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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080548
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】聴力検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/12 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
A61B5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193957
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼中 諒一
(72)【発明者】
【氏名】浅見 恵介
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038AA04
4C038AB03
(57)【要約】
【課題】検査者の誤認識や操作ミスを避け、聴力検査を正確に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】サブチャンネルダイアル32の最小出力音の位置M2のさらに隣に、マスキングノイズの提示が行われない状態となる無音の位置M3を設ける。そして、無音の位置M3にサブチャンネルダイアル32を合わせることで、完全にマスキングノイズが提示されない状態とすることができる。サブチャンネルダイアル32の最小出力音の位置M2の隣に、明示的に無音の位置M3(OFF)を設けることで、サブチャンネルダイアル32を最小に絞ることでマスキングノイズを完全に提示しない状態にすることができ、別のスイッチでマスキングノイズを無音に設定する手順を減らすことができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンネル及び第2チャンネルを用いて聴力検査に関する音を出力可能な聴力検査装置であって、
前記第1チャンネルの音量を調整可能な第1調整手段と、
前記第1調整手段とは別に設けられ、前記第2チャンネルの音量を調整可能であるとともに、前記第2チャンネルの音量を無音に設定可能な第2調整手段と、
を備える聴力検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の聴力検査装置において、
前記第2調整手段は、最大出力音の位置から最小出力音の位置までが順番に配置され、前記最小出力音の位置の隣に無音の位置が配置されたダイアルであり、前記ダイアルが前記無音の位置に合わされたことに応じて前記第2チャンネルの音量を無音に設定することを特徴とする聴力検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の聴力検査装置において、
前記第2調整手段は、押し込み操作が可能なダイアルであり、前記ダイアルの押し込み操作に応じて前記第2チャンネルの音量を無音に設定することを特徴とする聴力検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の聴力検査装置において、
前記第2調整手段は、スライド操作が可能なダイアルであり、前記ダイアルのスライド操作に応じて前記第2チャンネルの音量を無音に設定することを特徴とする聴力検査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の聴力検査装置において、
前記第1チャンネルを用いて出力される音は、聴力検査を受ける者の一方の耳に対して出力される検査音であり、
前記第2チャンネルを用いて出力される音は、聴力検査を受ける者の他方の耳に対して出力されるマスキングノイズであることを特徴とする聴力検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴力検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本聴覚医学会が発行する聴覚検査法では、JIS T 1201-1などの規格をみたし、かつ正しく校正された聴力検査装置(オージオメータ)を使用することが求められている。そして、この聴覚検査法では、最初にマスキングノイズを無音にした状態で聴力検査を実施することを求めているが、左耳と右耳の閾値レベルの差が両耳間移行減衰量に近い場合、聴力の悪い方の耳では非検査耳のマスキングを行った測定法が必要になる。
【0003】
聴力検査装置やマスキングに関する先行技術としては、例えば特許文献1や特許文献2などの技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-117545号公報
【特許文献2】特開2003-61938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の聴力検査装置では、サブチャンネルダイアル(マスキングダイアル)とマスキングスイッチ(マスキング機能のON/OFFを切り替えるスイッチ)が離れた場所にあるために、マスキングノイズを無音にしないまま聴力検査を実施してしまう場合がある。
【0006】
その際、サブチャンネルダイアルを最小値まで絞っている場合にも実際は非常に小さな音量のマスキングノイズが出力されている。難聴者はその小さな音量のマスキングノイズを聴き取れていない(知覚できていない)可能性もあるが、測定方法としては正確ではない。そして、このような誤認識や操作ミスがあると、聴力検査を正確に行うことができない可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、検査者の誤認識や操作ミスを避け、聴力検査を正確に行うことができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
解決手段1:本解決手段の聴力検査装置は、第1チャンネル及び第2チャンネルを用いて聴力検査に関する音を出力可能な聴力検査装置であって、前記第1チャンネルの音量を調整可能な第1調整手段と、前記第1調整手段とは別に設けられ、前記第2チャンネルの音量を調整可能であるとともに、前記第2チャンネルの音量を無音に設定可能な第2調整手段と、を備える聴力検査装置である。
【0010】
本解決手段によれば、第2調整手段に、第2チャンネルの音量を無音に設定する機能が備わっているため、第2チャンネル(第2調整手段)の操作だけで音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0011】
解決手段2:本解決手段の聴力検査装置は、上述したいずれかの解決手段において、前記第2調整手段は、最大出力音の位置から最小出力音の位置までが順番に配置され、前記最小出力音の位置の隣に無音の位置が配置されたダイアルであり、前記ダイアルが前記無音の位置に合わされたことに応じて前記第2チャンネルの音量を無音に設定することを特徴とする聴力検査装置である。
【0012】
本解決手段によれば、第2チャンネルの音量が無音であることを、検査者自身が第2調整手段を見て確認することができ、検査者の誤認識や操作ミスを避け、聴力検査を正確に行うことができる。また、本解決手段によれば、ダイアルを無音の位置に合わせるだけの簡単な操作で第2チャンネルの音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0013】
解決手段3:本解決手段の聴力検査装置は、上述したいずれかの解決手段において、前記第2調整手段は、押し込み操作が可能なダイアルであり、前記ダイアルの押し込み操作に応じて前記第2チャンネルの音量を無音に設定することを特徴とする聴力検査装置である。
【0014】
本解決手段によれば、ダイアルを押し込むだけの簡単な動作で第2チャンネルの音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0015】
解決手段4:本解決手段の聴力検査装置は、上述したいずれかの解決手段において、前記第2調整手段は、スライド操作が可能なダイアルであり、前記ダイアルのスライド操作に応じて前記第2チャンネルの音量を無音に設定することを特徴とする聴力検査装置である。
【0016】
本解決手段によれば、ダイアルをスライドさせるだけの簡単な動作で第2チャンネルの音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0017】
解決手段5:本解決手段の聴力検査装置は、上述したいずれかの解決手段において、前記第1チャンネルを用いて出力される音は、聴力検査を受ける者の一方の耳に対して出力される検査音であり、前記第2チャンネルを用いて出力される音は、聴力検査を受ける者の他方の耳に対して出力されるマスキングノイズであることを特徴とする聴力検査装置である。
【0018】
本解決手段によれば、第1チャンネルを用いて検査音を出力し、第2チャンネルを用いてマスキングノイズを出力するため、検査の状況に応じてマスキングノイズをしっかりと無音にすることができ、聴力検査を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検査者の誤認識や操作ミスを避け、聴力検査を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の聴力検査装置100を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の操作部30を拡大して示す平面図である。
図3】第1実施形態のサブチャンネルダイアル32を拡大して示す図である。
図4】第1実施形態の聴力検査装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図5】両耳間移行減衰量の例を示す表である。
図6】第2実施形態のサブチャンネルダイアル32-2を示す図である。
図7】第3実施形態のサブチャンネルダイアル32-3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の聴力検査装置100を示す斜視図である。図2は、第1実施形態の操作部30を拡大して示す平面図である。図3は、第1実施形態のサブチャンネルダイアル32を拡大して示す図である。
図1に示すように、第1実施形態の聴力検査装置100は、液晶ディスプレイ10と、内蔵プリンタ20と、操作部30とを備えている。聴力検査装置100は、メインチャンネル(第1チャンネル)及びサブチャンネル(第2チャンネル)を用いて聴力検査に関する音を出力可能な装置である。
【0022】
聴力検査装置100は、メインチャンネル及びサブチャンネルといった2つのチャンネルを同時に用いて聴力検査を行うこともでき、メインチャンネルのみを用いて聴力検査を行うこともできる。聴力検査装置100には、図示しない受話器を接続して聴力検査を行うことになるが、例えば両耳用の気導受話器の場合、受話器の左耳側にメインチャンネルの音を出力し、受話器の右耳側にサブチャンネルの音を出力することができる。また、これとは逆に、受話器の左耳側にサブチャンネルの音を出力し、受話器の右耳側にメインチャンネルの音を出力することもできる。あるいは片耳用の骨導受話器と片耳用のマスキング用受話器を用いる場合、メインチャンネルの検査音を骨導受話器に出力し、サブチャンネルのマスキングノイズをマスキング用受話器に出力することができる。この場合の骨導受話器の装用状態としては、検査方法に応じて骨導受話器の骨導振動子が片耳の乳突部に接触するように装用する場合と、前額正中部に接触するように装用する場合とがある。さらに音場検査の場合には、聴力検査装置100には、図示しないスピーカーを接続して聴力検査を行う。この様態では、メインチャンネルの検査音をスピーカーに出力し、サブチャンネルのマスキングノイズを片耳用のマスキング用受話器に出力することができる。
【0023】
液晶ディスプレイ10は、聴力検査に関する情報を表示する装置である。内蔵プリンタ20は、聴力検査に関する情報を紙などに印刷する装置である。操作部30は、聴力検査装置100を操作する部分である。
【0024】
図2に示すように、操作部30は、メインチャンネルダイアル31(第1調整手段)と、サブチャンネルダイアル32(第2調整手段)と、マスキングスイッチ33と、メインインタラプタ34と、サブインタラプタ35とを備えている。メインチャンネルダイアル31とサブチャンネルダイアル32とは、別のダイアルとして設けられている。なお、操作部30は、その他の部材(ボタン、ダイアル、LEDなど)も備えているが、詳細な説明は省略する。なお、メインインタラプタ34は、操作性を向上させるために、メインチャンネルダイアル31の右下の位置と、サブチャンネルダイアル32の右下の位置との2箇所に設けられている。
【0025】
メインチャンネルダイアル31は、操作部30の左下側に配置された円盤状の回転体であり、メインチャンネルの音量(検査音の出力レベル)を調整可能である。
メインチャンネルダイアル31の上部には、第1音量指定部31aが形成されており、第1音量指定部31aの上下方向に延びた中心線に、メインチャンネルダイアル31の目盛を合わせることにより、メインチャンネルの音量を調整することができる。
【0026】
メインチャンネルダイアル31の目盛は、-20~110dBHLの範囲に対応している。そして、この範囲内において、5dBHLごとに太線及び数字が表示されており、1dBHLごとに細線が表示されている。なお、「dBHL」に関しては、基準となる聴力レベルに対してどの程度聴力レベルが大きいか小さいかを示す単位であるため、「0dBHL」や「-20dBHL」であっても当該聴力レベルに対応する検査音は出力される。
【0027】
図2の例では、第1音量指定部31aの上下方向に延びた中心線に、メインチャンネルダイアル31の-20dBHLの目盛が合わされているため、メインチャンネルの音量は、-20dBHLに対応した検査音に設定される。なお、図中の「聴力レベル」の単位は、「HL」を省略して「dB」だけを表示している(サブチャンネルについても同様)。
【0028】
サブチャンネルダイアル32は、操作部30の右下側に配置された円盤状の回転体であり、サブチャンネルの音量(マスキングレベル)を調整可能であるとともに、サブチャンネルの音量を無音(音の提示をOFF、非提示、消音)に設定可能である。ここで、音量を無音にするとは、対応するスイッチやダイアルをオフに設定することであり、音量を提示するとは、対応するスイッチやダイアルをオンに設定することである。
サブチャンネルダイアル32の上部には、第2音量指定部32aが形成されており、第2音量指定部32aの上下方向に延びた中心線に、サブチャンネルダイアル32の目盛を合わせることにより、サブチャンネルの音量を調整することができる。
【0029】
サブチャンネルダイアル32の目盛は、-10~110dBHLの範囲に対応している。そして、この範囲内において、5dBHLごとに数字が表示されている。また、-10dBHLの目盛の右隣には無音の位置(OFF位置)が設定されている。なお、この点の詳細については、後述する。
【0030】
図2の例では、第2音量指定部32aの上下方向に延びた中心線に、サブチャンネルダイアル32の-10dBHLの数字が合わされているため、サブチャンネルの音量は、-10dBHLに対応したマスキングレベルに設定される。
【0031】
マスキングスイッチ33は、サブチャンネルのマスキングノイズの提示と非提示とを切り替えるスイッチである。マスキングノイズが非提示の状態でマスキングスイッチ33を1回押下すると、マスキングノイズが提示される状態となる。また、マスキングノイズが提示されている状態でマスキングスイッチ33を1回押下すると、マスキングノイズが非提示の状態となる。
【0032】
メインインタラプタ34は、メインチャンネルの検査音をON又はOFFするスイッチである。検査音が提示されている状態でメインインタラプタ34を押下すると、押下している間はメインチャンネルダイアル31の位置に関わらず検査音が非提示の状態となる。あるいは機器の設定によっては、検査音が非提示の状態でメインインタラプタ34を押下すると、押下している間はメインチャンネルダイアル31の位置に応じた検査音が提示されるようにすることができる場合もある。
【0033】
サブインタラプタ35は、サブチャンネルのマスキングノイズをON又はOFFするスイッチである。マスキングノイズが提示されている状態でサブインタラプタ35を押下すると、押下している間はサブチャンネルダイアル32の位置に関わらずマスキングノイズが非提示の状態となる。あるいは機器の設定によっては、マスキングノイズが非提示の状態でサブインタラプタ35を押下すると、押下している間はサブチャンネルダイアル32の位置に応じたマスキングノイズが提示されるようにすることができる場合もある。
【0034】
〔無音の位置の詳細〕
図3に示すように、サブチャンネルダイアル32は、最大出力音の位置M1(110dBHL)から最小出力音の位置M2(-10dBHL)までが、5dBHL刻みで順番に配置されており、最小出力音の位置M2の右隣の位置に無音の位置M3(OFF)が配置されたダイアルである。
【0035】
すなわち、第1実施形態の聴力検査装置100のようにサブチャンネルダイアル32の位置により出力される音量が定まっている場合には、最小出力音の位置M2(-10dBHL)の隣にさらにもう1段階目盛を設け、その位置を無音の位置M3(マスキングノイズがOFFとなる位置)としている。
【0036】
サブチャンネルダイアル32は、右回転させ続けると、最大出力音の位置M1(110dBHL)が第2音量指定部32aに対応する位置まで移動したところで回転が停止するようになっている。また、サブチャンネルダイアル32は、左回転させ続けると、無音の位置M3(OFF)が第2音量指定部32aに対応する位置まで移動したところで回転が停止するようになっている。なお、メインチャンネルダイアル31についても同様に、最大出力音の位置と最小出力音の位置とで回転が停止する機構を採用している。
【0037】
図4は、第1実施形態の聴力検査装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
聴力検査装置100は、液晶ディスプレイ10と、内蔵プリンタ20と、操作部30と、入出力部40と、制御部50とを備えている。
【0038】
液晶ディスプレイ10及び内蔵プリンタ20は、上述した通りの装置である。
操作部30は、メインチャンネルダイアル31と、サブチャンネルダイアル32と、マスキングスイッチ33と、メインインタラプタ34と、サブインタラプタ35と、その他の部材36とを備えている。その他の部材36は、メインチャンネルダイアル31やサブチャンネルダイアル32、マスキングスイッチ33、メインインタラプタ34、サブインタラプタ35以外のボタン、ダイアル、LEDなどである。その他の部材36には、例えば起動/終了ボタン、メインチャンネルレベル表示装置、サブチャンネルレベル表示装置、プリントボタン、キャンセルボタン、各種切り替えボタン、各種環境設定ボタン、各種環境設定ダイアル、各種LEDなどが含まれている。
【0039】
メインチャンネルダイアル31、サブチャンネルダイアル32、マスキングスイッチ33、メインインタラプタ34、サブインタラプタ35及びその他の部材36に含まれるダイアルやボタンは、操作状況に応じて操作情報(インタラプタの検知情報など)を制御部50に送信する。
【0040】
入出力部40は、複数の端子を備えており、それぞれの端子に対応した受話器などを接続することができる。例えば入出力部40は、受話器に対してメインチャンネルやサブチャンネルに関する音の信号を出力する。また、入出力部40の端子には、聴力検査の際に被検者が操作する操作部材(応答システム、応答ボタン)を接続することができ、操作部材の操作情報は制御部50に送信される。
【0041】
制御部50は、液晶ディスプレイ10、内蔵プリンタ20、操作部30及び入出力部40に接続されており、これらの各装置や各部を制御する。
具体的には、制御部50は、操作部30から操作情報を受け付け、操作情報に基づいて液晶ディスプレイ10に必要な情報を表示するように指示をしたり、内蔵プリンタ20に必要な情報を印刷するように指示をしたり、操作部30にLEDを点灯・消灯させるように指示をしたり、入出力部40に必要な音のデータを出力させるように指示をしたりする。
【0042】
また、制御部50は、メインチャンネルを用いて出力される音と、サブチャンネルを用いて出力される音を制御する。メインチャンネルを用いて出力される音は、聴力検査を受ける者の一方の耳に対して出力される検査音とすることができる。サブチャンネルを用いて出力される音は、聴力検査を受ける者の他方の耳に対して出力されるマスキングノイズとすることができる。
【0043】
制御部50は、メインチャンネルダイアル31が各聴力レベルの位置に合わされたことに応じて、メインチャンネルの音量を指定された音に設定する。また、制御部50は、サブチャンネルダイアル32が各聴力レベルの位置に合わされたことに応じて、サブチャンネルのマスキングレベルを指定された音に設定する。さらに、制御部50は、サブチャンネルダイアル32が無音の位置に合わされたことに応じて、サブチャンネルのマスキングレベルを無音に設定する(第2調整手段)。このように、本実施形態では、聴力検査装置100のサブチャンネルダイアル32に、マスキングノイズを無音に設定する機能を持たせている。
また、制御部50は、マスキングスイッチ33から操作情報に応じてマスキングノイズの提示状態と非提示状態とを切り替えることができる。
【0044】
図5は、両耳間移行減衰量の例を示す表である。図5(A)は、気導受話器の両耳間移行減衰量を示しており、図5(B)は、骨導受話器(乳突部装着時)の両耳間移行減衰量を示している。なお、本表は、書籍「聴覚検査の実際 改訂4版」より引用している。
【0045】
例えば、気導純音聴力測定において、被検者の両耳の閾値反応が気導受話器の両耳間移行減衰量に近い聴力レベルの差で起こる場合、聴力の悪い方の耳では非検査耳のマスキングを行った測定法が必要になる。すなわち、被検者の両耳の聴力レベルの差が図5に示す両耳間移行減衰量以上の値である場合には、マスキングを行いながら聴力検査を行う必要がある。
両耳間移行減衰量とは、一方の耳に与えた音が反対側の内耳に到達する際に減衰する音圧であり、例えば図5に示す値と言われているがそれが絶対的な値ではなく、個人個人によってまた周波数ごとに減衰量は異なる。
【0046】
より具体的には、例えば左耳の1kHzの気導聴力閾値が30dBHLであり、右耳の1kHzの気導聴力閾値が95dBHLである被検者の場合、左耳よりも右耳の方が、聴力が悪いということになる。この場合、被検者の両耳の聴力レベルの差は、95dBHL(右耳)-30dBHL(左耳)=65dBとなる。そして、この聴力レベルの差の「65dB」という数値は、図5(A)の1kHz(1000Hz)の気導受話器の両耳間移行減衰量の「60dB」以上の値であるため、右耳の聴力検査を行う場合には、左耳にマスキングノイズを出力しつつ、右耳に検査音を出力して聴力検査を行う。
また、このような状況とは別に、骨導純音聴力測定において、片耳ごとの骨導聴力(閾値)レベルを測定するために、非検査耳をマスキングする場合などもある。
【0047】
〔第1実施形態の聴力検査装置と既存の聴力検査装置との比較〕
第1実施形態の聴力検査装置100は、サブチャンネルダイアル32の位置によりマスキングレベルが定まる。このため、聴力測定時にマスキングを行う場合には、先ず聴力検査装置100のマスキングスイッチ33を切り替えてマスキングノイズを提示できる状態にする。
【0048】
次に、提示する検査音レベルと被検者の聴力レベルなどを考慮してマスキングレベルを計算し、サブチャンネルダイアル32を回転させてそのレベルに設定する。必要な場合には、周波数ごとに適切なマスキングノイズのレベルに設定して検査を行う。
ここで、既存の聴力検査装置では、検査が終わると、サブチャンネルダイアルを最小の位置にまで回転させて音量を下げ、さらにマスキングスイッチを切り替えてマスキングノイズを提示しない状態にする。
ただし、既存の聴力検査装置では、サブチャンネルダイアルを最小の位置に合わせただけの状態だと、完全にマスキングノイズが提示されない状態にはなっておらず、とても小さいが例えば-10dBHLのマスキングノイズが提示され続けている状態のままとなる。
【0049】
一方、本実施形態の聴力検査装置100では、サブチャンネルダイアル32の最小出力音の位置M2のさらに隣に、マスキングノイズの提示が行われない状態となる無音の位置M3を設けているため、無音の位置M3にサブチャンネルダイアル32を合わせることで、完全にマスキングノイズが提示されない状態とすることができる。
【0050】
特に、本実施形態の場合には、サブチャンネルダイアル32の最小出力音の位置M2の隣に、明示的に無音の位置M3(OFF)を設けることで、サブチャンネルダイアル32を最小に絞ることでマスキングノイズを完全に提示しない状態にすることができ、別のスイッチ(例えばマスキングスイッチ33)でマスキングノイズを無音に設定する手順を減らすことができる。
【0051】
また、検査者自身が、マスキングノイズが完全に無音であることを視認できるようになり、最小出力音の位置M2である-10dBHL(機種によっては0dBHLなどの場合もある)の位置でマスキングノイズが無音になっているという誤認識を避けることができ、より正確な聴力検査の結果を提供できるようになる。
【0052】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1実施形態によれば、サブチャンネルダイアル32の操作のみでマスキングノイズを無音にしたりマスキングノイズの音量を調整したりすることができるようになる。言い換えると、片手の操作でマスキングノイズのON/OFFの切り替えとダイアル操作による音量調整とを両方を行うことが可能となり、聴力検査装置100の操作性を向上させることができる。
【0053】
(2)第1実施形態によれば、サブチャンネルダイアル32に、サブチャンネルの音量を無音に設定する機能が備わっているため、サブチャンネルダイアル32の操作だけで音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0054】
(3)第1実施形態によれば、サブチャンネルの音量が無音であることを、検査者自身がサブチャンネルダイアル32を見て確認することができ、検査者の誤認識や操作ミスを避け、聴力検査を正確に行うことができる。また、第1実施形態によれば、サブチャンネルダイアル32を無音の位置に合わせるだけの簡単な操作でサブチャンネルの音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0055】
(4)第1実施形態によれば、メインチャンネルを用いて検査音を出力し、サブチャンネルを用いてマスキングノイズを出力するため、検査の状況に応じてマスキングノイズをしっかりと無音にすることができ、聴力検査を正確に行うことができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同様の内容については説明を省略する。
図6は、第2実施形態のサブチャンネルダイアル32-2を示す図である。
第1実施形態と第2実施形態との異なる点は、主に、サブチャンネルダイアル32-2(第2調整手段)が、押し込み操作が可能な(プッシュスイッチ機能を備える)ダイアルに変更されている点である。
【0057】
図6(A)に示すように、サブチャンネルダイアル32-2には、例えば無限回転式のロータリーエンコーダーを採用することができる。この場合は、エンコーダーの軸がプッシュスイッチ部になっており、サブチャンネルダイアル32-2を押し込むことでサブチャンネルのマスキングノイズの提示あるいは非提示を設定する。
制御部は、サブチャンネルダイアル32-2の押し込み操作に応じてサブチャンネルダイアル32の位置に関わらずサブチャンネルの音量を無音に設定する。あるいは無音からサブチャンネルダイアル32の位置に応じたマスキングノイズを出力する。
【0058】
プッシュスイッチ部は、オルタネート(スイッチのボタンを押す度に「ON」状態と「OFF」状態とが入れ替わる)型でも、モーメンタリ(押している間だけ「ON」又は「OFF」になる)型でもよい。モーメンタリ型の場合には、サブインタラプタ35の押下と同じ機能となる。
【0059】
サブチャンネルダイアル32-2に対して無限回転式のロータリーエンコーダーを採用する場合、サブチャンネルダイアル32-2を右に回転させると音量が大きくなり、左に回転させると音量が小さくなる。このため、図6(B)に示すように、サブチャンネルダイアル32-2には、第1実施形態のような目盛を形成せず、音量の大小方向を示す矢印の情報を表示することができる。音量は、例えば液晶ディスプレイの音量表示や操作部のメータなどを見ながら調整することができる。
なお、第2実施形態に関しては、第1実施形態と同じようにサブチャンネルダイアル32の位置によりマスキングレベルが定まっているダイアルにも適用可能である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0060】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、サブチャンネルダイアル32を押し込むだけの簡単な動作でサブチャンネルの音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができるという効果がある。
また、第2実施形態によれば、第1実施形態のように段階的に音を小さくして最終的に無音にするのではなく、サブチャンネルダイアル32を押し込むことにより、任意の音量から直接無音に移行させることができるという効果がある。
【0061】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同様の内容については説明を省略する。
図7は、第3実施形態のサブチャンネルダイアル32-3を示す図である。
第1実施形態と第3実施形態との異なる点は、主に、サブチャンネルダイアル32-3(第2調整手段)が、スライド操作が可能な(スライドスイッチ機能を備える)ダイアルに変更されている点である。
【0062】
図7(A)に示すように、サブチャンネルダイアル32-3は、例えばエンコーダーの軸がスライドスイッチ部になっており、スライドスイッチ部の位置によりサブチャンネルの検査音の提示あるいは非提示を設定する。
制御部は、サブチャンネルダイアル32-3自体を、例えば下にずらすことでサブチャンネルダイアル32の位置に関わらずサブチャンネルの音量を無音に設定する。あるいは無音からサブチャンネルダイアル32の位置に応じたマスキングノイズを出力する。
スライドスイッチ部は、オルタネート型でもモーメンタリ型でもよい。モーメンタリ型の場合には、サブインタラプタ35の押下と同じ機能となる。
【0063】
また、図7(B)に示すように、サブチャンネルダイアル32-3は、左右にスライド可能なものであってもよい。さらに、サブチャンネルダイアル32-3は、斜めにスライド可能なものであってもよい。
第3実施形態の構成は、第1実施形態と同じようにダイアルの位置によりマスキングレベルが定まっている場合にも、第2実施形態と同じように無限回転式のロータリーエンコーダーでマスキングレベルを変更する場合にも適用可能である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0064】
第3実施形態のサブチャンネルダイアル32-3は、スライド操作によってサブチャンネルの音量を無音に設定することができるので、第1実施形態のような無音の位置M3(OFF)を設けていない。ただし、第1実施形態のような無音の位置M3を設けることにより、スライド操作でも回転操作でもマスキングノイズの音量を無音に設定できるようにしてもよい。
【0065】
このように、第3実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、サブチャンネルダイアル32をスライドさせるだけの簡単な動作で第2チャンネルの音量を無音に設定することができ、操作性を向上させることができるという効果がある。
また、第3実施形態によれば、第1実施形態のように段階的に音を小さくして最終的に無音にするのではなく、サブチャンネルダイアル32をスライドさせることにより、任意の音量から直接無音に移行させることができるという効果がある。
【0066】
本発明は、上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
(1)第1調整手段及び第2調整手段は、ダイアルの例で説明したが、スライド式のつまみを有する機構や、プラスボタン及びマイナスボタンを有する機構であってもよい。
(2)エンコーダー(無限回転機構)を使用する実施形態の場合には、出力音圧は、聴力検査装置の画面上の表示を確認しながらエンコーダーを動かして設定することができる。そして、この場合には、聴力検査装置の画面上の音圧表示の一番小さい出力音圧からさらに低い位置に無音の位置(OFF/無音の設定となる位置)を設けることができる。
【0067】
(3)第1チャンネルと第2チャンネルとは入れ替えることもできる。この場合、例えば、第1チャンネルをサブチャンネルとし、第2チャンネルをメインチャンネルとすることができる。
(4)第1チャンネルを用いて出力される音は、検査音以外の音であってもよい。
(5)第2チャンネルを用いて出力される音は、マスキングノイズ以外の音であってもよい。
【0068】
(6)上述した各実施形態では、サブチャンネルダイアルでマスキングノイズを無音に設定することができるので、マスキングスイッチ33は、設けなくてもよい。マスキングスイッチ33を設けない場合、サブチャンネルダイアル32は、マスキングノイズのON/OFFの機能とマスキングノイズの音量調整の機能とを兼用する。ただし、マスキングスイッチ33を残しつつ、サブチャンネルダイアル32とマスキングスイッチ33との両方にマスキングノイズを無音にする機能を持たせることで、無音設定作業の幅が広がり、使い勝手を向上させることができる。
【符号の説明】
【0069】
10 液晶ディスプレイ
20 内蔵プリンタ
30 操作部
31 メインチャンネルダイアル
31a 第1音量指定部
32 サブチャンネルダイアル
32-2 サブチャンネルダイアル
32-3 サブチャンネルダイアル
32a 第2音量指定部
33 マスキングスイッチ
34 メインインタラプタ
35 サブインタラプタ
36 その他の部材
40 入出力部
50 制御部
100 聴力検査装置
M1 最大出力音の位置
M2 最小出力音の位置
M3 無音の位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7