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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080577
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】圧電振動素子及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
H03H9/19 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194002
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】楠木 孝男
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC10
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG16
5J108GG20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】振動の特性を向上させる圧電振動素子を提供する。
【解決手段】水晶素子1は、水晶素板3と、1対の励振電極7と、1対の引出電極9とを有する。水晶素板3は、X方向及び当該X方向に直交するZ’方向に広がっており、X方向の一方側に第1端部3aを有する。1対の励振電極7は、水晶素板3に重なっている。1対の引出電極9は、水晶素板3に重なり、1対の励振電極7から第1端部3aへ向かって引き出されている。1対の引出電極9は、Z’方向において互いに離れている1対のパッド部9aを有する。圧電素板3は、1対のパッド部9aの間に位置している緩衝部11を有している。緩衝部11は、1対のパッド部9aから離れていてよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び当該第1方向に直交する第2方向に広がっており、前記第1方向の一方側に第1端部を有している圧電素板と、
前記圧電素板に重なる1対の励振電極と、
前記圧電素板に重なり、前記1対の励振電極から前記第1端部へ向かって引き出されている1対の引出電極と、
を有しており、
前記1対の引出電極は、前記第2方向において互いに離れている1対のパッド部を有しており、
前記圧電素板は、緩衝部を有しており、
前記緩衝部は、前記圧電素板を厚さ方向に貫通する第1貫通孔、前記圧電素板を薄くする凹部、及び前記圧電素板の前記第1端部を切り欠く切欠きの少なくとも1つを含み、前記1対のパッド部の間に位置しているとともに、前記1対のパッド部から離れて位置している
圧電振動素子。
【請求項2】
前記圧電素板は、
前記1対の励振電極が重なっている振動部と、
前記1対のパッド部が重なっており、前記振動部よりも厚い固定部と、を有しており、
前記緩衝部は、前記固定部に少なくとも一部が位置している
請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記緩衝部は、前記固定部の前記振動部の側の端部から離れている
請求項2に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記圧電素板は、前記1対の励振電極と前記緩衝部との間に前記圧電素板を厚さ方向に貫通する第2貫通孔を更に有している
請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記圧電素板は、平面視において前記1対のパッド部に重なる位置に、前記圧電素板を厚さ方向に貫通する1対の第3貫通孔を更に有している
請求項1~4のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
平面視において、前記緩衝部の中心は、前記圧電素板の、前記第1方向に平行な中心線上に位置しており、前記1対の第3貫通孔は、前記中心線に対して線対称に位置している
請求項5に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記1対のパッド部の、平面視において前記緩衝部を挟んで対向する互いに対向する縁部が切り欠かれている
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が実装されているパッケージと、
を有している圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電振動素子及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスとして、例えば、水晶振動子及び水晶発振器が知られている。これらの圧電デバイスは、交流電圧の印加によって振動する圧電振動素子を有している。圧電振動素子は、例えば、板状の圧電素板(例えば水晶素板)と、圧電素板の1対の主面(板形状の最も広い面。板形状の表裏。以下、同様。)に設けられた1対の励振電極と、1対の励振電極から引き出された1対の引出電極とを有している。1対の引出電極は、例えば、導電性の接合材によってパッケージのパッドに接合される。これにより、圧電振動素子がパッケージに実装される。そして、1対の引出電極に交流電圧が印加されることによって、1対の励振電極によって圧電素板に交流電圧が印加される。
【0003】
特許文献1では、圧電素板として、平面視において一端部に切欠きが形成されているものを開示している。切欠きは、平面視において、1対の引出電極の間に位置しているとともに、1対の引出電極に隣接している。また、1対の引出電極は、切欠きの内面にも成膜されている。
【0004】
特許文献2では、圧電素板として、平面視において互いに異なる領域を構成する振動部及び固定部を有するものを開示している。振動部は、例えば、1対の励振電極が設けられる部位であり、平板状である。固定部は、例えば、1対の引出電極が設けられる部位であり、振動部よりも厚い。特許文献1では、さらに、固定部に凹部及び貫通孔を形成することを提案している。当該凹部及び貫通孔は、平面視において1対の引出電極に重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-186231号公報
【特許文献2】特開2020-191579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振動に係る特性を向上させることができる圧電振動素子及び圧電デバイスが提供されることが待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る圧電振動素子は、第1方向及び当該第1方向に直交する第2方向に広がっており、前記第1方向の一方側に第1端部を有している圧電素板と、前記圧電素板に重なる1対の励振電極と、前記圧電素板に重なり、前記1対の励振電極から前記第1端部へ向かって引き出されている1対の引出電極と、を有しており、前記1対の引出電極は、前記第2方向において互いに離れている1対のパッド部を有しており、前記圧電素板は、緩衝部を有しており、前記緩衝部は、前記圧電素板を厚さ方向に貫通する第1貫通孔、前記圧電素板を薄くする凹部、及び前記圧電素板の前記第1端部を切り欠く切欠きの少なくとも1つを含み、前記1対のパッド部の間に位置しているとともに、前記1対のパッド部から離れて位置している。
【0008】
本開示の一態様に係る圧電デバイスは、上記圧電振動素子と、前記圧電振動素子が実装されているパッケージと、を有している。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、例えば、振動に係る特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る水晶振動素子の斜視図。
図2図1の水晶振動素子の一部破断斜視図。
図3図1の水晶振動素子の応用例を示す斜視図。
図4図3のIV-IV線における断面図。
図5】第2実施形態に係る水晶振動素子の一部破断斜視図。
図6】第3実施形態に係る水晶振動素子の斜視図。
図7】緩衝部の変形例を示す平面図。
図8図8(a)及び図8(b)は水晶振動素子の固定部の位置の変形例を示す平面図。
図9図9(a)及び図9(b)は水晶振動素子の厚みの変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る水晶振動素子(以下、単に「水晶素子」ということがある。)について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。同様に、図面相互の寸法比率等についても必ずしも一致していない。平面視は、特に断りが無い限り、図1等に示すXY’Z’座標系のY’方向に平行に見ることを指す。
【0012】
第1実施形態以外の実施形態又は変形例の説明においては、基本的に、先に説明された態様との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明された態様と同様とされたり、先に説明された態様から類推されたりしてよい。
【0013】
<第1実施形態>
(水晶素子の概要)
図1は、第1実施形態に係る水晶素子1の斜視図である。図2は、水晶素子1の一部を破断して示す水晶素子1の斜視図である。水晶素子1は、例えば、概略、X軸に平行な中心線CLに対して180°回転対称の構成とされている。従って、-Y’側から見た水晶素子1の斜視図は図1と同様である。
【0014】
なお、中心線CLは、水晶素子1(又は後述する振動部13若しくは励振電極7)の中心)を通り、X方向に平行な仮想線である。中心は、例えば、幾何中心(図心)であり、その点を通る任意の軸に対する断面一次モーメントが0になる点である。他の部材又は部位について述べる中心も同様である。
【0015】
水晶素子1は、例えば、交流電圧が印加されることによって振動を生じるものである。この振動は、例えば、一定の周波数で信号強度(例えば電圧及び/又は電流)が振動する発振信号の生成に利用される。換言すれば、水晶素子1は、例えば、水晶振動子又は水晶発振器に含まれるものである。
【0016】
水晶素子1は、水晶素板3と、水晶素板3に重なっている第1導体パターン5A及び第2導体パターン5B(以下、「導体パターン5」といい、両者を区別しないことがある。)と、を有している。2つの導体パターン5は、互いに短絡されていない。各導体パターン5は、励振電極7と、励振電極7から引き出されている引出電極9とを有している。すなわち、水晶素子1は、1対の励振電極7と、当該1対の励振電極7と接続されている1対の引出電極9とを有している。
【0017】
1対の引出電極9は、水晶素子1の実装に寄与する。具体的には、例えば、後述する図4に示すように、引出電極9とパッケージ103のパッド111とが、導電性の接合材105によって接合されることにより、水晶素子1がパッケージ103に実装される。なお、水晶素子1は、パッケージ103以外の部材(例えば回路基板)に実装されてもよいが、実施形態の説明では、便宜上、パッケージ103に実装されることを前提とした表現をすることがある。パッケージ103を介して1対の引出電極9に交流電圧が印加されると、1対の励振電極7によって水晶素板3に交流電圧(電界)が印加される。これにより、水晶素板3は振動する。
【0018】
1対の引出電極9は、1対の励振電極7に対して、水晶素板3の第1方向(X方向)の一方側(第1端部3aの側、+X側)に引き出されており、(少なくとも一部同士が)第1方向に交差(例えば直交)する第2方向(Z’方向)において互いに離れている。より具体的には、例えば、引出電極9は、パッケージ103に接合されるパッド部9aと、励振電極7とパッド部9aとを接続している配線部9bとを有している。そして、水晶素板3の一方の主面において、1対の引出電極9の1対のパッド部9aは、Z’方向において互いに離れて位置している。
【0019】
水晶素板3は、1対の引出電極9(1対のパッド部9a)の間に緩衝部11を有している。本実施形態では、緩衝部11は、水晶素板3を厚さ方向(Y’方向)に貫通する貫通孔によって構成されている。外部(例えばパッケージ103)から1対の引出電極9を介して水晶素板3に歪が付与されると、この歪は、緩衝部11(より厳密には水晶素板3の緩衝部11の周囲部分)によって吸収される。これにより、例えば、水晶素板3のうち励振電極7が配置されている領域に歪が生じる蓋然性が低減される。その結果、例えば、水晶素子1の振動の特性が低下する蓋然性が低減され、ひいては、水晶素子1の電気的特性が低下する蓋然性が低減される。上記のような歪は、例えば、接合材105の硬化収縮、及び/又はパッケージ103の後述する基板部107a(図4)の反りによって生じる。歪の態様としては、X方向に見て水晶素板3を+Y’側に凸又は凹にするものが挙げられる。
【0020】
以上が第1実施形態に係る水晶素子1の概要である。また、本実施形態では、水晶素板3として、互いに厚さが異なる複数の領域(振動部13、固定部15及び中間部17)を有するものを例に取る。厚みが互いに異なる複数の領域は、後述するように、例えば、水晶素子1の強度を確保しつつ、発振信号の周波数を高くすることに寄与する。さらに、本実施形態では、水晶素板3として、第2貫通孔19及び第3貫通孔21を有するものを例に取る。これらの貫通孔は、後述するように、例えば、水晶素子1の振動特性を向上させたり、及び/又は水晶素子1の表裏を導通させたりすることに寄与する。
【0021】
以下において、第1実施形態の説明は、概略、下記の順に行う。
1.水晶素子1(図1及び図2
1.1.水晶素板3(緩衝部11の説明は除く)
1.1.1.振動部13
1.1.2.固定部15
1.1.3.中間部17
1.1.4.第2貫通孔19
1.1.5.第3貫通孔21
1.2.導体パターン5
1.2.1.励振電極7
1.2.2.引出電極9
1.3.導体パターン5と第2貫通孔19及び第3貫通孔21との位置関係
1.4.緩衝部11
1.5.水晶素子1の製造方法
2.水晶素子1の利用例(図3及び図4
3.第1実施形態についてのまとめ
【0022】
(1.水晶素子)
水晶素子1は、例えば、いわゆるATカット型の水晶振動素子である。すなわち、水晶素板3は、ATカットの水晶片である。1対の励振電極7は、水晶素板3(より詳細には本実施形態では振動部13。以下、本段落において同様。)の両面に重なっている。そして、1対の励振電極7によって水晶素板3の厚み方向に電圧が印加されると、水晶素板3は、いわゆる厚み滑り振動を生じる。この振動の共振周波数(換言すれば発振周波数)は、基本的に水晶素板3の厚さによって規定される。水晶素子1は、基本波モードを利用するものであってもよいし、オーバートーンモードを利用するものであってもよい。本実施形態の説明では、基本波モードを利用する態様を例に取ることがある。
【0023】
水晶素子1(水晶素板3)の各種の寸法は適宜に設定されてよい。以下に寸法の範囲の例を挙げる。水晶素板3のX方向における長さは、500μm以上1500μm以下とされてよい。水晶素板3(振動部13、固定部15及び/又は中間部17)のZ’方向における長さは300μm以上700μm以下とされてよい。振動部13のX方向における長さは、250μm以上1000μm以下(ただし、水晶素板3のX方向における長さよりも短い)とされてよい。振動部13の厚さは、16μm以下とされてよい。これは、ATカット板において厚み滑り振動の基本波振動を利用する場合、概ね100MHz以上の周波数に相当する。固定部15のX方向における長さは、100μm以上500μm以下(ただし、水晶素板3のX方向における長さよりも短い)とされてよい。固定部15の厚さは、50μm以下とされてよい。
【0024】
(1.1.水晶素板)
既述のように、水晶素板3は、例えば、ATカットの水晶片である。すなわち、水晶においてX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°以上50°以下(一例として、35°15′)回転させて直交座標系XY’Z’を定義したとき、水晶素板3は、XZ’平面に基本的に平行な1対の主面を有する板状である。
【0025】
X軸の正負と、水晶素子1の構成(別の観点では水晶素板3の形状)との対応関係は、図示の対応関係と逆であっても構わない。ただし、実施形態の説明では、図示の対応関係を前提とした説明を行うことがある。
【0026】
水晶素板3の平面形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、水晶素板3の平面形状は、Z’軸及びX軸に平行な辺を有する矩形状とされている。水晶素板3の他の平面形状としては、例えば、円形及び楕円形を挙げることができる。また、矩形の4辺のうちいずれか1つ以上を外側に膨らむ曲線状(例えば円弧)にした形状を挙げることができる。
【0027】
なお、矩形は、正方形及び狭義の長方形を含む。また、矩形又は矩形状というとき、特に断りが無い限り、角部が面取りされているなど、厳密に正方形又は長方形でなくてもよいものとする。水晶素板3の平面形状以外の他の部位の形状の説明においても同様である。また、矩形以外の多角形についても同様である。
【0028】
水晶素板3の平面形状において、X方向(厚み滑り振動において主面同士が相対的に滑る方向)が長手方向であってもよいし、Z’方向が長手方向であってもよいし、Z’方向の長さとX方向の長さとが同等であってもよい。図示の例では、水晶素板3は、X方向を長手方向としている。換言すれば、水晶素板3は、X軸に平行な長辺と、Z’軸に平行な短辺とを有している。
【0029】
水晶素板3は、例えば、水晶をエッチングすることによって作製されてよい。この場合、エッチングに対する水晶の異方性に起因して、水晶素板3又はその各部の側面は、傾斜面(別の観点では結晶面)を有してよい。ただし、本実施形態の説明では、このような傾斜面の図示が省略されたり、傾斜面の存在を無視して形状及び寸法について説明がなされたりすることがある。この場合において、実施形態の説明で例示される水晶素板3の形状及び寸法と、傾斜面を有する実際の形状及び寸法との対応関係は、水晶素子1の特性等を考慮して合理的に判断されてよい。例えば、水晶素板3(又は各部)の側面が傾斜面を含み、その結果、+Y’側の主面と-Y’側の主面とでXZ’平面内の位置が互いにずれている場合、そのずれの方向にもよるが、水晶素板3(又は各部)の形状及び寸法の説明は、平面透視における最大の形状及び寸法を基準にしたものと解釈されてよい。
【0030】
本実施形態では、水晶素板3は、既述のように、平面視において互いに異なる領域を構成し、かつ互いに厚さが異なる、振動部13及び固定部15を有している。振動部13は、1対の励振電極7が重なり、1対の励振電極7によって励振される部位である。固定部15は、1対の引出電極9が重なり、パッケージ103に固定される部位である。固定部15は、振動部13よりも厚くされている。このような構成により、例えば、振動部13を薄くして高い周波数の振動を可能にしつつ、固定部15によって水晶素板3の強度を確保することができる。
【0031】
水晶素板3は、さらに、既述のように、平面視において振動部13と固定部15との間の領域を構成する中間部17を有している。中間部17は、固定部15側ほど厚くなっている。これにより、例えば、振動部13の振動が固定部15側において急激に減衰する蓋然性を低減し、クリスタルインピーダンスを低減できる。
【0032】
以下、これらの部位(振動部13、固定部15及び中間部17)について、順に説明する。
【0033】
(1.1.1.振動部)
振動部13は、平面視において、少なくとも水晶素板3の内側の領域を含んでいる。ここでいう内側の領域は、水晶素板3の外縁から離れている領域である。より詳細には、例えば、振動部13は、水晶素板3の平面視における中心を含む領域を含んでいてよい。
【0034】
振動部13の平面形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、振動部13の平面形状は、Z’軸及びX軸に平行な辺を有する矩形状とされている。振動部13の他の平面形状としては、例えば、円形及び楕円形を挙げることができる。また、矩形の4辺のうちいずれか1つ以上を外側に膨らむ曲線状(例えば円弧)にした形状を挙げることができる。振動部13の平面形状において、X方向(厚み滑り振動において主面同士が相対的に滑る方向)が長手方向であってもよいし、Z’方向が長手方向であってもよいし、Z’方向の長さとX方向の長さとが同等であってもよい。
【0035】
振動部13は、例えば、水晶素板3の面積(平面透視における面積)のうち、比較的広い部分を占めている。例えば、振動部13は、水晶素板3の面積の1/2以上を占めている。ただし、振動部13は、水晶素板3の面積の1/2未満を占めるだけであってもよい。
【0036】
振動部13は、XZ’平面に平行な平板状であり、XZ’平面に平行な主面(第1面23A及び第2面23B)を有している。第1面23Aは、+Y’側(水晶素板3の厚み方向の一方側)に面しており、Y’軸(厚み方向)に直交している。第2面23Bは、-Y’側(水晶素板3の厚み方向の他方側)に面しており、Y’軸(厚み方向)に直交している。別の観点では、第1面23A及び第2面23Bは互いに平行である。
【0037】
(1.1.2.固定部)
固定部15は、平面視において水晶素板3の外周側の領域の少なくとも一部を含んでいる。別の観点では、固定部15は、中間部17を挟んで振動部13の外縁の少なくとも一部と隣り合っている。固定部15と振動部13の外縁とが隣り合う長さ(振動部13の外縁に沿う方向の長さ)は、後述の変形例(図8(a)及び図8(b))からも理解されるように適宜に設定されてよい。図示の例では、固定部15は、矩形状の振動部13の1辺に亘って振動部13と隣り合っている。
【0038】
固定部15と振動部13とが中間部17を挟んで隣り合う方向は、X方向(厚み滑り振動において主面同士が相対的に滑る方向)であってもよいし(図示の例)、Z’方向であってもよい。また、別の観点では、上記隣り合う方向は、振動部13の短手方向であってもよいし、振動部13の長手方向であってもよいし、そのような区別ができなくてもよい。さらに、上記隣り合う方向と水晶素板3の長手方向との関係も任意である。
【0039】
固定部15の平面形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。例えば、固定部15は、一定の幅で振動部13の外縁に沿うような形状であってもよいし(図示の例)、振動部13側の縁部の形状と、振動部13とは反対側の縁部の形状とが互いに異なるような形状であってもよい。図示の例では、固定部15は、振動部13の1辺に平行な長辺を有する矩形状とされている。
【0040】
固定部15と振動部13とが中間部17を挟んで互いに隣り合っている方向に直交する方向(図示の例ではZ’方向)において、固定部15は、振動部13に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。また、上記隣り合っている方向(図示の例ではX方向)における固定部15の長さも任意である。図示の例では、固定部15のX方向の長さは、振動部13のX方向の長さよりも短い。
【0041】
固定部15は、例えば、振動部13と同様に、XZ’平面に平行な平板状である。ただし、固定部15は、板状と概念できる広さを有しない形状であってもよい。固定部15は、振動部13と同様に、XZ’平面に平行な主面(第3面25A及び第4面25B)を有している。第3面25Aは、+Y’側(水晶素板3の厚み方向の一方側)に面しており、Y’軸(厚み方向)に直交している。第4面25Bは、-Y’側(水晶素板3の厚み方向の他方側)に面しており、Y’軸(厚み方向)に直交している。別の観点では、第3面25A及び第4面25Bは互いに平行である。さらに別の観点では、第3面25A及び第4面25Bは、第1面23A及び第2面23Bと平行である。
【0042】
固定部15は、既述のように振動部13よりも厚い。より詳細には、固定部15は、振動部13に対して厚み方向(Y’方向)の両側に高くなっている。別の観点では、厚み方向の一方側(+Y’側)に面している第3面25Aは、前記一方側に面している第1面23Aよりも前記一方側に位置している。また、厚み方向の他方側(-Y’側)に面している第4面25Bは、前記他方側に面している第2面23Bよりも前記他方側に位置している。
【0043】
第1面23Aから第3面25Aまでの高さと、第2面23Bから第4面25Bまでの高さとは、一方が他方よりも大きくてもよいし、同等であってもよい。なお、本実施形態では、両者が同等である態様を例に取る。また、これらの高さは、振動部13の厚さに対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。
【0044】
(1.1.3.中間部)
中間部17は、例えば、概略、振動部13の固定部15側の縁部、及び/又は固定部15の振動部13側の縁部の全体に亘っている。中間部17の平面視における寸法は適宜に設定されてよい。例えば、固定部15と振動部13とが中間部17を介して互いに隣り合っている方向に直交する方向(図示の例ではZ’方向)において、中間部17は、振動部13及び/又は固定部15に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。また、上記隣り合っている方向(図示の例ではX方向)における中間部17の長さも任意である。図示の例では、中間部17のX方向の長さは、固定部15のX方向の長さよりも短い。
【0045】
中間部17は、既述のように固定部15側ほど厚くなっている。具体的には、中間部17は、固定部15側ほど厚くなるように傾斜している第5面27A及び第6面27Bを有している。第5面27Aは、厚み方向の一方側(+Y’側)に面しており、振動部13側に対して固定部15側が前記一方側に位置する向きで第1面23Aに対して傾斜している。第6面27Bは、厚み方向の他方側(-Y’側)に面しており、振動部13側に対して固定部15側が前記他方側に位置する向きで第2面23Bに対して傾斜している。第5面27A及び第6面27Bそれぞれは、例えば、概略、一つの平面によって構成されている。
【0046】
第5面27Aの傾斜角及び第6面27Bの傾斜角は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。なお、本実施形態の説明では、両者が同一である態様を例に取る。この傾斜角の具体的な大きさは適宜に設定されてよい。例えば、固定部15又は振動部13の主面の法線(別の観点ではY’軸)に対する第5面27A又は第6面27Bの角度は、45°よりも小さくてもよいし、45°以上であってもよい。
【0047】
第5面27A及び第6面27Bは、エッチングによって水晶素板3を形成したときにエッチングに対する水晶の異方性によって現れる結晶面であってよい。この場合に現れる結晶面(別の観点では当該結晶面の傾斜角)は、エッチングの条件によって適宜に選択されてよい。固定部15又は振動部13の主面の法線(別の観点ではY’軸)に対する結晶面の角度の例を挙げると、例えば、約55°(例えば53°以上57°以下)である。図示の例とはX軸の正負が逆の場合の上記角度の例を挙げると、約27°(例えば25°以上29°以下)である。
【0048】
第1面23Aと第5面27Aとは互いに交差しており、側面視若しくは断面視において(Z’方向に見て)角部を構成している。特に図示しないが、この角部は、極めて微視的に見た場合に、曲線を有していたり、段差を有していたりしてもよい。この場合の曲線の長さ又は段差の高さは、例えば、0.1μm未満である。また、第1面23Aと第5面27Aとは、微視的に見なくても、両者の間に曲線が介在していたり、両者の間に段差が存在したりしてもよい。第1面23Aと第5面27Aとの境界について説明したが、上記の説明は、第2面23Bと第6面27Bとの境界に援用されてよい。
【0049】
第1面23Aと第5面27Aとの境界と、第2面23Bと第6面27Bとの境界とは、中間部17と振動部13とが隣り合う方向(図示の例ではX方向)における位置が一致していてもよいし、互いにずれていてもよい。位置が一致しているという場合、公差が存在してもよいことはもちろんである。
【0050】
第3面25Aと第5面27Aとは互いに交差しており、側面視若しくは断面視において(Z’方向に見て)角部を構成している。特に図示しないが、この角部は、微視的に見た場合に、曲線を有していたり、段差を有していたりしてもよい。この段差の高さ(Y’方向の大きさ)は、例えば、1μm未満である。第3面25Aと第5面27Aとの境界について説明したが、上記の説明は、第4面25Bと第6面27Bとの境界に援用されてよい。
【0051】
第3面25Aと第5面27Aとの境界と、第4面25Bと第6面27Bとの境界とは、固定部15と中間部17とが隣り合う方向(図示の例ではX方向)における位置が一致していてもよいし、互いにずれていてもよい。位置が一致しているという場合、公差が存在してもよいことはもちろんである。
【0052】
(1.1.4.第2貫通孔)
第2貫通孔19は、励振電極7に対して第1端部3aの側(+X側、引出電極9が引き出されている側、パッド部9aが位置する側)に位置している。このような第2貫通孔19は、例えば、励振電極7によって励振される領域(別の観点では振動部13)と、パッケージ103に固定されて振動が規制されている領域(別の観点では固定部15)とが接する面積を低減し、後者の領域が前者の領域における振動を阻害する蓋然性を低減することに寄与する。また、例えば、第2貫通孔19の内面に導体パターン5が形成されることによって、第2貫通孔19は、水晶素子1の表裏の導通に寄与する。
【0053】
第2貫通孔19の位置、形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、第2貫通孔19は、中間部17に位置している。図示の例とは異なり、第2貫通孔19は、例えば、固定部15に位置していてもよいし、中間部17及び固定部15の双方に跨っていてもよい。また、第2貫通孔19の縁部の一部は、中間部17の縁部の一部と一致していてもよいし、一致していなくてもよい(図示の例)。特に図示しないが、第2貫通孔19は、例えば、中間部17が設けられていない水晶素板に設けられても構わない。そのような水晶素板としては、例えば、振動部13と固定部15とが直接的につながっているもの、及び全体が一定の厚さのものが挙げられる。
【0054】
励振電極7と第1端部3aとの間の領域をX方向において2等分又は3等分したとき、第2貫通孔19の全体又は中心は、例えば、最も励振電極7の側の範囲に位置してよい。なお、Z’方向の位置によって励振電極7、第1端部3a及び第2貫通孔19の位置関係が相違する場合は、上記の説明は、例えば、中心線CLの位置を基準としてよい。また、第2貫通孔19は、例えば、水晶素板3(又は振動部13若しくは励振電極7)のZ’方向の範囲に対して、概ね中央に位置している。換言すれば、第2貫通孔19の中心は、中心線CLに概ね一致している。
【0055】
図示の例では、第2貫通孔19は、励振電極7から第1端部3aへの方向(X方向)に直交する方向(Z’方向)に延びるスリット状とされている。別の観点では、第2貫通孔19の平面視における形状は、Z’方向に平行な長辺を有するとともに、短辺が外側に膨らむ弧状(例えば半円)とされた長円状とされている。特に図示しないが、第2貫通孔19は、上記の他、例えば、概略長方形状とされてよい。
【0056】
第2貫通孔19の、XZ’断面における形状及び寸法は、Y’方向(貫通方向)において概略一定であってもよいし、変化していてもよい。後者の例としては、第2貫通孔19の内面にY’軸に傾斜する結晶面が現れている態様が挙げられる。この場合、上述した、又は後述する、第2貫通孔19の位置、形状及び寸法等は、例えば、開口面(第5面27A又は第6面27B)におけるものであってよい。
【0057】
第2貫通孔19のZ’方向における長さ(例えば平面視における最大長さ。本段落において、他の部位についても、以下、同様。)は、例えば、水晶素板3(又は振動部13)のZ’方向の長さの1/4以上又は1/3以上とされてよい。第2貫通孔19のX方向における長さは、例えば、中間部17の幅(X方向の長さ)と概ね同等の幅(例えば前者の8割以上)とされてよい。また、第2貫通孔19のX方向における長さは、例えば、水晶素子1のX方向の長さの1/10以下、1/20以下又は1/30以下とされてよい。
【0058】
(1.1.5.第3貫通孔)
第3貫通孔21は、平面視において引出電極9(より詳細にはパッド部9a)に重なる位置に設けられている。また、別の観点では、第3貫通孔21は、固定部15に設けられている。第3貫通孔21は、例えば、例えば、その内面に導体パターン5が形成されることによって、水晶素子1の表裏の導通に寄与してよい。特に図示しないが、第3貫通孔21は、相対的に厚い固定部15を有さない水晶素板に設けられても構わない。そのような水晶素板としては、例えば、全体が一定の厚さのもの、及び振動部が固定部よりも厚いもの(いわゆるメサ型の水晶素板)が挙げられる。
【0059】
第3貫通孔21の数、位置、形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。図示の例では、第3貫通孔21は、2つ設けられている。2つの第3貫通孔21は、中心線CL(別の観点では緩衝部11。以下、本段落において同様。)の両側に位置している。2つ(又は3以上)の第3貫通孔21の位置は、中心線CLに対して線対称であってもよいし(図示の例)、線対称でなくてもよい。また、複数の第3貫通孔21の形状及び大きさは、互いに同一(及び/又は線対称)であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。
【0060】
各第3貫通孔21の全体又は中心は、例えば、固定部15の中心又はパッド部9aの中心に対して、第1端部3aの側(+X側)に位置していてよい。また、水晶素板3(固定部15)をZ’方向に3等分したとき(X方向の位置によってZ’方向の長さが異なる場合は第3貫通孔21のX方向の位置におけるZ’方向の長さを基準としてよい)、例えば、各第3貫通孔21の全体又は中心は、両側の領域の一方に位置していてよい。別の観点では、Z’方向において、2つの第3貫通孔21の間隔(第3貫通孔21の非配置領域の長さ)又は中心間の距離は、例えば、固定部15のZ’方向の長さの1/3以上であってよい。もちろん、第3貫通孔21の位置は、上記とは異なっていてもよい。
【0061】
図示の例では、第3貫通孔21の平面視における形状は、Z’方向を長軸の方向とする楕円状とされている。図示の例とは異なり、第3貫通孔21の平面視における形状は、例えば、多角形状(例えば矩形)、円形状、又は多角形の辺を外側に膨らむ弧状にした形状であってよい。また、第3貫通孔21は、図示の例とは逆に、X方向の長さ(Z’方向の位置によって異なる場合は最大長さ)がZ’方向の長さ(X方向の位置によって異なる場合は最大長さ)よりも大きくてもよい。
【0062】
第3貫通孔21は、XZ’断面の形状及び寸法がY’方向(貫通方向)において一定であってもよいし、変化していてもよい。後者の例としては、第3貫通孔21の内面にY’軸に傾斜する結晶面が現れている態様が挙げられる。この場合、上述した、又は後述する、第3貫通孔21の位置、形状及び寸法等は、例えば、開口面(第3面25A又は第4面25B)におけるものであってよい。
【0063】
図示の例では、第3貫通孔21の最大径、円相当径及びZ’方向の最大長さは、第2貫通孔19のZ’方向の最大長さよりも小さい。第3貫通孔21の最大径、円相当径及び/又はX方向の最大長さは、第2貫通孔19のX方向の長さ(幅)に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。
【0064】
第3貫通孔21のZ’方向の径(X方向の位置によって異なる場合は例えば最大径)又は円相当径は、例えば、パッド部9aのZ’方向の長さ(第3貫通孔21の存在を無視した場合の長さ。X方向の位置によって異なる場合は例えば第3貫通孔21とX方向の位置が重複する領域の最小長さ)に対して、1/2以下、1/3以下又は1/4以下であってもよいし、逆に、1/4以上、1/3以上又は1/2以上であってもよい。上記の上限と下限とは、矛盾が生じないように任意の者同士が組み合わされてもよい。上記の説明において、パッド部9aのZ’方向の長さに代えて、水晶素子1又は固定部15のZ’方向の長さの1/3の長さを用いてもよい。
【0065】
第3貫通孔21のX方向の径(Z’方向の位置によって異なる場合は例えば最大径)又は円相当径は、例えば、パッド部9aのX方向の長さ(第3貫通孔21の存在を無視した場合の長さ。Z’方向の位置によって異なる場合は例えば第3貫通孔21とZ’方向の位置が重複する領域の最小長さ)に対して、1/2以下、1/3以下又は1/4以下であってもよいし、逆に、1/4以上、1/3以上又は1/2以上であってもよい。上記の上限と下限とは、矛盾が生じないように任意の者同士が組み合わされてもよい。上記の説明において、パッド部9aのX方向の長さに代えて、水晶素子1のX方向の長さから振動部13のX方向の長さを除いた長さ、励振電極7から第1端部3aまでのX方向の長さ、又は固定部15のX方向の長さを用いてもよい。
【0066】
(1.2.導体パターン)
導体パターン5の材料は、例えば、金属とされてよい。導体パターン5は、単一の材料からなる1層の金属層によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料からなる複数の金属層が積層されて構成されていてもよい。金属層の材料としては、例えば、ニッケル、クロム、ニクロム、チタン、金若しくは銀又はこれらを含む合金を挙げることができる。導体パターン5は、例えば、その領域(換言すれば面積)全体が同一の材料によって構成されていてもよいし、一部の領域が異なる材料によって構成されていてもよい。
【0067】
(1.2.1.励振電極)
1対の励振電極7は、既述のように振動部13に電圧を印加すべく、振動部13の両主面に位置している。1対の励振電極7は、例えば、平面透視において概ね互いに過不足なく重なる位置、形状及び大きさで設けられている。ただし、互いに重複しない部位が存在しても構わない。平面視における励振電極7の位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。
【0068】
例えば、励振電極7は、振動部13の中央側の領域に位置している。別の観点では、励振電極7は、振動部13の外縁から離れて位置している。励振電極7の中心は、例えば、振動部13及び/又はその主面の中心とZ’方向において概ね一致している。また、励振電極7の中心は、振動部13の中心に対して、X方向において、+X側に位置していてもよいし、一致していてもよいし、-X側に位置していてもよい。
【0069】
また、例えば、励振電極7の形状は、振動部13の形状と類似する形状であってもよいし、異なる形状であってもよい(図示の例)。前者としては、例えば、振動部13の形状が矩形状であるのに対して、励振電極7の形状が振動部13の長辺と平行な長辺を有する矩形状である(少なくとも一方は正方形であってもよい。)態様を挙げることができる。また、後者としては、図示の例のように、振動部13の形状が矩形状であるのに対して、励振電極7の形状が円形、楕円形又は多角形(四角形を除く)である態様を挙げることができる。
【0070】
(1.2.2.引出電極)
各引出電極9は、励振電極7から第1端部3aに向かって引き出されている。なお、このようにいうとき、図示の例から理解されるように、配線部9bは、励振電極7から第1端部3aへの方向(X方向)に平行に延びていなくてもよい。引出電極9が全体的に励振電極7に対して第1端部3aの側(+X側)に引き出されていれば、引出電極9は、第1端部3aの側に引き出されていると表現されてよい。あるいは、X方向において、パッド部9aの全体又は中心が、励振電極7よりも+X側に位置していれば、上記のように表現されてよい。
【0071】
各引出電極9において、パッド部9aは、水晶素板3の少なくとも下面(図4のパッド111側の面。以下、他の部位の面についても同様。)に重なっている。すなわち、水晶素板3の下面には、1対の引出電極9が有する1対のパッド部9aが配置されている。図示の例では、各引出電極9は、水晶素板3の上面(パッド111とは反対側の面。以下、他の部位の面についても同様。)にもパッド部9aを有している。すなわち、各引出電極9は、2つのパッド部9aを有しており、1対の引出電極9は、合計で2対のパッド部9aを有している。これにより、例えば、水晶素子1は、1対の主面のいずれを下面にすることも可能となっている。なお、図示の例とは異なり、1対の引出電極9は、1対のパッド部9aのみを有していてもよい。
【0072】
水晶素子1の下面(又は上面)の1対のパッド部9aは、Z’方向に並んでいる。下面(又は上面)の1対のパッド部9aは、例えば、水晶素板3のX軸に平行な中心線CLに対して、概略、線対称の位置、形状及び大きさで設けられてよい。下面の1対のパッド部9aと、上面の1対のパッド部9aとは、同一の構成とされてよい。
【0073】
各引出電極9において、上面のパッド部9aと下面のパッド部9aとは、各引出電極9の、水晶素板3のX方向に面する側面及び/又はY方向に面する側面に位置している部分(符号省略)によって接続されている。これにより、上面(又は下面)の励振電極7と下面(又は上面)のパッド部9aとが接続される。図示の例とは異なり、上面のパッド部9aが設けられていない態様においては、例えば、配線部9bが水晶素板3のX方向に面する側面及び/又はY方向に面する側面に拡張されることによって、上面の励振電極7と下面のパッド部9aとが接続されてよい。
【0074】
各パッド部9aの具体的な位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、パッド部9aは、水晶素板3の一方の主面において、当該主面の中央よりも第1端部3aの側(+X側)に位置しており、第1端部3aに至っているとともに、+Z’側又は-Z’側の縁部に至っている。また、パッド部9aは、少なくとも固定部15に重なっている。図示の例では、パッド部9aは、固定部15だけでなく、中間部17にも重なっており、さらには、振動部13にも重なっている。特に図示しないが、パッド部9aは、振動部13に重なっていなくてもよいし、中間部17に重なっていなくてもよい。
【0075】
図示の例では、パッド部9aは、X方向及びZ’方向に平行な辺を有する矩形状に切欠き9cが形成された形状である。図示の例とは異なり、パッド部9aは、切欠き9cを有さない形状(例えば矩形状)であっても構わない。各パッド部9aのZ’方向の長さ(例えば最大長さ)は、水晶素板3又は固定部15のZ’方向の長さの1/3以上であってもよいし(図示の例)、1/3未満であってもよい。パッド部9aのX方向の長さ(例えば最大長さ)は、水晶素板3のX方向の長さの1/3以上であってもよいし(図示の例)、1/3未満であってもよい。
【0076】
切欠き9cは、Z’方向に互いに離れている1対のパッド部9aの互いに対向する縁部に形成されている。また、切欠き9cは、例えば、その全体又は中心が、パッド部9a又は固定部15のX方向の長さ(切欠き9cの存在は無視する。例えば最大長さ。又はZ’方向の位置が切欠き9cと重複する部分の長さ。)のうちの、第1端部3aの側の2/3以下の範囲又は1/2以下の範囲に位置している。切欠き9cが形成されることによって、1対のパッド部9aのZ’方向の距離は局所的に長くなっている。切欠き9cのZ’方向の長さ(別の観点では1対のパッド部9aの距離が長くされた分の1/2の長さ)は適宜に設定されてよい。例えば、切欠き9cのZ’方向の長さは、パッド部9aのZ’方向の長さ(例えば最大長さ。又は切欠き9cとX方向において隣接する部分の長さ。又は水晶素板3のZ’方向の長さの1/3)に対して、1/10以上、1/5以上又は1/4以上とされてよく、1/2以下、1/3以下又は1/4以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように、任意の者同士が組み合わされてよい。
【0077】
各引出電極9において、配線部9bは、例えば、励振電極7から延びて当該励振電極7が位置している面(上面又は下面)のパッド部9aに至っている。図示の例では、上記のようにパッド部9aは、固定部15だけでなく、中間部17及び振動部13に重なっており、ひいては、配線部9bは、振動部13のみに重なり、中間部17及び固定部15には重なっていない。図示の例とは異なり、パッド部9aが振動部13に重なっていない態様等において、配線部9bは、中間部17に重なったり、固定部15に重なったりしてよい。
【0078】
配線部9bの具体的な位置、形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、配線部9bは、励振電極7の縁部のうち第1端部3aの側からX方向に斜めに一定の幅で延びている。図示の例とは異なり、配線部9bは、X方向に平行に延びたり、幅が変化したりしてもよい。励振電極7が矩形状である態様等において、配線部9bは、励振電極7の、第1端部3a側の辺から延び出てもよいし、角部から延び出てもよい。確認的に記載すると、配線部9bの幅(又はZ’方向の長さ)は、パッド部9aの幅(Z’方向の長さ)よりも狭い。
【0079】
(1.3.導体パターンと第2貫通孔及び第3貫通孔との位置関係)
第2貫通孔19及び第3貫通孔21は、例えば、引出電極9と重なっている。これにより、これらの貫通孔は、水晶素板3の表裏の導通に寄与している。ただし、図示の例とは異なり、第2貫通孔19は、引出電極9と重ならずに、振動の特性の向上のみに寄与してもよい。なお、第3貫通孔21も、引出電極9と重ならないように設けられてもよいが、この場合は、第3貫通孔21は、その位置によっては、緩衝部11と捉えられてよい。
【0080】
具体的には、例えば、第2貫通孔19は、Z’方向の両端が1対の引出電極9の双方に重なっている。そして、1対の引出電極9のそれぞれは、第2貫通孔19の一端部の内面に位置する部分を有している。これにより、1対の引出電極9のそれぞれは、水晶素板3の表裏に位置する部分同士が導通されている。より詳細には、図示の例では、1対のパッド部9aが第2貫通孔19に重なっている。第2貫通孔19の内面において、1対の引出電極9は、互いに短絡しないように互いに離れている。各引出電極9と第2貫通孔19とがZ’方向において重複する長さ、及び第2貫通孔19内における1対の引出電極9同士の距離等は適宜に設定されてよい。
【0081】
また、複数(図示の例では2つ)の第3貫通孔21のそれぞれは、例えば、1対の引出電極9のいずれか一方に重なっている。そして、各引出電極9は、1つ以上(図示の例では1つ)の第3貫通孔21の内面に位置する部分を有している。これにより、1対の引出電極9のそれぞれは、水晶素板3の表裏に位置する部分同士が導通されている。より詳細には、図示の例では、平面視において、パッド部9aが少なくとも1つの第3貫通孔21の全体に重なっている。引出電極9は、例えば、第3貫通孔21の内面の全面に重なっている。なお、図示の例とは異なり、第3貫通孔21の一部に引出電極9が重なっていてもよい。
【0082】
(1.4.緩衝部)
緩衝部11は、本実施形態では、既述のように、水晶素板3を厚さ方向に貫通する貫通孔(第1貫通孔)によって構成されている。緩衝部11は、1対の引出電極9(より詳細には例えば1対のパッド部9a)の間に位置している。これにより、既述のように、外部(例えばパッケージ103)から1対の引出電極9を介して水晶素板3に歪が付与されると、この歪は、緩衝部11によって吸収される。その結果、例えば、水晶素板3の振動の特性が向上する。
【0083】
第2貫通孔19は、緩衝部11と同様に、1対の引出電極9の間に位置し、また、励振電極7によって励振される振動の特性の向上に寄与し得る。ただし、両者は、種々の観点から区別可能である。例えば、緩衝部11及び第2貫通孔19は、励振電極7によって励振される振動に及ぼす作用の具体的な態様が相違する。すなわち、前者は、主として歪の吸収に寄与するのに対して、後者は、振動の規制の低減に寄与する。このような意図されている作用の相違に起因して、両者の位置、形状及び寸法は互いに相違してよい。なお、主たる作用及び/又は意図された作用は上記のとおりであっても、第2貫通孔19が歪の吸収に寄与したり、緩衝部11が振動の規制の低減に寄与したりしても構わない。
【0084】
緩衝部11(本実施形態では貫通孔)は、1つのみ設けられていてもよいし(図示の例)、2以上で設けられていてもよい。本実施形態並びに第2及び第3実施形態(図5及び図6)の説明では、前者を例に取り、また、他の態様の説明においても、特に断り無く、前者を前提とした表現をすることがある。後者については、後述する変形例(図7)の説明において述べる。
【0085】
緩衝部11は、平面視において、例えば、1対の引出電極9(より詳細には1対のパッド部9a)から離れている。すなわち、平面視において、緩衝部11と1対の引出電極9との間には、導体パターン5の非配置領域が介在している。別の観点では、緩衝部11は、水晶素子1の表裏の導通に寄与していない。ただし、図示の例とは異なり、緩衝部11は、1対の引出電極9の一方又は双方に対して、隣接していたり、重なっていたりしてもよい。この場合、緩衝部11の内面には、各引出電極9のうちの水晶素板3の表裏に位置する部分同士を導通する部分が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
【0086】
図示の例では、1対の引出電極9の、平面視において緩衝部11を挟んで互いに対向する縁部は、切欠き9cによって切り欠かれている。これにより、緩衝部11を1対の引出電極9から離しつつ、緩衝部11をZ’方向に大きくすることが容易化されている。緩衝部11は、その一部が切欠き9cに収まっていてもよいし(図示の例)、収まっていなくてもよい。前者の場合において、緩衝部11と1つの引出電極9との重複量(Z’方向の長さ)は任意である。例えば、上記重複量は、緩衝部11のZ’方向の長さの1/10以上又は1/5以上とされてよく、また、1つの切欠き9cのZ’方向の長さの1/3以上又は1/2以上とされてよい。
【0087】
緩衝部11は、少なくとも一部が固定部15に位置している。図示の例では、緩衝部11は、その全部が固定部15に位置しており、かつ固定部15の振動部13の側の端部(固定部15と中間部17との境界)から第1端部3aの側に離れている。この場合の緩衝部11のX方向の位置は任意である。例えば、緩衝部11の全体又は中心は、パッド部9a又は固定部15のX方向の長さ(例えば最大長さ。又はZ’方向の位置が緩衝部11と重複する部分若しくは緩衝部11に最も近い部分の長さ。)のうちの、第1端部3aの側の1/2以下又は1/3以下の範囲に位置してよい。緩衝部11は、その中心又は一部が、中心線CL上に位置してもよいし(図示の例)、位置していなくてもよい。
【0088】
緩衝部11と第1端部3a(より詳細には水晶素板3の+X側の側面)との距離(例えば最短距離)は任意である。例えば、当該距離は、固定部15又はパッド部9aのX方向の長さ(例えば最大長さ。又はZ’方向の位置が緩衝部11と重複する部分若しくは緩衝部11に最も近い部分の長さ。)に対して、1/50以上、1/30以上又は1/10以上とされてよく、また、1/3以下、1/4以下、1/5以下又は1/10以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように、任意の者同士が組み合わされてよい。
【0089】
図示の例では、緩衝部11の平面視における形状は、Z’方向を長軸の方向とする楕円状とされている。図示の例とは異なり、緩衝部11の平面視における形状は、例えば、多角形状(例えば矩形)、円形状、又は多角形の辺を外側に膨らむ弧状にした形状であってよい。さらに、緩衝部11の平面視における形状は、上記のような単純な形状(数学でいう凸集合の境界線を成すような形状)ではなく、T字状などの複雑な形状であってもよい。また、緩衝部11の平面視における形状は、図示の例とは逆に、X方向の長さ(例えば最大長さ)がZ’方向の長さ(例えば最大長さ)よりも大きくてもよい。この場合、例えば、X方向に見て水晶素板3を+Y’側又は-Y’側に撓ませる歪が1対の引出電極9から水晶素板3に付与されたときに当該歪を吸収する効果が向上する。
【0090】
緩衝部11は、例えば、第2貫通孔19及び第3貫通孔21から独立している(第2貫通孔19及び第3貫通孔21につながっていない。)。ただし、図示の例とは異なり、緩衝部11は、第2貫通孔19及び/又は第3貫通孔21とつながっていてもよい。例えば、緩衝部11は、X方向に長いスリット状とされ、第2貫通孔19とつながっていてもよい。このような場合は、その形状及び/又は寸法に照らして、合理的に緩衝部11、第2貫通孔19及び第3貫通孔21が区別されてよい。
【0091】
緩衝部11は、XZ’断面の形状及び寸法がY’方向(貫通方向)において一定であってもよいし、変化していてもよい。後者の例としては、緩衝部11の内面にY’軸に傾斜する結晶面が現れている態様が挙げられる。この場合、上述した、又は後述する、緩衝部11の位置、形状及び寸法等は、例えば、開口面(第3面25A又は第4面25B)におけるものであってよい。
【0092】
図示の例では、緩衝部11の最大径、円相当径及びZ’方向の最大長さは、第2貫通孔19のZ’方向の最大長さよりも小さい。緩衝部11の最大径、円相当径及び/又はX方向の最大長さは、第2貫通孔19のX方向の長さ(幅)に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。緩衝部11の開口面積は、第2貫通孔19の開口面積に対して、小さくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、大きくてもよい。
【0093】
また、図示の例では、平面視において、緩衝部11の形状及び寸法は、概略、第3貫通孔21の形状及び寸法と同様とされている。図示の例とは異なり、平面視において、緩衝部11の形状は、第3貫通孔21の形状と異なっていてもよい。また、両者の形状が相似である場合、又は相似でない場合において、緩衝部11は、X方向及び/又はZ’方向において、第3貫通孔21に対して、大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。同様に、両者の形状が相似である場合、又は相似でない場合において、緩衝部11の開口面積は、第3貫通孔21の開口面積に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし(図示の例)、大きくてもよい。
【0094】
既述のように、緩衝部11は、引出電極9に対して重なっていなくてもよいし(図示の例)、重なっていてもよい。このことから理解されるように、緩衝部11のZ’方向の長さ(X方向の位置によって異なる場合は例えば最大長さ)は、1対の引出電極9(1対のパッド部9a)の間のZ’方向の距離(最小値又は最大値)に対して、小さくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、大きくてもよい。例えば、前者は、後者に対して、1/5以上、1/2以上、1倍以上、3/2以上とされてよく、3倍以下、2倍以下、1倍以下、1/2以下、1/3以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように任意の者同士が組み合わされてよい。上記において、矛盾が生じないように、1対の引出電極9の間のZ’方向の距離に代えて、水晶素板3(固定部15)のZ’方向の長さの1/3が用いられてもよい。
【0095】
緩衝部11のX方向の長さ(Z’方向の位置によって異なる場合は例えば最大長さ)は、例えば、パッド部9a又は固定部15のX方向の長さ(例えば最大長さ。又はZ’方向の位置が緩衝部11と重複する部分若しくは緩衝部11に最も近い部分の長さ。)に対して、1/10以上、1/5以上、1/3以上又は1/2以上とされてよく、1.2倍以下、1倍以下、4/5以下、2/3以下、1/2以下又は1/3以下とされてよい。上記の下限と上限とは、矛盾が生じないように任意の者同士が組み合わされてよい。なお、上記の1.2倍以下又は1倍以下の上限は、図示の例とは異なり、第2貫通孔19が設けられていない態様、又は第2貫通孔19と緩衝部11がつながっている態様も考慮したものである。
【0096】
(1.5.水晶素子の製造方法)
水晶素子1は、公知の種々の製造方法を応用して作製されてよい。特に図示しないが、以下では、その一例について説明する。
【0097】
まず、水晶からなるウェハを用意する。ウェハは、複数の水晶素板3が多数個取りされるものである。このようなウェハは、例えば、上述したATカット板のカット角で切り出され、また、固定部15の厚さと同等の厚さに加工される。
【0098】
次に、ウェハの両主面にエッチングマスクを形成する。これらのエッチングマスクは、例えば、水晶素板3(振動部13、中間部17及び固定部15)となる領域と、複数の水晶素板3につながる枠状部(捨て代)となる領域とに重なっている。また、これらのエッチングマスクは、緩衝部11、第2貫通孔19及び第3貫通孔21に重なる領域に開口が形成されている。
【0099】
そして、エッチングマスクを介してウェハを両主面側からエッチングする。エッチングは、例えば、ウェハを薬液に浸すウェットエッチングである。これにより、水晶素板3となる領域の周囲がエッチングされ、水晶素板3の外形が形成されるとともに、緩衝部11、第2貫通孔19及び第3貫通孔21が形成される。
【0100】
次に、ウェハの両主面に新たなエッチングマスクを形成する。新たなエッチングマスクは、固定部15(第3面25A又は第4面25B)となる領域に重なっている(振動部13及び中間部17となる領域に重なっていない。)。なお、この新たなエッチングマスクは、先のエッチングマスクの一部を除去することによって形成されてもよい。
【0101】
そして、新たなエッチングマスクを介してウェハを両主面側からエッチングする。これにより、振動部13となる領域は、固定部15となる領域よりも薄くなる。また、エッチングに対する水晶の異方性に起因して、振動部13と固定部15との間には結晶面が現れ、ひいては、振動部13と固定部15との間に固定部15側ほど厚くなる中間部17が形成される。
【0102】
その後、エッチングマスクは除去され、導体パターン5が形成される。導体パターン5は、例えば、水晶素板3の表面に形成されたマスクを介して金属が成膜されることによって形成されてよい。また、導体パターン5は、水晶素板3の全面又は大部分に金属が成膜された後、マスクを介してエッチングが行われることによって形成されてもよい。成膜は、スパッタリング等の適宜な方法によってなされてよい。
【0103】
導体パターン5の形成後、水晶素板3は、ウェハの枠状部との連結部を折ったり、切ったりすることなどにより、枠状部から分離される(個片化される。)。なお、個片化の際及び/又は個片化後において、固定部15は、水晶素子1の保持に利用されてよい。例えば、固定部15が吸着保持されることによって、水晶素子1が冶具に保持されてよい。
【0104】
(2.水晶素子1の利用例)
図3は、水晶素子1の利用例としての水晶デバイス101の斜視図である。図4は、図3のIV-IV線における断面図である。なお、水晶デバイス101は、いずれの方向が上下方向又は水平方向とされてもよいが、以下の説明では、便宜上、図3及び図4の紙面上方を上方として、上面等の用語を用いることがある。
【0105】
水晶デバイス101は、例えば、全体として略直方体形状となっている電子部品である。水晶デバイスの寸法は、適宜な大きさとされてよい。一例を挙げると、長辺又は短辺の長さは、0.6mm以上2.0mm以下であり、上下方向の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下である。水晶デバイス101は、例えば、その下面を不図示の実装基体(例えば回路基板)の上面に対向させて表面実装される。
【0106】
水晶デバイス101は、例えば、一定の周波数で信号強度(例えば電圧及び/又は電流)が振動する発振信号の生成に寄与する振動子として構成されている。水晶デバイス101は、例えば、発振信号の生成に利用される振動を生じる水晶素子1と、水晶素子1をパッケージングしているパッケージ103とを有している。
【0107】
パッケージ103は、例えば、水晶素子1を支持する基体107と、基体107に接合されて水晶素子1を封止する蓋体109とを有している。水晶素子1は、例えば、導電性の接合材105によって基体107に接合されて支持されている。パッケージ103の内部空間は、例えば、真空とされ、又は適当なガス(例えば、窒素)が封入されている。
【0108】
基体107は、例えば、水晶素子1を収容する凹部を有する形状とされている。別の観点では、基体107は、平板状の基板部107aと、基板部107aの上面の縁部に沿って設けられている枠部107bとを有している。基板部107aおよび枠部107bからなる基体107は、セラミック材料等の絶縁材料からなる。蓋体109は、例えば、金属から構成され、枠部107bの上面にシーム溶接等により接合される。
【0109】
パッケージ103は、水晶素子1と、水晶デバイス101が実装される不図示の実装基体とを電気的に接続するための導体を有している。例えば、パッケージ103は、水晶素子1を実装するためのパッド111と、水晶デバイス101を実装基体に実装するための外部端子113と、両者を接続する不図示の配線導体とを有している。
【0110】
パッド111は、基板部107aの上面に位置する導電層により構成されている。外部端子113は、基板部107aの下面に位置する導電層により構成されている。不図示の配線導体は、基板部107aを上下に貫通する貫通導体を含んで構成されている。これらの導体の材料は、例えば、金属である。
【0111】
水晶素子1は、接合材105によってパッド111に接合されている。これにより、水晶素子1は、基体107に支持されているとともに、パッケージ103に電気的に接続されている。より詳細には、水晶素子1は、例えば、その一端側においてパッド111と接合されて、片持ち梁状に支持されている。接合材105は、例えば、導電性接着剤からなる。導電性接着剤は、金属からなるフィラーを混ぜ込んだ熱硬化性樹脂によって構成されている。
【0112】
接合材105は、第3貫通孔21内に位置していてもよいし(図示の例)、位置していなくてもよい。前者の場合における充填の態様及び量等は任意である。例えば、接合材105は、第3貫通孔21の下端から第3貫通孔21内の所定の高さまで、第3貫通孔21内に隙間なく充填されていてもよいし(図示の例)、第3貫通孔21内の内面に層状に重なって空洞を形成していてもよいし、第3貫通孔21内でいずれかの径方向に偏って位置していてもよい。また、接合材105の第3貫通孔21内における上端の位置は、第3貫通孔21の下端から第3貫通孔21の深さ方向の中央までの範囲に位置していてもよいし、上記中央から第3貫通孔21の上端までの間に位置していてもよいし(図示の例)、第3貫通孔21の上端よりも上方に位置していてもよい(接合材105は第3貫通孔21の直上に位置する部分を含んでいてもよい。)。接合材105が第3貫通孔21の直上に位置する部分を含む場合、この部分は、接合材105のうち水晶素子1の外周を回り込んでいる部分とつながっていなくてもよいし、つながっていてもよい。
【0113】
外部端子113は、例えば、不図示の実装基体のパッドとはんだによって接合される。これにより、水晶デバイス101は、実装基体に支持されるとともに電気的に接続される。
【0114】
水晶素子1は、上記の利用例の他、種々の態様で利用されてよい。
【0115】
例えば、水晶素子1を含む水晶デバイス(圧電デバイス)は、水晶素子1に加えて、水晶素子1に電圧を印加して発振信号を生成する集積回路素子(IC:Integrated Circuit)を有する発振器であってもよい。また、例えば、振動子は、水晶素子1の他に、サーミスタ等の他の電子素子を有するものであってもよい。また、圧電デバイスは、恒温槽付のものであってもよい。
【0116】
圧電デバイスにおいて、水晶素子1をパッケージングするパッケージの構造は、適宜な構成とされてよい。例えば、パッケージは、上面及び下面に凹部を有する断面H型のものであってもよい。また、パッケージは、基板状の基体(凹部を有していない基体)と、基体に被せられるキャップ状の蓋体とで構成されるものであってもよい。
【0117】
(3.第1実施形態についてまとめ)
以上のとおり、本実施形態では、水晶素子1は、圧電素板(水晶素板3)と、1対の励振電極7と、1対の引出電極9とを有している。水晶素板3は、第1方向(X方向)及び当該X方向に直交する第2方向(Z’方向)に広がっており、X方向の一方側(+X側)に第1端部3aを有している。1対の励振電極7は、水晶素板3に重なっている。1対の引出電極9は、水晶素板3に重なり、1対の励振電極7から第1端部3aへ向かって引き出されている。また、1対の引出電極9は、Z’方向において互いに離れている1対のパッド部9aを有している。水晶素板3は、1対のパッド部9aの間に位置している緩衝部11を有している。
【0118】
この場合、例えば、既述のように、外部(例えばパッケージ103)から1対の引出電極9を介して水晶素板3に歪が付与されたときに、当該歪を緩衝部11の変形によって吸収することが容易化される。その結果、例えば、励振電極7の領域(振動部13)に伝わる歪が低減され、水晶素子1の振動特性が低下する蓋然性が低減される。ひいては、水晶素子1の電気的特性が向上する。
【0119】
なお、比較的小さい一定の応力が加えられて当該応力の大きさに応じた大きさの変形が水晶素板3に生じる状況を想定すると、緩衝部11を設けずに、水晶素板3の剛性を高くした方が水晶素板3(ひいては励振電極7の領域)の歪が低減されることになる。しかし、実際には、例えば、パッケージ103に反りが生じた場合、パッケージ103から水晶素板3に加えられる力は相対的に大きく、パッケージ103から水晶素板3に一定の歪が付与されると捉えることができる。従って、上記のように、剛性が低くなる緩衝部11を設けて歪を吸収することによって、励振電極7の領域に歪が伝わる蓋然性を低減できる。
【0120】
緩衝部11は、水晶素板3を厚さ方向に貫通する第1貫通孔を含んでよい。
【0121】
この場合、例えば、エッチングによって水晶素板3の外形を形成するときに緩衝部11を形成することができる。また、例えば、緩衝部11は、水晶素板3の厚さ全体に亘っているから、平面視において小さくされても、水晶素板3の剛性を低減する作用(歪を吸収する作用)が維持されやすい。すなわち、平面視において緩衝部11を小さくしやすい。
【0122】
緩衝部11は、1対の引出電極9(1対のパッド部9a)から離れていてよい。
【0123】
この場合、例えば、接合材105が緩衝部11に侵入しにくい。その結果、例えば、接合材105によって緩衝部11の変形が阻害される蓋然性が低減される。また、緩衝部11が1対の引出電極9の間に1対の引出電極9から離れて位置しているということは、緩衝部11のZ’方向の大きさは、比較的小さくされているといえる。緩衝部11がZ’方向において小さいことにより、例えば、接合材105によって片持ち梁状に水晶素子1を支持するための引出電極9の領域(換言すれば固定部15)における強度を確保することが容易である。一方、緩衝部11がZ’方向において小さくても、1対の引出電極9の相対移動を許容する(歪を吸収する)作用は維持できる。
【0124】
なお、このような緩衝部11のZ’方向の大きさは、緩衝部11と第2貫通孔19との相違の一例である。既述のように、第2貫通孔19は、励振電極7の領域(換言すれば振動部13)と1対の引出電極9の領域(固定部15)とを接続する面積を低減して、前者の領域における振動が後者の領域によって規制される蓋然性を低減するためのものである。従って、第2貫通孔19は、緩衝部11と対照的に、Z’方向において比較的大きくされ、さらには、1対の引出電極9に重なっている。
【0125】
ただし、既に言及したように、上記の説明とは異なり、緩衝部11は、1対の引出電極9に対して、隣接していたり、重なっていたりしてもよい。換言すれば、緩衝部11は、Z’方向において比較的大きくされていてもよい。この場合は、例えば、余剰な接合材105を逃がす部位として緩衝部11を利用可能である。また、緩衝部11は、第2貫通孔19と同様に、表裏の導通に利用されても構わない。
【0126】
水晶素板3は、1対の励振電極7が重なっている振動部13と、1対の引出電極9(パッド部9a)が重なっており、前記振動部13よりも厚い固定部15と、を有してよい。緩衝部11は、固定部15に少なくとも一部が位置していてよい。
【0127】
この場合、例えば、水晶素板3は、固定部15が振動部13よりも厚くされていることによって、固定部15によって強度を確保できる。その一方で、固定部15で歪が吸収されにくくなってしまう。このような構成の水晶素板3において、固定部15に緩衝部11が設けられることによって、緩衝部11による歪の吸収の作用が有効に奏される。
【0128】
なお、このような緩衝部11の位置は、緩衝部11と第2貫通孔19との相違の一例である。既述のように、第2貫通孔19は、振動部13と固定部15とを接続する面積を低減して、振動部13における振動が固定部15によって規制される蓋然性を低減するためのものである。従って、第2貫通孔19は、緩衝部11とは異なり、振動部13と固定部15との間に位置する。
【0129】
緩衝部11は、固定部15の振動部13の側の端部から離れていてよい。より詳細には、例えば、緩衝部11は、固定部15の中心よりも第1端部3a側に位置してよい。
【0130】
この場合、例えば、固定部15のうち第1端部3a側に位置する緩衝部11によって、第1端部3a側に付与された歪を吸収するとともに、固定部15のうち振動部13側に位置する部分によって緩衝部11側から振動部13側へ伝わる応力による歪を低減する効果が期待される。なお、このような緩衝部11の位置は、既述の説明から理解されるように、緩衝部11と第2貫通孔19との相違の一例である。
【0131】
緩衝部11の第1方向(X方向)の最大長さは、固定部15のX方向の長さの半分以下とされてよい。
【0132】
この場合、例えば、固定部15の強度を確保することが容易化される。また、例えば、上記のように、緩衝部11が固定部15の中央よりも第1端部3a側に位置する場合においては、緩衝部11によって歪を吸収しつつ、緩衝部11側から振動部13側へ伝わる応力による歪を低減する効果が期待される。
【0133】
水晶素板3は、1対の励振電極7と緩衝部11との間に水晶素板3を厚さ方向に貫通する第2貫通孔19を更に有していてよい。
【0134】
この場合、例えば、緩衝部11によって歪を吸収しつつ、第2貫通孔19によって励振電極7の領域(振動部13)における振動が引出電極9の領域(固定部15)によって規制される蓋然性を低減できる。その結果、励振電極7の領域における振動特性が向上する。また、例えば、第2貫通孔19と緩衝部11との間に梁状部分が形成されて、第2貫通孔19が設けられていない態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して緩衝部11の励振電極7側の領域の剛性が低下するから、緩衝部11の作用の向上が期待される。
【0135】
平面視において、緩衝部11の面積は、第2貫通孔19の面積よりも小さくてよい。
【0136】
この場合、例えば、固定部15の強度を確保することが容易である。また、緩衝部11の両側に位置する1対の引出電極9の平面視における面積を確保することも容易である。
【0137】
水晶素板3は、平面視において1対の引出電極9に重なる位置に、水晶素板3を厚さ方向に貫通する1対の第3貫通孔21を更に有していてよい。
【0138】
この場合、例えば、第3貫通孔21によって水晶素子1の表裏を導通しやすくすることができる。また、導体パターン5及び接合材105等の態様にもよるが、第3貫通孔21と緩衝部11との間に梁状部分が形成されて、第3貫通孔21が設けられていない態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる)に比較して緩衝部11の引出電極9側の領域の剛性が低下するから、緩衝部11の作用の向上が期待される。
【0139】
平面視において、緩衝部11の中心は、水晶素板3の、X方向に平行な中心線CL上に位置していてよい。1対の第3貫通孔21は、中心線CLに対して線対称に位置していてよい。
【0140】
この場合、例えば、緩衝部11のZ’方向の両側における剛性を同等にしやすい。その結果、例えば、1対の引出電極9に歪が付与されたときに、歪が+Z’側又は-Z’側に偏って励振電極7の領域に伝わる蓋然性が低減される。その結果、意図されていない特異な振動が生じる蓋然性が低減され、ひいては、水晶素子1の電気的特性が低下する蓋然性が低減される。
【0141】
本実施形態に係る圧電デバイス(水晶デバイス101)は、上記のような水晶素子1と、水晶素子1が実装されているパッケージ103と、を有している。
【0142】
このような水晶デバイス101は、本実施形態に係る水晶素子1の上記の効果を得ることができる。例えば、パッケージ103の反りによって水晶素子1に歪が付与されたときに、既述のように緩衝部11によって当該歪を吸収することができる。
【0143】
水晶デバイス101は、水晶素子1とパッケージ103とを接合している導電性の接合材105を更に有してよい。接合材105は、1対の第3貫通孔21の内部に位置する部分を有していてよい。
【0144】
この場合、例えば、接合材105と1対の引出電極9との接合面積を増大して、水晶素子1とパッケージ103との導通の信頼性を向上させることができる。また、余剰な接合材105は、引出電極9の間に位置する緩衝部11に優先して引出電極9に重なる第3貫通孔21に入り込む。すなわち、緩衝部11に接合材105が入り込む蓋然性が低減される。その結果、例えば、既述のように、接合材105によって緩衝部11の変形が阻害される蓋然性が低減される。また、例えば、1対の第3貫通孔21が緩衝部11に対して対称的に配置されている場合においては、1対の第3貫通孔21内の接合材105の硬化収縮による応力バランスが均等になりやすい。
【0145】
平面視における緩衝部11の形状は、円形状、楕円状又は角部に丸みを有する多角形状であってよい。
【0146】
この場合、例えば、緩衝部11において応力集中が生じる蓋然性が低減される。ひいては、緩衝部11(その周囲)において水晶素板3の破損が生じる蓋然性が低下される。
【0147】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る水晶素子201の一部を破断して示す水晶素子201の斜視図である。この図は、第1実施形態の図2に対応している。破断していない状態の水晶素子201の斜視図は、図1と同様である。
【0148】
水晶素子201は、水晶素板203の緩衝部211が凹部によって構成されている点のみが第1実施形態の水晶素子1と相違する。図示の例では、水晶素板203の両主面に凹部が形成されており、合計で2つの凹部が形成されている。ただし、凹部は、一方の主面のみに形成されていても構わない。なお、2つの凹部は、それぞれ緩衝部211と捉えられてもよいし、水晶素板3のうち、2つの凹部を含む領域が緩衝部211と捉えられてもよい。なお、本実施形態の説明では、便宜上、前者の捉え方をすることがある。
【0149】
2つの緩衝部211(凹部)の、位置(Y’方向の位置を除く)、形状及び寸法は、例えば、互いに同一である(結晶面の影響は除く。)。ただし、両者は異なっていてもよい。いずれにせよ、第1実施形態の緩衝部11(第1貫通孔)の位置、形状及び寸法等の説明は、Y’方向の寸法を除いては、緩衝部211に援用されてよい。
【0150】
緩衝部211の深さは任意である。例えば、当該深さは、振動部13の第1面23Aと固定部15の第3面25Aとの高さの差と同等であってよい。別の観点では、水晶素板3のうち、2つの緩衝部211の間となる部分の厚さは、振動部13の厚さと同等であってよい。ただし、上記の説明とは異なり、緩衝部211の深さは、上記の高さの差に対して、小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0151】
水晶素子201の製造方法は、緩衝部211の形成方法を除いて、水晶素子1の製造方法と同様でよい。水晶素子201の製造方法においては、例えば、振動部13を薄くするエッチングを行うために固定部15に重ねられるエッチングマスクに、緩衝部211となる領域に重なる開口を形成する。これにより、固定部15の主面の一部がエッチングされて緩衝部211が形成される。
【0152】
上記のように緩衝部211を形成する場合、例えば、緩衝部211の深さ(最大深さ)は、振動部13の第1面23Aと固定部15の第3面25Aとの高さの差と同等になる。ただし、エッチングに対する水晶の異方性に起因して、緩衝部211の深さは、第1面23Aと第3面25Aとの高さの差に至らないこともある。別の観点では、緩衝部211の内面は、傾斜面(別の観点では結晶面)のみによって構成され、Y’軸に概ね直交する底面を含まないことがある。
【0153】
なお、緩衝部211は、第1実施形態の緩衝部11と同様に、水晶素板203の外形のエッチングのときに形成されてもよい。この場合、例えば、エッチングの条件にもよるが、エッチングマスクの緩衝部211となる領域に重なる開口の径を小さくする。そして、エッチングに対する水晶の異方性に起因するエッチングの停止によって、凹部からなる緩衝部211を形成する。
【0154】
緩衝部211は、上記のように振動部13(又は水晶素板203の外形)と同時に形成されなくてもよい。例えば、水晶素板203の外形を形成するエッチングの前に形成されてもよいし、外形を形成するエッチングの後であって振動部13を薄くするエッチングの前に形成されてもよいし、振動部13を薄くするエッチングの後に形成されてもよい。緩衝部211は、エッチングではなく、機械的な加工によって形成されてもよい(この点は他の態様の緩衝部も同様。)。
【0155】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素板203は、1対の引出電極9の間に位置している緩衝部211を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、パッケージ103から1対の引出電極9を介して歪が付与されたときに、当該歪を緩衝部211によって吸収可能である。その結果、水晶素子201の電気的特性が向上する。
【0156】
本実施形態から理解されるように、緩衝部211は、水晶素板203を薄くする凹部を含んでよい。
【0157】
この場合、例えば、水晶素板203が厚みの異なる領域(振動部13及び固定部15)を有する場合、振動部13を薄くするときに緩衝部211を形成することができる。また、例えば、貫通孔からなる緩衝部11に比較して、緩衝部211によって歪の吸収作用を得つつも、固定部15の強度を確保したいときに有利である。
【0158】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る水晶素子301の斜視図である。この図は、第1実施形態の図1に対応している。
【0159】
水晶素子301は、水晶素板303の緩衝部311が切欠きによって構成されている点のみが第1実施形態の水晶素子1と相違する。緩衝部311としての切欠きは、平面視において第1端部3a(縁部)を切り欠いている。なお、切欠きは、貫通孔の一種として捉えることが可能である。ただし、本開示においては、便宜上、切欠きと、切欠きでないものとを区別するために、貫通孔は、第1端部3aを切り欠いていないものを指すものとする。
【0160】
第1実施形態の緩衝部11(第1貫通孔)の位置、形状及び寸法等の説明は、緩衝部311に援用されてよい。この場合、緩衝部311の平面視における形状に関して、緩衝部311の第1端部3a側の縁部の形状は、切り欠かれない場合の第1端部3aの形状(水晶素板3の+X側に面している側面を切欠きの位置までZ’方向に延長した仮想線)によって代用されてよい。また、緩衝部311の位置は、矛盾等が生じない限り、緩衝部11の位置についての既述の説明がそのまま援用されてもよいし、緩衝部11と第1端部3aとの距離(既述)で緩衝部311が+X側にシフトするように援用されてもよい。同様に、緩衝部311のX方向の大きさは、矛盾等が生じない限り、緩衝部11のX方向の大きさについての既述の説明がそのまま援用されてもよいし、緩衝部11と第1端部3aとの距離で緩衝部311が+X側に拡張されるように援用されてもよい。
【0161】
水晶素子301の製造方法は、第1実施形態に係る水晶素子1の製造方法と概ね同様とされてよい。ただし、水晶素板303の外形を形成するためのエッチングマスクにおいて、緩衝部311となる領域に重なる部分は、平面視において閉じられた開口ではなく、切欠き状とされる。これにより、切欠きからなる緩衝部311が形成される。
【0162】
以上のとおり、本実施形態においても、水晶素板303は、1対の引出電極9の間に位置している緩衝部311を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、パッケージ103から1対の引出電極9を介して歪が付与されたときに、当該歪を緩衝部311によって吸収可能である。その結果、水晶素子301の電気的特性が向上する。
【0163】
本実施形態から理解されるように、緩衝部311は、平面視において水晶素板303の第1端部3aを切り欠く切欠きを含んでよい。
【0164】
この場合、例えば、貫通孔からなる緩衝部11と同様に、水晶素板303の外形をエッチングするときに緩衝部311を形成することができる。また、例えば、貫通孔からなる緩衝部11に比較して、歪を吸収する効果が向上する。なお、歪を吸収する効果を得つつも、固定部15の強度を確保する観点では、貫通孔からなる緩衝部11が有利である。
【0165】
<変形例>
以下、水晶素子の種々の変形例について説明する。以下に述べる変形例における緩衝部は、第1~第3実施形態の緩衝部のいずれであってもよい。ただし、以下では、便宜上、基本的に第1実施形態の緩衝部11を例に取る。矛盾等が生じない限り、緩衝部11の語は、緩衝部211の語又は緩衝部311の語に置換されてよい。また、以下では、概略、下記の順で説明する。
・緩衝部の数に係る変形例
・固定部の位置に係る変形例
・固定部の厚さに係る変形例
【0166】
(緩衝部の数の変形例)
図7は、変形例に係る水晶素子401(水晶素板403)を示す平面図である。
【0167】
この図に示されるように、緩衝部11は、2以上の数で設けられてもよい。2以上の緩衝部11が設けられる場合において、その形状及び/又は寸法は、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。特に図示しないが、緩衝部11、緩衝部211及び緩衝部311の2つ以上が組み合わされることによって、2以上の緩衝部が設けられてもよい。いずれにせよ、既述の緩衝部11の形状及び寸法の説明は、矛盾等が生じない限り、2以上の緩衝部11の形状及び寸法に援用されてよい。寸法の援用においては、矛盾等が生じない限り、既述の寸法がそのまま援用されてもよいし、所定方向における寸法を、当該所定方向に緩衝部11が並んでいる数で割った寸法が援用されてもよい。
【0168】
2以上の緩衝部11の配置は任意である。例えば、2以上の緩衝部11の一部又は全部は、X方向に並んでいてもよいし、Z’方向に並んでいてもよいし、上記の方向に傾斜する方向に並んでいてもよいし、そのような区別が不可能な態様で配置されていてもよい。また、2以上の緩衝部11は、1列で配列されていてもよいし、2列以上で配列されていてもよい。2以上の緩衝部11は、中心線CL(図1参照)に対して、線対称に配置されていてもよいし、非対称に配置されていてもよい。
【0169】
なお、既述のように、2以上の緩衝部11は、その全体で緩衝部411として捉えられてもよい。中心線CL上に緩衝部の中心が位置するという場合、緩衝部11の中心が中心線CLに位置する態様だけでなく、緩衝部411の中心が中心線CL上に位置する態様を含んでよい。
【0170】
ここでは、第2貫通孔19を示し、第3貫通孔21を示していないが、これらの貫通孔の有無は任意である。後述する図8(a)及び図8(b)等においても同様に、第2貫通孔19及び第3貫通孔21の有無は任意である。
【0171】
2以上の緩衝部11が設けられる態様では、例えば、当該2以上の緩衝部11全体の面積と同等の面積で1つのみの緩衝部11が設けられる態様に比較して、例えば、固定部15の強度が局部的に低下する蓋然性を低減しつつ、歪を吸収する効果を得ることができる。一方、後者の態様では、例えば、1つの緩衝部11の径が大きいから、エッチングに対する水晶の異方性の影響を低減できる。例えば、内面の傾斜面を低減することが容易であり、また、貫通孔を形成することが容易である。
【0172】
2以上の緩衝部11が、平面視において1対の引出電極9の対向方向(Z’方向)の互いに異なる位置に設けられている(例えばZ’方向に並んでいる)場合、例えば、1つの引出電極9に接合される接合材105が当該1つの引出電極9に近い緩衝部11に入り込んでも、他の引出電極9と短絡される蓋然性は低い。従って、例えば、緩衝部11を引出電極9に近づけて、余剰な接合材105の逃げ場として緩衝部11を利用しやすくなる。
【0173】
(固定部の位置に係る変形例)
図8(a)及び図8(b)はそれぞれ、変形例に係る水晶素板の平面図である。実施形態では、固定部15は、矩形状の振動部13の1辺に沿う形状とされた。ただし、固定部は、振動部の2辺以上に沿っていてもよい。図8(a)及び図8(b)の水晶素板は、そのような2辺以上に亘る固定部を有している。具体的には、以下のとおりである。
【0174】
図8(a)に示す水晶素子501(水晶素板503)は、振動部13の2辺に沿って固定部515(及び中間部517)を有している。換言すれば、固定部515は、L字に形成されている。なお、固定部515がL字に構成されていると捉えるのではなく、直線状の固定部515が合計で2つ設けられていると捉えられてもよい。そして、固定部515のうち、振動部13の1辺に沿う部分には、実施形態と同様に、1対の引出電極9が引き出されているとともに、その間に緩衝部11が位置している。
【0175】
図8(b)に示す水晶素子601(水晶素板603)は、振動部13の3辺に沿って固定部615(及び中間部617)を有している。換言すれば、固定部615は、U字に形成されている。なお、固定部615がU字に構成されていると捉えるのではなく、直線状の固定部615が合計で3つ設けられていると捉えられてもよい。そして、固定部615のうち、振動部13の1辺に沿う部分には、実施形態と同様に、1対の引出電極9が引き出されているとともに、その間に緩衝部11が位置している。
【0176】
特に図示しないが、振動部13の4辺に沿って固定部が設けられていてもよい。そして、固定部のうち振動部13の1辺に沿う部分には、実施形態と同様に、1対の引出電極9が引き出されるとともに、その間に緩衝部11が設けられてよい。実施形態における固定部15と他の構成要素(例えば緩衝部11)との相対位置についての説明において、固定部15の語は、固定部515及び615等のうちの振動部13の1辺に沿う部分(その全体又は上記1辺の長さと同じ長さの一部)の語に置換されてよい。
【0177】
(固定部の厚さに係る変形例)
図9(a)は、変形例に係る水晶素子701の構成を示す断面図であり、図4の一部に対応している。
【0178】
水晶素子701の水晶素板703においては、固定部715(及び中間部717)は、振動部13に対して、水晶素板503の厚み方向の一方側(図の下方)にのみ高くなっている。そして、ここでは不図示であるが、実施形態と同様に、固定部715には、緩衝部が形成されている。なお、この変形例では、第1導体パターン505A及び第1導体パターン505Bは、例えば、中心線CL(図1参照)に対して180°回転対称とされていない。例えば、引出電極509は、下面にのみパッド部9aを有してよい。
【0179】
図9(b)は、変形例に係る水晶素子801の構成を示す断面図であり、図4の一部に対応している。
【0180】
水晶素子801の水晶素板803は、その全体が一定の厚さとされている。すなわち、水晶素板803は、厚さが互いに異なる振動部及び固定部を有していない。そして、ここでは不図示であるが、実施形態と同様に、1対の引出電極9の間には、緩衝部が形成されている。
【0181】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0182】
上述した実施形態及び種々の変形例は適宜に組み合わされてよい。例えば、図7に示した2以上の緩衝部が設けられる構成は、図8(a)~図9(b)に示した固定部に係る変形例に適用されてもよい。また、図9(a)に示した固定部が振動部に対して厚み方向の一方側にのみ高くなる構成は、図8(a)及び図8(b)に例示した2辺以上に亘って固定部が設けられる構成に適用されてもよい。
【0183】
圧電体は、水晶に限定されない。例えば、圧電体は、他の単結晶であってもよいし、多結晶からなるもの(例えばセラミック)であってもよい。また、圧電体は、厚み滑り振動の基本波振動を利用するものに限定されず、他の振動モードを利用するものであってもよいし、オーバートーン振動を利用するものであってもよい。さらに、圧電体は、一方の主面のみに形成された励振電極によって励振される弾性波を利用するものであってもよい。厚み滑り振動を利用する水晶素板のカットは、ATカットに限定されない。例えば、BTカットであってもよい。また、水晶素板は、水晶のみからなるものに限定されず、水晶に金属等からなるドーパントを注入した材料からなるものも含むものとする。
【0184】
本開示からは、緩衝部が1対の引出電極から離れていることを要件としない(緩衝部が1対の引出電極の双方又は一方に対して重なる、又は隣接する)圧電振動素子を抽出可能である。当該圧電振動素子は、例えば、緩衝部が固定部の振動部の側の端部から離れて固定部に位置することを特徴としたり、第2貫通孔又は第3貫通孔を有することを特徴としたり、2以上の緩衝部が設けられていることを特徴としたり、緩衝部が水晶素子を薄くする凹部であることを特徴としたりしてよい。
【符号の説明】
【0185】
1…水晶素子(圧電振動素子)、3…水晶素板(圧電素板)、3a…(圧電素板の)第1端部、7…励振電極、9…引出電極、11…緩衝部(第1貫通孔)、13…振動部、15…固定部、101…水晶デバイス(圧電デバイス)、211…緩衝部(凹部)、311…緩衝部(切欠き)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9