
本様相によれば、隆起部の外郭形状が略円形状であるため、一様な照明条件でも安定して溶接個所を検出でき、溶接痕の特定が容易である。
【0010】
好ましい様相は、前記第1集電極と前記配線部材は、それぞれ同一の金属又は合金を主成分とする。
【0011】
ここでいう「主成分」とは、全体の50%以上を占める成分をいう。以下、同様とする。
【0012】
本様相によれば、第1集電極と配線部材の主成分として同種金属又は同種合金を含んでいるが、十分な接着強度を確保できる。
【0013】
より好ましい様相は、前記第1集電極と前記配線部材は、それぞれ銅又は銅合金を主成分とすることである。
【0014】
本様相によれば、従来のように第1集電極と配線部材に銀を使用する場合に比べて、コストを低減できる。
【0015】
好ましい様相は、前記隆起部と前記配線部材は、一部が融着して連続している。
【0016】
本様相によれば、より接着強度が高い。
【0017】
好ましい様相は、前記第1集電極は、前記穴部の深さ方向から視たときに、前記穴部の底部と重なる位置に凹部を有する。
【0018】
本様相によれば、穴部の底部を構成する配線部材の一部が第1集電極の凹部内に進入するので、より接着強度が高い。
【0019】
好ましい様相は、前記配線部材は、板状又はフィルム状であって、所定の方向に延びており、前記穴部を複数有し、前記穴部は、前記配線部材の延び方向に間隔を空けて配されている。
【0020】
本様相によれば、穴部が一つだけ設けられている場合に比べて接着強度が向上する。
【0021】
好ましい様相は、前記配線部材の前記第1集電極に対する剥離強度は、1.5N以上である。
【0022】
ここでいう「剥離強度」は、JIS K 6854-2に記される装置、及び手順に準じた剥離強度をいう。以下、同様とする。
【0023】
本様相によれば、十分な接着強度を有しているため、断線等が生じにくい。
【0024】
また、本発明者は、上記した発見を太陽電池ストリングの取出電極と端子ボックスの端子台に接続する取出側配線部材との接合にも応用できると考えた。
【0025】
上記した発見を元に導き出された本発明の一つの様相は、取出電極と接続された太陽電池ストリングと、外部ケーブルが接続された端子台を有する端子ボックスと、前記太陽電池ストリングに接続された前記取出電極と前記端子ボックスの前記端子台を接続する取出側配線部材を有し、前記取出電極と前記取出側配線部材との接続部位には、前記取出側配線部材の表面から前記取出電極に向かって深さをもつ穴部があり、前記穴部の底部には、隆起部があり、前記穴部の開口形状と前記隆起部の外郭形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっており、前記穴部の開口形状は、前記穴部の深さ方向から視たときに、最小包含円が前記隆起部と重なる、太陽電池モジュールである。
【0026】
本様相によれば、同種の金属材料又は合金材料を接着する場合に、従来のはんだ接合に比べて太陽電池ストリングから電力を取り出す取出電極と端子ボックスの端子台を接続する取出側配線部材の間の接着強度が高い。
本様相によれば、隆起部の外郭形状が略円形状であるため、一様な照明条件でも安定して溶接個所を検出でき、溶接痕の特定が容易である。
【0027】
本発明の一つの様相は、第1集電極を有する第1太陽電池と、第2集電極を有する第2太陽電池と、前記第1集電極と前記第2集電極を接続する配線部材を有する太陽電池パネルの製造方法であって、前記第1集電極上に前記配線部材を載置する載置工程と、前記第1太陽電池を基準として、前記配線部材側から前記第1集電極に向かってレーザー光を照射する照射工程を含み、前記レーザー光は、固相状態の前記配線部材の吸収率が10%以上80%以下である、太陽電池パネルの製造方法である。
【0028】
ここでいう「吸収率」とは、JIS K 7375に記される装置、及び手順から求められる全光線反射率から算出される吸収率をいう。以下、同様とする。
【0029】
本様相によれば、固相状態での配線部材の吸収率が一定以上であるので、溶け込み深さを制御しやすい。
【0030】
好ましい様相は、前記レーザー光は、液相状態の前記配線部材の吸収率が前記固相状態の前記配線部材の吸収率の1倍以上5倍以下である。
【0031】
本様相によれば、例えば、銅材料に従来のレーザー光を照射する場合に比べて、銅材料の吸収率が固相状態と液相状態で大きく変化しないレーザー光を用いるので、溶け込み深さを制御しやすい。
【0032】
好ましい様相は、前記レーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーである。
【0033】
本様相によれば、第1集電極と配線部材が銅材料を主成分としていても、固相状態で十分な吸収率を確保できる。
【0034】
一般的な集電極の厚みは、30μm程度で薄いため、レーザーの出力が高すぎると、下地の太陽電池を構成する素子にダメージを与えるおそれがある。また、パルス幅が長すぎると、常時レーザーによって集電極が加熱されることとなり、銅材料が太陽電池を構成する素子側に熱伝播してしまい、太陽電池を構成する素子が汚染されてしまうおそれがある。
【0035】
好ましい様相は、前記レーザー光は、出力が250W以上400W以下であって、かつ、パルス幅が1ms以上25ms以下のパルスレーザー光である。
【0036】
本様相によれば、集電極として銅材料を用いた場合でも、レーザー光による第1太陽電池へのダメージを抑制できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の太陽電池パネルによれば、太陽電池の集電極と配線部材との間で十分な接着強度を確保できる。
本発明の太陽電池モジュールによれば、太陽電池ストリングの取出電極と取出側配線部材との間で十分な接着強度を確保できる。
本発明の太陽電池パネルの製造方法によれば、配線部材の溶け込み深さを制御しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施形態の太陽電池モジュールを模式的に示した斜視図であり、(a)は第1主面側からみた斜視図であり、(b)は第2主面側からみた斜視図である。
【
図2】
図1(a)の太陽電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図1(a)の太陽電池モジュールの断面図であり、(a)はA-A断面図の中央部を表す図であり、(b)はA-A断面図の両端部を表す図であり、(c)はB-B断面図の両端部を表す図である。
【
図4】
図2の第1インターコネクタの周囲の説明図であり、(a)は第2インターコネクタ間を接続する第1インターコネクタの周囲の斜視図であり、(b)は第2インターコネクタを取出側配線部材に接続する第1インターコネクタの周囲の斜視図である。
【
図5】
図4の第2インターコネクタの周囲の分解斜視図である。
【
図6】
図1の端子ボックスの周囲の透過斜視図である。
【
図7】
図1(a)の太陽電池モジュールのレーザー照射工程の説明図である。
【
図8】本発明の実施例1と比較例1のレーザー溶接による評価結果の説明図であり、(a)は実施例1を表し、(b)は比較例1を表す。(a),(b)は、左図がマイクロスコープによる銅板側の撮影画像であり、中央図が左図をトレースした図であり、右図がマイクロスコープによるシリコンウェハ側の撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0040】
本発明の第1実施形態の太陽電池モジュール1は、
図1のように、太陽電池パネル2と、端子ボックス3を備えており、太陽電池パネル2の第1主面5が受光面をなし、太陽電池パネル2の第2主面6に端子ボックス3が設けられている。
【0041】
(太陽電池パネル2)
太陽電池パネル2は、
図2のように、複数の太陽電池ストリング10と、保護部材11,12と、封止シート13,14と、第1インターコネクタ15(取出電極)と、取出側配線部材16,17を有している。
【0042】
(太陽電池ストリング10)
太陽電池ストリング10は、
図2,
図3のように、複数の太陽電池セル20と、第2インターコネクタ21を備え、各太陽電池セル20が第2インターコネクタ21で接続されている。
太陽電池セル20は、
図3のように、光電変換基板30の第1主面35上に第1電極層31と、第1集電極33が積層され、第2主面36上に第2電極層32と、第2集電極34が積層されたものである。すなわち、太陽電池セル20は、光電変換基板30が電極層31,32に挟まれている。
【0043】
光電変換基板30は、PN接合を有し、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部である。
光電変換基板30は、シリコン基板(半導体基板)の第1電極層31側に、第1真性シリコン層、第1導電型シリコン層が積層され、シリコン基板の第2電極層32側に第2真性シリコン層、第2導電型シリコン層が積層されたものである。
【0044】
第1電極層31は、第2電極層32と対をなし、第2電極層32とともに光電変換基板30で光電変換された電気エネルギーを取り出す電極である。
第1電極層31は、透明性と導電性を有する透明導電層であり、具体的には、酸化インジウム錫(ITO)やタングステンドープ酸化インジウム(IWO)などの透明導電性酸化物で構成された透明導電性酸化物層である。
第2電極層32は、透明性と導電性を有する透明導電層であり、具体的には、酸化インジウム錫(ITO)やタングステンドープ酸化インジウム(IWO)などの透明導電性酸化物で構成された透明導電性酸化物層である。
【0045】
太陽電池セル20は、
図3のように、第1電極層31上に第1集電極33が設けられており、第2電極層32上に第2集電極34が設けられている。
第1集電極33は、
図5のように、第1バスバー電極部60と第1フィンガー電極部61で構成されている。
第1集電極33は、導電性を有した導電配線であり、第1電極層31の導電率よりも高い導電率を有する導電体である。
第1集電極33は、導電率を有するものであれば、特に限定されるものではない。第1集電極33は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの金属やその合金で構成でき、コストを抑制する観点から銅又は銅合金で構成していることが好ましい。
本実施形態の第1集電極33は、銅を主成分とするものであり、銅成分が全成分の80%以上占めることが好ましい。
【0046】
第1バスバー電極部60は、
図5のように、所定の方向(横方向X)に延びた電極部であり、本実施形態では太陽電池セル20の並設方向に延びている。
第1フィンガー電極部61は、第1バスバー電極部60の側面から第1バスバー電極部60の延び方向に対する交差方向(本実施形態では直交方向、縦方向Y)に延びた電極部である。
第1フィンガー電極部61の幅は、第1バスバー電極部60の幅に比べて狭い。
【0047】
第2集電極34は、第2バスバー電極部62と第2フィンガー電極部63で構成されている。
第2集電極34は、導電性を有した導電配線であり、第2電極層32の導電率よりも高い導電率を有する導電体である。
第2集電極34は、導電率を有するものであれば、特に限定されるものではない。第2集電極34は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの金属やその合金で構成でき、コストを抑制する観点から銅又は銅合金で構成していることが好ましい。
本実施形態の第2集電極34は、銅を主成分とするものであり、銅成分が全成分の80%以上占めることが好ましい。
【0048】
第2バスバー電極部62は、所定の方向に延びた電極部であり、本実施形態では太陽電池セル20の並設方向に延びている。すなわち、第2バスバー電極部62は、第1バスバー電極部60と同一方向に延びている。
第2フィンガー電極部63は、第2バスバー電極部62の側面から第2バスバー電極部62の延び方向に対する交差方向(本実施形態では直交方向)に延びた電極部である。すなわち、第2フィンガー電極部63は、第1フィンガー電極部61と同一方向に延びている。
第2フィンガー電極部63の幅は、第2バスバー電極部62の幅に比べて狭い。
【0049】
第2インターコネクタ21は、
図3のように、隣接する太陽電池セル20,20間の接続する配線部材である。
第2インターコネクタ21は、板状又はフィルム状であって、所定の方向に延びている。
第2インターコネクタ21は、導電率を有するものであれば、特に限定されるものではない。第2インターコネクタ21は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの金属やその合金で構成される金属配線が使用でき、コストを抑制する観点から銅又は銅合金で構成していることが好ましい。
本実施形態の第2インターコネクタ21は、バスバー電極部60,62と同種の金属を主成分とするものであり、具体的には、銅を主成分とするものである。
第2インターコネクタ21は、銅成分が80%以上占めることが好ましい。
第2インターコネクタ21は、金属配線の表面にはんだ層が形成されたものであってもよい。
第2インターコネクタ21は、後述する第1レーザー照射工程で照射されるレーザー光の固相状態における吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
また、第2インターコネクタ21は、第1レーザー照射工程で照射されるレーザー光の液相状態の吸収率が、固相状態の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0050】
(保護部材11,12)
第1保護部材11は、
図2のように、太陽電池パネル2の第1主面5を構成し、太陽電池ストリング10の第1主面5側を保護する部材である。
第1保護部材11は、透明性を有する透明保護材であり、例えば、ガラス基板や透明樹脂フィルムなどを使用できる。
第2保護部材12は、太陽電池パネル2の第2主面6を構成し、太陽電池ストリング10の第2主面6側を保護する部材である。
第2保護部材12は、ガラス基板や透明樹脂フィルムなどの透明保護材や、金属フィルムなどの光反射保護材、黒色樹脂フィルムなどの光吸収保護材などが使用できる。
【0051】
(封止シート13,14)
封止シート13,14は、透明性と封止性を有した透明封止シートであり、熱可塑性樹脂で構成されている。
封止シート13,14は、透明性と封止性を有していれば、特に限定されるものではない。封止シート13,14としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)シートやオレフィンシート、EVA(エチレンビニルアセテート)シートなどの透明樹脂シートが使用できる。
【0052】
(第1インターコネクタ15)
第1インターコネクタ15は、
図4(a)のように、隣接する太陽電池ストリング10,10間又は太陽電池ストリング10と取出側配線部材16(取出側配線部材17)の間を接続する板状又はフィルム状の配線部材である。すなわち、第1インターコネクタ15は、太陽電池ストリング10から電力を取り出す取出配線である。
第1インターコネクタ15は、導電率を有するものであれば、特に限定されるものではない。第1インターコネクタ15は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの金属やその合金で構成される金属配線が使用でき、コストを抑制する観点から銅又は銅合金で構成していることが好ましい。
本実施形態の第1インターコネクタ15は、第2インターコネクタ21と同種の金属を主成分とするものであり、具体的には、銅を主成分とするものである。
第1インターコネクタ15は、銅成分が80%以上占めることが好ましい。
第1インターコネクタ15は、金属配線の表面にはんだ層が形成されたものであってもよい。
第1インターコネクタ15は、後述する第2レーザー照射工程で照射されるレーザー光の固相状態における吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
また、第1インターコネクタ15は、第2レーザー照射工程で照射されるレーザー光の液相状態の吸収率が、固相状態の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0053】
(取出側配線部材16,17)
取出側配線部材16,17は、
図2,
図4のように、末端の太陽電池ストリング10に接続される第1インターコネクタ15、又は隣接する太陽電池ストリング10,10間を繋ぐ第1インターコネクタ15から端子ボックス3に電気を取り出す取出配線である。
取出側配線部材16,17は、導電率を有するものであれば、特に限定されるものではない。取出側配線部材16,17は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの金属やその合金で構成される金属配線が使用でき、コストを抑制する観点から銅又は銅合金で構成していることが好ましい。
本実施形態の取出側配線部材16,17は、第1インターコネクタ15と同種の金属を主成分とするものであり、具体的には、銅を主成分とするものである。
取出側配線部材16,17は、銅成分が80%以上占めることが好ましい。
【0054】
取出側配線部材16,17は、
図2のように、板状又はフィルム状であって、厚み方向に屈曲した配線部材である。
取出側配線部材16,17は、後述する第3レーザー照射工程及び第4レーザー照射工程で照射されるレーザー光の固相状態における吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
また、取出側配線部材16,17は、第3レーザー照射工程及び第4レーザー照射工程で照射されるレーザー光の液相状態の吸収率が、固相状態の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0055】
(端子ボックス3)
端子ボックス3は、
図6のように、筐体部70と、端子台71と、外部ケーブル72,73を備えている。
筐体部70は、直方体状の箱体であり、端子台71と取出側配線部材16,17との接続部分を外部から保護する部材である。
端子台71は、筐体部70内に設けられ、取出側配線部材16,17と外部ケーブル72,73を電気的に接続する部材である。すなわち、端子台71は、取出側配線部材16,17の接続台座となる板状の導電部材である。
端子台71は、導電率を有するものであれば、特に限定されるものではない。端子台71は、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの金属やその合金で構成される金属板が使用でき、コストを抑制する観点から銅又は銅合金で構成していることが好ましい。
本実施形態の端子台71は、取出側配線部材16,17と同種の金属を主成分とするものであり、具体的には、銅を主成分とするものである。
端子台71は、銅成分が80%以上占めることが好ましい。
外部ケーブル72,73は、他の太陽電池モジュール1の外部ケーブル72,73又は外部装置と接続可能なケーブルである。
【0056】
続いて、本実施形態の太陽電池モジュール1の各部位の位置関係について説明する。
【0057】
太陽電池モジュール1は、
図3のように、複数の太陽電池ストリング10が第1保護部材11と第2保護部材12によって挟まれている。
太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池ストリング10が縦方向Yに並設されており、横方向Xの端部に位置する第2インターコネクタ21,21同士が第1インターコネクタ15を介して電気的に並列接続されている。
第2インターコネクタ21は、
図3,
図5から読み取れるように、長手方向の一方の端部側が第1バスバー電極部60に沿って配されており、長手方向の他方の端部側が第2バスバー電極部62に沿って配されている。
【0058】
ここで、
図3(a)に示される一つの太陽電池ストリング10に属し、隣接する3つの太陽電池セル20a,20b,20c(以下、第1太陽電池セル20a、第2太陽電池セル20b、第3太陽電池セル20cとして区別し、第1太陽電池セル20aの構成に「a」を付し、第2太陽電池セル20bの構成に「b」を付し、第3太陽電池セル20cの構成に「c」を付する)の関係について注目する。
【0059】
第1太陽電池セル20aの第1バスバー電極部60aは、
図3(a)のように、第2インターコネクタ21を介して、第2太陽電池セル20bの第2バスバー電極部62bと接続されており、第2太陽電池セル20bの第1バスバー電極部60bは、第2インターコネクタ21を介して、第3太陽電池セル20cの第2バスバー電極部62cと接続されている。
このように、太陽電池セル20a~20cは、第2インターコネクタ21を介して電気的に直列接続されている。
【0060】
集電極33(集電極34)のバスバー電極部60,62と第2インターコネクタ21との接続部位には、
図5,
図7のように、第2インターコネクタ21の表面から集電極33(集電極34)に向かって深さをもつ穴部80が形成されている。
穴部80の底部81には、隆起部82が形成されており、上げ底となっている。
穴部80の開口形状と隆起部82の外郭形状は、穴部80の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっている。
穴部80の開口形状は、穴部80の深さ方向から視たときに、最小包含円が隆起部82と重なっている。
穴部80の開口形状は、真円度が200μm以下であることが好ましく、隆起部82の外郭形状は、真円度が100μm以下であることが好ましい。
隆起部82と第2インターコネクタ21は、一部が融着して連続している。
下地となる集電極33(集電極34)は、穴部80の深さ方向から視たときに、穴部80の底部81と重なる位置に凹部85が形成されている。
本実施形態では、隆起部82と凹部85は、平面視したときに、径が異なる同心円状の凹凸を構成している。
穴部80は、第2インターコネクタ21の延び方向に間隔を空けて配されている。
穴部80の長径に対する短径の比率は、0.95以上1以下であることが好ましい。
【0061】
第1インターコネクタ15と第2インターコネクタ21の接続部位には、
図4(a)のように、第2インターコネクタ21の表面から第1インターコネクタ15に向かって深さをもつ一又は複数の穴部90が形成されている。
穴部90の底部91には、隆起部92が形成されている。
穴部90の開口形状と隆起部92の外郭形状は、穴部90の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっている。
穴部90の開口形状は、穴部90の深さ方向から視たときに、最小包含円が隆起部92と重なっている。
穴部90の開口形状は、真円度が200μm以下であることが好ましく、隆起部92の外郭形状は、真円度が100μm以下であることが好ましい。
隆起部92と第2インターコネクタ21は、一部が融着して連続している。
下地となる第1インターコネクタ15は、穴部90の深さ方向から視たときに、穴部90の底部91と重なる位置に凹部95が形成されている。
穴部90は、第2インターコネクタ21の延び方向に間隔を空けて配されている。
穴部90の長径に対する短径の比率は、0.95以上1以下であることが好ましい。
【0062】
取出側配線部材16(取出側配線部材17)と第1インターコネクタ15の接続部位には、
図4(b)のように、取出側配線部材16(取出側配線部材17)の表面から第1インターコネクタ15に向かって深さをもつ穴部100が形成されている。
穴部100の底部101には、隆起部102が形成されている。
穴部100の開口形状と隆起部102の外郭形状は、穴部100の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっている。
穴部100の開口形状は、穴部100の深さ方向から視たときに、最小包含円が隆起部102と重なっている。
穴部100の開口形状は、真円度が200μm以下であることが好ましく、隆起部102の外郭形状は、真円度が100μm以下であることが好ましい。
隆起部102と取出側配線部材16(取出側配線部材17)は、一部が融着して連続している。
下地となる第1インターコネクタ15は、穴部100の深さ方向から視たときに、穴部100の底部101と重なる位置に凹部105が形成されている。
穴部100の長径に対する短径の比率は、0.95以上1以下であることが好ましい。
【0063】
取出側配線部材16,17は、端子ボックス3内の端子台71を介して外部ケーブル72,73に電気的に接続されている。
端子台71と取出側配線部材16,17の接続部位は、
図6のように、取出側配線部材16,17の表面から端子台71に向かって深さをもつ穴部120が形成されている。
穴部120の底部121には、隆起部122が形成されている。
穴部120の開口形状と隆起部122の外郭形状は、穴部120の深さ方向から視たときに、ともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっている。
穴部120の開口形状は、穴部120の深さ方向から視たときに、最小包含円が隆起部122と重なっている。
穴部120の開口形状は、真円度が200μm以下であることが好ましく、隆起部102の外郭形状は、真円度が100μm以下であることが好ましい。
隆起部122と取出側配線部材16(取出側配線部材17)は、一部が融着して連続している。
下地となる端子台71は、穴部120の深さ方向から視たときに、穴部120の底部121と重なる位置に凹部125が形成されている。
穴部100の長径に対する短径の比率は、0.95以上1以下であることが好ましい。
【0064】
続いて、本実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法について説明する。
【0065】
本実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法は、主要な工程として、太陽電池形成工程と、溶接工程、封止工程、ケーブル接続工程をこの順に実行するものである。
【0066】
太陽電池形成工程は、主に半導体層形成工程と、電極層形成工程によって構成されている。
太陽電池形成工程では、まず、プラズマCVD装置によって、シリコン基板の一方の主面上に第1真性シリコン層及び第1導電型シリコン層を形成し、シリコン基板の他方の主面上に第2真性シリコン層、第2導電型シリコン層を形成し、光電変換基板30を形成する(光電変換基板形成工程)。
続いて、スパッタ装置によって第1導電型シリコン層上に第1電極層31を形成し、第2導電型シリコン層上に第2電極層32を形成し、太陽電池セル20を形成する(電極層形成工程)。
【0067】
溶接工程では、主にセル配置工程と、第1載置工程と、第1レーザー照射工程と、ストリング配置工程と、第2載置工程と、第2レーザー照射工程と、第3載置工程と、第3レーザー照射工程を実施する。
具体的には、太陽電池セル20を所定の方向に並設して直線上に配置する(セル配置工程)。
続いて、第2インターコネクタ21の一方の端部側を太陽電池セル20の第1集電極33の第1バスバー電極部60上に載置し、第2インターコネクタ21の他方の端部側を太陽電池セル20の第2集電極34の第2バスバー電極部62上に載置する(第1載置工程)。
図7のように、第2インターコネクタ21側から第2インターコネクタ21と第1集電極33のバスバー電極部60にレーザー光を照射する。同様に、第2インターコネクタ21側から第2インターコネクタ21と第2集電極34の第2バスバー電極部62にレーザー光を照射する(第1レーザー照射工程)。
【0068】
このとき、第2インターコネクタ21と第2集電極34のバスバー電極部62との溶接は、いわゆる、通常よりも高出力のパルスレーザー溶接である。
このとき、レーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーであることが好ましい。
レーザー光の出力は、200W以上であることが好ましく、250W以上であることがより好ましい。
レーザー光の出力は、400W以下であることが好ましく、350W以下であることがより好ましく、300W以下であることが特に好ましい。
レーザー光のパルス幅は、1ms以上であることが好ましく、10ms以上であることがより好ましい。
レーザー光のパルス幅は、100ms以下であることが好ましく、25ms以下であることがより好ましい。
レーザー光のピークパワーは、50W以上250W以下であることが好ましい。
レーザー光のビーム径は、300μm以上600μm以下であることが好ましい。
レーザー光の焦点からの距離は、照射対象位置を基準として0μm以上1200μm以下の範囲であることが好ましい。
レーザー光は、固相状態の第2インターコネクタ21の吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
レーザー光は、液相状態の第2インターコネクタ21の吸収率が固相状態の第2インターコネクタ21の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
本実施形態の第1レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーであり、熱伝播による光電変換基板30へのダメージを抑制する観点から出力が250W以上400W以下であって、かつ、パルス幅が1ms以上25ms以下のパルスレーザー光である。
【0069】
続いて、太陽電池ストリング10を横方向Xに並設して直線上に配置する(ストリング配置工程)。
太陽電池ストリング10の第2インターコネクタ21を第1インターコネクタ15に載置する(第2載置工程)。
第1インターコネクタ15側から第1インターコネクタ15と第2インターコネクタ21にレーザー光を照射する(第2レーザー照射工程)。
【0070】
この第2レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、第1レーザー照射工程で使用されるレーザー光と同様のものが使用できる。
本実施形態の第2レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーであり、出力が250W以上400W以下であって、かつ、パルス幅が1ms以上25ms以下のパルスレーザー光である。
レーザー光は、固相状態の第2インターコネクタ21の吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
レーザー光は、液相状態の第2インターコネクタ21の吸収率が固相状態の第2インターコネクタ21の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0071】
続いて、第1インターコネクタ15に取出側配線部材16,17を載置する(第3載置工程)。
取出側配線部材16,17側から取出側配線部材16,17と第1インターコネクタ15にレーザー光を照射する(第3レーザー照射工程)。
【0072】
第3レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、第1レーザー照射工程で使用されるレーザー光と同様のものが使用できる。
本実施形態の第3レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーであり、出力が250W以上400W以下であって、かつ、パルス幅が1ms以上25ms以下のパルスレーザー光である。
レーザー光は、固相状態の取出側配線部材16,17の吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
レーザー光は、液相状態の取出側配線部材16,17の吸収率が固相状態の取出側配線部材16,17の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0073】
続いて、封止工程では、従来と同様、各太陽電池ストリング10を封止シート13,14及び保護部材11,12で挟んで圧着し、各太陽電池ストリング10を封止する(封止工程)。
【0074】
続いて、ケーブル接続工程では、端子ボックス3の端子台71上に取出側配線部材16,17の端部を載置し(第4載置工程)、取出側配線部材16,17側から取出側配線部材16,17と端子台71にレーザー光を照射する(第4レーザー照射工程)。
【0075】
第4レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、第1レーザー照射工程で使用されるレーザー光と同様のものが使用できる。
本実施形態の第4レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、波長が430nm以上490nm以下の青色レーザーであり、出力が250W以上400W以下であって、かつ、パルス幅が1ms以上25ms以下のパルスレーザー光である。
レーザー光は、固相状態の取出側配線部材16,17の吸収率が10%以上80%以下であることが好ましい。
レーザー光は、液相状態の取出側配線部材16,17の吸収率が固相状態の取出側配線部材16,17の吸収率の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0076】
本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、集電極33,34と第2インターコネクタ21の主成分として同種金属又は同種合金を含んでいるが、穴部80の底部81に隆起部82があり、穴部80の開口形状と隆起部82の外郭形状がともに略円形状であって、かつ最小包含円半径が異なっており、穴部80の開口形状は、最小包含円が隆起部82と重なるという特徴的な形状をしているので、十分な接着強度を確保できる。
【0077】
本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、隆起部82の外郭形状が略円形状であるため、一様な照明条件でも安定して溶接個所を検出でき、溶接痕の特定が容易である。
【0078】
本実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法によれば、第1レーザー照射工程で使用されるレーザー光は、固相状態の第2インターコネクタ21の吸収率が10%以上80%以下であるので、出力等を調整することで溶け込み深さを制御しながら溶接することができる。
【0079】
上記した実施形態では、集電極33,34と第2インターコネクタ21の接続、第1インターコネクタ15と第2インターコネクタ21の接続、及び第1インターコネクタ15と取出側配線部材16,17の接続、取出側配線部材16,17と端子台71の接続のそれぞれにおいて、レーザー溶接によって接続したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、これらの接続の全てをレーザー溶接で行わなくてもよい。例えば、集電極33,34と第2インターコネクタ21の接続のみをレーザー溶接で行ってもよい。
【0080】
上記した実施形態では、太陽電池パネル2が両面に集電極を有する結晶シリコン太陽電池パネルの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の種類の太陽電池パネルにも適用できる。例えば、裏面側にのみ集電極が設けられたバックコンタクト型の太陽電池パネルやPERC型の太陽電池パネル、ペロブスカイト型の太陽電池パネルにも適用できる。
【0081】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0082】
以下、本発明の実施例を実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
ITOが表面に積層されたシリコンウェハを使用し、ITO上に厚み0.03mmの銅テープを貼り、銅テープ上に厚み100μmで幅15mmの銅板を載置した。そして、銅板側から波長445nm、出力300W、パルス幅10ms、パルスエネルギー3J、ピークパワー300W、ビーム径400μm、焦点からの距離0μmの条件の青色レーザー光を照射して銅テープに銅板をレーザー溶接し、サンプルを形成した。
なお、銅板に対して455nmの青色レーザーを照射して、青色レーザーに対する銅板の固相状態での吸収率を測定したところ、65%程度であった。
このようにして形成されたサンプルを実施例1とした。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、厚み1500μmの銅板を使用し、レーザー光の条件を銅板側から出力100W、パルス幅4ms、パルスエネルギー0.4J、ピークパワー100W、ビーム径500μm、焦点からの距離1000μmとしたこと以外は同様にしてこれを実施例2とした。
【0085】
(比較例1)
実施例1において、レーザー光の条件を銅板側から出力200W、パルス幅30ms、パルスエネルギー6J、ピークパワー200W、ビーム径400μm、焦点からの距離0μmとしたこと以外は同様にしてこれを比較例1とした。
【0086】
(比較例2)
実施例1において、レーザー光の条件を銅板側から出力200W、パルス幅100ms、パルスエネルギー20J、ピークパワー200W、ビーム径400μm、焦点からの距離0μmとしたこと以外は同様にしてこれを比較例2とした。
【0087】
溶接後の実施例1と比較例1の顕微鏡写真を
図8に示し、溶接後の実施例1,2と比較例1,2の評価結果をまとめると表1の通りである。
【0088】
【0089】
比較例1は、
図8(b)のように、レーザー光が銅板を貫通して、シリコンウェハの裏面が変色し、一部に割れが生じているのに対して、実施例1は、
図8(a)のように、レーザー光がシリコンウェハの裏面まで貫通せず、有底の穴部が形成されていた。
また、実施例1の穴部は、中心に凸状の隆起部が形成されており、隆起部と穴部の形状は、略円形状であって略同心円に並んでいた。言い換えると、実施例1の穴部の開口形状は、隆起部の外郭形状と内径が異なっており、開口縁の内側に隆起部が位置していた。
【0090】
実施例2と比較例2についても形状を観察したところ、実施例2では、有底の穴部が形成され、比較例2ではシリコンウェハの裏面を貫通し、貫通孔が形成されていた。
実施例1と比較例1,2の結果から、200W超過の高出力で、かつ30ms未満の短パルス幅でレーザーを照射することで100μmという厚みが薄い銅板を使用した場合でも、1500μmの銅板と同様に溶接可能であることがわかった。
【0091】
また、JIS K 6854-2に記される装置、及び手順に準じたピール強度評価を行い、実施例1,2の剥離強度を測定したところ、実施例2の剥離強度が0.2N程度であるのに対して実施例1の剥離強度では、2.2N程度と高い剥離強度を示した。
これは、実施例1では、銅板の厚みが100μmと薄いため、レーザーの一部が銅板を通過して下地の銅テープまで至り、その銅テープに凹部が形成される。そして、凹部内にレーザーによって融解した銅板の一部と銅テープの一部が溜まって固化し隆起部が形成される。その結果、銅テープの凹部でアンカー効果が働くとともに、銅板と隆起部が一体となって連続した一連の層になったためと考えられる。
【0092】
以上の結果から、良好な剥離強度を示した実施例1では、穴部の底部に隆起部が形成されており、隆起部と穴部が穴部の深さ方向から視たときに略円形状であって同心円状に重なっているという特異な形状となることがわかった。
銅板の固体状態での吸収率が65%程度の青色レーザーを使用することで、レーザーによる穴部の深さを調整できることがわかった。