(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080576
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】燃焼装置及び燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F02C 3/20 20060101AFI20230602BHJP
F02C 3/30 20060101ALI20230602BHJP
F23R 3/30 20060101ALI20230602BHJP
F23R 3/36 20060101ALI20230602BHJP
F23R 3/34 20060101ALI20230602BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20230602BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F02C3/20
F02C3/30 Z
F23R3/30
F23R3/36
F23R3/34
F23R3/28 D
F02C7/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194000
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 修一
(57)【要約】
【課題】アンモニアを燃料とし燃焼温度を高めて効率を向上すると共に、排出される窒素酸化物を低減することができる燃焼装置及び燃焼方法を提供する。
【解決手段】空気を吸入して圧縮し第1圧縮空気を生成する圧縮機と、前記第1圧縮空気により燃料を燃焼し燃焼ガスを発生させる燃焼器と、前記燃焼ガスの圧力に基づいて回転動力を出力する出力用タービンと、前記燃焼器においてアンモニアを燃料として供給し、前記アンモニアと前記第1圧縮空気とを混合して燃焼させ第1燃焼ガスを発生させる第1供給部と、前記燃焼器において前記第1燃焼ガスに第2圧縮空気を供給して燃焼させ第2燃焼ガスを発生させる第2供給部と、前記燃焼器において前記第2燃焼ガスに追加燃料を供給し、前記第2燃焼ガスに前記追加燃料を追加して燃焼させ第3燃焼ガスを発生させる第3供給部と、を備える燃焼装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸入して圧縮し第1圧縮空気を生成する圧縮機と、
前記第1圧縮空気と燃料との混合気を燃焼し燃焼ガスを発生させる燃焼器と、
前記燃焼ガスの圧力に基づいて回転動力を出力する出力用タービンと、
前記燃焼器においてアンモニアを燃料として供給し、前記アンモニアを前記第1圧縮空気により燃焼させ第1燃焼ガスを発生させる第1供給部と、
前記燃焼器において前記第1燃焼ガスに第2圧縮空気を供給して燃焼させ第2燃焼ガスを発生させる第2供給部と、
前記燃焼器において前記第2燃焼ガスに追加燃料を供給し、前記第2燃焼ガスに前記追加燃料を追加して燃焼させ第3燃焼ガスを発生させる第3供給部と、を備える、
燃焼装置。
【請求項2】
前記出力用タービンにおける前記第3燃焼ガスの温度が低下する所定位置において、前記第3燃焼ガスに還元剤を供給し前記第3燃焼ガスを脱硝した第4燃焼ガスを発生させる第4供給部を備える、
請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記第1供給部は、前記アンモニアをリッチ燃焼した前記第1燃焼ガスを発生させる、
請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記第2供給部は、前記第1燃焼ガスをリーン燃焼した前記第2燃焼ガスを発生させる、
請求項3に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記第3供給部は、前記第2燃焼ガスに前記追加燃料を供給して燃焼することにより、前記第2燃焼ガスの第1燃焼温度に比して高い第2燃焼温度とする前記第3燃焼ガスを発生させる、
請求項2から4のうちいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記出力用タービンに冷却空気を供給する冷却流路と、を備え、
前記第4供給部は、前記冷却流路に前記還元剤を供給し、前記冷却空気と前記還元剤とを混合させた混合気を生成させ、前記冷却流路を介して前記出力用タービンに前記混合気を供給させる、
請求項2から5のうちいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記追加燃料は、前記アンモニア、水素、LNGのうち少なくとも1つを含み、
前記還元剤は、液体の状態で供給される前記アンモニアである、
請求項2から6のうちいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項8】
アンモニアを燃料とするガスタービンにより構成された燃焼装置における燃焼方法であって、
圧縮機において空気を吸入して圧縮し第1圧縮空気を生成する工程と、
燃焼器においてアンモニアを燃料として供給し、前記アンモニアを前記第1圧縮空気により燃焼させ第1燃焼ガスを発生させる工程と、
前記燃焼器において前記第1燃焼ガスに第2圧縮空気を供給し第2燃焼ガスを発生させる工程と、
前記燃焼器において前記第2燃焼ガスに追加燃料を供給し前記追加燃料を燃焼させた第3燃焼ガスを発生させる工程と、
前記第3燃焼ガスを出力用タービンに供給し、前記第3燃焼ガスの圧力に基づいて前記出力用タービンに回転動力を出力させる工程と、を備える、
燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを燃料とする燃焼装置及び燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電所から排出される二酸化炭素を低減するために、アンモニアを燃料とする燃焼装置が注目されている。ガスタービンを有する燃焼装置にアンモニアを燃料として燃焼させた場合、燃焼温度の上昇に従って排ガス中の窒素酸化物(NOx)が増加する。従来、排ガス中の窒素酸化物を低減する場合、大掛かりな排気脱硝装置が用いられていた。しかし、排気脱硝装置を用いる場合、装置が大型化し発電効率が低下する。
【0003】
例えば、特許文献1には、アンモニアを燃料とし、窒素酸化物の排出を低減するガスタービンが記載されている。特許文献1に記載されたガスタービンは、吸気を圧縮する圧縮機と、アンモニア燃料と圧縮空気との混合気を燃焼する燃焼器と、燃焼された燃焼ガスの圧力に基づいて回転動力を出力する出力用タービンと、燃焼ガスに対して還元剤を供給する供給装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃焼温度を従来の1300℃に比して高温の1600℃に高め、プラント効率を高めるガスタービンを有する燃焼装置が研究されている。特許文献1には、具体的な燃料の噴霧方法及び燃焼温度を1600℃とすることについて開示されていなかった。
【0006】
本発明は、アンモニアを燃料とし燃焼温度を高めて効率を向上すると共に、排出される窒素酸化物を低減することができる燃焼装置及び燃焼方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、空気を吸入して圧縮し第1圧縮空気を生成する圧縮機と、前記第1圧縮空気と燃料との混合気を燃焼し燃焼ガスを発生させる燃焼器と、前記燃焼ガスの圧力に基づいて回転動力を出力する出力用タービンと、前記燃焼器においてアンモニアを燃料として供給し、前記アンモニアを前記第1圧縮空気により燃焼させ第1燃焼ガスを発生させる第1供給部と、前記燃焼器において前記第1燃焼ガスに第2圧縮空気を供給して燃焼させ第2燃焼ガスを発生させる第2供給部と、前記燃焼器において前記第2燃焼ガスに追加燃料を供給し、前記第2燃焼ガスに前記追加燃料を追加して燃焼させ第3燃焼ガスを発生させる第3供給部と、を備える燃焼装置である。
【0008】
本発明によれば、燃焼器においてアンモニアを燃焼した第1燃焼ガスに圧縮空気を供給して第2燃焼ガスを発生させることで、窒素酸化物を低減することができる。本発明によれば、第2燃焼ガスに追加燃料を供給して燃焼させ第3燃焼ガスを発生させることにより、窒素酸化物を第2燃焼ガスに比して低減することができる。
【0009】
また、本発明は、前記出力用タービンにおける前記第3燃焼ガスの温度が低下する所定位置において、前記第3燃焼ガスに還元剤を供給し前記第3燃焼ガスを脱硝した第4燃焼ガスを発生させ前記出力用タービンに供給する第4供給部を備えていてもよい。
【0010】
本発明によれば、第3燃焼ガスに還元剤を供給することにより、第3燃焼ガスを脱硝することができ、第3燃焼ガスに比して窒素酸化物が低減された第4燃焼ガスを生成することができる。
【0011】
また、本発明の前記第1供給部は、前記アンモニアをリッチ燃焼した前記第1燃焼ガスを発生させてもよい。
【0012】
本発明によれば、アンモニアをリッチ燃焼することで、生成される第1燃焼ガスの窒素酸化物を完全燃焼時に比して低減することができる。
【0013】
また、本発明の前記第2供給部は、前記第1燃焼ガスをリーン燃焼した前記第2燃焼ガスを発生させてもよい。
【0014】
本発明によれば、第1燃焼ガスをリーン燃焼することで、生成される第2燃焼ガスの窒素酸化物を完全燃焼時に比して低減することができる。
【0015】
また、本発明の前記第3供給部は、前記第2燃焼ガスに前記追加燃料を供給して燃焼することにより、前記第2燃焼ガスの第1燃焼温度に比して高い第2燃焼温度とする前記第3燃焼ガスを発生させてもよい。
【0016】
本発明によれば、第2燃焼ガスに追加燃料を供給して燃焼させることにより、燃焼装置が適用されたコンバインドサイクル発電システムの熱効率を向上すると共に、窒素酸化物を低減することができる。
【0017】
また、本発明は、前記出力用タービンに冷却空気を供給する冷却流路を備え、前記第4供給部は、前記冷却流路に前記還元剤を供給し、前記冷却空気と前記還元剤とを混合させた混合気を生成させ、前記冷却流路を介して前記出力用タービンに前記混合気を供給させてもよい。
【0018】
本発明によれば、冷却用に設けられた冷却流路を用いて還元剤を供給することで、既存の燃焼装置を用いた設計を可能とすると共に、高温の第3燃焼ガスに還元剤を供給することで霧化装置を設けることなく還元剤を霧化させることができる。
【0019】
また、本発明の前記追加燃料は、前記アンモニア、水素、LNGのうち少なくとも1つを含み、前記還元剤は、液体の状態で供給される前記アンモニアであってもよい。
【0020】
本発明によれば、還元剤に燃料と同じアンモニアを用いることにより、装置構成を簡略化することができる。また、本発明によれば、追加燃料にアンモニアの他に水素やLNGを用いることにより、燃料、アンモニアの供給状態に応じた運転を行うことができる。
【0021】
本発明の一態様は、アンモニアを燃料とするガスタービンにより構成された燃焼装置における燃焼方法であって、圧縮機において空気を吸入して圧縮し第1圧縮空気を生成する工程と、燃焼器においてアンモニアを燃料として供給し、前記アンモニアと前記第1圧縮空気とを混合した混合気を燃焼させ第1燃焼ガスを発生させる工程と、前記燃焼器において前記第1燃焼ガスに第2圧縮空気を供給し第2燃焼ガスを発生させる工程と、前記燃焼器において前記第2燃焼ガスに追加燃料を供給し前記追加燃料を燃焼させた第3燃焼ガスを発生させる工程と、前記第3燃焼ガスを出力用タービンに供給し、前記第3燃焼ガスの圧力に基づいて前記出力用タービンに回転動力を出力させる工程と、を備える燃焼方法である。
【0022】
本発明によれば、燃焼器においてアンモニアを燃焼した第1燃焼ガスに圧縮空気を供給して第2燃焼ガスを発生させることで、窒素酸化物を低減することができる。本発明によれば、第2燃焼ガスに追加燃料を供給して燃焼させ第3燃焼ガスを発生させることにより、窒素酸化物を第2燃焼ガスに比して低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アンモニアを燃料とし燃焼温度を高めて効率を向上すると共に、排出される窒素酸化物を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】当量比と窒素酸化物の濃度及び燃焼温度との関係を示す図である。
【
図3】燃焼装置を用いたコンバインドサイクル発電システムの構成を示す図である。
【
図4】第1燃焼温度と第2燃焼温度とを示す図である。
【
図5】燃焼器における燃料の燃焼工程を示す図である。
【
図6】燃焼方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る燃焼装置及び燃焼方法について説明する。燃焼装置は、アンモニアを燃料として燃焼しガスタービンを回転させ、発電を行うものである。
【0026】
図1に示されるように、燃焼装置1は、流路Rの上流側に設けられた圧縮機2と、流路Rの途中に設けられた燃焼器3と、流路Rの下流側に設けられた出力用タービン4とを備えるガスタービンである。圧縮機2と出力用タービン4とは、シャフト5により連結されている。シャフト5は、回転自在に設置対象に支持されている。圧縮機2と出力用タービン4とは、シャフト5を介して連動して回転する。シャフト5には、発電機20が接続されている。
【0027】
圧縮機2は、流路Rに設けられた空気吸入口R1から空気を吸入して所定圧まで圧縮し第1圧縮空気A1を生成する。圧縮機2は、例えば、シャフト5の中心軸L回りに回転する回転翼2Aの回転に基づいて空気吸入口R1から吸入した空気を圧縮流路R2において遠心力に基づいて圧縮し、第1圧縮空気A1を下流側に設けられた燃焼器3に供給する。回転翼2Aには、気流を発生させる複数のブレード(動翼2A1)を有するブレード群が周方向に沿って設けられている。ブレード群は、中心軸L方向に沿って多段に設けられている。圧縮流路R2側において、各ブレード群の間にそれぞれ複数のブレード(静翼2A2)を有する固定ブレード群が設けられている。
【0028】
燃焼器3は、圧縮機2と出力用タービン4との間を連結する連結部RAの途中に設けられている。燃焼器3は、燃料に第1圧縮空気A1を供給し火炎を拡散させて燃焼する拡散燃焼により燃焼ガスを発生させる。燃焼器3は、燃料を液体の状態で供給し拡散燃焼させてもよいし、燃料を気化させた状態で供給し拡散燃焼させてもよい。燃焼器3は、燃料と空気を予め混合した混合気を供給し予混合燃焼させてもよい。燃焼器3は、例えば、円筒状のチャンバー空間が形成された燃焼流路R3において燃料と第1圧縮空気A1との混合気を拡散燃焼し燃焼ガスを発生させる。燃焼流路R3の上流側には、第1圧縮空気A1が流入する。燃焼流路R3の上流側には、例えば、燃料を噴射する第1供給口3Aが設けられている。第1供給口3Aには、燃焼器3においてアンモニアを燃料として供給する第1供給部10が第1燃料供給路10Aを介して接続されている。
【0029】
第1供給部10は、燃焼流路R3の上流側においてアンモニアを第1圧縮空気A1により燃焼させ、第1燃焼ガスを発生させる。第1供給部10は、第1供給口3Aから液体のアンモニアを霧状にして噴射する。第1供給部10は、燃焼流路R3内にアンモニアガスのスワール流を発生させアンモニアを急速燃焼させる。第1供給部10は、後述のようにアンモニアをリッチ燃焼させるため、当量比1に比して多い当量比となる供給量によりアンモニアを供給し、窒素酸化物NOxが低減された第1燃焼ガスB1を発生させる。第1供給部10は、第1燃焼ガスが不完全燃焼のガスとなるようにアンモニアを過剰に供給する。
【0030】
燃焼流路R3において第1供給口3Aの下流側には、空気を噴射する第2供給口3Bが設けられている。第2供給口3Bには、空気を圧縮した第2圧縮空気A2を供給する第2供給部11が第1空気供給路11Aを介して接続されている。第2供給部11は、例えば、第2供給口3Bから第2圧縮空気A2を燃焼流路R3内に供給する。
【0031】
第2供給部11は、燃焼流路R3において第1燃焼ガスB1に第2圧縮空気A2を供給し、第2燃焼ガスB2を発生させる。第2供給部11は、第1燃焼ガスB1の温度及び流量に基づいて第2圧縮空気A2の供給量を調整する。第2供給部11は、後述のように第1燃焼ガスB1をリーン燃焼し、窒素酸化物NOxが低減された第2燃焼ガスB2を発生させる。第2供給部11は、第2燃焼ガスB2を第1燃焼温度(例えば、1300℃程度)で燃焼させる。第2供給部11は、別体に設けられた圧縮機により燃焼流路R3に第2圧縮空気A2を供給するものであってもよいし、連結部RAの途中から第1圧縮空気A1を用いて圧力及び流量を調整した第2圧縮空気A2を生成し、燃焼流路R3に第2圧縮空気A2を供給するものであってもよい。燃焼流路R3において第2供給口3Bの下流側には、燃料を噴射する第3供給口3Cが設けられている。第3供給口3Cには、燃焼器3においてアンモニアを追加燃料として供給する第3供給部12が第2燃料供給路12Aを介して接続されている。
【0032】
第3供給部12は、燃焼流路R3の途中において第2燃焼ガスB2に追加燃料K1を追加して供給する。追加燃料K1は、例えば、液体の状態のアンモニアである。追加燃料K1は、アンモニアと空気が予混合された燃料を含むガスであってもよい。第3供給部12は、燃焼流路R3において第2燃焼ガスB2にアンモニアを追加して燃焼させた第3燃焼ガスB3を発生させる。第3供給部12は、第2燃焼ガスB2にアンモニアを供給して燃焼することにより、第2燃焼ガスB2の第1燃焼温度に比して高い第2燃焼温度(例えば、1600℃程度)とすることができる。
【0033】
これにより、アンモニア燃焼を適用可能なガスタービンエンジンの種類が拡大する。例えば、1300℃級のLNG・GTCCの燃焼効率は49%であるのに対し、1600℃級のLNG・GTCCの燃焼効率は55%である。燃焼効率の向上に伴い、燃料費を10%程度低減可能となる。第3供給部12は、追加燃料K1としてアンモニアの他、水素、LNGのうち少なくとも1つを供給してもよい。
【0034】
燃焼装置1によれば、追加燃料K1に燃料と同じアンモニアを用いることにより、装置構成を簡略化することができる。また、燃焼装置1によれば、アンモニアの他に水素やLNGを用いることにより、燃料、追加燃料K1の供給状態に応じた運転を行うことができる。燃焼流路R3の下流側には、第3燃焼ガスB3が流通する排気流路R4が設けられている。排気流路R4内には、出力用タービン4が設けられている。
【0035】
出力用タービン4は、燃焼ガスの圧力に基づいて回転動力を出力する。出力用タービン4は、例えば、第3燃焼ガスが排気流路R4を通過する際の運動エネルギーに基づいてシャフト5の中心軸L回りに回転自在な回転翼4Aを回転させる。出力用タービン4は、例えば、回転翼4Aの回転に基づいてシャフト5を介して回転動力を出力する。シャフト5には、例えば、発電機20が接続されている。シャフト5に伝達された回転動力は、発電機20に入力され、電力を生成させる。
【0036】
回転翼4Aには、気流を回転動力に変換させる複数のブレード(動翼4A1)を有するブレード群が周方向に沿って設けられている。ブレード群は、中心軸L方向に沿って多段に設けられている。排気流路R4側において、各ブレード群の間にそれぞれ複数のブレード(静翼4A2)を有する固定ブレード群が設けられている。
【0037】
静翼4A2には、出力用タービン4を冷却するための圧縮空気ACを供給する冷却流路30が接続されている。冷却流路30は、圧縮機2の中間段における任意の圧縮機段数から抽気された圧縮空気を出力用タービン4に供給するように構成されている。圧縮空気ACは、例えば、圧縮機2の回転翼2Aに設けられた静翼2A2における所定段数の位置から抽気された圧縮空気である。冷却流路30の上流側は、例えば、低圧の圧縮空気を抽気する場合、圧縮機2の上流側から数えて低い所定段数の低圧側の静翼2A2に接続されている。この場合、冷却流路30の下流側は、例えば、出力用タービン4の上流側から数えて高い所定段数の低圧側の静翼4A2に接続されている。
【0038】
冷却流路30の上流側は、例えば、高圧の圧縮空気を抽気する場合、圧縮機2の上流側から数えて高い所定段数の高圧側の静翼2A2に接続されている。この場合、冷却流路30の下流側は、例えば、出力用タービン4の上流側から数えて低い所定段数の高圧側の静翼4A2に接続されている。冷却流路30の下流側は、排気流路R4の上流側、即ち、出力用タービン4の上流側から第3燃焼ガスB3の温度が低下する所定位置に接続されている。出力用タービン4の静翼4A2には、冷却流路30の下流側に設けられた圧縮空気ACの供給口30Aが接続されている。供給口30Aは、出力用タービン4の動翼4A1に設けられていてもよい。この場合、冷却流路30は、出力用タービン4の回転翼4A及び圧縮機2の回転翼2Aの内部に配置されていてもよい。
【0039】
冷却流路30の途中には、排気流路R4において還元剤K2を供給する第4供給部13が還元剤供給路13Aを介して接続されている。冷却流路30と還元剤供給路13Aとの接続部には、還元剤K2を噴射する第4供給口4Bが設けられている。還元剤K2は、例えば、第4供給口4Bから液体の状態において冷却流路30に供給される。還元剤K2は、冷却流路30の途中において霧化し、圧縮空気と混合した混合気MAとなって1段目の動翼4A1より下流側の所定位置において供給口30Aから噴射される。
【0040】
第4供給部13は、還元剤供給路13A及び冷却流路30を介して供給口30Aから燃焼流路R3内を流通する第3燃焼ガスB3に還元剤K2を供給し、後述のように第3燃焼ガスB3を脱硝した第4燃焼ガスB4を発生させる。第4供給部13は、例えば、還元剤K2としてアンモニアを供給する。
【0041】
燃焼装置1によれば、還元剤K2に燃料と同じアンモニアを用いることにより、装置構成を簡略化することができる。また、燃焼装置1によれば、アンモニアの他に水素やLNGを用いることにより、燃料、還元剤K2の供給状態に応じた運転を行うことができる。第4供給部13は、例えば、第3燃焼ガスB3内の窒素酸化物の濃度がNOxセンサ(不図示)により検出された場合、検出結果に基づいて還元剤K2の供給量を調整する。
【0042】
冷却流路30には、排気流路R4において空気を圧縮した第3圧縮空気を供給する第5供給部14が第2空気供給路14Aを介して接続されていてもよい。第5供給部14は、冷却流路30とは別体に設けられ、冷却用の第3圧縮空気を供給するように構成されている。冷却流路30と第2空気供給路14Aとは、第5供給口4Cを介して接続されている。第5供給口4Cは、第2空気供給路14Aを流通する第3圧縮空気を冷却流路30内に噴射する。
【0043】
第5供給部14は、第2空気供給路14A及び冷却流路30を介して出力用タービン4に冷却用の第3圧縮空気A3を供給し、出力用タービン4を冷却する。第3圧縮空気A3を供給する。第2空気供給路14Aには、第4供給部13の還元剤供給路13Aが接続されていてもよい。第5供給部14は、必要に応じて設けられるものであり、無くてもよい。また、冷却流路30は、第5供給部14から供給される第3圧縮空気A3のみ流通するものであってもよい。
【0044】
第4供給部13は、第2空気供給路14Aを介して冷却流路30内に液体の状態の還元剤K2(アンモニア)を供給する。これにより、既存の燃焼装置に設けられた冷却流路30内にアンモニアを供給するように変更することで、既存の燃焼装置を用いた設計が可能である。
【0045】
冷却流路30には、圧縮機2から抽気された圧縮空気及び第5供給部14から供給された第3圧縮空気が高い流速において流通している。そのため、冷却流路30に第4供給部13からアンモニアを液体の状態で供給した場合でも、冷却流路30内においてアンモニアがすぐに気化する。従って、第4供給部13には、アンモニアを霧化する霧化装置を設ける必要が無い。第4供給部13は、第3圧縮空気A3及び/又は圧縮空気を含む冷却空気の圧力までアンモニアを加圧して排気流路R4に供給すればよく、構成が簡略化されると共に、燃焼装置1を稼働させるための電力を低減することができる。このとき、アンモニアの気化熱により、出力用タービン4を冷却することもできる。
【0046】
第4燃焼ガスB4は、排気流路R4を流通する際に出力用タービン4を回転させる。出力用タービン4は、シャフト5を介して回転動力を出力し、発電機20を駆動する。第4燃焼ガスB4は、排気流路R4の下流側に設けられた排気口R5から排出される。
【0047】
次に、燃焼装置1におけるアンモニアを燃料とする燃焼方法の原理について説明する。
【0048】
図2に示されるように、アンモニアを燃焼した場合の窒素酸化物の排出量は、燃焼時の酸素量に基づいて変動する。アンモニアと空気との理論混合比においてアンモニアは完全燃焼する。図示するように、アンモニアを燃焼した場合、当量比が1の時、燃焼温度が最も高くなると共に、窒素酸化物の量が増加することが知られている。当量比とは、完全燃焼時の燃料と空気との理論混合比を基準とした燃料比率である。当量比が1に比して低い状態で燃料を燃焼させることをリーン燃焼と呼ぶ。当量比が1に比して高い状態で燃料を燃焼させることをリッチ燃焼と呼ぶ。
【0049】
図示するように、燃料をリーン燃焼した場合、或いはリッチ燃焼させた場合において、当量比が1において燃料を燃焼させた場合に比して窒素酸化物が低減する。従来、窒素酸化物を低減する燃料の燃焼方法として、理論混合比の燃料供給量に比して多くの燃料を供給する状態でリッチ燃焼させた後、空気を急速に混合してリーン燃焼させるリッチ・リーン(2段)燃焼が知られている。アンモニアを燃料として燃焼する場合、2段燃焼を行っても1300~1400℃の温度領域が窒素酸化物を抑制する限界であるとも言われている。
【0050】
図3に示されるように、燃焼装置1は、下流側に第3燃焼ガスB3の廃熱を利用した廃熱回収システム50を設け、コンバインドサイクル発電システム100を構成することができる。廃熱回収システム50は、例えば、第3燃焼ガスB3が供給されるボイラ51と、ボイラ51により生成される蒸気Sに駆動される蒸気タービン60とを備える。ボイラ51は、第3燃焼ガスB3の廃熱を利用し、内部に設けられた配管52内の水を沸騰させ、蒸気Sを生成する。配管52内において生成された蒸気Sは、蒸気配管53を介して蒸気タービン60の蒸気流路60Rの上流側に供給される。蒸気Sは、蒸気流路60Rを通過する際に、蒸気タービン60を回転させる。
【0051】
蒸気タービン60は、回転動力を出力し、回転に連動して廃熱回収用発電機65を駆動する。廃熱回収用発電機65は、発電機20であってもよい。蒸気流路60Rを通過した蒸気Sは、蒸気排気管66を介して蒸気流路60Rの下流側から排出される。排出された蒸気Sは、復水器67において冷却され、水に戻される。復水器67において生成された水は、送水管68を介してボイラ51に供給される。
【0052】
コンバインドサイクル発電システム100によれば、第3燃焼ガスの廃熱を回収するため、燃焼装置1単体による発電効率に比して高い熱効率により発電することができる。コンバインドサイクル発電システム100の熱効率は、1300℃程度で稼働させた場合、49%程度であるのに比して、1600℃程度で稼働させた場合、55%程度に向上する。
【0053】
図4に示されるように、アンモニアを燃焼した場合の燃焼温度は、1300℃程度である。アンモニアを燃焼した後、追加燃料を追加して燃焼した場合の燃焼温度は、1600℃程度である。追加燃料として水素又はLNGを用いた場合にも同様に、燃焼ガスの燃焼温度を高めることができる。
【0054】
図5に示されるように、燃焼装置1に設けられた燃焼器3は、第1圧縮空気A1と第1供給口3Aから供給したアンモニアFとを混合して1回目の燃焼により第1燃焼ガスB1を発生させる。第1燃焼ガスB1は、例えば、当量比を1.4から1.8の範囲としたリッチ燃焼により生成される。第1燃焼ガスB1は、リッチ燃焼により窒素酸化物が完全燃焼時に比して低減されている(
図2参照)。燃焼器3は、第1燃焼ガスB1と第2供給口3Bから供給した第2圧縮空気A2と急速に混合して2回目の燃焼により、第2燃焼ガスB2を発生させる。
【0055】
第2燃焼ガスB2は、例えば、当量比を0.2から0.5の範囲としたリーン燃焼により生成される。第2燃焼ガスB2は、リーン燃焼により窒素酸化物が完全燃焼時に比して低減されている(
図2参照)。このとき、第2燃焼ガスB2の第1燃焼温度は、1300℃程度である。その後、燃焼器3は、第2燃焼ガスB2と第3供給口3Cから供給した追加燃料K1とを混合して3回目の燃焼により第3燃焼ガスB3を発生させる。第3燃焼ガスB3は、追加燃料K1が燃焼することにより、第2燃焼ガスB2の第1燃焼温度に比して高い第2燃焼温度において燃焼する。第2燃焼温度は、コンバインドサイクル発電システム100の熱効率を向上可能な1600℃程度である。
【0056】
第3燃焼ガスB3に含まれる窒素酸化物の濃度が基準以上である場合、燃焼装置1は、排気流路R4の途中の所定位置に設けられた第4供給口4Bから供給した還元剤K2により生成された混合気MAと第3燃焼ガスB3とを混合して出力用タービン4における燃焼により第4燃焼ガスB4を発生させる。第4供給口4Bは、例えば、圧縮機2の所定段数から抽気された圧縮空気ACが流通する冷却流路30に接続されている。冷却流路30は、低圧の圧縮空気AC又は高圧の圧縮空気ACを出力用タービン4に供給する。
【0057】
第4供給口4Bの出口は、上流側に向かって還元剤K2を吐出するノズル4B1が設けられている。ノズル4B1からは、液体の還元剤K2が供給される。ノズル4B1から噴射された還元剤K2は、冷却流路30内を流通する圧縮空気ACにより冷却流路の途中で霧化する。静翼4A2に設けられた圧縮空気ACの供給口30Aからは、霧化された還元剤K2と圧縮空気ACとの混合気MAがタービン内に供給される。
【0058】
圧縮空気ACは、還元剤K2の気化熱により温度が低下し、冷却効果を高めることができる。還元剤K2は、液体の状態で供給されるため、空気と予混合された還元剤K2を供給する場合に比して第4供給部13の供給過程における電力を低減することができる。
【0059】
第4供給口4Bは、第5供給口4Cが接続された第2空気供給路14Aの途中に接続されていてもよい。この場合、ノズル4B1は、第2空気供給路14Aの上流側に向かって還元剤K2を吐出するように設けられる。ノズル4B1から噴射された還元剤K2は、第2空気供給路14A内を流通する第3圧縮空気A3により第2空気供給路14Aの途中で霧化し、混合気となる。混合気は、冷却流路30に供給され、圧縮空気ACと合流し、供給口30Aから出力用タービン4内に供給される。
【0060】
第5供給部14は、設けられていない場合もある。また、第5供給部14から供給される第3圧縮空気A3のみ流通する場合もある。従って、還元剤K2は、第4供給部13により冷却流路30に供給され、冷却用に抽気された圧縮空気AC及び/又は第5供給部14により供給される第3圧縮空気A3を含む冷却空気と混合されて混合気となり、冷却流路30を介して出力用タービン4に供給される。即ち、還元剤K2は、抽気された圧縮空気、抽気された圧縮空気及び第3圧縮空気A3、第3圧縮空気A3のいずれかと混合されて混合気MAとなる。出力用タービン4に供給された混合気MAは、第3燃焼ガスB3と混合して出力用タービン4において燃焼し、第4燃焼ガスB4を発生させる。
【0061】
式(1)に示されるように、第3燃焼ガスB3にアンモニアを還元剤K2として供給し、第4燃焼ガスB4を発生させることにより、脱硝効果を奏することができる。
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O (1)
第4燃焼ガスB4は、還元剤K2が燃焼することにより、第3燃焼ガスB3に比して窒素酸化物が低減される(式(1))。燃焼装置1は、還元剤K2が燃焼することにより、第3燃焼ガスB3に対する脱硝効果を奏することができる。
【0062】
次に、燃焼装置1において実行される燃焼方法の各工程について説明する。
【0063】
図6に示されるように、燃焼装置1において実行される燃焼方法は、以下の各工程を備える。圧縮機2において空気を吸入して圧縮し第1圧縮空気A1を生成する(ステップS100)。燃焼器においてアンモニアFを燃料として供給し、アンモニアFを第1圧縮空気A1により燃焼させ第1燃焼ガスB1を発生させる(ステップS102)。このとき、第1燃焼ガスB1は、リッチ燃焼により生成され、完全燃焼時に比して窒素酸化物を低減することができる。第1燃焼ガスB1は、不完全燃焼のガスである場合も含む。燃焼器3において第1燃焼ガスB1に第2圧縮空気A2を供給し第2燃焼ガスB2を発生させる(ステップS104)。このとき、第2燃焼ガスはリーン燃焼により生成され、完全燃焼時に比して窒素酸化物を低減することができる。
【0064】
燃焼器3において第2燃焼ガスB2に追加燃料K1を供給し追加燃料K1を燃焼させた第3燃焼ガスB3を発生させる(ステップS106)。このとき、第2燃焼ガスが追加燃料K1により追い炊きされて第3燃焼ガスが生成され、燃焼温度を第1燃焼温度に比して高い第2燃焼温度に向上することができる。追加燃料K1は、液体のアンモニアであってもよいし、アンモニアと空気が予混合されたガスであってもよい。第3燃焼ガスB3を出力用タービン4に供給し、第3燃焼ガスB3の圧力に基づいて出力用タービン4に回転動力を出力させる(ステップS108)。出力用タービン4の所定位置において、第3燃焼ガスB3に還元剤K2を供給し、脱硝した第4燃焼ガスB4を発生させる(ステップS110)。
【0065】
上述したように燃焼装置1によれば、燃料であるアンモニアFをリッチ燃焼及びリーン燃焼することにより窒素酸化物を低減することができる。燃焼装置1によれば、アンモニアをリッチ燃焼及びリーン燃焼した後に、追加燃料K1を燃焼し第3燃焼ガスB3を発生させることにより、燃焼温度を高めてコンバインドサイクル発電システム100を構成した際の熱効率を向上することができる。燃焼装置1によれば、アンモニアをリッチ燃焼及びリーン燃焼し、第3燃焼ガスB3を発生させた際、窒素酸化物の濃度が基準以上である場合、還元剤K2を供給して燃焼することにより、窒素酸化物を低減することができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。例えば、燃焼装置1は、燃焼器3に蒸気を噴射して更に脱硝効果を向上させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 燃焼装置
2 圧縮機
3 燃焼器
4 出力用タービン
10 第1供給部
11 第2供給部
12 第3供給部
13 第4供給部
14 第5供給部
30 冷却流路
A1 第1圧縮空気
A2 第2圧縮空気
A3 第3圧縮空気
AC 圧縮空気
B1 第1燃焼ガス
B2 第2燃焼ガス
B3 第3燃焼ガス
B4 第4燃焼ガス
F アンモニア
K1 追加燃料
K2 還元剤
MA 混合気
R 流路