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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008045
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】吊下げ式収納システム
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20230112BHJP
   A47B 77/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A47B97/00 A
A47B97/00 C
A47B77/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111286
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【テーマコード(参考)】
3B260
【Fターム(参考)】
3B260EA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収容家具の吊下げ位置、吊下げ高さの制約を受けず、さらに室内に特段の加工を施すことなく設置できる吊下げ式収納システムを提供する。
【解決手段】吊下げ収納システム1は、室内100に設けられており、収納家具31,32が吊具を介して骨組構造10に吊下げられている構成である。骨組構造10は、一対の支持フレーム11、11に8本の横梁15が所定間隔Lを開けて平行に架け渡されている。収納家具31は、吊具を介して横梁15に接続している。収納家具32は、変位拘束部材60に接続し、変位拘束部材60は吊具を介して横梁15に接続している。収納家具31は、天井160近傍の高い位置に設けられ、下端は人が下を通過しても頭が当たらない程度の高さが確保されている。収納家具32は、変位拘束部材60を接続することで、収納物が出し入れしやすい高さに設けられ、下端は掃除ロボットが通過できる空間が確保されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設けられた骨組構造と、
前記骨組構造に装着された4個以上の吊具と、
前記吊具を介して前記骨組構造に吊下げられる収納家具と、を備えることを特徴とする吊下げ式収納システム。
【請求項2】
前記吊具は、所定間隔でかつ平行に縦横に延びる複数の仮想直線の交点の位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項3】
前記骨組構造は、一対の支持フレームと、所定間隔で前記一対の支持フレームに架け渡されて、前記吊具を装着する複数の横梁とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項4】
前記骨組構造は、前記一対の支持フレームと、前記一対の支持フレームに架け渡される複数の横梁と、前記横梁を介して前記一対の支持フレームに所定間隔で支持される複数のハンガーレールを有し、前記吊具は前記ハンガーレールに沿ってスライド可能に連結することを特徴とする請求項1に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項5】
前記収納家具は、変位拘束部材を介して前記吊具と着脱可能に連結し、
前記変位拘束部材は、環状に設けられた側板と、前記側板に外縁端が接触するダイヤフラム板と、を有し、
前記側板と、前記ダイヤフラム板は協働して前記収納家具の側方変位および回転変位を拘束することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項6】
前記側板、および前記ダイヤフラム板は、規則的に配列されたセル層が形成された紙製のコア材を、紙製のシートが挟持した構造であることを特徴とする請求項5に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項7】
前記吊具は、前記収納家具を防振するための防振部を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の吊下げ式収納システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納家具を吊下げて使用する吊下げ式収納システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震に起因する家具の振動、移動、転倒の防止を目的として様々な対策が講じられている。対策の一つとして家具を吊下げ支持することが提案されている。
【0003】
特許文献1では、什器または機器類は、構造物に固定された部材から吊り部材によって吊下げ支持され、吊り部材の長さは調整されて、什器または機器類の固有周期が地震動の卓越周期帯域から外れるように、吊り下げ支点から什器または機器類の重心間の長さが設定されている発明が提案されている。
【0004】
特許文献2では、地震発生時に家具を吊持することにより家具の重心バランスをとりつつ、震動の大きさに応じた家具の段階的な傾斜を可能とし、家具の前倒防止を図れる転倒防止装置が提案されている。壁面または天井に設けられた滑車を支点として、家具の天面に配置された第1点と第2点とで家具を吊持する吊持部と、床に配置された下架台部と、家具の底面に配置され、下架台部上を傾斜しながら前方向に摺動する上架台部と、を備え、上架台部は後方向への揺り戻しを規制する第1の規制部を有し、下架台部は第1の規制部に係合する第1の規制面を前後方向に複数有し、吊持部は上架台部の傾斜に応じて、滑車から第1点までの距離と、滑車から第2点までの距離との比率を変化させる発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-183993号公報
【特許文献2】特開2018-117996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案されている発明は、吊り下げ支点から什器または機器類の重心間の長さを什器または機器類の固有周期が地震動の卓越周期帯域から外れるように設定する必要があることから、吊下げる什器の重量、吊下げ位置に一定の制約が課される。特許文献2で提案されている発明は、天井と床面の双方で家具を支持する必要があることから、吊下げる家具は、上部架台および下部架台を介して床面に接する状態となる。したがって、吊下げる家具の高さは、一定の制約を受けることとなる。
【0007】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、収容家具の吊下げ位置、吊下げ高さの制約を受けず、さらに室内に特段の加工を施すことなく設置できる吊下げ式収納システム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための発明は、吊下げ式収納システムであって、室内に設けられた骨組構造と、骨組構造に装着された4個以上の吊具と、吊具を介して骨組構造に吊下げられる収納家具を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、室内に設けられた骨組構造と、骨組構造に装着された4個以上の吊具と、吊具を介して骨組構造に吊下げられる収納家具を備えるので、室内の壁や天井に特段の加工を施すことなく、吊具を配置できる。すなわち、既存の住居を傷つけることなく、室内に吊下げ式収納システムを構築できる。
【0010】
ここでいう収納家具とは、家財道具や服飾品、食品などを整理して収納するための家具であって、具体的には、衣類や小物を保管するために用いる箪笥類や、本棚、戸棚、食器棚、下駄箱などである。
【0011】
好ましくは、吊具は、所定間隔でかつ平行に縦横に延びる複数の仮想直線の交点の位置に配置されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、吊具は、所定の間隔で、かつ平行に縦横に延びる複数の仮想直線の交点の位置に配置される。すなわち格子の交点の位置に所定間隔を開けて規則的に配置されるので、吊具の取付範囲、取付の間隔を適宜設定することで、収納家具の好適な規格化ができて、しかも、取付位置も制約を受けることはない。
【0013】
好ましくは、骨組構造は、一対の支持フレームと、所定間隔で一対の支持フレームに架け渡されて、吊具を装着する複数の横梁とを有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、骨組構造は、一対の支持フレームと、所定間隔で一対の支持フレームに架け渡されて、吊具を装着する複数の横梁とを有するので、吊具を所定間隔で横梁に装着することで、骨組構造を構成する部材の種類を少なくすることができる。
【0015】
好ましくは、骨組構造は、一対の支持フレームと、一対の支持フレームに架け渡される複数の横梁と、横梁を介して一対の支持フレームに所定間隔で支持される複数のハンガーレールを有し、吊具はハンガーレールに沿ってスライド可能に連結することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ハンガーレールの延びる方向に沿って任意の位置に、簡単に収納家具を配置できる。
【0017】
好ましくは、収納家具は、変位拘束部材を介して吊具と着脱可能に連結し、変位拘束部材は、環状に設けられた側板と、側板に外縁端が接触するダイヤフラム板を有し、側板と、ダイヤフラム板は協働して収納家具の側方変位および回転変位を拘束することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、収納家具は、変位拘束部材を介して吊具と着脱可能に連結するので、変位拘束部材の高さを適切に選定することによって、収納家具の取付高さを自由に設定できる。また、側板と、ダイヤフラム板は協働して収納家具の側方変位及び回転変位を拘束するので、地震に起因する、また通常時における収納家具の変位を抑制できる。
【0019】
好ましくは、側板、およびダイヤフラム板は、規則的に配列されたセル層が形成された紙製のコア材を、紙製のシートが挟持した構造であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、側板、およびダイヤフラム板は、規則的に配列されたセル層が形成された紙製のコア材を、紙製のシートが挟持した構造であるので、所定の強度を確保した上で、変位拘束部材の軽量化を図ることができる。
【0021】
好ましくは、吊具は、収納家具を防振するための防振部を有することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、吊具は、防振部を有するので、地震に起因する収納家具の変位を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1における吊下げ式収納システムの平面図である。
図2】同、側面断面図及び変位拘束部材の拡大図である。
図3】(a)は、支柱と受梁の接合部分の部分正面断面図である。(b)は、同、部分側面断面図である。
図4】(a)は、受梁と横梁の接合部分の部分正面断面図である。(b)は、同、部分側面断面図である。
図5】(a)は、吊具が横梁に装着された状態を説明する部分正面図である。(b)は、同、部分側面断面図である。
図6】収納家具の斜視図である。
図7】変位拘束部材の分解斜視図である。
図8】側板、ダイヤフラム板の構造を説明する斜視図である。
図9】実施形態2におけるハンガーレールの配置図である。
図10】同、吊具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1~8を参照して、本発明の実施形態1を詳述する。
【0025】
図1、2に示す通り、吊下げ式収納システム1は、室内100に設けられており、収納家具31,32が吊具20を介して骨組構造10に吊下げられている構成である。骨組構造10は、一対の支持フレーム11、11に8本の横梁15が所定間隔Lを開けて平行に架け渡されている。
【0026】
室内100は、住居の1室であり、出入りのための扉110と、外部空間に接する窓120が対向する位置に設けられている。
【0027】
支持フレーム11は、2本の支柱13の上端部に受梁12が架け渡された門型の部材である。受梁12は、8本の横梁15を、所定間隔Lを開けて固定している。
【0028】
横梁15は、吊具20が、所定間隔Lを開けて装着されている。これにより吊具20は、所定間隔Lで縦横に平行に延びる仮想直線H1、V1が交差する位置に設けられる。吊具20は、1つの収納家具の四隅を支持できる数、すなわち4個以上有することが好ましい。より好ましくは、2つ以上の収納家具を四隅で支持できる8個以上有することである。なお、所定間隔Lとは、収納家具を吊下げるために必要な最小間隔である。したがって収納家具は、所定間隔Lあるいは所定間隔Lの倍数の距離で吊り下げられる。
【0029】
仮想直線H1は壁面151と平行、かつ等間隔な複数の仮想直線で構成され、仮想直線V1は、壁面150と平行、かつ等間隔な複数の仮想直線で構成されている。また、仮想直線H1と、仮想直線V1は直交している。
【0030】
支柱13は、室内100の四隅に配置されている。図2に示す通り、支柱13は、一端13aが床170に載置され、一端13aから天井160に向かって垂直に延びており、他端13bが天井160の近傍に位置している。また、受梁12は、他端13bで支柱13に固定されている。
【0031】
受梁12には、8本の横梁15が所定間隔Lを開けて固定されている。横梁15は、7個の吊具20が所定間隔Lを開けて装着されている。横梁15は2本以上設けることが好ましいが、吊下げる収納家具、個室の大きさを勘案して適宜定めればよい。
【0032】
収納家具31は、吊具20を介して横梁15に接続している。また、収納家具32は、変位拘束部材60に接続し、変位拘束部材60は吊具20を介して横梁15に接続している。収納家具31は、天井160近傍の高い位置に設けられ、下端面は人が直下を通過しても頭が当たらない程度の高さが確保されている。収納家具32は、変位拘束部材60を接続することで、収納物が出し入れしやすい高さに設けられ、下端面は掃除ロボットが通過できる空間が確保される程度の高さが確保されている。
【0033】
図3(a)、(b)に示す通り、受梁12は、支柱13の上端に設けられた連結部材16と連結している。連結部材16は支柱13に固定される底板17と、底板の縁端から天井160の方向に延びる側板18、19を有している。側板18は壁面150に対向して設けられ、側板19は壁面151に対向して設けられている。側板19に設けられた凸部19aと横梁15の端部に設けられた嵌合孔12aが嵌合するとともに、受梁12のウェブ40aと側板18がボルト41で接合されることで、支柱13と受梁12は強固に連結する。
【0034】
図4(a)、(b)に示す通り、横梁15は端部15aを有するコ字形断面の部材であり、受梁12は、ウェブ40a、40bを有する箱断面の部材である。端部15aとウェブ40bは、ボルト42で接合されている。
【0035】
図5(a)、(b)に示す通り、コ字形断面の横梁15は、底板15bに吊具20が所定間隔Lを開けて装着されている。
【0036】
吊具20は、防振ゴム21、接続金具24、および連結部材23を有している。防振ゴム21は、円筒形状であり下端は底板15bに固定されて、防振ゴム21の上端は接続金具24の上端部に接続している。接続金具24の中間部は、円筒形状の防振ゴム21の空洞部分に摺動可能に挿入されている。また、接続金具24の下端は連結部材23と連結している。連結部材23は雌ネジ23aが切られた略円筒形の部材であり、接続金具24を介して防振ゴム21に固定されている。これにより、防振ゴム21の伸縮に伴って、連結部材23は防振機能を具備した状態で上下方向に移動する。
【0037】
図6に示す通り、収納家具31は、棚55が適宜設けられるとともに、観音開きの扉54が設けられている。また、四隅近傍から上方に向かって突設する連結ロット52が固定されている。連結ロット52の先端部は、連結ネジ51を軸支している。連結ネジ51は、雌ネジ23aに螺合する雄ネジ51aが切られている。連結ネジ51を回動することで、雄ネジ51aと、雌ネジ23aは螺合する。これにより、収納家具31は、吊具20を介して骨組構造10に固定される。図2に示す通り、収納家具32は、四隅近傍から上方に向かって突設する連結ロット56が固定されている。連結ロット56の先端部は、連結ネジ53を軸支している。連結ネジ53は、雄ネジ51aと同じ構造となる雄ネジ53aが切られている。
【0038】
図7に示す通り、変位拘束部材60は、梯子形状の一対のフレーム61、61と、側板62と、2枚のダイヤフラム板63で構成されている。フレーム61は、円筒形の棒部材を梯子状に組立て、上端に、連結ネジ51と同様の構造である連結ネジ64を軸支し、また、下端に、連結部材23と同様の構造である連結部材65を固定した構成となっている。
【0039】
環状に設けられた側板62は、4個の平板62a、62b、62c、62dで構成され、それぞれがフレーム61に着脱可能に連結されている。
【0040】
2枚のダイヤフラム板63は、4個の平板62a、62b、62c、62dの上縁端、または下縁端に当接する状態で、フレーム61に着脱可能に連結されている。
【0041】
側板62、およびダイヤフラム板63は、紙製のサンドイッチパネル構造であることが好ましい。具体的には、図8に示す通り、規則的に配列されたハニカム形状のセル71aが形成された紙製のコア材71を、紙製のシート72が挟持した構造である。これにより、所定の強度を確保した上で、側板62、ダイヤフラム板63の軽量化が図れるので、大きな労力を要することなく簡単に吊具20と接続することができる。
【0042】
本実施形態1では、ダイヤフラム板を2枚取り付けたが、1枚であってもよく、また3枚以上であってもよい。
【0043】
ここで、変位拘束部材60の組立手順について説明する。
【0044】
平板62b、62dを取り付けた一対のフレーム61、61を所定の間隔で吊具20に取り付ける。取付は、連結部材23に切られた雌ネジ23aと、フレーム61に軸支される連結ネジ64に切られた雄ネジ64aを螺合することで、フレーム61と、吊具20は連結する。ダイヤフラム板63、平板62a、62cをフレーム61に順次取付けることで、変位拘束部材60は、吊具20を介して骨組構造10に固定される。
【0045】
収納家具32を骨組構造10から吊下げるときは、ワイヤーを用いるのが一般的である。しかし、吊下げられた収納家具32は、常時揺れることから、揺れを抑制するためにワイヤーを斜めに張り渡す必要がある。この場合、ワイヤーを斜めに張り渡す空間を確保する必要があることから、収納家具32の吊下げ位置はワイヤーを斜めに張り渡す空間を確保できる位置に限定される。
【0046】
一方で、本実施形態1のように変位拘束部材60を介して収納家具32を骨組構造10に吊下げたときは、変位拘束部材60によって収納家具32の側方変位が拘束されるので、吊下げ部材が配置される位置であればいずれの場所でも吊下げできる。すなわち、骨組構造10の全体に渡って規則的に吊具20を配置することで収納家具32は、吊下げ位置の制約を受けることはない。
【0047】
また、ワイヤーを斜めに張り渡して収納家具32を吊下げた状態では、地震が発生した場合、地震の横揺れによって、それぞれのワイヤーの張力差が大きくなる。そのため、収納家具32は大きく横揺れする。
【0048】
一方で、変位拘束部材60を介して収納家具32を骨組構造10に吊下げたときは、地震力によって変位拘束部材60は変形し、これに伴って収納家具32は変位しようとする。しかし、地震力が発生したとき、側板62、ダイヤフラム板63のそれぞれは、斜めに変形することで、協働して地震力に抗する。側板62、ダイヤフラム板63のような平板は大きなせん断剛性を具備していることから変位拘束部材60の側方への変形は軽微となる。また、縦揺れに対しては、防振ゴム21で衝撃が緩和されて大きな揺れを生じることはない。
【0049】
本実施形態1では、複数の収納家具を直接、または変位拘束部材を介して吊具に吊下げることができる。また、壁に沿って吊下げてもよいし、室内の中央に吊下げてもよい。すなわち、吊下げる収納家具の個数、大きさ、位置、および吊下げ方法を適宜適切に選定することで、利便性にすぐれた吊下げ式収納システムを構築できる。
【0050】
収納家具を床に設置した状態で部屋を掃除する場合は、収納家具と床との隙間は収納家具の取り付けられた脚部が支障になり、掃除が行き届かない領域が生じることがある。しかし、本実施形態1で例示した骨組構造、収納家具、変位拘束部材等を用いて吊下げ式収納システムを構築する場合は、収納家具と床との間に所定の隙間を設けることができるので、掃除ロボットによって、部屋全体を余すことなく清掃できる。
【0051】
また、床に直置きすると室内の移動に障害となるもの、例えば雑誌、新聞、書類、趣味で使用する道具類などは、すべて吊下げ式収納システムに収容できることから、小さな子供がいる家庭では、子供を、室内で安全に遊ばせることができる。
【0052】
実施形態2について、図9、10を参照して説明する。実施形態1と実施形態2は、ほぼ同じ構成となる部分が多いことから、主に相違する構成について説明する。実施形態1と同一の構成については、同様の符号を付し、異なる構成については200番台の符号を付す。
【0053】
図9に示す通り、吊下げ式収納システム201は、骨組構造10に連結するハンガーレール270に収納家具31、32が吊下げられる構造である。7本のハンガーレール270は一定の間隔を保って壁面150に平行な状態で、骨組構造10を構成する横梁15に装着されている。収納家具31、32は、収容筐体221に収容された吊具20を介してハンガーレール270に接続している。ハンガーレールの本数、ハンガーレール間の間隔、および位置は、吊下げる収納家具を勘案して適宜定めればよい。
【0054】
図10に示す通り、吊具20は、収容筐体221に収容されている。収容筐体221は、吊下げロッド213に軸支されており、吊下げロッド213は、ハンガーレール270の内部空間を転動するローラー271に接続している。これにより、吊下げ部材210は、ハンガーレール270が伸びる方向に移動できる。
【0055】
吊下げロッド213には雄ネジ213aが切られている。収容筐体221の上端部は、雄ネジ213aに螺合する調整ナット22を有している。調整ナット22を回動することで、収容筐体221は、雄ネジ213aに沿って転動しながら上下方向に移動する。調整ナット22を回動して収容筐体221を上方向に移動させることで、収容筐体221とハンガーレール270は圧縮力が負荷された状態で接触する。このときに生じる摩擦力によって、ローラー271にブレーキがかかった状態となり、転動は制限される。これにより吊下げ部材210の移動は制限される。また、調整ナット22を回動して収容筐体221を下方向に移動させ、収容筐体221とハンガーレール270の接触状態を解放することで、ローラー271はハンガーレール270に沿って転動できて、ローラー271はハンガーレール270に沿って移動できる。
【0056】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、収納家具を、変位拘束部材と同様の素材を用いて、組立分解できる構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の吊下げ式収納システムは、歩行に支障となる障害物を床に置く必要がなくなることから、足の不自由な方々、例えば車椅子での移動を余儀なくされる方々の移動の負担を軽減できる。また、空間の効率的な活用が可能となり、特に賃貸アパートに適用することで他の賃貸アパートとの差別化を図ることができることから、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0058】
1:吊下げ式収納システム
10:骨組構造
11:支持フレーム
15:横梁
20:吊具
21:防振ゴム(防振部)
31、32:収納家具
60:変位拘束部材
62:側板
63:ダイヤフラム板
71:コア材
71a:セル層
270:ハンガーレール
L:所定間隔
H1、V1:仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設けられた骨組構造と、
前記骨組構造に装着された4個以上の吊具と、
前記吊具を介して前記骨組構造に吊下げられる収納家具と、を備え
前記収納家具は、変位拘束部材を介して前記吊具と着脱可能に連結し、前記変位拘束部材は、格子形状の一対のフレームと、前記フレームに着脱可能に接続して四方に組まれた側板と、前記側板に着脱可能に接続して外縁端が接触するダイヤフラム板と、を有し、前記側板と、前記ダイヤフラム板は協働して前記収納家具の側方変位および回転変位を拘束することを特徴とする吊下げ式収納システム。
【請求項2】
前記吊具は、所定間隔でかつ平行に縦横に延びる複数の仮想直線の交点の位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項3】
前記骨組構造は、一対の支持フレームと、所定間隔で前記一対の支持フレームに架け渡されて、前記吊具を装着する複数の横梁とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項4】
前記骨組構造は、一対の支持フレームと、前記一対の支持フレームに架け渡される複数の横梁と、前記横梁を介して前記一対の支持フレームに所定間隔で支持される複数のハンガーレールを有し、前記吊具は前記ハンガーレールに沿ってスライド可能に連結することを特徴とする請求項1に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項5】
前記側板、および前記ダイヤフラム板は、規則的に配列されたセル層が形成された紙製のコア材を、紙製のシートが挟持した構造であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の吊下げ式収納システム。
【請求項6】
前記吊具は、前記収納家具を防振するための防振部を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の吊下げ式収納システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するための発明は、吊下げ式収納システムであって、室内に設けられた骨組構造と、骨組構造に装着された4個以上の吊具と、吊具を介して骨組構造に吊下げられる収納家具と、を備え、収納家具は、変位拘束部材を介して吊具と着脱可能に連結し、変位拘束部材は、格子形状の一対のフレームと、フレームに着脱可能に接続して四方に組まれた側板と、側板に着脱可能に接続して外縁端が接触するダイヤフラム板と、を有し、側板と、ダイヤフラム板は協働して収納家具の側方変位および回転変位を拘束することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この構成によれば、室内に設けられた骨組構造と、骨組構造に装着された4個以上の吊具と、吊具を介して骨組構造に吊下げられる収納家具を備えるので、室内の壁や天井に特段の加工を施すことなく、吊具を配置できる。すなわち、既存の住居を傷つけることなく、室内に吊下げ式収納システムを構築できる。
また、この構成によれば、収納家具は、変位拘束部材を介して吊具と着脱可能に連結するので、変位拘束部材の高さを適切に選定することによって、収納家具の取付高さを自由に設定できる。また、側板と、ダイヤフラム板は協働して収納家具の側方変位及び回転変位を拘束するので、地震に起因する、また通常時における収納家具の変位を抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】