(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080479
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】乗員見守りシステム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/24 20060101AFI20230602BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20230602BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20230602BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G08B21/24
G08B21/00 U
G08B25/00 510M
B60R11/04
G08B21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193846
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 峻
(72)【発明者】
【氏名】田岡 巧
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
【テーマコード(参考)】
3D020
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BB02
3D020BC04
5C086AA22
5C086AA52
5C086BA22
5C086CA10
5C086CA12
5C086CA15
5C086CA19
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086EA45
5C086FA02
5C086FA11
5C086FA17
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA11
5C087AA19
5C087AA42
5C087AA44
5C087DD03
5C087DD13
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG10
5C087GG14
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乗員自身や運転制御者に注意を喚起し、その結果乗員の安全を確保する乗員見守りシステムを提供する。
【解決手段】乗合型車両90の座席92に着座した乗員99を見守る乗員見守りシステム1であって、乗員99の乗員情報を取得する検知要素2と、乗員情報を基に乗員99の三次元的な頭部位置を設定し、かつ、座席92に着座した前記乗員99の頭部位置を基に頭部安全可動域を乗員の前後方向、左右方向及び上下方向について設定した上で記頭部位置を連続的に監視して前記頭部位置が頭部安全可動域から外れたと判定した場合に注意喚起を行う制御要素3と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗合型車両の座席に着座した乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に前記乗員の三次元的な頭部位置を設定し、かつ、前記座席に着座した前記乗員の前記頭部位置を基に頭部安全可動域を前記乗員の前後方向、左右方向及び上下方向について設定した上で、前記頭部位置を連続的に監視して前記頭部位置が前記頭部安全可動域から外れたと判定した場合に注意喚起を行う制御要素と、を具備する乗員見守りシステム。
【請求項2】
前記検知要素は、前記乗員情報として前記乗員の画像情報を取得するカメラを含む、請求項1に記載の乗員見守りシステム。
【請求項3】
前記検知要素は、前記乗員情報として前記乗員の頭部の位置情報を取得する距離センサを含む、請求項1又は請求項2に記載の乗員見守りシステム。
【請求項4】
前記頭部安全可動域の大きさは、前記乗員の前後方向において、前記乗員の左右方向よりも小さい、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の乗員見守りシステム。
【請求項5】
前記座席における左右方向の一端部は前記乗合型車両の客室を区画する壁部に面し、他端部は前記客室の通路に面し、
前記頭部安全可動域の大きさは、前記他端部側において前記一端部側よりも小さい、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の乗員見守りシステム。
【請求項6】
前記頭部安全可動域の大きさは、前記乗員の前後方向においては前側の方が小さく、前記乗員の左右方向においては前記乗合型車両の客室における通路側の方が小さく、かつ、前記乗員の上下方向においては上側の方が小さい、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の乗員見守りシステム。
【請求項7】
前記制御要素は、
前記乗員情報に基づいて前記乗員が着座したと判定し、その後、前記頭部位置の位置変化量が所定量以下である状態が所定期間継続した場合に、前記頭部安全可動域を設定し、さらに、
一定時間ごとに前記頭部安全可動域を再設定する、請求項1~請求項6の何れか一項に記載の乗員見守りシステム。
【請求項8】
前記制御要素は、前記乗員情報を基に前記乗員の肩部位置を設定し、前記頭部安全可動域は前記頭部位置及び前記肩部位置を含む、請求項1~請求項7の何れか一項に記載の乗員見守りシステム。
【請求項9】
前記制御要素は、前記注意喚起として、
前記乗合型車両の客室内の画像と、前記画像に重ねられた注意喚起サインと、を前記客室に配置されたモニタに表示する、請求項1~請求項8の何れか一項に記載の乗員見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバス等の乗合型車両に搭載される乗員見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バス等の乗合型車両は、乗員が起立している状態で走行することが可能である。起立している乗員は、着座している乗員に比べて、重心が高く不安定であるために、乗合型車両の走行状態等によっては当該乗員が転倒する虞がある。
【0003】
乗合型車両の乗員を転倒等から保護するために、客室を監視し乗員を見守るための乗員見守りシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、着座又は起立した状態の乗客を輸送する車両に搭載される車内監視装置が紹介されている。当該車内監視装置は、前記乗客の乗車状態を把握する乗車状態把握手段と、前記車両の走行状態を把握する走行状態把握手段と、前記乗車状態及び前記走行状態に基づいて前記乗客の安全に関する報知を行う報知手段と、を備える。
【0005】
当該特許文献1には、着座しているまたは起立している等の乗員の状態を検知するために、車内カメラ及び車内センサを用い得る旨が開示されている。また、このうち車内センサとして、超音波センサ、赤外線センサ、圧力センサ、接触センサ、3D距離画像センサが例示されている。特許文献1では、これらの車内センサを用いて乗員の位置及び姿勢を検知するとされている。
【0006】
ここで、この種の車内監視装置においては、乗員の姿勢を検知し、その検知結果に基づいて、乗員が不安定な体勢にあるかを判定するのが一般的である。
【0007】
特許文献1の〔0035〕段落には、車内カメラの画像を処理して車両内を上方からみた俯瞰画像を取得し、当該俯瞰画像に基づいて乗員の位置及び姿勢を特定する旨が説明されている。また、特許文献1の〔0037〕段落には、乗員が着座しているか否かを判定するのに際し、複数の超音波センサで検知した情報を用いる旨が記載されている。特許文献1では、これらの情報を基に、起立している乗員を検知して当該乗員が危険であると判定している。
【0008】
ここで、近年では、単に立っている乗員について危険であると判定するのではなく、乗員の姿勢が変化したときに、当該乗員が危険であると判定することが提案されている。
例えば特許文献2には、乗客が搭乗する車両の床に設置され、前記乗客の足を検出する床センサと、前記床センサで検出された前記乗客の足に関するデータを用いて、前記車両内における前記乗客の状態をモニタリングするモニタリング部と、を備える、乗員監視システムが紹介されている。
【0009】
上記した特許文献2に紹介されている当該乗員監視システムによると、起立している乗員を検知できるだけでなく、移動している乗員を検知することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-62414号公報
【特許文献2】特開2021-77390号公報
【特許文献3】特開2019-12304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した特許文献1及び特許文献2に紹介されているような乗員監視システムによると、乗員が起立したり歩行したりしている場合、換言すれば、乗員が既に危険な状態にある場合に、当該乗員が危険であると判定し、当該判定結果に基づいて乗員や運転者等に注意喚起を行うことができる。
しかし、上記した類いの従来の乗員監視システムによると、既に危険な状態にある乗員について危険であるとの判定をすることは可能であっても、それ以外の状態の乗員について当該乗員が危険であるか否かの判定をすることは困難である。
【0012】
例えば、着座している乗員が走行時に起立しようとする場合、完全に起立するまでの間の乗員の姿勢は非常に不安定になるために、転倒等の危険が乗員に生じる可能性がある。このような乗員の姿勢の変化を検知し又は予測することで乗員の危険判定を行うには、上記した従来の技術では不足する。
【0013】
特許文献3には、車両に搭載されたカメラにて撮影された画像を入力する入力部と、前記画像に含まれる移動物を検出すると共に、前記移動物の種別を判定する移動物検出部と、前記移動物に含まれる人体の骨格を認識する骨格認識処理部と、前記移動物の種別ごとに前記骨格の動きに基づいて前記移動物の移動状態を求める移動状態算出処理部と、前記移動状態算出処理部にて算出された移動状態の情報を出力する出力部と、を備える移動物認識装置が紹介されている。
【0014】
当該特許文献3では、移動物として、歩行者、自転車、自動車、バイク、手動車椅子、電動車椅子、キックボード、ローラースケート等が例示され、当該移動物に含まれる人体の骨格を基に、人体の関節の動きを捉え得るとされている。
【0015】
このように乗員の骨格や関節の動きを基にして乗員の姿勢の変化を検知する技術(以下、必要に応じて骨格診断と称する)を用いれば、起立状態や歩行状態以外の状態にある乗員についても、その姿勢の変化を検知し、当該乗員が危険か否かを判定することができる可能性がある。
【0016】
しかし実際には、この種の骨格診断を用いても、乗合型車両の座席に着座している乗員の危険予測を行うには十分でなかった。具体的には、本発明の発明者らが骨格診断を用いて乗員の姿勢の変化を検知し、乗合型車両の座席に着座している乗員が起立する前に、乗員が起立するか否かを予測してみたところ、その正解率はせいぜい30~40%程度であった。
このため、乗員の危険判定を行うための新たな技術が望まれている。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、乗合型車両の座席に着座している乗員の危険判定を行う技術の向上を図るべく、従来とは異なる判定機序を用いた乗員見守りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する本発明の乗員見守りシステムは、
乗合型車両の座席に着座した乗員を見守る乗員見守りシステムであって、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に前記乗員の三次元的な頭部位置を設定し、かつ、前記座席に着座した前記乗員の前記頭部位置を基に頭部安全可動域を前記乗員の前後方向、左右方向及び上下方向について設定した上で、前記頭部位置を連続的に監視して前記頭部位置が前記頭部安全可動域から外れたと判定した場合に注意喚起を行う制御要素と、を具備する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乗員見守りシステムは、乗合型車両の座席に着座している乗員の危険判定を、新規な判定機序を用いて行う、新規な乗員見守りシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の乗員見守りシステムが搭載された乗合型車両の客室内を模式的に説明する説明図である。
【
図2】実施例1の乗員見守りシステムが搭載された乗合型車両の客室内を模式的に説明する説明図である。
【
図3】実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部位置を設定する方法を模式的に説明する説明図である。
【
図4】実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部安全可動域を設定する方法を模式的に説明する説明図である。
【
図5】実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部安全可動域を設定する方法を模式的に説明する説明図である。
【
図6】実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部安全可動域を設定する方法を模式的に説明する説明図である。
【
図7】実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部安全可動域を設定する方法を模式的に説明する説明図である。
【
図8】実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部安全可動域を設定する方法を模式的に説明する説明図である。
【
図9】実施例1の乗員見守りシステムにおける判定機序を模式的に説明するフローチャートである。
【
図10】実施例2の乗員見守りシステムにおける判定機序を模式的に説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例等に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0022】
本発明の乗員見守りシステムは、乗合型車両の座席に着座した乗員について危険判定を行う乗員見守りシステムであって、危険であると判定した場合に注意喚起を行うことで、乗員の安全を確保することを主眼とする。
【0023】
具体的には、本発明の乗員見守りシステムは、
前記乗員の乗員情報を取得する検知要素と、
前記乗員情報を基に前記乗員の三次元的な頭部位置を設定し、かつ、前記座席に着座した前記乗員の前記頭部位置を基に頭部安全可動域を前記乗員の前後方向、左右方向及び上下方向について設定した上で、前記頭部位置を連続的に監視して前記頭部位置が前記頭部安全可動域から外れたと判定した場合に注意喚起を行う制御要素と、を具備する。
【0024】
本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素は、検知要素が取得した乗員情報を基に乗員の頭部位置を設定し、かつ、座席に着座した乗員の頭部位置を基に頭部安全可動域を設定した上で、頭部位置を連続的に監視する。
つまり、本発明の乗員見守りシステムでは、乗員の姿勢を判定するための材料として、当該乗員の頭部位置の変化を採用している。
【0025】
本発明の発明者らは、座席に着座している乗員の危険判定を上記した骨格診断を基に行う場合、当該危険判定を精度高く行い難い理由が、骨格診断を行う環境にあると考えた。
【0026】
つまり、乗合型車両の座席に着座している乗員の体は、他の乗員や座席などの陰になり全身を撮像できない場合が多い。このため乗員の画像情報を十分に取得するのは困難であり、乗員の骨格や関節の動きを十分に検知することができず、その結果、危険判定を精度高く行うこともまた困難になると考えられる。多数のカメラで様々な角度から乗員を撮像すれば、乗員の画像情報を十分に取得できる可能性もあるが、当該方法は多くの乗員が乗り降りする乗合型車両においては現実的ではない。
【0027】
本発明の発明者らは、上記した骨格診断や、さらには既述した床センサによる乗員の起立及び歩行状態の検知は、乗合型車両の座席に着座している乗員の危険予測をおこなう材料としてそぐわないと考えた。
【0028】
そして本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、座席に着座している乗員が起立する前に頭部を大きく動かすことを見いだした。つまり、座席に着座している乗員は、起立する前に、様々な動作を行う。具体例を挙げると、前屈みになる、荷物を手に取る、通路側を目視で確認する、通路側に体を向ける、通路に足を出す、座席上で体をずらす、荷物を片付ける、背中を倒す、前の座席に手を掛ける、手すりを掴む等である。
【0029】
本願の発明者らは、このような知見を基に、乗員の頭部位置が所定量を超えて変化すること、すなわち、頭部位置が頭部安全可動域から外れることが、座席に着座している乗員が起立する前兆であると考えた。
本発明の発明者が、実際に、この頭部位置の変化に基づいて乗員の姿勢の変化を検知し、座席に着座している乗員が起立するタイミングを予測してみたところ、その正解率は70%程度と非常に高い値を示した。
【0030】
本発明の乗員見守りシステムでは、制御要素により、既述したとおり頭部安全可動域を前記乗員の前後方向、左右方向及び上下方向について設定し、乗員の頭部位置を連続的に監視するとともに、乗員が起立する前兆がみられた場合、すなわち、頭部位置が頭部安全可動域から外れたと判定した場合に、注意喚起を行う。これにより、本発明の乗員見守りシステムによると、乗員が起立する前兆を逃さずに適切なタイミングで、乗員自身や運転制御者に注意を喚起し、その結果乗員の安全を確保することが可能である。
【0031】
以下、本発明の乗員見守りシステムをその構成要素毎に説明する。
【0032】
本発明の乗員見守りシステムは、乗合型車両の乗員の危険判定を行うものである。
乗合型車両とは、例えばバスや電車等の複数の乗員が乗り降りするものを意味し、路線バス等の不特定多数の乗員が利用する所謂公共交通機関であっても良いし、マイクロバス等の特定の乗員が利用するものであっても良い。
いずれの場合にも、当該乗合型車両は、座席を具備することを必須とする。
【0033】
乗合型車両は、乗員が車両進行方向を向いて着座する縦並び型の座席を具備しても良い。または、乗員が車両進行方向と交差する方向を向いて着座する横並び型の座席を具備しても良い。さらには、当該縦並び型の座席と横並び型の座席との両方を具備しても良い。
【0034】
本発明の乗員見守りシステムは、検知要素と制御要素とを具備する。
このうち検知要素は、乗員の乗員情報を取得するものであり、当該乗員情報に乗員の頭部位置の情報を含むことを必須とする。
【0035】
このような検知要素は、例えば、乗員情報として乗員の画像情報を取得するカメラであても良いし、乗員情報として乗員の頭部の位置情報を取得する距離センサであっても良い。それ以外の検知機構により乗員の頭部位置の情報を取得するものであっても良い。
【0036】
さらには、検知要素は、これらの複数種を含んでも良いし、これら頭部位置の情報を取得するものに加えて、頭部位置以外の乗員情報を取得するものを含んでも良い。具体例として、例えば、既述した床センサ、座席の荷重変化を検知する荷重センサ、超音波センサ、赤外線センサ、圧力センサ、接触センサ、3D距離画像センサ等を例示できる。検知要素は、様々な角度から乗員情報を取得するのが好ましく、例えば天井や客室を区画する壁部等、客室内の様々な位置に設けるのが好ましい。
【0037】
ここで、乗員の頭部位置とは、乗員の頭部における何れかの部位の三次元的な位置を意味し、具体的には、頭部全体の位置、頭部の中心の位置、頭部の重心の位置、頭頂の位置、鼻の位置、顎の位置等を例示できるが、これに限定されない。
【0038】
頭部安全可動域は、頭部位置を基に設定される領域であり、頭部が動いたとしても、当該頭部が頭部安全可動域内にあれば、当該頭部を有する乗員が安全と判定できる領域である。
このような頭部安全可動域は、三次元的な頭部位置に対応すべく、また、乗員が三次元的に動作することを考慮して、前記乗員の前後方向、左右方向及び上下方向について設定される。当該頭部安全可動域は、例えば球状等の、全体として三次元的形状をなすのが好適である。
【0039】
本発明において、頭部安全可動域の形状や大きさは特に限定しないが、乗員の頭部の位置や大きさ等は乗員毎に異なるため、頭部安全可動域は座席に着座した乗員毎に設定するのが好適である。さらに、頭部安全可動域は一人の乗員に対して一度のみ設定しても良いが、複数回設定するのが好ましい。例えば、座席に着座した乗員が座席を移動した場合、座席上で姿勢を変えた場合、乗員が着座してから所定時間が経過した場合等には、新たな頭部安全可動域を設定し、当該新たな頭部安全可動域と頭部位置とを比較することにより乗員の危険判定を行うのが好適である。
【0040】
なお、乗員の頭部は、乗員が起立する前に前後方向に大きく位置変化し、左右方向には位置変化しない場合が多い。したがって、頭部安全可動域の大きさは、乗員の前後方向において、乗員の左右方向よりも小さく設定するのが好適である。なお、乗員の顔が向く方向が乗員の前方であり、これの逆方向が乗員の後方である。そして、この前後方向に直交する方向が乗員の左右方向である。
【0041】
また、乗員の頭部は、乗員が起立する前に、後方に比べて前方により大きく位置変化する。したがって当該頭部安全可動域の大きさは、前後方向においては、乗員の後側よりも前側を小さくするのが好適であるといい得る。
さらに、当該頭部安全可動域の大きさは、乗員の上側において下側よりも小さくするのが好適である。
乗員の着座する座席の片側が通路側に面している場合には、当該頭部安全可動域は通路側の方をその逆側よりも小さくするのが好適である。
【0042】
ところで、頭部安全可動域の大きさが小さければ、乗員の頭部の小さな動きにより頭部位置が頭部安全可動域から外れ易くなる。このため、危険判定をより精度高く行うためには、判定対象となる乗員の危険度が高い場合には頭部安全可動域を小さく設定し、判定対象となる乗員の危険度が低い場合には頭部安全可動域を大きく設定するのが好適である。
【0043】
具体的には、乗員を危険度に応じた2以上のグループに分類するための分類基準、及び、当該グループ毎の頭部安全可動域の大きさを、予め定めておくのが良い。そして、判定対象となる乗員が乗合型車両に乗車し当該乗合型車両が発車するまでの何れかの局面で、当該乗員を何れかのグループに分類し、当該グループに応じた頭部安全可動域を設定するのが良い。
【0044】
上記した乗員の分類基準としては、乗員の背格好から乗員の年齢や属性を推測し、推測された年齢や属性に応じて、乗員を危険度の高いグループや危険度の低いグループに分類すれば良い。より具体的には、当該乗員が高齢者、幼児、傷病者、妊婦等であると推測される場合には、当該乗員を危険度の高いグループに分類することが可能である。それ以外の乗員については危険度の低いグループに分類することが可能である。
【0045】
また、判定対象となる乗員が保持する各種の情報源、例えば、ICカード乗車券に代表される接触型又は非接触型のICカードや、スマートフォンに代表される各種の携帯端末等から送信されたデータに基づいて、判定対象となる乗員が分類されるべきグループを選択しても良い。この場合には、画像情報からは取得できない各乗員のデータ、例えば、乗員の既往症等を参酌して乗員の属性を推測し、当該乗員をより適切なグループに分類できる利点がある。
【0046】
乗員が着座した座席に応じて乗員の危険度を設定し、これを基に乗員の頭部安全領域を設定するのも有用である。つまり、乗合型車両に搭載されている座席には、乗員が起立し易い位置に配置されているものもあれば、乗員が起立し難い位置に配置されているものもある。したがって、起立し易い座席に着座した乗員の危険度は高く、起立し難い座席に着座した乗員の危険度は低いと考えられる。
【0047】
例えば、二人掛けの座席等、複数の座席が複合された複合型座席においては、座席における左右方向の一端部が乗合型車両の客室を区画する壁部(または当該壁部に設けられた窓部やドア部等)に面し、他端部が客室の通路に面する場合がある。このような複合型座席において、一端部側すなわち壁部側の位置に着座している乗員は、他端部側すなわち通路側の位置に着座している乗員に比べて、起立し難い。したがって、当該複合座席において、通路側の位置に着座している乗員は、壁部側の位置に着座している乗員よりも危険度の高いグループに分類するのが好適である。換言すると、当該複合座席において、通路側の位置に着座している乗員の頭部安全可動域は、壁部側の位置に着座している乗員の頭部安全可動域よりも小さく設定するのが好適である。
【0048】
また、例えば、座席の前側、すなわち座席に着座した乗員の顔が向く側に他の座席がある場合、乗員はその座席から起立し難い。逆に、座席の前側に他の座席がない場合には、乗員はその座席から起立し易い。したがって、前側に他の座席がない座席に着座している乗員は、前側に他の座席がある座席に着座している乗員よりも危険度の高いグループに分類するのが好適である。換言すると、前側に他の座席がない座席に着座している乗員の頭部安全可動域は、前側に他の座席がある座席に着座している乗員の頭部安全可動域よりも小さく設定するのが好適である。
【0049】
乗員が着座した座席に応じて、乗員の頭部安全可動域の形状を設定するのも有用である。例えば、座席が優先席である場合には、座席が一般席である場合に比べて、座席に着座した乗員の頭部安全可動域を大きく設定するのが好適である。
【0050】
または、上記した複合座席の何れかの部分が空席である場合、当該座席の残りの部分に着座した乗員の頭部安全可動域を、空席の部分に向けて延ばすのが好適である。当該座席に着座した乗員は、空席である部分に向けて座席上で体をずらす場合があるためである。
更にこの場合、乗員の頭部安全可動域を、起立し易い方向に向けては部分的に小さく、起立し難い方向に向けては部分的に大きく設定するのも好適である。具体的には、この種の座席に着座している乗員の頭部安全可動域の大きさは、通路に面する他端部側において、壁部に面する一端部側よりも小さく設定するのが好適である。
【0051】
座席のうち乗員が起立し易い側を起立容易側、乗員が起立し難い側を起立困難側とすると、座席の起立容易側に着座している乗員は、座席の起立困難側に着座している乗員よりも危険度の高いグループに分類するのが好適ともいい得る。
また、座席に着座している乗員の頭部安全可動域の大きさは、起立困難側において大きく、起立容易側において小さく設定するのが好適ともいい得る。
【0052】
着座している乗員が起立する前には、乗員の頭部以外にも乗員の肩が位置変化する場合が多い。このため、危険判定をより精度高く行い得る頭部安全領域を設けるためには、頭部位置に加えて肩部位置を加味するのが好適である。換言すると、制御要素は、検知要素が取得した乗員情報を基に乗員の肩部位置を設定し、頭部位置及び肩部位置を含む頭部安全可動域を設けるのが好適である。肩部位置については、既述した骨格診断に代表される公知技術に基づいて設定することが可能である。
【0053】
頭部安全可動域は、乗員が座席に着座した後すぐに設定しても良いし、座席に着座した乗員が姿勢を整えた後、つまり、乗員の頭部の位置変化が収まった後で設定しても良い。
換言すると、本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素は、検知要素が取得した乗員情報に基づいて乗員が着座したと判定し、その後、頭部位置の位置変化量が所定量以下である状態が所定期間継続した場合に、当該頭部位置を基に頭部安全可動域を設定しても良い。この場合には、頭部安全可動域を乗員に対して適切な位置に設け得る利点がある。
【0054】
この場合の「所定量」及び「所定期間」は、「予め定めた量」及び「予め定めた期間」であればよく、その量や期間は、乗合型車両の種類や走行経路、座席の形状や配置等に応じて適宜適切に設定すれば良い。「所定量」の好適な範囲としては、2cm/秒以下、1.5cm/秒以下、1cm/秒以下の各範囲を例示できる。「所定期間」の好適な範囲としては、5秒以上、8秒以上、10秒以上の各範囲を例示できる。
【0055】
制御要素は、検知要素が取得した乗員情報に基づいて乗員が着座したと判定すればよく、このときに用いる乗員情報の種類は特に限定しない。制御要素は、例えば、カメラや位置センサが取得した乗員の頭部位置の情報に基づいて乗員が着座したと判定しても良い。または、座席の荷重変化を検知する荷重センサが取得した荷重情報に基づいて乗員が着座したと判定しても良い。または、既述した画像情報を基にした骨格診断に基づいて乗員が着座したと判定しても良い。つまり検知部は、乗員が着座したか否かを判定するための乗員情報として、頭部位置以外の乗員情報を用いても良い。
【0056】
なお、制御要素は、乗合型車両に搭載されても良いし、乗合型車両の外部に配置されても良い。制御要素が乗合型車両の外部に配置される場合には、当該制御要素が乗合型車両に搭載された検知要素と無線的にデータの授受を行えば良い。制御要素が乗合型車両に搭載される場合、制御要素は乗員見守りシステム専用のCPUやメモリ等を有するコンピュータ等であっても良いし、例えば乗合型車両のECU等、他のシステムの一部と兼用されても良い。
【0057】
本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素は、頭部位置が頭部安全可動域から外れたと判定した場合に注意喚起を行う。
【0058】
本発明の乗員見守りシステムにおける制御要素が注意喚起を行う対象は、危険判定を受けた乗員自身であっても良いし、運転制御者であっても良い。当該注意喚起を受けた乗員や運転制御者は、乗員が危険な状態にあることを知覚する。つまり注意喚起を受けた乗員は、自ら危険を回避し得る。また、注意喚起を受けた運転制御者は、乗合型車両の走行速度を低下させる等、乗合型車両の運転状態を変更して、乗員の危険を回避することが可能である。これにより、本発明の乗員見守りシステムによると、乗員の安全を確保することが可能である。
【0059】
本発明の乗員見守りシステムによると、注意喚起を受けた乗員自身の行動、例えば座席に着座することにより危険を回避することが可能であるため、当該注意喚起は少なくとも注意喚起を受けた乗員本人を対象とするのが好適である。
【0060】
なお、本明細書でいう運転制御者とは、乗合型車両の運転手と管制者を総称するものである。乗合型車両が自動運転する際には、例えば、客室の内外を撮像した画像データ等が乗合型車両外の管制者に伝送され、当該管制者が当該画像データ等を目視することで、視覚による安全確認を行うと考えられる。このような管制者に注意喚起を行う場合にも、運転者に注意喚起を行う場合と同様に、乗合型車両の運転状態を変更して乗員の危険を回避し得る。
【0061】
注意喚起を行う方法としては、スピーカーやブザーで音を発する、警告灯や照明等で光を発する、または、モニタに図形やテキスト等を表示する等、既知の方法を採用すれば良い。
【0062】
このうち、注意喚起の対象となる乗員に、自身が注意喚起を受けていることを直感的に認識させるためには、モニタに客室内の画像または動画を表示しつつ、当該モニタのうち該当する乗員に対応する位置に、注意を喚起することを表す図形やテキスト等を表示するのが好適である。
【0063】
なお、この場合、注意喚起の対象となる乗員が他の乗員から特定されることを抑制または回避するためには、乗員の画像上に表示する図形やテキストは、ひとりの乗員のみをカバーする狭い範囲で表示するのではなく、複数の乗員をカバーする広い範囲で表示するのが好適である。注意喚起の対象となる乗員が他の乗員から特定されることにより不利益を被ったり、不快感を覚えたりすることを回避するためである。
【0064】
本発明の乗員見守りシステムは注意喚起を行うための注意喚起要素を具備しても良い。注意喚起要素は一つであっても良いし複数であっても良い。具体的な注意喚起要素としては、既述したスピーカー、ブザー、警告灯、照明、モニタ等から選ばれる一種または複数種を使用するのが好適である。
【0065】
以下、具体例を挙げて本発明の乗員見守りシステムを説明する。
【0066】
(実施例1)
実施例1の乗員見守りシステムは、乗合型車両の一種である路線バスに搭載されるものである。
実施例1の乗員見守りシステムが搭載された乗合型車両の客室内を模式的に説明する説明図を
図1及び
図2に示す。実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部位置を設定する方法を模式的に説明する説明図を
図3に示す。実施例1の乗員見守りシステムにおいて頭部安全可動域を設定する方法を模式的に説明する説明図を
図4~
図8に示す。実施例1の乗員見守りシステムにおける判定機序を模式的に説明するフローチャートを
図9に示す。
以下、実施例1において上、下、左、右、前、後は、
図1に示す上、下、左、右、前、後を意味するものとする。
【0067】
図1に示すように、実施例1の乗員見守りシステム1が搭載された乗合型車両90は、その客室91に縦並び型の複数の座席92を有し、各座席92に着座した乗員99は同じ方向(前方)を向く。各座席92を後側から前側に向けて、第1座席92f、第2座席92s、第3座席92t及び第4座席92foと称する。
【0068】
第1座席92fは三人掛けの座席であり、第2座席92s、第3座席92t及び第4座席92foは各々二人掛けの座席である。第2座席92s、第3座席92t及び第4座席92foは左揃えで前後に配列し、その左端部は壁部94に面する。
第2座席92s及び第3座席92tの右端部、第1座席92fの右側1/3部分、及び第4座席92foの全体は通路95に面する。
【0069】
さらに、第2座席92s及び第3座席92tの前側には各々他の座席92t、92foがあり、第1座席92fの左側2/3部分の前側にも他の座席92sがある。第1座席92fの右側1/3部分の前側、及び、第4座席92foの前側には他の座席92はない。
これらを勘案すると、第1座席92fの右側1/3部分、第2座席92s並びに第3座席92tの右側1/2部分、及び第4座席92foの全体は、着座した乗員99が起立し易い、座席92の起立容易側といい得る。また、第1座席92fの左側2/3部分、及び、第2座席92s並びに第3座席92tの左側1/2部分は、着座した乗員99が起立し難い、座席92の起立困難側といい得る。
【0070】
実施例1の乗員見守りシステム1は、検知要素2、制御要素3及び注意喚起要素5を具備する。検知要素2及び制御要素3は、注意喚起要素5に無線接続されている。検知要素2は複数のカメラを有する。
【0071】
カメラは赤外線カメラの一種であるTOF(Time Of Flight)カメラである。TOFカメラ20は、乗員情報として動画および距離情報を取得する。距離情報は、具体的には、画像情報に含まれる乗員99の頭部位置と予め定めた基準位置(例えば座席92の座面、床、天井等)との距離である。当該TOFカメラ20は、カメラとして機能しかつ距離センサとしても機能するといい得る。
各TOFカメラ20には個別のIDが割り当てられている。各TOFカメラ20は、客室91内における異なる領域を撮像するとともに、当該領域にある1又は複数の座席92につき、各座席92に着座した乗員99の頭部位置に関する位置情報を取得することが可能である。実施例1の乗員見守りシステム1では、乗員99の頭部99hを画角内に収めるべく、TOFカメラ20は主として客室91の天井に配置されている。
【0072】
制御要素3は、検知要素2が取得した乗員情報のうち、TOFカメラ20が取得した画像情報を基に、先ず、乗合型車両90に乗車した直後の乗員99の頭部位置を設定する。換言すると、このときの頭部位置は、起立した乗員99の頭部位置である。
【0073】
具体的には、
図3に示すように、乗員99の頭部99hは肩部99sよりも狭幅であり上方に突出する特有の凸形状をなす。このため制御要素3は、画像から乗員99の頭部99hを識別することが可能である。
【0074】
実施例1の乗員見守りシステム1では、上記したように識別した各乗員99の頭部99hにつき、客室91内における当該頭部の中心部の三次元的座標を頭部位置hとして設定する(
図3)。そして、当該頭部位置hにつき連続的な監視を開始する(
図9のS1)。
【0075】
次いで制御要素3は、乗車した直後の乗員99の頭部位置hを基に、起立した乗員99の頭部位置hを推定する(
図9のS2)。そして、当該起立した乗員99の頭部位置hを基に、座席92に着座した乗員99の頭部位置hを推定し、さらに、起立した乗員99の頭部位置hと座席92に着座した乗員99の頭部位置hとの間の着座判定ラインを生成する(
図9のS3)。なお、当該着座判定ラインは、高さ方向の座標であり、座席92に着座した乗員99の頭部位置hよりもやや高い位置に設けられる。
【0076】
着座判定ラインを生成した後、制御要素3は、S1で監視している頭部位置hを参照し(
図9のS4)、頭部位置hと着座判定ラインとを比較する(
図9のS5)。このときの頭部位置hが着座判定ラインよりも上であれば(S5のNO)、乗員99が着座していないと判定し、S4に戻る。
【0077】
一方、このときの頭部位置hが着座判定ラインよりも下であれば(S5のYES)、乗員99が着座したと判定し、S1で監視している乗員99の頭部位置hを参照する(
図9のS6)。そして、頭部位置hの位置変化量を基に、乗員99の頭部位置hの変化が収まったか否か、すなわち乗員99の頭部位置hが安定したか否かを判定する(
図9のS7)。
【0078】
具体的には、乗員99の頭部位置hの位置変化量が2cm/秒以下である状態が5秒以上継続した場合に、乗員99の頭部位置hの変化が収まったと判定する。それ以外の場合に乗員99の頭部位置hの変化が収まっていないと判定する。乗員99の頭部位置hの変化が収まった場合には、座席92に着座した乗員99の頭部位置hが安定し、乗員99が姿勢を整えたとみなすことができる。
【0079】
乗員99の頭部位置hの変化が収まっていない場合(S7のNO)には、S6に戻る。
乗員99の頭部位置hの変化が収まった場合(S7のYES)には、
図2に例示される乗員99の頭部安全可動域sを生成する(
図9のS8)。
【0080】
実施例1の乗員見守りシステム1において、乗員99の頭部安全可動域sは以下のように生成する。
【0081】
先ず、画像情報を基に、各座席92に着座している各乗員99につき、その属性に応じたグループに分類する。具体的には、画像情報を基に、乗員99が高齢者、子供、傷病者、妊婦の何れかであると推測される場合には、当該乗員99が中危険度の属性を有すると判定し、中危険度グループに分類する。それ以外の乗員99については低危険度の属性を有すると判定し、低危険度グループに分類する。この分類は乗員99の着座前に行っても良いし、着座後に行っても良い。
【0082】
さらに着座した乗員99につき、その座席92が起立容易側であれば、当該乗員99が分類されるグループを一段階危険度の高いグループに変更する。すなわち、乗員99が既に中危険度グループに分類されていれば、当該乗員99を高危険度グループに変更する。乗員99が既に低危険度グループに分類されていれば、当該乗員99を中危険度グループに変更する。
当該座席92が起立困難側であれば当該乗員99の分類をそのままにする。
【0083】
これにより、乗員99を高危険度、中危険度、低危険度の3つのグループに分類できる。
低高危険度グループに分類された乗員99については、その頭部安全可動域sを、頭部位置hを中心とする直径35cmの球状に設定する。
中危険度グループに分類された乗員99については、その頭部安全可動域sを、頭部位置hを中心とする直径30cmの球状に設定する。
高危険度グループに分類された乗員99については、その頭部安全可動域sを、頭部位置hを中心とする直径25cmの球状に設定する。
【0084】
これにより、例えば
図4に示すように、画像情報で同じ低危険度の属性を有すると推測される乗員99であっても、座席92の属性、すなわち当該座席92が起立容易側であるか起立困難側であるかによってその乗員99の危険度が異なり、当該乗員99に設定される頭部安全可動域sの大きさも異なる。同様に、
図5に示すように、画像情報からは同じ高危険度の属性を有すると推測される乗員99であっても、座席92の属性によって、当該乗員99に設定される頭部安全可動域sの大きさは異なる。
【0085】
さらには、画像情報により推測される乗員99の属性が異なっていても、座席92の属性によっては、それぞれの乗員99に同じ大きさの頭部安全可動域sを設定しても良い。例えば
図6に示すように、画像情報からは低危険度の属性を有すると推測される乗員99が座席92の起立容易側に着座し、画像情報からは高危険度の属性を有すると推測される乗員99が座席92の起立困難側に着座する場合には、それぞれの乗員99に同じ大きさの頭部安全可動域sが設定される。
【0086】
さらに
図7に示すように、二人掛けの座席92の起立容易側が空席である場合、当該座席92の起立困難側に着座した乗員99の頭部安全可動域sは、空席である起立容易側に向けて延びる長尺形状をなすよう設定する。更にこの場合、当該乗員99の頭部安全可動域sは、起立困難側において大きく、起立容易側に小さい。
【0087】
乗員99の頭部安全可動域sは、必要に応じて、当該乗員99の肩部位置shを加味して設定される。肩部位置shは、検知要素2が取得した画像情報に基づいて骨格診断により制御要素3が設定する。
【0088】
この場合、
図8に示すように、乗員99の頭部安全可動域sは、頭部位置h及び肩部位置sh(
図3参照)を含む裾広がりの傘状またはベル状に設定する。
【0089】
以上のように乗員99の頭部安全可動域sを設定した後、制御部は、再度頭部位置hを参照する(
図9のS9)。そして、頭部位置hと頭部安全可動域sとを比較する(
図9のS10)。頭部位置hが頭部安全可動域s内にある場合には(S10のNO)、S9に戻る。頭部位置hが頭部安全可動域sから外れた場合には(S10のYES)、乗合型車両90の状態を参照する(
図9のS11)。乗合型車両90が走行中でない場合には(S11のNO)、S9に戻る。乗合型車両90が走行中である場合には(S11のYES)、危険判定し(S12)、
図1、2に示す注意喚起要素5により音声で注意喚起を行う(S13)。注意喚起を行うと同時に、フローはS4に戻る。
【0090】
既述したように、乗員99は起立する前に頭部99hを大きく動かす傾向がある。実施例1の乗員見守りシステム1によると、頭部位置hが頭部安全可動域sから外れたと判定した場合に注意喚起を行うことで、乗員99が起立する前兆を逃さずに、起立する前の乗員99自身に注意喚起を行うことができる。これにより、乗員99の安全を確保することが可能である。
【0091】
また、実施例1の乗員見守りシステム1によると、頭部安全可動域sを乗員99毎に適切な大きさ及び形状に設定していることにより、乗員99が起立する前兆を過不足なく検知でき、乗員99の危険判定を精度高く行うことが可能である。
【0092】
(実施例2)
実施例2の乗員見守りシステムは、乗員の着座判定を行う方法以外は実施例1の乗員見守りシステムと概略同じものである。以下、実施例1の乗員見守りシステムとの相違点を中心に、実施例2の乗員見守りシステムを説明する。
実施例2の乗員見守りシステムにおける判定機序を模式的に説明するフローチャートを
図10に示す。
【0093】
実施例2の乗員見守りシステム1では、検知要素2が取得した画像情報に基づき、制御要素3が骨格診断による乗員99の姿勢判定を行う(
図10のS1)。そして、当該乗員99が屈んだ姿勢すなわち着座姿勢にあるか否かを判定する(
図10のS2)。当該乗員99が着座姿勢ではないと判定すると(S2のNO)、S1に戻る。当該乗員99が着座姿勢であると判定すると(S2のYES)、実施例1と同様に当該乗員99の頭部位置hにつき連続的な監視を開始する(
図10のS3)。つまり実施例2では、骨格診断に基づいて乗員99が座席92に着座したか否かを判定する。
【0094】
次いで制御要素3は、頭部位置hの位置変化量を基に、実施例1と同様にして乗員99の頭部位置hの変化が収まったか否かを判定する(
図10のS4)。
【0095】
乗員99の頭部位置hの変化が収まっていない場合(S4のNO)には、S3に戻る。
乗員99の頭部位置hの変化が収まった場合(S4のYES)には、実施例1と同様にして乗員99の頭部安全可動域sを生成する(
図10のS5)。
【0096】
乗員99の頭部安全可動域sを設定した後、制御部は、再度頭部位置hを参照する(
図10のS6)。そして、頭部位置hと頭部安全可動域sとを比較する(
図10のS7)。頭部位置hが頭部安全可動域s内にある場合には(S7のNO)、S6に戻る。頭部位置hが頭部安全可動域sから外れた場合には(S7のYES)、乗合型車両90の状態を参照する(
図10のS8)。乗合型車両90が走行中でない場合には(S8のNO)、S6に戻る。乗合型車両90が走行中である場合には(S8のYES)、危険判定し(S9)、注意喚起要素5により音声で注意喚起を行う(S10)。注意喚起を行うと同時に、フローはS1に戻る。
【0097】
実施例2の乗員見守りシステム1によっても、実施例1の乗員見守りシステム1と同様に、頭部位置hが頭部安全可動域sから外れたと判定した場合に注意喚起を行うことで、乗員99が起立する前兆を逃さずに、起立する前の乗員99自身に注意喚起を行うことができる。したがって、実施例2の乗員見守りシステム1によっても、適切なタイミングで注意喚起することにより、乗員99の安全を確保することが可能である。
【0098】
さらに実施例2の乗員見守りシステム1によっても、頭部安全可動域sを乗員99毎に適切な大きさ及び形状に設定していることにより、乗員99が起立する前兆を過不足なく検知でき、乗員99の危険判定を精度高く行うことが可能である。
【0099】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0100】
1:乗員見守りシステム
2:検知要素
20:TOFカメラ(カメラ、距離センサ)
3:制御要素
h:乗員の頭部位置
s:頭部安全可動域
sh:乗員の肩部位置
90:乗合型車両
91:客室
92:座席
94:壁部
95:通路
99:乗員