(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080526
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
A61B6/00 350S
A61B6/00 330B
A61B6/00 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193919
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 正典
(72)【発明者】
【氏名】竹元 久人
(72)【発明者】
【氏名】小倉 伸吾
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA24
4C093CA13
4C093EC16
4C093FF12
4C093FF18
4C093FF34
4C093FF37
(57)【要約】
【課題】ユーザの操作負担を軽減させて良好なDSA画像を決定すること。
【解決手段】本実施形態に係る医用画像処理装置は、位置合わせ部と、一致度算出部と、決定部と、を備える。位置合わせ部は、1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する。一致度算出部は、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出する。決定部は、前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する位置合わせ部と、
前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出する一致度算出部と、
前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する決定部と、
を備えた医用画像処理装置。
【請求項2】
前記位置合わせ部は、前記1つのコントラスト画像と前記複数のマスク画像各々とに基づいて前記複数のマスク画像に対して並進と回転とのうち少なくとも一つの変換を適用して、前記位置合わせを実行する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記複数の一致度のうち一致度が高い順の所定の数の前記複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つの差分画像を含む複数の差分画像として決定し、
前記複数の差分画像を表示する表示部をさらに備えた、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記複数のマスク画像は、所定のフレームレートで生成された一連のマスク画像であって、
前記決定部は、前記最大の一致度の前後のフレームに対応する2つのマスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記2つのマスク画像に関する2つの差分画像として決定し、
前記1つの差分画像と前記2つの差分画像とを表示する表示部をさらに備えた、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記位置合わせ部は、前記1つのコントラスト画像の前後のフレームに対応する2つのコントラスト画像と、前記複数のマスク画像と、の間で位置合わせを実行し、
前記一致度算出部は、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記2つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記2つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出し、
前記決定部は、前記2つのコントラスト画像と、前記2つのコントラスト画像に関する最大の一致度にそれぞれ対応する2つのマスク画像と、の差分を、前記前後のフレームの2つのコントラスト画像に関する2つの差分画像として決定し、
前記1つの差分画像と、前記2つの差分画像とを表示する表示部をさらに備えた、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記複数の一致度のうち一致度が高い順の所定の数の前記複数のマスク画像と、前記1つのコントラスト画像および前記2つのコントラスト画像と、の差分を、複数の差分画像としてさらに決定し、
前記表示部は、前記1つの差分画像と、前記2つの差分画像と、前記複数の差分画像とを表示する、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記複数のマスク画像は、所定のフレームレートで生成された一連のマスク画像であって、
前記決定部は、前記2つのコントラス画像に関する前記最大の一致度の前後のフレームに対応する複数のマスク画像と、前記2つのコントラスト画像と、の差分を、前記前後のフレームの2つのマスク画像に関する複数の差分画像として決定し、
前記表示部は、前記1つの差分画像と、前記2つの差分画像と、前記複数の差分画像と、を表示する、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記位置合わせ部は、前記1つのコントラスト画像において設定された複数の関心領域と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、
前記一致度算出部は、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記複数の関心領域に対応する複数の関心領域画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記複数の関心領域画像との間の複数の一致度を算出し、
前記決定部は、前記複数の関心領域各々に関する最大の一致度に対応する前記複数のマスク画像と、前記1つのコントラスト画像と、の差分を、前記複数の関心領域に対応する複数の関心差分画像として決定し、
前記1つの差分画像と、前記複数の関心差分画像とを表示する表示部をさらに備えた、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記位置合わせ部は、
前記差分画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記差分画像から造影剤に関するコントラスト領域を抽出し、
前記コントラスト領域に対応するコントラスト部分画像と前記複数のマスク画像との位置合わせを実行し、
前記一致度算出部は、前記コントラスト部分画像との位置合わせに用いられた前記複数のマスク画像と前記コントラスト部分画像とを用いて、前記コントラスト部分画像と前記複数のマスク画像との間の複数の一致度を再度算出し、
前記決定部は、前記再度算出された複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記位置合わせ部は、
前記1つのコントラスト画像を複数の領域に分割し、
前記複数の領域に対応する複数のコントラスト分割画像と、前記複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、
前記一致度算出部は、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記複数のコントラスト分割画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記複数のコントラスト分割画像との間の複数の一致度を算出し、
前記決定部は、
前記複数の領域ごとに、前記最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記複数のコントラスト分割画像との差分を、複数の分割差分画像として決定し、
前記複数の分割差分画像をつなぎ合わせて、前記1つの差分画像を生成する、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記1つのコントラスト画像は、被検体に対する造影剤の急速静注を伴って前記被検体の長手方向に沿って所定のフレームレートで生成された複数のコントラスト画像に含まれ、
前記複数のマスク画像は、前記複数のコントラスト画像の取得時における天板の動きに対応して、前記フレームレートで生成され、
前記位置合わせ部は、前記複数のコントラスト画像各々と、前記複数のマスク画像のうち前記複数のコントラスト画像各々に関する前記天板の位置に応じた1つのマスク画像および前記天板の位置に関するフレームの前後の所定の数のフレームに関する前記所定の数のマスク画像と、の間で位置合わせを実行し、
前記一致度算出部は、前記複数のコントラスト画像に亘って、前記複数のコントラスト画像各々と前記1つのマスク画像および前記所定の数のマスク画像との間の複数の一致度を算出し、
前記決定部は、
前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記複数のコントラスト画像各々との差分を有し前記複数のコントラスト画像に亘る複数の差分を、前記複数のコントラスト画像に対応する複数の差分画像として決定し、
前記複数の差分画像に基づいて、前記複数の差分画像の関心領域を前記長手方向に沿って貼り合わせて、長尺画像を生成する、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記位置合わせ部は、
前記複数のマスク画像において時系列的に隣接する2つのマスク画像に基づいて、前記2つのマスク画像の間の時間幅に含まれる複数の補間画像を生成し、
前記複数の補間画像各々と前記1つのコントラスト画像との間で位置合わせをさらに実行し、
前記一致度算出部は、前記位置合わせされた複数の補間画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数の補間画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度をさらに算出し、
前記決定部は、前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像または前記補間画像と、前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つの差分画像として決定する、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記1つのコントラスト画像における関心領域の設定画面とともに、前記位置合わせの実行の要否の選択に関するダイアログを表示する表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記関心領域の設定が選択された場合、前記1つの差分画像を表示する、
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
被検体に対するX線撮影により生成された1つのコントラスト画像と、前記X線撮影により生成された複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する位置合わせ部と、
前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出する一致度算出部と、
前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する決定部と、
を備えたX線診断装置。
【請求項15】
コンピュータに、
1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、
前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出し、
前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定すること、
を実現させる医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線循環器診断装置における腹部撮影などで息止めが困難な患者のDSA(Digital Subtraction Angiography)撮影において、複数フレームに亘って複数のマスク画像を収集し、コントラスト画像に最適なマスク画像を複数のマスク画像からユーザが選択して、DSA画像を作成することがある。しかしながら、コントラスト像に最適なマスク画像をユーザが目視にて選択する場合、長時間の作業により、ユーザに負担がかかる問題がある。
【0003】
このため、X線循環器診断装置は、当該コントラスト画像と複数のマスク画像との類似性を評価し、類似性が一番高いマスク画像を、DSA画像に最適なマスク画像として選択することがある。このとき、コントラスト画像と選択されたマスク画像との位置合わせのずれにより、生成されるDSA画像の画質が劣化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザの操作負担を軽減させて良好なDSA画像を決定することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、位置合わせ部と、一致度算出部と、決定部と、を備える。位置合わせ部は、1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する。一致度算出部は、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像とに基づいて、前記位置合わせされた複数のマスク画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出する。決定部は、前記複数の一致度のうち最大の一致度に対応する前記マスク画像と前記1つのコントラスト画像との差分を、前記1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図。
【
図2】
図2は、実施形態に係り、一致度の算出の一例を示す図。
【
図3】
図3は、実施形態に係るDSA画像決定処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図4】
図4は、実施形態に係り、ディスプレイに表示された複数の差分画像の表示例を示す図。
【
図5】
図5は、実施形態の第1変形例に係り、ディスプレイに表示された複数の差分画像の表示例を示す図。
【
図6】
図6は、実施形態の第2変形例に係り、ディスプレイに表示された複数の差分画像の表示例を示す図。
【
図7】
図7は、実施形態の第3変形例に係り、ディスプレイに表示された複数の差分画像の表示例を示す図。
【
図8】
図8は、実施形態の第4変形例に係り、ディスプレイに表示された複数の差分画像の表示例を示す図。
【
図9】
図9は、実施形態の第5変形例に係り、関心領域の設定と、DSA画像決定処理の設定とに関するユーザインタフェースの一例を示す図。
【
図10】
図10は、実施形態の第5変形例に係り、設定された複数のROIと、複数のROIに応じてディスプレイに表示される複数の差分画像と一例とを示す図。
【
図11】
図11は、実施形態の第7変形例に係り、1つのコントラスト画像において分割された複数の領域と、ディスプレイに表示された1つの差分画像との一例とを示す図。
【
図12】
図12は、実施形態の第8変形例に係り、ボーラスDSAに関する撮影の概要の一例を示す図。
【
図13】
図13は、実施形態の第8変形例に係り、ボーラスDSAに関する長尺画像の生成の概要の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理プログラムの実施形態について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明は適宜省略する。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として変形例等にも同様に適用される。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るX線診断装置1の構成を示すブロック図である。X線診断装置1は、データ収集系として、X線発生部3、X線検出器5、寝台7、Cアーム9、X線コントローラ11、高電圧発生装置13、及びCアーム・寝台機構制御部15を有する。X線診断装置1は、データ処理系として、位置データメモリ21、システム制御部22、入力インタフェース23、ディスプレイ24、メモリ25、処理回路26を有する。
【0010】
X線発生部3は、X線管3a及びX線絞り器3bを有する。X線管3aは、X線を発生させる真空管である。X線管3aは、陰極(フィラメント)から放出された熱電子を高電圧によって加速させ、この加速電子をタングステン陽極に衝突させることで、X線を発生する。
【0011】
X線絞り器3bは、X線管3aとX線検出器5との間に位置し、金属板としての鉛板で構成される。X線絞り器3bは、X線コントローラ11により制御される。X線絞り器3bは、開口領域外のX線を遮蔽する。これにより、X線絞り器3bは、X線管3aが発生したX線を、被検体Pの関心領域に照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り器3bは、複数枚の絞り羽根を有する。X線絞り器3bは、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線の遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。X線絞り器3bにおける絞り羽根は、領域設定機能26cにより設定された関心領域に応じてX線コントローラ11による制御の下で、不図示の駆動装置により駆動される。
【0012】
X線検出器5は、X線管3aにより発生されたX線を検出する。例えば、X線検出器5は、被検体Pを透過したX線を検出する。X線検出器5としては、X線を直接電荷に変換する直接変換型と、X線を光に変換した後、電荷に変換する間接変換型とが使用可能である。以下、一例として、X線検出器5は、直接変換型であるものとして説明するが、間接変換型であっても構わない。
【0013】
X線検出器5は、例えば、被検体Pを透過したX線を電荷に変換して蓄積する平面状のFPD(Flat Panel Detector)と、当該FPDに蓄積された電荷を読み出すための駆動パルスを生成するゲートドライバとを有する。FPDの大きさは一般的に8~16インチである。FPDは、微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成される。各々の検出素子は、X線を感知し、入射X線量に応じて電荷を生成する光電膜と、当該光電膜に発生した電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された電荷を所定のタイミングで出力するTFT(薄膜トランジスタ)と、を有する。蓄積された電荷は、ゲートドライバにより供給される駆動パルスによって、順次読み出される。
【0014】
X線検出器5の後段には、不図示の投影データ生成回路が設けられる。投影データ生成回路は、電荷・電圧変換器、A/D変換器及びパラレル・シリアル変換器を有する。電荷・電圧変換器は、FPDから行単位あるいは列単位でパラレルに読み出された電荷を、電圧に変換する。A/D変換器は、電荷・電圧変換器からの出力を、デジタル信号に変換する。パラレル・シリアル変換器は、デジタル変換されたパラレル信号を、時系列的なシリアル信号に変換する。投影データ生成回路は、当該シリアル信号を時系列的な投影データとして、処理回路26に出力する。
【0015】
寝台7は、被検体Pを搭載したまま起倒及び位置決め動作可能な機構を有する。寝台7には、寝台7自身の位置などの幾何学的配置に係る情報を検出する状態検出器(図示せず)が設けられる。状態検出器は、寝台7の幾何学的配置に係る情報を、Cアーム・寝台機構制御部15に出力する。
【0016】
Cアーム9は、X線発生部3とX線検出器5とを、被検体P及び寝台7の天板を挟んで対向するように保持する。詳しくは、Cアーム9は、寝台7の天板に垂直なZ方向と、天板の長軸方向に沿ったY方向との両者に直交するX方向の軸を中心に回転可能に、保持部(図示せず)に保持される。また、Cアーム9は、Y方向の軸を中心とした略円弧形状を有し、略円弧形状に沿ってスライド可能に保持部に保持される。あるいは、Cアーム9は、保持部を中心としてX方向の軸を中心として回転することができる。Cアーム9は、当該スライドと当該回転との組み合わせにより、様々な角度方向からのX線画像を取得することができる。Cアーム9は、このようなスライド動作と回転動作とを実現するための複数の動力源を、該当する適当な箇所に備える。
【0017】
さらに、Cアーム9には、その角度または姿勢や位置といった幾何学的配置に係る情報を検出する状態検出器(図示せず)がそれぞれ備えられる。状態検出器は、例えば回転角や移動量を検出するポテンショメータや、位置検出センサであるエンコーダ等で構成される。エンコーダとしては、例えば磁気方式、刷子式、あるいは光電式等の、いわゆるアブソリュートエンコーダが使用可能となっている。また、状態検出器としては、回転変位をデジタル信号として出力するロータリエンコーダ、あるいは直線変位をデジタル信号として出力するリニアエンコーダなど、様々な種類の位置検出機構が適宜、使用可能である。この種の状態検出器は、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報を、Cアーム・寝台機構制御部15に出力する。なお、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報は、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報に相当する。
【0018】
X線コントローラ11は、システム制御部22により制御される。X線コントローラ11は、X線絞り器3b、X線制御部13a及び高電圧発生器13bを制御する。
【0019】
高電圧発生装置13は、X線制御部13a及び高電圧発生器13bを備える。
【0020】
X線制御部13aは、X線コントローラ11から供給されるX線の照射条件に基づいて、高電圧発生器13bにおける管電流、管電圧、印加時間、印加タイミング、繰り返し周波数等を制御する。
【0021】
高電圧発生器13bは、X線コントローラ11により制御され、X線管3aの陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極との間に印加する高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管3aへ印加する。
【0022】
Cアーム・寝台機構制御部15は、システム制御部22により制御され、Cアーム9及び寝台7を個別に駆動制御する。Cアーム・寝台機構制御部15は、図示しない状態検出器から受けたCアーム9の幾何学的配置に係る情報と、寝台7の幾何学的配置に係る情報とを、位置データメモリ21に書き込む。
【0023】
位置データメモリ21は、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報と、寝台7の幾何学的配置に係る情報とを保存する。
【0024】
システム制御部22は、画像データの収集に関する制御、及び収集した画像データの画像処理、画像再生処理等に関する制御を行う中央処理装置である。システム制御部22は、例えば、入力インタフェース23から入力されたコマンド信号、及び各種初期設定条件等の情報を一旦記憶した後、これらの情報をX線コントローラ11、Cアーム・寝台機構制御部15及び/又は処理回路26に送信する。
【0025】
入力インタフェース23は、被検体情報の入力、X線照射条件を含むX線撮影条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。入力インタフェース23は、例えば、Cアーム9の移動指示、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。
【0026】
入力インタフェース23は、システム制御部22に接続される。入力インタフェース23は、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換し、システム制御部22へと出力する。なお、本明細書において、入力インタフェース23はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものに限定されない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御部22へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。入力インタフェース23は、入力部に相当する。
【0027】
ディスプレイ24は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路と、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路とにより構成される。内部回路は、処理回路26から供給される画像データに付帯情報を重畳して、表示データを生成する。付帯情報は、例えば、被検体情報や投影データ生成条件などである。内部回路は、生成された表示データに対してD/A変換とTVフォーマット変換とを行なって、表示データに対応する画像をディスプレイ本体に表示する。ディスプレイ24は、表示部に相当する。
【0028】
メモリ25は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、当該メモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路と、を有する。メモリ25は、例えば、処理回路26により実行される複数のプログラムと、処理回路26により生成されたX線画像と、処理回路26において実行される各種処理に用いられるデータ、処理途中のデータ及び処理後のデータ等とを記憶する。処理回路26の処理に用いられるデータは、例えば、X線画像の撮影対象部位に関する解剖学的情報を有していてもよい。処理回路26により実行される複数のプログラムは、例えば、画像演算機能26aと、表示用データ生成機能26bと、領域設定機能26cと、位置合わせ機能26dと、一致度算出機能26eと、決定機能26fとにそれぞれ対応する。
【0029】
処理回路26は、メモリ25に保存されたプログラムを読み出し実行することにより、プログラムに対応する画像演算機能26aと、表示用データ生成機能26bと、領域設定機能26cと、位置合わせ機能26dと、一致度算出機能26eと、決定機能26fを実現するプロセッサである。また、
図1に示すX線コントローラ11、Cアーム・寝台機構制御部15、およびシステム制御部22も同様に、これらのユニットにおいて実行される各種機能に対応するプログロムを実行するプロセッサにより実現される。
【0030】
ここで、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0031】
なお、メモリ25にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、
図1においては単一の処理回路26にて画像演算機能26aと、表示用データ生成機能26bと、領域設定機能26cと、位置合わせ機能26dと、一致度算出機能26eと、決定機能26fとが実現されるものとして説明するが、これに限らず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。
【0032】
処理回路26は、画像演算機能26aと、表示用データ生成機能26bと、領域設定機能26cとを有する。画像演算機能26aは、位置合わせ機能26dと、一致度算出機能26eと、決定機能26fとを有する。画像演算機能26aを実現する処理回路26は、画像演算回路により実現されてもよい。画像演算機能26aを実現する処理回路26または画像演算回路は、画像演算部に相当する。また、表示用データ生成機能26bを実現する処理回路26は、表示用データ生成回路により実現されてもよい。表示用データ生成機能26bを実現する処理回路26または表示用データ生成回路は、表示用データ生成部に相当する。領域設定機能26cを実現する処理回路26は、領域設定部に相当する。
【0033】
処理回路26は、画像演算機能26aにより、X線検出器5の投影データ生成回路から出力された時系列的な投影データを、投影データ記憶回路(図示せず)に順次保存する。画像演算機能26aは、時系列的な投影データに基づいて、2次元投影データからなるX線画像を生成する。画像演算機能26aは、生成されたX線画像を、メモリ25に保存する。
【0034】
画像演算機能26aが生成可能なX線画像としては、マスク画像(非造影像)、およびコントラスト画像(造影像)がある。マスク画像は、被検体Pに対するX線撮影により生成された造影剤投与前のX線画像であり、骨像を有する投影像である。コントラスト画像は、被検体Pに対するX線撮影により生成された造影剤投与後のX線画像であり、骨及び血管像を有する投影像である。マスク画像は、X線の照射条件毎に生成される。すなわち、複数のマスク画像は、毎秒あたりのX線の照射回数に対応する所定のフレームレートで生成される。また、複数のコントラスト画像についても同様に、当該所定のフレームレートで生成される。
【0035】
なお、処理回路26は、画像演算機能26aにより、X線管3a及びX線検出器5を被検体Pの周囲で連続的に回動することによって収集してメモリ25に保存された投影データに対して、所定の再構成処理を行なって3D画像データを生成してもよい。画像演算機能26aは、生成された3D画像データを、メモリ25に保存する。
【0036】
処理回路26は、表示用データ生成機能26bにより、画像演算機能26aにより生成されたX線画像を含む表示用データを生成する。表示用データ生成機能26bは、当該表示用データを、ディスプレイ24に送出する。
【0037】
処理回路26は、領域設定機能26cにより、X線画像に関心領域を設定する。領域設定機能26cは、例えば、X線画像の撮影対象部位に関する解剖学的情報に基づいて、関心領域を設定してもよい。解剖学的情報は、撮影対象部位の情報と、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報とを含んでもよい。領域設定機能26cは、例えば、システム制御部22から取得した検査プロトコル内の撮影対象部位の情報と、システム制御部22から取得したCアーム9の角度及び位置に基づいて、視野の位置を推定し、視野の位置から関心領域を設定してもよい。また、領域設定機能26cは、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報に加え、寝台7の位置・SID(source-image distance:線源-画像間距離)・FOV(field of view:視野)、被検体情報(身長・体重)、被検体体位情報などを用いて、関心領域を設定してもよい。
【0038】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、複数のコントラスト画像のうち1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する。上記1つのコントラスト画像は、例えば、ディスプレイ24に表示された複数のコントラスト画像において、入力インタフェース23を介したユーザの指示により選択されたコントトラスト画像である。位置合わせ機能26dを実現する処理回路26は、位置合わせ部に相当する。
【0039】
例えば、位置合わせ機能26dは、1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々とに基づいて複数のマスク画像に対して並進と回転とのうち少なくとも一つの変換を適用して、位置合わせを実行する。なお、位置合わせ機能26dは、複数のコントラスト画像各々において、上記位置合わせを実行してもよい。すなわち、位置合わせ機能26dは、全てのコントラスト画像について、複数のマスク画像との位置合わせを実行してもよい。
【0040】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出する。一致度は、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像とにおける一致の度合いを示す指標である。換言すれば、一致度は、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との類似性の度合いを示す指標(例えば類似度)に相当する。一致度算出機能26eを実現する処理回路26は、一致度算出部に相当する。
【0041】
具体的には、処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数のマスク画像各々と1つのコントラスト画像との差分を、位置合わせされた複数のマスク画像の総数に亘って計算して、複数の画像(以下、差異画像(differece images)と呼ぶ)を算出する。以下、説明を具体的にするために、複数のフレームにそれぞれ対応する複数のコントラスト画像の総数は、n(nは2以上の自然数)であるものとする。また、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像Cjは、j番目のフレームであるものとする。加えて、位置合わせされた複数のマスク画像Mの総数は、m(mは、2以上の自然数)であるものとする。また、i(1≦i≦m)番目のフレームに対応する位置合わせされたマスク画像をMiとあらわすものとする。
【0042】
複数の差異画像のうちi番目のフレームに対応する差異画像Di(1≦i≦m)は、Mi-Cjにより算出される。処理回路26は、一致度算出機能26eにより、複数の差異画像各々において、複数の画素値を用いて、一致度を算出する。一致度は、例えば、複数の差異画像各々Diにおける分散値または標準偏差値に相当する。なお、一致度は、分散値およぶ標準偏差値に限定されず、位置合わせされた複数のマスク画像各々Miとコントラスト画像Cjとの類似性を示すものであれば、既知の手法により算出されてもよい。以下、説明を具体的にするために、一致度は、分散値であるものとする。このとき、最大の一致度は、最小の分散値に対応する。一致度算出機能26eは、算出された複数の一致度と複数の差異画像とを関連付けてメモリ25に記憶する。
【0043】
なお、処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされたマスク画像の平均画像(Mave=1/m×Σi=1
m(Mi))と、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像Cjとの差分により、平均的な差異画像Daveを算出してもよい。次いで、一致度算出機能26eは、平均的な差異画像Daveを用いて、平均的な一致度を算出してもよい。このとき、平均的な一致度は、複数の一致度に含まれることとなる。また、全てのコントラスト画像について複数のマスク画像との位置合わせが実行された場合、一致度算出機能26eは、位置合わせされた複数のマスク画像と複数のコントラスト画像との組み合わせに応じた複数の一致度を算出する。
【0044】
図2は、一致度の算出の一例を示す図である。
図2に示すように、処理回路26は、一致度算出機能26eにより、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jと、位置合わせされた複数のマスク画像M
iとの差分を、総数mに亘って計算して、m個の差異画像D
i(=M
i-C
j)を算出する。なお、一致度算出機能26eは、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jと、位置合わせされた複数のマスク画像の平均マスク画像M
aveとの差異画像D
ave(=M
ave-C
j)を算出してもよい。
【0045】
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。決定機能26fを実現する処理回路26は、決定部に相当する。なお、決定機能26fは、複数の一致度のうち一致度が高い順の所定の数の複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像を含む複数の差分画像として決定する。ここで所定の数は、予め設定された2以上の自然数である。以下、説明を具体的にするために、所定の数は、3であるものとする。
【0046】
具体的には、処理回路26は、決定機能26fにより、複数の一致度において、最大の一致度を特定する。決定機能26fは、最大の一致度に対応する差異画像をメモリ25から読み出し、読み出された差異画像を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像(Subtraction image)として決定する。当該1つの差分画像は、1つのコントラスト画像に関するDSA画像に対応する。また、決定機能26fは、最大の一致度から降順に所定の数(例えば3つ)の一致度を特定してもよい。このとき、決定機能26fは、特定された所定の数の一致度に対応する所定の数の差異画像をメモリ25から読み出し、読み出された所定の数の差異画像を、1つのコントラスト画像に対応する3つの差分画像(Subtraction image)として決定する。
【0047】
処理回路26は、表示用データ生成機能26bにより、決定された複数の差分画像に基づいて、表示用の複数の差分画像を生成する。ディスプレイ24は、生成された複数の差分画像を表示する。
【0048】
以上、実施形態に係るX線診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成において、実施形態に係るX線診断装置100は、ユーザにより指定された1つのコントラスト画像に対応する差分画像(DSA画像)を決定してディスプレイ24に表示する処理(以下、DSA画像決定処理と呼ぶ)を実行する。以下、DSA画像決定処理の手順について、
図3を参照して説明する。
図3は、DSA画像決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
(DSA画像決定処理)
(ステップS301)
システム制御部22は、造影剤投与前の被検体Pを所定のフレームレートでの撮影(以下、マスク撮影と呼ぶ)を実行する。処理回路26は、画像演算機能26aにより、マスク撮影により生成された時系列的な複数の投影データに基づいて、時系列に沿った複数のマスク画像を生成する。画像演算機能26aは、複数のマスク画像をメモリ25に記憶する。このとき、複数のマスク画像は、ディスプレイ24に表示されてもよい。
【0050】
(ステップS302)
システム制御部22は、造影剤投与後の被検体Pを所定のフレームレートでの撮影(以下、コントラスト撮影と呼ぶ)を実行する。処理回路26は、画像演算機能26aにより、コントラスト撮影により生成された時系列的な複数の投影データに基づいて、時系列に沿った複数のコントラスト画像を生成する。画像演算機能26aは、複数のコントラスト画像をメモリ25に記憶する。処理回路26は、表示用データ生成機能26bにより、複数のコントラスト画像に基づいて、表示用の複数のコントラスト画像を生成する。ディスプレイ24は、表示用の複数のコントラスト画像を表示する。
【0051】
(ステップS303)
入力インタフェース23は、表示された複数のコントラスト画像から、1つのコントラスト画像を選択するユーザの指示を入力する。すなわち、ユーザの指示により、複数のコントラスト画像から1つのコントラスト画像が選択される。
【0052】
(ステップS304)
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、複数のコントラスト画像のうち1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する。具体的には、位置合わせ機能26dは、複数のマスク画像各々において、1つのコントラスト画像に対するずれ量を算出する。次いで、位置合わせ機能26dは、複数のマスク画像各々に対して、算出されたずれ量を用いて、複数のマスク画像各々に対する並進量と回転量とを算出する。位置合わせ機能26dは、複数のマスク画像各々に対する並進量と回転量とを用いて、複数のマスク画像各々を変換して1つのコントラスト画像との位置合わせを実行する。算出されたずれ量に基づくマスク画像の変換は、例えば、マスク画像における複数の画素に対するアフィン変換などである。なお、当該変換は、アフィン変換に限定されない。
【0053】
(ステップS305)
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、複数のマスク画像の総数に対応する複数の一致度を算出する。具体的には、一致度算出機能26eは、位置合わせされた複数のマスク画像各々と1つのコントラスト画像との差分を計算し、複数のマスク画像の総数に対応する複数の差異画像を生成する。次いで、一致度算出機能26eは、複数の差異画像各々に基づいて、複数の差異画像にそれぞれ対応する複数の一致度を算出する。
【0054】
(ステップS306)
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の一致度のうち最大の一致度に対応する差異画像を、選択された1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。具体的には、決定機能26fは、一致度が高い順の3つの差異画像を、複数の差分画像として決定する。
【0055】
(ステップS307)
処理回路26は、表示用データ生成機能26bにより、決定された複数の差分画像に基づいて、表示用の複数の差分画像を生成する。ディスプレイ24は、生成された複数の差分画像を、適宜配列して表示する。このとき、ディスプレイ24は、平均的な差異画像Daveまたは1番目のフレームの位置合わせされたマスク画像を用いた差異画像D1を、複数の差分画像とともに表示してもよい。
【0056】
図4は、ステップS307においてディスプレイ24に表示された複数の差分画像Subの表示例を示す図である。
図4におけるM(a)、M(b)、M(c)は、一致度(類似性)が高い順のマスク画像を示している。また、
図4におけるM(org)は、オリジナルのマスク画像を示し、例えば、第1のフレームにおけるマスク画像または平均マスク画像M
aveである。
図4におけるDE1は、一致度(類似性)が高い3種類の差分画像Subをディスプレイ24の表示領域に並べて表示した表示例を示している。
図4におけるDE2は、一致度(類似性)が高い3種類の差分画像Subを、位置合わせされたオリジナルのマスク画像M(org)を用いて算出された差分画像とともに、ディスプレイ24の表示領域に並べて表示した表示例を示している。
【0057】
(ステップS308)
表示された複数の差分画像において、入力インタフェース23を介したユーザの指示により、一つの差分画像が選択されると、処理回路26は、選択された差分画像をDSA画像としてメモリ25に記憶する。これにより、DSA画像決定処理は終了する。
【0058】
以上に述べた実施形態に係るX線診断装置1は、1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出し、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と1つのコントラスト画像との差分(差異画像)を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。また、本X線診断装置1は、1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々とに基づいて複数のマスク画像に対して並進と回転とのうち少なくとも一つの変換を適用して、当該位置合わせを実行する。また、本X線診断装置1は、複数の一致度のうち一致度が高い順の所定の数の複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との差分(差異画像)を1つの差分画像を含む複数の差分画像として決定し、当該複数の差分画像を表示する。
【0059】
これらにより、実施形態に係るX線診断装置1は、ユーザによるコントラスト画像の選択に応じて一致度が高い複数の差分画像を決定し、複数の差分画像をDSA画像の候補としてディスプレイ24に表示することができる。本X線診断装置1によれば、コントラスト画像の選択と差分画像の選択とによりDSA画像を決定することができるため、ユーザによる作業時間を短縮させることができる。以上のことから、本X線診断装置1によれば、DSA画像の決定、選択に関する処理のスループットを向上させ、かつユーザによる操作の負担を軽減させることができる。
【0060】
また、実施形態に係る本X線診断装置1によれば、コントラスト画像とマスク画像とのずれに応じてマスク画像に対して変換を適用して位置合わせを実行し、当該ずれを最小限に低減した差分画像に基づいて一致度算出しているため、最大の一致度に関する差分画像を含む複数の差分画像の画質を、従来に比べて向上させることができる。
【0061】
以上のことから、本X線診断装置1によれば、ユーザの操作負担を軽減させて、位置合わせミス(ミスレジストレーション:miss registration)が少ない良好なDSA画像を決定することができ、被検体Pに対する診断効率の向上および検査のスループットを向上させることができる。
【0062】
(第1変形例)
本変形例は、最大の一致度に対応するマスク画像の前後のフレームに対応する2つのマスク画像を用いて、当該2つのマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、前後のフレームの2つのマスク画像に関する2つの差分画像として決定し、最大の一致度に関する1つの差分画像と決定された2つの差分画像とを表示することにある。本変形例において、複数のマスク画像は、所定のフレームレートで生成された一連のマスク画像である。以下、本変形例における前後のフレームは1フレームとして説明するが、前後のフレームは1フレームに限定されず、複数のフレームであってもよい。
【0063】
処理回路26は、決定機能26fにより、最大の一致度の前後のフレームに対応する2つのマスク画像と1つのコントラスト画像との差分(差異画像)を、当該前後のフレームの2つのマスク画像に関する2つの差分画像として決定する。上記2つのマスク画像は、位置合わせ機能26dにより位置合わせが実行されたマスク画像である。決定機能26fにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0064】
ディスプレイ24は、最大の一致度に対応する1つの差分画像と、上記決定された2つの差分画像とを表示する。ディスプレイ24における処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS307において実行される。
【0065】
図5は、ディスプレイ24に表示された複数の差分画像Subの表示例を示す図である。
図5におけるM(a)は、最大の一致度に関するマスク画像である。
図5におけるM(a-1)は、最大の一致度に関するマスク画像のフレームの前のフレームに対応するマスク画像である。
図5におけるM(a+1)は、最大の一致度に関するマスク画像のフレームの後のフレームに対応するマスク画像である。
【0066】
図5におけるDE3は、最大の一致度に関する差分画像を中心として、マスク画像のフレーム順に、3種類の差分画像Subをディスプレイ24の表示領域に並べて表示した表示例を示している。
図5におけるDE5は、最大の一致度に関する差分画像Subおよび最大の一致度に関するマスク画像の前後のフレームの2つのマスク画像を用いた2つの差分画像Subを、オリジナルのマスク画像M(org)を用いて算出された差分画像とともに、ディスプレイ24の表示領域に並べて表示した表示例を示している。ユーザは、入力インタフェース23を介して、表示された複数の差分画像からDSA画像を選択する。
【0067】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、複数のマスク画像は所定のフレームレートで生成された一連のマスク画像であって、最大の一致度の前後のフレームに対応する2つのマスク画像と1つのコントラスト画像との差分(差異画像)を、2つのマスク画像に関する2つの差分画像として決定し、1つの差分画像と2つの差分画像とを表示する。これにより、本変形例によれば、最大の一致度に関するマスク画像の前後のフレームに関する複数の差分画像を、最大の一致度に関してディスプレイ24に表示することができる。このため、本X線診断装置1によれば、位置合わせミスの少ない差分画像の候補を、ユーザに提示することができる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0068】
(第2変形例)
第2変形例は、複数のコントラスト画像のうち、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像の前後のフレームによる2つのコントラスト画像と、当該2つのコントラスト画像に関して最大の一致度の2つのマスク画像とのそれぞれの差分に相当する差異画像を、2つのコントラスト画像に関する2つの差分画像として決定し、最大の一致度に関する1つの差分画像と決定された2つの差分画像とを表示することにある。
【0069】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像の前後のフレームに対応する2つのコントラスト画像と、複数のマスク画像と、の間で位置合わせを実行する。位置合わせ機能26dにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS304において実行される。
【0070】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数のマスク画像と2つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と2つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出する。すなわち、一致度算出機能26eは、位置合わせされた複数のマスク画像と2つのコントラスト画像との差分に相当する複数の差異画像に基づいて、複数の一致度を算出する。一致度算出機能26eにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS305において実行される。
【0071】
処理回路26は、決定機能26fにより、2つのコントラスト画像と、2つのコントラスト画像に関する最大の一致度にそれぞれ対応する2つのマスク画像と、の差分を、前後のフレームの2つのコントラスト画像に関する2つの差分画像として決定する。すなわち、決定機能26fは、2つのコントラスト画像各々に関して、複数の一致度のうち最大の一致度に対応する差異画像を、差分画像をとして決定する。決定機能26fにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0072】
ディスプレイ24は、最大の一致度に対応する1つの差分画像と、上記決定された2つの差分画像とを表示する。ディスプレイ24における処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS307において実行される。
【0073】
図6は、ディスプレイ24に表示された複数の差分画像Subの表示例を示す図である。
図6におけるM(a)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jに関して、最大の一致度に関するマスク画像である。
図5におけるM(d)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jの1つ前のフレームのコントラスト画像C
j-1に関する最大の一致度に関するマスク画像である。
図5におけるM(e)は、コントラスト画像C
jの1つ後のフレームのコントラスト画像C
j+1に関する最大の一致度に関するマスク画像である。
【0074】
図6におけるDE5は、ユーザにより選択されたコントラスト画像C
jに関する差分画像を中心として、コントラスト画像のフレーム順に、3種類の差分画像Subをディスプレイ24の表示領域に並べて表示した表示例を示している。
図6におけるDE6は、コントラスト画像C
jに関する差分画像Subおよび前後のフレームの2つのコントラスト画像C
j-1、C
j+1に関する2つの差分画像Subを、オリジナルのマスク画像M(org)を用いて算出された差分画像とともに、ディスプレイ24の表示領域に並べて表示した表示例を示している。ユーザは、入力インタフェース23を介して、表示された複数の差分画像からDSA画像を選択する。
【0075】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、1つのコントラスト画像の前後のフレームに対応する2つのコントラスト画像と、複数のマスク画像と、の間で位置合わせを実行し、位置合わせされた複数のマスク画像と2つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と前記2つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出し、2つのコントラスト画像と、2つのコントラスト画像に関する最大の一致度にそれぞれ対応する2つのマスク画像と、の差分を、前後のフレームの2つのコントラスト画像に関する2つの差分画像として決定し、1つの差分画像と、2つの差分画像とを表示する。
【0076】
これにより、本変形例に係るX線診断装置1よれば、ユーザが選択したコントラスト画像の前後のフレームに関する複数の差分画像を、最大の一致度に関してディスプレイ24に表示することができる。このため、本X線診断装置1によれば、ユーザにより選択されたコントラスト画像のフレームに隣接し(近傍の)位置合わせミスの少ない差分画像の候補を、ユーザに提示することができる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0077】
(第3変形例)
第3変形例は、実施形態と第2変形例との組み合わせに対応する。具体的には本変形例における処理は、第2変形例における処理に加えて、以下の処理を更に実行する。
【0078】
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の一致度のうち一致度が高い順の所定の数の複数のマスク画像と、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像および当該1つのコントラスト画像の前後のフレームに対応する2つのコントラスト画像と、の差分を、複数の差分画像としてさらに決定する。すなわち、決定機能26fは、前後のフレームに対応する2つのコントラスト画像各々に関して、複数の一致度のうち最大の一致度に対応する差異画像を、差分画像として決定する。本変形例において、所定の数は3であるものとする。決定機能26fにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0079】
ディスプレイ24は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像に関し最大の一致度に対応する1つの差分画像と、前後のフレームの2つのコントラスト画像に関する2つの差分画像と、上記前記複数の差分画像とを表示する。ディスプレイ24における処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS307において実行される。
【0080】
図7は、ディスプレイ24に表示された複数の差分画像Subの表示例DE7を示す図である。
図7におけるM(a)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jに関して、最大の一致度に関するマスク画像である。
図7におけるM(a)、M(b)、M(c)は、コントラスト画像C
jに関して、一致度(類似性)が高い順のマスク画像を示している。また、
図7におけるM(d)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jの1つ前のフレームのコントラスト画像C
j-1に関する最大の一致度に関するマスク画像である。
【0081】
図7におけるM(d)、M(f)、M(h)は、コントラスト画像C
j-1に関して、一致度(類似性)が高い順のマスク画像を示している。
図7におけるM(e)は、コントラスト画像C
jの1つ後のフレームのコントラスト画像C
j+1に関する最大の一致度に関するマスク画像である。
図7におけるM(e)、M(g)、M(i)は、コントラスト画像C
j+1に関して、一致度(類似性)が高い順のマスク画像を示している。ユーザは、入力インタフェース23を介して、DE7において表示された複数の差分画像からDSA画像を選択する。
【0082】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、複数の一致度のうち一致度が高い順の所定の数の複数のマスク画像と、1つのコントラスト画像および2つのコントラスト画像と、の差分を、複数の差分画像としてさらに決定し、実施形態において決定された1つの差分画像と、第2変形例において決定された2つの差分画像と、複数の差分画像とを表示する。本変形例における効果は、実施形態における効果と第2変形例における効果とに対応するため、説明は省略する。
【0083】
(第4変形例)
第4変形例は、第1変形例と第2変形例との組み合わせに対応する。本変形例における複数のマスク画像は、所定のフレームレートで生成された一連のマスク画像である。具体的には本変形例における処理は、第2変形例における処理に加えて、以下の処理を更に実行する。
【0084】
処理回路26は、決定機能26fにより、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像の前後のフレームよる2つのコントラス画像に関する最大の一致度の前後のフレームに対応する複数のマスク画像と、当該2つのコントラスト画像と、の差分を、前後のフレームの2つのマスク画像に関する複数の差分画像として決定する。すなわち、決定機能26fは、前後のフレームに対応する2つのマスク画像各々に関して、複数の一致度のうち最大の一致度に対応する差異画像を、差分画像として決定する。決定機能26fにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0085】
ディスプレイ24は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像に関し最大の一致度に対応する1つの差分画像と、1つのコントラスト画像の前後のフレームの2つのコントラスト画像に関する2つの差分画像と、決定された複数の差分画像と、を表示する。ディスプレイ24における処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS307において実行される。
【0086】
図8は、ディスプレイ24に表示された複数の差分画像Subの表示例DE8を示す図である。
図8におけるM(a)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jに関して、最大の一致度に関するマスク画像である。
図8におけるM(a-1)、M(a+1)は、マスク画像M(a)の前後のフレームの2つのマスク画像にそれぞれ対応する。
図8におけるM(d)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jの1つ前のフレームのコントラスト画像C
j-1に関する最大の一致度に関するマスク画像である。
図8におけるM(d-1)、M(d+1)は、マスク画像M(d)の前後のフレームの2つのマスク画像にそれぞれ対応する。また、
図8におけるM(e)は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像C
jの1つ後のフレームのコントラスト画像C
j+1に関する最大の一致度に関するマスク画像である。
図8におけるM(e-1)、M(e+1)は、マスク画像M(e)の前後のフレームの2つのマスク画像にそれぞれ対応する。ユーザは、入力インタフェース23を介して、DE8において表示された複数の差分画像からDSA画像を選択する。
【0087】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、複数のマスク画像は所定のフレームレートで生成された一連のマスク画像であって、2つのコントラス画像に関する最大の一致度の前後のフレームに対応する複数のマスク画像と、2つのコントラスト画像と、の差分を、前後のフレームの2つのマスク画像に関する複数の差分画像として決定し、実施形態において決定された1つの差分画像と、第2変形例において決定された2つの差分画像と、前記複数の差分画像と、を表示する。本変形例における効果は、第1変形例における効果と第2変形例における効果とに対応するため、説明は省略する。
【0088】
(第5変形例)
本変形例は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像において設定された複数の関心領域各々において、DSA画像決定処理を適用することにある。複数の関心領域は、X線撮影条件(例えば、撮影対象部位、病変部位、病変名等)などにより、予め設定される。なお、複数の関心領域は、領域設定機能26cにより、入力インタフェース23を介してユーザの指示に従って設定されもよい。
【0089】
処理回路26は、領域設定機能26cにより、被検体Pに対するX線撮影条件に基づいて、複数の関心領域を設定する。領域設定機能26cにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS303より以前の任意の段階において実行される。
【0090】
図9は、関心領域の設定と、DSA画像決定処理の設定とに関するユーザインタフェースの一例を示す図である。
図9に示すように、ディスプレイ24は、1つのコントラスト画像における関心領域の設定画面SSとともに、位置合わせの実行の要否の選択に関するダイアログDLを表示する。ROI設定がON状態のとき、
図9に示すように、カーソルCSの操作によりROIの設定が可能となる。また、ディスプレイ24は、関心領域の設定が選択された場合、
図9に示すように、1つの差分画像をROI1(Org)とともに表示する。
【0091】
図9に示す表示画面において、ユーザは、関心領域の設定のON/OFFとDSA画像決定処理の設定のON/OFFとを、入力インタフェース23により入力する。
図9では、関心領域(ROI)の設定がONに設定され、デフォルトとして設定された通常の関心領域ROI1(org)に対して、第2の関心領域ROI2が設定されている。また、
図9に示すように、DSA画像決定処理の設定を示す最適DSA表示がONに設定されている。
【0092】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像において設定された複数の関心領域と、複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する。すなわち、位置合わせ機能26dは、関心領域を位置合わせの対象領域として用いて、当該位置合わせを実行する。位置合わせ機能26dにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS304において実行される。
【0093】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数のマスク画像と複数の関心領域に対応する複数の関心領域画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と複数の関心領域画像との間の複数の一致度を算出する。具体的には、一致度算出機能26eは、設定された関心領域に応じて、関心領域画像と複数のマスク画像との複数の差異画像を算出する。次いで、一致度算出機能26eは、複数の差異画像における関心領域を計算対象として、複数の一致度を関心領域ごとに算出する。
【0094】
換言すれば、一致度算出機能26eは、関心領域に応じて位置合わせされた複数のマスク画像と、1つのコントラスト画像との差分を示す複数の差異画像において、関心領域を一致度の算出範囲として、複数の一致度を算出する。すなわち、一致度算出機能26eは、複数の関心領域各々に関して、複数の差異画像に基づいて複数の一致度を算出する。一致度算出機能26eにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS305において実行される。
【0095】
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の関心領域各々に関する最大の一致度に対応する複数のマスク画像と、複数の関心領域画像と、の差分を、複数の関心領域に対応する複数の関心差分画像として決定する。すなわち、決定機能26fは、複数の関心領域ごとに、最大の一致度に関するマスク画像と1つのコントラスト画像との差異画像を、関心差分画像として決定する。決定機能26fにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0096】
ディスプレイ24は、実施形態において決定された1つの差分画像と、複数の関心差分画像とを表示する。ディスプレイ24における処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS307において実行される。
【0097】
図10は、設定された複数のROI(ROI1(org)、ROI2、ROI3、ROI4)と、複数のROIに応じてディスプレイ24に表示される複数の差分画像と一例RDSAとを示す図である。
図10に示す差分画像Sub(ROI1(Org))は、関心領域ROI1(Org)に関して、最大の一致度に対応し位置合わせされたマスク画像と1つのコントラスト画像との差分画像を示している。
図10に示す差分画像Sub(ROI2)は、関心領域ROI2に関して、最大の一致度に対応し位置合わせされたマスク画像と1つのコントラスト画像との差分画像を示している。
【0098】
図10に示す差分画像Sub(ROI3)は、関心領域ROI3に関して、最大の一致度に対応し位置合わせされたマスク画像と1つのコントラスト画像との差分画像を示している。
図10に示す差分画像Sub(ROI4)は、関心領域ROI4に関して、最大の一致度に対応し位置合わせされたマスク画像と1つのコントラスト画像との差分画像を示している。
図10に示すように、ユーザは、入力インタフェース23を介して、RDSAにおいて表示された複数の差分画像からDSA画像を選択する。
【0099】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、1つのコントラスト画像において設定された複数の関心領域と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、位置合わせされた複数のマスク画像と複数の関心領域に対応する複数の関心領域画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と複数の関心領域画像との間の複数の一致度を算出し、複数の関心領域各々に関する最大の一致度に対応する複数のマスク画像と、1つのコントラスト画像と、の差分を、複数の関心領域に対応する複数の関心差分画像として決定し、1つの差分画像と複数の関心差分画像とを表示する。
【0100】
これにより、本X線診断装置1によれば、1つのコントラスト画像において設定された複数の関心領域各々において最大の一致度に対応するマスク画像を用いた差分画像をディスプレイ24に表示することができる。このため、本X線診断装置1によれば、関心領域に応じて位置合わせミスの少ない差分画像の候補を、ユーザに提示することができる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0101】
(第6変形例)
本変形例は、実施形態において、最大の一致度に関する差分画像に基づいて、造影剤に関するコントラスト領域を抽出し、抽出されたコントラスト領域に対してDSA画像決定処理を適用することにある。すなわち、本変形例によれば、抽出されたコントラスト領域を関心領域とするコントラスト部分画像と複数のマスク画像との位置合わせを実行して、複数のマスク画像とコントラスト部分画像とに関する一致度を再度算出する。
【0102】
その後、本変形例は、再度算出された一致度を用いて、実施形態および第1乃至第5変形例と同様に、DSA画像決定処理が実行される。換言すれば、本変形例では、複数の一致度のうち最大の一致度に関する差分画像から抽出されたコントラスト領域に対応するコントラスト部分画像と、複数のマスク画像とに基づいて、複数の一致度を再度算出することにある。
【0103】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、最大の一致度を有するマスク画像と、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像とによる差分画像と、当該1つのコントラスト画像とに基づいて、当該差分画像から造影剤に関するコントラスト領域を抽出する。位置合わせ機能26dは、コントラスト領域に対応するコントラスト部分画像と複数のマスク画像との位置合わせを実行する。例えば、位置合わせ機能26dは、例えば、コントラスト部分画像と複数のマスク画像各々とに基づいて複数のマスク画像に対して並進と回転とのうち少なくとも一つの変換を適用して、位置合わせを実行する。位置合わせ機能26dにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS306の後において実行される。
【0104】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、コントラスト部分画像との位置合わせに用いられた複数のマスク画像とコントラスト部分画像とを用いて、コントラスト部分画像と複数のマスク画像との間の複数の一致度を算出する。すなわち、一致度算出機能26eは、抽出されたコントラスト領域に関して、位置合わせされた複数のマスク画像とコントラスト部分画像との複数の差異画像に基づいて、当該複数のマスク画像にそれぞれ対応する複数の一致度を再度算出する。一致度算出機能26eにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理において、本変形例における上記位置合わせ機能26dによる処理の後に実行される。
【0105】
処理回路26は、決定機能26fにより、再度算出された複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。すなわち、決定機能26fは、複数の差異画像のうち最大の一致度に関する差異画像を、差分画像として決定する。決定機能26fにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理において、本変形例における上記一致度算出機能26eによる処理の後に実行される。決定機能26fにおける処理の後に、
図3におけるステップS307の処理が実行される。
【0106】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、差分画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、差分画像から造影剤に関するコントラスト領域を抽出し、コントラスト領域に対応するコントラスト部分画像と複数のマスク画像との位置合わせを実行し、コントラスト部分画像との位置合わせに用いられた複数のマスク画像とコントラスト部分画像とを用いて、コントラスト部分画像と複数のマスク画像との間の複数の一致度を再度算出し、再度算出された複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。
【0107】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、実施形態において決定された最大の一致度に関する差分画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、当該差分画像から造影剤に関するコントラスト領域を抽出し、コントラスト領域に対応するコントラスト部分画像と複数のマスク画像との位置合わせを実行し、コントラスト部分画像との位置合わせに用いられた複数のマスク画像とコントラスト部分画像とを用いて、コントラスト部分画像と前記複数のマスク画像との間の複数の一致度を再度算出し、再度算出された複数の一致度のうち最大の一致度に対応する位置合わせされたマスク画像と1つのコントラスト画像との差分(差異画像)を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。
【0108】
これにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、抽出されたコントラスト領域を関心領域として用いているため、コントラスト領域に応じて位置合わせミスの少ない差分画像の候補を、ユーザに提示することができる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0109】
(第7変形例)
本変形例は、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像を複数の領域に分割し、分割された複数の領域に対応する複数のコントラスト分割画像各々に対してDSA画像決定処理を適用することにある。複数の領域の数および分割の仕方は、予め設定される。以下、説明を具体的にするために、複数の領域は、3つの領域であるものとし、分割の仕方は、1つのコントラスト画像の下方から上方に向かって3つのスライスに分割されるものとする。なお、複数の領域は、入力インタフェース23を介したユーザの指示により、適宜変更可能である。
【0110】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、1つのコントラスト画像を複数の領域に分割する。位置合わせ機能26dは、複数の領域に対応する複数のコントラスト分割画像と、複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行する。具体的には、位置合わせ機能26dは、複数のコントラスト分割画像各々において設定されたROIと複数のマスク画像との位置合わせを実行する。位置合わせ機能26dにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS304において実行される。
【0111】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数のマスク画像と複数のコントラスト分割画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と複数のコントラスト分割画像との間の複数の一致度を算出する。具体的には、一致度算出機能26eは、位置合わせされた複数のマスク画像と複数のコントラスト分割画像との差分を示す複数の差異画像を生成する。一致度算出機能26eは、複数の領域ごとに、複数の差異画像に基づいて、複数の差異画像にそれぞれ対応する複数の一致度を算出する。すなわち、一致度算出機能26eは、複数の領域各々に対して、複数の一致度を算出する。一致度算出機能26eにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS305において実行される。
【0112】
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の領域に応じて、最大の一致度に対応するマスク画像と複数のコントラスト分割画像との差分を、複数の分割差分画像として決定する。すなわち、決定機能26fは、複数の領域各々において、複数の一致度のうち最大の一致度に関する差異画像を、分割差分画像として決定する。換言すれば、決定機能26fは、複数の一致度のうち複数の領域ごとの最大の一致度を用いて、複数の領域に対応する複数の分割差分画像を決定する。決定機能26fは、複数の分割差分画像をつなぎ合わせて、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像を生成する。決定機能26fにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0113】
ディスプレイ24は、1つの差分画像を表示する。
図11は、1つのコントラスト画像C
jにおいて分割された複数の領域(AR1、AR2、AR3)と、ディスプレイ24に表示された1つの差分画像との一例とを示す図である。
図11において、第1の領域AR1には第1の関心領域ROI1が設定され、第2の領域AR2には第2の関心領域ROI2が設定され、第3の領域AR3には第3の関心領域ROI3が設定される。これらの関心領域各々は、複数のマスク画像との位置合わせに用いられる。
【0114】
図11に示すM(a)は、第1の領域AR1に対応する領域に相当し、第1の関心領域ROI1に対して最大の一致度に関するマスク画像を示している。
図11に示すM(b)は、第2の領域AR2に対応する領域に相当し、第2の関心領域ROI2に対して最大の一致度に関するマスク画像を示している。
図11に示すM(c)は、第3の領域AR3に対応する領域に相当し、第3の関心領域ROI3に対して最大の一致度に関するマスク画像を示している。
図11に示すように、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像は、3つの差分画像Subをつなぎ合わせて(合成して)、ディスプレイ24に表示される。
【0115】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、ユーザにより選択された1つのコントラスト画像を複数の領域に分割し、複数の領域に対応する複数のコントラスト分割画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、位置合わせされた複数のマスク画像と複数のコントラスト分割画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と複数のコントラスト分割画像との間の複数の一致度を算出し、複数の領域ごとに、最大の一致度に対応するマスク画像と複数のコントラスト分割画像との差分(差異画像)を、複数の分割差分画像として決定し、複数の分割差分画像をつなぎ合わせて、1つの差分画像を生成する。
【0116】
これにより、本X線診断装置1によれば、1つのコントラスト画像において分割された複数の関心領域各々において最大の一致度に対応するマスク画像を用いた分割差分画像をつなぎ合わせて、1つの差分画像をディスプレイ24に表示することができる。このため、本X線診断装置1によれば、分割された複数の領域に応じて位置合わせミスの少ない差分画像の候補を、ユーザに提示することができる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0117】
(第8変形例)
本変形例は、急速静注(ボーラス(bolus)注入、ボーラス投与)に関するDSA(以下、ボーラスDSAと呼ぶ)への適用に関するものである。すなわち、本変形例は、第1の変形例をボーラスDSAに適用したものに相当する。ボーラスDSAは、例えば、被検体Pの下肢血管造影によるX線撮影に用いられる。
【0118】
図12は、ボーラスDSAに関する撮影の概要の一例を示す図である。
図12におけるCPに示すように、システム制御部22は、造影剤の流れに沿って造影剤を追って被検体Pを流し撮りする。このとき、位置データメモリ21は、造影剤を撮った時の寝台7の動きを記憶する。また、処理回路26は、画像演算機能26aにより、造影剤の流れに沿った一連のコントラスト画像を生成する。すなわち、一連のコントラスト画像における複数のコントラスト画像は、被検体Pに対する造影剤の急速静注を伴って被検体Pの長手方向に沿って所定のフレームレートで生成され、実施形態における1つのコントラスト画像を含む。
【0119】
次いで、システム制御部22は、
図12におけるNCPに示すように、位置データメモリ21に記憶された寝台7の動きを用いて、造影剤なしで被検体Pに対して流し撮りを行う。このとき、処理回路26は、画像演算機能26aにより、造影剤の流れに沿った一連のマスク画像を生成する。すなわち、一連のマスク画像における複数のマスク画像は、複数のコントラスト画像の取得時における天板の動きに対応して、一連のコントラスト画像と略同一のフレームレートで生成される。ボーラスDSAに関する撮影手順は、既知の技術が適用可能であるため、説明は省略する。
【0120】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、複数のコントラスト画像各々と、複数のマスク画像のうち複数のコントラスト画像各々に関する天板の位置に応じた1つのマスク画像(以下、位置対応マスク画像と呼ぶ)および位置対応マスク画像のフレームの前後の所定の数のフレーム(以下、所定フレームと呼ぶ)に関する複数のマスク画像(以下、所定フレームマスク画像と呼ぶ)と、の間で位置合わせを実行する。本変形例における所定フレームの数は、ボーラスDSAの実施前において予め設定されたフレーム数であって、入力インタフェース23を介して適宜設定・変更可能である。
【0121】
具体的には、位置合わせ機能26dは、位置対応マスク画像および所定フレームマスク画像と、複数のコントラスト画像各々との位置合わせを、一連のコントラスト画像に亘って実行する。位置合わせ機能26dにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS304において実行される。なお、位置合わせ機能26dは、本変形例の応用例として、複数のコントラスト画像各々における中心部分に対応する関心領域に関して位置合わせを実行してもよい。
【0122】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、複数のコントラスト画像に亘って、複数のコントラスト画像各々と、位置対応マスク画像および所定フレームマスク画像と前記所定の数のマスク画像と、の間の複数の一致度を算出する。具体的には、一致度算出機能26eは、複数のコントラスト画像各々と、位置対応マスク画像および所定フレームマスク画像との間委の差分を示す、複数の差異画像を生成する。一致度算出機能26eは、複数の差異画像に基づいて、複数の差異画像にそれぞれ対応する複数の一致度を、複数のコントラスト画像各々において、算出する。
【0123】
一致度算出機能26eにおける処理内容は、DSA画像決定処理における
図3のステップS305において実行される。なお、複数のコントラスト画像各々における中心部分に対応する関心領域に関して位置合わせが実行された場合、一致度算出機能26eは、当該関心領域に関して一致度を算出してもよい。
【0124】
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と複数のコントラスト画像各々との差分を有し複数のコントラスト画像に亘る複数の差分を、複数のコントラスト画像に対応する複数の差分画像として決定する。具体的には、決定機能26fは、複数のコントラスト画像各々において、最大の一致度の関する差異画像を、差分画像として決定する。決定機能26fは、差分画像の決定を複数のコントラスト画像に亘って実行することで、複数のコントラスト画像に対応する複数の差分画像を決定する。
【0125】
処理回路26は、決定機能26fにより、決定された複数の差分画像に基づいて、複数の差分画像の関心領域を長手方向に沿って貼り合わせて、長尺画像を生成する。具体的には、決定機能26fは、寝台7における天板の位置に従って、複数の差分画像の中心部分に対応する複数の関心領域を貼り合わせることで、長尺画像を生成する。なお、複数の差分画像の貼り合わせは、画像演算機能26aにより実行されてもよい。決定機能26fによる上記処理は、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0126】
図13は、ボーラスDSAに関する長尺画像の生成の概要の一例を示す図である。
図13に示すように、複数の差分画像SUBSにおける張り合わせ対象の関する複数の関心領域RFBを張り合わせることにより、ボーラスDSAに関する長尺画像LIが生成される。なお、本変形例の応用例として、一致度の高い順に複数の長尺画像が生成されてもよい。このとき、決定機能26fにおける処理は、最大の一致度から所定の一致度に至るまで繰り返される。なお、
図13の複数の差分画像SUBSでは、説明の便宜のため背景の骨が描かれているが、実際には、背景の骨は差分処理により消去ないし減弱される。
【0127】
ディスプレイ24は、生成された長尺画像LIを表示する。なお、ディスプレイ24は、一致度の高い順に、複数の長尺画像を表示してもよい。ディスプレイ24による上記処理は、DSA画像決定処理における
図3のステップS307において実行される。複数の長尺画像がディスプレイ24に表示される場合、ステップS307において、ユーザにより選択された長尺画像が、ボーラスDSAに関する画像として、メモリ25に記憶される。
【0128】
本変形例に係るX線診断装置1において、1つのコントラスト画像は、被検体Pに対する造影剤の急速静注を伴って被検体Pの長手方向に沿って所定のフレームレートで生成された複数のコントラスト画像に含まれ、複数のマスク画像は、複数のコントラスト画像の取得時における寝台7の動きに対応して当該フレームレートで生成される。この場合、本変形例に係るX線診断装置1は、複数のコントラスト画像各々と、複数のマスク画像のうち複数のコントラスト画像各々に関する天板の位置に応じた1つのマスク画像および天板の位置に関するフレームの前後の所定の数のフレームに関する所定の数のマスク画像と、の間で位置合わせを実行する。
【0129】
次いで、本変形例に係るX線診断装置1は、複数のコントラスト画像に亘って、複数のコントラスト画像各々と1つのマスク画像および所定の数のマスク画像との間の複数の一致度を算出し、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と複数のコントラスト画像各々との差分を有し複数のコントラスト画像に亘る複数の差分を、複数のコントラスト画像に対応する複数の差分画像SUBSとして決定する。続いて、本変形例に係るX線診断装置1は、複数の差分画像SUBSに基づいて、複数の差分画像の関心領域を長手方向に沿って貼り合わせて、長尺画像LIを生成する。
【0130】
これらにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、ボーラスDSAにおいて、
一連のコントラスト画像と一連のマスク画像との収集時において、被検体Pの状態および天板の移動などの機械的な誤差による位置合わせミス(ミスレジストレーション:miss registration)が生じる場合であっても、良好なDSA画像を生成することができ、被検体Pに対する診断効率の向上および検査のスループットを向上させることができる。他の効果については、実施形態および第1変形例などと同様なため、説明は省略する。
【0131】
(第9変形例)
本変形例は、複数のマスク画像において時系列的に隣接する2つのマスク画像に基づいて、当該2つのマスク画像の間の時間幅に含まれる複数の補間画像を生成し、生成された補間画像をさらに用いてDSA画像決定処理を実行することにある。
【0132】
処理回路26は、位置合わせ機能26dにより、時間的に隣接する2つのマスク画像に基づいて、当該2つのマスク画像の間の時間幅に含まれる複数の補間画像を生成する。複数の補間画像は、例えば、10枚などである。例えば、位置合わせ機能26dは、学習済みモデルに時間的に隣接する2つのマスク画像を入力することにより、複数の補間画像を生成する。なお、複数の補間画像の生成は、学習済みモデルに限定されず、例えば、倍速フレーム補間などの既知の技術を適宜利用可能である。このため、複数の補間画像の生成に関する説明は省略する。位置合わせ機能26dは、複数の補間画像各々と1つのコントラスト画像との間で位置合わせをさらに実行する。位置合わせ機能26dにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS304において実行される。
【0133】
処理回路26は、一致度算出機能26eにより、位置合わせされた複数の補間画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数の補間画像と1つのコントラスト画像との間の複数の一致度をさらに算出する。すなわち、一致度算出機能26eは、位置合わせされた複数の補間画像と1つのコントラスト画像との差分により、複数の補間差異画像をさらに生成する。次いで、一致度算出機能26eは、複数の補間差異画像における複数の画素を用いて、複数の補間差異画像にそれぞれ対応する複数の一致度を算出する。一致度算出機能26eにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS305において実行される。
【0134】
処理回路26は、決定機能26fにより、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像または補間画像と、1つのコントラスト画像との差分を、1つの差分画像として決定する。決定機能26fにおける処理内容は、例えば、DSA画像決定処理における
図3のステップS306において実行される。
【0135】
本変形例に係るX線診断装置1によれば、複数のマスク画像において時系列的に隣接する2つのマスク画像に基づいて、2つのマスク画像の間の時間幅に含まれる複数の補間画像を生成し、複数の補間画像各々と1つのコントラスト画像との間で位置合わせをさらに実行し、位置合わせされた複数の補間画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数の補間画像と前記1つのコントラスト画像との間の複数の一致度をさらに算出し、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像または補間画像と、1つのコントラスト画像との差分(差異画像)を、1つの差分画像として決定する。
【0136】
なお、補間画像の作成にあたり、3つ以上のマスク画像を利用してもよい。この場合、2つのマスク画像を用いる場合に比べて補間処理の精度を向上することができる。
【0137】
これにより、本変形例に係るX線診断装置1によれば、複数の一致度の対象となるマスク画像が増えるため、より位置合わせミス(ミスレジストレーション:miss registration)が少ない良好なDSA画像を決定することが可能となる。他の効果については、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0138】
実施形態における技術的思想を医用画像処理装置で実現する場合、当該医用画像処理装置は、例えば、
図1に示す点線の枠110内の構成を有する。医用画像処理装置110は、被検体Pに対するX線撮影により生成された1つのコントラスト画像と、X線撮影により生成された複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出し、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定する。医用画像処理装置110において実現されるDSA画像決定処理における処理手順および効果は、実施形態等と同様なため、説明は省略する。
【0139】
実施形態における技術的思想を医用画像処理プログラムで実現する場合、医用画像処理プログラムでは、コンピュータに、1つのコントラスト画像と複数のマスク画像各々との間で位置合わせを実行し、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像とに基づいて、位置合わせされた複数のマスク画像と1つのコントラスト画像との間の複数の一致度を算出し、複数の一致度のうち最大の一致度に対応するマスク画像と1つのコントラスト画像との差分を、1つのコントラスト画像に対応する1つの差分画像として決定すること、を実現させる。
【0140】
例えば、医用画像処理装置やサーバ装置などにおけるコンピュータに医用画像処理プログラムをインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、DSA画像決定処理を実現することができる。このとき、コンピュータに当該DSA画像決定処理を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。医用画像処理プログラムにより実現されるDSA画像決定処理における処理手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0141】
以上説明した少なくとも1つの実施形態等によれば、ユーザの操作負担を軽減させて良好なDSA画像を決定することができる。
【0142】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0143】
1 X線診断装置
3 X線発生部
3a X線管
3b X線絞り器
5 X線検出器
7 寝台
9 Cアーム
11 X線コントローラ
13 高電圧発生装置
13a X線制御部
13b 高電圧発生器
15 Cアーム・寝台機構制御部
21 位置データメモリ
22 システム制御部
23 入力インタフェース
24 ディスプレイ
25 メモリ
26 処理回路
26a 画像演算機能
26b 表示用データ生成機能
26c 領域設定機能
26d 位置合わせ機能
26e 一致度算出機能
110 医用画像処理装置