(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080415
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】土壌改良装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/046 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
E02D3/046
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193743
(22)【出願日】2021-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】510186410
【氏名又は名称】油機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠司
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA12
2D043DA10
(57)【要約】
【課題】穿孔の時間が短縮でき、作業性を向上させることができる土壌改良装置を提供する。
【解決手段】土壌改良装置10は、ベースマシンBとした建設機械(例えば、バックホウが採用できる。)の本体部B1の前部から延びるブームB2の先端に連結されたアームB3に吊り下げられるアタッチメントである。土壌改良装置10は、ベースマシンBのアームB3に連結する連結部11と、連結部11に設けられ、連続的な振動を発生する駆動部12と、駆動部12からの連続的な振動により農地を穿孔する杭部13とを備えている。土壌改良装置10によれば、ベースマシンBのアームB3から吊り下げられた状態で、駆動部12により発生する連続的な振動により杭部13が振動しながら農地を穿孔するので、ベースマシンBにより穿孔位置を変え、硬い耕盤層または硬盤層を徐々に破砕しながら杭部13を侵入させて貫通させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの本体部により操作される腕部に連結する連結部と、前記連結部に設けられ、連続的な振動を発生する駆動部と、前記駆動部からの連続的な振動により農地を穿孔する杭部とを備えた土壌改良装置。
【請求項2】
前記駆動部は、1秒間に複数回の振動を発生する請求項1記載の土壌改良装置。
【請求項3】
前記駆動部は、上下方向と、前後方向または左右方向とに揺動する振動を発生する請求項1または2記載の土壌改良装置。
【請求項4】
前記杭部は、前記駆動部から下方に向かって突出するように設けられた複数の金属杭を備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の土壌改良装置。
【請求項5】
前記駆動部は、駆動源となる油圧モーターと、前記油圧モーターの回転を変換して前記杭部を振動させる偏心錘とを備えた請求項1から4のいずれかの項に記載の土壌改良装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記油圧モーターおよび前記偏心錘を保持すると共に、前記偏心錘による振動を前記杭部に伝達する伝達部と、前記伝達部に弾性部材を介して接続され、前記連結部に接続した枠部とを備えた請求項5記載の土壌改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕盤層および硬盤層を穿孔する土壌改良装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農機具などの土壌踏圧により土が固くなり、水分や空気を通さない耕盤層および硬盤層が農地にできることがある。耕盤層や硬盤層ができると、根の生長が妨げられるので、栽培ができなくなったり、収穫が減ったりする。このような耕盤層および硬盤層を穿孔して破砕することで、水分や空気を透過させて微生物の生息に適した土壌に改良する従来の土壌改良装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の耕盤膨軟装置は、打撃ピストンが空気吹込体の頭部を打撃して空気吹込体を地中に打ち込み、耕盤を破砕、膨軟し、地中に打ち込まれた空気吹込体に、圧力空気が供給して、下部の噴出孔から地中に勢いよく噴出させ、破砕された耕盤に空気を浸透させて十分に膨軟させる、というものである。
【0004】
特許文献2に記載の耕盤膨軟装置は、公知のエアハンマと同様な構造をなす打撃ピストンが空気吹込体の頭部を打撃して、圧力空気が打撃機構に供給して、空気吹込体の内孔から吹出孔から外へ噴出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58-185005号公報
【特許文献2】特開昭58-126701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に記載の耕盤膨軟装置では、圧縮空気により打撃ピストンにより空気吹込体を打ち込んでいるが、単発的な打ち込みでは、耕盤層や硬盤層が硬く穿孔できないときに、農地全体に数多く穿孔するのに時間を要するため、作業性が悪い。
【0007】
そこで本発明は、穿孔の時間が短縮でき、作業性を向上させることができる土壌改良装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の土壌改良装置は、ベースマシンの本体部により操作される腕部に連結する連結部と、前記連結部に設けられ、連続的な振動を発生する駆動部と、前記駆動部からの連続的な振動により農地を穿孔する杭部とを備えたことを特徴としたものである。
【0009】
本発明の土壌改良装置によれば、ベースマシンの本体部から延びる腕部に吊り下げられた状態で、駆動部により発生する連続的な振動により杭部が振動しながら農地を穿孔するので、ベースマシンにより穿孔位置を変え、硬い耕盤層または硬盤層を徐々に破砕しながら杭部に侵入させて貫通させることができる。
【0010】
前記駆動部は、1秒間に複数回の振動を発生するものとすることができる。駆動部が1秒間に複数回の高速な振動を発生することで、単発の穿孔を数回行って貫通できなくても、杭部が高速に次々と耕盤層または硬盤層に突き刺さる。そのため、硬い耕盤層または硬盤層を砕きやすい状態とすることができるので、振動を繰り返しながら徐々に深く侵入させることができる。
【0011】
前記駆動部は、上下方向と、前後方向または左右方向とに揺動する振動を発生するものとすることができる。杭部が下方向に振動して農地に突き刺さった状態で前後方向または左右方向に拡げるように振動するので、耕盤層または硬盤層に突き刺さった位置から前後または左右方向に砕きながら杭部を深く侵入させることができる。
【0012】
杭部は、前記駆動部から下方に向かって突出するように設けられた複数の金属杭を備えたものとすることができる。複数の金属杭により穿孔することで、一度に複数の穿孔を行うことができるので、更に作業性の向上性を図ることができる。
【0013】
前記駆動部は、駆動源となる油圧モーターと、前記油圧モーターの回転を変換して前記杭部を振動させる偏心錘とを備えたものとすることができる。油圧モーターを駆動源とすることで、高速で高トルクの回転を発生させることができ、耕盤層または硬盤層に杭部を突き当てることで、硬い耕盤層または硬盤層に押し込むことができ、破砕することができる。
【0014】
前記駆動部は、前記油圧モーターおよび前記偏心錘を保持すると共に、前記偏心錘による振動を前記杭部に伝達する伝達部と、前記伝達部に弾性部材を介して接続され、前記連結部に接続した枠部とを備えたものとすることができる。
連結部に接続した枠部は、振動を杭部に伝達する伝達部に弾性部材を介して接続しているため、連結部側に大きな振動を与えることなく、偏心錘による振動を伝達部により杭部に伝達することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の土壌改良装置によれば、ベースマシンにより穿孔位置を変え、硬い耕盤層または硬盤層を徐々に粉砕しながら侵入して貫通させることができるので、穿孔の時間が短縮でき、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る土壌改良装置と、土壌改良装置を吊り下げるベースマシンとを示す図である。
【
図2】
図1に示す土壌改良装置を説明するための図であり、(A)は土壌改良装置の側面図、(B)は(A)の正面図である。
【
図3】
図1に示す土壌改良装置の駆動部を説明するための図であり、(A)は連結部および外枠部を取り除いた状態の側面図、(B)は(A)の正面図である。
【
図4】
図3に示す駆動部の起振体の動作を説明するための図である。
【
図5】
図1に示す土壌改良装置の動作を説明するための図であり、(A)は駆動部が下に移動したときの図、(B)は駆動部が上に移動したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る土壌改良装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す土壌改良装置10は、農地にできる耕盤層および硬盤層を穿孔して水分や空気を通過可能にして、植物の育成を促進するものである。
土壌改良装置10は、ベースマシンBとした建設機械(例えば、バックホウが採用できる。)の本体部B1の前部から延びるブームB2の先端に連結されたアームB3に吊り下げられるアタッチメントである。
【0018】
土壌改良装置10は、連結部11と、駆動部12と、杭部13とを備えている。
【0019】
図2(A)および同図(B)に示すように、連結部11は、上方に延びる平行な一対の連結板111と、一対の連結板111の下端同士を繋ぐ底板112とを備えている。連結板111は、逆台形状の金属板により形成され、上端部に貫通孔111aが形成されている。貫通孔111aは、連結ピンが挿通してアームB3(
図1参照)と連結するためのアタッチメント用連結孔である。底板112は、矩形状の金属板により形成されている。
【0020】
駆動部12は、ベースマシンB(
図1参照)から送油されて回転する駆動源となる油圧モーター121と、油圧モーター121の回転軸121aの軸心から重心が偏心していることにより、上下移動を含む大きな回転運動に変換する起振体122とを備えている。
図3(A)および同図(B)に示すように、油圧モーター121には、ベースマシンB(
図1参照)から油圧モーター121へ送油されるホース121mと、油圧モーター121からベースマシンBへ戻るホース121nとが接続されている。
油圧モーター121は、1秒間に複数回の振動を発生する。本実施の形態では、油圧モーター121を採用していることにより、1秒間に30~40回の振動を発生させることができる。
【0021】
起振体122は、円盤状に形成され、中心からずれた位置に油圧モーター121の回転軸121aが接続された偏心錘である。起振体122は、要の位置に回転軸が接続された扇状に形成されていてもよい。起振体122は、回転自在に一対の伝達板123により挟まれている。
【0022】
伝達板123は、振動を杭部13に伝達する伝達部として機能するものである。
一対の伝達板123は、弾性部材125(
図2参照)を介して、一対の外枠板126に接続されている。弾性部材125は、ゴムブロックにより形成されている。外枠板126は、下方に向かって開口した逆U字状に形成され、枠部として機能するものである。外枠板126は、連結部11の下端に接続されている。一対の外枠板126の間の空間が、油圧モーター121と、起振体122と、伝達板123と、弾性部材125とが配置された空間となる。
一対の伝達板123は、中央部123a同士の間が、起振体122が回転する空間であり、両方の端部123bの外側面が、弾性部材125が接続される領域である。
伝達板123の下端には振動板124が接続されている。振動板124は矩形状に形成された金属板である。
【0023】
杭部13は、振動板124に設けられた接続板131と、接続板131から下方に向かって突出するように設けられた複数の金属杭132とを備えている。接続板131は、複数の金属杭132を振動板124に接続する帯状の金属板である。
金属杭132は、先端が先鋭な棒状体である。本実施の形態では、3本の金属杭132が一列に並んで配置されている。
【0024】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る土壌改良装置の動作と使用状態について図面に基づいて説明する。
まず、操作者は、
図1に示すベースマシンBを操作してブームB2およびアームB3を動作させて土壌改良装置10を吊り上げ、穿孔位置の上方まで移動する。次に、土壌改良装置10を下降して杭部13を農地に突き刺す。
耕盤層または硬盤層の上方の土壌は軟質な地盤であるため、ベースマシンBにより押し込まなくても自重により杭部13が耕盤層または硬盤層まで到達する。
【0025】
次に、操作者は、ベースマシンBを操作して、
図3(A)および同図(B)に示す駆動部12の油圧モーター121に送油する。そうすることで、油圧モーター121の回転軸121aが回転する。回転軸121aの回転により起振体122が回転する。
図4に示すように、起振体122は回転軸121aが偏心した位置に接続されているため、起振体122の重心が上から下に移動したときには、駆動部12に下方に向かう力が作用し、起振体122の重心が下から上に移動したときには、駆動部12に上方に向かう力が作用する。
【0026】
従って、
図5(A)の示すように、駆動部12に対して下方に向かう力が作用することで、弾性部材125が延びて駆動部12が下方に移動する。また、
図5(B)の示すように、駆動部12に対して上方に向かう力が作用することで、弾性部材125が延びて駆動部12が上方に移動する。
【0027】
更に、起振体122の重心が下から前方に移動したときには、駆動部12に前方に向かう力が作用し、起振体122の重心が上から後方に移動したときには、駆動部12に後方に向かう力が作用する。
従って、駆動部12は、上下方向に移動するだけでなく、前後方向に移動するため、駆動部12は円運動をする。
【0028】
そのため、駆動部12の振動板124に接続された杭部13は、下方に振動したときに耕盤層または硬盤層に喰い込み、前後方向に振動したときに喰い込んだ位置から破砕を拡げ、再度、下方に振動したときに、更に深く侵入する。
この動作を1秒間に複数回、例えば、30~40回、高速に繰り返すことにより、単発の穿孔を数回行って貫通できないような硬い耕盤層または硬盤層でも、砕きやすい状態とすることができるので、振動を繰り返しながら徐々に深く侵入させることができる。
【0029】
駆動源として油圧モーター121(
図2(A)参照)を使用しているので、高速で高トルクの回転を発生させることができる。耕盤層または硬盤層に杭部13を突き当てることで、耕盤層または硬盤層に押し込むことができ、破砕することができる。従って、圧縮空気を発生するような大型の装置が不要であり、装置の小型化を図りながら、硬い耕盤層または硬盤層の破砕が可能である。
【0030】
1箇所の穿孔が終了すると、操作者は、ベースマシンBを操作して土壌改良装置10を引き上げ、次の位置までベースマシンBを移動させるかブームB2やアームB3を延ばすかして、土壌改良装置10を降下させることで、続けて穿孔することができる。
【0031】
このように、土壌改良装置10は、
図1に示すベースマシンBにより穿孔位置を変えながら、杭部13を硬い耕盤層または硬盤層を徐々に破砕しながら侵入させて貫通することができるので、穿孔の時間が短縮でき、作業性を向上させることができる。また、3本の金属杭132により1回の穿孔により3箇所を穿孔することができるので、更に作業性の向上性を図ることができる。
【0032】
また、連結部11に接続した外枠板126は、伝達板123に弾性部材125を介して接続しているため、連結部11側に大きな振動を与えることなく、起振体122による振動を伝達板123により杭部13に伝達することができる。従って、高速に起振体122が回転により杭部13を効率よく振動させることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、起振体122の円盤面が前後方向に沿った面に平行であるため、杭部13は前後方向に振動していたが、起振体122の円盤面が左右方向に沿った面に平行に設置されていれば、杭部13は左右方向に振動させることができる。
【0034】
また、本実施の形態では、円盤状の起振体122が1個回転しているが、複数個の偏心錘が同時に回転するようにしてもよい。例えば、2個の偏心錘を回転軸から重心への方向を合わせて並べて、反対方向に回転させれば、横方向の際には力を相殺させることができるので、上下方向の振動を発生させることができる。また、偏心錘を同じ方向に回転させれば、振動の度合いを2倍とすることができる。
【0035】
本実施の形態では、金属杭132が3本並んでいるが、1本でもよい。しかし、作業の効率を勘案すると複数本が望ましい。また、1列に並べるだけでなく、縦列および横列にマトリックス状に配置するようにしてもよい。多数本の金属杭を備えた場合では、杭部の重量が重くなるため適度な本数を備えることが望ましい。
【0036】
また、土壌改良装置10は、ベースマシンBのブームB2とアームB3とからなる腕部に吊り下げられていた。しかし、ハウス内の農地を改良するときなど高さに制限がある場合には、アームB3を取り外した状態でブームB2を腕部として、ブームB2に土壌改良装置10を吊り下げるようにしてもよい。そうすることで、低く狭い範囲で土壌の改良を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、地下に耕盤層および硬盤層ができた農地を穿孔して、水分や空気を透過させて微生物の生息に適した土壌に改良する土壌改良装置に好適である。
【符号の説明】
【0038】
10 土壌改良装置
11 連結部
12 駆動部
13 杭部
111 連結板
111a 貫通孔
112 底板
12 駆動部
121 油圧モーター
121a 回転軸
122 起振体
121m,121n ホース
123 伝達板
123a 中央部
123b 端部
124 振動板
125 弾性部材
126 外枠板
13 杭部
131 接続板
132 金属杭
B ベースマシン
B1 本体部
B2 ブーム
B3 アーム
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンの本体部により操作される腕部に連結する連結部と、前記連結部に設けられ、連続的な振動を発生する駆動部と、前記駆動部からの連続的な振動により農地を穿孔する杭部とを備え、
前記杭部は、前記駆動部から下方に向かって突出するように設けられた複数の金属杭を備え、
前記駆動部は、上下方向と、前後方向または左右方向とに揺動する振動を発生する土壌改良装置。
【請求項2】
前記駆動部は、1秒間に複数回の振動を発生する請求項1記載の土壌改良装置。
【請求項3】
前記駆動部は、駆動源となる油圧モーターと、前記油圧モーターの回転を変換して前記杭部を振動させる偏心錘とを備えた請求項1または2記載の土壌改良装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記油圧モーターおよび前記偏心錘を保持すると共に、前記偏心錘による振動を前記杭部に伝達する伝達部と、前記伝達部に弾性部材を介して接続され、前記連結部に接続した枠部とを備えた請求項3記載の土壌改良装置。