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特開2023-80452平膜型分離膜エレメントユニット及び平膜型分離膜モジュール
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  • 特開-平膜型分離膜エレメントユニット及び平膜型分離膜モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080452
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】平膜型分離膜エレメントユニット及び平膜型分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20230602BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230602BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B01D63/08
C02F1/44 F
B01D65/02 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193799
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】西口 芳機
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA48
4D006HA93
4D006JA04A
4D006JA06C
4D006JA08A
4D006JA08C
4D006JA19Z
4D006JA30A
4D006JA30C
4D006JA31Z
4D006JB06
4D006KA43
4D006KC02
4D006KC14
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA31
4D006MB02
4D006MC11
4D006MC16
4D006MC29X
4D006MC48
4D006MC63
4D006MC88
4D006NA05
4D006NA10
4D006NA13
4D006NA14
4D006NA46
4D006NA54
4D006NA62
4D006NA64
4D006PA01
4D006PA02
(57)【要約】
【課題】膜分離活性汚泥法における散気の必要エネルギー量を大幅に低減しながら、長期間の安定的な運転を実現することが可能な、分離膜エレメントユニットを提供すること。
【解決手段】可撓性を有し、磁石Aが固着された平膜型分離膜エレメントaと、筐体フレームと、磁石Bと、を備え、前記平膜型分離膜エレメントaは、前記筐体フレームに保持されており、前記磁石Aと前記磁石Bとの同極同士が、対向するように配置されている、平膜型分離膜エレメントユニットを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し、磁石Aが固着された平膜型分離膜エレメントaと、筐体フレームと、磁石Bと、を備え、
前記平膜型分離膜エレメントaは、前記筐体フレームに保持されており、
前記磁石Aと前記磁石Bとの同極同士が、対向するように配置されている、平膜型分離膜エレメントユニット。
【請求項2】
さらに、可撓性を有し、前記筐体フレームに保持された平膜型分離膜エレメントbを備え、該平膜型分離膜エレメントbに、前記磁石Bが固着されている、請求項1記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
【請求項3】
前記平膜型分離膜エレメントaと、前記平膜型分離膜エレメントbとが、互いに隣接し、かつ、略平行に配置されている、請求項2記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
【請求項4】
前記磁石Aが、前記平膜型分離膜エレメントaの透過側に固着されている、請求項1~3のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
【請求項5】
前記磁石Bが、前記平膜型分離膜エレメントbの透過側に固着されている、請求項2~4のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
【請求項6】
前記平膜型分離膜エレメントaと前記平膜型分離膜エレメントbが複数平行に配列されてなる、請求項2~5のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニットと、散気手段と、を備える、平膜型分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平膜型分離膜エレメントユニット及び平膜型分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane Bioreactor)は、活性汚泥槽に分離膜モジュールを浸漬し、活性汚泥と透過水とに分離をする処理方法である。膜分離活性汚泥法は、省スペースでありながら良好な透過水質が実現できるため、国内では小規模な施設を中心に、新設の多い海外では10万m/dayを超える大規模な施設にも、それぞれ導入が進められている。
【0003】
膜分離活性汚泥法では、分離膜モジュールの運転を継続すると、分離膜表面に被処理水中の懸濁物が堆積し、透過水量が低下してしまう。そのため分離膜モジュールの通常運転時においては、下方から加圧気体を送る散気手段によって分離膜表面の流れを乱し、堆積物を剥離させているが、その必要エネルギー量が大きいことが問題視されてきた。
【0004】
分離膜モジュールの構成要素の一つが、分離膜を備える分離膜エレメントであるが、従来の平膜型の分離膜エレメントは、分離膜と組み合わされる支持材やフレームが剛直な場合が多く、散気手段によっても分離膜の振動はほとんど発生せず、その場合における分離膜表面の堆積物を剥離させる作用は、加圧気体の気泡により分離膜表面に生じる、せん断応力のみであった。
【0005】
これに対し、透過側流路材にポリエチレン製のネットや複数の樹脂部を用いながら分離膜エレメント全体の厚みを薄くすることで、一定程度の剛性を確保しつつ、分離膜エレメント全体を可撓性として、分離膜エレメントの振動を発生させて堆積物の剥離を促進させる技術が知られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/004743号
【特許文献2】国際公開第2013/125506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の技術では、分離膜エレメントに振動を発生させることにより、ろ過膜表面の懸濁物の剥離速度を増加させることはできるが、振動による膜面洗浄効果は不十分であり、さらなる散気エネルギーの低減には振動効果をさらに促進させる必要がある。
そこで本発明は、膜分離活性汚泥法における散気エネルギーを低減するために、散気による分離膜エレメントの振動性を増加させ、長期間安定的に運転することが可能な分離膜エレメントユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、次の(1)~(15)を特徴とするものである。
(1)可撓性を有し、磁石Aが固着された平膜型分離膜エレメントaと、筐体フレームと、磁石Bと、を備え、前記平膜型分離膜エレメントaは、前記筐体フレームに保持されており、前記磁石Aと前記磁石Bとの同極同士が、対向するように配置されている、平膜型分離膜エレメントユニット。
(2)さらに、可撓性を有し、前記筐体フレームに保持された平膜型分離膜エレメントbを備え、該平膜型分離膜エレメントbに、前記磁石Bが固着されている、(1)記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
(3)前記平膜型分離膜エレメントaと、前記平膜型分離膜エレメントbとが、互いに隣接し、かつ、略平行に配置されている、(2)記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
(4)前記磁石Aが、前記平膜型分離膜エレメントaの透過側に固着されている、(1)~(3)のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
(5)前記磁石Bが、前記平膜型分離膜エレメントbの透過側に固着されている、(2)~(4)のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
(6)前記平膜型分離膜エレメントaと前記平膜型分離膜エレメントbが複数平行に配列されてなる、(2)~(5)のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニット。
(7)(1)~(6)のいずれか一項記載の平膜型分離膜エレメントユニットと、散気手段と、を備える、平膜型分離膜モジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膜分離活性汚泥法における散気の必要エネルギー量を大幅に低減しながら、長期間の安定的な運転を実現することが可能な、分離膜エレメントユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の平膜型分離膜エレメントユニットの実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の平膜型分離膜エレメントユニットの実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の平膜型分離膜エレメントの実施形態の一例を示す断面図であり、平膜型分離膜エレメントの厚さ中心で膜表面と平行に切断したときの断面図である。
図4図4は、本発明の平膜型分離膜エレメントユニットを含む平膜型分離膜モジュールを用いた水処理装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明の平膜型分離膜エレメントユニットは、磁石A2が固着された平膜型の分離膜エレメントa6と、筐体フレーム1と、磁石B3とを備え、平膜型の分離膜エレメントa6は可撓性を有し、筐体フレーム1に保持されている。ここで、可撓性を有する分離膜エレメントとは、支持板のない自由に動くことができる分離膜エレメントをいう。
【0013】
平膜型分離膜エレメントa6は、分離膜4の透過側の面が互いに対向するように配置され、その内側に流路材が設けられて分離膜対が形成され、さらに透過水集水部が設けられて構成される。さらに、分離膜対の周縁部の少なくとも一部が封止されていてもよい。
【0014】
上記分離膜対は、互いに独立した2枚の分離膜を組み合わせて形成しても構わないし、1枚の分離膜を折り畳んで形成しても構わない。
【0015】
平膜型分離膜エレメントa6の構成要素である分離膜4は、分離対象に応じてその種類を適宜選択すればよく、例えば、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜又は精密ろ過膜が挙げられるが、下廃水処理においては、限外ろ過膜又は精密ろ過膜を選択することが好ましい。
【0016】
平膜型分離膜エレメントa6の構成要素である分離膜4は、適度な強度を保持するため、分離機能層に基材を組み合わせて構成されることが好ましい。分離機能層としては、例えば、セルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリエーテルスルホン膜又はポリスルホン膜が挙げられる。分離機能層の厚さは、透過性能と透過水量とのバランスを好適なものとするため、1~500μmが好ましく、50~200μmがより好ましい。また基材としては、軽量化が容易であるため、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維若しくはポリエチレン繊維等の有機繊維からなる、織編物又は不織布が好ましい。
【0017】
平膜型分離膜エレメントa6の構成要素である分離膜4は、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等を含む製膜原液を基材の表面に塗布し、それを15~80℃の非溶媒に浸漬して凝固させ、分離機能層を形成することにより製造することができる。製膜原液には、上記のポリフッ化ビニリデン系樹脂等の他に、開孔剤としてポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造又は水酸基を有する界面活性剤や、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン又はメチルエチルケトン、さらには非溶媒として水等を含有させても構わない。
【0018】
ここで分離膜対の周縁部の「封止」とは、分離膜対の周縁部が、分離膜対の周縁部からその内部へ、流体が直接的に(分離膜を透過することなく)流入できない状態にされていることをいう。分離膜対の周縁部を封止する方法としては、例えば、分離膜対の周縁部の接着、圧着、溶着、融着又は折り畳みが挙げられる。
平膜型分離膜エレメントが備える分離膜対は、その内部と外部とを連通する、集水部を有する。分離膜を透過した透過水は、この集水部から分離膜対の外部へと取り出される。分離膜対における、透過機能を有する部位の面積をより大きく保持するために、上記集水部は、分離膜対の周縁部に配置されていることが好ましい。
【0019】
集水ノズルを集水部に液密な状態で取り付ける方法としては、例えば、熱溶着又は接着剤を用いた接着が挙げられる。
【0020】
また、「内側」とは、対向する分離膜の透過側の面の間、つまり、分離膜の透過側表面のうち周縁を除いた表面をいう。特に、分離膜が上述のとおり袋状膜を形成している場合、封止部分で囲まれた部分が「内側」に相当し、この領域が実質的にろ過を行う領域となる。
【0021】
透過側流路材5としては、通水性のあるシート状部材(例えば、不織布、織布、ネット等)、分離膜の透過側の面に形成された複数の樹脂部(突起物)、または樹脂部(突起物)を有するシートを用いることができる。これらの中でも、分離膜を透過した透過水の流動抵抗の点から、複数の樹脂部(突起物)または樹脂部(突起物)を有するシートを用いることが好ましい。
【0022】
平膜型分離膜エレメントにおいて、分離膜の透過側に所定の間隙を確保することにより、分離膜を透過した透過水の流動抵抗を小さくすることができる。
分離膜の透過側の間隔は、50~5000μmの範囲が好ましい。分離膜の間隔が、5000μmを超えると、平膜型分離膜エレメントの厚みが大きくなり、平膜型分離膜モジュールに設置することができる平膜型分離膜エレメントの枚数が少なく、総膜面積が小さくなってしまう。また、分離膜の間隔が、50μm未満であると、透過側の内側の空間が狭く透過液の流動抵抗が大きくなり透過液の水量が低下してしまう。分離膜の間隔は、さらに好ましくは500~3000μmの範囲である。
【0023】
平膜型分離膜エレメントa6は磁石A2が固着されている。磁石A2の固着方法は、例えばエポキシ系接着剤を用いて平膜型分離膜エレメントa6に接着固定する。磁石A2は平膜型分離膜エレメントa6の原水側又は透過側のいずれに固着されていても良いが、平膜型分離膜のろ過面積を確保するために透過側に固着されていることが好ましい。
【0024】
磁石B3は、磁石A2と同極同士が対向するように配置されている。図1に示すように、磁石B3は筐体フレーム1に固定されていても良いが、平膜型分離膜エレメントの振動効果を促進するために、図2に示すように、筐体フレーム1に保持された平膜型分離膜エレメントb7に固着されていることが好ましい。平膜型分離膜エレメントb7は磁石B3を備えていること以外は、平膜型分離膜エレメントa6と同じ構成であることが好ましい。磁石B3は平膜型分離膜エレメントb7の原水側又は透過側のいずれに固着されていても良いが、分離膜4のろ過面積を確保するために透過側に固着されていることが好ましい。
平膜型分離膜エレメントa6と平膜型分離膜エレメントb7との間に、磁石を固着していない平膜型分離膜エレメントを設置されていても良いが、平膜型分離膜エレメントa6に固着された磁石A2と平膜型分離膜エレメントb7に固着された磁石B3との反発力を強め、平膜型分離膜エレメントの振動効果を促進するために、平膜型分離膜エレメントa6と平膜型分離膜エレメントb7とが、互いに隣接し、かつ、略平行に配置されていることが好ましい。
隣接する平膜型分離膜エレメントa6と平膜型分離膜エレメントb7の間隔は2~15mmであることが好ましい。隣接する平膜型分離膜エレメントの間隔が、2mm以下であると、運転した際に被処理液中に含まれる汚泥フロック等の固形物が、隣接する平膜型分離膜エレメント間に詰まり、処理能力が低下してしまう可能性がある。また、隣接する平膜型分離膜エレメント間の間隔が、15mm以上であると、磁石A2と磁石B3の反発力が小さく、振動効果が低くなるため、好ましくない。
磁石A2と磁石B3の反発力を高め、平膜型分離膜エレメントの振動効果を促進するために、磁石A2と磁石B3は複数固着されていることが好ましい。
平膜型分離膜エレメントの振動効果を高めるために、磁石A2の少なくとも一つは、平膜型分離膜エレメントa6の保持部から最も離れた位置に固着されていることが好ましい。例えば、図3に示すように、平膜型分離膜エレメントa6が長方形状であり、四隅で保持されている場合、平膜型分離膜エレメントa6の中心に磁石A2が固着されていることが好ましい。
磁石A2と磁石B3の形状は、特に限定されず、円柱状、四角柱状等の任意の形状とすることができる。
複数の平膜型分離膜エレメントの振動効果を高めるために、平膜型分離膜エレメントa6と平膜型分離膜エレメントb7が複数平行に配列されていることが好ましく、平膜型分離膜エレメントa6と平膜型分離膜エレメントb7が複数交互に配列されていることがより好ましい。
【0025】
本発明の平膜型分離膜モジュール8は、図4に示すように、平膜型分離膜エレメントユニット9、散気手段及び集水管により構成されている。平膜型分離膜エレメントユニット9の下方には散気手段が配設されている。散気手段は、ブロワ12に連結されている散気装置11からなる。膜浸漬槽内の原水中に沈められた平膜型分離膜モジュール8の平膜型分離膜エレメントユニット9に向けて下方の散気装置11から空気が噴出される。また、平膜型分離膜モジュール8よりも下流側には透過水16を吸引するポンプ13を設けている。
【0026】
このように構成された下廃水処理装置において、廃水などの被処理液は、ポンプの吸引力により平膜型分離膜エレメントの分離膜を通過する。この際、被処理液中に含まれる微生物粒子、無機物粒子などの懸濁物質がろ過される。そして、分離膜を通過した透過水は、分離膜の透過側に流れ、平膜型分離膜エレメントの端部に配置される集水ノズルを通って分離膜浸漬水槽の外部にポンプを通って取り出される。一方、ろ過と並行して散気装置が気泡を発生し、気泡によって生じる、平膜型分離膜エレメントの膜面に平行な流れが、膜面に堆積した懸濁物を剥離させる。
【実施例0027】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0028】
(i)振動エネルギー
分離膜エレメントの振動性を振動エネルギーにより評価した。振動エネルギーは、分離膜エレメントの重量、振幅、振動数、膜面積によって算出され、その値が大きいほど分離膜エレメントの振動による膜面洗浄効率は高い。その結果、分離膜エレメントの振動性が向上した分から散気量を低減することが可能となり、消費エネルギーを削減することができる。
振動エネルギーは以下の手順で計測、算出した。まず、分離膜モジュールの運転を行っている際の分離膜エレメント周辺の様子を分離膜エレメントの側面から分離膜エレメントの高さ方向に100等分した各位置において高速度カメラで10秒間、隣り合う分離膜エレメント100箇所分について撮影した。分離膜エレメントの位置変動から、振幅および振動数を算出し、次式から、振動エネルギーを算出した。ここで、Iは振動エネルギー、mは分離膜エレメントの重量、Aは分離膜エレメントの振幅、fは分離膜エレメントの振動数、Sは分離膜エレメントの面積である。算出した100箇所の振動エネルギーの中で、最大値をその分離膜エレメントの振動エネルギーとした。
【0029】
【数1】
【0030】
(実施例)
製膜原液用の樹脂成分としてポリフッ化ビニリデン(PVDF、重量平均分子量28万)を用いた。また、開孔材としてポリエチレングリコール(PEG20,000、重量平均分子量20,000)、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、非溶媒としてHOをそれぞれ用いた。これらを95℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を作製した。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF) :15.0重量%
ポリエチレングリコール(PEG20,000) :5.5重量%
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF) :76.0重量%
O :3.5重量%
次いで、密度0.6g/cmのポリエステル繊維製不織布を支持体として、その表面に、調製したポリマー溶液を塗布した。塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬して多孔質樹脂層を形成した。さらに90℃の熱水に2分間浸漬して溶媒であるDMFおよび開孔剤であるPEGを洗い流した。その後、界面活性剤(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)の20重量%水溶液に30分間浸漬した後、75℃の熱風乾燥機にて30分間乾燥して分離膜を製造した。
次に得られた分離膜を幅140mm、長さ280mmで2枚切り出した。このうち1枚の分離膜の透過側の面に、エチレンビニル酢酸共重合樹脂(TEX YEAR INDUSTRIES INC.製、商品名:703A)をホットメルトアプリケーターを用いて、樹脂温度150℃で図2のように塗布した。エポキシ系接着剤を用いて、直径5mm、高さ1mmの円柱状のサマリウムコバルト磁石を図3に示すように、長さ方向及び幅方向に間隔5mmで固着した。一方、もう1枚の分離膜の外周部分、つまり周縁の封止部には、幅5mm、高さ3mm程度の大きさで樹脂を塗布した。
【0031】
その後、分離膜の上に透過側の面が向かい合うようにもう1枚の分離膜を載せ、この分離膜の周辺に、スペーサーとしてアルミ板を設置した。これら2枚の分離膜と、スペーサーとを共に、厚み3mmの2枚の厚み板の間に挟み、125℃のオーブンの中に5分間静置して分離膜の透過側に樹脂を接着させた。樹脂の大きさおよびパターンは長さ5mm、幅5mmの樹脂が長さ方向及び幅方向に間隔5mmを設けられている。高さは1.0mmである。
【0032】
さらに、端部に集水ノズル用の固定治具を取り付け、四隅に貫通孔を空け、平膜型分離膜エレメントを作製した。本平膜型分離膜エレメントを磁石の同局同士が対向するように、水槽内に8枚平行に設置し、貫通孔にシャフトを通し、厚み6mmのスペーサーにより隣り合う分離膜エレメントの間隔を保持し、平膜型分離膜エレメントユニットを作製した。さらに、下方に散気管を設置し平膜型分離膜モジュールを作製した。
そして、散気流量がエレメント1枚あたり3L/minとなるように散気風量を調整して、散気を行い、振動エネルギーの測定を行った結果、0.4N/mを示し、優れた値を示した。
(比較例)
サマリウムコバルト磁石の代わりにエチレンビニル酢酸共重合樹脂(TEX YEAR INDUSTRIES INC.製、商品名:703A)を塗布した以外は実施例と同様にして、平膜型分離膜エレメントを作製し、振動エネルギーの測定を行った。振動エネルギーは0.3N/mを示し、実施例の結果と比較して劣るものであった。
【符号の説明】
【0033】
1 筐体フレーム
2 磁石A
3 磁石B
4 分離膜
5 透過側流路材
6 平膜型分離膜エレメントa
7 平膜型分離膜エレメントb
8 平膜型分離膜モジュール
9 平膜型分離膜エレメントユニット
10 分離膜浸漬水槽
11 散気装置
12 ブロア
13 吸引ポンプ
14 被処理水入口
15 被処理水出口
16 透過水
図1
図2
図3
図4