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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080658
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6553 20140101AFI20230602BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230602BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230602BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20230602BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230602BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20230602BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230602BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20230602BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20230602BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20230602BHJP
【FI】
H01M10/6553
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/6569
H01M10/647
H01M10/615
H01M10/625
H01M50/569
H01M50/503
H01M50/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194124
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米元 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】河原 洋平
【テーマコード(参考)】
5H031
5H043
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H043AA09
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA05
5H043FA04
5H043LA41F
(57)【要約】
【課題】本開示は、冷媒と電池セルの電極周辺の部材との接触を回避しつつ、電池セルの外部端子を介した放熱性を向上させることができ、隣り合う電池セルの外部端子間の電気的接続を容易にすることが可能な電池システム提供する。
【解決手段】本開示の電池システム100は、複数の電池セル1と、それら複数の電池セルの隣り合う電池セル1の外部端子14の間を接続し、中空構造を有する導電性の複数のバスバー2と、それら複数のバスバー2の間に設けられ、電気絶縁性を有する複数の絶縁管5と、複数のバスバー2の内部および複数の絶縁管5の内部に形成され、複数のバスバー2を冷却する電気絶縁性の冷媒Rを循環させる冷媒通路3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの隣り合う電池セルの外部端子の間を接続し、中空構造を有する導電性の複数のバスバーと、
前記複数のバスバーの間に設けられ、電気絶縁性を有する複数の絶縁管と、
前記複数のバスバーの内部および前記複数の絶縁管の内部に形成され、前記複数のバスバーを冷却する電気絶縁性の冷媒を循環させる冷媒通路と、を備えることを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記冷媒通路に接続された熱交換器をさらに備え、
前記熱交換器は、前記冷媒通路の終端に連結される冷媒入口と、該冷媒入口から導入された前記冷媒を下方へ通過させながら前記冷媒の熱を外気へ放熱する放熱部と、該放熱部の下端に設けられて前記冷媒通路の始端に連結される冷媒出口と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記冷媒通路は、前記冷媒出口に接続されて水平方向に沿って延びる第1冷媒通路と、該第1冷媒通路から鉛直方向に沿って上方へ延びる第2冷媒通路と、該第2冷媒通路の上端に連結されて水平方向に沿って延びて前記冷媒入口に接続される第3冷媒通路と、を有することを特徴とする請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記第3冷媒通路を流れる前記冷媒の流量を検出する流量センサと、前記複数の電池セルの少なくとも一つの電池セルの温度を検出する温度センサと、前記複数の電池セルを制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記流量センサによって検出された前記冷媒の流量と、前記温度センサによって検出された前記少なくとも一つの電池セルの温度とに基づいて前記冷媒の遷移沸騰を検知する沸騰検知部と、
前記沸騰検知部によって前記冷媒の遷移沸騰が検知されたときに前記複数の電池セルの電力負荷を制限するための上限電力を算出する負荷制限部と、
前記負荷制限部によって算出された上限電力に基づいて前記複数の電池セルの充放電を制御する充放電制御部と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
【請求項5】
前記第3冷媒通路を流れる前記冷媒の流量を検出する流量センサと、前記複数の電池セルの少なくとも一つの電池セルの温度を検出する温度センサと、前記熱交換器の前記放熱部の外表面へ冷却液を供給する冷却液通路と、該冷却液通路を開閉する電磁弁と、該電磁弁を制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記流量センサによって検出された前記冷媒の流量と、前記温度センサによって検出された前記少なくとも一つの電池セルの温度とに基づいて前記冷媒の遷移沸騰を検知する沸騰検知部と、
前記沸騰検知部によって前記冷媒の遷移沸騰が検知されたときに前記電磁弁を開く電磁弁制御部と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
【請求項6】
前記熱交換器は、前記第1冷媒通路よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
【請求項7】
前記冷媒の大気圧における沸点は、0℃から55℃まで範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項8】
前記冷媒は、ハイドロフルオロエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項9】
前記冷媒通路の内圧は、大気圧よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項10】
断熱材を含み、前記複数の電池セル、前記複数のバスバー、および前記冷媒通路を収容する筐体をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数のバッテリセルを備えたバッテリパックが知られている。たとえば、下記特許文献1の請求項1および7、図2等に記載されたバッテリパックは、ケース内に収納された複数のバッテリセルを有している。バッテリセルは、直方体状に形成されている。ケースには、絶縁性冷却液としてハイドロフルオロエーテルが充填されている。また、バッテリセルは、電極側がケースの底部側に位置するように配置されている。
【0003】
また、リチウム二次電池の冷却を速やかに進めるようにしたリチウム二次電池の冷却システムが知られている。たとえば、下記特許文献2の請求項5および6、図1から3等に記載されたリチウム二次電池の冷却システムは、リチウム二次電池の電極端子に固定される伝導性連結具と、その連結具に連結され、内部には冷媒が流通する冷媒管とを備えている。伝導性連結具は、ボディーと、そのボディーの一側に形成され電極端子に接続固定される固定部と、上記ボディーの他側に形成され、冷媒管が連結される連結部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-062023号公報
【特許文献2】特表2014-501024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された従来のバッテリパックは、複数のバッテリセルの電極側をケースの底部側に位置するように配置することで、各々のバッテリセルの電極がケースに充填された絶縁性冷却液としてのハイドロフルオロエーテルに浸漬される。そのため、バッテリセルの電極周辺の部材と絶縁性冷却液とが接触して、予期しない副反応が発生するおそれがある。
【0006】
上記特許文献2に記載された従来のリチウム二次電池の冷却システムは、各々のリチウム二次電池の電極端子から冷媒管へ、伝導性連結具のボディーを介して放熱することができる。しかしながら、伝導性連結具のボディーは、各々のリチウム二次電池の直方体形状の電極端子の側面の一部と、冷媒管の外周面の下端とに連結され、冷媒管の径方向に延びる細長い棒状の部材であるため、断面積が小さく放熱性に課題がある。
【0007】
また、上記従来のリチウム二次電池の冷却システムでは、伝導性連結具は隣り合うリチウム二次電池の電極端子間を電気的に接続しておらず、電極端子間を電気的に接続するバスバーの構成が不明である。そのため、伝導性連結具のボディーの一側に形成されて各々のリチウム二次電池の電極端子に連結される固定部の構成によっては、隣り合うリチウム二次電池の電極端子間の電気的な接続が困難になるおそれがある。
【0008】
本開示は、冷媒と電池セルの電極端子周辺の部材との接触を回避しつつ、電池セルの外部端子を介した放熱性を向上させることができ、隣り合う電池セルの外部端子間の電気的接続を容易にすることが可能な電池システム提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、複数の電池セルと、前記複数の電池セルの隣り合う電池セルの外部端子の間を接続し、中空構造を有する導電性の複数のバスバーと、前記複数のバスバーの間に設けられ、電気絶縁性を有する複数の絶縁管と、前記複数のバスバーの内部および前記複数の絶縁管の内部に形成され、前記複数のバスバーを冷却する電気絶縁性の冷媒を循環させる冷媒通路と、を備える電池システムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の上記一態様によれば、冷媒と電池セルの外部端子周辺の部材との接触を回避しつつ、電池セルの外部端子を介した放熱性を向上させることができ、隣り合う電池セルの外部端子間の電気的接続を容易にすることが可能な電池システム提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る電池システムの実施形態1の一部を切断した側面図。
図2図1に示す電池システムの一部を切断した平面図。
図3図1に示す電池システムの一つの電池セルの斜視図。
図4】本開示に係る電池システムの実施形態2の一部を切断した側面図。
図5図4に示す電池システムの一部を切断した平面図。
図6図4に示す電池システムのブロック図。
図7】本開示に係る電池システムの実施形態3の一部を切断した側面図。
図8図7に示す電池システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示に係る電池システムの実施形態を説明する。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本開示に係る電池システムの実施形態1の一部を切断した側面図である。図2は、図1に示す電池システム100の一部を切断した平面図である。図3は、図1に示す電池システム100の一つの電池セル1の斜視図である。なお、図1の断面は、図2のI-I線に沿う断面であり、図2の断面は、図1のII-II線に沿う断面である。扁平な直方体形状の電池セル1の厚さ方向、幅方向および高さ方向にそれぞれ平行なX軸、Y軸およびZ軸からなる直交座標系を、各図に示す。
【0014】
本実施形態の電池システム100は、複数の電池セル1と、それら複数の電池セル1の隣り合う電池セル1の外部端子14の間を接続する導電性の複数のバスバー2と、それら複数のバスバー2を冷却する電気絶縁性の冷媒Rを循環させる冷媒通路3と、を備える。また、本実施形態の電池システム100は、たとえば、冷媒通路3に接続された熱交換器4をさらに備えている。
【0015】
詳細については後述するが、本実施形態の電池システム100は、次の構成を最大の特徴としている。冷媒通路3は、複数のバスバー2の各々のバスバー2を貫通するバスバー通路21と、電気絶縁性の絶縁管5の内部に形成されて複数のバスバー2の隣り合うバスバー2のバスバー通路21を連結する絶縁通路51と、を含む。以下、本実施形態の電池システム100の各部を詳細に説明する。
【0016】
電池セル1は、たとえば、角型のリチウムイオン二次電池である。なお、電池セル1の種類は、リチウムイオン二次電池に限定されず、たとえば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、または、ニッケルカドミウム電池であってもよい。電池セル1は、たとえば、図3に示すように、扁平な直方体形状の電池容器10を備えている。
【0017】
電池容器10は、たとえば、アルミニウム合金などの金属製であり、有底角筒状の電池缶11と、電池缶11の上端の開口部を封止する電池蓋12とにより構成されている。図示を省略するが、電池容器10の内部には、帯状の正電極と帯状の負電極とを帯状のセパレータを介して重ねて巻回した電極群、この電極群の両端で正電極と負電極にそれぞれ接続された一対の集電板、電気絶縁部材、および電解液などが収容されている。
【0018】
電池容器10は、厚さ方向(X軸方向)両側の一対の広側面10w、幅方向(Y軸方向)両側の一対の狭側面10n、高さ方向(Z軸方向)の下端の底面10b、および高さ方向の上端の上面10tを有している。これら電池容器10の各面のうち、広側面10wが最大の面積を有している。電池容器10の上面10tには、電池容器10の幅方向の両端に、一対の絶縁部材13を介して一対の外部端子14が配置され、一対の外部端子14の間に、開裂弁15および注液口16が設けられている。
【0019】
一対の外部端子14のうち、一方の外部端子14は、集電板を介して正電極に接続された正極の外部端子14Pであり、他方の外部端子14は、集電板を介して負電極に接続された負極の外部端子14Nである。開裂弁15は、電池容器10の内部の圧力が異常に上昇したときに開裂して、電池セル1の安全性を確保する。注液口16は、電池容器10の内部に電解液を注入するのに用いられ、注液栓17によって封止されている。
【0020】
図2に示すように、複数の電池セル1は、隣り合う一方の電池セル1の正極の外部端子14Pと、他方の電池セル1の負極の外部端子14Nとが、電池セル1の厚さ方向(X軸方向)に隣接するように、交互に反転させて配置されている。さらに、隣り合う一方の電池セル1の正極の外部端子14Pと、他方の電池セル1の負極の外部端子14Nとを、バスバー2によって、順次、接続していくことで、複数の電池セル1が直列に接続される。
【0021】
直列に接続された複数の電池セル1において、配列方向(X軸方向)の一端の電池セル1の正極の外部端子14Pと、配列方向の他端の電池セル1の負極の外部端子14Nには、それぞれ、端部バスバー2Eが接続されている。これらの端部バスバー2Eは、複数のバスバー2によって直列に接続された複数の電池セル1である電池群の外部端子として機能するバスバーである。
【0022】
バスバー2は、前述のように、複数の電池セル1の隣り合う電池セル1の外部端子14の間を接続し、中空構造を有する導電性の部材である。より具体的には、バスバー2および端部バスバー2Eは、良好な導電性および熱伝導性を有する金属製の管状の部材である。バスバー2および端部バスバー2Eの材料としては、たとえば、銅、アルミニウム、ニッケルなどを用いることができる。
【0023】
本実施形態において、バスバー2および端部バスバー2Eの断面形状は、たとえば、長方形である。バスバー2および端部バスバー2Eの幅は、たとえば、電池セル1の外部端子14の幅におおむね等しい。バスバー2および端部バスバー2Eは、たとえば、レーザ溶接によって電池セル1の外部端子14の上面に接合され、外部端子14に接続されている。
【0024】
バスバー通路21は、バスバー2および端部バスバー2Eのそれぞれに設けられた中空部である。バスバー通路21は、バスバー2および端部バスバー2Eのそれぞれの長手方向の一端と他端に開口を有し、バスバー2および端部バスバー2Eをそれぞれ貫通している。本実施形態において、バスバー通路21の断面形状は、バスバー2および端部バスバー2Eと同様に、長方形である。
【0025】
絶縁管5は、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂材料によって製作された電気絶縁性のチューブである。絶縁通路51は、絶縁管5に設けられた中空部であり、絶縁管5の一端と他端に開口部を有し、絶縁管5を貫通している。本実施形態において、絶縁管5および絶縁通路51の断面形状は、バスバー2およびバスバー通路21の断面形状と同様に、長方形である。
【0026】
絶縁管5は、電池セル1の配列方向(X軸方向)において隣り合うバスバー2の間に配置され、それらのバスバー2のバスバー通路21を、絶縁通路51によって接続している。また、絶縁管5は、たとえば、熱交換器4の一対の冷媒出口43の一方と、熱交換器4から最も近いバスバー2のバスバー通路21とを接続している。さらに、絶縁管5は、たとえば、熱交換器4の一対の冷媒出口43のもう一方と、熱交換器4から最も近い端部バスバー2Eのバスバー通路21とを接続している。
【0027】
また、絶縁管5は、たとえば、熱交換器4の一対の冷媒入口41の一方と、熱交換器4から最も離れたバスバー2のバスバー通路21とを接続している。さらに、絶縁管5は、たとえば、熱交換器4の一対の冷媒入口41のもう一方と、熱交換器4から最も離れた端部バスバー2Eのバスバー通路21とを接続している。
【0028】
冷媒通路3は、複数のバスバー2および端部バスバー2Eを冷却する電気絶縁性の冷媒Rを循環させる通路である。冷媒Rの大気圧における沸点は、たとえば、0℃から55℃まで範囲内である。冷媒Rとしては、たとえば、ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤を使用することができる。冷媒通路3の内圧は、たとえば、大気圧よりも低い圧力に減圧することも可能である。
【0029】
冷媒通路3は、たとえば、複数のバスバー2および端部バスバー2Eの複数のバスバー通路21と、複数の絶縁管5の複数の絶縁通路51とによって構成されている。冷媒通路3の内部には、複数のバスバー2および端部バスバー2Eを冷却する冷媒Rが封入されている。冷媒通路3は、たとえば、熱交換器4に接続され、熱交換器4と複数のバスバー2および端部バスバー2Eとの間で冷媒Rを循環させる。
【0030】
冷媒通路3は、たとえば、第1冷媒通路31と、第2冷媒通路32と、第3冷媒通路33とを有している。第1冷媒通路31は、熱交換器4の冷媒出口43に接続されて水平方向に沿って延びている。第2冷媒通路32は、第1冷媒通路31から鉛直方向に沿って上方へ延びている。第3冷媒通路33は、第2冷媒通路32の上端に連結されて水平方向に沿って延び、熱交換器4の冷媒入口41に接続されている。
【0031】
冷媒Rは、たとえば、第1冷媒通路31の全体を満たし、第2冷媒通路32の上端よりも下方に液面を有している。なお、冷媒Rは、たとえば、第1冷媒通路31を部分的に満たし、第1冷媒通路31内に液面を有していてもよい。
【0032】
熱交換器4は、たとえば、バスバー通路21を含む第1冷媒通路31よりも上方に配置されている。熱交換器4は、たとえば、冷媒入口41と、放熱部42と、冷媒出口43とを有している。
【0033】
熱交換器4は、たとえば、図2に示すように、放熱部42の上端部に、電池セル1の幅方向(Y軸方向)に離隔した一対の冷媒入口41を有している。また、熱交換器4は、たとえば、放熱部42の下端に、電池セル1の幅方向に離隔した一対の冷媒出口43を有している。一対の冷媒出口43は、一対の冷媒通路3の始端に連結され、一対の冷媒入口41は、一対の冷媒通路3の終端に連結される。
【0034】
放熱部42は、冷媒入口41から導入された冷媒Rを下方へ通過させながら、冷媒Rの熱を外気へ放熱する。より具体的には、放熱部42は、水平方向に沿って往復するように蛇行しながら鉛直方向の下方へ冷媒Rを導く蛇行流路42aを有している。また、放熱部42は、たとえば、複数の放熱フィンを含むヒートシンク42bを有している。
【0035】
以下、本実施形態の電池システム100の作用を説明する。
【0036】
本実施形態の電池システム100は、たとえば、複数のバスバー2によって直列に接続された複数の電池セル1を含む電池群に対し、電池群の外部端子として機能する一対の端部バスバー2Eを介して、外部の発電機などから電力を供給することができる。これにより、電池システム100の複数の電池セル1を充電することができる。
【0037】
また、電池システム100は、充電された複数の電池セル1から、一対の端部バスバー2Eを介して、外部のモータなどの機器へ電力を供給することができる。電池システム100では、充放電によって温度が上昇する複数の電池セル1の温度を適切な温度範囲に維持して各々の電池セル1の劣化を抑制するために、各々の電池セル1を均一に冷却することが重要になる。
【0038】
本実施形態の電池システム100は、前述のように、複数の電池セル1と、複数のバスバー2と、複数の絶縁管5と、冷媒通路3と、を備えている。複数のバスバー2の各々のバスバー2は、複数の電池セル1の隣り合う電池セル1の外部端子14の間を接続し、中空構造を有する導電性の部材である。複数の絶縁管5の各々の絶縁管5は、複数のバスバー2の隣り合うバスバー2の間に設けられ、電気絶縁性を有している。冷媒通路3は、複数のバスバー2の内部および複数の絶縁管5の内部に形成され、それら複数のバスバー2を冷却する電気絶縁性の冷媒Rを循環させる。より詳細には、冷媒通路3は、複数のバスバー2の各々のバスバー2を貫通するバスバー通路21と、電気絶縁性の絶縁管5の内部に形成されて複数のバスバー2の隣り合うバスバー2のバスバー通路21を連結する絶縁通路51と、を含む。
【0039】
このような構成により、本実施形態の電池システム100は、前記特許文献1に記載されたバッテリパックとは異なり、冷媒Rを冷媒通路3に封入して、各々の電池セル1の外部端子14の周辺部材と冷媒Rとの接触を回避することができる。したがって、本実施形態の電池システム100によれば、冷媒Rと各々の電池セル1の外部端子14の周辺部材との接触による予期しない副反応の発生を防止することができる。また、本実施形態の電池システム100によれば、冷媒Rを冷媒通路3に循環させることで、上記従来のバッテリパックと比較して、複数の電池セル1の冷却に必要な冷媒Rの量を低減することができ、冷媒Rのコストを削減することが可能になる。
【0040】
また、本実施形態の電池システム100は、上記の構成により、各々のバスバー2の内部のバスバー通路21を循環する冷媒Rによって各々のバスバー2を冷却し、各々のバスバー2によって各々の電池セル1の外部端子14を冷却することができる。さらに、各々のバスバー2は、前記特許文献2に記載された従来のリチウム二次電池の冷却システムにおける伝導性連結具と比較して、電池セル1の外部端子14に対する接合面積を大きくすることができる。したがって、本実施形態の電池システム100は、上記従来の冷却システムよりも、各々の電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させることができる。
【0041】
さらに、上記従来の冷却システムでは、冷媒によって冷却された冷媒管によってリチウム二次電池の電極端子を直接的に冷却するのではなく、冷媒管によって冷却された導電性連結具を介して間接的に電極端子を冷却している。これに対し、本実施形態の電池システム100では、上記の構成により、バスバー2を貫通するバスバー通路21内の冷媒Rによって冷却されたバスバー2が、電池セル1の外部端子14を直接的に冷却する。したがって、本実施形態の電池システム100は、上記従来の冷却システムよりも、各々の電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させ、各々の外部端子14の劣化を抑制し、耐用期間を長期化することができる。
【0042】
加えて、上記従来の冷却システムでは、リチウム二次電池の電極端子を冷却する伝導性連結具および冷媒管とは別に、バスバーを電極端子に接合する必要がある。これに対し、本実施形態の電池システム100では、上記の構成により、各々のバスバー2を冷却する冷媒を循環させる冷媒通路3が、各々のバスバー2を貫通するバスバー通路21を含んでいる。そのため、複数のバスバー2のバスバー通路21と、複数の絶縁管5の絶縁通路51とによって冷媒通路3を構成するのと同時に、複数の電池セル1の隣り合う電池セル1の外部端子14の間をバスバー2によって電気的に接続することができる。したがって、本実施形態の電池システム100によれば、隣り合う電池セル1の外部端子14間の電気的接続を、上記従来の冷却システムよりも容易に行うことが可能になる。
【0043】
また、本実施形態の電池システム100は、冷媒通路3に接続された熱交換器4をさらに備えている。熱交換器4は、冷媒入口41と、放熱部42と、冷媒出口43とを有している。冷媒入口41は、冷媒通路3の終端に連結される。放熱部42は、冷媒入口41から導入された冷媒Rを下方へ通過させながら、冷媒Rの熱を外気へ放熱する。冷媒出口43は、放熱部42の下端に設けられて冷媒通路3の始端に連結される。
【0044】
このような構成により、本実施形態の電池システム100において、複数のバスバー2を介して電池セル1を冷却して温度が上昇した冷媒Rは、冷媒通路3の終端から熱交換器4の冷媒入口41に導入される。冷媒入口41に導入された冷媒Rは、放熱部42を下方へ通過しながら、放熱部42を介して外気へ放熱することで温度が低下する。温度が低下した冷媒Rは、重力の作用によって放熱部42の下端から冷媒通路3の始端へ導入され、各々のバスバー2を介して各々の電池セル1を冷却する。したがって、本実施形態の電池システム100によれば、冷媒通路3に冷媒Rを循環させるためのポンプが不要になり、信頼性の向上と電力消費量の削減が可能になる。
【0045】
また、本実施形態の電池システム100において、冷媒通路3は、第1冷媒通路31と、第2冷媒通路32と、第3冷媒通路33とを有する。第1冷媒通路31は、熱交換器4の冷媒出口43に接続されて水平方向に沿って延びる。第2冷媒通路32は、第1冷媒通路31から鉛直方向に沿って上方へ延びる。第3冷媒通路33は、第2冷媒通路32の上端に連結され、水平方向に沿って延びて、熱交換器4の冷媒入口41に接続される。
【0046】
このような構成により、本実施形態の電池システム100は、第1冷媒通路31内の冷媒Rによって複数のバスバー2を介して複数の電池セル1を効率よく同時に冷却することができる。また、第1冷媒通路31内で温度が上昇した冷媒Rは、第1冷媒通路31から鉛直方向に沿って上方に延びる第2冷媒通路32へ移動する。これにより、第1冷媒通路31内の冷媒Rの突沸に伴う冷媒Rの逆流や異常な温度上昇が防止され、電池セル1の冷却効率が低下するのを防止できる。
【0047】
また、本実施形態の電池システム100において、熱交換器4は、冷媒通路3の第1冷媒通路31よりも上方に配置されている。このような構成により、本実施形態の電池システム100は、冷媒通路3と熱交換器4との間で、重力の作用によって冷媒Rをより効率よく循環させることができる。
【0048】
また、本実施形態の電池システム100において、冷媒Rの大気圧における沸点は、0℃から55℃まで範囲内である。このような構成により、バスバー2を介して電池セル1の外部端子14を冷却した冷媒通路3内の液体の冷媒Rの少なくとも一部が沸騰して、蒸発する。この冷媒Rの気化熱によって、電池セル1の冷却効率をより向上させることができる。また、冷媒Rの沸点よりも高い温度の電池セル1を優先的に冷却して、複数の電池セル1の温度を均一にすることができる。また、冷媒Rによる沸騰冷却方式を採用することで、空冷方式や水冷方式よりも電池セル1の冷却効率を向上させることができる。
【0049】
また、冷媒通路3で電池セル1を冷却して蒸発して気化した冷媒Rは、放熱部42内で冷却されることで凝縮して液体に戻る。放熱部42内で液体に戻った冷媒Rは、重力の作用によって放熱部42内を下方へ流れながら冷却され、冷媒出口43から冷媒通路3へ導入される。したがって、冷媒通路3と熱交換器4との間で冷媒Rをより効率よく循環させることができる。
【0050】
また、本実施形態の電池システム100において、冷媒Rは、ハイドロフルオロエーテルである。これにより、冷媒Rの大気圧における沸点を、0℃から55℃まで範囲内、より具体的には、約54℃程度にすることができる。また、冷媒Rに必要な電気絶縁性を十分に確保することが可能になる。
【0051】
また、本実施形態の電池システム100において、冷媒通路3の内圧が、大気圧よりも低い場合には、冷媒Rの沸点をより低下させることができる。したがって、電池セル1の特性に応じて冷媒Rの沸点を最適化し、冷媒Rによるバスバー2を介した電池セル1の冷却効率をより向上させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、冷媒Rと電池セル1の外部端子14周辺の部材との接触を回避しつつ、電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させることができ、隣り合う電池セル1の外部端子14間の電気的接続を容易にすることが可能な電池システム100を提供することができる。
【0053】
[実施形態2]
以下、図4から図6を参照して、本開示に係る電池システムの実施形態2を説明する。図4は、本開示に係る電池システムの実施形態2の一部を切断した側面図である。図5は、図4に示す電池システム100Aの一部を切断した平面図である。図6は、図4に示す電池システム100Aのブロック図である。
【0054】
なお、図4の断面は、図5のIV-IV線に沿う断面であり、図5の断面は、図4のV-V線に沿う断面である。また、図4では、Y軸負方向側に位置するバスバー2Aを含む第1冷媒通路31と、第2冷媒通路32と、第3冷媒通路33とを断面で示し、Y軸正方向側に位置するこれらの構成の図示を省略している。
【0055】
本実施形態の電池システム100Aは、たとえば、以下の構成が前述の実施形態1の電池システム100と異なっている。本実施形態の電池システム100Aは、流量センサ7と、温度センサ8と、制御装置9とを、さらに備えている。また、本実施形態の電池システム100Aにおいて、冷媒通路3Aの断面形状は円形である。また、バスバー2Aは、分岐部22を有し、板状部材6を介して電池セル1の外部端子14に接続されている。
【0056】
また、本実施形態の電池システム100Aは、たとえば、冷媒通路3Aを構成する電池セル1の幅方向(Y軸方向)両側の第1冷媒通路31が、電池セル1の配列方向(X軸方向)における熱交換器4と反対側の端部で絶縁管5によって接続されている。本実施形態の電池システム100Aのその他の構成は、前述の実施形態1の電池システム100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施形態の電池システム100Aでは、前述のように、冷媒通路3Aの断面形状が円形であることから、バスバー2Aおよび絶縁管5の断面形状も円形になっており、熱交換器4の冷媒入口41および冷媒出口43の形状も円形になっている。バスバー2Aおよび板状部材6の材質は、実施形態1のバスバー2および端部バスバー2Eと同様である。
【0058】
バスバー2Aは、たとえば、直管状の部分の中央部から直角に分岐する分岐部22を有するT字型の形状を有している。各々のバスバー2Aの分岐部22は、たとえば、電池セル1の外部端子14と反対方向の上方を向くように配置されている。各々の分岐部22の上端には、鉛直方向に沿って延びる絶縁管5の下端が接続されている。
【0059】
各々のバスバー2Aの分岐部22に接続されて鉛直方向に沿って延びる各々の絶縁管5の上端は、水平方向に延びる絶縁管5に接続されている。これら複数のバスバー2Aの分岐部22を貫通するバスバー通路21と、複数の絶縁管5の絶縁通路51とによって、第1冷媒通路31から鉛直方向に沿って上方へ延びる複数の第2冷媒通路32が形成されている。
【0060】
すなわち、冷媒通路3Aは、熱交換器4の冷媒出口43に接続されて水平方向に沿って延びる第1冷媒通路31と、熱交換器4の冷媒入口41に接続されて水平方向に沿って延びる第3冷媒通路33との間に、鉛直方向に沿って延びる複数の第2冷媒通路32を有している。
【0061】
流量センサ7は、冷媒通路3Aの第3冷媒通路33を流れる冷媒Rの流量を検出する。より具体的には、流量センサ7は、たとえば、複数の第2冷媒通路32と熱交換器4の冷媒入口41との間の第3冷媒通路33に取り付けられ、電池セル1を冷却することで温度が上昇して蒸発した冷媒Rの蒸気の流量を検出する。流量センサ7は、検出した冷媒Rの流量を制御装置9へ出力する。
【0062】
温度センサ8は、複数の電池セル1の少なくとも一つの電池セル1の温度を検出する。温度センサ8は、たとえば、図5に示すように、厚さ方向に並んだ複数の電池セル1のうち、中央部に配置された一つの電池セル1の上面10tに取り付けられている。なお、温度センサ8は、各々の電池セル1に取り付けられていてもよい。温度センサ8は、検出した電池セル1の温度を制御装置9へ出力する。
【0063】
制御装置9は、たとえば、一つ以上のマイクロコントローラによって構成され、電気的に接続された複数の電池セル1である組電池を制御する。制御装置9は、たとえば、図6に示すように、沸騰検知部91と、負荷制限部92と、充放電制御部93と、を有している。これら制御装置9の各部は、たとえば、制御装置9のメモリに記憶されたプログラムを制御装置9の中央処理装置(CPU)によって実行することで実現される制御装置9の機能を表している。
【0064】
沸騰検知部91は、流量センサ7によって検出された冷媒Rの流量と、温度センサ8によって検出された少なくとも一つの電池セル1の温度とに基づいて冷媒Rの遷移沸騰を検知する。より具体的には、沸騰検知部91は、たとえば、検出された冷媒Rの流量および電池セル1の温度が、あらかじめメモリに記憶された遷移沸騰条件を満たす場合に、冷媒Rの遷移沸騰を検知する。なお、沸騰検知部91は、検知された冷媒Rの流量と電池セル1の温度のいずれか一方を用いて、冷媒Rの遷移沸騰を検知してもよい。
【0065】
負荷制限部92は、沸騰検知部91によって冷媒Rの遷移沸騰が検知されたときに、複数の電池セル1を含む組電池の電力負荷を制限するための上限電力を算出する。充放電制御部93は、負荷制限部92によって算出された上限電力に基づいて複数の電池セル1の充放電を制御する。
【0066】
以下、本実施形態の電池システム100Aの作用を説明する。
【0067】
本実施形態の電池システム100Aにおいて、冷媒通路3Aは、熱交換器4の冷媒出口43に接続されて水平方向に沿って延びる第1冷媒通路31から鉛直方向に沿って上方へ延びる複数の第2冷媒通路32を有している。また、複数の第2冷媒通路32の各々の上端は、熱交換器4の冷媒入口41に接続されて水平方向に沿って延びる第3冷媒通路33に接続されている。
【0068】
このような構成により、第1冷媒通路31内で沸騰して気化した冷媒Rを、複数の第2冷媒通路32を介して第3冷媒通路33へ逃がし、第3冷媒通路33を通して熱交換器4の冷媒入口41に導入して、熱交換器4の放熱部42で凝縮させることができる。したがって、本実施形態の電池システム100Aによれば、冷媒通路3Aにおける冷媒Rの循環を促進させ、電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態の電池システム100Aにおいて、各々のバスバー2Aは、板状部材6を介して電池セル1の外部端子14に接続されている。このような構成により、本実施形態の電池システム100Aは、電池セル1の外部端子14に対するバスバー2Aの接合を容易にすることができ、隣り合う電池セル1の外部端子14間の電気的接続を容易にすることが可能になる。
【0070】
また、本実施形態の電池システム100Aは、第3冷媒通路33を流れる冷媒Rの流量を検出する流量センサ7と、複数の電池セル1の少なくとも一つの電池セル1の温度を検出する温度センサ8と、複数の電池セル1を制御する制御装置9と、をさらに備えている。制御装置9は、沸騰検知部91と、負荷制限部92と、充放電制御部93とを有している。沸騰検知部91は、流量センサ7によって検出された冷媒Rの流量と、温度センサ8によって検出された少なくとも一つの電池セル1の温度とに基づいて冷媒Rの遷移沸騰を検知する。負荷制限部92は、沸騰検知部91によって冷媒Rの遷移沸騰が検知されたときに複数の電池セル1の電力負荷を制限するための上限電力を算出する。充放電制御部93は、負荷制限部92によって算出された上限電力に基づいて複数の電池セル1の充放電を制御する。
【0071】
このような構成により、本実施形態の電池システム100Aは、制御装置9の沸騰検知部91によって冷媒Rの遷移沸騰を検知した場合に、複数の電池セル1の電力負荷を制限することで、冷媒Rの核沸騰を維持することができる。したがって、本実施形態の電池システム100Aによれば、冷媒Rの沸騰による電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、冷媒Rと電池セル1の外部端子14の周辺の部材との接触を回避しつつ、電池セル1の電池セル1を介した放熱性を向上させることができ、隣り合う電池セル1の外部端子14間の電気的接続を容易にすることが可能な電池システム100Aを提供することができる。
【0073】
[実施形態3]
以下、図7および図8を参照して、本開示に係る電池システムの実施形態3を説明する。図7は、本開示に係る電池システムの実施形態3の一部を切断した側面図である。図8は、図7に示す電池システム100Bのブロック図である。
【0074】
本実施形態の電池システム100Bは、たとえば、以下の構成が、前述の実施形態2の電池システム100Aと異なっている。電池システム100Bは、熱交換器4の放熱部42の外表面に冷却液Lを供給する冷却液通路T1と、その冷却液通路T1を開閉する電磁弁Vとを備えている。また、本実施形態の電池システム100Bは、制御装置9が電磁弁制御部94を有している。また、本実施形態の電池システム100Bは、筐体Cをさらに備えている。本実施形態の電池システム100Bのその他の構成は、前述の実施形態2の電池システム100Aと同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
冷却液通路T1は、たとえば、冷却液Lが貯留された冷却液タンクTに接続され、冷却液タンクTから熱交換器4の放熱部42の外表面へ冷却液Lを供給する冷却液供給管である。冷却液通路T1は、たとえば、放熱部42のヒートシンク42bの上方に配置され、冷却液タンクTから鉛直方向に沿って下方に延び、先端の開口部がヒートシンク42bの近傍に位置している。冷却液Lとしては、たとえば、水を用いることができる。
【0076】
電磁弁Vは、たとえば、冷却液タンクTと熱交換器4との間の冷却液通路T1の途中に設けられている。電磁弁Vは、たとえば、冷却液通路T1を開閉する弁体と、その弁体を駆動させる駆動部と、を備えている。電磁弁Vは、制御装置9によって制御された駆動部が弁体を駆動させることで、冷却液通路T1を開閉する。
【0077】
制御装置9は、沸騰検知部91と、沸騰検知部91によって冷媒Rの遷移沸騰が検知されたときに電磁弁Vを開く電磁弁制御部94と、を有している。なお、制御装置9は、図6に示す実施形態2の電池システム100Aと同様に、負荷制限部92および充放電制御部93を有し、複数の電池セル1を含む組電池を制御するようにしてもよい。
【0078】
筐体Cは、複数の電池セル1、複数のバスバー2A、および冷媒通路3Aを収容している。より詳細には、筐体Cは、複数の電池セル1、複数のバスバー2A、および冷媒通路3Aとともに、複数の絶縁管5および熱交換器4を収容する直方体形状に設けられ、断熱材を含んでいる。より具体的には、筐体Cは、たとえば、金属製または樹脂製の本体部の内表面と外表面の少なくとも一方に接合された断熱材を有している。また、筐体Cは、たとえば、放熱部42のヒートシンク42bを外部に露出させる開口部C1を有している。
【0079】
以下、本実施形態の電池システム100Bの作用を説明する。
【0080】
本実施形態の電池システム100Bは、前述のように、流量センサ7と、温度センサ8と、冷却液通路T1と、電磁弁Vと、制御装置9と、を備えている。流量センサ7は、冷媒通路3Aの第3冷媒通路33を流れる冷媒Rの流量を検出する。温度センサ8は、複数の電池セル1の少なくとも一つの電池セル1の温度を検出する。冷却液通路T1は、熱交換器4の放熱部42の外表面へ冷却液Lを供給する。電磁弁Vは、冷却液通路T1を開閉する。電磁弁Vを制御する制御装置9は、沸騰検知部91と、電磁弁制御部94とを有している。沸騰検知部91は、流量センサ7によって検出された冷媒Rの流量と、温度センサ8によって検出された少なくとも一つの電池セル1の温度とに基づいて冷媒Rの遷移沸騰を検知する。電磁弁制御部94は、沸騰検知部91によって冷媒Rの遷移沸騰が検知されたときに電磁弁Vを開く。
【0081】
このような構成により、本実施形態の電池システム100Bは、制御装置9の沸騰検知部91によって冷媒Rの遷移沸騰を検知した場合に、電磁弁Vを開いて冷却液通路T1から熱交換器4の放熱部42の外表面へ冷却液Lを供給することができる。その結果、放熱部42による冷媒Rの冷却性能が向上し、冷媒Rの核沸騰を維持することができる。したがって、本実施形態の電池システム100Bによれば、前述の実施形態2の電池システム100Aと同様に、冷媒Rの沸騰による電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させることができる。また、冷却液Lとして水を用いることで、蒸発した冷却液Lによる環境に対する影響をなくすことができる。
【0082】
また、本実施形態の電池システム100Bは、筐体Cを備えている。筐体Cは、断熱材を含み、複数の電池セル1、複数のバスバー2A、および冷媒通路3Aを収容する。このような構成により、たとえば、電池システム100Bが車両に搭載され、その車両が駐車して電池システム100Bが休止している夜間においても、冷媒Rの温度が極端に低下することを防止して、各々の電池セル1におけるリチウムの析出を防止できる。また、車両の暖機運転を不要にすることができる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、冷媒Rと電池セル1の外部端子14の周辺の部材との接触を回避しつつ、電池セル1の外部端子14を介した放熱性を向上させることができ、隣り合う電池セル1の外部端子14間の電気的接続を容易にすることが可能な電池システム100Bを提供することができる。
【0084】
以上、図面を用いて本開示に係る電池システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 電池セル
14 外部端子
2 バスバー
2A バスバー
2E 端部バスバー(バスバー)
21 バスバー通路
3 冷媒通路
3A 冷媒通路
31 第1冷媒通路
32 第2冷媒通路
33 第3冷媒通路
4 熱交換器
41 冷媒入口
42 放熱部
43 冷媒出口
5 絶縁管
51 絶縁通路
7 流量センサ
8 温度センサ
9 制御装置
91 沸騰検知部
92 負荷制限部
93 充放電制御部
94 電磁弁制御部
100 電池システム
100A 電池システム
100B 電池システム
C 筐体
R 冷媒
T1 冷却液通路
V 電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8