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特開2023-80547レーザダイオードを収容するキャップの製造方法、キャップ、および光源装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080547
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】レーザダイオードを収容するキャップの製造方法、キャップ、および光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02208 20210101AFI20230602BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H01S5/02208
H01L23/02 F
H01L23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193956
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭宏
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MD64
5F173ME22
5F173ME32
5F173ME62
5F173ME86
(57)【要約】
【課題】有用なキャップおよびその製造方法、ならびに光源装置を提供する。
【解決手段】レーザダイオードを収容する空洞の正面を規定する正面壁のための第1プレートと、空洞の裏面を規定し、正面壁に対向する裏面壁のための第2プレートとを用意し、空洞の上面および側面を規定し、正面壁と裏面壁とに接続される本体のための第3プレートを用意する。第3プレートは、厚さ方向に直交する平面に含まれる第1方向および前記平面に含まれて第1方向に直交する第2方向に沿って二次元的に配列された複数の貫通孔を有する。第1、第2、第3プレートを接合して積層体を作製する。積層体を第1方向および第2方向に沿って切断して、積層体から複数のキャップを得る。第1方向に沿って積層体を切断するときは、第1方向に沿って並ぶ貫通孔の第1方向および厚さ方向に拡がる内壁面に沿って第1切断溝を形成する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードを収容する空洞を有するキャップの製造方法であって、
前記空洞の正面を規定し、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光を透過する材料から形成される正面壁のための第1プレートを用意する工程と、
前記空洞の裏面を規定し、前記正面壁に対向する裏面壁のための第2プレートを用意する工程と、
前記空洞の上面および側面を規定し、前記正面壁と前記裏面壁とに接続される本体のための第3プレートであって、厚さ方向に直交する平面に含まれる第1方向および前記平面に含まれて前記第1方向に直交する第2方向に沿って二次元的に配列された複数の貫通孔を有する第3プレートを用意する工程と、
前記第1プレートと前記第3プレートとを接合し、かつ、前記第2プレートと前記第3プレートとを接合することにより、前記第1プレートおよび前記第2プレートで前記第3プレートを挟んだ積層体を作製する工程と、
前記積層体を前記第1方向および前記第2方向に沿って切断して、前記積層体から複数のキャップを得る個片化工程と、
を含み、
前記個片化工程において、前記第1方向に沿って前記積層体を切断するときは、前記第1方向に沿って並ぶ前記貫通孔の前記第1方向および前記厚さ方向に拡がる内壁面に沿って第1切断溝を形成し、前記第2方向に沿って前記積層体を切断するときは、前記第2方向に沿って並ぶ前記貫通孔から離れた位置に第2切断溝を形成する、キャップの製造方法。
【請求項2】
前記個片化工程において、前記第1切断溝の位置は、前記内壁面の位置が前記第1切断溝内に含まれるように決定される、請求項1に記載のキャップの製造方法。
【請求項3】
前記第1プレートおよび前記第2プレートは、それぞれ、ガラスから形成されており、
前記積層体を作製する工程において、陽極接合により、前記第1プレートと前記第3プレートとを接合し、かつ、陽極接合により、前記第2プレートと前記第3プレートとを接合する、請求項1または2に記載のキャップの製造方法。
【請求項4】
前記第1プレートを用意する工程は、
前記第1プレートの表面において、前記第3プレートの前記複数の貫通孔のそれぞれに対向する位置に複数の反射防止膜を形成する工程を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のキャップの製造方法。
【請求項5】
前記個片化工程において、前記第1方向に沿って前記積層体を切断するとき、および、前記第2方向に沿って前記積層体を切断するとき、前記複数の反射防止膜を切断しないようにする、請求項4に記載のキャップの製造方法。
【請求項6】
前記第3プレートの表面の法線方向から見た平面視において、前記複数の貫通孔は、前記第1方向に平行な複数の行および前記第2方向に平行な複数の列に配列されており、
前記個片化工程では、ダイシングブレードにより、前記第1切断溝を形成し、
前記複数の行のうちの奇数行に含まれる前記貫通孔の前記内壁面に沿って前記第1切断溝を形成するときは、前記ダイシングブレードの一方の面が前記貫通孔の中央を向き、偶数行に含まれる前記貫通孔の前記内壁面に沿って前記第1切断溝を形成するときは、前記ダイシングブレードの他方の面が前記貫通孔の中央を向くように、前記第1切断溝の位置を決める、請求項1から5のいずれか1項に記載のキャップの製造方法。
【請求項7】
前記個片化工程では、前記第1切断溝が、前記複数の行のうちの隣接する奇数行および偶数行に含まれる前記貫通孔の互いに対向する前記内壁面の両方を含むように、前記第1切断溝を形成する、請求項6に記載のキャップの製造方法。
【請求項8】
前記第3プレートの表面の法線方向から見た平面視において、前記複数の貫通孔は、前記第1方向に沿ってジグザグに配置される複数の行を形成しており、
前記複数の貫通孔は、前記個片化工程における前記第1切断溝が、前記複数の列のうちの奇数列に含まれる前記貫通孔の前記内壁面と、前記複数の列のうちの偶数列に含まれる前記貫通孔の前記内壁面とを含むことを可能にする位置に設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載のキャップの製造方法。
【請求項9】
前記個片化工程では、ダイシングブレードにより、前記第1切断溝を形成し、
前記ダイシングブレードが前記第1切断溝を形成するとき、前記ダイシングブレードの一方の面が前記奇数列に含まれる前記貫通孔の中央を向き、かつ、前記ダイシングブレードの他方の面が前記偶数列に含まれる前記貫通孔の中央を向くように、前記第1切断溝の位置を決める、請求項8に記載のキャップの製造方法。
【請求項10】
レーザダイオードを収容する空洞を有するキャップであって、
前記空洞の正面を規定し、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光を透過する材料から形成される、正面壁と、
前記空洞の裏面を規定し、前記正面壁に対向する、裏面壁と、
前記空洞の上面および側面を規定し、前記正面壁と前記裏面壁とに接続される、本体と、
前記正面壁の表面に設けられた反射防止膜と、
を備え、
前記正面壁、前記裏面壁、および前記本体のそれぞれの下端面は、前記キャップの接合面を規定し、
前記反射防止膜の周縁は、前記正面壁の法線方向から見た平面視において、前記正面壁の前記下端面から離れている、キャップ。
【請求項11】
前記反射防止膜の前記周縁と前記正面壁の前記下端面との最短距離は、10μm以上100μm以下の範囲にある、請求項10に記載のキャップ。
【請求項12】
前記反射防止膜の前記周縁は、前記正面壁の法線方向から見た平面視において、前記本体と前記空洞との境界から離れている、請求項10または11に記載のキャップ。
【請求項13】
レーザダイオードと、
前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する基板と、
請求項10から12のいずれか1項に記載のキャップと、
を備え、
前記キャップの接合面は、前記基板に接合され、前記キャップは前記レーザダイオードを覆っている、光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザダイオードを収容するキャップの製造方法、キャップ、および光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子としてレーザダイオードを備える光源装置の用途は、様々な分野に拡大しつつある。例えば、ヘッドマウントディスプレイ(Head-Mounted Display:HMD)のように使用者の目に近い位置に表示部を備える表示デバイス(Near-Eye Display)が開発されつつある。
【0003】
特許文献1は、レーザダイオードなどのオプトエレクトロニクス部品を囲むガラスのカバーとその製造方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-520115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、新規かつ有用なキャップおよびその製造方法、ならびに光源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のキャップの製造方法は、例示的な実施形態において、レーザダイオードを収容する空洞を有するキャップの製造方法である。本製造方法は、空洞の正面を規定し、レーザダイオードから出射されるレーザ光を透過する材料から形成される正面壁のための第1プレートを用意する工程と、前記空洞の裏面を規定し、前記正面壁に対向する裏面壁のための第2プレートを用意する工程と、前記空洞の上面および側面を規定し、前記正面壁と前記裏面壁とに接続される本体のための第3プレートであって、厚さ方向に直交する平面に含まれる第1方向および前記平面に含まれて前記第1方向に直交する第2方向に沿って二次元的に配列された複数の貫通孔を有する第3プレートを用意する工程と、前記第1プレートと前記第3プレートとを接合し、かつ、前記第2プレートと前記第3プレートとを接合することにより、前記第1プレートおよび前記第2プレートで前記第3プレートを挟んだ積層体を作製する工程と、前記積層体を前記第1方向および前記第2方向に沿って切断して、前記積層体から複数のキャップを得る個片化工程とを含む。前記個片化工程において、前記第1方向に沿って前記積層体を切断するときは、前記第1方向に沿って並ぶ前記貫通孔の前記第1方向および前記厚さ方向に拡がる内壁面に沿って第1切断溝を形成し、前記第2方向に沿って前記積層体を切断するときは、前記第2方向に沿って並ぶ前記貫通孔から離れた位置に第2切断溝を形成する。
【0007】
本開示のキャップは、例示的な実施形態において、レーザダイオードを収容する空洞を有するキャップであって、前記空洞の正面を規定し、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光を透過する材料から形成される、正面壁と、前記空洞の裏面を規定し、前記正面壁に対向する、裏面壁と、前記空洞の上面および側面を規定し、前記正面壁と前記裏面壁とに接続される、本体と、前記正面壁の表面に設けられた反射防止膜と、を備える。前記正面壁、前記裏面壁、および前記本体のそれぞれの下端面は、前記キャップの接合面を規定する。前記反射防止膜の周縁は、前記正面壁の法線方向から見た平面視において、前記正面壁の前記下端面から離れている。
【0008】
本開示の光源装置は、例示的な実施形態において、レーザダイオードと、前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する基板と、上記のキャップと、を備える。前記キャップの接合面は、前記基板に接合され、前記キャップは前記レーザダイオードを覆っている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態によれば、新規かつ有用なキャップおよびその製造方法、ならびに光源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、本実施形態における光源装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、本実施形態における製造工程途中の光源装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態におけるキャップの分解斜視図である。
図3図3は、本実施形態における光源装置の他の例を模式的に示す斜視図である。
図4A図4Aは、本実施形態における光源装置のYZ平面に平行な断面図である。
図4B図4Bは、本実施形態における光源装置のXY平面に平行な断面図である。
図5図5は、本実施形態の光源装置の変形例のXY平面に平行な断面図である。
図6図6は、個片化される前の6個のキャップの本体を含むパネル50の例を示す分解斜視図である。
図7図7は、第3プレートを切断して得られる、3個のキャップの本体を含む構造体の斜視図である。
図8図8は、第3プレートの上面(左側)およびA-A線断面(右側)を模式的に示す図である。
図9図9は、金属層が形成された第3プレートの上面(左側)およびA-A線断面(右側)を模式的に示す図である。
図10図10は、第1プレートが接合された第3プレートの上面(左側)およびA-A線断面(右側)を模式的に示す図である。
図11A図11Aは、反射防止膜が形成された第1プレートを第3プレートに接合する様子を模式的に示す断面図である。
図11B図11Bは、反射防止膜のパターンを模式的に示す平面図である。
図12図12は、第1~第3プレートを接合して形成されたパネルの上面(左側)およびA-A線断面(右側)を模式的に示す図である。
図13図13は、パネルの全体に対して個片化に必要な切断溝の位置を模式的に表す平面図である。
図14図14は、図13の一部を拡大した平面図である。
図15図15は、第1方向に沿って並ぶ貫通孔を横切るように第1切断溝を形成して個片化する比較例を示す平面図である。
図16A図16Aは、所定の幅を有する切断溝と切断の目標線との関係を示す平面図である。
図16B図16Bは、第1切断溝が貫通孔の内壁面を含む位置でダイシングブレードによる切断が進行している途中の段階を模式的に示す断面図である。
図16C図16Cは、本実施形態における光源装置の、キャップの正面壁の法線方向から見た正面図である。
図17A図17Aは、最初の変形例における個片化方法の例を模式的に示す平面図である。
図17B図17Bは、他の変形例における個片化方法の例を模式的に示す平面図である。
図18図18は、更に他の変形例における個片化方法の例を模式的に示す平面図である。
図19図19は、更に他の変形例における個片化方法の例を模式的に示す平面図である。
図20図20は、本実施形態の変形例におけるキャップの構成例を模式的に示す断面図である。
図21図21は、図20のキャップを備える光源装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<光源装置の構成>
まず、図1A図1B、および図2を参照して、本実施形態における光源装置の概略構成を説明する。図1Aは、本実施形態における光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。図1Bは、製造工程の途中における光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。図2は、光源装置100が備えるキャップ40の分解斜視図である。添付図面には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。
【0012】
図示されている光源装置100は、レーザダイオード10と、レーザダイオード10を直接または間接的に支持する基板30と、基板30に固定され、レーザダイオード10を覆うキャップ40とを備えている。
【0013】
キャップ40は、レーザダイオード10を収容する空洞(キャビティ)40Vを有しており、空洞40Vは、図1Bに示されるように、基板30に固定される前の状態において下方に開放されている。キャップは「蓋(リッド)」と呼ばれることがある。本実施形態におけるキャップ40は、図2に示されるように、空洞40Vの正面を規定する正面壁40Fと、空洞40Vの裏面を規定する裏面壁40Rと、空洞40Vの上面および側面を規定する本体40Bとを備える。正面壁40Fは、レーザダイオード10から出射されるレーザ光を透過する材料から形成される。裏面壁40Rは、空洞40Vを挟んで、正面壁40Fに対向する。本体40Bは、正面壁40Fと裏面壁40Rとに接続されている。
【0014】
正面壁40F、裏面壁40R、および本体40Bのそれぞれの下端面40Eは、全体として、キャップ40の下端面40Eを形成し、基板30に対する接合面を規定する。キャップ40の下端面40Eは、空洞40Vの開放面の周囲に位置している。キャップ40の下端面40Eは、接合材を介して基板30の主面32に接合され、空洞40Vをキャップ40の外部から気密に封止することを可能にする。正面壁40F、裏面壁40R、および本体40Bのそれぞれの下端面40Eは、ほぼ同一の平面上にあることが好ましい。後述するように、正面壁40F、裏面壁40R、および本体40Bのそれぞれの下端面40Eは、ダイシングブレードなどによる切断工程によって形成されるため、微細な(例えば50μm以下の)凹凸や段差を有し得る。そのような凹凸または段差は、下端面40Eと基板30の主面32との間に設けられる接合材の厚さよりも小さければ、接合に支障はない。
【0015】
キャップ40は、正面壁40Fのレーザダイオード10に対向する側(内側、言い換えると、裏面側)の表面に設けられた反射防止膜を備える。この反射防止膜の周縁は、正面壁40Fの法線方向から見た平面視において、正面壁40Fの下端面40Eから離れている。このことによる効果については、後述する。なお、正面壁40Fの外側(正面側)の表面にも、反射防止膜が形成され得る。正面壁40Fの外側の表面に設けられる反射防止膜の周縁は、正面壁40Fの法線方向から見た平面視において、正面壁40Fの下端面40Eから離れている必要はない。本実施形態において、正面壁40Fの内側および外側の表面は、平坦であり、典型的には平滑である。
【0016】
図示される例において、空洞40Vの形状は直方体である。空洞40Vの形状は、直方体に限定されない。キャップ40の構成および作製方法の詳細は、後述する。
【0017】
レーザダイオード10には、例えば、青色の光を放射するレーザダイオード、緑色の光を放射するレーザダイオード、または、赤色の光を放射するレーザダイオードなどを採用することができる。また、これら以外の光を放射するレーザダイオードを採用してもよい。
【0018】
本明細書において、青色の光は、発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光である。緑色の光は、発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光である。赤色の光は、発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光である。
【0019】
青色の光を発するレーザダイオード、または、緑色の光を発するレーザダイオードとして、窒化物半導体を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色の光を発するレーザダイオードとして、InAlGaP系やGaInP系、GaAs系やAlGaAs系の半導体を含むものが挙げられる。
【0020】
レーザダイオード10から放射されるレーザ光14は、拡がりを有し、レーザ光14の出射端面に平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。FFPは、出射端面から離れた位置におけるレーザ光14の光強度分布によって規定される。この光強度分布において、ピーク強度値に対して1/e以上の強度を有する部分をビーム断面と呼んでもよい。
【0021】
本実施形態において、レーザダイオード10は、レーザ光14を出射する端面を有する端面出射型であるが、面発光型(VCSEL)であってもよい。簡単のため、図では、レーザ光14の中心軸が破線で示されている。実際のレーザ光14は、上述したように、レーザダイオード10の端面から出射された後、発散して拡がる。このため、レーザ光14は、レンズを含む光学系によって、コリメートまたは収束され得る。そのような光学系は、典型的には、光源装置100の外部に設けられる。コリメートまたは収束のためのレンズを含む光学系の少なくとも一部は、キャップ40そのものに設けられたり、キャップ40の空洞40V内に配置されたりしていてもよい。
【0022】
レーザ光14の中心軸は、基板30の主面32に沿う方向(Z軸方向)に延びている。光源装置100から外部に出たレーザ光14は、光源装置100の外部に配置されたミラーによって、例えば基板30の主面32に垂直な方向に反射されてもよい。
【0023】
図の例において、レーザダイオード10は、サブマウント20に固定された状態で基板30の主面32上に実装されている。レーザダイオード10は、サブマウント20を介することなく、直接に、基板30の主面32に接合されていてもよい。これらの図において、レーザダイオード10を外部回路に接続する配線の記載は省略されている。
【0024】
基板30は、セラミックを主材料として形成することができる。なお、セラミックに限らず金属、あるいは、セラミックと金属のコンポジット材料から形成されていてもよい。例えば、セラミックでは窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素を、金属では銅、アルミニウム、鉄、複合物として銅モリブデン、銅-ダイヤモンド複合材料、銅タングステンを基板30の主材料に用いることができる。
【0025】
基板30の上面(主面32)および下面には、それぞれ複数の金属層が設けられ得る。複数の金属層は、配線用金属層、および気密封止用金属層を含み得る。基板30の内部を通る金属により、上面における配線用金属層と下面における配線用金属層とを電気的に接続することができる。基板30の下面には、上面における上記配線用金属層とは電気的に接続しない他の配線用金属層が形成され得る。基板30の一例は、配線を内部および/または外側に備える多層セラミック基板であり得る。
【0026】
サブマウント20は下面と、上面と、側面とを有し、典型的には、直方体の形状を有している。サブマウント20は、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、または炭化ケイ素から形成され得る。サブマウント20の上面には、レーザダイオード10を基板30上の配線に接続するための金属層が設けられ得る。
【0027】
キャップ40は、基板30に支持されたレーザダイオード10を覆った状態で基板30に固定される。図示される例では、キャップ40の下端面40Eが基板30の主面32に接合される。このような接合は、金属材料、無機材料、または有機材料の層を介して実現され得る。こうして、レーザダイオード10は気密に封止され得る。図1Aの光源装置100を「半導体レーザパッケージ」と呼んでもよい。図の例において、光源装置100は1個のレーザダイオード10を備えているが、本実施形態は、そのような例に限定されない。キャップ40が有する1個の空洞40Vの内部に複数のレーザダイオード10を配列してもよい。複数のレーザダイオード10は、典型的には、それぞれ、レーザ光14を同一の方向に出射するように、平行に配置され得る。
【0028】
図3は、本実施形態における光源装置の他の例を模式的に示す斜視図である。この例において、基板30は、1個のサブマウント20上に配列された3個のレーザダイオード10R、10G、10Bを備えている。レーザダイオード10R、10G、10Bは、それぞれ、赤色、緑色、青色のレーザ光14を放射する。これらのレーザダイオード10R、10G、10Bが1個のキャップ40の内部に収容されて気密に封止され得る。サブマウント20の個数は、1個に限定されず、レーザダイオード10R、10G、10Bごとに分離されていてもよい。
【0029】
レーザダイオード10R、10G、10Bのそれぞれから放射されたレーザ光14は、ビームコンバイナによって同軸のビームに結合されてもよいし、異なるマイクロミラーによって互いに異なる方向にスキャンしてもよい。レーザダイオード10R、10G、10Bは、それぞれ、異なるタイミングまたは同時にレーザ光14を放射し得る。レーザ光14の放射は、駆動回路によって制御される。
【0030】
光源装置100の動作時において、レーザダイオード10から出射されたレーザ光14は、キャップ40の正面壁40Fを透過する。このとき、レーザ光14は、正面壁40Fの内側に設けられた反射防止膜、あるいは、内側と外側の両方に設けられた反射防止膜を透過する。キャップ40の正面壁40F以外の部分は、透光性を有している必要はない。また、正面壁40Fであっても、レーザ光14を透過する部分以外は透光性を有している必要はない。キャップ40の透光性を有している必要がない部分の表面には、迷光を発生させないように光吸収膜が形成されていてもよい。
【0031】
<キャップの構成>
以下、図4Aおよび図4Bを参照しながら、本実施形態におけるキャップ40の構成例を詳細に説明する。図4Aは、YZ平面に平行な断面図であって、レーザ光14の中心軸を含む断面を模式的に示す図である。図4Bは、図4Aの4B-4B線の断面図であり、XY平面に平行な断面を示す図である。図4Aは、図4Bの4A-4A線の断面図に相当する。
【0032】
図4Aおよび図4Bに示されるキャップ40は、図2に示されるように、正面壁40Fおよび裏面壁40Rが、中央に位置する本体40Bに両側から接合した構造を有している。後述するように、正面壁40Fはガラスなどの第1プレート(第1シート)から形成され、裏面壁40Rはガラスまたはシリコンなどの第2プレート(第2シート)から形成され得る。本体40Bは、ガラスまたはシリコンなどの第3プレートから形成され得る。裏面壁40Rおよび本体40Bは、透光性を有する材料から形成される必要はない。
【0033】
キャップ40の正面壁40Fは、基板30上においてレーザ光14を横切る位置に配置される。裏面壁40Rは、正面壁40Fに対して平行に配置される。本体40Bは、図4Bに示されるように、「コの字型(アルファベットのCの字型)」の断面を有しており、正面壁40Fと裏面壁40Rとを連結する。本体40Bは、図4Bに示されるように、レーザダイオード10の側方に位置する一対の側壁部40Sと、レーザダイオード10の上方に位置して一対の側壁部40Sを連結するカバー部40Tを有している。このように、本体40Bは、空洞40Vの上面および側面を規定する形状を有している。なお、キャップ40の構成は、図4Aおよび図4Bに示す例に限定されない。例えば、図5に示されるように、キャップ40の本体40Bが、内壁面に曲面を含む形状を有していてもよい。このように、キャップ40の空洞40Vは、直方体以外の形状を有していてもよい。
【0034】
本実施形態において、正面壁40Fおよび裏面壁40Rはアルカリガラスから形成され、本体40Bは無アルカリガラスから形成されている。これとは反対に、本体40Bがアルカリガラスから形成され、正面壁40Fおよび裏面壁40Rが無アルカリガラスから形成されていてもよいし、正面壁40F、本体40B、および裏面壁40Rの全てがアルカリガラスから形成されていてもよい。
【0035】
「アルカリガラス」とは、Na、Ka、Liなどのアルカリ金属元素のイオンを含有するケイ酸化合物ガラスである。アルカリ酸化物の濃度が0.1質量%以下であるケイ酸化合物ガラスを「無アルカリガラス」と称する。なお、ケイ酸化合物ガラスの例は、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、および石英ガラスを含む。
【0036】
本実施形態において、正面壁40Fは、本体40Bの表面に形成された導電層40Mを介して陽極接合されている(図4A)。同様に、裏面壁40Rは、本体40Bの表面に形成された他の導電層40Mを介して陽極接合されている。導電層40Mは、異なる種類の金属が積層された構成を有していてもよい。例えば、本体40Bの表面に下地層としてチタン層を堆積した後、その上にアルミニウム層を堆積し、それらの積層体から導電層40Mを形成してもよい。導電層40Mの材料は、このような例に限定されない。
【0037】
本実施形態において、陽極接合は、例えば、本体40Bの電位よりも低い電位(例えば-500ボルトから-1キロボルト)を正面壁40Fまたは裏面壁40Rに与え、300℃から400℃程度に加熱することによって実現され得る。陽極接合の具体的な方法は、特に制限されず、公知の種々の方法を採用して実行され得る。陽極接合の結果として、正面壁40Fにおけるアルカリ金属元素の濃度は、導電層40Mに接する領域で局所的に低下している。同様に、裏面壁40Rにおけるアルカリ金属元素の濃度も、導電層40Mに接する領域で局所的に低下している。なお、導電層40Mは、正面壁40Fおよび裏面壁40Rの少なくとも一方に設けられてもよい。その場合、導電層40Mが設けられた正面壁40Fおよび/または裏面壁40Rに接合される側にある本体40Bの表面には、導電層40Mを設ける必要はない。本体40Bに正面壁40Fおよび裏面壁40Rを接合する順序も任意である。正面壁40Fと本体40Bとを接合した後、裏面壁40Rを本体40Bに接合してもよい。これとは反対に、裏面壁40Rと本体40Bとを接合した後、正面壁40Fを本体40Bに接合してもよい。また、正面壁40Fおよび裏面壁40Rを同時に本体40Bに接合してもよい。
【0038】
本実施形態では、陽極接合によって正面壁40Fおよび裏面壁40Rを本体40Bに接合するが、他の接合方法によって正面壁40Fおよび裏面壁40Rのそれぞれを本体40Bに接合してもよい。接合方法の例は、原子拡散接合(Atomic Diffusion Bonding: ADB)、表面活性化接合(Surface Activated Bonding: SAB)、および水酸基接合などの直接接合法を含む。 本体40Bは、ガラス以外の材料、例えば半導体(単結晶シリコン、多結晶シリコン、炭化ケイ素など)から形成されていてもよい。本体40Bは透光性を有する必要はない。本体40Bを含めてキャップ40の略全体がガラスから形成されている場合、キャップ40を「ガラスキャップ」または「ガラスリッド」と呼んでもよい。なお、図4Aの例では、導電層40Mが接合面のみに存在しているが、導電層40Mは、本体40Bの空洞40Vの側における表面(内側表面)に形成されていてもよい。キャップ40を製造する方法の詳細な例については、後述する。
【0039】
本実施形態によれば、キャップ40における正面壁40Fが板状のガラスプレートまたはガラスシートから構成されているため、その表面を平滑にすることが容易である。また、陽極接合の前に正面壁40Fに反射防止膜を形成しておくことが可能であるため、キャップ40が小型化されても、キャップ40の内側表面に歩留り良く反射防止膜を形成することが可能になる。正面壁40Fと同様にして、裏面壁40Rに反射防止膜を形成することもできる。
【0040】
図6は、複数の本体40B(図4参照)を形成するためのパネル50の例を示す分解斜視図である。この第3プレート42は、2行3列に配列された6個の貫通孔42Hを有している。この貫通孔42Hを2枚の第1プレート47および第2プレート48で第3プレート42の両側から塞ぐことにより、1枚のパネル(積層体)50を作製することができる。第1プレート47および第2プレート48は、それぞれ、例えば、厚さ1mm程度またはそれ以下の薄いガラスシートであり得る。パネル50を図6の水平方向に沿って分割することにより、図7に示される構造体60を得ることができる。この構造体60には、最終的に3個のキャップを構成する3個の本体部分が含まれている。構造体60に含まれる3個の空洞40Vは、それぞれ、下方に開放されている。この構造体60を図7の垂直方向に分割することにより、3個のキャップを個片化することができる。なお、パネル50からキャップを個片化するとき、図の水平方向の切断と図の垂直方向の切断の順序は任意である。水平方向の切断よりも先に垂直方向の切断を実行してもよい。
【0041】
<キャップの製造方法>
以下、多数のキャップ40を製造する方法の実施形態をより詳細に説明する。
【0042】
まず、図8を参照する。図8は、第3プレート42の上面(左側)およびA-A線断面(右側)を模式的に示す図である。まず、空洞40Vの上面および側面を規定し、正面壁40Fと裏面壁40Rとに接続される本体40Bのための第3プレート42を用意する。第3プレート42は、第1面(上面)44、および、第1面44とは反対の側に位置する第2面(下面)46を有する平板である。第3プレート42は、厚さ方向に直交する平面(XY面)に含まれる第1方向(Dx方向)、および、平面(XY面)に含まれて第1方向(Dx方向)に直交する第2方向(Dy方向)に沿って二次元的に配列された複数の貫通孔42Hを有する。貫通孔42Hは、第1面44から第2面46に達している。この例において、第1方向DxはX軸に平行であり、第2方向DyはY軸に平行である。各貫通孔42Hは、Z軸方向に沿って延びている。各貫通孔42Hは、最終的にキャップ40の空洞(キャビティ)40Vを形成するため、第3プレートを「キャビティプレート」と呼んでもよい。
【0043】
貫通孔42Hは、例えば、ガラスまたは半導体の基板(厚さ:例えば0.5~5mm)を用意し、この基板を加工すること(孔あけ加工)によって形成され得る。加工は、例えば、マスクパターンを形成した後、サンドブラスト加工またはエッチング加工によって行われ得る。機械加工またはレーザ加工などによって貫通孔42Hを形成してもよい。貫通孔42HのX方向、Y方向、およびZ方向のサイズは、それぞれ、例えば、0.5~5mm、0.2~5mm、および0.5~5mmである。
【0044】
次に、図9を参照する。図9は、複数の貫通孔42Hが設けられた第3プレート42の第1面44および第2面46に金属層49Mを堆積した状態を示している。このあと、図10に示すように、金属層49Mが形成された第3プレート42の第1面44側に第1プレート(厚さ:例えば0.2~1.0mm)47を接合する。金属層49Mの典型例は、アルミニウムの層(厚さ:例えば50~1000nm)である。金属層49Mは、アルミニウム以外の金属、例えばチタンから形成されていてもよい。接合は、前述したように、陽極接合、あるいは他の接合方法によって行われ得る。第1プレート47の内面は、図1Bに示されるキャップ40の正面壁40Fの内側表面に相当する。
【0045】
図11Aは、反射防止膜55a、55bが形成された第1プレート47を第3プレート42の第1面44に接合する様子を模式的に示す断面図である。図11Bは、反射防止膜のパターンを模式的に示す平面図である。例えば陽極接合によって第1プレート47を第3プレート42に接合する場合は、反射防止膜55bの存在が陽極接合時のプロセスの障害とならないように、反射防止膜55bの形成は陽極接合の後に行うことが望ましい。 本実施形態では、キャップ40の正面壁40Fの内側表面に反射防止膜を形成するため、陽極接合の前に、第1プレート47の表面(キャップ40の正面壁40Fの内側表面となる部分)に反射防止膜55aを設けておく。言い換えると、第1プレート47を用意する工程は、第1プレート47の表面において、第3プレート42の複数の貫通孔42Hのそれぞれに対向する位置に複数の反射防止膜55aを形成する工程を含む。
【0046】
図11Bからわかるように、第1プレート47の法線方向から見た平面視において、各反射防止膜55aの周縁は、対応する貫通孔42Hの内壁面から内側にシフトした位置にある。図示される例において、第1プレート47の正面側の面には、一様な厚さを有する連続した反射防止膜55bが形成されている。第1プレート47の正面側に反射防止膜55bを形成するタイミングは、陽極接合がすべて完了した後であってもよい。なお、第1プレート47と同様にして、第2プレート48にも同様の反射防止膜55aおよび/または反射防止膜55bを形成してもよい。なお、第2プレート48には、反射防止膜に代えて、あるいは反射防止膜とともに、光吸収膜を形成してもよい。
【0047】
本実施形態では、後述する個片化工程において、ダイシングブレードによる切断を行うとき、切断溝は反射防止膜55aを切断しないように実行される。
【0048】
なお、陽極接合を行うため、第1プレート47の裏面側では、第1プレート47と第3プレート42とが接する領域には反射防止膜55aが存在せず、第1プレート47と第3プレート42とが接する領域以外の領域に反射防止膜55aが形成される。反射防止膜55aのパターンが形成された第1プレート47と第3プレート42とを接合するときの位置合わせずれの程度を考慮して、反射防止膜55aの形状およびサイズが決定される。なお、反射防止膜55aは、正面壁40Fのうち、レーザダイオード10から出射されるレーザ光が当たる領域を覆っていればよい。従って、反射防止膜55aのX方向のサイズおよびY方向のサイズは、それぞれ、貫通孔42HのX方向のサイズおよびY方向のサイズよりも小さくてもよい。
【0049】
次に、前述した陽極接合の条件と同様の条件で陽極接合を行い、金属層49Mが形成された第3プレート42の第2面46側に第2プレート(厚さ:例えば0.2~1.0mm)48を接合する。こうして、図12に示されるように、第3プレート42の貫通孔42Hが第1プレート47および第2プレート48によって塞がれた状態にあるパネル(積層体)50が得られる。第3プレート42の貫通孔42Hは、個片化工程後、キャップ40の空洞40Vとして機能する。以下の説明においては、便宜上、個片化される前の段階においては、第3プレート42を貫通する孔を、「空洞」ではなく、そのまま「貫通孔」を呼ぶことにする。図12では、簡単のため、反射防止膜55a、55bの記載は省略されている。なお、第3プレート42が例えばシリコンなどの半導体から形成されている場合、金属層49Mは不要である。
【0050】
上記の例では、第1プレート47を第3プレート42に接合した後、第2プレート48を第3プレート42に接合しているが、この順序は任意である。第2プレート48よりも後に第1プレート47を第3プレート42に接合する場合、パネル50を作製するための各種の処理および作業の影響が第1プレート47に及びにくい。第1プレート47からは、レーザ光を透過する正面壁40Fが形成されるため、第2プレート48よりも第1プレート47を慎重にハンドリングすることが望ましい。したがって、第1プレート47および第2プレート48を第3プレート42に同時に接合しない場合、第2プレート48よりも後に第1プレート47を第3プレート42に接合することが望ましい。 この後、パネル50を第1方向Dxおよび第2方向Dyに沿って切断して、パネル50から複数のキャップ40を得る個片化工程を実行する。個片化工程において、第1方向Dxに沿ってパネル50を切断するときは、第1方向Dxに沿って並ぶ貫通孔42Hの第1方向Dxおよび厚さ方向に拡がる内壁面に沿って第1切断溝(点線C1)を形成し、第2方向Dyに沿ってパネル50を切断するときは、第2方向Dyに沿って並ぶ貫通孔42Hから離れた位置に第2切断溝(点線E1、E2)を形成する。より具体的には、第1方向Dxに沿って他の切断溝(点線C2)も形成する。その結果、パネル50から貫通孔42Hの個数に相当する個数のキャップ40を得ることが可能になる。ある1個のキャップ40は、例えば図12の楕円で囲まれた領域のうち、切断溝で囲まれた部分から取り出される。切断溝の形成は、例えばダイシングブレードによって行われる。図12では、点線C1、C2、E1、E2によって切断溝を模式的に示しているが、切断溝は、例えば20μm以上500μm以下の幅を有している。切断溝の幅は、ダイシングブレードによる切断の場合、ブレードの厚さよりも小さくならず、ブレードの厚さに依存する。点線C1、C2、E1、E2は、いずれも、所定の幅を有する切断溝の中心線に相当する。例えばダイシングブレードによって切断を行ったとき、パネル50に形成される切断溝の中心線の位置は、切断の目標線から、例えば10μmから50μm程度のずれ(寸法精度または寸法誤差)が発生し得る。
【0051】
図13は、1つのパネル50の全体に対して個片化に必要な切断溝を点線C1、C2、Eによって模式的に表している。図13の例における切断の仕方によれば、個片化される各キャップ40は、同じ方向を向いている。
【0052】
図14は、図13の一部を拡大した図面であり、図15は、第1方向Dxに沿って並ぶ貫通孔42Hを横切るように第1切断溝(点線C1)を形成して個片化する比較例を示している。図14では、切断溝(点線C1)の位置が貫通孔42Hの内壁面からY軸の正方向にずれた状態を模式的に示している。図15では、切断溝(点線C1)の位置が貫通孔42Hを上下に二等分する位置からY軸の正方向にずれた状態を模式的に示している。図14から明らかなように、本実施形態において、ある1本の第1切断溝(点線C1)がY軸の正方向にずれた場合、その第1切断溝(点線C1)によって下端面(接合面)が規定されるキャップのキャビティのサイズ(高さ)が目標値から変化する。これに対して、比較例では、第1切断溝(点線C1)によって切断される貫通孔42Hのそれぞれは、分割されて2つのキャップのキャビティを形成する。このため、比較例では、ある1本の第1切断溝(点線C1)がY軸の正方向にずれた場合、図15から明らかなように、その第1切断溝(点線C1)によって分割されて形成される一対のキャビティの一方のサイズ(高さ)は、目標値から増加し、他方のサイズ(高さ)は、目標値から減少する。その結果、一対のキャビティの間でサイズ(高さ)の差異が大きくなりやすい。
【0053】
また、図15に示されるように、パネル50において第1切断溝(点線C1)によって切断される部分は、貫通孔42Hが周期的に並んだ部分であり、本実施形態のパネル50において第1切断溝(点線C1)によって切断される部分(一様な厚さを有する中実部)に比べて機械的強度が相対的に弱い。その結果、例えばダイシングブレードによって貫通孔42Hの周辺に不均一な応力が発生し得る。また、点線C1に沿って並んだ貫通孔42Hの間の部分は、Y軸方向に延びる両持ち梁とみることもできるが、その梁の中央にダイシングブレードが作用して梁の変形または欠けを招く可能性もある。その結果、切断の寸法精度を低下させたり、ガラスエッジ部のチッピング発生確率の上昇やチッピングサイズを拡大させたりし得る。
【0054】
このような比較例に対して、本実施形態では、第1切断溝(点線C1)は、実質的に中実の部分(並んだ貫通孔42Hの間の梁に相当する部分の中央ではなく根本)を横切る。この結果、切断の寸法精度の低下が生じにくい。
【0055】
また、図11Aおよび図11Bを参照して説明したように、第1プレート47の内側の表面には反射防止膜55aが設けられている。図15に示すように第1切断溝(点線C1)が貫通孔42Hの中央付近を通る場合、反射防止膜55aの剥がれが発生する可能性がある。反射防止膜55aは、薄膜堆積の方法によっては、パターニングされたそれぞれの反射防止膜55aの中央付近で最も優れた特性を示し得る。このため、反射防止膜55aの中央を切断することは、キャップ40内でレーザ光が通過する位置における反射防止膜55aの特性低下を招く可能性もある。したがって、図14に示される点線C1の位置に第1切断溝を形成するように個片化を行うことは、反射防止膜55aの性能を最適化することにも寄与する。
【0056】
なお、図14からわかるように、点線C1に沿ってダイシングブレードによる切断を行い、貫通孔42Hの内壁面に沿って第1切断溝を形成するとき、ダイシングブレードの一方の面が貫通孔42Hの中央を向くが、ダイシングブレードの他方の面は、理想的にはパネル50の中実部分と常に接して加工に寄与している。ダイシングブレードの両面には、例えばダイヤモンド砥粒が固着している。ダイシングブレードの一方の面だけがパネル50の中実部分に対する加工を行い続けると、ブレードの片面側の砥粒が先に摩耗してしまう「片面減り」が生じて、ダイシングブレードの寿命が短縮する可能性がある。
【0057】
図16Aは、本実施形態において、幅Wを有する第1切断溝が、切断の目標線C0からシフトしていない例、目標線C0に対して貫通孔42Hの中心に近づく方向に距離D+だけシフトしている例、および、目標線C0に対して貫通孔42Hの中心から遠ざかる方向に距離D-だけシフトしている例を誇張して模式的に示す平面図である。
【0058】
図16Bは、第1切断溝が貫通孔42Hの内壁面42Sを含む位置でダイシングブレード80による切断が進行している途中段階の状態を模式的に示す断面図である。ダイシングブレード80の両面には多数の砥粒82が固着している。ダイシングブレード80は回転軸84の周りを高速で回転してパネル50の切断を行うことができる。図16Bでは、切断が第3プレート42の中間程度の厚さの位置まで進行している状態が示されている。本実施形態では、各貫通孔42Hは、互いに90度ずつ異なる向きを有する4面の内壁面を有しているが、第1切断溝は、4面のうちの1面を構成する内壁面42Sに沿って形成される。
【0059】
再び図16Aを参照する。個片化工程において、第1切断溝の位置は、貫通孔42Hの内壁面42Sの位置が第1切断溝(幅W)の内側に含まれるように決定されることが望ましい。第1切断溝の幅Wが例えば200μmの場合、目標線C0が貫通孔42Hの内壁面42Sと一致していれば、第1切断溝が第2方向(Dy方向)に例えば50μm以下の大きさでシフトしても、貫通孔42Hの内壁面42Sの位置は第1切断溝(幅W)の内側に含まれる。しかし、目標線C0の位置が内壁面42Sよりも幅Wの半分以上外れていると、貫通孔42Hの内壁面42Sの位置は第1切断溝(幅W)の内側に含まれないことがある。第1切断溝の位置は、第2方向(Dy方向)の一方または他方、すなわちY軸の正方向または負方向にシフトする可能性がある。図16Aおよび図16Bに示すように、貫通孔42Hの内壁面42SからY軸の負方向にシフトした結果、その内壁面42Sの位置が第1切断溝の内側に含まれないことになると、貫通孔42Hはキャップ40のキャビティとして機能しないため、製造不良が発生してしまう。しかし、貫通孔42Hの内壁面42SからY軸の正方向にシフトした場合は、内壁面42Sの位置が第1切断溝の内側に含まれなくても、貫通孔42Hはキャップ40のキャビティとして機能し得る。
【0060】
以上のことから、本開示の個片化工程において、「貫通孔の内壁面42Sに沿って第1切断溝を形成する」とは、内壁面42Sの位置が第1切断溝内に含まれるか、距離D+が0μm以上であり、かつ、距離D+が貫通孔の第2方向(Dy方向)におけるサイズの25%以下となるように切断を行うことであると定義する。このような切断を行うと、それぞれの貫通孔42Hから形成されるキャップ40の空洞40Vは1個である。距離D+が0μmを超えると、1個の貫通孔42Hから2個の空洞40Vが形成され得るが、上記の定義のもとでの「切断」では、それらの2個の空洞40Vのサイズ差(非対称性)が大きく、一方の空洞40Vはレーザダイオードの収容には適さない。
【0061】
なお、距離D+を0μmよりも大きくすると、ダイシングブレードの一方の面が常にパネル50の中実部分に対する加工を行い続けることを抑制すること(片面減りの抑制)が可能になる。また、平面視において、貫通孔42Hの四隅には曲線部(隅アール)が存在し得る。第1切断溝の幅Wと距離D+の総和は、例えば、隅アールの曲率半径以上に設定され得る。
【0062】
このような個片化工程において、第1方向(Dx方向)に沿ってパネル(積層体)50を切断するとき、および、第2方向(Dy方向)に沿ってパネル50を切断するとき、前述したように、複数の反射防止膜55aを切断しないようにすることが好ましい。ダイシングブレードが反射防止膜55aを切断すると、反射防止膜55aの一部に剥がれが発生する可能性があるからである。
【0063】
切断溝の形成は、ダイシングブレードを用いることなく、レーザ切断などの他の切断方法を用いて実行してもよい。
【0064】
上記の個片化工程によれば、反射防止膜55aの周縁と正面壁40Fの下端面40Eとの最短距離は、例えば10μm以上100μm以下の範囲にあるキャップ40が得られる。なお、前述した方法で反射防止膜55aのパターンを形成することにより、反射防止膜55aの周縁は、正面壁40Fの法線方向から見た平面視において、本体40Bと空洞40Vとの境界から離れている。
【0065】
図16Cは、本実施形態における光源装置100の、キャップ40の正面壁の法線方向から見た正面図である。図16Cに示されるように、反射防止膜55aの周縁BA1(破線)は、本体40Bと空洞40Vとの境界BA2(点線)から離れている。
【0066】
<個片化方法の変形例>
以下、ダイシングブレードを用いる形態において、ダイシングブレードの片面減りを抑制することが可能な、個片化方法の変形例を説明する。
【0067】
図17Aは、個片化方法の最初の変形例を模式的に示す平面図である。この平面図は、第3プレート42の表面の法線方向から見た平面視を示す。上記の実施形態と同様に、この変形例でも、複数の貫通孔42Hは、第1方向(Dx方向)に平行な複数の行および第2方向(Dy方向)に平行な複数の列に配列されている。この例の個片化工程では、複数の行のうちの奇数行に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sに沿って第1切断溝を形成するときは、ダイシングブレードの一方の面が貫通孔42Hの中央を向き、かつ、偶数行に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sに沿って第1切断溝を形成するときは、ダイシングブレードの他方の面が貫通孔42Hの中央を向くように、第1切断溝の位置を決める。図17Aには、参考のため、個片化されたときに反対の方向を向く2個のキャップ40が、それぞれ、楕円で囲まれている。これらの2個のキャップは、互いに対向する位置に第1切断溝によって形成される下端面を有することになる。
【0068】
このような個片化方法によれば、ダイシングブレードの両面は、略同じ程度に加工に寄与する。その結果、ダイシングブレードの片面減りを抑制することが可能になる。
【0069】
次に、図17Bを参照して、個片化方法の他の変形例を説明する。
【0070】
この変形例でも、複数の貫通孔42Hは、第1方向(Dx方向)に平行な複数の行および第2方向(Dy方向)に平行な複数の列に配列されている。この例の個片化工程では、複数の行のうちの奇数行に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sと、その奇数行に隣接する偶数行に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sの両方に沿って第1切断溝を形成する。第1切断溝のそれぞれは、隣接する奇数行および偶数行に含まれて互いに対向する貫通孔42Hの内壁面42Sの両方を含むように形成される。言い換えると、隣接する奇数行に含まれる貫通孔42Hと偶数行に含まれる貫通孔42Hとの間隔は、第1切断溝の幅W(図16A参照)よりも小さい。この改変例によれば、幅Wが比較的大きなダイシングブレードの両面を利用して個片化工程を実行することができる。 次に、図18を参照して、個片化方法の更に他の変形例を説明する。
【0071】
図18の例では、第3プレート42の表面の法線方向から見た平面視において、複数の貫通孔42Hが、第1方向(Dx方向)に沿ってジグザグに配置される複数の行を形成している。貫通孔42Hの中心位置によるジグザグの振幅(振動の片振幅)は、貫通孔42Hの第2方向(Dy方向)におけるサイズの半分程度である。このジグザグ配置により、奇数列(2n+1)に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sと、偶数列(2n)に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sとが略直線状に交互に並んでいる(「n」は、0以上の整数である。)。言い換えると、複数の貫通孔42Hは、個片化工程における第1切断溝(点線C1)が、複数の列のうちの奇数列(2n+1)に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sと、複数の列のうちの偶数列(2n)に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sとを含むことを可能にする位置に設けられている。図18には、参考のため、ジグザグに配置される1つの行から個片化される2個のキャップが、それぞれ、楕円で囲まれている。これらの2個のキャップは、共通する第1切断溝(点線C1)によって形成される下端面を有することになる。
【0072】
この例の個片化工程では、ダイシングブレードが第1切断溝を形成するとき、ダイシングブレードの一方の面が奇数列に含まれる貫通孔42Hの中央を向き、かつ、ダイシングブレードの他方の面が偶数列に含まれる貫通孔42Hの中央を向くように、第1切断溝(点線C1)の位置を決めることができる。言い換えると、第1切断溝(点線C1)を基準にして、奇数列(2n+1)に含まれる貫通孔42Hと、偶数列(2n)に含まれる貫通孔42Hとが、交互に反対側に位置するように配列されている。第1切断溝(点線C1)は、第1方向(Dx方向)に沿ってジグザグに配置される貫通孔42Hの各行の中心を通り、かつ、その行において奇数列(2n+1)および偶数列(2n)に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sを通過する。
【0073】
このような個片化方法によれば、ダイシングブレードの両面は、略同じ程度に加工に寄与する。その結果、ダイシングブレードの片面減りを抑制することが可能になる。なお、図18の例では、個片化される各キャップの上面は、第1切断溝(点線C1)に平行な他の切断溝(点線C2)によって形成される。
【0074】
次に、図19を参照して、個片化方法の更に他の変形例を説明する。
【0075】
図19の例では、図18の例における点線C2に沿った切断を行わない。言い換えると、点線C1に沿った第1切断溝と点線Eに沿った第2切断溝によってキャップの個片化を達成することができる。図19には、参考のため、ジグザグに配置される1つの行から個片化される2個のキャップが、それぞれ、楕円で囲まれている。これらの2個のキャップは、共通する第1切断溝(点線C1)によって形成される下端面を有することになる。図18の例と同様に、この例においても、第1切断溝(点線C1)を基準にして、奇数列(2n+1)に含まれる貫通孔42Hと、偶数列(2n)に含まれる貫通孔42Hとが、交互に反対側に位置するように配列されている。第1切断溝(点線C1)は、第1方向(Dx方向)に沿ってジグザグに配置される貫通孔42Hの各行の中心を通り、かつ、その行において奇数列(2n+1)および偶数列(2n)に含まれる貫通孔42Hの内壁面42Sを通過する。
【0076】
このようにして個片化された各キャップ40の下端面は、第1切断溝(点線C1)によって規定される。各キャップ40の側面は、第2切断溝(点線E)によって規定される。また、各キャップ40の上面は、他の第1切断溝(点線C1)によって規定される。各キャップ40の表面は、個片化工程におけるダイシングなどの加工によって生じた粗面を有している可能性がある。しかし、レーザ光は、第1プレート47の平滑な部分を透過するため、加工粗面による悪影響を受けない。このように本実施形態によれば、第1プレート47の平坦性および平滑性が製造工程中に損なわれないため、キャップ40のレーザ光を透過させる部分は優れた平滑性を発揮し得る。なお、第1切断溝(点線C1)の形成によって現れる表面は、キャップ40の下端面であり、基板に接合される面であるため、必要に応じて研磨などの平坦化加工を実施してもよい。
【0077】
この方法により、それぞれが図4Aおよび図4Bに示される構成を有する多数のキャップ40が作製され得る。各キャップ40における正面壁40Fおよび裏面壁40Rは、それぞれ、第1プレート47の一部および第2プレート48の一部から形成され、本体40Bは第3プレート42の一部から形成される。また、導電層40Mは、金属層49Mの一部から形成される。こうして作製されたキャップ40を利用することにより、図1Aに示される光源装置100を得ることができる。
【0078】
本実施形態によれば、高さ(Y軸方向のサイズ)が例えば2ミリメートル以下のキャップ40を大量に生産することが可能になる。また、キャップ40に反射防止膜を適切に形成することが容易であるため、レーザ光の透過率を高め、迷光の発生を抑制することも可能になる。
【0079】
<キャップの変形例>
以下、上記実施形態の更なる変形例を説明する。
【0080】
上記の実施形態では、正面壁40Fおよび本体40Bの少なくとも一方がアルカリガラスであるが、正面壁40Fまたは本体40Bの全体がアルカリガラスである必要はない。具体的には、正面壁40Fおよび本体40Bの少なくとも一方がアルカリガラス領域を含み、かつ、正面壁40Fおよび本体40Bが、そのアルカリガラス領域に接触する導電層40Mを介して接合されていてもよい。
【0081】
キャップ40が、レーザダイオード10を間に置いて正面壁40Fに対向する裏面壁40Rを含み、本体40Bが正面壁40Fと裏面壁40Rとを連結している形態では、本体40Bおよび裏面壁40Rの少なくとも一方がアルカリガラス領域を含み、かつ、本体40Bおよび裏面壁40Rが、そのアルカリガラス領域に接触する他の導電層40Mを介して接合されていてもよい。
【0082】
図20および図21を参照して、本実施形態の変形例を説明する。図20はキャップ40の構成例を模式的に示す断面図である。図21は、このキャップ40を備える光源装置100の断面図である。図20に示されているキャップ40は、正面壁40F、本体40B、および裏面壁40Rを有している。正面壁40Fは、アルカリガラス領域70Aと、アルカリガラス領域70Aに連結した無アルカリガラス領域72Aとを有している。また、裏面壁40Rは、アルカリガラス領域70Cと、アルカリガラス領域70Cに連結した無アルカリガラス領域72Cとを有している。アルカリガラス領域70Aおよびアルカリガラス領域70Cは、それぞれ、成膜プロセスによって形成され得る。この例における本体40Bは、無アルカリガラス領域70Bを有しているが、アルカリガラス領域は有していない。本体40Bは、導電層40Mに接触するアルカリガラス領域を有してもよい。
【0083】
図20の例において、無アルカリガラス領域72Aおよび無アルカリガラス領域72Cは、いずれも、板状である。そして、アルカリガラス領域70Aおよびアルカリガラス領域70Cは、それぞれ、無アルカリガラス領域72Aおよび無アルカリガラス領域72Cの所定の位置に設けられている。図20の左側にある白抜きの矢印は、正面壁40Fにおけるアルカリガラス領域70Aが、本体40Bの導電層40Mに接合されることを模式的に示している。同様に、図20の右側にある白抜きの矢印は、裏面壁40Rにおけるアルカリガラス領域70Cが、本体40Bの他の導電層40Mに接合されることを模式的に示している。これらの接合は、前述した陽極接合によって実現される。このようなキャップ40を製造するには、図12における第1プレート47のうち、第3プレート42の第1面44に対向する領域にアルカリガラス領域70Aを設ければよい。同様に、図12における第2プレート48のうち、第3プレート42の第2面46に対向する領域にはアルカリガラス領域70Cが設けられる。第3プレート42の第1面44および第2面46は、図12の左側の図からわかるように、XY面に沿って拡がる格子形状を有している。このため、アルカリガラス領域70A、70Cも、それぞれ、第1および第2プレート47、48上において、XY面に沿って拡がる格子形状を有していることが望ましい。
【0084】
このように陽極接合によってキャップ40を作製するには、陽極接合に用いられる金属層に接する部分にアルカリガラス領域が存在していればよく、その金属層の一方の側に位置するガラス部分の全体がアルカリガラスから形成されている必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示のキャップは、光透過部の平滑性に優れ、小型化に適しているため、レーザダイオードのパッケージ部品として広く利用され得る。本開示の光源装置は、光透過部の平滑性に優れ、小型化に適したキャップを備えているため、ヘッドマウントディスプレイなどの小型光源として好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0086】
10・・・レーザダイオード、12・・・レーザダイオードの出射端面、20・・・サブマウント、30・・・基板、32・・・基板の主面、40・・・キャップ、40F・・・正面壁、40B・・・本体、40R・・・裏面壁、100・・・光源装置
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21