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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008042
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】方向切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
F16K31/06 305V
F16K31/06 305J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111282
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】390017352
【氏名又は名称】仁科工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 亮
(72)【発明者】
【氏名】中島 滋人
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 陽仁
(72)【発明者】
【氏名】木下 浩一
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA02
3H106DA13
3H106DA25
3H106DB02
3H106DB13
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC09
3H106DC19
3H106DD02
3H106EE27
3H106EE34
3H106GA23
3H106GB06
3H106KK03
(57)【要約】
【課題】スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能で、且つ、スプールの動作が不安定になることを防ぎ、安定した制御が可能な方向切換弁を提供する。
【解決手段】本発明に係る方向切換弁1は、外部供給源2から流体を流入させる流入ポート16および作動シリンダ4へ流体を流出させる流出ポート18A、18Bに連通する筒状のスプール孔20を有するハウジング10と、スプール孔20内を移動して流体の流出量を変化させるスプール22と、スプール22の第1端部22aに設けられてスプール22を駆動する第1可動子22Aを有する第1ソレノイド駆動部30Aと、スプール22の第2端部22bに設けられてスプール22を駆動する第2可動子22Bを有する第2ソレノイド駆動部30Bとを備え、スプール22における第1端部22a側と第2端部22b側とに均等に圧力を付与する圧力均一化回路が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部供給源から所定圧力で送出される流体を流入させる流入ポートおよび外部作業装置を駆動する作動シリンダへ前記流体を流出させる流出ポートに連通する筒状のスプール孔を有するハウジングと、前記スプール孔内において軸線方向に移動可能に設けられて前記流体の流出量を変化させるスプールと、前記スプールの第1端部に対して連結されてもしくは一体に形成されて前記スプールを駆動する第1可動子を有する第1ソレノイド駆動部と、前記スプールの第2端部に対して連結されてもしくは一体に形成されて前記スプールを駆動する第2可動子を有する第2ソレノイド駆動部と、を備える方向切換弁であって、
前記スプールにおける前記第1端部側と前記第2端部側とに均等に圧力を付与する圧力均一化回路が設けられていること
を特徴とする方向切換弁。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記作動シリンダにおけるピストンの移動により排出される前記流体をその移動方向に応じていずれか一方に通流させる第1排出流路および第2排出流路を有し、
前記圧力均一化回路として、前記ハウジングもしくは前記ハウジングに積層状態で連結されるアウトレットの一方もしくは両方において、前記第1排出流路および前記第2排出流路を接続する接続流路と、前記接続流路に連通する第1圧力均一化流路および第2圧力均一化流路と、が設けられており、且つ、前記スプール孔において、前記スプールの前記第1端部側に配設されると共に前記第1圧力均一化流路に連通して前記接続流路内における前記流体の圧力を前記スプールの前記第1端部側に付与する第1圧力均一化室と、前記スプールの前記第2端部側に配設されると共に前記第2圧力均一化流路に連通して前記接続流路内における前記流体の圧力を前記スプールの前記第2端部側に付与する第2圧力均一化室と、が設けられていること
を特徴とする請求項1記載の方向切換弁。
【請求項3】
前記第1圧力均一化室および前記第2圧力均一化室は、前記スプール孔を形成する鋳造工程で用いられる中子の外周面に突設された周方向突起に対応する形状として、前記スプール孔の内周面に穿設される周方向溝を有すること
を特徴とする請求項2記載の方向切換弁。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記第1圧力均一化室と、前記第1圧力均一化流路の端部となる開口部が設けられる面とは逆側の面に開口形成される第1積層用開口部と、に連通する第1積層用流路、および、前記第2圧力均一化室と、前記第2圧力均一化流路の端部となる開口部が設けられる面とは逆側の面に開口形成される第2積層用開口部と、に連通する第2積層用流路、を有すること
を特徴とする請求項2または請求項3記載の方向切換弁。
【請求項5】
前記外部供給源から送出される前記流体は、最大圧力が10MPa以上で、且つ、最大流量が60リットル/min以上に設定されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の方向切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトや建設機械等に例示される作業用車両は、圧力流体(以下、単に「流体」と称する場合がある)によって駆動されるフォークやバケット等の作業装置を備えて構成されている。このような作業装置の駆動を制御するために、従来より、流体の通流方向の切換や停止を行う方向切換弁が用いられている。
【0003】
特に、大きな出力を発生させる作業装置を備える作業用車両においては、方向切換弁によって制御する流体の圧力および流量が相対的に大きく設定されている。このような流体の制御に好適な、電磁比例式減圧弁を備えたパイロット式切換弁が開発されている。
【0004】
一例として、特許文献1(特開2004-232764号公報)に開示されるパイロット式切換弁は、パイロット圧を生成する減圧弁と、この減圧弁を制御する比例ソレノイドと、パイロット圧に応じて駆動(移動)されるスプールとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-232764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に例示される電磁比例式減圧弁を備えたパイロット式切換弁によれば、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能となるため、作業装置の大出力化を図る際に好適である。しかしながら、その一方で、電磁比例式減圧弁を備えるために、体格が大型となり重量が増加すると共に構造が複雑化してしまう。さらに、スプール駆動用のパイロット圧(待機圧力)を常時、発生させておく必要があるために、搭載車両における燃費(電費を含む)性能が悪化してしまう。したがって、体格を大型化する手法によることなく、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定できる切換弁を実現することが課題となる。
【0007】
例えば、単純に電磁比例式減圧弁を省略して、ソレノイド駆動部によってスプールを直接、駆動(移動)する構成とすれば、体格を大型化することなく、小型、軽量化および構造の簡素化も可能と考えられる。しかしながら、その一方で、直接、駆動する構成においては、制御する流体の圧力および流量が大きくなる程、スプールが制御指令通りに動作せず、流体制御が不安定となる現象が生じることを本願発明者らは究明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、ソレノイド駆動部によってスプールを直接、駆動する構成において、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能で、且つ、スプールの動作が不安定になることを防いで、安定した流体制御を行うことが可能な方向切換弁を提供することを目的とする。
【0009】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
開示の方向切換弁は、外部供給源から所定圧力で送出される流体を流入させる流入ポートおよび外部作業装置を駆動する作動シリンダへ前記流体を流出させる流出ポートに連通する筒状のスプール孔を有するハウジングと、前記スプール孔内において軸線方向に移動可能に設けられて前記流体の流出量を変化させるスプールと、前記スプールの第1端部に対して連結されてもしくは一体に形成されて前記スプールを駆動する第1可動子を有する第1ソレノイド駆動部と、前記スプールの第2端部に対して連結されてもしくは一体に形成されて前記スプールを駆動する第2可動子を有する第2ソレノイド駆動部と、を備える方向切換弁であって、前記スプールにおける第1端部側と第2端部側とに均等に圧力を付与する圧力均一化回路が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
開示の方向切換弁によれば、ソレノイド駆動部によってスプールを直接、駆動する構成において、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能となる。さらに、スプールを駆動する際に、スプールの動作が不安定になることを防いで、安定した流体制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る方向切換弁の例を示す正面図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図2におけるIII部拡大図である。
図4図1に示す方向切換弁のハウジングの例を示す斜視図である。
図5図4におけるV部拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る方向切換弁の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る方向切換弁1の例を示す正面図(概略図)である。また、図2は、図1におけるII-II線断面図であるが、説明のために周辺機器および回路を一部追加して図示している。また、図3は、図2におけるIII部拡大図である。また、図4は、ハウジング10の斜視図(概略図)であり、図5は、図4におけるV部の拡大断面図(図4と同じ角度の斜視図)である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
本実施形態に係る方向切換弁1は、外部作業装置(一例として、作業用車両における作業装置)を駆動する作動シリンダの作動制御、すなわち作動シリンダの作動に用いられる流体の通流方向の切換や停止を行うものである。
【0015】
先ず、本願発明者らは、前述した課題の解決を図るため、比較例に係る方向切換弁として、直動式切換弁、すなわち、スプールを直接、移動させるソレノイド駆動部を備える切換弁の採用について検討を行った。このような構成によれば、減圧弁とその制御用比例ソレノイドを省略できるため、小型、軽量化および構造の簡素化が可能となり、加えて、スプール駆動用のパイロット圧(待機圧力)低減による燃費性能の向上も可能となるためである。
【0016】
試作、実験等による検討の結果、直動式切換弁は、流体の圧力および流量が相対的に小さい場合(流体の最大圧力10MPa程度以下、最大流量50リットル/min程度以下のいわゆる小流量、中流量と称される場合)において、スプールの移動が安定的に行える知見が得られた。しかしながら、流体の圧力および流量が相対的に大きい場合(流体の最大圧力10MPa程度以上、最大流量60リットル/min程度以上のいわゆる大流量と称される場合)において、スプールの移動動作が不安定となる課題が明らかとなった。
【0017】
さらに研究を行い、上記の課題は、直動式切換弁の場合、ソレノイド駆動部がスプールを直接、駆動(移動)させる構成であるため、従来の電磁比例式減圧弁と比較して、発生し得る駆動力が大幅に小さいことに起因するものであることを究明した。すなわち、スプールを駆動させる力が小さい程、スプールによって制御されてスプール孔内を通流する流体の圧力、具体的に、作動シリンダから排出される流体の圧力のように極めて低い圧力(一例として、0.1MPa程度の低圧)であっても、スプールを移動させる力として作用する影響を無視できなくなり、その結果、スプールの動作が安定せず(具体的には、制御信号に沿った動作が正確に行われない等の現象が生じ)、流体制御が不安定となる原因であることを究明した。
【0018】
当該問題の解決を図る方法として、仮に、ソレノイド駆動部を大型化(一例として、直径80mm程度以上)して可動子の推力を高めれば、作動シリンダから排出される流体の圧力がスプールを移動させる力として作用する影響を無視できるようになる。しかしながら、体格が大型化することとなってしまう。
【0019】
そこで、本実施形態に係る方向切換弁1は、以下の構成を備えることにより、これまで述べた複合的な課題に対してその解決を可能としている。
【0020】
先ず、本実施形態に係る方向切換弁1の全体構成について説明する。図1図2に示すように、方向切換弁1は、所定圧力の流体(ここでは、圧油)の外部供給源(ここでは、油圧源)であるメイン油圧ポンプ2と、フォークやバケット等の作業装置を作動させる作動シリンダ4との間に配設され、作動シリンダ4に対して供給・排出される流体の流路および流量を制御する作用をなすものである。これによって、作業装置における作動方向、作動量、作動速度が設定される。
【0021】
方向切換弁1は、ハウジング10と、ハウジング10の左右側面に設けられるソレノイド駆動部30とを備えている(以下、ハウジング10とソレノイド駆動部30との構成体を「主本体部100」と称する場合がある)。なお、本実施形態においては、ハウジング10の一面(便宜上、図1の配置により「上面」として説明する)に積層状態で連結されるインレット102と、ハウジング10の他面(便宜上、図1の配置により「下面」として説明する)に積層状態で連結されるアウトレット104とを備えている。一例として、インレット102には、外部供給源(メイン油圧ポンプ)2から送出される流体を流入させる流入ポート16が設けられている。また、主本体部100(ここでは、ハウジング10)には、作動シリンダ4へ流体を流出させる流出ポート18A、18Bが設けられている。なお、当該流出ポート18A、18Bは作動シリンダ4から排出される流体を流入させるポートとしても用いられる。また、アウトレット104には、作動シリンダ4から排出される流体をタンク3へ流出させるタンクポート19が設けられている。ただし、この構成に限定されるものではなく、インレット、アウトレットを備えずに、流入ポート、タンクポートがハウジング10に直接設けられる構成としてもよい(不図示)。
【0022】
本実施形態に係るハウジング10には、流入ポート16、流出ポート18A、18B、およびタンクポート19に連通する筒状の空間部であるスプール孔20が設けられている。また、スプール孔20内において、軸線方向に移動可能に設けられて流体の流出量を変化、停止させるスプール22が収容されている。一例として、スプール22およびスプール孔20は、断面円形状に形成されており、スプール孔20は、ハウジング10の一側面から他側面まで貫通形成されている。
【0023】
また、ソレノイド駆動部30は、スプール22を駆動(移動)する作用をなす部材であり、本実施形態においては、ハウジング10の両側面に対称となる配置で2個取付けられている(具体的に、第1ソレノイド駆動部30A、第2ソレノイド駆動部30B)。作動例として、オペレータが操作レバー5を操作すると、制御部6を介して操作に応じた駆動信号が対応するソレノイド駆動部30に送信され、当該ソレノイド駆動部30が駆動して可動子が移動することによって、スプール22が動作(移動)される(作動原理の詳細は後述する)。
【0024】
また、ハウジング10には、流入ポート16に連通する供給流路11と、流出ポート18A、18Bにそれぞれ連通する第1作動流路12A、第2作動流路12Bと、タンクポート19に連通する第1排出流路13Aおよび第2排出流路13Bとが設けられている。これらの流路は、それぞれ、スプール孔20と連通する構成となっており、一例として、供給流路11は、第1作動流路12Aと第2作動流路12Bとの間の位置に配置されている。また、第1作動流路12Aは、供給流路11と第1排出流路13Aとの間の位置に配置されている。また、第2作動流路12Bは、供給流路11と第2排出流路13Bとの間の位置に配置されている。
【0025】
ここで、供給流路11は、流入ポート16を介してメイン油圧ポンプ2と接続され、メイン油圧ポンプ2から送出される所定圧力(一例として、20MPa程度の高圧)の流体を供給するための流路である。また、第1作動流路12A、第2作動流路12Bは、それぞれ、流出ポート18A、18Bを介して作動シリンダ4と接続され、作動シリンダ4に所定圧力(一例として、20MPa程度の高圧)の流体を供給すると共に作動シリンダ4から排出される所定圧力(一例として、2MPa程度の低圧)の流体を戻すための流路である。また、第1排出流路13Aおよび第2排出流路13Bは、タンクポート19を介してタンク3と接続され、作動シリンダ4から排出されて通流する所定圧力(一例として、0.1MPa程度の低圧)の流体をタンク3に送出するための流路である。
【0026】
なお、本実施形態においては、スプール孔20およびスプール22を用いて制御される回路構成によって、作動シリンダ4におけるピストン4aの移動により排出される流体が、当該ピストン4aの移動方向に応じて第1作動流路12Aもしくは第2作動流路12Bのいずれか一方に送出される構成となっている(例えば、ピストン4aが図2中の上方へ移動する場合、作動シリンダ4から第1作動流路12Aへ流体が排出され、逆に、ピストン4aが図2中の下方へ移動する場合、作動シリンダ4から第2作動流路12Bへ流体が排出される)。さらに、第1作動流路12Aへ送出された流体は第1排出流路13Aのみ(第2排出流路13Bを含まない趣旨である)に通流される構成となっている。逆に、第2作動流路12Bへ送出された流体は第2排出流路13Bのみ(第1排出流路13Aを含まない趣旨である)に通流される構成となっている。
【0027】
次に、スプール22は、断面円形状に形成されており、ハウジング10のスプール孔20に軸線方向に移動可能に(より詳しくは、所定の嵌めあい公差で摺動可能に)収容されている。
【0028】
特に図示はしないが、スプール22の外周面には、供給流路11と第1作動流路12A、第2作動流路12Bとを連通させるノッチ、第1作動流路12Aと第1排出流路13Aとを連通させるノッチ、および、第2作動流路12Bと第2排出流路13Bとを連通させるノッチ、等が設けられている。
【0029】
なお、必要な各所に、シール部材14(一例として、ゴム、エラストマー等からなるOリング)が配設されている。
【0030】
次に、スプール22の両端には、スプール22を移動させるソレノイド駆動部30(第1ソレノイド駆動部30A、第2ソレノイド駆動部30B)がそれぞれ設けれられている。2つのソレノイド駆動部30A、30Bは、基本的な構成が同一であるため、一方のソレノイド駆動部30A(図2のIII部)を例に挙げて詳しく説明する。なお、本実施形態においては、ソレノイド駆動部30として、いわゆる「プル型比例ソレノイド」の構成を例に挙げて説明する。ただし、「プッシュ型」、「プッシュプル型」の構成も採用可能である(不図示)。さらに、流量の調整が不要であって方向の切換のみで十分な場合等においては、「比例ソレノイド」に代えて、「オンオフソレノイド」の構成も採用可能である(不図示)。
【0031】
図2図3に示すように、本実施形態に係るソレノイド駆動部30Aは、ケース32の内部に、長尺な導体部材を絶縁しつつボビン34に巻回したコイル36と、コイル36の励磁により生じる磁束線を通す固定鉄心38と、コイル36の励磁により生じる磁束線を通し、磁束線に起因して生じる吸引力によってコイル36の軸線方向(すなわち、ボビン34に巻回したコイル36の中心軸に沿う方向であり、以下同じ)に沿って移動する可動子22A(第1可動子)とを備えている。なお、本実施形態に係る可動子22Aは、スプール22と一体(一部材から加工された一体構造)に形成された構成としている。ただし、これに限定されるものではなく、別体に形成されてスプール22の第1端部22a(ソレノイド駆動部30A側の端部)に対して連結された構成としてもよい(不図示)。
【0032】
ケース32は、コイル36、固定鉄心38、および可動子22A等を収容する筒状(ここでは円筒状であるが、角筒状も採用し得る)の部材であり、一例として、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。このケース32は、ハウジング10の側面にボルト等(不図示)を用いて固定される構成となっている。
【0033】
コイル36は、絶縁被覆された長尺な導体部材がボビン34に巻回された構成を備えている。当該導体部材は、一例として、銅合金等を用いて断面が円形、正方形等に形成された線材であるが、テープ材、シート材等(不図示)を用いても良い。
【0034】
固定鉄心38は、コイル36の励磁により生じる磁束線を通して可動子22Aを吸引する部材であり、一例として、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。本実施形態においては、固定鉄心38として、コイル36の軸線方向に互いに離間するように配置されたベースとステータ38Cとを備えている。ここで、当該ベースとして、いずれも円筒状で、第1端部38aに径方向に延設された鍔状部を有する形状の第1ベース38Aと、第1ベース38A内に嵌設される第2ベース38Bとを備えている。一方、ステータ38Cは、円筒状で、第1端部38cに径方向に延設された鍔状部を有する形状に形成されている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る第1ベース38Aは、当該第1ベース38Aの第2端部38bにおいて、外周面が第1端部38aに向かって拡径するテーパ面38dを有している。これによれば、当該第2端部38bにおける磁束密度を高めて、可動子22Aの位置によらず吸引力を一定にしようとする効果が得られる。
【0036】
また、第2ベース38Bの内部には、ブッシュ44を介して軸線方向に移動可能に支持された伝達部材(ピン)40、および当該伝達部材40を可動子22Aに向かって付勢する付勢部材42が設けられている。一例として、伝達部材40、ブッシュ44共に非磁性材料(ステンレス合金、樹脂材料等)を用いて形成されている。なお、付勢部材42は、例えばコイルバネ等を備えて構成された、いわゆる復帰バネであり、可動子22Aがコイル36の励磁時に固定鉄心38に吸引される方向に対して、その逆方向に可動子22Aを移動させる力を付与するものである。
【0037】
可動子22Aは、コイル36が励磁された際に発生する磁束線が通過し、当該磁束線に起因して生じる固定鉄心38に向かう吸引力によってコイル36の軸線方向に沿って移動する部材である。一例として、炭素鋼、快削鋼等の軟磁性材料を用いて形成されている。
【0038】
上記の構成によれば、本実施形態に係るソレノイド駆動部30Aのコイル36を励磁することで、固定鉄心38が可動子22Aを吸引する力が生じて、可動子22Aを所定方向(この場合、第1ベース38Aの第2端部38bから第1端部38aへ向かう方向)に移動させる作用が生じる。また、コイル36を消磁することで、固定鉄心38が可動子22Aを吸引する力が消滅し、付勢部材42の付勢力によって可動子22Aを中立位置に戻す方向に移動させる作用が生じる。本実施形態においては、付勢部材42の付勢力が伝達部材40を介して可動子22Aに伝達される構成となっている。
【0039】
なお、本実施形態に係るソレノイド駆動部30Aは「比例ソレノイド」であるため、操作レバー5の操作量に応じた強さの磁場(つまり、可動子22Aに対する吸引力)が発生する。したがって、可動子22Aは、当該吸引力と付勢部材42の付勢力がつり合う位置まで移動されて停止する。すなわち、オペレータの操作に応じてスプール22の移動量が設定され、これによって方向切換弁1による流体の流量が設定され、作動シリンダ4の作動速度が制御される。
【0040】
一方、可動子22B(第2可動子)を備えるソレノイド駆動部30Bに関しては、上記の可動子22A(第1可動子)を備えるソレノイド駆動部30Aと同様の構成であるため、繰り返しの説明を省略する。なお、可動子22Bも、可動子22Aと同様にスプール22と一体に形成された構成としている。ただし、変形例として、スプール22の第2端部22b(ソレノイド駆動部30B側の端部)に対して連結された構成としてもよい(不図示)。
【0041】
前述の通り、本実施形態に係る方向切換弁1は、直動式切換弁であるため、従来の電磁比例式減圧弁と比べて、発生し得る駆動力が大幅に小さいことに起因して、スプール22の動作が安定せず、流体制御が不安定となる問題が生じ得る。
【0042】
この問題に対して、本実施形態に係る方向切換弁1においては、スプール22における第1端部22a側と第2端部22b側とに同じ圧力を付与する(すなわち、均等に圧力を付与する)圧力均一化回路が設けられている。
【0043】
本実施形態においては、圧力均一化回路として、以下の構成を備えている。具体的に、アウトレット104において、第1排出流路13Aおよび第2排出流路13Bを接続する接続流路15が設けられている。また、アウトレット104およびハウジング10の両方に連続的に、接続流路15に連通する第1圧力均一化流路23Aおよび第2圧力均一化流路23Bが設けられている。さらに、ハウジング10(スプール孔20)において、スプール22の第1端部22a側に配設されると共に第1圧力均一化流路23Aに連通する第1圧力均一化室24A(図4等参照)が設けられている。この第1圧力均一化室24Aは、接続流路15内における流体がスプール22の第1端部22a側に送出される作用をなす。したがって、接続流路内における流体の圧力がスプール22の第1端部22a側に(すなわち、スプール22に対して第1端部22aから第2端部22bへ向かう方向に)付与される。同様に、スプール22の第2端部22b側に配設されると共に第2圧力均一化流路23Bに連通する第2圧力均一化室24B(図4等に示す第1圧力均一化室24Aと対称の同様構成である)が設けられている。この第2圧力均一化室24Bは、接続流路15内における流体がスプール22の第2端部22b側に送出される作用をなす。したがって、接続流路15内における流体の圧力がスプール22の第2端部22b側に(すなわち、スプール22に対して第2端部22bから第1端部22aへ向かう方向に)付与される。なお、一例として、第1圧力均一化流路23Aは、ハウジング10内において第1排出流路13Aと直接連通しない別個の独立した流路として設けられており、また、第2圧力均一化流路23Bは、ハウジング10内において第2排出流路13Bと直接連通しない別個の独立した流路として設けられている。また、第1圧力均一化流路23Aと第2圧力均一化流路23Bとは実質的に同一の構造(ハウジング10内において、スプール孔20の軸方向中心位置を基準として線対称の構造)をなしており、第1圧力均一化室24Aと第2圧力均一化室24Bとは実質的に同一の構造(ハウジング10内において、スプール孔20の軸方向中心位置を基準として線対称の構造)をなしている。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0044】
上記の構成によれば、スプール22における第1端部22a側と第2端部22b側とに均等に圧力を付与することができる。より詳しくは、スプール22によって制御されて作動シリンダ4から排出される流体が、第1作動流路12Aからスプール孔20内を経て第1排出流路13Aに通流する際に、スプール22を(第1端部22a側から第2端部22b側へ向かう方向)に移動させる力として作用する。同様に、スプール22によって制御されて作動シリンダ4から排出される流体が、第2作動流路12Bからスプール孔20内を経て第2排出流路13Bに通流する際に、スプール22を(第2端部22b側から第1端部22a側へ向かう方向)に移動させる力として作用する。いずれの際にも、当該流体が接続流路15内における流体が発生させる圧力を、スプール22における第1端部22a側および第2端部22b側の両側に同時に付与することができる。ここで、当該圧力は、第1排出流路13Aおよび第2排出流路13Bから接続流路15内に流入する流体の圧力(一例として、0.1MPa程度の低圧)と同じである(無視できる微差を含む)。
【0045】
これによって、当該流体がスプール孔20内を通流する際にスプール22を移動させる力として作用する影響を解消もしくは無視できる程度まで低減することができるため、スプール22の動作が不安定になることを防ぎ、流体制御を安定化させることが可能となる。
【0046】
その結果、流体の圧力および流量を大流量(ここでは、流体の最大圧力10MPa以上、最大流量60~160リットル/min程度を想定)に設定した場合であっても、ソレノイド駆動部30を大型化する解決方法によることなく、スプール22を直接、且つ、安定的に移動させる構成が実現可能となる。
【0047】
なお、圧力均一化回路の変形例として、接続流路15がアウトレット104およびハウジング10の両方に連続的に設けられる構成や、接続流路15、第1圧力均一化流路23A、第2圧力均一化流路23Bが、ハウジング10に設けられる構成等も考えられる(不図示)。
【0048】
さらに、本実施形態に係る方向切換弁1に特徴的な構成として、第1圧力均一化室24Aおよび第2圧力均一化室24Bは、スプール孔20を形成する鋳造工程で用いられる中子(不図示)の外周面に突設された周方向突起に対応する形状として、スプール孔20の内周面に穿設される周方向溝を有している。
【0049】
これによれば、スプール孔20を鋳造によって形成する際に、第1圧力均一化室24Aおよび第2圧力均一化室24Bを同時に形成することが可能となる。すなわち、別の加工(切削)によって形成する必要がないため、加工工数の削減およびタクトタイムの短縮が可能となる。
【0050】
また、ハウジング10は、第1圧力均一化室24Aと、第1圧力均一化流路23Aの端部となる開口部(第1開口部25A)が設けられる面とは逆側の面に開口形成される第1積層用開口部26Aと、に連通する第1積層用流路27A、および、第2圧力均一化室24Bと、第2圧力均一化流路23Bの端部となる開口部(第2開口部25B)が設けられる面とは逆側の面に開口形成される第2積層用開口部26Bと、に連通する第2積層用流路27B、を有している。このとき、平面視において、第1開口部25Aと第1積層用開口部26Aとが同一位置に配設されており、第2開口部25Bと第2積層用開口部26Bとが同一位置に配設されている構成であることが、より好適である。
【0051】
これによれば、図6に示す他の実施例のように、インレット102とアウトレット104の間に、主本体部100を複数、積層させる構成を実現することができる。したがって、制御対象となる作動シリンダ4の設置数に応じて、主本体部100の積層数を増減させた方向切換弁1を容易に構築することができる。なお、図6は、一例として、100A、100Bの2層を備える場合の構成を示しているが、2層に限定されるものではなく、作動シリンダ4の設置数に応じて、3層以上の構成としてもよい(不図示)。
【0052】
さらに、第1開口部25A、第1圧力均一化流路23A(ハウジング10内の構成部分)、第1積層用流路27A、および第1積層用開口部26Aを1回のドリル加工で同時に形成することが可能となる。同様に、第2開口部25B、第2圧力均一化流路23B(ハウジング10内の構成部分)、第2積層用流路27B、および第2積層用開口部26Bを1回のドリル加工で同時に形成することが可能となる。したがって、加工工数の削減およびタクトタイムの短縮が可能となる。
【0053】
以上説明した通り、開示の方向切換弁によれば、ソレノイド駆動部によってスプールを直接、駆動する構成において、ソレノイド駆動部を大型化する手法によることなく、スプールによって制御する流体の圧力および流量を大きく設定することが可能となる。加えて、スプールを駆動する際に、スプールの動作が不安定になることを防いで、安定した流体制御を行うことが可能となる。
【0054】
また、電磁比例式減圧弁を有しない構成が実現されることによって、小型、軽量で簡素な構成となるばかりでなく、制御用の待機圧力が不要となり、搭載車両における燃費(電費を含む)性能の向上が可能となる。
【0055】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 方向切換弁
2 メイン油圧ポンプ
3 タンク
4 作動シリンダ
10 ハウジング
11 供給流路
12A、12B 作動流路
13A、13B 排出流路
15 接続流路
16 流入ポート
18A、18B 流出ポート
19 タンクポート
20 スプール孔
22 スプール
22A、22B 可動子
23A、23B 圧力均一化流路
24A、24B 圧力均一化室
25A、25B 開口部
26A、26B 積層用開口部
27A、27B 積層用流路
30、30A、30B ソレノイド駆動部
100、100A、100B 主本体部
102 インレット
104 アウトレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6