(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000806
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】パレット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 19/24 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
B65D19/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101831
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侑也
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA03
3E063BA05
3E063CA01
3E063EE03
3E063GG10
(57)【要約】
【課題】形状品質が安定したパレットを提供する。
【解決手段】本開示のパレット10は、1対のフォーク挿入路90の両側に位置する複数のサイド桁部20が、上下方向に貫通しかつ幅が50[mm]以下の筒形構造をなすと共に、各サイド桁部20の内向側壁21と外向側壁22との間隔が上下方向の端部より途中位置で狭くなるように、内向側壁21の上下方向の途中位置が端部より外向側壁22に接近している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の桁部の間に第1の水平方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークが挿入されるときの1対のフォーク挿入路の両側に位置する複数のサイド桁部が、上下方向に貫通しかつ前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向の幅が50[mm]以下の筒形構造をなすと共に、各前記サイド桁部のうち前記第2の水平方向で対向する内向側壁と外向側壁との間隔が上下方向の端部より途中位置で狭くなるように、前記内向側壁の上下方向の途中位置が端部より前記外向側壁に接近している樹脂製のパレット。
【請求項2】
前記内向側壁のうち前記フォーク挿入路の側方に位置する中間領域が上側に位置する上側領域より前記外向側壁側にオフセットしている請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記第1の水平方向から見た前記フォーク挿入路の前記サイド桁部側の上側角部がR面取り形状をなすように、前記内向側壁の前記上側領域と前記中間領域との間に湾曲部を備える請求項2に記載のパレット。
【請求項4】
前記複数の桁部が3行3列に並べられると共に、前記第2の水平方向で隣合う桁部の下端部同士が下端連絡壁で連絡され、
前記第1の水平方向から見た前記1対のフォーク挿入路の上側両角部は、前記第1の水平方向の中間部ではR面取り形状をなす一方、前記第1の水平方向の両端部ではピン角形状をなし、
前記第1の水平方向から見た前記1対のフォーク挿入路の下側両角部は、前記第1の水平方向の中間部と両端部とで、R面取り形状をなしている請求項2又は3に記載のパレット。
【請求項5】
前記内向側壁のうち前記フォーク挿入路の側方に位置する中間領域より上側又は下側の一方のみが、前記外向側壁から離れる側にオフセットし
前記サイド桁部の内部のうち前記中間領域より上側又は下側の他方寄りに金型のパーティングラインが配置されている請求項1から4の何れか1の請求項に記載のパレット。
【請求項6】
複数の桁部の間に第1の水平方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークが挿入されるときの1対のフォーク挿入路の両側に位置する複数のサイド桁部が、上下方向に貫通しかつ前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向の幅が50[mm]以下の筒形構造をなすと共に、上下方向の中間部が前記フォーク挿入路によって抉られた形状になっている樹脂製のパレット。
【請求項7】
複数の桁部の間に第1の水平方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークが挿入されるときの1対のフォーク挿入路の両側に位置する複数のサイド桁部が、上下方向に貫通しかつ前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向の幅が50[mm]以下の筒形構造をなしたパレットを樹脂の射出成形金型を使用して製造するパレットの製造方法であって、
前記射出成形金型のうち型開き方向で対向する第1と第2の金型のうち前記サイド桁部の内面を形成するために第1の金型から突出する第1成形突部と、前記第2の金型から突出する第2成形突部とを先端より基端部が太い形状にしておき、前記サイド桁部内における上下方向の途中位置で前記第1成形突部と前記第2成形突部の先端面同士を互いに当接させるパレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のパレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパレットとして、桁部の外郭部分を構成する筒壁の上面開口と下面開口とに、複数ずつの補強壁が平行に並べて架橋されると共に、上下の補強壁が千鳥配置になっているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-35669号(
図1,2,段落[0013])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のパレットを効率よく敷き詰めるためにパレットの小型化の要請があり、その要請に応えるためには、パレットのうち1対のフォーク挿入路の両側の複数のサイド桁部の外側面を内側に寄せてサイド桁部の幅を小さくする必要がある。しかしながら、上記した従来のパレットの構造のまま、サイド桁部の幅を小さくすると、サイド桁部の内部を成形するための金型の突部が細長くなり、成形時の樹脂圧により変形して、パレットの形状がばらつくという問題が生じ得る。そこで、本開示では、パレットの形状品質を安定させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、複数の桁部の間に第1の水平方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークが挿入されるときの1対のフォーク挿入路の両側に位置する複数のサイド桁部が、上下方向に貫通しかつ前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向の幅が50[mm]以下の筒形構造をなすと共に、各前記サイド桁部のうち前記第2の水平方向で対向する内向側壁と外向側壁との間隔が上下方向の端部より途中位置で狭くなるように、前記内向側壁の上下方向の途中位置が端部より前記外向側壁に接近している樹脂製のパレットである。
【0006】
請求項2の発明は、前記内向側壁のうち前記フォーク挿入路の側方に位置する中間領域が上側に位置する上側領域より前記外向側壁側にオフセットしている請求項1に記載のパレットである。
【0007】
請求項3の発明は、前記第1の水平方向から見た前記フォーク挿入路の前記サイド桁部側の上側角部がR面取り形状をなすように、前記内向側壁の前記上側領域と前記中間領域との間に湾曲部を備える請求項2に記載のパレットである。
【0008】
請求項4の発明は、前記複数の桁部が3行3列に並べられると共に、前記第2の水平方向で隣合う桁部の下端部同士が下端連絡壁で連絡され、前記第1の水平方向から見た前記1対のフォーク挿入路の上側両角部は、前記第1の水平方向の中間部ではR面取り形状をなす一方、前記第1の水平方向の両端部ではピン角形状をなし、前記第1の水平方向から見た前記1対のフォーク挿入路の下側両角部は、前記第1の水平方向の中間部と両端部とで、R面取り形状をなしている請求項2又は3に記載のパレットである。
【0009】
請求項5の発明は、前記内向側壁のうち前記フォーク挿入路の側方に位置する中間領域より上側又は下側の一方のみが、前記外向側壁から離れる側にオフセットし前記サイド桁部の内部のうち前記中間領域より上側又は下側の他方寄りに金型のパーティングラインが配置されている請求項1から4の何れか1の請求項に記載のパレットである。
【0010】
請求項6の発明は、複数の桁部の間に第1の水平方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークが挿入されるときの1対のフォーク挿入路の両側に位置する複数のサイド桁部が、上下方向に貫通しかつ前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向の幅が50[mm]以下の筒形構造をなすと共に、上下方向の中間部が前記フォーク挿入路によって抉られた形状になっている樹脂製のパレットである。
【0011】
請求項7の発明は、複数の桁部の間に第1の水平方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークが挿入されるときの1対のフォーク挿入路の両側に位置する複数のサイド桁部が、上下方向に貫通しかつ前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向の幅が50[mm]以下の筒形構造をなしたパレットを樹脂の射出成形金型を使用して製造するパレットの製造方法であって、前記射出成形金型のうち型開き方向で対向する第1と第2の金型のうち前記サイド桁部の内面を形成するために第1の金型から突出する第1成形突部と、前記第2の金型から突出する第2成形突部とを先端より基端部が太い形状にしておき、前記サイド桁部内における上下方向の途中位置で前記第1成形突部と前記第2成形突部の先端面同士を互いに当接させるパレットの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び6のパレットでは、第1の水平方向に延びる1対のフォーク挿入路の両側の複数のサイド桁部は、第2の水平方向の幅が50[mm]以下であるので、その幅が100[mm]以上の一般的な従来のパレットに比べてパレット全体の横幅(第2の水平方向の幅)を100[mm]以上小さくすることができ、パレットを効率よく敷き詰めることが可能になる。また、サイド桁部の内面を成形するために、従来は、射出成形金型にサイド桁部の全高と略同じ高さの細長い成形突部を設ける必要があったが、本開示の請求項1及び6のパレットは、サイド桁部が上下方向に貫通する筒形構造をなしているので、サイド桁部の内面を成形するための成形突部を、射出成形金型の型開き方向で対向する第1成形突部と第2成形突部とに分けて従来より短くすることができる。
【0013】
これにより、樹脂圧による第1及び第2の成形突部の変形が抑えられて、パレットの形状品質が安定する。しかも、請求項1では、各サイド桁部のうち第2の水平方向で対向する内向側壁と外向側壁との間隔がサイド桁部の上下方向の端部より途中位置で狭くなるように、内向側壁の上下方向の途中位置が端部より外向側壁に接近しているので、第1成形突部又は第2成形突部を先端側より基端側が太い形状にすることができる。また、請求項6においても、上下方向の中間部が前記フォーク挿入路によって抉られた形状になっているので、第1成形突部及び第2成形突部を先端側より基端側が太い形状にすることができる。これらによっても第1成形突部及び第2成形突部の曲げ強度が高くなって、樹脂圧による成形突部の変形が抑えられて、パレットの形状品質が安定する。
【0014】
請求項2のパレットのように、内向側壁のうちフォーク挿入路の側方に位置する中間領域が、上側に位置する上側領域より外向側壁側にオフセットする位置までフォーク挿入路をサイド桁部に食い込ませることで、パレットの横幅を小さくすることができる。この場合、請求項3のパレットのように、サイド桁部側の上側角部がR面取り形状をなすように、内向側壁の上側領域と中間領域との間に湾曲部を備えれば、応力集中が防がれて強度が高くなると共に内向側壁の中間領域と上側領域との間に水が溜まり難くなる。
【0015】
請求項4の構成では、第1の水平方向の中間部の桁部において、上記請求項3と同様の作用効果を奏する。
【0016】
請求項5のパレットでは、サイド桁部の内向側壁のうちフォーク挿入路の側方に位置する中間領域より上側又は下側の一方のみが、外向側壁から離れる側にオフセットしているので、サイド桁部内を成形する第1及び第2の成形突部のうち中間領域より上側又は下側の一方のみの基端部が太い形状になる。しかしながら、サイド桁部の内部のうち中間領域より上側又は下側の他方寄りに金型のパーティングラインが配置されている。即ち、基端部が太い成形突部より、基端部が太くない成形突部が短くなって、強度の確保が容易になる。
【0017】
請求項7のパレットの製造方法は、サイド桁部の内面を成形するための成形突部を、射出成形金型の型開き方向で対向する第1成形突部と第2成形突部とに分けて従来より短くすることができる。これにより、樹脂圧による第1及び第2の成形突部の変形が抑えられて、パレットの形状品質が安定する。しかも、第1成形突部及び第2成形突部が、共に先端側より基端側が太い形状になっているので、この点においても第1成形突部及び第2成形突部の曲げ強度が高くなって、樹脂圧による成形突部の変形が抑えられて、パレットの形状品質が安定する。
【0018】
なお、第1成形突部及び第2成形突部の互いに当接する先端面は、当接方向に対して直交していても傾斜していてもよい。また、それらの先端面は、平坦面に限定されず、互いに対応した凹凸面や湾曲面であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係るパレットの上面側の斜視図
【
図4】縦方向の端部のサイド桁部の一部破断の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図5を参照して、本開示の一実施形態のパレット10についてを説明する。本実施形態のパレット10は、樹脂の射出成形品であって、
図1に示すように、平面形状が四角形をなし、その四角形は、縦方向H1が横方向H2より大きくなっている。
【0021】
パレット10のデッキボード11は桟構造をなし、縦方向H1に延びる複数の縦リブ11Aと横方向H2に延びる複数の横リブ11Bとを備える。また、デッキボード11の縦方向H1の両端部と中央部とには、デッキボード11全体に比べて横リブ11B同士の間隔を密にした横長補強部12が備えられている。さらには、縦方向H1の両部の縁部には、横長補強部12に含まれる2つの横リブ11Bの間を更に密にしかつそれら2つの横リブ11Bの間だけ縦リブ11Aを密にした横長外縁補強部13が備えられている。
【0022】
また、デッキボード11の横方向H2の両端の縁部には、横長外縁補強部13を縦長に延ばした構造の縦長外縁補強部14が備えられている。さらに、デッキボード11の横方向H2の中央部には、縦リブ11Aの間隔を密にしかつ上面を天板15Tで覆った縦長中央補強部15が備えられている。また、天板15Tには、縦長中央補強部15の縦リブ11Aと横リブ11Bとに包囲された升目より僅かに小さい矩形孔が備えられている。
【0023】
図1に示すように、デッキボード11の四隅の角部寄り位置には、横長外縁補強部13に円筒状のグリップ受容筒16が一体形成され、それらの内部に滑止部材16Gが収容されてデッキボード11の上面より僅かに突出している。また、
図2に示すように、デッキボード11の下面の外縁部には、斜面11Gが形成され、フォーク挿入路90の入口となる部分の一部には、斜面11Gを設けずに鉛直な表示面11Nが形成されている。そして、パレット10の使用者や所有者等を特定するシールを表示面11Nに貼ることができるようになっている。
【0024】
デッキボード11のうち上述の補強部(符号12,13,14,15)に包囲された4つの領域は、補強部より桟構造の升目が大きな内側格子部19になっている。また、各内側格子部19には、それぞれの下寄り位置に角筒状のグリップ受容筒17が一体形成され、それらの内部に滑止部材17Gが収容されてデッキボード11の下面より僅かに突出している。
【0025】
パレット10の桁部20,30は、デッキボード11の四隅と4辺の各外縁部の中央とデッキボード11全体の中央とに配置されて3行3列に並べられ、デッキボード11から下方に突出している。また、桁部20,30は、横方向H2で隣合う桁部20,30同士のみが、下端部を下端連絡壁40で連絡されている。下端連絡壁40は、桟構造に交差したリブ40L群(
図2参照)の上面全体を上面壁40T(
図1参照)で覆った構造をなしている。また、
図1に示すように、上面壁40Tの幅方向(縦方向H1)の中央部は水平部40Sをなし、幅方向の両側には水平部40Sから下方に屈曲して傾斜した傾斜斜部40Uが備えられている。さらには、
図2に示すように、縦方向H1の両端の位置する4つの下端連絡壁40のリブ40Lには、円筒状のグリップ受容筒46が一体形成され、それらの内部に図示しない滑止部材が収容可能になっている。
【0026】
本実施形態のパレット10では、縦方向H1と横方向H2の任意の方向からハンドリフター又はフォークリフトの1対のフォークをデッキボード11の下方に挿入することができるようになっている。ここで、複数のパレット10を密に敷き詰めた状態に並べる場合には、パレット10の短手方向でパレット10同士を横並びにする方が、各パレット10の搬送が容易になるので、縦方向H1からデッキボード11の下方に1対のフォークが挿入される。そこで、本実施形態のパレット10では、縦方向H1から1対のフォークを挿入するときの1対のフォーク挿入路90の両側の桁部20が、パレット10の横幅をコンパクトにするために従来とは異なる構造になっている。
【0027】
即ち、本実施形態では、縦方向H1が特許請求の範囲の「第1の水平方向」に相当し、横方向H2が特許請求の範囲の「第2の水平方向」に相当する。また、桁部20,30を区別するときには、縦方向H1から1対のフォークを挿入するときの1対のフォーク挿入路90の両側の桁部20を「サイド桁部20」といい、1対のフォーク挿入路90の間の桁部30を「中央桁部30」ということとする。
【0028】
なお、前述の滑止部材17Gの平面形状は細長い長方形をなし、4つの滑止部材17Gが回転対称となるように配置されている。そして、デッキボード11に対し、縦方向H1からフォークが挿入された場合と、横方向H2からフォークが挿入された場合との何れの場合も、一方のフォークの長手方向に延びた滑止部材17Gと、他方のフォークの幅方向に延びた滑止部材17Gとが各フォークに当接するようになっている。また、パレット10は、滑止部材17G及びグリップ受容筒17を除き、縦方向H1及び横方向H2の両方向において左右対称な構造をなしている。
【0029】
以下、主として桁部20,30の構造について詳説する。
図3(A)には、縦方向H1の端部の桁部20,30の平断面形状が示され、
図3(B)には、縦方向H1の中央の桁部20,30の平断面形状が示されている。これら図に示されているように、桁部20,30は、共に筒壁25,35内に補強リブ24,34を備えた構造をなしている。また、中央桁部30の筒壁35の平断面形状が略正方形であるのに対し、サイド桁部20の筒壁25の平断面形状は、縦方向H1に長い長方形になっている。
【0030】
なお、フォークを1対のフォーク挿入路90に案内するために、縦方向H1の端部に配置された桁部20,30の筒壁25,35においては、フォーク挿入路90を挟んで対向する桁部20,30の筒壁25,35の側壁(符号21,31)が、パレット10の外側面側の端部で互いに離れるように湾曲している。
【0031】
中央桁部30の筒壁35の平断面形状の正方形の縦横の長さL2,L3と、サイド桁部20の筒壁25の平断面形状の長方形における縦方向H1の長さL2とは同じで、共に例えば80~150[mm]になっている。また、サイド桁部20の横方向H2の長さL1は、縦方向H1の長さL2の1/5~1/3で、例えば50[mm]以下(好ましくは、40[mm]以下、さらにより好ましくは30[mm]以下)になっている。
【0032】
また、中央桁部30の補強リブ34は、平断面がクロス形状をなして、筒壁35内を縦方向H1及び横方向H2の両方向で2等分しているのに対し、サイド桁部20の補強リブ24は、筒壁25内を縦方向H1でのみ2等分している。なお、中央桁部30の筒壁35内には、筒壁35の内側面から突出する補強リブ35Lを備えられている。
【0033】
図1に示すように、中央桁部30の筒壁35は、上面を前述の天板15Tで閉塞されかつ下面全体が開放した構造をなしている。これに対し、
図4及び
図5に示すように、サイド桁部20の筒壁25は、上面全体及び下面全体が開放し、上下に貫通している。
【0034】
また、
図4及び
図5に示すように、サイド桁部20の筒壁25の横方向H2で対向する内向側壁21と外向側壁22のうち外向側壁22は、平板形状をなしているのに対し、内向側壁21は、フォーク挿入路90によって上下方向の中間部を抉られた形状をなし、その細部の形状は、縦方向H1の端部に配置されたサイド桁部20と中央に配置されたサイド桁部20とで異なる。
【0035】
即ち、
図4に示すように、縦方向H1の端部のサイド桁部20では、内向側壁21の上下方向の中間部分が、フォーク挿入路90に対応するようにクランク状に屈曲している。そして、内向側壁21が、フォーク挿入路90より上側で外向側壁22と平行になった第1鉛直部21Aと、その第1鉛直部21Aの下端から外向側壁22側へと直角曲げられた水平部21Bと、水平部21Bにおける外向側壁22側の端部から略鉛直下方に直角曲げされた第2鉛直部21Cと、第2鉛直部21Cの下端から外向側壁22より離れた側に湾曲して曲がった円弧部21Dと、円弧部21Dのうち外向側壁22から離れた側の端部から鉛直下方に曲がり、第1鉛直部21Aの真下に位置する第3鉛直部21Eとを備えた構造になっている。そして、上記円弧部21Dにより、フォーク挿入路90のうちサイド桁部20側の下角部がR面取りされた形状をなし、水平部21Bと第2鉛直部21Cとにより、フォーク挿入路90のうちサイド桁部20側の上角部がピン角形状になっている。
【0036】
一方、
図5に示すように、縦方向H1の中央のサイド桁部20は、端部のサイド桁部20と同じ第1鉛直部21Aと、第1鉛直部21Aの下端から外向側壁22に近づくに従って下方に向かうように湾曲した湾曲部21Fと、湾曲部21Fの下端からサイド桁部20の下端まで延びる第2鉛直部21Gとを備えている。そして、湾曲部21Fにより、フォーク挿入路90のうちサイド桁部20側の上角部がR面取りされた形状になっている。
【0037】
また、フォーク挿入路90のうちサイド桁部20側の下角部もR面取りされた形状になるように、下端連絡壁40の上面壁40Tの横方向H2の端部が円弧状に湾曲して立ち上った円弧部42が備えられて第2鉛直部21Gに接続されている。それと同様に、縦方向H1の中央及び端部の中央桁部30に関しても、フォーク挿入路90の中央桁部30側の下角部がR面取りされた形状になるように上面壁40Tから立ち上がる円弧部41が備えられて中央桁部30の側壁31に接続されている。
【0038】
さらには、縦方向H1の中央の中央桁部30に関しては、
図5に示すように、フォーク挿入路90の中央桁部30側の上角部もR面取りされた形状になるように、中央桁部30の側壁31からコーナー突部43が張り出し、横長補強部12に含まれる複数の横リブ11Bからコーナー延長部11Cが延長されて、それらコーナー突部43とコーナー延長部11Cとに連続したR面取り面11Dが形成されている。
【0039】
一方、縦方向H1の端部の中央桁部30に関しては、
図4に示すように、フォーク挿入路90の中央桁部30側の上角部がピン角形状になるように、上記コーナー突部43とコーナー延長部11Cとを有さずに、横長補強部12に含まれる複数の横リブ11Bの下面と中央桁部30の側壁31とが直交している。
【0040】
図4に示すように、縦方向H1の端部のサイド桁部20側の内面には、上下方向の略中央にサイド桁部20側の内面から僅かに突出する内側面突条29が形成されている。また、
図5に示すように、縦方向H1の中央のサイド桁部20側の内面には、上下方向の略中央より下寄り位置に、サイド桁部20側の内面から僅かに突出する内側面突条29が形成されている。これら内側面突条29は、後述する第1の成形突部と第2の成形突部との接合面の隙間によって形成されるものである。即ち、内側面突条29が各サイド桁部20側内のおける金型同士のパーティングラインになっている。また、
図4及び
図5において、一見すると内向側壁21の内面のうち鉛直方向と平行になっている部分は、内側面突条29から上方及び下方に離れるに従って外向側壁22の内面から徐々に離れるように傾斜している。
【0041】
本実施形態のパレット10の構造に関する説明は以上である。本実施形態のパレット10は、樹脂の射出成形金型を使用して製造される。その射出成形金型は、図示しないが、パレット10の上下方向で開閉される第1と第2の金型と、縦方向H1で互いに接近及び離間し、パレット10の縦方向H1を向いた外側面を成形すると共に1対の角柱を有してそれらにより1対のフォーク挿入路90の内面を成形する1対の第1スライド金型と、横方向H2で互いに接近及び離間して縦方向H1で隣合うサイド桁部20同士の対向面等を成形する1対の第2スライド金型等を備える。そして、第1と第2の金型からパレット10の上下方向に突出する成形突部によって桁部20,30の内面が成形される。
【0042】
具体的には、中央桁部30の内面を成形する図示しない成形突部(以下、「中央桁部30用の成形突部」という)は、
図3に示された中央桁部30内の樹脂壁を有してない部分の形状の通り、角柱を2行2列に並べた構造になっている。また、中央桁部30の筒壁35は上面を天板15Tにて閉塞されているので、中央桁部30用の成形突部は、第1又は第2の金型の一方から突出して、中央桁部30の下端から天板15Tの下面まで入り込む長さをなしている。
【0043】
これに対し、サイド桁部20の内面を成形する図示しない成形突部(以下、「サイド桁部20用の成形突部」という)は、
図3に示されたサイド桁部20内の樹脂壁を有してない部分の形状の通り角柱を2つ並べた構造をなし、それらサイド桁部20用の成形突部の角柱は、中央桁部30用の成形突部の角柱より細い。また、サイド桁部20の筒壁25は、上下に貫通していることを利用して、サイド桁部20用の成形突部は、第1の金型から突出する第1成形突部と、第2の金型から突出する第2成形突部とからなる。それら第1と第2の成形突部の先端面同士が、サイド桁部20の上下方向の途中位置で接合され、その痕跡として前述の内側面突条29が成形される。このように、サイド桁部20用の成形突部は、第1と第2の金型の開閉方向で第1成形突部と第2成形突部とに分割されることで、中央桁部30用の成形突部より短くなっている。これにより、サイド桁部20用の成形突部は、中央桁部30用の成形突部より細いが、樹脂圧による変形が抑えられる。しかも、サイド桁部20は、上下方向の中間部をフォーク挿入路90によって抉られた構造をなしているので、縦方向H1の中央のサイド桁部20では、第1成形突部と第2成形突部との両方が、先端より基端側が太い構造をなし、このことによっても第1成形突部及び第2成形突部の樹脂圧による変形が抑えられる。また、縦方向H1の端部のサイド桁部20では、第1成形突部と第2成形突部との一方が、先端より基端側が太い構造をなすことになるが、第1成形突部と第2成形突部との一方より他方が短くなるようにそれらの接合面が配置されている。このことによっても第1成形突部と第2成形突部の強度がバランスが取れて、それらの樹脂圧による変形が抑えられる。
【0044】
このように本実施形態のパレット10は、サイド桁部20が上下方向に貫通する筒形構造をなしているので、サイド桁部20の内面を成形するための成形突部を、射出成形金型の型開き方向で対向する第1成形突部と第2成形突部とに分けて従来より短くすることができる。これにより、通常よりは細いサイド桁部20を備えたパレット10であっても、サイド桁部20内を成形する第1及び第2の成形突部の樹脂圧による変形が抑えられる。しかも、各サイド桁部20のうち横方向H2で対向する内向側壁21と外向側壁22との間隔がサイド桁部20の上下方向の両端部より途中位置で狭くなるように、内向側壁21の上下方向の両端部より途中位置が外向側壁22に接近しているので、第1成形突部及び第2成形突部を先端側より基端側が太い形状にすることができる。これらによっても第1成形突部及び第2成形突部の曲げ強度が高くなり、樹脂圧による成形突部の変形が抑えられる。そして、樹脂圧による成形突部の変形が抑えられることで、本実施形態のパレット10のようにサイド桁部20の幅が50[mm]以下のものであっても形状品質が安定する。また、パレット10ではサイド桁部20の幅が50[mm]以下であるので、その幅が100[mm]以上の一般的な従来のパレット10に比べてパレット10全体の横幅(横方向H2の幅)を100[mm]以上小さくすることができ、パレット10を効率よく敷き詰めることが可能になる。
【0045】
また、本実施形態のパレット10では、内向側壁21のうちフォーク挿入路90の側方に位置する中間領域が、上側に位置する上側領域より外向側壁22側にオフセットする位置までフォーク挿入路90をサイド桁部20に食い込ませることで、パレット10の横幅を小さくすることができる。また、サイド桁部20側の上側角部がR面取り形状をなすように、内向側壁21の上側領域と中間領域との間に湾曲部21Fを備えたので、内向側壁21の中間領域と上側領域との間に水が溜まり難くなり、応力集中も防がれる。
【0046】
なお、本実施形態のパレット10では、縦方向H1から見た1対のフォーク挿入路90の上側両角部は、縦方向H1の中間部ではR面取り形状をなす一方、縦方向H1の両端部ではピン角形状をなしているので、全ての場所においてフォーク挿入路90の上側両角部をR面取り形状とした場合に比べて、アンダーカット部が少なくなり、金型構造が簡素になる。
【0047】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態では、幅が50[mm]以下のサイド桁部20側の上下方向の中間部がフォーク挿入路90によって抉られたものであったが、幅が50[mm]以上(例えば、100[mm])のサイド桁部の上下方向の中間部をフォーク挿入路によって抉られた形状にしてパレット全体の横幅を小さくしてもよい。
【0048】
(2)前記実施形態のパレット10は、横方向H2で隣合う桁部20,30の下端間のみが下端連絡壁40によって連絡されていたが、縦方向H1で隣合う桁部同士の下端部の間も下端連絡壁にて連絡されていてもよいし、パレットの下面全体が1つの板状で覆われていてもよい。
【0049】
(3)前記実施形態のパレット10は、平面形状が長方形であったが、正方形であってもよい。
【0050】
(4)前記実施形態のパレット10では、フォーク挿入路90によりサイド桁部20が抉られた形状になっていたが、前記実施形態のパレット10において、サイド桁部20がフォーク挿入路90によって抉られた形状になっていなくてもよい。
【0051】
(5)前記実施形態のパレット10では、1対のフォーク挿入路90が、パレット10の横方向H2の中央の複数の中央桁部30によって区画されていたが、横方向H2の中央から中央桁部30を排除し、1対のフォーク挿入路90が区画されていなくてもよい。
【0052】
(6)前記実施形態のパレット10では、1対のフォークが縦方向H1からだけでなく、横方向H2からも挿入可能になっていたが、縦方向H1からでしか1対のフォークを挿入することができないようにしてもよい。具体的には、パレット10の横方向H2の両端部において、縦方向H1の全体に1対のサイド桁部20が延びた構造にして、縦方向H1からでしか1対のフォークを挿入することができない構造にしてもよい。また、この場合においても、横方向H2の中央部分から中央桁部30を排除し、1対のフォーク挿入路90が区画されていない構造にしてもよい。
【0053】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0054】
10 パレット
11 デッキボード
20 サイド桁部
21 内向側壁
21F 湾曲部
22 外向側壁
30 中央桁部
30,40 桁部
31 側壁
40 下端連絡壁
90 フォーク挿入路
H1 縦方向(第1の水平方向)
H2 横方向(第2の水平方向)