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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080464
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/18 20060101AFI20230602BHJP
   E03C 1/084 20060101ALI20230602BHJP
   A47K 3/28 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B05B1/18
E03C1/084
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193824
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】板頭 伸明
【テーマコード(参考)】
2D060
2D132
4F033
【Fターム(参考)】
2D060CA07
2D060CC03
2D060CC16
2D060CC17
2D132FA03
2D132FB03
2D132FC02
2D132FJ12
2D132FJ16
2D132FJ22
4F033AA11
4F033BA02
4F033BA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033FA03
4F033GA01
4F033GA11
4F033LA05
4F033LA06
4F033LA09
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】泡沫水による良好なシャワー吐水を実現できる吐水装置を提供する。
【解決手段】吐水装置1は、吐水装置1は、噴射部(噴射孔31A)、吸入部(吸入孔32A)、混合部(下流側空間R2)、及び散水部(散水部材50)を備えている。噴射部は、通水路Pを絞った形状であり、水を下流側へ噴射する。吸入部は、噴射部から噴射された水の勢いによって空気を吸入する。混合部は、噴射部から噴射された水と吸入部から吸入された空気とを混合して泡沫水を生成する。散水部は複数の散水孔51を形成している。複数の散水孔51は、混合部において生成された泡沫水を吐出する。散水部は、衝突部(第1領域52A)を有している。衝突部は、噴射部から噴射された水が衝突する。複数の散水孔51は、この衝突部の外周側に拡がる領域(第2領域52B)において、衝突部を中心とする同一円周としてのピッチ円P3上にそれぞれ開口している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の通水路を流通する水に空気を混入させて泡沫水として吐出する吐水装置であって、
前記通水路を絞った形状であり、水を下流側へ噴射する噴射部と、
前記噴射部から噴射された水の勢いによって空気を吸入する吸入部と、
前記噴射部から噴射された水と前記吸入部から吸入された空気とを混合して泡沫水を生成する混合部と、
前記泡沫水を吐出する複数の散水孔が形成された散水部と、
を備えており、
前記散水部は、前記噴射部から噴射された水が衝突する衝突部を有しており、
前記複数の散水孔は、前記衝突部の外周側に拡がる領域において、前記衝突部を中心とする同一円周上にそれぞれ開口している、吐水装置。
【請求項2】
前記散水部は軟質材によって形成されている請求項1に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の吐水装置を開示している。この吐水装置は、内部の通水路を流通する水に空気を混入させて泡沫水として吐出する。この吐水装置は、泡沫水をシャワー状に吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-155410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の吐水装置は、通水路の形状が複雑である。このような吐水装置は、通水路を流通する過程で水の勢いが低下してしまい、均一なシャワー吐水を実現できないおそれがある。
【0005】
本開示は、泡沫水による良好なシャワー吐水を実現できる吐水装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る吐水装置は、内部の通水路を流通する水に空気を混入させて泡沫水として吐出する吐水装置であって、前記通水路を絞った形状であり、水を下流側へ噴射する噴射部と、前記噴射部から噴射された水の勢いによって空気を吸入する吸入部と、前記噴射部から噴射された水と前記吸入部から吸入された空気とを混合して泡沫水を生成する混合部と、前記泡沫水を吐出する複数の散水孔が形成された散水部と、
を備えており、前記散水部は、前記噴射部から噴射された水が衝突する衝突部を有しており、前記複数の散水孔は、前記衝突部の外周側に拡がる領域において、前記衝突部を中心とする同一円周上にそれぞれ開口している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る吐水装置の設置状態を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態に係る吐水装置を示す要部側面断面図である。
図3】実施形態に係る吐水装置を示す要部分解斜視図である。
図4図2のIV-IV線相当断面図である。
図5】実施形態に係る絞り部材を示す断面図であり、図2のIV-IV線相当断面を示す。
図6】実施形態に係る絞り部材を上流側から見た図である。
図7】実施形態に係るブッシング及び散水部材を示す断面図であり、図2のIV-IV線相当断面を示す。
図8】実施形態に係る散水部材を上流側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本実施形態に係る吐水装置1は、図1に示すように、洗面所の洗面ボウル100の周縁部等の水回りに設置される。洗面ボウル100は被取付部110を有している。被取付部110は、洗面ボウル100において吐水装置1が取り付けられる部分である。被取付部110の上面である被取付面110Aは、略水平な平坦面をなしている。
【0009】
吐水装置1は、基端部1Aにおいて被取付面110Aに取り付けられている。吐水装置1は、先端部に水を吐出する吐水部2を形成している。洗面ボウル100の下方には図示しない即湯ユニットが設けられている。即湯ユニットは、給水源から供給される常温の水を適温の温水に瞬間的に沸かし上げる。即湯ユニットは、毎分1リットル程度の比較的少量の温水を沸かし上げる。吐水装置1は、この即湯ユニットから供給される比較的少量の温水を吐出する。
【0010】
吐水装置1は自動水栓である。図2に示すように、吐水装置1は、吐水部2の上方に検知部3を設けている。検知部3は、例えば赤外光等を利用した光電センサを有して構成される。検知部3は、吐水部2の正面に差し出された使用者の手等の被検出体を検知する。吐水装置1は、検知部3の検知に基づいて図示しない電磁弁を開放し、内部に形成した通水路Pに水を流通させる。吐水装置1は、通水路Pを流通する水に対して空気を混入させ、泡沫水として吐水部2から吐出する。
【0011】
図2から図4に示すように、吐水装置1は、部品構成的には、吐水管10、通水部材20、絞り部材30、ブッシング40、散水部材50等を備えて構成されている。吐水管10は金属製であり、円管状をなしている。吐水管10は、被取付面110Aに固定された基端側から上方に延び、先端側に向かって湾曲しつつ下方に延びるいわゆるグースネック形状をなしている。吐水管10は、給水ホースHを内部の空間に収納している。給水ホースHの上流側端部は、被取付部110を貫通して下方に延び、図示しない即湯ユニットに接続される。給水ホースHの先端側は、通水部材20における接続部21に接続される。
【0012】
通水部材20は、吐水管10の先端部に収納されている。詳細には、通水部材20は、吐水管10の先端部における検知部3の下側に収納されている。通水部材20は樹脂成形品であり、一方の方向に長い長尺状をなしている。通水部材20は、通水路Pとなる空間を内部に形成した筒状をなしている。通水部材20における内部空間は、長手方向に沿って貫通している。通水部材20の上流側端部には給水ホースHとの接続部21が設けられている。
【0013】
通水部材20は収納部22を形成している。収納部22は、通水部材20における下流側端部に設けられている。収納部22は、上流側の通水路Pに連通している。収納部22は、図2から図4に示す軸Cを中心軸とする円筒状の外形形状をなす空間を形成している。収納部22は、絞り部材30、ブッシング40、及び散水部材50を収納する。収納部22は、上流側から絞り部材30、ブッシング40、及び散水部材50の順に、これら各部材を配置する。絞り部材30、ブッシング40、及び散水部材50は、概ね円筒状、及び概ね円柱状のいずれかの形状をなしており、収納部22内において各部材の中心軸を軸Cに同軸にして配置される。収納部22は、内周面にめねじ22Aを形成している。めねじ22Aは、ブッシング40の外周面に形成されたおねじ40Aと螺合する。
【0014】
絞り部材30は、ABS等の樹脂成形品である。図5に示すように、絞り部材30は、隔壁31及び周壁32を有する筒状に形成されている。絞り部材30は、これら隔壁31及び周壁32によって、上流側空間R1と下流側空間R2とを形成している。上流側空間R1及び下流側空間R2は、通水路Pを構成する。上流側空間R1は、上流側において、通水部材20側の通水路Pに連通している。絞り部材30は、周壁32における上流側の端部において、ゴムパッキンGを介して通水部材20に接続されている。これによって、上流側空間R1は、通水部材20側の通水路Pに連通している。絞り部材30の上流側にはメッシュフィルタFが取り付けられる。
【0015】
隔壁31は、絞り部材30における内部空間を上流側空間R1と下流側空間R2とに区画する。隔壁31は円板形状をなしている。隔壁31は、絞り部材30における上流側端部寄りの位置に設けられている。上流側空間R1は、隔壁31における上流側端面と周壁32の内周面とによって、軸Cに沿った方向を厚さ方向とする円板状の外形形状をなしている。
【0016】
下流側空間R2は、本開示に係る混合部の一例である。下流側空間R2は、隔壁31における下流側端面と周壁32の内周面とによって、軸Cの方向において上流側空間R1よりも長い空間を形成している。下流側空間R2は、下流側において、散水部材50における後述する背面壁52に閉塞されている。下流側空間R2は、全体として、上流側空間R1における外径よりも小さい外径を有する断面形状を有している。下流側空間R2は、下流側に向かうにつれて断面積が拡大する形態である。
【0017】
具体的には、下流側空間R2は、図5に示すように、上流側から基部R21、中間部R22、及び出口部R23の順に軸C方向に連結された形状をなしている。基部R21は、軸Cの方向に偏平な円柱状の外形形状をなしている。中間部R22は、基部R21の下流端から段差状に拡開して形成されている。中間部R22は、基部R21の外径よりも大きな外径を有する円柱状の外形形状をなしている。中間部R22の軸Cに沿った方向の長さは、基部R21よりも大きい。出口部R23は、中間部R22の下流端からテーパ状に拡開する円錐台状の空間形状をなしている。
【0018】
図5及び図6に示すように、隔壁31は噴射孔31Aを形成している。噴射孔31Aは、本開示に係る噴射部の一例である。噴射孔31Aは、隔壁31を板厚方向に貫通して形成されている。噴射孔31Aは、隔壁31によって隔てられた上流側空間R1と下流側空間R2とを連通している。噴射孔31Aは、上流側空間R1から流入した水を下流側空間R2内に噴射する。本実施形態の場合、噴射孔31Aは複数形成されている。図6に示すように、複数の噴射孔31Aは、隔壁31の中心部に形成されている。詳細には、複数の噴射孔31Aは、軸Cを中心とする直径の異なる2つのピッチ円P1,P2上に6つずつ、60°毎の等間隔で配置されている。内外の各ピッチ円P1,P2上の噴射孔31Aは、周方向の位相を30°ずらして配置されている。
【0019】
各噴射孔31Aは、軸Cに対して平行に延びている。すなわち、各噴射孔31Aは、互いに平行に延びている。各噴射孔31Aは、下流側に向かうにつれて縮径して形成されている。複数の噴射孔31Aの流路面積は、通水路Pを構成する上流側空間R1及び下流側空間R2の断面積よりも十分に小さい。すなわち、噴射孔31Aは、通水路Pとしての上流側空間R1及び下流側空間R2を絞った形状である。
【0020】
図5に示すように、周壁32は、両端が開口した円筒形状をなしている。周壁32は吸入孔32Aを形成している。吸入孔32Aは、本開示に係る吸入部の一例である。吸入孔32Aは、周壁32の外側の空気を下流側空間R2内に吸入する。吸入孔32Aは、周壁32を貫通して形成されている。吸入孔32Aは、周壁32の内側空間と外側空間とを連通している。詳細には、吸入孔32Aは、一端が下流側空間R2を形成する周壁32の内周面に開口し、他端が周壁32の外周面に開口している。吸入孔32Aから吸入される空気は、噴射孔31Aから下流側空間R2内に噴射される水の勢いによって下流側空間R2に吸い込まれ、水に混入する。噴射孔31Aから下流側空間R2内に噴射された水は、空気が混入することによって、下流側空間R2内において泡沫水となる。
【0021】
本実施形態において、吸入孔32Aは、周壁32における周方向の2箇所に形成されている。図5に示すように、2つの吸入孔32Aは、軸Cを中心とする周方向の互いに対向する位置に形成されている。各吸入孔32Aは、下流側空間R2において、周壁32の内周面における隔壁31寄りの位置にそれぞれ開口している。各吸入孔32Aは、周壁32の周方向を長手方向とする断面長円状に形成されている。
【0022】
図5及び図6に示すように、絞り部材30はリブ33を有している。リブ33は、隔壁31の上流側端面から突出して形成されている。リブ33は複数設けられている。複数のリブ33は、軸Cを中心として放射状に延びている。各リブ33は、隔壁31における複数の噴射孔31Aの形成範囲よりも外側にのみ形成されている。これら複数のリブ33は、メッシュフィルタFが隔壁31の表面に密着するのを阻止する作用の他、隔壁31表面における径方向外側を流通する水を中心の噴射孔31A側に案内する作用、隔壁31の表面を流通する水が軸C周りに回転しようとする流れを抑制する作用等を有している。
【0023】
ブッシング40は、ABS等の樹脂成形品である。図7に示すように、ブッシング40は円筒形状をなしている。ブッシング40は、内部の空間に絞り部材30を収容する(図4参照)。絞り部材30は、ブッシング40内の上流側の空間に配置される。ブッシング40の内周面と絞り部材30の外周面との間にはOリングOが介在する。ブッシング40は、外周面に上述のおねじ40Aを形成している。ブッシング40は、おねじ40Aを収納部22のめねじ22Aにねじ込むことによって、絞り部材30とともに収納部22内に固定される。
【0024】
図7に示すように、ブッシング40は連通孔40Bを形成している。連通孔40Bは、ブッシング40の周壁を貫通して形成されている。連通孔40Bは、ブッシング40に絞り部材30を収容した状態において、絞り部材30の吸入孔32Aと連通する(図4参照)。吸入孔32Aから吸入される空気は連通孔40Bを介して外部から取り込まれる。
【0025】
散水部材50は、本開示に係る散水部の一例である。図7に示すように、散水部材50は、ブッシング40における下流側端部に取り付けられている。散水部材50は円柱形状をなしている。散水部材50は複数の散水孔51を形成している。複数の散水孔51は、下流側空間R2内において生成された泡沫水をスプレー状に吐水する。ここでいう「スプレー状吐水」とは、霧状の吐水とは異なり、泡沫状の通常のシャワー吐水である。
【0026】
本実施形態の場合、散水孔51は6つ形成されている。各散水孔51は、散水部材50を軸Cの方向に貫通している。各散水孔51は、軸C周りに60°の等間隔で形成されている。各散水孔51は、直径と比較して軸方向長さが大きな細長い外形形状である。各散水孔51は、上流側から下流側に向けて、軸Cから徐々に離れるように軸Cに対して傾斜して形成されている。
【0027】
散水部材50は、ブッシング40と一体に形成されている。具体的には、散水部材50は、予め成形した樹脂製のブッシング40を金型にインサートし、この状態で金型内に散水部材50を形成する材料を射出することによって、ブッシング40に一体成形される。これによって、散水部材50は、上流側端部においてブッシング40に固定された形態である。散水部材50の下流側端部は、ブッシング40における下流側端面から突出している。散水部材50は、エラストマー、ゴム等の弾性変形自在な軟質材によって形成されている。
【0028】
図7及び図8に示すように、散水部材50は背面壁52を有している。背面壁52は、散水部材50における上流側端部に位置する。背面壁52は、絞り部材30がブッシング40内に配置された状態において、下流側空間R2に臨んでいる。背面壁52は、下流側空間R2を介して隔壁31に対向している。背面壁52における上流側端面は、外周側から軸C側に向かうにつれて下流側に傾斜するすり鉢状をなしている。この上流側端面がなす形状は、軸Cに直交する平面に対し、例えば角度3°程度の緩い傾斜をなす形状である。
【0029】
背面壁52における上流側端面は、第1領域52Aと第2領域52Bとの2つの領域に区分される。第1領域52Aは、本開示に係る衝突部の一例である。第1領域52Aは、背面壁52の上流側を向いた面において、軸C寄りの中央部に位置する。第1領域52Aは、噴射孔31Aから噴射された水が衝突する領域である。第2領域52Bは、第1領域52Aの外周側に拡がり、第1領域52Aを取り囲む領域である。第2領域52Bの壁面は、第1領域52Aの壁面との境界から段差なく連続している。第2領域52Bには、複数の散水孔51における各上流側開口51Aが開口している。各上流側開口51Aは、軸Cを中心とするピッチ円P3上に60°間隔で配置されている。
【0030】
図7及び図8に示すように、散水部材50は、上流側凹部53、及び下流側凹部54を有している。上流側凹部53は背面壁52における第1領域52Aに設けられている。上流側凹部53は、背面壁52を下流側に窪ませた形態である。上流側凹部53は半球状に窪んだ形状をなしている。図8に示すように、上流側凹部53の開口縁53Aの直径は、複数の噴射孔31Aにおけるピッチ円P1,P2の各直径と比較して、ピッチ円P1よりも大きく、ピッチ円P2より小さい。背面壁52に噴射孔31Aを軸Cの延伸方向に投影すると、複数の噴射孔31Aのうち、ピッチ円P1上の噴射孔31Aは、上流側凹部53の開口縁53Aに跨る。これによって、ピッチ円P1上の噴射孔31Aから噴射される水は、その一部が凹部53内の凹面に衝突し、他の一部は凹部53の外側の平坦面に衝突する。これに対し、ピッチ円P2上の噴射孔31Aから噴射される水は、第1領域52A内の平坦面に衝突する。
【0031】
下流側凹部54は、散水部材50における下流側端部から上流側に窪んだ形態である。下流側凹部54は、上流側凹部53の深さと比較して大きな深さで窪んでいる。下流側凹部54は、散水部材50の肉抜きを目的として設けられている。散水部材50は、下流側凹部54を設けたことによって、極端な厚肉部分が形成されるのを回避している。これによって、散水部材50は、自在な弾性変形を実現している。
【0032】
上記構成の吐水装置1の作用について説明する。吐水装置1は、吐水部2の正面に差し出された使用者の手等の被検出体を検知部3が検知することによって吐水開始される。吐水装置1において、通水路Pを流通して収納部22内の上流側空間R1に到達した水は、絞り部材30における噴射孔31Aにおいて絞られる。これによって、噴射孔31Aを通過する水は加速され、下流側空間R2内に勢いよく噴射される。
【0033】
下流側空間R2では、噴射孔31Aから噴射された水の勢いによって、吸入孔32Aから空気が吸入される。下流側空間R2内に吸入された空気は、噴射孔31Aから噴射された水に混入する。このように、下流側空間R2では、噴射孔31Aから噴射された水と、吸入孔32Aから吸入された空気と、が混合され、泡沫水が生成される。
【0034】
この時、噴射孔31Aから噴射された水は、散水部材50における背面壁52に衝突する。この衝突によって水が下流側空間R2内に広く拡散し、水と空気との混合が促進される。本実施形態の場合、噴射孔31Aは複数形成されており、複数の噴射孔31Aは、直径の異なる2つのピッチ円P1,P2上に配列されている。これら複数の噴射孔31Aのうち、ピッチ円P1上の噴射孔31Aから噴射された水は、その一部が平坦面に衝突する。これに対し、ピッチ円P1上の噴射孔31Aから噴射された水のうちの他の一部は、散水部材50における上流側凹部53の凹面に衝突する。上流側凹部53内では、凹面に衝突した水同士が互いに更に衝突し合う。これによって、吐水装置1は下流側空間R2内における水の一層の拡散が促される。その結果、吐水装置1は、簡易な構成でありながら、水と空気とを良好に撹拌させることができ、空気を良好に混入させた泡沫水を生成可能である。
【0035】
下流側空間R2において生成された泡沫水は、散水部材50における複数の散水孔51からシャワー吐水される。複数の散水孔51は、散水部材50の背面壁52において、第1領域52Aの周囲の第2領域52Bに開口している。第2領域52Bは、噴射孔31Aから噴射された水が衝突する領域である第1領域52Aの外周側に拡がる領域である。すなわち、散水孔51の上流側開口51Aは、噴射孔31Aから噴射された水が直接的に衝突しない領域である第2領域52Bに開口している。このため、吐水装置1は、噴射孔31Aから噴射された水が散水孔51内に直接的に進入することが回避される。これによって、吐水装置1は、水に空気を良好に混入させた泡沫水を吐出可能である。
【0036】
複数の散水孔51は、第1領域52Aの周囲の第2領域52Bに開口している。すなわち、散水孔51の上流側開口51Aは、第1領域52Aに近接した領域である第2領域52Bに開口している。第1領域52A及び第2領域52Bは、いずれも下流側空間R2に臨む領域である。このような簡易な構成でありながら、吐水装置1は、小流量の水から泡沫水を良好に生成可能であり、且つ生成した泡沫水を水勢の低下を抑えつつ散水孔51に流入させて吐水することが可能である。
【0037】
複数の散水孔51における上流側開口51Aは、第2領域52Bにおいて、軸C上の点を中心とするピッチ円P3上にそれぞれ開口している。すなわち、複数の散水孔51は、軸Cからの距離が等しく配置されている。このため、散水部材50における上流側端面中央部の第1領域52Aの壁面に衝突した水は、各散水孔51に向けて等距離移動し、各散水孔51に均等に進入する。これによって、吐水装置1は、泡沫水の各散水孔51からの均等吐出を実現している。
【0038】
吐水装置1は、ピッチ円P3上に開口する複数の散水孔51のみを形成し、他の散水孔は形成していない。これによって、吐水装置1は、限られた流量における水勢の確保と泡沫水を均等吐出とを実現している。例えば、ピッチ円P3上の複数の散水孔51に加え、ピッチ円P3の内側及び外側の少なくとも一方に更なる散水孔が形成されている場合を想定する。この場合、ピッチ円P3上の散水孔51と、その他の散水孔とから均等に水を吐出しようとすると、均等化を図るための更なる部材が必要となり、構成の複雑化を招いてしまう。これに対し、複数の散水孔51がピッチ円P3上のみに開口して形成されている場合、均等化のための他部材を必要とすることなく、各散水孔51からの均等な吐水を実現できる。
【0039】
複数の散水孔51は、上流側から下流側に向けて、軸Cから徐々に離れるように軸Cに対して傾斜しつつ延びている。これによって、複数の散水孔51から吐出される泡沫水は、軸Cに対して平行な散水孔が形成されている場合と比較して、軸Cから離れる方向への広がりをもって吐出される。このため、吐水装置1は、即湯ユニットから供給される比較的限られた流量の水であっても、水勢を確保して、各散水孔51からの均一なシャワー吐水を広範囲に吐出することが可能である。
【0040】
散水部材50は軟質材で形成されており、弾性変形自在である。このため、例えば、散水孔51に水垢が蓄積した場合等において、擦ることによって散水部材50の変形を生じさせ、散水部材50の壁面から水垢を容易に剥がすことができる。
【0041】
以上のように、吐水装置1は、内部の通水路Pを流通する水に空気を混入させて泡沫水として吐出する装置である。吐水装置1は、噴射部としての噴射孔31Aと、吸入部としての吸入孔32Aと、混合部としての下流側空間R2と、散水部としての散水部材50とを備えている。噴射孔31Aは、通水路Pを絞った形状であり、水を下流側へ噴射する。吸入孔32Aは、噴射孔31Aから噴射された水の勢いによって空気を吸入する。下流側空間R2は、噴射孔31Aから噴射された水と吸入孔32Aから吸入された空気とを混合して泡沫水を生成する。散水部材50は複数の散水孔51を形成している。複数の散水孔51は、下流側空間R2において生成された泡沫水を吐出する。散水部材50は、衝突部としての第1領域52Aを有している。第1領域52Aは、噴射孔31Aから噴射された水が衝突する。複数の散水孔51は、この第1領域52Aの外周側に拡がる第2領域52Bにおいて、第1領域52Aを中心とする同一円周としてのピッチ円P3上にそれぞれ開口している。
【0042】
このように、吐水装置1は、噴射孔31Aから噴射された水を第1領域52Aに衝突させて撹拌し、泡沫水を良好に生成する。吐水装置1は、内部の通水路Pの構成が単純であるため、通水路Pを流通する過程における水勢の低下を抑制しつつ、泡沫水を生成することができる。生成された泡沫水は、ピッチ円P3上に開口する複数の散水孔51から吐出される。すなわち、複数の散水孔51は、第1領域52Aからの距離が均等であるため、各散水孔51に均等に泡沫水を流入させることができ、均一なシャワー吐水を実現できる。したがって、吐水装置1は、泡沫水による良好なシャワー吐水を実現できる。
【0043】
散水部材50は軟質材によって形成されている。このため、擦るなどして散水部材50に弾性変形を生じさせることによって、各散水孔51に蓄積した水垢等の蓄積物を容易に取り除くことができる。
【0044】
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態1の開示に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も含まれる。
【0045】
吐水装置の構成は、上記実施形態に限定されない。吐水装置は、噴射部、吸入部、混合部、及び散水部のそれぞれを別部材によって構成してもよいし、噴射部、吸入部、混合部、及び散水部のいずれか2つ以上を1つの部材によって構成してもよい。吐水装置は、例えば、手動で操作されることによって吐止水を操作する操作部を有するいわゆる手動水栓として機能するものであってもよいし、自動水栓と手動水栓の両方として機能するものであってもよい。
【0046】
噴射部の構成は上記実施形態に限定されない。上記実施形態のように噴射部が噴射孔を形成して構成される場合、噴射孔の大きさ、断面形状等は特に限定されない。噴射孔の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。噴射孔が2つ以上形成されている場合、各噴射孔は、噴射される水が衝突部に衝突する構成である限り、それぞれ異なる方向に延びて形成されていてもよい。
【0047】
吸入部の構成は上記実施形態に限定されない。上記実施形態のように吸入部が吸入孔を形成して構成される場合、噴射孔の大きさ、断面形状等は特に限定されない。吸入孔の数は、1つであってもよいし、2つ以上の複数であってもよい。
【0048】
混合部の構成は上記実施形態に限定されない。構成の簡素化といった観点から、混合部は、上記実施形態のように、水と空気とを混合する空間を形成する構成が好ましい。
【0049】
散水部の構成は上記実施形態に限定されない。散水部が軟質材で形成される場合、その材料は、特に問わない。散水部は、例えば、弾性変形困難な硬質な材料で形成されていてもよい。
【0050】
散水孔の大きさ、長さ、断面形状等は特に限定されない。散水孔の数は、2つから5つであってもよいし、7つ以上であってもよい。均等なシャワー吐水の実現といった観点から、複数の散水孔は、同サイズ、同形状であることが好ましい。複数の散水孔は、互いに平行に延びて形成されていてもよい。
【0051】
吐水装置が吐水管を備えて構成される場合、吐水管の外形形状、断面形状等は上記実施形態に限定されない。吐水管は、例えば、直線状に延びる外形形状であってもよい。吐水管の断面形状は、例えば、長円状、多角形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…吐水装置、31A…噴射孔(噴射部)、32A…吸入孔(吸入部)、50…散水部材(散水部)、51…散水孔、52A…第1領域(衝突部)、52B…第2領域(衝突部の外周側に拡がる領域)、P…通水路、P3…ピッチ円(衝突部を中心とする同一円)、R2…下流側空間(混合部)
図1
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図8