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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080450
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】見守りシステムおよび見守り方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20230602BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230602BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20230602BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20230602BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G08B31/00 B
G08B25/04 K
G08B21/02
G06Q50/22
G08C15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193797
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】垣内 陽太
【テーマコード(参考)】
2F073
5C086
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA07
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BB04
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC09
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EF09
2F073FF01
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG08
2F073GG09
5C086AA22
5C086BA01
5C086CA09
5C086CA30
5C086CB01
5C086CB07
5C086CB11
5C086CB26
5C086DA40
5C086FA20
5C087AA02
5C087AA60
5C087BB02
5C087BB20
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE14
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5L099AA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】見守りの対象者の健康状態の異変を事前に把握できるようにする見守りシステムおよび見守り方法を提供する。
【解決手段】見守りシステム100は、少なくとも、見守りの対象者の住居における水道の使用履歴を示す水道使用情報を含む、見守りの対象者の日常生活に関連する生活情報を取得し、ネットワークを通じて前記生活情報を送信する生活情報取得部10と、人の生活活動と健康状態との相関性に基づくアルゴリズムと、ネットワークNTを通じて取得した生活情報とを用いて、前記対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出し、利用者にネットワークを通じて報知する健康管理部50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が、ネットワークを通じて、見守りの対象者の健康状態を把握できるようにする見守りシステムであって、
少なくとも、前記対象者の住居における水道の使用履歴を示す水道使用情報を含む、前記対象者の日常生活に関連する生活情報を取得し、前記ネットワークを通じて前記生活情報を送信する生活情報取得部と、
前記ネットワークを通じて取得した前記生活情報と、人の生活活動と健康状態との相関性に基づくアルゴリズムとを用いた解析により、前記対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出し、前記利用者に前記ネットワークを通じて報知する健康管理部と、
を備える、見守りシステム。
【請求項2】
請求項1記載の見守りシステムであって、
前記生活情報取得部は、
前記住居に設置され、前記水道使用情報を取得する水道監視部と、
前記住居内に設置され、前記対象者の生活環境に関連する環境情報を取得する環境情報取得部と、
を有し、前記ネットワークを通じて、前記水道使用情報と前記環境情報とを含む前記生活情報を前記健康管理部に送信し、
前記健康管理部は、前記水道使用情報と前記環境情報とを含む前記生活情報と前記アルゴリズムとを用いた解析により、前記予兆を検出する、見守りシステム。
【請求項3】
請求項2記載の見守りシステムであって、
前記環境情報は、前記住居内で検出される照度に関する照度情報、前記住居内で検出される音に関する音情報、前記住居内の空気の状態に関する空気情報、および、前記住居内の人の存在を検知した履歴を示す人感情報のうちの少なくとも1つを含む、見守りシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の見守りシステムであって、
前記健康管理部は、前記予兆として、前記対象者が要介護の状態に至る前のフレイルの状態にある可能性を検出する、見守りシステム。
【請求項5】
利用者が見守りの対象者の健康状態を、ネットワークを通じて把握できるようにする見守りの方法であって、
コンピュータが、少なくとも、前記対象者の住居における水道の使用履歴を示す水道使用情報を含む、前記対象者の日常生活に関連する生活情報を、前記ネットワークを通じて取得する工程と、
前記コンピュータが、前記ネットワークを通じて取得した前記生活情報と、人の生活活動と健康状態との相関性に基づくアルゴリズムとを用いた解析により、前記対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出し、前記利用者に前記ネットワークを通じて報知する工程と、
を備える、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、見守りシステムおよび見守りの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高齢者等の見守りの対象となるような人の生活状況を、ネットワーク技術を利用して、別居の親族等が確認できるようにする種々の見守りシステムが提案されている。例えば、下記の特許文献1には、水道の使用状況の監視システムを、そうした見守りシステムとして利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-153721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1の技術をはじめ、従来の見守りの技術は、見守りの対象者に現在発生している生活状態の異常を検出することを目的としていた。そのため、これまで、そうした見守りの技術を利用して、対象者の健康状態に異変が生じることを事前に検知したいという要望に対しては十分な工夫がなされてこなかった。
【0005】
また、従来は、見守りの対象者の健康状態を把握するために、心拍数や血圧等のバイタルデータを取得してインターネット等のネットワークを通じて出力することができるウェアラブル端末を対象者に装着させる場合があった。しかしながら、見守りの対象者の中には、そうしたウェアラブル端末の装着に抵抗を感じる者もあった。また、ネットワークに接続可能な遠隔カメラで見守りの対象者を監視して、その健康状態を把握するという方法もあるが、そうした監視下におかれることは、見守りの対象者に大きなストレスを与える場合があった。
【0006】
本願は、見守りの対象者の健康状態の異変を、離れた場所からネットワークを通じて事前に把握できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本開示の技術の一形態は、利用者が、ネットワークを通じて、見守りの対象者の健康状態を把握できるようにする見守りシステムとして提供される。この形態の見守りシステムは、少なくとも、前記対象者の住居における水道の使用履歴を示す水道使用情報を含む、前記対象者の日常生活に関連する生活情報を取得し、前記ネットワークを通じて取得した前記生活情報と、人の生活活動と健康状態との相関性に基づくアルゴリズムとを用いた解析により、前記対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出し、前記利用者に前記ネットワークを通じて報知する健康管理部と、を備える。
この形態の見守りシステムで取得される生活情報は、少なくとも、人の生活活動に密接に関係する水道使用情報を含んでいる。そのため、この生活情報には、見守りの対象者の生活活動の現在の状況が適切に反映されている。この形態の見守りシステムによれば、そのような確度が高い生活情報に基づいて、人の生活活動と健康状態との相関性に基づくアルゴリズムによって対象者の健康状態を解析できるため、その健康状態に異変が生じる予兆を、高い精度で検出することができる。よって、利用者は、対象者の健康状態に異変が生じる可能性を、事前に把握することができる。また、この形態の見守りシステムによれば、例えば、ウェアラブル端末を対象者に装着させてバイタルデータを取得したり、対象者を遠隔カメラで常時監視したりしなくても、対象者の健康状態に異変が生じる予兆を、容易かつ適切に検出することができる。
【0009】
(2)上記形態の見守りシステムにおいて、前記生活情報取得部は、前記住居に設置され、前記水道使用情報を取得する水道監視部と、前記住居内に設置され、前記対象者の生活環境に関連する環境情報を取得する環境情報取得部と、を有し、前記ネットワークを通じて、前記水道使用情報と前記環境情報とを含む前記生活情報を前記健康管理部に送信し、前記健康管理部は、前記水道使用情報と前記環境情報とを含む前記生活情報と前記アルゴリズムとを用いた解析により、前記予兆を検出してよい。
この形態の見守りシステムによれば、環境情報を含む生活情報を利用することにより、対象者の生活環境の状況も加味して対象者の健康状態を解析できるため、対象者の健康状態に異変が生じる予兆を、さらに精度よく検出することができる。よって、利用者は、対象者の健康状態に異変が生じる可能性を、事前に、かつ、より的確に把握することができる。
【0010】
(3)上記形態の見守りシステムにおいて、前記環境情報は、前記住居内で検出される照度に関する照度情報、前記住居内で検出される音に関する音情報、前記住居内の空気の状態に関する空気情報、および、前記住居内の人の存在を検知した履歴を示す人感情報のうちの少なくとも1つを含んでよい。
この形態の見守りシステムによれば、対象者の健康状態に異変が生じる予兆の検出に、例えば、住居内の明るさや、照明器具の使用状況、環境音の発生状況、空気の状態、対象者自身の住居滞在時間、対象者の住居への人の訪問頻度など、対象者の身体面や精神面に大きな影響を与える環境要素を加味できる。よって、対象者の健康状態に生じる異変の予兆を、より的確に検出することができる。
【0011】
(4)上記形態の見守りシステムにおいて、前記健康管理部は、前記予兆として、前記対象者が要介護の状態に至る前のフレイルの状態にある可能性を検出してよい。
この形態の見守りシステムによれば、利用者は、対象者が要介護の状態になる前に、適切な予防や治療の手配をすることが可能になる。
【0012】
(5)本開示の技術の一形態は、利用者が見守りの対象者の健康状態を、ネットワークを通じて把握できるようにする見守りの方法として提供される。この形態の方法は、コンピュータが、少なくとも、前記対象者の住居における水道の使用履歴を示す水道使用情報を含む、前記対象者の日常生活に関連する生活情報を、前記ネットワークを通じて取得する工程と、前記コンピュータが、前記ネットワークを通じて取得した前記生活情報と、人の生活活動と健康状態との相関性に基づくアルゴリズムとを用いた解析により、前記対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出し、前記利用者に前記ネットワークを通じて報知する工程と、を備える。
この形態の見守りの方法によれば、コンピュータによって、人の生活活動に密接に関係する水道の使用情報を含み、見守りの対象者の現在の生活状況を高い確度で表している生活情報を用いて、見守りの対象者の健康状態を解析できる。そのため、対象者の健康状態に異変が生じる予兆を高い精度で検出することができる。よって、利用者は、対象者の健康状態に異変が生じる可能性を、事前に把握することができる。
【0013】
本開示の技術は、見守りシステムや見守りの方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、見守りシステムを制御する、または、見守りの方法を実行するサーバや制御装置、見守りシステムの制御方法や見守りの方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、そうした見守りの方法を実現するためのアルゴリズム、そのプログラムやアルゴリズムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】見守りシステムの構成を示す概略図。
図2】生活情報取得部が有する水道監視部の構成を示す概略機能ブロック図。
図3】生活情報取得部が有する環境情報取得部の構成を示す概略機能ブロック図。
図4】健康管理部の構成を示す概略ブロック図。
図5】健康管理部が実行する見守り処理のフローチャート。
図6】人の生活情報から導出される生活活動と、人の健康状態との相関性を説明するための説明図。
図7】見守りの対象者の健康状態に生じる異変の予兆を生活情報から定量的に検出する方法の一例を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施形態:
図1は、本実施形態における見守りシステム100の構成を示す概略図である。見守りシステム100は、見守りサービスの提供を依頼した利用者が、見守りの対象者の健康状態を離れた場所から把握できるようにするネットワークシステムである。本実施形態では、見守りシステム100は、ネットワークNTとしてインターネットを利用する。
【0016】
見守りシステム100は、見守りの対象者の住居に設置され、当該対象者の日常生活に関連する生活情報を取得する生活情報取得部10と、その生活情報に基づいて見守りの対象者の健康状態を管理する健康管理部50と、を備える。ここで、「生活情報」には、例えば、人の生活活動それ自体の情報や、人の生活活動に影響されて変化する、あるいは、人の生活活動に影響を与える生活環境に関連する様々な情報等が含まれる。
【0017】
生活情報取得部10は、ネットワークNTに接続されており、取得した生活情報を、ネットワークNTを通じて健康管理部50に送信する。本実施形態では、生活情報取得部10は、水道監視部11と、環境情報取得部15と、を備える。
【0018】
水道監視部11は、見守りの対象者の水道の使用履歴を示す水道使用情報を取得し、取得した水道使用情報を、見守りの対象者の生活情報を構成する情報の1つとして健康管理部50に送信する。水道使用情報は、時間ごとの水道の使用量の記録を含む。本実施形態では、水道監視部11は、IoT(Internet of Things)技術に対応しており、ネットワークNTに接続する機能を有している。水道監視部11は、対象者の住居における水道の使用量を計測する水道メータ12と、水道メータ12の計測結果を集計して水道使用情報を生成し、ネットワークNTに出力する受信器13と、を備える。水道メータ12および受信器13の構成、水道使用情報の詳細については後述する。
【0019】
環境情報取得部15は、見守り対象者の住居内に設置され、見守りの対象者の生活環境に関連する環境情報を取得する。ここで、「環境情報」とは、生活情報のうち、人の生活活動に影響を与える生活環境に関連する情報を意味し、主に、住居空間における様々な環境要因に応じて変化する情報を意味する。環境情報取得部15は、ネットワークNTに接続されており、取得した環境情報を、見守りの対象者の生活情報を構成する情報の1つとして健康管理部50に送信する。環境情報取得部15の構成、および、環境情報取得部15によって取得される環境情報の詳細については後述する。
【0020】
健康管理部50は、コンピュータによって構成される。本実施形態では、健康管理部50は、サーバコンピュータによって構成される。健康管理部50は、見守りシステム100を制御し、利用者に見守り対象者の健康状態を把握させる見守り処理を実行する。見守り処理では、健康管理部50は、生活情報取得部10から見守りの対象者の生活情報を周期的に取得し、時系列で記憶して蓄積していく。また、健康管理部50は、後述するアルゴリズムを用いて、生活情報取得部10から取得した生活情報に基づいて、当該見守り対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出する。健康管理部50は、対象者の見守りを依頼した利用者に、検出された異変の予兆や、生活情報から導出された見守りの対象者の生活状態や健康状態に関する情報を、ネットワークNTを通じて報知する。健康管理部50の構成および見守り処理の詳細については後述する。
【0021】
見守りシステム100の利用者は、ネットワークNTに接続された自身の利用者端末UTを介して、健康管理部50から報知される情報を取得することができる。また、見守りシステム100の利用者は、利用者端末UTを介して、健康管理部50に対して、利用者や見守りの対象者に関する情報を登録したり、見守り処理の設定を変更したりすることができる。利用者端末UTは、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等、ネットワークNTに接続可能なデバイスによって構成される。利用者端末UTは、PCに限定されず、例えば、タブレット端末や、スマートフォン、スマートフォン以外の携帯電話などによって構成されてもよい。健康管理部50からの利用者端末UTに対する報知は、例えば、Eメールや、電話番号を利用したメッセージサービス、SNS(Social Networking Service)を利用したメッセージ機能等によって実行される。
【0022】
図2は、水道監視部11の構成を示す概略機能ブロック図である。上述したように、水道監視部11は、水道メータ12と受信器13とを備える。水道メータ12は、例えば、電子式水道メータによって構成される。水道メータ12は、検出部20と、メータ制御部21と、通信部24と、表示部26と、操作部28と、を備える。
【0023】
検出部20は、水道の配管に設置され、当該配管における水の流量を表すパルス信号を生成してメータ制御部21に出力する。本実施形態では、水道メータ12は、接線流羽根車式の計測方法を採用しており、検出部20は、配管内に設置される羽根車の回転により、水の流量を表すパルス信号を生成する。なお、水道メータ12の計測方式は特に限定されることはなく、水道メータ12には、接線流羽根車式以外の計測方式が採用されてもよい。水道メータ12の計測方式としては、軸流羽根車式が採用されもよいし、羽根車を用いることなく、水の流れに磁界をかけて計測する電磁式が採用されもよい。
【0024】
メータ制御部21は、集積回路(LSI)によって構成され、上述した検出部20や、以下に説明する水道メータ12の各構成部を制御する機能を有する。また、メータ制御部21は、検出部20の出力信号に基づいて、現在の瞬間流量と、単位時間あたりの水道の使用量と、その水道使用量の積算値と、を算出する演算部23としての機能を有する。現在の瞬間流量とは、例えば、数秒以下の微小単位時間あたりに流れる水の量を意味する。
【0025】
通信部24は、メータ制御部21の制御下において、受信器13との通信を実行する。本実施形態では、通信部24は、伝送線TLを通じて受信器13のメータ用通信部33と信号をやり取りする。メータ制御部21は、通信部24を介して検出部20が出力するパルス信号を、水道メータ12の計測結果として受信器13に送信する。また、メータ制御部21は、通信部24を介して、演算部23の演算結果や、水道メータ12の駆動状況を表すステータス情報を受信器13に送信する。
【0026】
なお、他の実施形態では、通信部24は、伝送線TLを用いず、受信器13と無線通信を実行するものとしてもよい。また、メータ制御部21は、演算部23の演算結果のみを水道メータ12の計測結果として受信器13に送信してもよい。
【0027】
表示部26は、液晶パネルや種々のLEDランプ等によって構成される。表示部26は、メータ制御部21の制御下において、水道の使用量の積算値を表示する。また、表示部26は、メータ制御部21の制御下において、水道メータ12の駆動状況や受信器13との通信状態等を示すサインを表示可能である。
【0028】
操作部28は、各種のボタンやスイッチ類によって構成され、水道メータ12の起動操作や、計測値のリセット操作、その他の水道メータ12を制御する操作やメンテナンス等のための操作を受け付ける。操作部28は、受け付けた操作に応じた電気信号をメータ制御部21に出力する。メータ制御部21は、操作部28の出力信号に応じて、水道メータ12の各構成部を制御する。
【0029】
受信器13は、受信器制御部30と、メータ用通信部33と、ネットワーク用通信部35と、表示部36と、操作部38と、を備える。受信器制御部30は、中央処理装置(CPU)と主記憶装置(RAM)と、記憶部とを備える回路によって構成され、受信器13の各構成部を制御する機能を有する。
【0030】
また、受信器制御部30は、水道メータ12との通信や水道メータ12の駆動状態を管理するメータ管理部31と、水道メータ12から受信した計測結果を処理する計測処理部32として機能する。メータ管理部31は、水道メータ12からの受信信号に基づいて、水道メータ12の故障や、漏水、逆流の発生を検出する機能を有する。計測処理部32は、水道メータ12から受信したパルス信号に基づいて、現在の瞬間流量と、単位時間あたりの水道の使用量と、その水道使用量の積算値と、を算出する。計測処理部32は、先入れ先出し方式により、予め定められた期間における時間ごとの水道使用量の記録を計測結果として記憶・保管する。
【0031】
メータ用通信部33は、伝送線TLに接続されており、受信器制御部30の制御下において、水道メータ12との通信を実行する。上述したように、メータ用通信部33は、伝送線TLを介することなく、水道メータ12の通信部24と無線通信を実行するように構成されていてもよい。
【0032】
ネットワーク用通信部35は、ネットワークNTと接続可能であり、受信器制御部30の制御下において、ネットワークNTを通じて健康管理部50との通信を実行する。ネットワーク用通信部35は、例えば、LPWA(Low Power Wide Area)によってネットワークNTに無線接続する。受信器制御部30は、ネットワーク用通信部35を介して、健康管理部50からの要求を受信する。また、受信器制御部30は、健康管理部50からの要求に応じて、計測処理部32が記録している上記の計測結果や、水道メータ12または受信器13の駆動状態に関する情報を送信する。
【0033】
表示部36は、液晶パネルや種々のLEDランプによって構成される。表示部36は、受信器制御部30の制御下において、水道の使用量の積算値や、現在の瞬間流量等、水道メータ12の計測結果を表示する。また、表示部36は、受信器制御部30の制御下において、受信器13の駆動状態や、水道メータ12の駆動状態、水道メータ12または健康管理部50との通信状態等を示すサインを表示可能である。
【0034】
操作部38は、各種のボタンやスイッチ類によって構成され、受信器13の起動操作やリセット操作、水道メータ12との接続操作、表示部36の表示内容の切換操作、その他の受信器13の制御操作やメンテナンス等のための操作を受け付ける。操作部38は、受け付けた操作に応じた電気信号を受信器制御部30に出力する。受信器制御部30は、操作部38が出力する電気信号に応じて、受信器13の各構成部を制御する。
【0035】
なお、他の実施形態では、水道監視部11は、水道メータ12と受信器13とが一体化された構成を有していてもよい。水道監視部11は、ネットワークNTに接続可能な通信機能を有し、水道配管に設置される水道メータによって構成されてもよい。また、受信器13は、専用の水道メータ12と接続可能な構成に限定されることはない。受信器13は、例えば、既存の水道メータに後付けされ、当該水道メータの計測結果を読み取り、健康管理部50に送信可能な通信端末として構成されてもよい。
【0036】
図3は、環境情報取得部15の構成を示す概略機能ブロック図である。環境情報取得部15は、種々のセンサ類が一体化された室内据置型の装置である、いわゆる環境センサによって構成される。環境情報取得部15は、電源に接続された状態で配置されることにより、配置された室内の環境情報を自動で収集し、ネットワークNTに送信する。環境情報取得部15は、見守りの対象者の住居内のうち、例えば、リビングルームや寝室など、見守りの対象者の1日の間の滞在時間が最も長いことが見込まれる室内に設置されることが好ましい。
【0037】
環境情報取得部15は、センサ制御部41と、音検知部42と、照度検知部43と、空気状態検知部44と、人検知部45と、情報出力部48と、を備える。センサ制御部41は、集積回路(LSI)によって構成され、環境情報取得部15全体の動作を制御する機能を有する。センサ制御部41は、音検知部42と、照度検知部43と、空気状態検知部44と、人検知部45のそれぞれの検出結果を取得し、その検出結果に基づいて環境情報を生成する。本実施形態の環境情報には、住居内で検出される音に関する音情報と、住居内で検出される照度に関する照度情報と、住居内の空気の状態に関する空気情報と、住居内の人の存在を検知した履歴を示す人感情報とが含まれる。センサ制御部41は、情報出力部48を制御することにより生成した環境情報を、ネットワークNTを通じて健康管理部50に送信する。
【0038】
音検知部42は、音センサによって構成される。音検知部42は、環境情報取得部15の駆動中に常時、見守りの対象者の住居における生活環境音を検出し、センサ制御部41に出力する。音検知部42が検出する環境音には、環境情報取得部15が配置されている室内で発生した音や、その部屋周辺で発生した音、見守りの対象者の住居の近隣で発生している音、見守りの対象者自身やその他の人の声が含まれる。センサ制御部41は、音検知部42の検出結果に基づいて、予め決められた期間に住居内で検出された音の大きさや周波数、発生時間を示す音情報を生成する。
【0039】
照度検知部43は、照度センサによって構成される。照度検知部43は、環境情報取得部15の駆動中に常時、環境情報取得部15が設置されている部屋の照度を環境光に関する情報として検出し、センサ制御部41に出力する。照度は、主に太陽光や室内の照明器具の照明光によって変化する。センサ制御部41は、照度検知部43の検出結果に基づいて、予め定められた期間における照度の時間変化を示す照度情報を生成する。
【0040】
空気状態検知部44は、空気の状態を示す情報を検知可能な複数種類のセンサによって構成され、各センサの検出結果を空気情報として検出する。空気状態検知部44は、環境情報取得部15の駆動中に常時、環境情報取得部15が設置されている部屋の空気の状態に関する情報を検出し、センサ制御部41に出力する。本実施形態では、空気状態検知部44は、温度センサと、湿度センサと、ガスセンサとを備える。空気状態検知部44は、温度センサによって室内気温を計測し、湿度センサによって室内の湿度を計測する。また、空気状態検知部44は、ガスセンサによって特定種類の気体成分の濃度を検出する。本実施形態では、空気状態検知部44は、室内のCO濃度を検出する。センサ制御部41は、空気状態検知部44の検出結果に基づいて、予め決められた期間に住居内で検出された気温と湿度とCO濃度のそれぞれの時間変化を示す空気情報を生成する。他の実施形態では、空気状態検知部44は、空気情報として、前述のものに加えて、あるいは、前述のものに代えて、室内の気圧や、酸素濃度を検出してもよい。
【0041】
人検知部45は、人感センサによって構成され、例えば赤外線や超音波、可視光による検知により、環境情報取得部15が配置されている室内における人の存在を感知し、その感知結果の履歴を検出結果としてセンサ制御部41に出力する。センサ制御部41は、人検知部45の検出結果に基づいて、予め決められた期間に検知された人の数や時刻、検知が継続された時間帯を示す人感情報を生成する。
【0042】
情報出力部48は、ネットワークNTを通じた健康管理部50との通信を実行する。情報出力部48は、センサ制御部41の制御下において、ネットワークNTを通じた健康管理部50との通信状態を確立し、センサ制御部41が生成した環境情報を、ネットワークNTを通じて定期的に健康管理部50に送信する。
【0043】
図4は、健康管理部50の構成を示す概略ブロック図である。健康管理部50は、上述したようにコンピュータによって構成されており、見守りシステム100の管理者による操作を受け付け、管理者の管理下において、見守り処理を実行する。健康管理部50は、制御部51と、通信部55と、記憶部56と、入力部57と、表示部58と、を備える。これらの各構成部51,55,56,57,58はバス接続されている。
【0044】
図示は省略するが、制御部51は、健康管理部50は、プロセッサーとしてのCPUとRAMとを備えており、当該CPUが、RAM上に予め準備された命令やプログラムを読み込んで実行することにより、見守りシステム100を制御する制御部51として機能する。制御部51は、生活情報管理部52と、解析部53と、報知処理部54としての機能を有し、後述する見守り処理を実行する。
【0045】
生活情報管理部52は、見守りの対象者の生活情報取得部10から取得した生活情報を記憶部56に格納して管理する。解析部53は、見守りの対象者の生活情報の解析を実行する。解析部53は、後述するアルゴリズムALを用いて、ネットワークNTを通じて取得され、記憶部56に格納されている生活情報に基づいて、見守りの対象者の健康状態を解析し、見守りの対象者の健康状態に異変が生じている予兆を検出する。報知処理部54は、利用者に対する報知処理を実行する。生活情報管理部52、解析部53、および、報知処理部54の連携により実行される見守り処理の詳細については後述する。
【0046】
通信部55は、制御部51の制御下において、ネットワークNTを通じた通信を制御する。入力部57は、例えば、キーボードやマウス、タッチパッド等によって構成され、健康管理部50に対する管理者の入力操作を受ける。表示部58は、ディスプレイ装置によって構成され、管理者に対して、見守りシステム100に関する情報をはじめとする種々の情報を表示する。
【0047】
記憶部56は、ハードディスクやソリッドステートディスクなど、情報を不揮発的に記憶する、つまり、情報を一時的ではなく通電停止後にも保持可能に記憶する大容量の記憶装置によって構成される。記憶部56には、蓄積生活情報Daと、利用者情報Dbと、が格納されている。
【0048】
蓄積生活情報Daは、生活情報取得部10から取得した生活情報を、見守りの対象者ごとに予め定められた期間分、時系列で蓄積したものに相当する。生活情報が蓄積される期間は、例えば、月単位や年単位の長期間である。利用者情報Dbには、例えば、利用者の連絡先情報や見守り処理の設定情報等、利用者によって登録された登録情報が含まれる。なお、各情報Da,Dbは、記憶部56を利用して構築されたデータベースに格納されている。また、記憶部56は、健康管理部50とは別体として構成され、ネットワークNTを介して健康管理部50に接続されるネットワークストレージによって構成されてもよい。
【0049】
図5は、健康管理部50が実行する見守り処理のフローチャートである。健康管理部50は、以下に説明するステップS10~S50を周期的に繰り返す。
【0050】
ステップS10では、健康管理部50の生活情報管理部52が、生活情報取得部10から生活情報を取得する。生活情報は、予め定められたタイミングで、生活情報取得部10から周期的に取得される。生活情報管理部52は、生活情報取得部10の水道監視部11から水道使用情報を取得する。また、生活情報管理部52は、環境情報取得部15から環境情報を取得する。上述したように、本実施形態の環境情報には、音情報、照度情報、空気情報、人感情報が含まれる。
【0051】
ステップS20では、生活情報管理部52は、取得した生活情報を、記憶部56に格納する。生活情報管理部52は、取得した生活情報を蓄積生活情報Daに追加する。蓄積生活情報Daでは、各生活情報は、その生活情報が実際に計測された日時を示す時刻情報に紐づけられて記録される。
【0052】
ステップS30では、解析部53は、見守りの対象者の生活情報と、少なくとも水道の使用に関連する行動を含む人の生活活動と、その人の健康状態との相関性に基づくアルゴリズムALとを用いて、見守りの対象者の健康状態の解析を実行する。解析部53は、この解析によって、見守りの対象者の健康状態に異変が生じる予兆を検出する。
【0053】
一般に、日常生活における人の生活活動のパターンは、そのときの人の健康状態に応じて変化する。解析部53のアルゴリズムALは、多数の被験者の所定の期間の生活活動と健康状態とを観察した結果から収集され、蓄積されたデータを分析することにより導出されたものである。本実施形態では、被験者に実際に見られた健康状態に異変が生じる際の生活活動のパターンの変化を、被験者から得られた生活情報を定量化した情報を用いて構成されたアルゴリズムALにより、生活情報に基づいた健康状態の異変の予兆を検出可能にしている。このアルゴリズムALの詳細については後述する。
【0054】
ステップS40では、報知処理部54が、ステップS30において、見守りの対象者の健康状態に異変が生じる予兆が検出さたか否かを判定する。報知処理部54は、異変の予兆が検出されていた場合には、ステップS50において、その旨を利用者に報知する報知処理を実行する。この報知処理では、利用者に、解析部53によってどのような予兆が検出されたのかが報知される。また、報知処理部54は、その予兆が検出された要因や、その要因に対する対処方法を説明するメッセージを配信してもよい。
【0055】
ステップS30において異変の予兆が検出されなかった場合には、今周期の見守り処理は終了され、次の周期の見守り処理の実行が開始される。なお、ステップS30において異変の予兆が検出されなかった場合には、報知処理部54は、見守りの対象者の健康状態に異常が生じていない旨の報知や、見守りの対象者の現在の生活情報に関する情報を利用者に報知するものとしてもよい。
【0056】
図6を参照して、人の生活情報から導出される生活活動と、人の健康状態との相関性を説明する。図6の上段には、平常の健康状態にある人の2時から24時までの間の生活情報の時間変化のパターンの一例を図示してある。また、図6の下段には、同じ人の健康状態が悪化したときの同じ時間帯の生活情報の時間変化のパターンの一例を図示してある。なお、図6では、生活情報のうち、水道使用情報Wを実線グラフで示し、照度情報ILを破線グラフで示し、空気情報の気温Tを一点鎖線グラフで示し、空気情報のCO濃度Dを二点鎖線グラフで示してある。生活情報のうち、音情報や空気情報の湿度、人感情報については便宜上省略してある。
【0057】
見守りシステム100で扱われている生活情報には、見守りの対象者の生活活動が反映されているため、見守りの対象者の生活情報から見守りの対象者の生活活動を推定することができる。例えば、水道使用情報WにおけるピークP1のように、朝の時間帯にある程度の量の水道が短時間で使用された履歴からは、見守りの対象者が起床して洗顔などの身だしなみを整える行動をとったことが推定できる。また、水道使用情報WにおけるピークP2のように、周期的にある量の水道が繰り返し使用された履歴からは、見守りの対象者が水洗トイレを使用した行動が推定できる。照度情報ILからは、見守りの対象者の起床や就寝、室内への出入り等の行動が推定できる。図示はされていないが、生活情報のうち、音情報や人感情報からも、例えば、見守りの対象者の他者との交流などの生活活動を推定することが可能である。
【0058】
ここで、生活情報のうち、水道使用情報Wは、上述のように、生活活動のうちの水道の使用に関連づけられる行動に密接に関連する。そのため、少なくとも水道使用情報Wを用いれば、見守りの対象者の生活活動を精度よく推定することが可能である。つまり、生活情報は、少なくとも水道使用情報Wを含んでいることにより、見守りの対象者の生活活動を高い確度で表す情報となる。また、そうした生活情報に、水道使用情報Wの他に、環境情報などの様々な生活情報に基づく推定を加味すれば、さらに高い精度で、見守りの対象者の生活活動を特定することが可能になる。
【0059】
上述したように、一般に、日常生活における人の生活活動のパターンは、そのときの人の健康状態に応じて変化する。よって、例えば、見守りの対象者の健康状態が悪化した場合、図6のピークP1に示されているように、その人の起床の時刻が、正常な健康状態の時よりも遅くなる場合がある。また、水洗トイレを使用する周期が平常時から変化したり、エアコン等の使用により、室内の気温Tが普段とは異なる変化を示したりする可能性もある。さらには、室内の滞在時間が増え、室内照明が継続して点灯したままになり、照度の時間変化のパターンに変化が生じる可能性もある。その他にも、住居の換気が十分に行われなくなり、空気情報のうちのCO濃度Dの時間変化のパターンに変化が生じる可能性もある。また、見守りの対象者の行動が活発でなくなることにより、検出される音情報や人感情報が低減する可能性がある。
【0060】
このように、健康状態の変化による生活活動のパターンの変化は、生活情報によって定量的に把握することが可能である。よって、生活情報とこうした人の生活活動と人の健康状態の相関性に基づいたアルゴリズムALとを用いた解析により、見守り対象者の現在の健康状態を把握することができ、見守りの対象者の健康状態に生じる異変の予兆を、高い精度で検出することが可能になる。なお、アルゴリズムALは、その解析結果がより実情に即したものとなるように、見守りの対象者の生活情報と生活活動の相関性や、生活活動のパターンと健康状態の相関性に関する設定情報について、見守りの対象者や利用者に対するヒアリングなどを通じて見守り対象者ごとに個別に調整されることが好ましい。
【0061】
図7を参照して、解析部53のアルゴリズムALに適用される、見守りの対象者の健康状態に生じる異変の予兆を生活情報から定量的に検出する方法の一例を説明する。この方法は、多変量解析手法の1つである重回帰分析の考え方に基づくものである。重回帰分析は、結果を示す1つの目的変数と、その要因となる複数の説明変数の関係を関数の形で明らかにし、その関係に基づいて将来の予測を行う統計手法である。
【0062】
まず、見守りの対象者から取得した生活情報のそれぞれから説明変数として用いる生活情報スコアを求める。生活情報スコアは、例えば、ある特定の時間帯の各生活情報の平均値であるとしてもよいし、ある期間に得られた各生活情報を予め定められた関数に入力することにより得られる値としてもよい。本実施形態では、生活情報スコアとして、水道使用情報Wから求まるスコアSaと、照度情報ILから求まるスコアSbと、音情報Sから求まるスコアScと、空気情報Aから求まるスコアSdと、人感情報Hから求まるスコアSeと、を用いる。
【0063】
次に、人の生活活動と人の健康状態との相関性が反映されるように、スコアSa~Seごとに予め定められた回帰係数により、各スコアSa~Seを重みづけして加算することにより、目的変数としての健康状態パラメータを求める。健康状態パラメータは、健康状態に関連する複数の要素のそれぞれの評価を数値化したものに相当する。健康状態パラメータを求める際の回帰係数による各スコアSa~Seの重みづけの仕方は、求める健康状態パラメータの種類ごとに異なる。本実施形態では、健康状態パラメータとして、睡眠の質を示す睡眠レベルLVa、生活リズムの一定性を示す生活リズム変化レベルLVb、日常生活で受けるストレスの度合いを示すストレスレベルLVc、日常生活での運動量を表す運動レベルLVd、認知機能の評価を示す認知機能レベルLVeを求める。
【0064】
解析部53は、健康状態パラメータの各値LVa~LVeを分析することにより、見守りの対象者の現在の健康状態を推定したり、見守りの対象者の健康状態に生じる異変の予兆を検出したりする。解析部53は、例えば、健康状態パラメータの各値LVa~LVeのバランスが、実験等によって予め求めてある健康状態の類型のいずれに該当するかを判定することにより、見守りの対象者の現在の健康状態を推定する。
【0065】
また、解析部53は、例えば、現在と過去の健康状態パラメータの各値LVa~LVeを比較し、その変化のパターンが、実験等によって予め求められている健康状態の異変の予兆を示す類型のいずれかに該当するか否かを判定することにより、目守りの対象者の健康状態の異変の予兆を検出する。
【0066】
その他に、解析部53は、例えば、睡眠レベルLVaや、生活リズム変化レベルLVb、ストレスレベルLVcのいずれが、過去のデータに対して許容範囲を超えて所定の期間継続して検出されている場合には、過度な疲労による異常の発生の予兆を検出するものとしてもよい。また、解析部53は、例えば、運動レベルLVdが、過去のデータに対して許容範囲を超えて所定の期間継続して検出されている場合には、見守りの対象者の身体上の異常の発生の予兆を検出するものとしてもよい。
【0067】
本実施形態では、解析部53は、健康状態の異変の予兆の1つとして、見守りの対象者が要介護の状態に至る前のフレイルの状態にある可能性を検出する。解析部53は、例えば、高齢の見守りの対象者について運動レベルLVdや認知機能レベルLVeが過去のデータに対して許容範囲を超えて所定の期間継続して検出されている場合に、見守りの対象者がフレイルの状態にある可能性を検出するものとしてもよい。これにより、見守りの対象者がフレイルの状態にある可能性が高いことを利用者に事前に把握させることができるため、見守りの対象者が要介護の状態になる前に、適切な予防や治療の手配をすることが可能になる。よって、見守りの対象者の認知症発症リスクを効果的に低減させることが可能になる。
【0068】
ここで、健康状態パラメータが、見守りの対象者の健康状態を適正に表している値であるか否かが、健康状態パラメータを求める際の回帰係数の定め方や、検出される対象者の健康状態の異変の予兆の検出精度に関わってくる。よって、解析部53のアルゴリズムALは、見守りの対象者の基準モデルとなる被験者の健康状態がより正確に反映された健康状態パラメータに基づいて設計されていることが好ましい。そのため、アルゴリズムALの設計の際には、被験者の生活情報とともに、その生活情報が得られるときの被験者の血圧や心拍数等のバイタルデータが正確に測定されて、その設計に反映されることが望ましい。バイタルデータの測定方法としては、被験者にウェアラブル端末を装着させる方法が容易であるため好ましい。
【0069】
以上のように、本実施形態の見守りシステム100で用いられる生活情報には、少なくとも、人の生活活動に密接に関係する水道の使用情報が含まれており、見守りの対象者の生活活動の状況が適切に反映されている。本実施形態の見守りシステム100では、見守りの対象者の健康状態の解析に、そのような確度が高い生活情報と、人の生活活動と健康状態の相関性に基づいて設計されたアルゴリズムALとを用いる。そのため、本実施形態の見守りシステム100によれば、対象者の健康状態を適切に把握することができ、その健康状態に異変が生じる予兆を精度良く検出することができる。よって、利用者は、見守りの対象者の健康状態に異変が生じる可能性を、事前に把握することができる。また、見守りシステム100によれば、例えば、ウェアラブル端末を見守りの対象者に常時装着させてバイタルデータを取得したり、対象者を遠隔カメラで常時監視したりしなくても、見守りの対象者の健康状態の異変の予兆を、容易かつ適切に検出することができる。
【0070】
本実施形態の見守りシステム100によれば、生活情報として、水道使用情報とともに環境情報が取得され、健康状態の異変の予兆の検出に用いられている。これにより、見守りの対象者の生活環境の状況を加味して、見守りの対象者の現在の健康状態を精度良く解析することができるため、見守りの対象者の健康状態に異変が生じる予兆を、さらに精度よく検出することができる。
【0071】
2.他の実施形態:
本開示の技術は、上述の実施形態の構成に限定されることはない。例えば、以下のように改変することが可能である。
【0072】
(1)上記実施形態において、見守りシステム100が取得する生活情報には、少なくとも水道使用情報が含まれていればよく、環境情報については必ずしも取得されなくてもよい。よって、生活情報取得部10は、環境情報取得部15を有していなくてもよい。こうした構成であっても、生活情報には、見守りの対象者の生活活動に密接に関連する水道使用情報が含まれるため、生活情報から見守りの対象者の健康状態の異変の予兆を精度良く検出することが可能である。なお、生活情報は、上記の実施形態で説明したものに限定されることはない。生活情報には、例えば、電気やガスの使用履歴を示す情報や、テレビやラジオなどのメディア機器や通信機器を使用した履歴を示す情報、冷蔵庫や炊事機器の使用履歴を示す情報などが含まれてもよい。その他に、生活情報には、近隣の住人・施設に関する情報や、近隣で開催されるイベント・行事の情報、近隣で行われる工事の情報等が含まれてもよい。
【0073】
(2)上記実施形態において、見守りシステム100の環境情報取得部15は、環境情報として、音情報と、照度情報と、空気情報と、人感情報の全てを取得しなくともよく、少なくとも1つを取得するものとしてもよい。こうした構成であっても、生活情報として、水道使用情報とともに環境情報の少なくとも1つを利用するため、その分だけ、見守りの対象者の健康状態の異変の予兆を検出する精度を高めることができる。環境情報取得部15は、見守りの対象者の住居に複数個設置されてもよい。環境情報取得部15は、見守りの対象者の住居の各部屋に設置されていてもよい。なお、環境情報取得部15によって取得される環境情報は、上記の実施形態で説明したものに限定されることはない。環境情報としては、例えば、気象情報等の近隣の自然環境に関する情報が取得されてもよい。
【0074】
(3)上記の実施形態において、解析部53は、見守りの対象者の健康状態の異変の予兆の1つとして、見守りの対象者がフレイルの状態にある可能性を検出しなくてもよい。解析部53は、それ以外の種々の予兆を検出するものとしてもよい。解析部53は、例えば、風邪などの病気を発症する予兆を検出するものとしてもよい。
【0075】
(4)上記の実施形態において、解析部53のアルゴリズムALは、重回帰分析の考え方を適用したものでなくてもよい。解析部53のアルゴリズムALは、人の生活活動と人の健康状態の相関性に基づくものであればよい。解析部53のアルゴリズムALは、例えば、機械学習やディープラーニングなど、人工知能(AI;Artificial Intelligence)の技術を利用して実現されてもよい。解析部53のアルゴリズムALは、例えば、人の生活活動と健康状態の相関性を学習し、その学習結果を利用して、入力された生活情報から見守りの対象者の健康状態を解析し、異変の予兆を検出する構成であってもよい。
【0076】
(5)上記実施形態において、健康管理部50は、見守りの対象者から取得した生活情報に基づいて、健康状態の異変が生じる予兆を検出するだけでなく、見守りの対象者の現在の健康状態を検出して、利用者に報知するものとしてもよい。その他に、健康管理部50は、利用者に、生活情報に基づいて、例えば、水道が長期間使用されていないなど、利用者の生活状況に異常が発生していることを検出して、利用者に報知するものとしてもよい。
【0077】
(6)上実施形態において、ネットワークNTとしては、インターネット以外のネットワークが用いられてもよい。見守りシステム100は、例えば、ネットワークNTとしてLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)を利用してもよい。
【0078】
(7)上記実施形態において、健康管理部50は、1台のコンピュータによって構成されていなくてもよい。健康管理部50は、ネットワークNTに接続された互いに協働する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。この構成において、上記実施形態において説明した健康管理部50の機能はそれぞれ、ネットワークNTに接続された別のコンピュータによって実現されていてもよい。例えば、生活情報を収集して管理するコンピュータと、生活情報を解析して健康状態の異変の予兆を検出するコンピュータと、利用者に対する報知処理を実行するコンピュータと、が別々にネットワークNTに接続され、互いに協働することにより、健康管理部50を構成するものとしてもよい。また、健康管理部50の機能の一部を、生活情報取得部10や利用者端末UTにおいて実現するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…生活情報取得部、11…水道監視部、12…水道メータ、13…受信器、15…環境情報取得部、20…検出部、21…メータ制御部、23…演算部、24…通信部、28…操作部、30…受信器制御部、31…メータ管理部、32…計測処理部、33…メータ用通信部、35…ネットワーク用通信部、36…表示部、38…操作部、41…センサ制御部、42…音検知部、43…照度検知部、44…空気状態検知部、45…人検知部、48…情報出力部、50…健康管理部、51…制御部、52…生活情報管理部、53…解析部、54…報知処理部、55…通信部、56…記憶部、57…入力部、58…表示部、100…見守りシステム、A…空気情報、AL…アルゴリズム、D…CO濃度、Da…蓄積生活情報、Db…利用者情報、H…人感情報、IL…照度情報、LVa…睡眠レベル、LVb…生活リズム変化レベル、LVc…ストレスレベル、LVd…運動レベル、LVe…認知機能レベル、NT…ネットワーク、P1…ピーク、P2…ピーク、S…音情報、Sa~Se…スコア、T…気温、TL…伝送線、UT…利用者端末、W…水道使用情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7