(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080429
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】キャップおよびこれを備えるシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193763
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
(72)【発明者】
【氏名】菊島 光一
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF05
4C066NN02
4C066NN04
(57)【要約】
【課題】取り扱い性を高めることが可能なキャップおよびこれを備えるシリンジを提供する。
【解決手段】本発明のキャップ30は、針管が穿刺される穿刺部31a、および針管が固定された部材に外嵌される嵌合部31bを有する有底筒状のキャップ本体31と、キャップ本体31の外周面31dの少なくとも一部を覆う筒状または有底筒状のカバー32と、を備え、カバー32は、キャップ本体31の穿刺部31aと嵌合部31bの間における外周面31dを押圧する押圧部32fを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針管が穿刺される穿刺部、および前記針管が固定された部材に外嵌される嵌合部を有する有底筒状のキャップ本体と、
前記キャップ本体の外周面の少なくとも一部を覆う筒状または有底筒状のカバーと、を備え、
前記カバーは、前記キャップ本体の前記穿刺部と前記嵌合部の間における外周面を押圧する押圧部を有することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記キャップ本体は、嵌合部側に向けて自身の軸心から漸次離隔するように傾斜した傾斜面を外周面に有し、
前記押圧部は、前記傾斜面を押圧するように構成されることを特徴とするキャップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキャップにおいて、
前記押圧部は、前記穿刺部よりも前記嵌合部の近傍の前記外周面を押圧する位置に設けられることを特徴とするキャップ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のキャップにおいて、
前記キャップ本体および前記カバーの一方は、相手側に向けて突出する突出部を有し、
前記キャップ本体および前記カバーの他方は、前記突出部の周方向における一部を収容する収容部を有することを特徴とするキャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のキャップにおいて、
前記突出部は、前記嵌合部に対して前記穿刺部とは反対側に設けられることを特徴とするキャップ。
【請求項6】
前記針管が固定された外筒と、
前記外筒に取り付けられる請求項1から5までのいずれか1項に記載のキャップと、を備えることを特徴とするシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針管を閉塞した状態で保護するキャップおよびこれを備えるシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インシュリン投与等に使用される比較的容量の小さいシリンジには、針管が直接外筒に固定されているものが存在する。このような針付きシリンジは、予め外筒内に薬液等を充填したプレフィルドシリンジとして主に使用されている。
【0003】
針付きシリンジがプレフィルドシリンジとして使用される場合、針管を保護すると共に針管先端の開口を閉塞するキャップを外筒に取り付けた状態で製造工場から出荷される。そして、製薬メーカー等においてキャップにより先端側が閉塞された外筒内に薬液等を充填し、ガスケットおよび押し子を外筒に取り付けて密封することで、プレフィルドシリンジが製造される。
【0004】
一般に、このようなキャップは、針管が穿刺されると共に外筒の先端部に嵌合するゴム製のキャップ本体と、キャップ本体を覆う硬質な樹脂製のカバーと、から構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
キャップを材質の異なる2つの部材から構成することで、穿刺による針管の容易且つ確実な閉塞を可能としながらも、キャップの強度および剛性を確保することができる。また、キャップ本体とカバーの間に隙間を設けることで、両者の間の摩擦を低減し、キャップ本体へのカバーの組み付けを容易化することができる。さらに、滅菌用のガス(蒸気または酸化エチレンガス等)を両者の間に流通させることが可能となるため、滅菌処理を効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、キャップ本体とカバーの間に隙間を設けた場合、両者の間にガタつきが生じるため、シリンジ(外筒)に対する着脱が困難になるという問題があった。具体的には、キャップの着脱の際には外側のカバーを把持する必要があるところ、カバーに対するキャップ本体の位置および姿勢が定まらないため、シリンジの組み立てにおいてキャップを取り付ける際に針管をキャップ本体に適切に穿刺できなかったり、シリンジを使用するためにキャップを取り外す際に誤った方向に力が加えられて使用者の手に針管が誤穿刺されたり、といった問題が生じる可能性があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、取り扱い性を高めることが可能なキャップおよびこれを備えるシリンジを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャップは、針管が穿刺される穿刺部、および前記針管が固定された部材に外嵌される嵌合部を有する有底筒状のキャップ本体と、前記キャップ本体の外周面の少なくとも一部を覆う筒状または有底筒状のカバーと、を備え、前記カバーは、前記キャップ本体の前記穿刺部と前記嵌合部の間における外周面を押圧する押圧部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシリンジは、前記針管が固定された外筒と、前記外筒に取り付けられる本発明のキャップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のキャップおよびシリンジによれば、組み立て性や滅菌処理の効率性を高めながらも、キャップ本体をカバーにより安定的に支持し、針管が固定された部材に対するキャップの着脱を容易化することが可能となるため、取り扱い性を高めることができる。
【0012】
具体的には、押圧部によって穿刺部と嵌合部の間を支持することで、穿刺部と嵌合部のカバーに対する位置ずれを効果的に低減しつつ、その他の部分においてキャップ本体とカバーの間に隙間を設けることができる。これにより、キャップ本体をカバー内に挿入する際の摩擦を低減して組み立て性を向上させると共に、キャップの先端側および後端側からキャップ本体とカバーの間に滅菌用ガスを流入させて効率的に滅菌処理を行うことを可能としながらも、針管が固定された部材に対するキャップの着脱を容易化することができる。
【0013】
また、本発明のキャップにおいて、前記キャップ本体は、嵌合部側に向けて自身の軸心から漸次離隔するように傾斜した傾斜面を外周面に有し、前記押圧部は、前記傾斜面を押圧するように構成されることが好ましい。
【0014】
これによれば、押圧部の支持によりキャップ本体とカバーの軸心のずれを低減するだけでなく、押圧部を介してカバーからキャップ本体に軸方向の力を伝達することが可能となるため、針管が固定された部材へのキャップの取り付けをより容易化することができる。また、キャップの組み立て時に、キャップ本体を後端側からカバー内に挿入することで、押圧部がキャップ本体に接触して摩擦が生じるタイミングを遅らせることが可能となるため、キャップの組み立て性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明のキャップにおいて、前記押圧部は、前記穿刺部よりも前記嵌合部の近傍の前記外周面を押圧する位置に設けられることが好ましい。
【0016】
これによれば、針管が固定された部材に対するキャップの着脱時に比較的大きい抵抗力(摩擦力)が生じる嵌合部を適切に支持すると共に、嵌合部周辺におけるキャップ本体の不要な変形を抑制することが可能となるため、針管が固定された部材に対するキャップの着脱をより容易化することができる。
【0017】
また、本発明のキャップにおいて、前記キャップ本体および前記カバーの一方は、相手側に向けて突出する突出部を有し、前記キャップ本体および前記カバーの他方は、前記突出部の周方向における一部を収容する収容部を有することが好ましい。
【0018】
これによれば、突出部の収容部に収容された部分によってカバーに対するキャップ本体の軸方向の位置決め、抜け止めおよび回転防止、ならびにカバーからキャップ本体への軸方向の力の伝達を可能としつつ、突出部の収容部に収容されていない部分のカバーとの接触によってキャップ本体を支持することが可能となるため、カバーによってキャップ本体をより安定的に支持し、針管が固定された部材に対するキャップの着脱をより容易化することができる。
【0019】
また、本発明のキャップにおいて、前記突出部は、前記嵌合部に対して前記穿刺部とは反対側に設けられることが好ましい。
【0020】
これによれば、突出部の収容部に収容されていない部分の変形を活用して、キャップ本体の針管が固定された部材に対する嵌合力を強めたり、キャップ本体を針管が固定された部材に係止させたりすることが可能となるため、針管が固定された部材に取り付け後のキャップの容易な脱落を防止することができる。また、針管が固定された部材からキャップを取り外す際に加えられる軸方向の力を、突出部の収容部に収容された部分を介して嵌合部の後端側からキャップ本体に伝達することが可能となるため、取り外し時のキャップ本体の伸び変形を抑制することができる。すなわち、針管が固定された部材からのキャップの取り外しを容易化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のキャップおよびこれを備えるシリンジによれば、取り扱い性を高めることが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシリンジの正面図である。
【
図2】Aは、キャップ本体の正面図である。Bは、
図2AのI-I線断面図である。
【
図3】Aは、カバーの正面図である。Bは、
図3AのII-II線断面図である。
【
図5】キャップが取り付けられた状態のシリンジの断面図である。
【
図6】キャップが取り付けられた状態のシリンジの断面図である。
【
図7】AおよびBは、キャップの変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るシリンジ1の正面図である。シリンジ1は、円筒状の外筒10と、外筒10の先端部に固定された針管20と、外筒10の先端部に取り付けられるキャップ30と、を備えている。なお、シリンジ1は、上述の構成に加えてさらに、外筒10の後端側(図の下側)の開口から外筒10内に挿入される押し子(図示省略)と、押し子の先端部に設けられて外筒10の内周面と密着するガスケット(図示省略)と、を備えるものであってもよい。
【0025】
外筒10は、例えばホウケイ酸ガラス等のガラス、または例えば環状ポリオレフィン(COP)等の樹脂からなる円筒状の部材である。外筒10は、内部に薬液等を収容する有底円筒状の胴部11と、胴部11から先端側に向けて突出するように設けられた針管固定部12と、から構成されている。
【0026】
胴部11は、先端側(図の上側)の円盤状の底部11aと、底部11aから後端側(図の下側)に向けて延出する円筒状の筒部11bと、から構成されている。また、筒部11bの後端部には、外周側に向けて延出するフランジ11cが設けられている。
【0027】
針管固定部12は、針管20が固定されると共に、キャップ30が取り付けられる部分である。針管固定部12は、自身の軸心を外筒10の軸心C0と略一致させた状態で、底部11aから先端側に向けて突出するように設けられ、先端側の頭部12aおよび後端側のくびれ部12bからなる段付き円筒状に構成されている。また、針管固定部12には、針管20が挿入される穴である針管挿入部12cと、針管挿入部12cと外筒10の内部空間を繋ぐ流通路12dと、が設けられている。
【0028】
頭部12aは、軸方向において略一定の外径に構成された等径部12a1と、等径部12a1の先端側において先端側に向けて外径が漸次縮小する面取り部12a2と、から構成されている。くびれ部12bは、頭部12aの後端にキャップ30の抜け止め用の係止段差部12a3を形成するための部分であり、先端側に向けて外径が漸次縮小するテーパ状に形成されている。
【0029】
針管挿入部12cは、針管固定部12の先端面12eの中央において外筒10の軸心C0に沿って穿たれた丸穴であり、内径が針管20の外径よりもやや大きい外径に設定されている。流通路12dは、後端側に向けて内径が途中から漸次拡大する漏斗状に構成されている。
【0030】
針管20は、例えばステンレス鋼等の適宜の金属から構成され、先端に鋭利な針先を有している。針管20は、後端部が針管挿入部12c内に挿入されると共に、接着剤による接着等の適宜の手法により針管固定部12に固定されている。従って、針管20は、自身の軸心を軸心C0と略一致させた状態で配置されている。
【0031】
キャップ30は、針管固定部12から突出する針管20を覆い、保護するものである。キャップ30は、内側のキャップ本体31と、キャップ本体31を覆う外側のカバー32と、から構成されている。
【0032】
図2Aは、キャップ本体31の正面図であり、
図2Bは、
図2AのI-I線断面図である。キャップ本体31は、例えばブチルゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材料から構成された段付き有底円筒状の部材である。キャップ本体31は先端側が閉塞されており、この閉塞部分(底部)は、針管20が穿刺される穿刺部31aとなっている。また、キャップ本体31の内側には、針管固定部12に嵌合(外嵌)する嵌合部31bが設けられている。
【0033】
キャップ本体31の先端面31cは、キャップ本体31の軸心C1と略直交するように構成されており、中央部には、平面視が円形の先端凹部31c1が設けられている。この先端凹部31c1は、射出成形のゲート跡を収容し、ゲート跡のバリをキャップ本体31の外側(先端側)に突出させないためのものである。また、キャップ本体31の先端面31cと外周面31dの間には、両者を滑らかに繋ぐ丸み部31eが設けられている。
【0034】
キャップ本体31の外周面31dは、最も先端側の第1外側テーパ部31d1と、第1外側テーパ部31d1の後端側の第2外側テーパ部31d2と、第2外側テーパ部31d2の後端側の第1外側等径部31d3と、最も後端側の第2外側等径部31d4と、から構成されている。また、第1外側等径部31d3と第2外側等径部31d4の間には、外周側(カバー32側)に向けて突出する突出部31fが設けられている。
【0035】
第1外側テーパ部31d1および第2外側テーパ部31d2は、後端側に向けて外径が漸次拡大するように(すなわち、嵌合部31b側に向けて漸次軸心C1から離隔するように傾斜した傾斜面として)構成されており、第2外側テーパ部31d2のテーパ角度は、第1外側テーパ部31d1よりも大きくなっている。また、第1外側等径部31d3および第2外側等径部31d4は、外径が軸方向において略一定に構成されており、第2外側等径部31d4の外径は、第1外側等径部31d3の外径よりも大きくなっている。
【0036】
第1外側テーパ部31d1および第2外側テーパ部31d2は、滑らかに連続するように設けられている。同様に、第2外側テーパ部31d2および第1外側等径部31d3は、滑らかに連続するように設けられている。第1外側テーパ部31d1および第2外側テーパ部31d2のテーパ角度は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1外側テーパ部31d1のテーパ角度を約5°に設定し、第2外側テーパ部31d2のテーパ角度を約18°に設定している。
【0037】
突出部31fは、周方向に連続する幅広のリブ状に構成され、嵌合部31bよりも後端側(穿刺部31aとは反対側)に設けられている。突出部31fの頂面31f1は、軸方向において略一定の外径に構成されている。また、突出部31fの先端面31f2および後端面31f3は、キャップ本体31の軸心C1と直交するように構成されており、頂面31f1と先端面31f2の間には、丸み部31f4が設けられている。
【0038】
キャップ本体31の内周面31gは、最も先端側の第1内側テーパ部31g1と、第1内側テーパ部31g1の後端側の第2内側テーパ部31g2と、第2内側テーパ部31g2の後端側の第1内側等径部31g3と、第1内側等径部31g3の後端側の第2内側等径部31g4と、最も後端側の第3内側等径部31g5と、から構成されている。
【0039】
第1内側テーパ部31g1および第2内側テーパ部31g2は、後端側に向けて外径が漸次拡大するように構成されている。このうち、第1内側テーパ部31g1は、先端側を頂点とする円錐状に構成され、テーパ角度が第2内側テーパ部31g2よりも大きくなっている。また、第1内側等径部31g3、第2内側等径部31g4および第3内側等径部31g5は、内径が軸方向において略一定に構成されており、第2内側等径部31g4の内径は第1内側等径部31g3の内径よりも大きく、第3内側等径部31g5の内径は第2内側等径部31g4の内径よりも大きくなっている。
【0040】
第2内側テーパ部31g2および第1内側等径部31g3は、滑らかに連続するように設けられている。また、第1内側等径部31g3と第2内側等径部31g4の間には、軸心C1と略直交する第1段差面31g6が設けられている。同様に、第2内側等径部31g4と第3内側等径部31g5の間には、軸心C1と略直交する第2段差面31g7が設けられている。そして、第1段差面31g6と第1内側等径部31g3の間には、丸み部31g8が設けられている。
【0041】
第1内側テーパ部31g1は、最も後端側の内径(最大内径)が針管20の外径よりもやや大きく設定され、針管20が穿刺される面である穿刺面31hを構成している。第2内側テーパ部31g2は、針管20の先端を穿刺面31hに向けて誘導するための部分である。本実施形態では、第1内側テーパ部31g1のテーパ角度を約80°に設定し、第2内側テーパ部31g2のテーパ角度を約16.4°に設定している。
【0042】
第1内側等径部31g3は、内径が針管20の外径よりも十分に大きく(本実施形態では、約5倍)設定され、針管20のキャップ本体31内への挿入を容易化している。第2内側等径部31g4は、内径が針管固定部12の頭部12aの等径部12a1の外径よりも小さく(本実施形態では、約90%)設定され、針管固定部12に嵌合する嵌合部31bを構成している。また、第2内側等径部31g4の軸方向寸法は、頭部12aの軸方向寸法よりも大きく(本実施形態では、約1.7倍)設定され、後端側の一部が突出部31fの内側に位置している。
【0043】
第3内側等径部31g5は、内径が第2内側等径部31g4の内径より大きく(本実施形態では、約1.1倍)設定され、針管固定部12のキャップ本体31内への挿入を容易化している。第1段差面31g6は、針管固定部12と軸方向に当接することで、キャップ本体31を外筒10に対して軸方向に位置決めする位置決め部31iを構成している。
【0044】
図3Aは、カバー32の正面図であり、
図3Bは、
図3AのII-II線断面図である。カバー32は、例えばポリプロピレンやポリエチレン等、キャップ本体31よりも硬質な適宜の樹脂から構成された段付き有底円筒状の部材である。カバー32は、先端側に底部32aを備え、この底部32aの中央部には平面視が円形状の先端貫通孔32a1が設けられている。
【0045】
カバー32の外周面32bは、最も先端側の張出部32b1と、張出部32b1の後端側の窪み部32b2と、窪み部32b2の後端側の大径部32b3と、から構成されている。また、窪み部32b2には、4つの滑り止めリブ32cが設けられ、大径部32b3には、2つの収容部32dが設けられている。
【0046】
張出部32b1は、窪み部32b2よりも外周側に張り出した部分であり、底部32aの先端面32a2および窪み部32b2と滑らかに連続する丸みを帯びたフランジ状に構成されている。
【0047】
窪み部32b2は、外径が張出部32b1および大径部32b3よりも小さく設定された部分であり、張出部32b1から大径部32b3に向けて急激に縮径した後に徐々に拡径し、最後に急激に拡径して大径部32b3に滑らかに繋がるように構成されている。換言すると、窪み部32b2は、周方向に連続する幅広の溝状に構成され、後端側に向けて外径が漸次拡大するテーパ状の底面32b21と、張出部32b1から底面32b21に向けて外径が漸次縮小するテーパ状の先端側内壁面32b22と、底面32b21から大径部32b3に向けて外径が漸次拡大するテーパ状の後端側内壁面32b23と、を有している。
【0048】
大径部32b3は、外径が張出部32b1の最大外径よりも大きい部分である。また、大径部32b3の外径は、軸方向において略一定に構成されている。
【0049】
滑り止めリブ32cは、周方向に連続するリブ状に構成されている。滑り止めリブ32cの頂面32c1は、後端側に向けて外径が漸次拡大するテーパ状に構成されている。また、滑り止めリブ32cの先端面32c2および後端面32c3は、軸心C2側に向けて互いに漸次離隔するテーパ状に構成されている。そして、後端面32c3のテーパ角度は先端面32c2のテーパ角度よりも大きく設定されている。
【0050】
滑り止めリブ32cの径方向の突出量(底面32b21からの高さ)は、4つの滑り止めリブ32cにおいて略一定に設定される共に、最も後端側の滑り止めリブ32cが大径部32b3よりも突出しないように設定されている。また、滑り止めリブ32cは、底面32b21と滑らかに連続するように設けられると共に、2つの角部32c4および32c5には、適宜の丸みが設けられている。
【0051】
本実施形態では、滑り止めリブ32cの頂面32c1を後端側に向けて外径が漸次拡大するテーパ状に構成すると共に、後端面32c3のテーパ角度を先端面32c2のテーパ角度よりも大きくすることで、キャップ30を外筒10から取り外す際の滑り止め効果を向上させている。また、これにより、撮んだ際に指が痛くなりにくい形状に滑り止めリブ32cを構成することを可能としている。
【0052】
収容部32dは、突出部31fの一部を収容してキャップ本体31を軸方向に位置決めすると共に、キャップ本体31がカバー32からの脱落を防止する部分である。収容部32dは、カバー32の外周面32bと内周面32eの間で径方向に貫通する貫通孔から構成されており、大径部32b3の後端側において互いに相反する2か所に設けられている。収容部32dは、より具体的には軸心C2に直交する方向に穿たれた矩形断面の貫通孔から構成され、4つの内壁面32d1のうち、互いに対向する内壁面32d1同士が略平行となっている。
【0053】
カバー32の内周面32eは、最も先端側の第1カバー内側テーパ部32e1と、第1カバー内側テーパ部32e1の後端側の第2カバー内側テーパ部32e2と、第2カバー内側テーパ部32e2の後端側のカバー内側等径部32e3と、最も後端側の第3カバー内側テーパ部32e4と、から構成されている。第1カバー内側テーパ部32e1、第2カバー内側テーパ部32e2およびカバー内側等径部32e3は滑らかに連続するように設けられている。また、第1カバー内側テーパ部32e1は、底部32aの後端面32a3と滑らかに連続するように設けられている。
【0054】
第1カバー内側テーパ部32e1および第2カバー内側テーパ部32e2は、後端側に向けて内径が漸次拡大するように構成されている。第1カバー内側テーパ部32e1のテーパ角度は、キャップ本体31の第1外側テーパ部31d1のテーパ角度よりも小さく設定され(本実施形態では、約4°)、第2カバー内側テーパ部32e2のテーパ角度は、キャップ本体31の第2外側テーパ部31d2のテーパ角度よりも大きく設定されている(本実施形態では、約58°)。
【0055】
カバー内側等径部32e3は、内径が軸方向において略一定に構成されている。第3カバー内側テーパ部32e4は、後端側に向けて内径が漸次拡大するように構成されており、第1カバー内側テーパ部32e1のテーパ角度よりも大きく、第2カバー内側テーパ部32e2のテーパ角度よりも小さいテーパ角度に設定されている(本実施形態では、約44°)。
【0056】
第1カバー内側テーパ部32e1および第2カバー内側テーパ部32e2の内径は、第1カバー内側テーパ部32e1の後端部および第2カバー内側テーパ部32e2の先端部が軸方向において部分的にキャップ本体31の対応する位置における外径よりもやや小さくなるように設定されている。そして、カバー内側等径部32e3の内径は、キャップ本体31の第1外側等径部31d3および第2外側等径部31d4の外径よりも大きく設定されている。
【0057】
従って、本実施形態では、キャップ本体31にカバー32を取り付けた場合、第1カバー内側テーパ部32e1の後端部および第2カバー内側テーパ部32e2の先端部が軸方向において部分的にキャップ本体31を外周側から押圧し、カバー32の内周面32eにおけるその他の部分と、キャップ本体31の突出部31f以外の外周面31dとの間には適宜の隙間が生じるようになっている。すなわち、カバー32の第1カバー内側テーパ部32e1の後端部および第2カバー内側テーパ部32e2の先端部は、キャップ本体31の外周面31dを押圧する押圧部32fを構成している。
【0058】
図4AおよびBは、キャップ30の断面図である。なお、
図4Aは、
図2Bおよび
図3Bに相当する断面図であり、
図4Bは、
図4AのIII-III線断面図である。また、
図4AおよびBにおけるキャップ本体31の変形状態は、必ずしも正確なものではない。
【0059】
キャップ30は、軸心C1および軸心C2を略一致させた状態でカバー32内にキャップ本体31が収容された状態、換言すると、キャップ本体の外周面31dおよび先端面31cがカバー32によって覆われた状態となっている。キャップ30の組み立ては、後端側からカバー32内にキャップ本体31を挿入し、突出部31fを一旦全体的に弾性変形させた後に一部を復元させて収容部32d内に収容させることによって行われる。
【0060】
上述のように、キャップ本体31の外周面31dおよびカバー32の内周面32eは、先端側が小径となったテーパ状の部分を備えると共に、適宜の隙間が生じるように構成されているため、引っ掛かり等が生じることなく容易にキャップ本体31をカバー32内に挿入することが可能となっている。また、突出部31fに設けられた丸み部31f4、およびカバー32の第3カバー内側テーパ部32e4により、突出部31fを容易に弾性変形させつつカバー32内に押し込むことが可能となっている。
【0061】
突出部31fの周方向における一部(2か所)を収容部32d内に収容させることで(
図4A参照)、キャップ本体31がカバー32に対して軸方向に位置決めされ、これによりキャップ30の組み立てが完了する。なお、本実施形態では、突出部31fの軸方向寸法を収容部32dの軸方向寸法よりも小さくすることで、カバー32に対するキャップ本体31の軸方向位置にある程度の自由度を持たせている。すなわち、突出部31fの先端面31f2および後端面31f3と収容部32dの内壁面32d1の間には隙間が生じ得るようになっている。
【0062】
突出部31fの一部が収容部32d内に収容された状態では、キャップ本体31の第2外側テーパ部31d2がカバー32の押圧部32fに押圧され、第2外側テーパ部31d2とカバー32の押圧部32fが接触(密着)した状態となっている。これにより、キャップ本体31は、カバー32によって適宜に支持されることとなり、キャップ本体31とカバー32の間のガタつきが抑制されるようになっている。
【0063】
さらにこのとき、突出部31fのうち収容部32d内に収容されていない部分は、外径が縮小するように弾性変形し、その復元力により頂面31f1がカバー内側等径部32e3に接触(密着)した状態となる(
図4B参照)。すなわち、本実施形態では、嵌合部31bよりも先端側および後端側の2か所においてキャップ本体31がカバー32に支持され、それ以外の部分ではキャップ本体31とカバー32の間に隙間が生じ得るようになっている。
【0064】
このようにすることで、滅菌用のガスをキャップ本体31とカバー32の間に流入させることができるため、キャップ30の各部に滅菌用ガスを十分に行き渡らせ、滅菌処理を効率的に行うことが可能となる。そして、効率的な滅菌処理を可能としながらも、キャップ本体31とカバー32の間のガタつきを低減することができるため、シリンジ1の組み立て時および使用時におけるキャップ30の操作性を高めることが可能となる。
【0065】
具体的に本実施形態では、カバー32の先端貫通孔32a1、後端側の開口および収容部32dから滅菌用のガスをキャップ本体31とカバー32の間に流入させることが可能となっている。また、針管固定部12に嵌合して外筒10に支持される部分である嵌合部31bよりも先端側および後端側でキャップ本体31を支持することで、ガタつきをより効果的に低減することがなっている。
【0066】
なお、押圧部32fは環状であることから、第2外側テーパ部31d2と押圧部32fは、周方向の全範囲に亘って接触(密着)するようになっている。本実施形態では、環状の押圧部32fをキャップ30の軸方向における中間位置の近傍、特に先端貫通孔32a1と収容部32dの間に設けることで、滅菌用ガスの流入を阻害することなくキャップ本体31の確実な支持を可能としている。一方、キャップ30の後端側に位置する突出部31fの頂面31f1とカバー内側等径部32e3は、周方向の一部(2か所)が接触(密着)するようになっており、キャップ30の後端側からの滅菌用ガスの流入と支持を両立させている。
【0067】
また、本実施形態では、突出部31fを周方向に連続するリブ状に構成し、突出部31fの周方向の一部を収容部32d内に収容させるようにすることで、キャップ30の組み立て時におけるキャップ本体31とカバー32の周方向の位置決めを不要としながらも、組み立て後のカバー32に対するキャップ本体31の軸方向の位置決め、カバー32からの脱落防止、およびカバー32に対する軸心C1、C2周りの回転防止を可能にすると共に、キャップ本体31をより安定的に支持することを可能としている。
【0068】
突出部31fのカバー内側等径部32e3と接触している部分の内側は、嵌合部31b(第2内側等径部31g4)の後端側において周方向の一部(2か所)が、部分的に内径が縮小するように弾性変形している。すなわち、嵌合部31bの後端側は、キャップ本体31がカバー32と組み合わせられることによって嵌合力が高められており、強嵌合部31b1を構成している。
【0069】
図5および6は、キャップ30が取り付けられた状態のシリンジ1の断面図である。なお、
図5は、
図4Bに相当する断面図であり、
図6は、
図5のIV-IV線断面図である。また、
図5および6におけるキャップ本体31の変形状態は、必ずしも正確なものではない。
【0070】
シリンジ1の組み立て時における外筒10へのキャップ30の取り付けは、後端側から針管20および針管固定部12をキャップ本体31内に挿入し、嵌合部31bを針管固定部12に嵌合させつつ、針管20を穿刺部31aに穿刺することによって行われる。なお、本実施形態では、嵌合部31b内に針管固定部12の頭部12aが進入した後に針管20が穿刺部31aに穿刺されるようにキャップ本体31の軸方向寸法を設定している。
【0071】
頭部12aの先端側には面取り部12a2が設けられているため、頭部12aの嵌合部31b内への挿入は容易に行うことができる。頭部12aに嵌合部31bが嵌合することで、外筒10の軸心C0がキャップ本体31の軸心C1およびカバー32の軸心C2と略一致した状態となり、嵌合部31bを弾性変形させながら頭部12aの挿入を継続することで、針管20の先端が穿刺面31hに到達して針管20が穿刺部31aに穿刺される。
【0072】
針管20が傾く等してその軸心がキャップ本体31の軸心C1に対して多少ずれていた場合にも、針管20の先端は、第2内側テーパ部31g2によって穿刺面31hへ誘導されることとなる。このとき、押圧部32fよりも先端側のキャップ本体31とカバー32の間には隙間が生じていることから、穿刺部31aは径方向への移動の自由度を有しており、針管20やキャップ本体31等に無理な力を加えることなく、針管20の先端を穿刺面31hに誘導することが可能となっている。
【0073】
針管20の穿刺部31aへの穿刺後、針管固定部12の先端面12eがキャップ本体31の位置決め部31iに当接することで、キャップ30が外筒10に対して軸方向に位置決めされ、キャップ30の取り付けが完了する。この状態では、強嵌合部31b1は、針管固定部12のくびれ部12bに嵌合し、頭部12aとくびれ部12bの間の係止段差部12a3が嵌合部31bに係止することなる(
図6参照)。これにより、外筒10からのキャップ30の容易な脱落が防止される。
【0074】
キャップ30が取り付けられることで、針管20は、先端の開口が閉塞されると共に、外筒10から突出した部分がキャップ本体31および針管固定部12によって密閉された空間内に収容され、外力や汚染等から保護された状態となる。
【0075】
上述のようにキャップ本体31はカバー32によって安定的に支持されているため、カバー32を適宜に把持するだけで、キャップ30を容易に外筒10に取り付けることが可能となっている。
【0076】
特に本実施形態では、押圧部32fによってキャップ本体31における穿刺部31aと嵌合部31bの間を支持しているため、カバー32に対するキャップ本体31の傾きに伴う穿刺部31aおよび嵌合部31bの径方向の位置ずれを低減し、針管固定部12への嵌合部31bの嵌合から穿刺部31aへの針管20の穿刺までを、カバー32を把持した状態でスムーズに行うことが可能となってる。また、嵌合部31bの嵌合時における弾性変形および穿刺部31aの穿刺時における弾性変形が押圧部32fによって阻害されないため、カバーによるキャップ本体31の支持を可能としながらも、キャップ30の取り付け時の抵抗力が過大とならないようになっている。
【0077】
また、本実施形態では、後端側に向けて外径が拡大するテーパ状の第2外側テーパ部31d2に接触するように押圧部32fを設けているため、押圧部32fを介してカバー32からキャップ本体31に軸方向の力を伝達することが可能となっている。これにより、カバー32に加えられた軸方向の力を効率的にキャップ本体31に伝達し、嵌合および穿刺に伴う抵抗力(摩擦力)に抗してスムーズにキャップ30の取り付けを行うことができる。
【0078】
特に本実施形態では、押圧部32fを穿刺部31aと嵌合部31bの間、すなわち嵌合部31bよりも先端側となる位置に設けると共に、穿刺部31aよりも嵌合部31bの近傍となる位置に設けているため、キャップ本体31の撓み変形等を抑制しつつ、嵌合時の比較的大きい抵抗力に抗して、スムーズに嵌合部31bを針管固定部12に嵌合させることが可能となっている。
【0079】
さらに、本実施形態では、キャップ本体31は突出部31fの一部を介してもカバー32に支持されているため、カバー32に対するキャップ本体31の移動や傾きがより制限されるようになっている。また、突出部31fの一部が収容部32d内に収容されることで、収容部32dの内壁面32d1を介してカバー32からキャップ本体31に軸方向の力が伝達されると共に、カバー32に対するキャップ本体31の軸心C1、C2周りの回転が防止されるようになっている。従って、外筒10へのキャップ30の取り付けは、より容易なものとなっている。
【0080】
また、本実施形態では、収容部32d内に収容されない突出部31fの構成を活用して強嵌合部31b1を生成しているため、キャップ30の外筒10からの容易な脱落を防止しながらも、キャップ本体31およびカバー32をシンプルな形状に構成することを可能としている。これにより、キャップ本体31およびカバー32の製造コストを低減するだけでなく、キャップ本体31へのカバー32の取り付け、および外筒10へのキャップ30の取り付けをより容易化することが可能となる。
【0081】
キャップ30は、シリンジ1を使用する際に外筒10から取り外される。このとき、医師や看護師等の使用者は、カバー32を把持してキャップ30を外筒10から先端側に離隔させる方向に引っ張り、これによりキャップ30を取り外すこととなる。上述のようにキャップ本体31はカバー32によって安定的に支持されているため、使用者はカバー32を適宜に把持するだけで、キャップ30を容易に外筒10から取り外すことができる。
【0082】
キャップ30の取り外し時にカバー32に加えられる力は、収容部32dの内壁面32d1を介してキャップ本体31に伝達される。本実施形態では、突出部31fの後端面31f3を嵌合部31bよりも後端側に設けることで、キャップ本体31の伸び変形を防止し、キャップ30の取り外しを容易化している。
【0083】
従って、使用者は比較的少ない力でキャップ30を取り外すことが可能であり、また、余計な力が誤った方向に加えられるといった事態も防止されるようになっている。これにより、本実施形態では、キャップ30の取り外し時における針管20の指先等への誤穿刺の可能性を低減し、シリンジ1の安全性を高めている。
【0084】
さらに、本実施形態では、滑り止めリブ32cの頂面32c1、先端面32c2および後端面32c3の傾斜角度を工夫することで、滑り止め効果を高めているため、使用者はカバー32を確実に把持して適切に力を加えることが可能となっている。これにより、シリンジ1の安全性は、より高められている。
【0085】
また、滑り止めリブ32cの形状を工夫することで、窪み部32b2の底面32b21を先細りのテーパ状に構成しながらも、必要な滑り止め効果を得ることが可能となる。これにより、本実施形態では、カバー32の内周面32eにテーパ状の第1カバー内側テーパ部32e1を設けながらも、カバー32の肉厚変化を低減し、ヒケやボイドといった樹脂成形時の成形不良の発生を防止している。
【0086】
シリンジ1の使用後、安全性の観点から、キャップ30は使用者によって再度外筒10に取り付けられることとなるが、このときも組み立て時と同様に、カバー32を把持して容易に取り付けを行うことができる。また、取り付け後のキャップ30は、強嵌合部31b1によって外筒10からの脱落が適切に防止されるため、シリンジ1は、廃棄する際にも特別な措置等を必要としないものとなっている。
【0087】
このように、本実施形態のキャップ30およびシリンジ1は、組み立て時および使用時のいずれにおいても容易にキャップ30を外筒10に対して着脱可能であり、取り扱い性および安全性に優れたものとなっている。
【0088】
次に、キャップ30の変形例について説明する。
図7AおよびB、ならびに
図8は、キャップ30の変形例を示した断面図である。なお、
図7Aは、
図3Bに相当する断面図であり、
図7Bは、
図7AのV-V線断面図である。また、
図8は、
図2Bおよび
図3Bに相当する断面図である。
【0089】
図7AおよびBは、キャップ30において強嵌合部31b1の嵌合力を弱めた場合のカバー32の一例を示している。具体的にこの例では、カバー内側等径部32e3における2つの収容部32dの間およびその後方の領域に、矩形状の凹部32gを設けている。換言すると、この例では、カバー内側等径部32e3における収容部32dの先端側の内壁面32d1よりも後端側の内径を拡大すると共に、2つの収容部32dの後端側に突出部31fの後端面31f3と当接する突起32hを設けている。
【0090】
このようにすることで、キャップ本体31と組み合わせた場合の突出部31fの弾性変形量を低減し、強嵌合部31b1における嵌合力を弱めることが可能となる。これにより、キャップ30の外筒10からの取り外しに必要な力を低減し、キャップ30およびシリンジ1の取り扱い性をさらに高めることが可能となる。なお、凹部32gの深さ(凹部32gにおける内径)を適宜に設定することで、キャップ30の不用意な脱落を防止しつつ、取り外しやすくすることが可能であることは言うまでもない。
【0091】
図8は、針管20の針管固定部12からの突出量に応じて軸方向寸法を延長した場合のキャップ30の一例を示している。具体的にこの例では、キャップ本体31の第1外側テーパ部31d1および第1内側等径部31g3の軸方向寸法を延長している。そして、カバー32においては、キャップ本体31の軸方向寸法の増加に合わせて、窪み部32b2の底面32b21および第1カバー内側テーパ部32e1の軸方向寸法を延長すると共に、滑り止めリブ32cの個数を6つに増やしている。
【0092】
外筒10の備える針管20の突出量に合わせて、このようにキャップ本体31およびカバー32の各部の寸法を調整し、穿刺部31a、嵌合部31b、突出部31f、押圧部32f、および収容部32dの位置関係を維持することで、キャップ本体31をカバー32によって安定的に支持することができるため、キャップ30およびシリンジ1の取り扱い性および安全性を高めることが可能となる。
【0093】
なお、
図8に示す例では、穿刺部31aの軸方向寸法を僅かに短縮することで、キャップ30の軸方向寸法を適宜に調整している。また、
図8に示す例において、凹部32g(突起32h)を設けてもよいことは言うまでもない。
【0094】
その他、図示は省略するが、キャップ本体31は、外周面31dに多角錐台状や多角柱状の部分を備えるものであってもよく、押圧部32fと接触する突起やリブ等を備えるものであってもよい。また、外周面31dのうち押圧部32fと接触する部分は、軸心C1と略平行な面であってもよく、さらにこの場合、押圧部32fと接触する部分の後端側にカバー32と軸方向に当接可能な段差部を設けるようにしてもよい。また、キャップ本体31は、自身の形状から強嵌合部31b1が構成されるものであってもよいし、強嵌合部31b1を備えないものであってもよい。
【0095】
また、カバー32は、キャップ本体31の外周面31dの少なくとも一部を覆うものであればよく、底部32aを備えないものであってもよい。カバー32はまた、押圧部32fのみによってキャップ本体31を支持するものであってもよい。また、押圧部32fは、複数が軸方向に配列されるものであってもよいし、周方向において断続的に設けられるものであってもよい。
【0096】
また、突出部31fは周方向の一部を占めるブロック状のものであってもよいし、収容部32dはカバー32の内周面32eに設けられる窪みであってもよい。また、キャップ本体31に収容部32dを設け、カバー32に突出部31fを設けるようにしてもよい。また、突出部31fは、周方向の全部が収容部32d内に収容されるものであってもよい。また、突出部31fおよび収容部32dの配置は、特に限定されるものではなく、キャップ30における任意の位置に配置することができる。また、突出部31fおよび収容部32d以外の既知の構成によってキャップ本体31の軸方向の位置決めおよび抜け止めを行うようにしてもよい。
【0097】
また、シリンジ1は、針管20が固定された針基(針ハブ)がコネクタを介して外筒10に接続されるものであってもよく、キャップ30は、コネクタを備える針基に取り付けられるものであってもよい。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のキャップおよびこれを備えるシリンジは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、シリンジ1の各部の形状および配置は、上述の実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。
【0099】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0100】
1 シリンジ
10 外筒
20 針管
30 キャップ
31 キャップ本体
31a 穿刺部
31b 嵌合部
31d キャップ本体の外周面
31d2 第2外側テーパ部
31f 突出部
32 カバー
32d 収容部
32f 押圧部