(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080513
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】シャープペンシル用ガイドパイプおよびシャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 21/00 20060101AFI20230602BHJP
B43K 21/027 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B43K21/00 Z
B43K21/027 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193896
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353FA05
2C353FE03
2C353FG18
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性および良好な筆感を実現する。
【解決手段】結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなるシャープペンシル用ガイドパイプ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなるシャープペンシル用ガイドパイプ。
【請求項2】
表面粗さRaが0.1μm以下である、請求項1に記載のシャープペンシル用ガイドパイプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシャープペンシル用ガイドパイプ、
を有するシャープペンシル。
【請求項4】
軸筒と、
前記軸筒内において前記軸筒の延伸方向に沿って摺動可能に設けられ、筆記芯が挿通される前記延伸方向に沿った貫通孔を有する前記シャープペンシル用ガイドパイプを備える、
請求項3に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記シャープペンシル用ガイドパイプの筆記面側端部と筆記面との接触により前記筆記芯を前記シャープペンシル用ガイドパイプの前記筆記面側端部から繰り出す繰出機構を備える、
請求項4に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記シャープペンシル用ガイドパイプは、前記軸筒内に退没可能に保持されてなる、
請求項4または請求項5に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャープペンシル用ガイドパイプおよびシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルの筆記面側端部であるペン先には、金属製のガイドパイプが設けられている(例えば、特許文献1および特許文献2等参照)。また、シャープペンシルの機構として、ガイドパイプの筆記面への接触により芯がペン先から繰り出される繰出し機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭58-130791号公報
【特許文献2】特開平6-155987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドパイプはペン先に配置されていることから、筆記面との摩擦による摩耗や、摩耗等による筆感低下が問題となる。また、繰出し機構を有するシャープペンシルでは、ガイドパイプと筆記面との接触により芯が繰り出されるため、特に摩耗や筆感低下が問題となる。しかし、従来技術では、ガイドパイプの耐摩耗性および筆感向上への試みがなされていなかった。
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性および良好な筆感を実現することができる、シャープペンシル用ガイドパイプおよびシャープペンシルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなるシャープペンシル用ガイドパイプ。
2.表面粗さRaが0.1μm以下である、第1項に記載のシャープペンシル用ガイドパイプ。
3.第1項または第2項に記載のシャープペンシル用ガイドパイプ、を有するシャープペンシル。
4.軸筒と、
前記軸筒内において前記軸筒の延伸方向に沿って摺動可能に設けられ、筆記芯が挿通される前記延伸方向に沿った貫通孔を有する前記シャープペンシル用ガイドパイプを備える、
第3項に記載のシャープペンシル。
5.前記シャープペンシル用ガイドパイプの筆記面側端部と筆記面との接触により前記筆記芯を前記シャープペンシル用ガイドパイプの前記筆記面側端部から繰り出す繰出機構を備える、
第4項に記載のシャープペンシル。
6.前記シャープペンシル用ガイドパイプは、前記軸筒内に退没可能に保持されてなる、
第4項または第5項に記載のシャープペンシル。」とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、耐摩耗性および良好な筆感を実現することができる、シャープペンシル用ガイドパイプおよびシャープペンシルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るシャープペンシルの一例の縦断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のシャープペンシルの要部の一例の拡大縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のシャープペンシルの一例のA-A断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のシャープペンシルにおいて、ガイドパイプが後退した状態の一例を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の状態から中間把持部材が前進してチャックと第1当接部が当接した状態の一例を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の状態から中間把持部材が更に前進して筒状体と第2当接部が当接した状態の一例を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の状態から中間把持部材が更に前進してガイドパイプと先部材の係止状態が解除された状態の一例を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の状態からガイドパイプが前進した状態の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0010】
(シャープペンシル用ガイドパイプ)
本実施形態のシャープペンシル用ガイドパイプは、シャープペンシルの筆記面側端部であるペン先に設けられる、セラミックス製のガイドパイプである。以下、シャープペンシル用ガイドパイプを、単に、ガイドパイプと称して説明する場合がある。
【0011】
ガイドパイプは、シャープペンシル用の筆記芯を保護し、筆記芯をシャープペンシルの筆記面側端部に向かって案内するための部材である。ガイドパイプは、芯ガイド、芯保護管等と称される場合がある。
【0012】
本実施形態のガイドパイプは、結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなる。
【0013】
本実施形態のガイドパイプは、結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなることで、耐摩耗性および良好な筆感を実現できることが明らかとなった。
【0014】
まず、ガイドパイプの構成成分の詳細について説明する。
【0015】
(セラミックス)
本実施形態のガイドパイプは、結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなる。
【0016】
本実施形態のガイドパイプを構成するセラミックスの種類は限定されない。本実施形態のガイドパイプを構成するセラミックスは、基本成分が金属の酸化物であり、微量成分として珪化物、窒化物、弗化物、または硼化物などを含む。ガイドパイプを構成するセラミックスとしては、具体的には、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)およびこれらのセラミックスから選ばれる2種以上の複合体、等が挙げられる。
【0017】
これらのセラミックスの中でも、アルミナ、ジルコニアを主成分とするセラミックスをガイドパイプとして用いる事が好ましく、ジルコニアを主成分とすることが更に好ましい。主成分とは、ガイドパイプを構成する全成分100質量%に対して60質量%以上含有する成分を意味する。ジルコニアを主成分とするセラミックスをガイドパイプに用いる事で、ガイドパイプの曲げ強度、じん性、などの向上を図ることができる。また、ジルコニアの焼結粒はアルミナに比べて小さく設定しやすいため、より表面粗さの小さい焼結体のガイドパイプを得ることができる。また、ジルコニアを主成分とすることで、研磨等により表面粗さのより小さいガイドパイプを得ることができる。よって滑らかで良好な筆感を実現できるガイドパイプを提供することができる。
【0018】
ジルコニアには、その相構造として立方晶、正方晶、単斜晶があり、これらの三相が単層もしくは混相した状態で構成される。例えば、立方晶から成る安定化ジルコニア、主成分として正方晶から成る部分安定化ジルコニアが挙げられ、いずれも使用することができる。これらの中でも、特に、部分安定化ジルコニアを用いることが好ましい。部分安定化ジルコニアを用いることにより、強度、耐衝撃性、じん性等の性能が良好で、緻密な焼結体のガイドパイプを得ることができる。
【0019】
この場合、ガイドパイプに含まれる全ジルコニアに対する正方晶の量は、50モル%以上であることが好ましい。
【0020】
本実施形態のガイドパイプを構成するセラミックスとして、安定化剤を含有したセラミックスを用いてもよい。安定化剤としては、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア等が挙げられる。これらを添加することにより、セラミックスの強度、耐衝撃性、じん性などを更に向上させることができる。安定化剤を含有したセラミックスとしては、イットリアを含む部分安定化ジルコニアが最も好ましい。部分安定化ジルコニアは強度およびじん性がさらに改良される傾向にあるためである。
【0021】
安定化剤の添加量は、10mol%以下とすることが好ましい。例えば、イットリアの場合、セラミックス全量に対して10mol%以下、特に1mol%以上5mol%以下が好ましい。また、カルシアの場合、セラミックス全量に対する添加量は、1mol%以上9mol%以下程度が好ましい。
【0022】
ガイドパイプを構成するセラミックスの結晶粒子径は、0.1μm以上1μm以下であり、0.3μm以上0.8μm以下が好ましく、0.3μm以上0.6μm以下がより好ましく、0.3μm以上0.5μm以下が特に好ましい。
【0023】
セラミックスの結晶粒子径は、SEM観察図を使用したプラニメトリック法により求めることができる。詳細には、SEM観察図に面積が既知の円を描き、当該円内の結晶粒子数(Nc)及び当該円の円周上の結晶粒子数(Ni)を計測し、合計の結晶粒子数(Nc+Ni)が250±50個となるようにした上で、以下の式(A)を使用して結晶粒子径を求めることができる。
【0024】
結晶粒子径=2/{π×(Nc+(1/2)×Ni)/(A/M2)}0.5 ・・式(A)
【0025】
上式(A)において、Ncは円内の結晶粒子数、Niは円の円周上の結晶粒子数、Aは円の面積、及び、Mは走査型電子顕微鏡観察の倍率(例えば、5、000倍~10,000倍)である。なお、ひとつのSEM観察図における結晶粒子数(Nc+Ni)が200個未満である場合、複数のSEM観察図を用いて(Nc+Ni)を250±50個とすればよい。
【0026】
(着色剤)
本実施形態のガイドパイプは、更に、各種の添加剤を含む構成であってよい。
【0027】
添加剤としては、着色剤、ガイドパイプの製造時に用いられる有機物系添加剤および分散媒等が挙げられる。着色剤を添加することで、ガイドパイプを様々な色調とし、様々な効果を得ることが可能となる。例えば、着色剤を用いて筆記芯と同系色にガイドパイプを着色することで、筆記芯の芯粉による汚れを目立たなくすることができる。また、着色剤を用いて筆記芯の反対色にガイドパイプを着色することで、筆記芯を目立ちやすくし書きやすさの向上を図ることができる。ガイドパイプの製造時に用いられる有機物系添加剤および分散媒については後述する。
【0028】
着色剤としては、金属酸化物、金属硫化物、有機酸金属塩などが挙げられる。着色剤としては、具体的には、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、その他の遷移金属酸化物、硫化鉄、硫化マグネシウム、硫化ニッケル、酢酸ニッケル、酢酸鉄、酢酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0029】
着色剤の添加量は、主成分のセラミックスの色に変化をもたらし、主成分のセラミックスが焼結できる添加量であればよく限定されない。例えば、着色剤の添加量は、ガイドパイプを構成するセラミックス全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0030】
(ガイドパイプの製造方法)
本実施形態のガイドパイプの製造方法の一例を説明する。なお、ガイドパイプの製造方法は、その発明特定事項を備える全ての実施形態を広く包含するものであり、以下に説明する実施形態に限定して解釈されるべきではない。
【0031】
本実施形態のガイドパイプは、セラミックス原料および有機物系添加剤などの添加剤を含有するセラミックス成形体を、燃焼炉において脱脂および焼成を行うことによって作製される。
【0032】
詳細には、ガイドパイプの製造方法は、成形工程、および焼成工程を含む。ガイドパイプの製造方法は、更に後工程を含んでいてもよい。
【0033】
(成形工程)
成形工程は、セラミックス原料および有機物系添加剤を含有するセラミックス成形体を成形する工程である。
【0034】
セラミックス原料とは、ガイドパイプの骨材粒子となり得るセラミックスの粉状物または粒状物を意味する。セラミックス原料には、上述した、ガイドパイプを構成するセラミックスの粉状物または粒状物を用いる。
【0035】
なお、セラミックス原料は、1種類のセラミックス単体、複数種類のセラミックスからなる複合セラミックス、安定化剤を含有するセラミックス、の何れの粉状物または粒状物であってもよい。
【0036】
セラミックスの結晶粒子径が、焼成工程後に0.1μm以上1μm以下の範囲外となるサイズである場合がある。この場合には、溶媒を加えボールミルやビーズミル等を用いて、焼成工程後のセラミックスの結晶粒子径が上記範囲内となるように粉砕すればよい。そして、粉砕後の粉末を、ガイドパイプの製造に用いるセラミックス原料とすればよい。
【0037】
有機物系添加剤は、セラミックス成形体の原料として添加される有機物である。有機物系添加剤としては、例えば、有機バインダー、分散剤等が挙げられる。なお、有機物系添加剤には、それ自体が分解し、或いは燃焼することによって可燃性ガスを発生する限りにおいて、無機物を含んでいてもよい。このような無機物としては、例えばカーボン等が挙げられる。
【0038】
有機バインダーは、セラミックス成形体の原料となる坏土等に流動性、保形性、ハンドリング強度等を付与する、補強剤としての機能を有する。有機バインダーとしては、有機高分子等を好適に挙げることができる。有機バインダーとしては、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、または、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0039】
分散剤は、セラミックス原料等の分散媒への分散を促進し、均質な坏土を得るための添加剤である。分散剤としては、界面活性剤を好適に用いることができる。分散剤としては、具体的には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0040】
セラミックス成形体は、セラミックス原料および有機物系添加剤を含有するものであればよく、他の物質を構成成分として更に含むものであってもよい。このような構成成分としては水やアルコール等の分散媒の他、着色剤なども含んでいてもよい。上述したように、着色剤を用いることは、ガイドパイプを様々な色調とし、種々の効果を得ることが可能となることから好ましい。着色剤の具体例は、上述したため、ここでは記載を省略する。
【0041】
セラミックス成形体は、セラミックス原料および有機物系添加剤の他、分散媒、所望により着色剤などの他の添加剤を従来公知の混合・混練方法によって、混合・混練した後、成形することによって作製することができる。セラミック原料に着色剤を添加して混合・混練したセラミックス成形体とすることで、セラミック成形体やガイドパイプ上に着色層を設ける場合に比べて、ガイドパイプとして構成された後であっても着色剤の剥がれを抑制することができる。
【0042】
混合は、従来公知の混合機、例えば、バタフライミキサー、リボンミキサー等により行うことができる。混練は、従来公知の混練機、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、スクリュー式の押出混練機、真空土練機、二軸連続混練押出し成形機等により行うことができる。
【0043】
成形には、公知のセラミックス射出成型法を用いることができる。なお、成形には、押出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いてもよい。
【0044】
作製したセラミックス成形体は、焼成工程に先立って乾燥を行ってもよい。乾燥には、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を利用することができる。
【0045】
(焼成工程)
焼成工程は、成形工程によって得られたセラミックス成形体を焼成することで、セラミックス原料の焼結体であるセラミックス構造物を得る工程である。
【0046】
焼成工程は、例えば、脱脂工程と、焼結工程と、を含む。
【0047】
脱脂工程は、セラミックス成形体を、酸素含有雰囲気下、不活性雰囲気下、または還元性雰囲気下で加熱保持することで、加熱により発生する揮発成分を除去する工程である。
【0048】
不活性雰囲気とするために用いられる不活性ガスは、例えば、窒素ガスまたはアルゴンガスである。還元性雰囲気とするために用いられる還元性ガスは、水素および炭化水素などの、酸素と反応し得るガスである。脱脂工程における加熱温度、昇温速度、および加熱時間は特に限定されず、セラミックス成形体の構成成分に応じて適宜調整すればよい。
【0049】
詳細には、脱脂工程おける加熱温度は、その後に行われる焼結工程より相対的に低い温度で行われる。具体的には、750℃以下で行われることが好ましく、600℃以下で行われることが好ましい。また、脱脂工程においては、セラミックス成形体の温度を急激に上昇させることは好ましくない。これは、急激に温度を変化させると、セラミックス成形体内部に発生した揮発成分がセラミックス成形体外部に十分放出されず、所望の仮焼材料を得ることができない場合があるためである。このため、脱脂工程における昇温速度は、セラミックス成形体の温度が徐々に上昇する速度であることが好ましい。
【0050】
ここで、所望の効果を得るためには、セラミックス成形体の温度上昇を制御することが必要であるが、セラミックス成形体の大きさや形状によっては、セラミックス成形体の表面と中心部とで温度勾配が発生する。このため、セラミックス成形体全体を同一の条件で温度制御することは困難である。そこで、セラミックス成形体そのものの温度を制御する代わりに、セラミックス成形体中の温度勾配が小さいくなるように、雰囲気の温度を制御することが好ましい。具体的には、昇温速度は1時間当たり10℃/時間以上100℃/時間以下とすることが好ましく、15℃/時間以上50℃/時間以下とすることがより好ましい。また、一定温度に達した時点で昇温を停止し、一定温度で脱脂工程を継続してもよい。
【0051】
脱脂工程は、セラミックス成形体に含まれる樹脂が加熱によって分解し、生成した炭素以外の揮発成分がセラミックス成形体の外部に放出された時点で完了することができる。揮発成分がセラミックス成形体から十分に放出されるまでの時間、すなわち脱脂工程の時間は、5時間以上150時間以下であることが好ましく、10時間以上20時間以下であることがより好ましい。
【0052】
また、一定温度に達した時点で昇温を停止し、一定温度で脱脂工程を継続する場合には、その一定温度の持続時間としては、30分以上10時間以下であることが好ましく、1時間以上5時間以下であることがより好ましい。
【0053】
焼結工程は、脱脂工程により脱脂されたセラミックス成形体に含まれるセラミックス原料を焼結させる工程である。
【0054】
焼結工程における加熱温度および加熱時間は特に限定されず、セラミックス成形体の構成成分に応じて適宜調整すればよい。
【0055】
例えば、セラミックス原料としてジルコニアを用いる場合には、焼結工程の加熱温度は1200℃以上1600℃以下、好ましくは1350℃以上1500℃以下である。また、この場合、加熱時間は、0.5時間以上50時間以下、好ましくは4時間以上16時間以下である。
【0056】
なお、焼成工程は、脱脂工程を含まず、上記焼結工程のみを含む工程であってよい。この場合、焼結工程を行うことで、脱脂は焼結前もしくは焼結の昇温過程において行われ、セラミックス成形体の揮発成分の除去と焼結が行われる。
【0057】
(後工程)
後工程は、焼成工程によって得られたセラミックス構造体に対して加工を行う加工工程、および研磨を行う研磨工程の少なくとも一方を含む工程である。なお、焼成工程によって得られたセラミックス構造体をガイドパイプとして用いてもよい。
【0058】
加工工程は、得られたセラミックス構造体を更に所望の形状に加工する工程である。加工工程で用いる加工方法には、任意の方法を使用することができる。加工方法は一般的な切削加工であればよい。加工方法としては、例えば、旋盤加工、平面研削、R研削およびNC加工(Numerical Control machining)からなる群のいずれか1種以上を挙げることができる。
【0059】
研磨工程は、得られたセラミックス構造体またはセラミックス構造体を加工処理したものを研磨する工程である。研磨工程により、表面粗さや光沢が調整される。研磨工程で用いられる研磨方法は任意であるが、例えば、バレル研磨、バフ研磨、等が挙げられる。
【0060】
上記工程を得ることによって作製された本実施形態のガイドパイプの表面粗さRaは、0.1μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることがさらに好ましく、0.04μm以下であることが特に好ましい。
【0061】
ガイドパイプの表面粗さRaは、株式会社小坂研究所社製の触針式表面粗さ計(製品名:サーフコーダ SE-3400)を用いて、JIS B 061-2001の測定条件で測定される。
【0062】
また、上記工程を得ることによって作製される本実施形態のガイドパイプは、外形と内形が異形であるものも得ることができる。例えば、外形が円形で内形が多角形のガイドパイプや、外形が多角形で内形が円形のガイドパイプなどの各種形状のガイドパイプを、容易に得て、色々な用途に応じたガイドパイプを提供することができる。
【0063】
(シャープペンシル)
本実施形態のシャープペンシルは、本実施形態のガイドパイプを備える。
【0064】
本実施形態のシャープペンシルは、上記ガイドパイプを備えた構成であればよく、その構造および形状は限定されない。本実施形態のガイドパイプは、耐摩耗性および良好な筆感を実現することができるため、ガイドパイプの筆記面側端部が、筆記面に接触して筆記可能であるシャープペンシルや、筆記面に接触することで筆記可能な筆記具に好適に用いることができる。よって、下記のようなシャープペンシルに好適に用いることができる。
【0065】
本実施形態のガイドパイプは、軸筒を備え、ガイドパイプを軸筒内において軸筒の延伸方向に沿って摺動可能に設けた構成のシャープペンシルに好適に適用される。
【0066】
また、本実施形態のガイドパイプは、ガイドパイプの筆記面側端部と筆記面との接触により筆記芯をガイドパイプの筆記面側端部から繰り出す繰出機構を備える、シャープペンシルに好適に適用される。
【0067】
また、本実施形態のガイドパイプは、ガイドパイプを軸筒内に退没可能に保持するシャープペンシルに好適に適用される。
【0068】
図1は、本実施形態のガイドパイプが好適に適用されるシャープペンシル1の一例の縦断面図である。
図2は、
図1の要部を拡大した拡大縦断面図である。
図3は、
図2のA-A端面を拡大して示す拡大端面図である。
図4~
図8は、
図1のシャープペンシル1の状態から変化させた状態の一例の縦断面図である。
【0069】
図1、
図2、および
図3に示すように、シャープペンシル1は、軸筒2と、ガイドパイプ3と、繰出機構4と、中間把持部材5と、操作体6と、を備える。
【0070】
軸筒2は、延伸方向Xに沿って長い筒状の部材である。軸筒2の延伸方向Xとは、筒状の軸筒2の切断面の中心を通る直線に沿った方向である。言い換えると、延伸方向Xとは、円筒状の軸筒2の中心軸に沿った方向である。
【0071】
軸筒2は、先部材21と、先部材21の後部に螺着された連結体22と、連結体22の後部に螺着された軸筒本体23と、から構成される。
【0072】
先部材21は、先部材本体211と、該先部材本体211の後部内周部に圧入装着された内駒212と、から構成される。
【0073】
先部材21の前部内周部には、ガイドパイプ3が出没する前端開口部21aが設けられている。先部材21の中央内周部には、凹部21bが設けられている。凹部21bは、ガイドパイプ3の突出部3eと係止する被係止部として機能する。先部材21の後部内周部には、段部21cが設けられている。凹部21bは、内駒212の前方部212aに形成されている。前方部212aと先部材本体211の内周部には隙間が形成されている。凹部21bにガイドパイプ3の係止部となる突出部3eが係止される際には、この隙間によって、前方部212aが外方へ撓む。このため、ガイドパイプ3が係止し易い構成とされている。なお、前方部212aは、撓み易くなるよう周方向に沿って複数に分割されていてもよい。
【0074】
なお、本実施形態では、「前」および「前方」とは、シャープペンシル1の軸筒2の延伸方向Xの一端部側の方向であり、該延伸方向Xにおける筆記面側、すなわち、先部材21の設けられている側の方向を意味する。また、本実施形態では、「前部」およびペン先」とは、シャープペンシル1の延伸方向Xにおける筆記面側の端部を意味する。
【0075】
また、本実施形態では、「後」および「後方」とは、シャープペンシル1の軸筒2の延伸方向Xの他端部側の方向であり、該延伸方向Xにおける筆記面側に対して反対側の方向、すなわち、先部材21の設けられていない側の方向を意味する。また、本実施形態では、「後部」とは、シャープペンシル1の延伸方向Xにおける先部材21の設けられていない側の方向の端部を意味する。また、本実施形態では、「前後動」とは、延伸方向Xに沿った移動または摺動を意味する。
【0076】
軸筒本体23は、前軸231と、前軸231の後部に螺着された後軸232と、により構成される。軸筒本体23の内周部には、前部内周部に段状に形成された前段部23aと、中央外周部に内方へ向かって突出した内段部23bと、が設けられている。
【0077】
ガイドパイプ3は、軸筒2内において軸筒2の延伸方向Xに沿って摺動可能に設けられ、筆記芯7が挿通される該延伸方向Xに沿った貫通孔を有する部材である。ガイドパイプ3は、上述した本実施形態のガイドパイプである。
【0078】
詳細には、ガイドパイプ3は、軸筒2の延伸方向Xの筆記面側端部に配置された先部材21内に、該延伸方向Xに沿って摺動可能に配置されている。
【0079】
ガイドパイプ3は、ガイドパイプ本体31と、Oリング32と、ガイドパイプ本体31の内周部に圧入装着された芯保持部材33と、から構成される。また、ガイドパイプ3には、ガイド部3aと、段部3bと、後部当接部3cと、芯保持部3dと、突出部3eと、を有する。
【0080】
ガイドパイプ3は、少なくともガイドパイプ本体31が上述した本実施形態の特有のセラミックスから成る構成であればよい。なお、ガイドパイプ3を構成する全ての部分が、上述した本実施形態の特有のセラミックスから成る構成であることが好ましい。
【0081】
Oリング32は、ガイドパイプ本体31の外周凹状部に外嵌されたリング状の部材である。芯保持部材33は、ガイドパイプ本体31の内周部に圧入装着された部材であり、筆記芯7を保持する部材である。ガイド部3aは、ガイドパイプ本体31の内周部に設けられ、筆記芯7が挿通される領域である。段部3bは、ガイドパイプ本体31の外周部に形成され、後部当接部3cは、筒状体42のガイドパイプ押圧部42cと後端部で当接する領域である。芯保持部3dは筆記芯7を弱い力で保持する。突出部3eは、外周部に外方へ向かって突出し凹部21bに係止するOリング32により構成される。
【0082】
ガイドパイプ3の段部3bと先部材21の段部21cとの間には、コイルスプリング8が張架されている。コイルスプリング8によって、ガイドパイプ3は先部材21に対して前方へ付勢される。
【0083】
Oリング32および芯保持部材33は弾性材料により形成されている。具体的には、Oリング32には、合成ゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどが使用される。芯保持部材33には、合成ゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどが使用される。芯保持部3dにより筆記芯7を保持する保持力は、例えば、約0.3Nである。
【0084】
繰出機構4は、ガイドパイプ3の筆記面側端部と筆記面との接触により筆記芯7をガイドパイプ3の筆記面側端部から繰り出す機構である。筆記面は、シャープペンシル1の筆記芯7により筆記される対象である。筆記面は、例えば、用紙などの記録媒体である。
【0085】
繰出機構4は、チャック41と、チャック41の外方に外嵌された筒状体42と、チャック41と筒状体42の間に配設された鋼製ボール43と、コイルスプリング44と、を有する。
【0086】
チャック41は、チャック本体411と、チャック本体411の後部に圧入装着された後部筒体412と、を有する。チャック41は、筒状体42に対して前後動可能に構成される。チャック41の頭部41aは、延伸方向Xに沿って二分割されている。二分割されたそれぞれの頭部41aは、前方へ向かって互いが次第に離間するように形成されている。頭部41aがそれぞれ径方向内方に撓むことで、頭部41aによって筆記芯7を把持可能に構成されている。また、頭部41aは、鋼製ボール43が挿入されるチャック凹部41bを備える。チャック41の後部には、段状の後段41cが設けられている。
【0087】
筒状体42は、筒状体本体421と、筒状体本体421の前部内孔に圧入装着された前部当接部材422と、を有する。筒状体42は、延伸方向Xに貫通する内孔を備え、軸筒2に対して延伸方向Xに沿って摺動可能に構成されている。該内孔の前部には、前方へ向かって拡径する傾斜部である締部42bが形成されている。締部42bには、チャック41のチャック凹部41bに挿入した鋼製ボール10が当接するように配置される。該内孔の中央には、中央内段42aが設けられている。
【0088】
筒状体42の外周部には、段状に形成された外段42dが設けられている。外段42dが軸筒本体23の前段部23aに当接することで、筒状体42の後方への移動が制限される。また、筒状体42の前端には、ガイドパイプ3の後部当接部3cに当接するガイドパイプ押圧部42cが設けられている。ガイドパイプ押圧部42cは、先部材21の内駒212の後端と当接することで、前方への移動が制限される。
【0089】
コイルスプリング44は、筒状体42の中央内段42aとチャック41の後段41cとの間に張架され、チャック41を前方に弾発する。すなわち、繰出機構4は、鋼製ボール43をチャック41と締部42bとの間に配した公知のボールチャック構造とされている。
【0090】
チャック41は、コイルスプリング44の弾発力で後方へ弾発される。筆記芯7をチャック41が把持した状態であると、チャック41の後退により鋼製ボール43を介して筒状体42の締部42bによりくさび作用が発生し、筆記芯7をチャック41により把持することができる。
【0091】
また、ボールチャック構造の特徴として、筆記芯7に後方への押圧力(筆圧)などが加わると、チャック41で強く筆記芯7を把持して筆記芯7の後退を制限できる。一方、筆記芯7に対して前方への引張力が加わると、くさび作用がすぐに解除されて筆記芯7の前方への移動が許容される構造となっている。
【0092】
本実施形態の繰出機構4では、ガイドパイプ3の芯保持部3dで筆記芯7を保持した状態で該ガイドパイプ3が前進すると、筆記芯7もガイドパイプ3の前進に合わせて前進する。
【0093】
中間把持部材5は、把持部材本体51と、把持部材本体51の後部に圧入装着された後筒52と、から構成される。中間把持部材5は、軸筒2の内部に延伸方向Xに沿って摺動可能に収納される。中間把持部材5の前部は周方向に沿って均等に4分割され(
図3参照)、弾性力で筒状体42を一定の力で把持する把持部5aとされている。中間把持部材5の後部内周部には、複数の予備芯が収容される芯収容部5bが設けられている。後筒52の前端と軸筒本体23の内段部23dとの間には、コイルスプリング9が張架されている。コイルスプリング9の弾発力によって、中間把持部材5は常時後方に弾発される。
【0094】
中間把持部材5の中央内段には、中間把持部材5が前進した際にチャック41の後端に当接する第1当接部5cと、筒状体42の後端に当接する第2当接部5dと、が設けられている。第1当接部5cと第2当接部5dとを同一平面上の内方と外方にそれぞれ形成することで、加工性が向上される。中間把持部材5は、外周部に中央外段を有し、中央外段に軸筒本体23の内段部23bが当接することで、後方への移動が制限される。
【0095】
中間把持部材5の後部には、操作体6が着脱自在に装着されている。操作体6の前方への押圧に伴って、中間把持部材5が前方へ押圧される。
【0096】
ガイドパイプ3と先部材21との係止状態を解除するための押圧力と、中間把持部材5の把持部5aが筒状体42を把持する把持力と、の関係は、以下であることが好ましい。
【0097】
図4に示すように、ガイドパイプ3の突出部3eと先部材21の凹部21bとが係止した係止状態を想定する。この係止状態から、ガイドパイプ3が筒状体42により軸方向に沿って前方へ押圧された際に係止状態を解除するための押圧力をPとし、中間把持部材5の把持部5aが筒状体42を把持する把持力をQとする。この場合、押圧力と把持力との関係が、Q<Pの関係式を満たすように構成されている。例えば、押圧力Pは約2Nであり、把持力Qは約1Nである。
【0098】
次に、本実施形態において、
図1および
図2の状態から操作体6を前方へ押圧するノック動作により、筆記芯7が前方へ繰り出される状態を説明する。
【0099】
図1および
図2の状態から操作体6をコイルスプリング9の弾発力に抗して前方へ押圧すると、操作体6に押圧された中間把持部材5も同時に前進する。そして、中間把持部材5が前進すると中間把持部材5の把持部5aに把持されている筒状体42がチャック41および筆記芯7と共に前進する。この際、筆記芯7の前端はガイドパイプ3のガイド部3aの前端から突出する。
【0100】
筒状体42のガイドパイプ押圧部42cが先部材21の内駒212の後端に当接することで筒状体42の前進が止まると、同時にチャック41とチャック41に把持されている筆記芯7の前進も止まる。この状態で、操作体6に対する押圧を解除すると、コイルスプリング9の弾発力で中間把持部材5と操作体6が後退し、中間把持部材5の把持部5aで把持されている筒状体42が後退する。この際、筆記芯7はガイドパイプ3の芯保持部3dで保持されており、筒状体42及びチャック41が後退することで、筆記芯7には前方への引張力が掛かる。上述したように、本実施形態のシャープペンシル1はボールチャック構造を採用している。このため、筆記芯7に対して前方への引張力が加わると、締部42bによるチャック41に対するくさび作用がすぐに解除されて筆記芯7の前方への移動を許容する。よって、筆記芯7は後退せずに前進した位置を維持し、その結果として、筆記芯7がガイドパイプ3に対して前方へ繰り出される。
【0101】
次に、本実施形態のシャープペンシル1で記録媒体などの筆記面に筆記した際に、先端ノック構造が作動し、筆記動作に伴い筆記芯7が前方へ繰り出される状態を説明する。
【0102】
図1および
図2の状態で記録媒体などの筆記面へ筆記を行い、筆記芯7の前端が摩耗すると、筆記時にガイドパイプ3の前端である筆記面側端部が筆記面に接触する。ガイドパイプ3の筆記面側端部が筆記面に接触することで、筆記面によって押圧されたガイドパイプ3がコイルスプリング8の弾発力に抗して先部材21(軸筒2)に対して後退する。筆記芯7はチャック41により把持されており、繰出機構4は後方へ筆記芯7が押圧された場合には強く筆記芯7を把持する。このため、筆記芯7は後退せず、ガイドパイプ3のみが先部材21および筆記芯7に対して後退する。
【0103】
ガイドパイプ3の前端である筆記面側端部が筆記面から離れると、ガイドパイプ3はコイルスプリング8の弾発力で前進する。この際、筆記芯7はガイドパイプ3の芯保持部3dで保持されている。このため、筆記芯7には前方への引張力が掛かり、筆記芯7の繰り出し時と同様に、締部42bによるチャック41へのくさび力が低下し、筆記芯7がチャック41から解放される。ガイドパイプ3の前進に伴いガイドパイプ3により保持されている筆記芯7も前進することから、筆記をすることで、自動的に筆記芯7が前方へ繰り出される。自動的に筆記芯7が前方へ繰り出される構造は、先端ノック構造と称される場合がある。
【0104】
次に、
図1および
図2の状態から、ガイドパイプ3と筆記芯7を後退させて先部材21に係止される状態を
図1から
図4を用いて説明する。
【0105】
図1および
図2の状態から
図8の状態まで、操作体6を前方へ押圧すると、中間把持部材5が押圧されて前進する。中間把持部材5の前進に伴い筒状体42に対してチャック41が前進することで、締部42bによるチャック41へのくさび作用が低下してチャック41が筆記芯7を開放する。このため、本実施形態のシャープペンシル1は、筆記時には操作体6が前方へ押圧されることで、ガイドパイプ3および筆記芯7が軸筒2の前端開口部21aから前方へ突出され、筆記芯7により筆記可能な状態となる。
【0106】
図8の状態で、ガイドパイプ3および筆記芯7を机などの平坦面に押圧すると、先ず筆記芯7がガイドパイプ3の前端まで後退し、次いでガイドパイプ3および筆記芯7が先部材21(軸筒2)に対して後退し、ガイドパイプ3の突出部3eと先部材21の凹部21bが係止する。
【0107】
操作体6に対する前方への押圧が解除されると、コイルスプリング9およびコイルスプリング44の弾発力でチャック41、筒状体42、中間把持部材5、操作体6が後方へ移動し、チャック41で筆記芯7が再び把持された
図4の状態となる。
【0108】
この
図4の状態では、筆記芯7の前端がガイドパイプ3の前端と略同位置となるとともにガイドパイプ3の後部当接部3cと筒状体42のガイドパイプ押圧部42cとの間に隙間Lが形成されるよう構成されている。また、ガイドパイプ3は、軸筒2の前端開口部21a内に退没された状態となる。
【0109】
この
図4の状態にすることで、シャープペンシル1を筆箱や衣服のポケットなどに入れて持ち歩いても、振動や他の物品との接触でガイドパイプ3の先端が破損することがなく、また、同時にガイドパイプ3の細い先端で他の物品に傷をつけたりすることを防止できる。
【0110】
続いて、
図4の状態から操作体6を前方へ押圧操作することでガイドパイプ3と先部材21との係止状態を解除して筆記状態に戻す動作を説明する。
【0111】
図4の状態から、操作体6が前方へ押圧されると操作体6に押された中間把持部材5が前進する。中間把持部材5が前進すると、中間把持部材5の把持部5aに把持された筒状体42がチャック41と共に、ガイドパイプ3の後部当接部3cと筒状体42のガイドパイプ押圧部42cとが当接するまでの隙間L分前進する。この際、チャック41に把持された筆記芯7も隙間L分ガイドパイプ3に対して前進し、筆記芯7は、ガイドパイプ3のガイド部3aの前端から前方へ向かって隙間L分突出する。
【0112】
例えば、隙間Lを0.3mm以上0.5mm以下の範囲に設定した場合を想定する。この場合、筆記芯7がガイドパイプ3のガイド部3aの前端から突出する長さも同じく0.3mm以上0.5mm以下の範囲となる。
【0113】
上述したように、ガイドパイプ3と先部材21との係止状態を解除するための押圧力Pと、中間把持部材5の把持部5aが筒状体42を把持する把持力Qの関係は、Q<Pの関係式を満たす。このため、ガイドパイプ3の後部当接部3cと筒状体42のガイドパイプ押圧部42cとが当接すると、筒状体42の前進は停止し、筒状体42に対して中間把持部材5の把持部5aが筒状体42の外面を滑るようにして前進する。そして、中間把持部材5の第1当接部5cとチャック41の後端とが当接する
図5の状態となる。
【0114】
操作体6がさらに押圧されて中間把持部材5が前進すると、コイルスプリング44の弾発力に抗してチャック41が筒状体42に対して前進する。チャック41の前進により、鋼製ボール43を介した締部42bによるチャック41へのくさび作用が低下し、筆記芯7は前進することなくチャック41から解放される。チャック41の前進は筒状体42の後端と中間把持部材5の第2当接部5dとが当接した時点で止まり、
図6の状態となる。
【0115】
図6の状態からさらに中間把持部材5が前進すると、筒状体42のガイドパイプ押圧部42cがガイドパイプ3を押圧し、ガイドパイプ3の突出部3eと先部材21の凹部21bとの係止状態が解除され、
図7の状態となる。
【0116】
ガイドパイプ3と先部材21の係止状態が解除されると、コイルスプリング8の弾発力でガイドパイプ3のガイド部3aが前進して先部材21の前端開口部21aから前方へ突出する。さらに、芯保持部3dで保持されている筆記芯7もガイドパイプ3との延伸方向Xにおける位置関係を維持したまま前進し、
図8の状態となる。
【0117】
図8の状態から操作体6の押圧状態を解除すると、コイルスプリング9の弾発力とコイルスプリング44の弾発力で中間把持部材5と筒状体42とチャック41が後退して元の位置に戻り、
図1および
図2の状態となる。
【0118】
ここで、本実施形態のシャープペンシル1に設けられたガイドパイプ3は、上述した本実施形態のガイドパイプ3である。すなわち、本実施形態のガイドパイプ3は、結晶粒子径が0.1μm以上1μm以下のセラミックスからなり、耐摩耗性および良好な筆感を実現可能である。
【0119】
このため、シャープペンシル1は、本実施形態のガイドパイプ3を備えることで、耐摩耗性および良好な筆感を実現することができる。
【0120】
また、ガイドパイプ3を、軸筒2内において軸筒2の延伸方向Xに沿って摺動可能に設けた構成のシャープペンシル1であっても、本実施形態のガイドパイプ3を備えることで、耐摩耗性および良好な筆感を実現することができる。
【0121】
また、筆記時にガイドパイプ3の前端である筆記面側端部が筆記面に接触することで筆記芯7が繰り出される構成のシャープペンシル1であっても、本実施形態のガイドパイプ3を備えることで、耐摩耗性に優れ、良好な筆感を実現可能なシャープペンシル1を提供することができる。すなわち、ガイドパイプ3が筆記面に接触する構成のシャープペンシルであっても、本実施形態のガイドパイプ3を備えることで、耐摩耗性に優れ、良好な筆感を実現可能なシャープペンシル1を提供することができる。
【0122】
なお、セラミックスには、衝撃により割れや欠けが発生する場合がある。しかし、ガイドパイプ3を軸筒2内に退没させて収容可能な構成である本実施形態のシャープペンシル1に本実施形態のガイドパイプ3を適用することで、ガイドパイプ3の割れや欠けを抑制することができる。
【実施例0123】
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
(実施例1)
ジルコニア粉末(イットリア3mo1%およびアルミナ粉末0.25質量%を含む部分安定化ジルコニア、粒子径0.04μm、東ソー株式会社製、商品名TZ-3Y-E)をセラミックス原料として用意した。
【0125】
このセラミックス原料に、有機バインダーとしてポリビニルアルコールを20質量%、分散剤として脂肪酸石鹸を5質量%、離型剤としてステアリン酸マグネシウムを2質量%、添加剤として添加し、混練機(ニーダー、トーシン株式会社製)により混練し、混練物を得た。
【0126】
この混練物に対して、射出成形法を適用してガイドパイプの完成品近似形状のセラミックス成形体を作製した。セラミックス成形体の製造に射出成形を適用する場合の諸条件には、公知のセラミックス射出成形法に準ずる諸条件を用いた。
【0127】
そして、このセラミックス成形体を窒素雰囲気中500℃で2時間、脱バインダーした(脱脂工程)。脱脂工程における昇温速度は、30℃/時とした。脱脂工程を経たセラミックス成形体を、大気雰囲気中において1350℃で2時間焼成し、焼結させ、セラミックス構造物を得た。得られたセラミックス構造物の端面をダイヤモンドシート#6000で研磨し、外径2.0mm、内径0.6mmの管状のセラミックス構造物を、実施例1のガイドパイプとして作製した。
【0128】
(実施例2)
着色剤含有ジルコニア粉末(ジルコニア92質量%と、イットリア4.2質量%と、着色剤であるCr-Mn-Co系の複合酸化物3.8質量%を含む、粒子径0.1μm、第一稀元素株式会社製、商品名TRZ-NB)を着色剤含有のセラミックス原料として用意した。
【0129】
実施例1のセラミックス原料に替えて、実施例2で用意した着色剤含有のセラミックス原料を用いた点以外は、実施例1と同様にして、セラミックス射出成形法によってセラミックス成形体を作製した。
【0130】
そして、このセラミックス成形体を窒素雰囲気中500℃で2時間、脱バインダーした(脱脂工程)。脱脂工程における昇温速度は、20℃/時とした。脱脂工程を得たセラミックス成形体を、大気雰囲気中において1450℃で2時間焼成し、焼結させ、セラミックス構造物を得た。得られたセラミックス構造物の端面をダイヤモンドシート#6000で研磨し、外径2.0mm、内径0.6mmの管状のセラミックス構造物を、実施例2のガイドパイプとして作製した。
【0131】
(比較例1)
アルミナ粉末(粒子径0.2μm、住友化学株式会社製、商品名AKP―50)を、セラミックス原料として用意した。
【0132】
実施例1のセラミックス原料に替えて、比較例1で用意したセラミックス原料を用いた点以外は、実施例1と同様にして、セラミックス射出成形法によってセラミックス成形体を作製した。
【0133】
そして、このセラミックス成形体を窒素雰囲気中500℃で2時間、脱バインダーした(脱脂工程)。脱脂工程における昇温速度は、30℃/時とした。脱脂工程を得たセラミックス成形体を、大気雰囲気中において1700℃で2時間焼成し、焼結させ、比較セラミックス構造物を得た。得られた比較セラミックス構造物の端面をダイヤモンドシート#6000で研磨し、外径2.0mm、内径0.6mmの管状のセラミックス構造物を、比較例1のガイドパイプとして作製した。
【0134】
(比較例2)
比較例2の比較ガイドパイプとして、ドクターグリップ(Dr.GRIP、パイロット社製、商品名Gスペック05)のガイドパイプである、黄銅にクロムメッキを施したガイドパイプを、比較例2の比較ガイドパイプとして用意した。
【0135】
実施例1~実施例2のガイドパイプ、および比較例1~比較例2の比較ガイドパイプについて、色を確認したところ、表1に示す色であった。
【0136】
(物性)
実施例1~実施例2のガイドパイプ、および比較例1~比較例2の比較ガイドパイプについて、結晶粒子径、表面粗さRa(μm)、ピッカーズ硬さ(HV)、曲げ強度(Mpa)、ヤング率(GPa)を測定した。測定結果を表1に示した。測定条件は、以下とした。
【0137】
結晶粒子径は、ガイドパイプおよび比較ガイドパイプの各々の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、プラニメトリック法により算出した。
【0138】
表面粗さRa(μm)は、触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所社製、商品名サーフコーダ SE-3400)を用いて測定した。
【0139】
ピッカーズ硬さ(HV)は、株式会社明石製作所製 ビッカース硬度計を用いて試験力1kgfの条件で測定した。
【0140】
曲げ強度(MPa)は、株式会社島津製作所製 万能試験機を用いて外部支点間距離20mmの条件で測定した。
【0141】
ヤング率(GPa)は、株式会社島津製作所製 万能試験機を用いて外部支点間距離20mmの条件で測定した。
【0142】
(評価)
-筆感(紙あたり)-
実施例1~実施例2のガイドパイプ、および比較例1~比較例2の比較ガイドパイプについて、各サンプルを紙面に垂直に当て、150gの荷重を掛けた状態で4m/minの速度で50mm移動させたときの筆記抵抗値を測定した。筆記抵抗値の測定結果を、表1に示した。そして、筆記抵抗値を用いて筆感を評価した。評価基準を下記に示した。また、評価結果を表1に示した。
【0143】
A:筆感良好 :筆記抵抗値0.2未満。
B:筆感やや不良 :筆記抵抗値0.2以上0.5未満。
C:筆感不良 :筆記抵抗値0.5以上。
【0144】
―耐摩耗性―
実施例1~実施例2のガイドパイプ、および比較例1~比較例2の比較ガイドパイプについて、各サンプルを#1000サンドペーパーに垂直に当て、500gの荷重を掛けた状態で4m/minの速度で700mm移動させたときの摩耗量(μm)をマイクロメータにより測定した。摩耗量の測定結果を、表1に示した。そして、摩耗量を用いて耐摩耗性を評価した。評価基準を下記に示した。また、評価結果を表1に示した。
【0145】
A:耐摩耗性良好 :摩耗量10μm未満。
B:耐摩耗性やや不良:摩耗量10μm以上50μm未満。
C:耐摩耗性不良 :摩耗量50μm以上。
【0146】
【0147】
表1に示すように、実施例1~実施例2のガイドパイプは、比較例1~比較例2の比較ガイドパイプに比べて、耐摩耗性および良好な筆感を実現することが確認できた。