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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080621
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】音声出力装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20230602BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20230602BHJP
   B60Q 5/00 20060101ALI20230602BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G10K15/04 302J
H04R3/00 310
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 660B
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 640Z
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194060
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 祐樹
【テーマコード(参考)】
5D220
5H125
【Fターム(参考)】
5D220AA01
5D220AB08
5H125AA01
5H125CD03
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】車両の走行状態の変化に対する追従性の高い音声出力装置を提供する。
【解決手段】第1のチャネル及び第2チャネルの各々で音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、第1のチャネルの音声と第2のチャネルの音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する。音声再生部は、車両の走行状態が第1の走行状態である場合、第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力し、車両の走行状態が第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力する音声変更処理を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態に応じた音声を出力する音声出力装置であって、
各々が前記車両の複数の走行状態の各々に対応し、かつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、
前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、
を有し、
前記音声再生部は、前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力し、
前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力する音声変更処理をすることを特徴とする音声出力装置。
【請求項2】
前記音声再生部は、前記音声変更処理において、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記他方のチャネルから出力されている音声の音量を所定の音量まで漸次増加させることを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記車両の走行状態は前記車両の走行速度であり、
前記複数の音声データ片の各々は、走行速度に応じた音声の出力が要求される速度の範囲を複数に区分けした速度帯の各々に対応しており、
前記音声再生部は、前記車両の走行速度が第1の速度帯から第2の速度帯に変化したという走行状態の変化に応じて、前記音声変更処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記音声再生部は、所定の確認期間毎に取得された走行状態に基づいて、前記音声変更処理を行い、
前記音声再生部が前記音声変更処理を行う期間は、前記所定の確認期間よりも短いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記複数の音声データ片の各々が示す音声の長さは、前記所定の確認時間よりも長いことを特徴とする請求項4に記載の音声出力装置。
【請求項6】
前記車両の走行状態を示す状態情報を取得し、取得した前記状態情報に基づいて前記音声再生部を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記音声再生部が前記音声変更処理を行う期間において、前記状態情報の取得を停止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の音声出力装置。
【請求項7】
各々が車両の複数の走行状態の各々に対応しかつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する音声出力装置が実行する音声出力方法であって、
前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、
前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、
を有することを特徴とする音声出力方法。
【請求項8】
各々が車両の複数の走行状態の各々に対応しかつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する音声出力装置に、
前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、
前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
各々が車両の複数の走行状態の各々に対応しかつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する音声出力装置に、
前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、
前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、
を実行させるためのプログラムを記録する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置、特に移動体の移動速度に応じた音声を出力する音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータで走行を行う電気自動車や電気ハイブリッド車として、エンジン車と比べて低速走行時の騒音が極めて小さいことから、自車両の接近を車両外部に知らせる音(以下、車両接近音と称する)を発生する車両接近通報装置を搭載したものが製品化されている。車両接近通報装置は、車両が所定速度よりも低速で走行している際に、その走行速度に応じて当該車両接近音の音色を変化させる。
【0003】
このような車両接近通報装置として、予め車両の走行速度に対応付けして、互いに音色が異なる複数の音色生成用データが予め格納されているメモリを備えたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
車両接近通報装置では、先ず、当該メモリから、車両の現在の走行速度に対応した合成音を表す音色生成用データ片を読み出す。そして、車両接近通報装置は、当該メモリから順次読み出された当該音色生成用データ片同士を連結したものをアナログの音声信号に変換し、これをスピーカによって車両外部に音響出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-207390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような車両接近通報装置では、車両の走行速度が変化した場合、変化後の走行速度に対応するデータ片を新たにメモリから読み出し、再生するデータ片を切り替えることが行われる。その際、切替えのタイミングで再生音に違和感を生じさせないようにするために、データ片の位相を揃えることが考えられる。
【0007】
しかし、データ片の位相を揃えるためには、正弦波、矩形波、鋸歯状波といった周期的で計算の容易な音声を用いる必要があり、エンジン音等の複雑な音声を再現することが難しいという問題があった。
【0008】
また、切り替え時の違和感を低減するためにデータ片の位相を揃えようとすると、最後尾のサンプルを再生してから別のデータ片の再生を開始する必要がある。このため、車速の変化に対する追従性が悪くなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両の走行状態の変化に対する追従性の高い音声出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る音声出力装置は、車両の走行状態に応じた音声を出力する音声出力装置であって、各々が前記車両の複数の走行状態の各々に対応し、かつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有し、前記音声再生部は、前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力し、 前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力する音声変更処理をすることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る音声再生方法は、各々が車両の複数の走行状態の各々に対応しかつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する音声出力装置が実行する音声出力方法であって、前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプログラムは、各々が車両の複数の走行状態の各々に対応しかつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する音声出力装置に、前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る記録媒体は、各々が車両の複数の走行状態の各々に対応しかつ各々が前記車両の走行状態に応じて設定された段階的に変化する複数の音声周波数に基づいた複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を第1のチャネルに音量自在に出力し、かつ第2のチャネルに前記複数の音声データ片の中から選択された音声データ片を再生した音声を音量自在に出力する音声再生部と、前記第1のチャネルから出力されている音声と前記第2のチャネルから出力されている音声とを混合した音声信号を出力する音声出力部と、を有する音声出力装置に、前記車両の走行状態が第1の走行状態である場合、前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルのうちの一方に、前記第1の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、前記車両の走行状態が前記第1の走行状態から第2の走行状態に変化した場合、前記一方のチャネルから出力されている音声の音量を消音するまで漸次低減するとともに、前記第1のチャネル及び第2のチャネルのうちの他方に前記第2の走行状態に対応する音声データ片を再生した音声を出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る音声出力装置によれば、車両の走行状態に応じた音声を出力する音声出力装置において、走行状態の変化に対する追従性を高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両接近通報システムの構成を示すブロック図である。
図2】接近通報装置の内部構成を示すブロック図である。
図3】音声メモリのメモリマップの一例を示す図である。
図4】車速の変化に応じた各チャネルの音声の再生を模式的に示すイメージ図である。
図5】本実施例における音声再生の処理ルーチンを示すフローチャートである。
図6】変形例における音声再生の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0017】
図1は、本発明に係る車両接近通報システム100の構成を示すブロック図である。車両接近通報システム100は、車両CAに搭載され、車両CAの走行速度(すなわち、車速)に応じた音声を出力することにより車両CAが接近していることを通報する音声出力システムである。
【0018】
車両接近通報システム100は、車速センサ11、接近通報装置12、及びスピーカ13を有する。
【0019】
車速センサ11は、車両CAの走行速度を検知し、走行速度の情報を表す速度信号VSを接近通報装置12に供給する。
【0020】
接近通報装置12は、速度信号VSにて表される走行速度に対応した可聴帯域の周波数成分を有する車両接近音信号ALを生成し、スピーカ13に供給する。
【0021】
スピーカ13は、例えば車両CAのフロントバンパーに設置されており、車両接近音信号ALに基づく可聴音を車両接近音として、車両CAの外部の空間に放出する。
【0022】
図7は、接近通報装置12の内部構成を表すブロック図である。接近通報装置12は、制御部14、音声メモリ15、音声再生部16及びミキサー17を含む。
【0023】
制御部14は、車速センサ11から速度信号VSを受け、当該速度信号VSにて表される走行速度に対応した音声データ片を音声メモリ15から読み出し、音声再生部16に供給する。制御部14は、インターバル期間SP毎に車速センサ11から速度信号VSの供給を受け、走行速度の確認を行う。本実施例では、インターバル期間SPは、1秒よりも十分に短い期間に設定されている。
【0024】
音声メモリ15は、例えばNAND又はNOR型のフラッシュメモリ、又はPROM (Programmable ROM) のような不揮発性の半導体メモリ、或いは、磁気記録式のハードディスク等の記憶媒体から構成されている。音声メモリ15には、車両接近音を発生が要求される走行速度の範囲を複数に区分けした速度帯の各々に対応付けして、夫々が異なる周波数成分を有する複数の車両接近音を個別に表す音声データ片AF1~AF(S)が格納されている。
【0025】
図3は、音声メモリ15のメモリマップの一例を示す図である。音声メモリ15には、車両接近音を発生させる走行速度の範囲をS(Sは2以上の整数)個に区分けした各速度範囲(速度帯)に対応付けして、音声データ片AF1~AF(S)が格納されている。音声データ片AF1~AF(S)は、段階的に周波数が変化するように設けられている。
【0026】
例えば、音声メモリ15には、音声メモリ121には、速度Y1~速度Y2(例えば0~0.5[km/h])の速度範囲に対応付けして、音声データ片AF1が記憶されている。また、音声メモリ121には、速度Y2~速度Y3(例えば0.5~1.0[km/h])の範囲に対応付けして、音声データ片AF1よりも高い周波数の車両接近音に対応した音声データ片AF2が記憶されている。また、音声メモリ121には、速度Y3~速度Y4(例えば1.0~1.5[km/h])の範囲に対応付けして、音声データ片AF2よりも高い周波数の車両接近音に対応した合成波データAF3が記憶されている。
【0027】
音声データ片AF1~AF(S)の各々は、再生した音声の長さが車速確認のインターバル期間SPよりも十分に長くなるように設定されている。好ましくは、音声データ片AF1~AF(S)の各々を再生した音声は、1秒以上の長さを有する。
【0028】
再び図2を参照すると、音声再生部16は、制御部14が車両CAの走行速度に基づいて音声メモリ15から読み出した音声データ片を再生し、音信号として出力する。音声再生部16は、チャネル0及びチャネル1の2つのチャネルで同時に音声を再生する機能を有する。
【0029】
チャネル0における音声の再生及びチャネル1における音声の再生の音量は、いずれも変更自在に構成されている。例えば、音声再生部16は、チャネル0及びチャネル1の各々において、再生音量をゼロから所定の音量まで漸次上昇させる処理(以下、フェードインと称する)及び再生音量を音量ゼロまで漸次低減させる処理(以下、フェードアウトと称する)を行うことが可能である。
【0030】
音声再生部16は、第1再生部18A、第2再生部18B、第1アンプ19A及び第2アンプ19Bを有する。
【0031】
第1再生部18Aは、音声データ片を再生する第1の音声再生部である。第1再生部18Aは、チャネル0(CH0とも称する)で音声データ片の再生を行う。
【0032】
第2再生部18Bは、音声データ片を再生する第1の音声再生部である。第1再生部18Aは、チャネル0(CH0とも称する)で音声データ片の再生を行う。
【0033】
第1アンプ19Aは、第1再生部18Aにより再生された音信号SVAを増幅し、チャネル0の再生音信号ALAとしてミキサー17に供給する。
【0034】
第2アンプ19Bは、第2再生部18Bにより再生された音信号SVBを増幅し、チャネル1の再生音信号ALBとしてミキサー17に供給する。
【0035】
本実施例では、音声再生部16がチャネル0及びチャネル1で音声データ片の同時再生を行う際、第1再生部18A及び第2再生部18Bの各々における再生の音量を制御することにより、一方のチャネルの音声をフェードインさせるとともに、他方のチャネルの音声をフェードアウトさせる音声変更処理(所謂、クロスフェード)を行う。例えば、チャネル0で音声データ片を再生中にチャネル1で音声データ片の再生を開始する場合、チャネル1の音声をフェードインさせつつチャネル0の音声をフェードアウトさせる。同様に、チャネル1で音声データ片を再生中にチャネル0で音声データ片の再生を開始する場合、チャネル0の音声をフェードインさせつつチャネル1の音声をフェードアウトさせる。
【0036】
ミキサー17は、音声再生部16から出力されたチャネル0の再生音信号ALA及びチャネル1の再生音信号ALBの供給を受け、これらを混合したものを車両接近音信号ALとしてスピーカ13に供給する。
【0037】
図4は、車速の変化に応じた各チャネルの音声の再生を模式的に示すイメージ図である。
【0038】
例えば、車両CAが走行を開始し、その車速が車両接近音を発生させる必要がある最初の速度範囲Y1-Y2に達すると、制御部14は音声メモリ15から音声データ片AF1を読み出し、音声再生部16に供給する。音声再生部16の第1再生部18Aは、チャネル0で音声データ片AF1の再生を行う。
【0039】
車両CAの車速が速度範囲Y2-Y3に変化すると、制御部14は音声メモリ15から音声データ片AF2を読み出し、音声再生部16に供給する。音声再生部16の第2再生部18Bは、チャネル1で音声データ片AF2の再生を開始する。その際、第1再生部18Aは再生中のチャネル0の音声をフェードアウトさせ、第2再生部18Bはチャネル1の音声をフェードインさせる。これにより、図4に示すフェード期間FPにおいて両チャネルの音声のクロスフェード(音声変更処理)が行われ、接近音通報装置12から出力される車両接近音信号Alが、音声データ片AF1に基づく音声信号から音声データ片AF2に基づく音声信号へと移行する。なお、フェードアウト処理が行われた第1再生部19Aは、1音声データ片分の最後まで再生を行ったあと、再生を停止する。
【0040】
以後同様に、車速確認のインターバル期間SPのタイミングで車両CAの車速が図3に示す音声データ片の各々に対応する速度範囲(すなわち、Y1-Y2、Y2-Y3、Y3-Y4等)を超えて変化する毎に、チャネル0及びチャネル1のクロスフェードが行われ、各チャネルで音声データ片の再生が交互に終了及び開始される。なお、本実施例では、上記の通り音声データ片AF1~AF(S)の各々を再生した音声の長さが車速確認のインターバル期間SPよりも長いため、各音声データ片の再生中に少なくとも1度は車速の確認が行われる。
【0041】
フェード期間FPは、車速確認のインターバル期間SPよりも短くなるように設定されている。また、クロスフェードは、車速を確認した直後のタイミングで開始し、インターバル期間SPの間に終わるように実行される。
【0042】
一方、車速確認のインターバル期間SPのタイミングで車両CAの車速が音声データ片の各々に対応する速度範囲の境界を超えて変化しない場合、第1再生部18A及び第2再生部18Bのうち現在音声データ片を再生中の一方の再生部は、繰り返し同じ音声データ片の再生を続ける。
【0043】
次に、本実施例の接近通報装置12による音声再生の処理動作について説明する。
【0044】
図5は、本実施例における音声再生の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0045】
制御部14は、インターバル期間SPを待機し(STEP101)、車速センサ11からの車速の速度信号VSに基づいて車両CAの車速を示す速度情報を取得する(STEP102)。
【0046】
制御部14は、車両CAの車速が接近通報音の出力が必要な速度範囲であるか否かを判定する(STEP103)。接近通報音の出力が必要な速度範囲ではないと判定すると(STEP103:NO)、STEP101に戻り、再びインターバル期間SPの待機及び速度情報の取得を行う。
【0047】
一方、接近通報音の出力が必要な速度範囲であると判定すると(STEP103:YES)、車両CAの車速が当該速度範囲に初めて到達したか否か、すなわち速度範囲外から速度範囲内に入ったものであるか否かを判定する(STEP104)。ここでは、例えば車両CAの車速が、図3に示すY1-Y(S)の速度範囲から外れた速度からY1-Y(S)の速度範囲内の速度へと変化したときに、速度範囲内に初めて到達したと判定される。
【0048】
初めて速度範囲内に到達したと判定すると(STEP104:YES)、制御部14はSTEP102で取得した車速に対応する音声データ片を音声メモリ15から読み出し、チャネル0(CH0)の再生を担う第1再生部18Aに供給する(STEP105)。第1再生部18Aは、チャネル0で音声データ片の再生を行う(STEP106)。
【0049】
一方、初めて速度範囲内に到達したものではないと判定すると(STEP104:NO)、制御部14は、前回の車速確認において確認した車速からSTEP102で取得した車速への速度変化が、各音声データ片に対応する速度範囲(すなわち、図3に示すY1-Y2、Y2-Y3、Y3-Y4等)の境界を超えるものであるか否かを判定する(STEP107)。
【0050】
速度範囲の境界を超える車速の変化がなかったと判定すると(STEP107:NO)、現在音声データ片を再生しているチャネルの再生部(すなわち、第1再生部18A及び第2再生部18Bのうちの一方)は、従前の音声データ片と同じ音声データ片の再生を再び行う(STEP108)。
【0051】
一方、速度範囲の境界を超える車速の変化があったと判定すると(STEP107:YES)、制御部14は、現在音声データ片を再生中のチャネルがチャネル0(CH0)であるか否か、すなわち第1再生部8A(CH0)で再生が行われているのか第2再生部18B(CH1)で再生が行われているのかを確認する(STEP109)。
【0052】
再生中のチャネルがチャネル0であると判定すると(STEP109:YES)、制御部14は、STEP102で取得した車速に対応する音声データ片を音声メモリ15から読み出し、読み出した音声データ片を音声再生部16の第2再生部18Bに供給する(STEP110)。第2再生部18Bは、チャネル1で音声の再生を開始する(STEP111)。
【0053】
音声再生部16は、第1再生部18Aによる再生の音量を制御してチャネル0の音声をフェードアウトさせるとともに、第2再生部18Bによる再生の音量を制御してチャネル1の音声をフェードインさせる(STEP112)。
【0054】
第1再生部18Aは、音量を漸次低減しつつ1音声データ片分の最後まで再生を行った後、再生を停止する(STEP113)。
【0055】
STEP109において、再生中のチャネルがチャネル1である(すなわち、チャネル0ではない)と判定すると(STEP109:NO)、制御部14は、STEP102で取得した車速に対応する音声データ片を音声メモリ15から読み出し、読み出した音声データ片を音声再生部16の第1再生部18Aに供給する(STEP114)。第1再生部18Aは、チャネル0で音声の再生を開始する(STEP115)。
【0056】
音声再生部16は、第1再生部18Aによる再生の音量を制御してチャネル0の音声をフェードアウトさせるとともに、第2再生部18Bによる再生の音量を制御してチャネル1の音声をフェードインさせる(STEP116)。
【0057】
第2再生部18Bは、音量を漸次低減しつつ1音声データ片分の最後まで再生を行った後、再生を停止する(STEP117)。
【0058】
以上のように、本実施例の接近通報装置12は、周波数(ピッチ)の異なる複数の音声データ片を車両の移動速度に応じて選択し、チャネル0及びチャネル1の間でチャネルを切り替えつつ再生を行う。チャネルを切り替える際には、一方のチャネルから出力されている音声をフェードアウトさせつつ、他方のチャネルで音声の出力を開始し、その音声をフェードインさせる。
【0059】
かかる構成によれば、チャネルの切り替えにより、音声データ片の周波数(ピッチ)を擬似的に変化させることができる。また、クロスフェードにより音声の切り替えを円滑に行うことができるため、聞き手に違和感を生じさせることなく、再生する音声データ片の切り替えを行うことができる。
【0060】
また、クロスフェードを用いてチャネルを切り替えつつ音声を再生することにより、1つの音声データ片の再生が終了するのを待たずに、出力される音声を他の音声データ片を再生した音声に切り替えることができる。従って、本実施例の接近通報装置によれば、車速の変化に対する追従性を高くすることができ、音声周波数の切り替えを円滑に行うことが可能となる。
【0061】
また、本実施例の接近通報装置12によれば、2つのチャネル(再生部)における音声データ片の再生を車速の変化に応じて交互に切り替えればよいため、音声再生部16を構成するICが高度な音響処理機能を有しない場合であっても、出力する音信号の周波数を車速に応じて変化させることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、フェード期間FPがインターバル期間SPよりも短く、クロスフェードがインターバル期間SP内に終わるように実行される場合を例として説明した。しかし、フェード期間FPにこのような限定を設けず、クロスフェードの実行中は車速の確認を停止するように構成されていてもよい。
【0063】
図6は、かかる変形例の音声再生の処理ルーチンを示すフローチャートである。STEP108までの処理は図5に示す処理ルーチンと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
STEP107において、速度範囲の境界を超える車速の変化があったと判定すると(STEP107:YES)、制御部14は、速度信号VSに基づく車速の確認を停止する(STEP201)。
【0065】
STEP201の後、制御部14は、STEP108~STEP114の各ステップの処理を実行する。STEP111又はSTEP114における再生の停止後は再びSTEP101に戻り、制御部14は、車速の確認を再開させる。
【0066】
また、上記実施例では、車速センサ11から車両CAの走行速度の情報を表す速度信号VSを取得し、車速の変化に応じて再生する音声データ片及びチャネルを切り替える場合を例として説明した。しかし、これに限られず、車両の走行速度以外の走行状態に基づいて、音データ片及びチャネルの切り替えを行うものであってもよい。
【0067】
例えば、車速センサ11の代わりに、車両CAに搭載されたアクセルセンサの情報に基づいて、アクセルの踏み込みの程度に応じて再生する音声データ片及びチャネルを切り替えるものであってもよい。
【0068】
また、上記実施例では、段階的に周波数が変化するように設けられた音声データ片AF1~AF(S)を準備し、車両の走行状態の変化に応じて音声の周波数を変化させる場合を例として説明した。しかし、周波数以外の要素が異なる音声データ片(例えば、イコライザ等によって段階的にサウンドエフェクトが異なるように作り込まれた音声データ片)を複数用意し、車両の走行状態の変化に応じてこれらを選択的に再生する構成であっても良い。
【0069】
また、上位実施例では、車両の接近を当該車両側から歩行者に知らせる車両接近音を発生する接近通報装置を例として説明したが、発生させる音は車両接近音に限定されない。すなわち、本発明は、車両の走行状態等、何らかの入力に応じてリアルタイムで音色を変化させることが必要な音声出力装置全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 車両接近通報システム
11 車速センサ
12 接近通報装置
13 スピーカ
14 制御部
15 音声メモリ
16 音声再生部
17 ミキサー
18A 第1再生部
18B 第2再生部
19A 第1アンプ
19B 第2アンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6