(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080568
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】スタッドタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/16 20060101AFI20230602BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20230602BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B60C11/16 Z
B60C11/13 B
B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193989
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC15
3D131BC17
3D131BC18
3D131BC31
3D131EB14V
3D131EB14X
3D131EB14Z
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB24Z
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EC02V
3D131EC16V
3D131EC16X
3D131EC16Z
3D131ED03V
3D131ED03X
3D131ED03Z
(57)【要約】
【課題】凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能の低下を抑制しつつ、スタッドタイヤに横力が掛かったときに生じ得るスタッド不良の発生を抑制することができるスタッドタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド面10には、周方向溝12の少なくとも一部により形成され、タイヤの軸方向において当該周方向溝12に隣接するホール付きブロック16hが形成されている。ホール付きブロック16hには、スタッドピンを装着するためのホール18が設けられている。ホール付きブロック16hに隣接する周方向溝12は、ホール18の側方位置(軸方向側の側方位置)において、周方向溝12の残余の部分よりも溝深さが浅くなった浅溝部分20を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面に設けられた、前記タイヤの周方向に伸びる周方向溝と、
前記周方向溝の少なくとも一部により確定され、前記タイヤの軸方向において前記周方向溝に隣接し、スタッドピンを装着するためのホールが設けられたホール付きブロックと、
を備え、
前記周方向溝は、前記ホールの側方位置において、前記周方向溝の残余の部分よりも溝深さが浅くなった浅溝部分を有する、
ことを特徴とするスタッドタイヤ。
【請求項2】
前記浅溝部分は、前記ホール付きブロックの前記タイヤの軸方向の両側に隣接する2つの前記周方向溝にそれぞれ設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のスタッドタイヤ。
【請求項3】
前記浅溝部分の溝深さは、前記ホールの深さよりも浅い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【請求項4】
前記ホールは、筒状部分と、前記筒状部分よりもタイヤ径方向内側に設けられた、その穴径が前記筒状部分よりも大きい幅広部分を有し、
前記浅溝部分の溝深さは、前記幅広部分のタイヤ径方向外側端までの深さよりも浅い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【請求項5】
前記スタッドピンは、前記ホールに装着された装着状態において前記ホール内に挿入される柱状のシャンクと、前記装着状態において前記シャンクよりもタイヤ径方向外側に位置し、柱状であって前記シャンクよりも径が大きいボディと、を含んで構成され、
前記浅溝部分の溝深さは、前記ホールに装着された状態における前記スタッドピンの前記ボディのタイヤ径方向内側端の深さよりも浅い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【請求項6】
前記浅溝部分の溝深さは、前記ホールに近づく程浅くなっている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【請求項7】
前記浅溝部分は、前記ホールの側方位置から前記周方向溝の伸長方向にずれた位置まで設けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【請求項8】
前記周方向溝を挟んで前記タイヤの軸方向に並ぶ第1ホール付きブロック及び第2ホール付きブロックを備え、
前記第1ホール付きブロックが有する第1ホールの前記タイヤの周方向における位置と、前記第2ホール付きブロックが有する第2ホールの前記タイヤの周方向における位置とが互いに異なり、
前記周方向溝のうち、前記第1ホールの側方位置から前記第2ホールの側方位置までの部分全体が前記浅溝部分となっている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【請求項9】
前記周方向溝の伸長方向における前記浅溝部分の長さは、前記ホールに近づく程長くなっている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスタッドタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能を向上させるために、タイヤのトレッド面にスタッドピン(スパイクピン)を装着したスタッドタイヤが知られている。スタッドタイヤは、走行によって、スタッドピンが倒れこんだままとなったり抜けたりするというスタッド不良が生じる問題があった。そこで、従来、スタッド不良の発生を抑制する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、タイヤ周方向に伸びる周方向溝(主溝)と、タイヤ軸方向に伸びる軸方向溝(横溝)と、スタッドピンを装着可能なホールが形成されたホール付きブロックを含むスタッドタイヤであって、ホール付きブロックが、周方向溝の幅を減じるように周方向溝内に突出してホールの周りを補強する補強部を備えるスタッドタイヤが開示されている。また、特許文献2には、軸方向溝を分断するように、タイヤのブロックとブロックを接続するブリッジを設け、当該ブリッジにスタッドピンを装着するためのホールを設けたスタッドタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4677027号公報
【特許文献2】欧州特許第2217456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1や2のような構造により、スタッドタイヤにおけるスタッド不良の発生を抑制することができる。しかしながら、特許文献1に開示された構造では、周方向溝の幅が減じられており、また、特許文献2に開示された構造では、軸方向溝が分断されている。したがって、いずれの構造においても、スタッドタイヤに設けられた溝成分が大きく減じられており、その分、凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能が大きく低下してしまうと考えられる。
【0006】
本発明の目的は、凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能の低下を抑制しつつ、スタッドタイヤに横力が掛かったときに生じ得るスタッド不良の発生を抑制することができるスタッドタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤのトレッド面に設けられた、前記タイヤの周方向に伸びる周方向溝と、前記周方向溝の少なくとも一部により確定され、前記タイヤの軸方向において前記周方向溝に隣接し、スタッドピンを装着するためのホールが設けられたホール付きブロックと、を備え、前記周方向溝は、前記ホールの側方位置において、前記周方向溝の残余の部分よりも溝深さが浅くなった浅溝部分を有する、ことを特徴とするスタッドタイヤである。
【0008】
上記構成によれば、ホール付きブロックの軸方向に隣接する周方向溝のうち、ホールの軸方向側方において浅溝部分が設けられることで、当該周方向溝に浅溝部分を設けない場合に比して、ホールの軸方向側方におけるタイヤの中実部分が増え、ホールがより補強される。したがって、スタッドタイヤに横力が掛かったときにおけるスタッドピンの軸方向への倒れ込みやホールの変形が抑制されて、ホールの内側面の応力や摩耗が抑制される。これにより、スタッド不良の発生が抑制される。また、上記構成によれば、タイヤの周方向溝の幅も減じられないし、軸方向溝が分断されることもない。すなわち、少なくとも特許文献1及び2に比して、凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能の低下を抑制しつつ、スタッドタイヤに横力が掛かったときに生じ得るスタッド不良の発生を抑制することができるスタッドタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るスタッドタイヤのトレッド面を示す図である。
【
図3】浅溝部分の第1の変形例を示す、
図1のA-A方向から見た断面図である。
【
図4】浅溝部分の第2の変形例を示す、
図1のA-A方向から見た断面図である。
【
図5】本実施形態に係るスタッドタイヤに横力が掛かったときの様子を示す図である。
【
図6】歪みエネルギーのシミュレーションで用いるタイヤモデルの要素の層を示す図である。
【
図7】周方向溝に浅溝部分を設けなかった場合と設けた場合とにおける、各層に含まれる各要素の歪みエネルギーの平均値の違いを示すグラフである。
【
図8】第1の変形例に係るスタッドタイヤのトレッド面を示す図である。
【
図9】第2の変形例に係るスタッドタイヤのトレッド面を示す図である。
【
図10】第3の変形例に係るスタッドタイヤのトレッド面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係るスタッドタイヤのトレッド面10を示す図である。トレッド面10には、タイヤの周方向に伸びる周方向溝12、及び、タイヤの軸方向に伸びる軸方向溝14が設けられている。周方向溝12は、雨などの水を排水する排水機能を発揮する。軸方向溝14は、路面をグリップする機能、及び、周方向溝12の排水機能を補助する機能を発揮する。本実施形態では、トレッド面10には複数の(
図1の例では4本)周方向溝12が設けられ、タイヤの全周に亘って複数の軸方向溝14が設けられている。
【0012】
トレッド面10には、周方向溝12の少なくとも一部、及び、軸方向溝14の少なくとも一部によって複数のブロック16が形成されている。軸方向に沿って見ると、各ブロック16は周方向溝12に隣接して形成されている。本実施形態に係るタイヤはスタッドタイヤであるため、複数のブロック16のうちのいくつかのブロック16には、スタッドピンを装着するためのホール18が設けられている。本明細書においては、ホール18が設けられたブロック16のことをホール付きブロック16hと呼ぶ。ホール18及びスタッドピンの形状の詳細については後述する。
【0013】
ホール付きブロック16hに隣接する周方向溝12は、ホール18の側方位置(軸方向側の側方位置)において、周方向溝12の残余の部分よりも溝深さが浅くなった浅溝部分20を有している。本実施形態においては、各ブロック16は軸方向に伸長した形状を有しているため、ホール付きブロック16hの軸方向の両側に周方向溝12がある場合でも、ホール18から近い方の周方向溝12に浅溝部分20が設けられている。しかしながら、ホール付きブロック16hの軸方向の両側に隣接する2つの周方向溝12にそれぞれ浅溝部分20が設けられてもよい。なお、ホール18の側方位置とは、平面視においてホール18内の任意の位置から軸方向へ向かった先の位置を意味する。以下、
図2~4を参照しつつ、浅溝部分20の詳細について説明する。
【0014】
図2は、
図1のA-A方向から見た断面図である。具体的には、
図2には、ホール付きブロック16hと、軸方向において当該ホール付きブロック16hに隣接する周方向溝12のうちの浅溝部分20の断面図が示されている。
図2においては、周方向溝12のうちの浅溝部分20以外の部分である残余の部分の底は破線で示されており、周方向溝12の残余の部分に比して、浅溝部分20の溝深さDGが浅くなっている(換言すれば底が嵩上げされている)ことが示されている。なお、
図2においては、ホール18にスタッドピン22が装着(本実施形態では圧入)された様子が示されている。
【0015】
ここで、ホール18及びスタッドピン22の形状について説明する。本実施形態では、ホール18は、平面視で円形となっている。ホール18は、円筒形である筒状部分18aと、筒状部分18aよりもタイヤ径方向内側に設けられた、その穴径が筒状部分18aよりも大きい幅広部分18bを有している。スタッドピン22は、ホール18に装着された装着状態において最もタイヤ径方向内側に位置し、径が最大となっている台座22aと、装着状態において台座22aからタイヤ径方向外側に伸びる柱状のシャンク22bと、装着状態においてシャンク22bよりもタイヤ径方向外側に位置し、柱状であってシャンク22bよりも径が大きいボディ22cとを含んで構成される。
【0016】
装着状態において、スタッドピン22の台座22aが、ホール18の幅広部分18bに入り込むようになっている。これにより、スタッドピン22のホール18からの脱落が抑制される。また、装着状態において、スタッドピン22のシャンク22b及びボディ22cは筒状部分18a内に挿入される。筒状部分18aの径は、自然状態においてシャンク22bの径よりもやや小さくなっており、シャンク22b及びボディ22cが筒状部分18aに挿入(圧入)されることで、筒状部分18aは、タイヤの弾性力によってシャンク22b及びボディ22cの形状に沿って変形する。当該弾性力により、筒状部分18aは、シャンク22b及びボディ22cに対して側方から押さえる力を加え、これによりスタッドピン22が支持される。
【0017】
なお、本実施形態におけるスタッドタイヤに装着されるスタッドピン22は、当該スタッドタイヤ専用のスタッドピンである。しかし、本実施形態におけるスタッドタイヤには、汎用のスタッドピンが装着可能となっていてもよい。
【0018】
浅溝部分20の溝深さDGは、ホール18の深さ(詳しくは幅広部分18bの底までの深さ)DH1に応じた深さであるとよい。詳しくは、浅溝部分20の溝深さDGは、ホール18の深さDH1よりも浅いとよい。また、浅溝部分20の溝深さDGは、幅広部分18bのタイヤ径方向外側端までの深さDH2よりも浅いとよい。
【0019】
図3は、浅溝部分20の第1の変形例を示す、
図1のA-A方向から見た断面図である。
図3に示すように、浅溝部分20の溝深さDGは、装着状態におけるスタッドピン22のボディ22cのタイヤ径方向内側端の深さDH3よりも浅いとさらによい。
【0020】
詳しくは後述するが、浅溝部分20の溝深さDGが浅くなる程、ホール18の軸方向側方におけるタイヤの中実部分(ゴム部分)が増え、ホール18がより補強されることになる。したがって、浅溝部分20の深さが浅くなる程、走行によりスタッドピンが倒れこんだままとなったり抜けたりするというスタッド不良の発生をより抑制することができる。一方、浅溝部分20の深さが浅くなる程、周方向溝12の本来の機能である排水機能の性能が低下する場合がある。したがって、浅溝部分20の深さは、スタッド不良の抑制力と、周方向溝12の本来の機能の性能とを両方考慮して決定されるとよい。
【0021】
図4は、浅溝部分20の第2の変形例を示す、
図1のA-A方向から見た断面図である。
図4に示すように、浅溝部分20の溝深さは、ホール18に近づく程浅くなっているとよい。
図4に示す変形例においては、浅溝部分20の底面20aは斜面となっており、浅溝部分20の溝深さが、ホール18に近づく程、徐々に浅くなっている。なお、当該変形例において、底面20aが斜面でなくてもよく、浅溝部分20の溝深さが、ホール18に近づく程、段階的に浅くなっていてもよい。
【0022】
以下、
図5~
図7を参照しつつ、浅溝部分20の効果について説明する。
図5は、本実施形態に係るスタッドタイヤに横力が掛かったときの様子を示す図である。
図5は、本実施形態に係るスタッドタイヤの路面Rへの接地面近傍の断面を示す図である。具体的には、本実施形態に係るスタッドタイヤが紙面奥側に向かって進行している場合において、左側への横力が掛かったときの状態が示されている。
【0023】
図5に示されるように、スタッドタイヤに横力が掛かったとき、スタッドピン22に力が加わり、スタッドピン22のタイヤ径方向内側の端部が横力の方向に向かって倒れ込む。これに伴い、スタッドピン22を支持しているホール18も変形することで、ホール18の内側面において応力や摩耗が生じ得る。当該応力や摩耗がスタッド不良を生じさせる要因となる。しかしながら、本実施形態によれば、ホール18の軸方向側方に浅溝部分20が設けられることで、ホール18の軸方向側方におけるタイヤの中実部分が増え、ホール18がより補強される。したがって、スタッドピン22の倒れ込みやホール18の変形が抑制されて、ホール18の内側面の応力や摩耗が抑制される。特に、
図5に示すように、スタッドタイヤに左側への横力が掛かったときは、ホール18の右側に設けられた浅溝部分20rにより、スタッドピン22の倒れ込みやホール18の変形が抑制される。これにより、スタッド不良の発生が抑制される。
【0024】
また、スタッドタイヤに右側への横力が掛かったときは、ホール18の左側に設けられた浅溝部分20lにより、スタッドピン22の倒れ込みやホール18の変形が抑制されて、スタッド不良の発生が抑制される。
【0025】
また、本実施形態によれば、タイヤの周方向溝12の幅も減じられないし、軸方向溝14が分断されることもない。すなわち、少なくとも特許文献1及び2に比して、凍結路や雪路あるいは湿潤路などでの走行性能の低下が抑制される。
【0026】
浅溝部分20の効果を示す、歪みエネルギーのシミュレーションの結果を説明する。歪みエネルギーのシミュレーションは、解析対象のスタッドタイヤを有限個の要素群で表現したタイヤモデルを用いて行う。タイヤモデルはコンピュータにより数値解析可能なモデルである。歪みエネルギーのシミュレーションにより、タイヤの加速時や制動時などにおいて、タイヤモデルの各要素が受ける歪みエネルギーが演算される。
【0027】
図6は、歪みエネルギーのシミュレーションで用いるタイヤモデルの要素Eの層を示す図である。
図6においては、ホール18のタイヤ径方向内側に位置する一部の要素Eのみが図示されている。ホール18のタイヤ径方向内側に位置する複数の要素Eにおいて、複数の層L1~L5が定義されている。各層L1~L5は、軸方向に並ぶ複数の要素Eで構成される。層L1は、ホール18に隣接する層(ホール18の底を形成する要素Eを含む層)であり、層L2は層L1のタイヤ径方向内側に隣接する層であり、層L3は層L2のタイヤ径方向内側に隣接する層であり、層L4は層L3のタイヤ径方向内側に隣接する層であり、層L5は層L4のタイヤ径方向内側に隣接する層である。
【0028】
図7は、周方向溝12に浅溝部分20を設けなかった場合と設けた場合とにおける、各層L1~L5に含まれる各要素Eの歪みエネルギーの平均値の違いを示すグラフである。
図7において、網掛けで示されたグラフが、周方向溝12に浅溝部分20を設けなかった場合(
図6において、周方向溝12が破線で示される溝深さである場合)の各層L1~L5に含まれる各要素Eの歪みエネルギーの平均値を示し、白抜きで示されたグラフが、周方向溝12に浅溝部分20を設けた場合(
図6において、浅溝部分20が実線で示される溝深さである場合)の各層L1~L5に含まれる各要素Eの歪みエネルギーの平均値を示している。白抜きのグラフの上に示された数値は、浅溝部分20を設けなかった場合における同じ層の各要素Eの歪みエネルギーの平均値に対する割合を示す。
図7に示す通り、浅溝部分20を設けた方が、いずれの層においても歪みエネルギーが低減されているのが分かる。
【0029】
図8は、第1の変形例に係るスタッドタイヤのトレッド面10を示す図である。
図8に示すように、周方向溝12の伸長方向における浅溝部分20の長さ(換言すれば、浅溝部分20の周方向幅)は、ホール18に近づく程長くなっているとよい。これにより、浅溝部分20によるスタッドピン22の倒れ込みやホール18の変形を抑制する機能を維持しつつ、ホール18とは反対側において浅溝部分20の周方向幅が小さくなるから、周方向溝12の本来の機能(排水機能)の低減を抑制することができる。
【0030】
図9は、第2の変形例に係るスタッドタイヤのトレッド面10を示す図である。
図9に示すように、浅溝部分20は、ホール18の軸方向側の側方位置か周方向溝12の伸長方向にずれた位置まで設けられるとよい。例えば、周方向溝12のうち、ホール付きブロック16hの軸方向に隣接する部分全体が浅溝部分20であってもよい。これにより、スタッドピン22に対して、軸方向からずれた方向に力が加わった場合であっても、スタッドピン22の倒れ込みやホール18の変形を抑制することができる。
【0031】
図10は、第3の変形例に係るスタッドタイヤのトレッド面10を示す図である。
図10に示すように、周方向溝12を挟んで、第1ホール付きブロック16hf及び第2ホール付きブロック16hsが軸方向に並んで設けられ、且つ、第1ホール付きブロック16hfが有する第1ホール18fの周方向における位置と、第2ホール付きブロック16hsが有する第2ホール18sの周方向における位置とが互いに異なる場合がある。この場合、
図10に示すように、第1ホール付きブロック16hfと第2ホール付きブロック16hsに挟まれている周方向溝12のうち、第1ホール18fの側方位置から第2ホール18sの側方位置までの部分全体が浅溝部分20となっていてもよい。これにより、当該浅溝部分20によって、第1ホール18f及び第2ホール18sの両方の変形を抑制することができる。
【0032】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 トレッド面、12 周方向溝、14 軸方向溝、16 ブロック、16h ホール付きブロック、16hf 第1ホール付きブロック、16hs 第2ホール付きブロック、18 ホール、18a 筒状部分、18b 幅広部分、18f 第1ホール、18s 第2ホール、20,20l,20r 浅溝部分、20a 底面、22 スタッドピン、22a 台座、22b シャンク、22c ボディ。