(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080491
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】デッキ構造
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20230602BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
E04F15/00 L
E04F15/02 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193866
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】509220253
【氏名又は名称】呉松 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】呉松 一豊
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA51
2E220AB01
2E220AC03
2E220FA14
(57)【要約】
【課題】複数のデッキ材を支持する複数の支持フレームと支持束を備えたデッキ構造であって、より作業性や強度に優れたデッキ構造の提供を目的とする。
【解決手段】複数のデッキ材を支持する複数の支持フレームと支持束を備えたデッキ構造であって、前記支持フレームの断面構造は、水平部と前記水平部の両端側に垂設した一対の側部と、前記一対の側部の間で開口した開口部とを有し、前記支持束は前記水平部を貫通する支持ボルトと、前記支持ボルトに取り付けられて前記水平部を狭持する狭持部材とを有し、前記支持束に固定された前記支持フレームは前記開口部が上側に位置していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデッキ材を支持する複数の支持フレームと支持束を備えたデッキ構造であって、
前記支持フレームの断面構造は、水平部と前記水平部の両端側に垂設した一対の側部と、前記一対の側部の間で開口した開口部とを有し、
前記支持束は前記水平部を貫通する支持ボルトと、前記支持ボルトに取り付けられて前記水平部を狭持する狭持部材とを有し、
前記支持束に固定された前記支持フレームは前記開口部が上側に位置していることを特徴とするデッキ構造。
【請求項2】
前記支持フレームの側部が中空断面形状であることを特徴とする請求項1に記載のデッキ構造。
【請求項3】
前記支持フレームの端部はジョイント部材又は端末部材に包持された状態で前記支持束に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデッキ構造。
【請求項4】
前記支持フレームは前記開口部が上側に位置した状態で前記支持束に固定される大引きと、前記開口部が下側に位置した状態で前記大引きに固定される根太からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のデッキ構造。
【請求項5】
前記支持フレームの側部は端部に鍔部を有し、
前記大引きと根太が互いの前記鍔部を直角に交差するように接設してあることを特徴とする請求項4に記載のデッキ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキ材を支持する支持フレームと支持束を備えたデッキ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
テラスやバルコニー、ベランダ等に複数のデッキ材を敷設する場合に、複数の支持フレームと支持束でデッキ材を支持する構造が知られている。
例えば特許文献1は、支持束(台座部)に上向きに突出した断面ハット型の大引き(縦材)を固定し、さらに上向きに突出した断面ハット型の根太(横材)を大引きに直角に交差するように井桁状に固定したのち、根太の上面にデッキ材を敷設している。
支持束と大引きは、支持束の支持ボルト(アンカーボルト)に取り付けられたプレート(ベースプレート)上に、大引きの下側に位置する一対の外片を位置合せし、この外片のそれぞれをプレートにネジ等で固定している。
同様な構造は特許文献2においても開示されているが、より組み立て作業性に優れたデッキ構造が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-2706号公報
【特許文献2】実用新案登録第3211773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数のデッキ材を支持する複数の支持フレームと支持束を備えたデッキ構造であって、より作業性や強度に優れたデッキ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るデッキ構造は、複数のデッキ材を支持する複数の支持フレームと支持束を備えたデッキ構造であって、前記支持フレームの断面構造は、水平部と前記水平部の両端側に垂設した一対の側部と、前記一対の側部の間で開口した開口部とを有し、前記支持束は前記水平部を貫通する支持ボルトと、前記支持ボルトに取り付けられて前記水平部を狭持する狭持部材とを有し、前記支持束に固定された前記支持フレームは前記開口部が上側に位置していることを特徴とする。
【0006】
ここで、支持フレームとは、例えば断面略コ字型や断面ハット型等のように断面構造に開口部を有する長尺体である。
支持フレームは、開口部が上側に位置する場合に水平部を下側に有する。
このような支持フレームは、例えばアルミニウム押出材であってもよい。
一方、支持束は、例えば基礎コンクリート上に配設された底部から上方に突設された支持ボルトと、この支持ボルトに取り付けられる狭持部材、例えばプレートと、このプレートの上方で螺着するナット等の固定部材を有する。
本発明は、支持束に支持フレームを固定する際に、支持フレームの水平部に支持ボルトを貫通させ、例えばプレート上に水平部を置いた状態で固定部材を締め付ける。
これにより、水平部がプレートと固定部材に狭持される。
この際、支持フレームの開口部が上側に位置していることで、開口部を通じて支持ボルトに固定部材を螺着、締め付け等でき、スムーズに固定作業ができる。
【0007】
本発明において、前記支持フレームの側部が中空断面形状であってもよい。
このように側部が中空断面形状である支持フレームは、デッキ材を安定的に支持するための強度に優れる。
【0008】
本発明において、前記支持フレームの端部はジョイント部材又は端末部材に包持された状態で前記支持束に固定されていてもよい。
このように支持フレームの端部がジョイント部材や端末部材に包持されていることで、例えば荷重を受けて支持フレームの側部が外側に開くのを抑制しやすくなる。
また、支持束にジョイント部材等を介して支持フレームを固定することで、支持構造の強度も向上する。
【0009】
さらに、本発明においては、前記支持フレームは前記開口部が上側に位置した状態で前記支持束に固定される大引きと、前記開口部が下側に位置した状態で前記大引きに固定される根太からなるものであってもよく、前記支持フレームの側部は端部に鍔部を有し、前記大引きと根太が互いの前記鍔部を直角に交差するように接設してあってもよい。
本発明においては、支持フレームである大引きと根太が同形状であってもよく、その開口部の位置を上下方向に反転することで使い分けができる。
大引きと根太を互いに直角に交差するように井桁状に固定すれば、デッキ材を支持する支持構造の強度を増強できる。
この際、大引きと根太の側部に有する鍔部を利用し、例えばビス等を用いて鍔部同士を固定すれば、固定操作が容易である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るデッキ構造は、支持束に支持フレームを固定する際に、支持束が有する支持ボルトを利用でき、さらに支持フレームの上側に位置している開口部を通じて固定作業ができるので、組み立て作業が容易である。
また、例えば支持フレームの側部が中空断面形状であることで、より強度に優れたデッキ構造の提供も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るデッキ構造例の一部を示し、(a)は斜視図を、(b)はその正面図を示す。
【
図2】支持束に対する大引きの固定例を説明するための正面図を示す。
【
図3】ジョイント部材を用いたデッキ構造例の一部を示し、(a)は斜視図を、(b)は平面図を、(c)は正面図を示す。
【
図5】大引きに対するデッキ材の固定例を説明するための斜視図を示す。
【
図6】大引きにデッキ材を固定する別実施例を示し、(a)は斜視図を、(b)は正面図を示す。
【
図7】大引きと根太を用いたデッキ構造例の一部を、斜視図で示す。
【
図9】
図8中の支持束、大引き及び根太を示し、(a)は平面図を、(b)は正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るデッキ構造の構造例を以下、図に基づいて説明する。
本発明は複数の支持束10と、複数の大引き20や根太30、下地材等の支持フレームで、複数のデッキ材40を支持するデッキ構造である。
なお、支持束や支持フレーム、デッキ材の数に制限はなく、施工場所や目的等に合せて適宜選択できる。
【0013】
図1(a)、(b)に、デッキ構造を構成する1つの支持束10及び大引き20と、デッキ材40の構造例の一部を示す。
支持束10は、底部11から上方に突設された支持ボルト12と、支持ボルト12に取り付け可能なプレート13と、さらにプレート13の上方で支持ボルト12に取り付け可能な固定部材を有する。
固定部材としては、例えばスプリングワッシャー等のワッシャー部材14と、ナット部材15が挙げられる。
本実施例の底部11は円形状の鋼板の例であり、鋼板としては溶融亜鉛合金メッキ鋼板等が挙げられるが、その形状や素材に限定はない。
底部11は、基礎コンクリートにアンカーボルトを用いて固定してもよく、
図7~9に示すように外側をゴム等の弾性部材16で被覆して基礎コンクリート上などに載置可能であってもよい。
支持ボルト12は、上側に配設するデッキ材や支持フレームの目的高さに合せてその長さを選択するのが好ましく、寸切りボルトである支持ボルト12に螺着可能な底部11の螺着状態をナット11aで固定してもよいが、支持ボルトと底部が一体的な構造であってもよい。
本実施例のプレート13は、支持ボルト12に螺着可能な螺着部13aを有する円形状の鋼製プレートであり、プレート13を回転することで支持ボルト12に対する高さを調整できる。
なお、本実施例は、狭持部材としてプレートとワッシャー部材,ナット部材を用いた例であるが、後述する大引きの水平部を支持ボルトに保持できれば、例えばプレートは水平部を下から支持できるものであればよく、特に限定はない。
また、螺着部のないプレートの場合には、支持ボルトに先に螺着したナット等の上にプレートを配設することで、プレートの高さを位置決めしてもよい。
【0014】
大引き20は、その断面構造が水平部22とその両端側から上方に向かって垂設した一対の側部23,23と、この側部の間で開口した開口部21を有する。
開口部21は、大引き20の長手方向に沿って形成されている。
例えば、水平部22と側部23を一体的に押出形成すれば、開口部21の形成も容易である。
本実施例の大引き20は、その側部23が
図1(b)に示すように水平部22におよそ垂直な外壁23aと、その上端部に鍔部として外片23b及び内片23cを有する例であり、一対の側部が有する内片23c、23cの間付近が開口部21となる。
外片23bは外壁23aからおよそ水平に外側へ突出し、内片23cは内側へ突出している。
また、大引き20は、その側部23が中空断面形状であってもよい。
例えば
図3(c)に、側部23が中空部23dを有する中空断面形状の例を示す。
中空部23dは、内片23c及び水平部22におよそ垂直な内壁23eを連結することで形成してある。
なお、中空断面形状に限定はなく、例えば中空部を縦に2つや3つ有していてもよい。
本実施例は、水平部22と側部23が一体的に形成されたアルミニウム製の例であるが、その材質に限定はない。
また、大引き20の長手方向を目的の寸法に切断してもよく、その長さに制限はない。
【0015】
デッキ材40は、
図1(a)に示すように大引き20等に載置する底面と、上面及び左右の側面41、42を有する。
側面41,42は非対称な形状であってもよく、例えば一方の側面41が底面に沿って外側に延在した突片41aを有していてもよい。
デッキ材40の材質に制限はなく、木製や樹脂製、疑似木材等であってもよい。
また、
図7に示すように複数のリブ40aからなる中空断面形状により軽量化したものであってもよく、上面に条状溝や凹凸等、各種意匠性を有していてもよい。
【0016】
図2に基づいて、支持束10と大引き20の固定方法を説明する。
大引き20の水平部22に、支持ボルト12を挿入可能なボルト挿入孔22aを設ける。
このボルト挿入孔22a内に、プレート13を取り付けた支持ボルト12を挿入し、プレート13上に大引きの水平部22を置く。
ボルト挿入孔22aは、例えば開口部21を通じて水平部22に設けることができ、大引きを目的の寸法に切断した後で設けてもよい。
レーザー墨出し器等を使用して大引きの高さを調整することが好ましく、例えばレーザー受光器を大引きの外内片23b、23c上にあて、プレート13を支持ボルト12に対して回転させて高さ調整する。
その後、水平部22を貫通した支持ボルト12に対して、開口部21を通じてワッシャー部材14及びナット部材15を取り付け、締め付ける。
これにより、支持束10に大引き20を固定できる。
【0017】
図3(a)~(c)に、ジョイント部材50を用いて2つの大引き20、20を連結した例を示す。
ジョイント部材50は、底壁51とその両端側に立設した一対の側壁52、52を一体的に形成した断面略コ字形状の鋼板の例である。
底壁51には、
図3(b)に示すようにそのおよそ中央に支持ボルト12が貫通可能なボルト貫通孔51aを設けてある。
また、側壁52には、大引き20のそれぞれの外壁23aに対向する固定孔52aを設け、この固定孔52aはセルフドリリングビス等のビス部材53を挿入可能である。
具体的な連結方法は、まず、支持束10のプレート13上にジョイント部材50の底壁51を置く。
この際、底壁51に設けたボルト貫通孔51a内に支持ボルト12が貫通した状態となる。
次に、連結する大引き20に対して、ほかの大引きと対向する水平部22の端部に支持ボルト12に対応する半円孔を設け、この半円孔を支持ボルト12に沿わすようにしてジョイント部材の底壁51上に2つの大引き20、20を置く。
あとはワッシャー部材14、ナット部材15を用いて支持ボルト12をナット締めするとともに、ビス部材53を用いてジョイント部材の側壁52と大引きの外壁23aをビス締めする。
これにより、支持束10、ジョイント部材50及び2つの大引き20,20を固定できる。
【0018】
ここで、大引きの端部のうち、ほかの大引きと連結しない端部を端末部20aといい、
図4に、この端末部20aが端末部材60を介して支持束10に固定された例を示す。
端末部材60は、底壁61の両端側に一対の側壁62、62を立設した断面略コ字形状の溶融亜鉛合金メッキ鋼板の例である。
底壁61には、支持ボルト12が貫通可能なボルト貫通孔(図示省略)を設けてある。
支持束の支持ボルト12を、端末部材60及び端末部20aのそれぞれのボルト貫通孔、ボルト挿入孔22aに挿入し、プレート13上に底壁61、水平部22を積層した後、支持ボルト12にナット部材15等を締め付ける。
これにより、大引きの端末部20aが端末部材60を介して支持束10に固定される。
このように端末部材に大引きの端末部が包持された状態であれば、大引きの側部23が外側に開くのを抑制しやすくなる。
【0019】
図5、6に示すように、デッキ固定具を用いて大引き等にデッキ材を固定してもよい。
本実施例のデッキ固定具45は、デッキ材40の突片41aに当接させる押え部45aと、その両側に一対の係止部45b、45bを有する断面略T字形状の樹脂成形品の例である。
押え部45aには、そのおよそ中央に固定孔45cが形成されている。
なお、デッキ固定具の形状や材質に特に限定はない。
図5に示すように、複数のデッキ材40は大引き20におよそ直角に交差するようにそれぞれを概ね平行に敷設する。
この際、デッキ材40の側面に設けた突片41aを、デッキ固定具45とビス部材46を用いて、大引き20の鍔部に固定できる。
例えば
図6に示すように、デッキ固定具45の押え部45aをデッキ材の突片41a上に配設し、ビス部材46を固定孔45cに挿通及び突片41aを貫通させて大引きの内片23cにビス止めしてもよい。
このようにデッキ固定具を用いて大引きの内片をビス止めすれば、大引きの側部が開くのを抑制しやすく、
図6に示すように側部23の上下長さが短い大引き20を用いても、強度に優れた低床化様が可能である。
複数のデッキ材40は、それぞれの側面にデッキ固定具の係止部45bに対応する被係止部を有することで、1つのデッキ固定具を介して隣り合ったデッキ材の係止が可能である。
【0020】
図7に、複数の支持束10に固定した大引き20上に、さらに根太30を固定してデッキ材40を支持するデッキ構造例を示す。
大引き20上には、根太30をおよそ直角に交差するように井桁状に固定し、この根太30上には、複数のデッキ材40をおよそ直角に交差するように概ね平行に敷設してある。
図8に、このデッキ構造例を構成する1つの支持束10、大引き20及び根太30と、デッキ材40の構造例の一部を示す。
支持束10に対する大引き20の固定方法は上述のとおりである。
根太30は、その断面構造が水平部32とその両端側から下方に向かって垂設した一対の側部33,33と、この側部の間で開口した開口部31を有する。
開口部31は、根太30の長手方向に沿って形成されている。
本実施例の根太30は、その側部33が中空部33dを有する中空断面形状の例であるが、この形状に限定するわけではない。
側部33は、水平部32におよそ垂直な外壁33aと、その下端部に鍔部として外片333b及び内片33cを有し、中空部33dが水平部32、外壁33a、内片33c及びこの内片33cにおよそ垂直な内壁33eにより形成されている。
本実施例の根太はアルミニウム押出材の例であるが、その材質に限定はない。
また、大引きと根太の断面構造が上下方向に反転した同一形状の例であるが、それぞれの断面構造が異なる形状であってもよい。
大引き20に対して根太30は、
図9(a)に示すようにその外片33bを鍔部(外内片23b、23c)に直角に交差するように配設し、ビス部材34を用いて固定できる。
例えば、
図9(b)に示すように大引きの内片23cにビス止めしてもよい。
また、デッキ材40は、例えば根太の水平部32にデッキ固定具45を用いて固定してもよい。
【符号の説明】
【0021】
10 支持束
12 支持ボルト
13 プレート
14 ワッシャー部材
15 ナット部材
20 大引き
21 開口部
22 水平部
23 側部
30 根太
31 開口部
32 水平部
33 側部
40 デッキ材
50 ジョイント部材
60 端末部材