(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080660
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
B60H1/34 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194126
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】米山 陽二郎
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA05
3L211BA21
3L211DA14
3L211DA15
(57)【要約】
【課題】部品点数を抑制しつつ性能を向上した風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、内部に通気路5を区画するケース体3を備える。風向調整装置1は、ケース体3にて通気路5に回動可能に配置され、回動に応じて風向を調整するフィン15を備える。風向調整装置1は、ケース体3にて通気路5にフィン15の回動方向と交差する方向に回動可能に配置され、回動に応じて通気路5を開閉可能なバルブ30を備える。風向調整装置1は、フィン15の回動にバルブ30の回動を連動させるリンク35を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通気路を区画するケース体と、
このケース体にて前記通気路に回動可能に配置され、回動に応じて風向を調整するフィンと、
前記ケース体にて前記通気路に前記フィンの回動方向と交差する方向に回動可能に配置され、回動に応じて前記通気路を開閉可能なバルブと、
前記フィンの回動に前記バルブの回動を連動させるリンクと、
を備えることを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
フィンを回動させる操作部を備え、
前記フィンは、前記操作部の操作方向に回動可能である
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
リンクは、フィンの回動方向に沿う方向に移動可能であり、
バルブは、前記リンクと連結されるリンク連結部を有し、前記リンクの移動に伴い前記リンク連結部に前記リンク側から加わる外力により回動される
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
フィンは、ケース体の長手方向に複数配置され、
バルブは、前記長手方向に沿って長手状に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気路を開閉可能なバルブを備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置において、風向を調整するフィンと、通気路を開閉するシャットバルブと、を備え、フィンを操作ノブにより回動操作するとともに、シャットバルブを操作ダイヤルにより操作するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この構成の場合、操作ノブと操作ダイヤルとが必要となることから、機構が複雑であり、レイアウト制限が生じたり、意匠性も損なわれやすくなったりする。
【0005】
また、シャットバルブに代えて、複数のフィンを最大に振った位置で互いに重ね合わせて通気路を閉じるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
この構成の場合、フィン同士の重ね合わせのみで通気路の密閉を保持することは容易でなく、フィン表面に密着性を持たせる構造としたり、フィンを押さえつける方向に付勢する機構を備える構造としたりすることが必要となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-106352号公報 (第4-6頁、
図1)
【特許文献2】特開2010-89529号公報 (第9-10頁、
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、風向調整装置において、より簡素な構成で性能を向上することが望まれている。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、部品点数を抑制しつつ性能を向上した風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の風向調整装置は、内部に通気路を区画するケース体と、このケース体にて前記通気路に回動可能に配置され、回動に応じて風向を調整するフィンと、前記ケース体にて前記通気路に前記フィンの回動方向と交差する方向に回動可能に配置され、回動に応じて前記通気路を開閉可能なバルブと、前記フィンの回動に前記バルブの回動を連動させるリンクと、を備えるものである。
【0011】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、フィンを回動させる操作部を備え、前記フィンは、前記操作部の操作方向に回動可能であるものである。
【0012】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、リンクは、フィンの回動方向に沿う方向に移動可能であり、バルブは、前記リンクと連結されるリンク連結部を有し、前記リンクの移動に伴い前記リンク連結部に前記リンク側から加わる外力により回動されるものである。
【0013】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置において、フィンは、ケース体の長手方向に複数配置され、バルブは、前記長手方向に沿って長手状に配置されているものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の風向調整装置によれば、例えばフィンを操作するための操作部とバルブを操作するための操作部とを別個に備える必要がないなど、部品点数を抑制しつつ、バルブによって通気路の密閉を容易に保つことができ、性能を向上できる。
【0015】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、操作部の操作によってフィンを直感的に操作可能になるとともに、操作部の操作に応じてフィンが回動すると、それに連動してバルブを回動させることができるので、フィンとバルブとを共通の操作部によって操作可能になり、構成を簡素化できる。
【0016】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、リンクによって、フィンの回動にバルブの回動を容易に連動させることができる。
【0017】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置の効果に加えて、薄型の風向調整装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図2】同上風向調整装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図3】同上風向調整装置のフィンとバルブとの動作を示す平面図であり(a)は同上風向調整装置のフィンを一方向に最大に振った状態を示し、(b)はフィンの中立状態を示し、(c)はフィンを他方向に振った状態を示し、(d)はバルブの閉状態を示す。
【
図5】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図6】同上風向調整装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図7】同上内部構造の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】同上風向調整装置のフィンとバルブとの動作を示す平面図であり(a)は同上風向調整装置のフィンを一方向に最大に振った状態を示し、(b)はフィンの中立状態を示し、(c)はフィンを他方向に振った状態を示し、(d)はバルブの閉状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図4において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0021】
風向調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、ダクトとも呼ばれる。ケース体3は、筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース体3は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、ケース体3は、角筒状に形成されている。ケース体3により、内部に通気路5が囲まれている。ケース体3の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0022】
ケース体3は、通気路5の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、ケース体3は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置1は、横型の薄型に形成されている。ケース体3は、通気路5の中央部、すなわち中心軸を挟んで互いに対向する一対の端壁部6と、これら一対の端壁部6間を連結する一対の側壁部7と、を一体的に有する。一対の端壁部6は、上下方向に互いに対向し、一対の側壁部7は、左右方向に互いに対向する。一対の端壁部6,6と一対の側壁部7,7との後端部により、通気路5に空気すなわち空調風を受け入れる受入口8が囲まれ、一対の端壁部6,6と一対の側壁部7,7との前端部により、通気路5から空調風を排出する吹出口9が囲まれる。つまり、ケース体3の後端部は、通気路5に空調風を受け入れる受入口8であり、ケース体3の前端部は、通気路5から空調風を吹き出す吹出口9となっている。受入口8と吹出口9との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。受入口8から吹出口9へと空調風が通過する。受入口8及び吹出口9は、それぞれ横長となっている。
【0023】
ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。本実施の形態では、ケース体3は、ケース本体部11と、意匠部材であるフィニッシャ12と、を有する。ケース本体部11は、ケース体3の上流側の過半を構成する主体部である。ケース本体部11は角筒状に形成されている。ケース本体部11の前端すなわち下流端にフィニッシャ12が取り付けられている。フィニッシャ12は、パネルとも呼ばれ、風向調整装置1の設置位置の意匠の一部をなす。フィニッシャ12は、吹出口9を囲む四角形枠状に形成されている。
【0024】
図1に示すように、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、フィン15が配置されている。フィン15は、ルーバなどとも呼ばれ、ケース体3に対して回動することで、その回動に応じて吹出口9(
図4)から吹き出される空調風の風向を調整する。フィン15は、一主面及び他主面が整流面となる板状に形成されている。フィン15は、回動部16を有する。回動部16が、ケース体3に形成された回動受け部17(
図4)に回動可能に保持される。そして、フィン15は、ケース体3または通気路5の長手方向に沿って回動することで、風向をケース体3または通気路5の長手方向に調整する。つまり、本実施の形態において、フィン15は、上下に回動部16を有し、各回動部16がケース体3の各端壁部6に形成された回動受け部17(
図4)に回動可能に保持され、左右に整流面を有して左右方向に回動可能となっている。回動部16と回動受け部17(
図4)とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、回動部16が軸部、回動受け部17(
図4)が丸穴状の穴部または凹部である。
【0025】
本実施の形態では、フィン15は、ケース体3において、ケース本体部11の内部に位置する。すなわち、フィン15は、吹出口9に対し上流側に離れて位置する。回動受け部17は、ケース本体部11に形成されている。
【0026】
フィン15は、単数でも複数でもよい。本実施の形態では、フィン15はケース体3の長手方向に複数配置されている。好ましくは、複数のフィン15は、ケース体3の長手方向に等間隔または略等間隔に配置されている。本実施の形態において、フィン15は、左右方向に整列して配置されている。これら複数のフィン15は、リンク部材により連結され、互いに連動して同方向に回動するように構成されている。なお、図中においては、説明を明確にするために、フィン15は中央部に配置されている一つのみを図示し、その他のフィン15の図示を省略している。
【0027】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態において、フィン15は操作部20と連結され、フィン15の回動は、操作部20により乗員などの使用者が直接操作可能となっている。フィン15が複数の場合、フィン15のいずれか、好ましくは中央部のフィン15が操作部20と連結される。操作部20は、操作摘みであり、操作部20の操作方向にフィン15が回動可能である。図示される例では、操作部20は、左右方向に移動可能であり、この左右方向への移動によりフィン15を左右方向に回動させるようになっている。操作部20は、吹出口9(
図4)から露出している。本実施の形態において、操作部20は、左右方向に長手状の薄型に形成されている。操作部20には、連結部21が形成されている。連結部21がフィン15に形成された連結受け部22に対して回動可能に連結される。連結部21と連結受け部22とは、一方が軸部、他方が凹部または穴部である。本実施の形態において、連結部21はフィン15に向かい操作部20の後部に突設された一対の腕部間の前後方向に長い凹部であり、連結受け部22は、フィン15に回動軸線と平行または略平行に形成された円柱状の軸部である。
【0028】
操作部20は、操作ガイド部である下流側フィン24に移動可能に取り付けられている。図示される例では、操作部20は、下流側フィン24に沿ってスライド可能に取り付けられている。下流側フィン24は、下流側ルーバとも呼ばれる。下流側フィン24は、一主面及び他主面が整流面となる板状に形成されている。下流側フィン24は、フィン15よりも下流側に、フィン15と交差または直交する方向に整流面を有して配置されている。本実施の形態において、下流側フィン24は、上下に整流面を有して配置されている。下流側フィン24は、ケース体3の長手方向に沿って長手状に配置されている。下流側フィン24には、操作部20の移動範囲を規制する規制部25が形成されている。規制部25は、操作部20と当接することで操作部20をそれ以上移動させないようにするストッパ部である。規制部25は、下流側フィン24の背後側に形成されている。本実施の形態では、規制部25により、操作部20によってフィン15を回動可能な範囲が、左方向より右方向に広くなるように設定されている。
【0029】
好ましくは、下流側フィン24は、ケース体3にてフィン15の回動方向と交差または直交する方向に回動可能に配置されている。下流側フィン24は、回動部26を有する。回動部26が、ケース体3に形成された回動受け部に回動可能に保持される。そして、下流側フィン24は、ケース体3または通気路5の長手方向と交差または直交する方向に沿って回動することで、風向をケース体3または通気路5の長手方向と交差または直交する方向に調整する。図示される例では、下流側フィン24は、上下方向に回動可能に配置されている。つまり、本実施の形態において、下流側フィン24は、左右に回動部26を有し、各回動部26がケース体3の各側壁部7に形成された回動受け部に回動可能に保持され、上下に整流面を有して上下方向に回動可能となっている。回動部26と回動受け部とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、回動部26が軸部、回動受け部が丸穴状の穴部または凹部である。下流側フィン24は、操作部20の移動方向に沿って回動可能となっている。つまり、下流側フィン24は、操作部20を上下に移動させることに伴い操作部20と一体的に上下に回動するようになっている。
【0030】
本実施の形態では、
図4に示すように、下流側フィン24は、ケース体3において、フィニッシャ12の内部に位置する。すなわち、下流側フィン24は、吹出口9に臨んで位置する。回動受け部は、フィニッシャ12に形成されている。図示される例では、下流側フィン24は、吹出口9の短手方向である上下方向の中央部に一枚設定されている。
【0031】
また、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、
図1及び
図2に示すバルブ30が配置されている。バルブ30は、ケース体3に対して回動することで、その回動に応じて通気路5を開閉するシャットバルブである。バルブ30は四角形板状に形成されている。バルブ30は、通気路5の断面形状と略等しい外形を有する。バルブ30は、バルブ回動部31を有する。バルブ回動部31が、ケース体3に形成されたバルブ回動受け部32(
図4)に回動可能に保持される。そして、バルブ30は、ケース体3または通気路5の長手方向と交差する方向に回動することで通気路5を開閉する。つまり、本実施の形態において、バルブ30は、左右にバルブ回動部31を有し、各バルブ回動部31がケース体3の各側壁部7に形成されたバルブ回動受け部32(
図4)に回動可能に保持され、上下方向に回動可能となっている。したがって、バルブ30の回動方向は、フィン15の回動方向と交差または直交している。バルブ回動部31とバルブ回動受け部32(
図4)とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、バルブ回動部31が軸部、バルブ回動受け部32(
図4)が丸穴状の穴部または凹部である。
【0032】
バルブ30は、フィン15に対し上流側に離れて位置する。本実施の形態では、バルブ30は、ケース体3において、ケース本体部11の内部、かつ、受入口8(
図4)の近傍に位置する。バルブ回動受け部32(
図4)は、ケース本体部11に形成されている。
【0033】
バルブ30の回動は、リンク35を介してフィン15の回動と連動される。リンク35は、バルブ30及びフィン15に対して、回動可能に直接または間接的に連結されている。本実施の形態において、リンク35は、バルブ30及びフィン15に対してそれぞれ回動可能に直接連結されている。リンク35は、フィン15の回動方向に沿う方向に移動可能であり、このリンク35の移動に伴いバルブ30側に外力を伝えることで、バルブ30を回動させるように構成されている。
【0034】
リンク35は、長手状に形成されている。リンク35は、前後方向に長手方向を有するように通気路5に配置される。リンク35は、バルブ30側と連結されるバルブ側連結部37を一端部である後端部に有する。本実施の形態において、バルブ側連結部37は、バルブ30に形成されたリンク連結部38と直接連結される。バルブ側連結部37は、リンク連結部38に対し、回動及び移動可能に連結されている。バルブ側連結部37とリンク連結部38とにより、フィン15の回動つまり操作部20の操作にバルブ30の開閉を連動させる連動部が構成されている。バルブ側連結部37とリンク連結部38とは、一方が軸部、他方が穴部である。バルブ側連結部37は、フィン15の回動方向に沿って、本実施の形態ではフィン15の回動方向の接線方向に貫通された穴部37aを有する筒状に形成されている。穴部37aは、リンク35の長手方向に長穴状に形成されている。穴部37aの長さに応じて、バルブ30を回動させる外力をフィン15の回動により発生させるフィン15の回動範囲(回動角度)、つまり操作部20の操作範囲が設定される。すなわち、穴部37aの長さに応じて、バルブ30の開閉の開始のタイミングが設定される。穴部37aは、フィン15の回動とバルブ30の回動とを連動させるタイミングを設定するタイミング設定部である。穴部37aの設定により、フィン15を所定角以上振ったときにバルブ30が連動して回動するように構成される。また、本実施の形態において、バルブ側連結部37には、穴部37aとバルブ側連結部37の外側とを連通する切欠開口部37bが形成されている。切欠開口部37bは、バルブ側連結部37とリンク連結部38とを連結可能とするためのものである。切欠開口部37bは、左右方向に延びるスリット状となっている。
【0035】
リンク連結部38は、バルブ30の長手方向に沿って長手状に形成されている。リンク連結部38は、細長い円柱状または棒状に形成されている。リンク連結部38の長手方向に沿ってリンク35のバルブ側連結部37が移動可能であるとともに、リンク連結部38がバルブ側連結部37に対し回動可能である。リンク連結部38は、バルブ30の回動軸線を基準としてリンク35とは反対側、つまりバルブ30の回動軸線に対して上流側の位置に、回動軸線と平行または略平行に配置されている。リンク連結部38は、バルブ30の一主面に対し、両端部が固定部39により固定されている。そのため、リンク連結部38に対してリンク35から上流下流方向である前後方向に力が加えられることで、バルブ30が回動するようになっている。
【0036】
本実施の形態において、リンク連結部38は、バルブ側連結部37と連結するために、長手方向の一端部に縮小部38aを有する。縮小部38aは、リンク連結部38のその他の一般部に対して細く形成され、バルブ側連結部37の切欠開口部37bから穴部37aへと挿入または圧入可能となっている。好ましくは、縮小部38aは、リンク連結部38に対するリンク35のバルブ側連結部37の移動範囲外に設定されている。
【0037】
また、リンク35は、フィン15側と連結されるフィン側連結部41を他端部である前端部に有する。本実施の形態において、フィン側連結部41は、フィン15に形成されたリンク側連結受け部42と直接連結される。フィン側連結部41は、リンク側連結受け部42に対し、回動可能に連結されている。フィン側連結部41とリンク側連結受け部42とは、一方が軸部、他方が穴部である。本実施の形態では、フィン側連結部41は、フィン15の回動軸線に平行または略平行、すなわちフィン15の回動方向に対して交差または直交する方向に貫通された穴部41aを有する筒状に形成されている。穴部41aは、丸穴状である。リンク側連結受け部42は、細長い円柱状または棒状に形成されている。リンク側連結受け部42は、フィン15の回動部16を基準として連結受け部22とは反対側の位置に配置されている。リンク側連結受け部42は、フィン15の回動軸線に対し平行または略平行に形成されている。
【0038】
そして、風向調整装置1は、受入口8を空調装置と連結して配置する。空調装置からの空調風は、受入口8から通気路5を通過し、フィン15及び下流側フィン24によって配風されて吹出口9から吹き出される。
【0039】
本実施の形態の風向調整装置1は、フィン15による左右方向の配風と、下流側フィン24による上下方向の配風と、の組み合わせにより、任意方向への空調風の吹き出しが可能となる。
【0040】
まず、上下方向の配風については、乗員などの使用者が操作部20を摘み、操作部20を上下方向に移動させると、操作部20と一体的に下流側フィン24が上下に回動することで、空調風は下流側フィン24の整流面に沿って上下方向に整流され、吹出口9から上下方向に吹き出す。
【0041】
また、左右方向の配風については、乗員などの使用者が操作部20を摘み、操作部20を左右にスライド操作させることで、フィン15が左右に回動し、空調風はフィン15の整流面に沿って左右方向に整流され、吹出口9から左右方向に吹き出す。
【0042】
具体的に、
図3(b)に示すように、操作部20が下流側フィン24の左右方向の中央部にある場合、つまりフィン15が中立位置にある場合、空調風は通気路5内をフィン15の整流面に沿って吹出口9へと直進し、ケース体3の軸方向つまり通気路5の通気方向に沿って吹出口9から正面方向に吹き出す。
【0043】
また、
図3(a)に示すように、操作部20を中立位置から下流側フィン24に沿って左側にスライドさせると、操作部20に連結されているフィン15の下流側が左側に移動し、フィン15が回動部16を中心として図中の時計回り方向に回動する。
図3(a)には、操作部20が左側の規制部25に接触するまで移動した、左側への最大スライド状態、つまりフィン15を左側に最大に振った状態(左側最大振り角位置、例えば左35°)を示す。そこで、空調風は通気路5内をフィン15の整流面に沿って左方向に整流され、吹出口9から左方向に吹き出す。
【0044】
なお、フィン15が時計回り方向に回動することに伴い、リンク側連結受け部42も回動部16を中心として時計回り方向に移動するため、リンク側連結受け部部42に対してフィン側連結部41が連結されているリンク35は、回動部16を中心としてフィン側連結部41が時計回り方向へと回動するとともに、バルブ側連結部37がバルブ30のリンク連結部38に連結されていることで、前後方向に沿った姿勢を維持しつつ、リンク連結部38に沿って右方向にスライドする。このとき、バルブ側連結部37の穴部37aが前後方向に長穴状であるため、リンク35は、その移動範囲全体において、バルブ側連結部37の穴部37aに挿通されたバルブ30のリンク連結部38に対して前後方向には干渉しない。そのため、フィン15の回動にバルブ30が連動せず、バルブ30が通気路5を開いた状態を維持する。
【0045】
一方、
図3(c)に示すように、操作部20を中立位置から下流側フィン24に沿って右側にスライドさせると、操作部20に対して連結されているフィン15の下流側が右側に移動し、フィン15が回動部16を中心として図中の反時計回り方向に回動する。そこで、空調風は通気路5内をフィン15の整流面に沿って右方向に整流され、吹出口9から右方向に吹き出す。
【0046】
なお、フィン15が反時計回り方向に回動することに伴い、リンク側連結受け部42も回動部16を中心として反時計回り方向に移動するため、リンク側連結受け部42に対してフィン側連結部41が連結されているリンク35は、回動部16を中心としてフィン側連結部41が反時計回り方向へと回動するとともに、バルブ側連結部37がバルブ30のリンク連結部38に連結されていることで、前後方向に沿った姿勢を維持しつつ、リンク連結部38に沿って左方向にスライドする。このとき、バルブ側連結部37の穴部37aが前後方向に長穴状であるため、リンク35は、所定の範囲(例えばフィン15が右35°まで回動する範囲)において、バルブ側連結部37の穴部37aに挿通されたバルブ30のリンク連結部38に対して前後方向には干渉しない。そのため、フィン15の回動にバルブ30が連動せず、バルブ30が通気路5を開いた状態を維持する。
【0047】
そして、
図3(c)に示す状態から、
図3(d)に示すように、操作部20をさらに下流側フィン24に沿って右側にスライドさせると、フィン15のさらなる回動に伴ってリンク35がさらに回動することで、バルブ側連結部37がバルブ30のリンク連結部38に対して前後方向に干渉し、リンク連結部38を下流側すなわち前側へと引っ張る。そのため、フィン15の回動にバルブ30が連動して回動し、その回動角度に応じて通気路5を閉じる。
図3(d)には、操作部20が右側の規制部25に接触するまで移動した、右側への最大スライド状態、つまりフィン15を右側に最大に振った状態(右側最大振り角位置、例えば右82°)を示す。少なくともこの状態では、バルブ30が通気路5を完全または略完全に閉じる位置となる。
【0048】
このように、第1の実施の形態によれば、ケース体3にて通気路5に回動可能に配置されたフィン15の回動に、ケース体3にて通気路5にフィン15の回動方向と交差する方向に回動可能に配置されたバルブ30の回動を連動させるため、例えばフィン15を操作するための操作部とバルブ30を操作するための操作部とを別個に備える必要がないなど、部品点数を抑制しつつ、バルブ30によって通気路5の密閉を容易に保つことができ、性能を向上できる。
【0049】
特に、本実施の形態では、リンク35をフィン15及びバルブ30に対して直接連結しているため、より簡素な構成とすることができ、ケース体3への組み付けが容易になる。
【0050】
フィン15を回動させる操作部20の操作方向にフィン15を回動可能としたことで、操作部20の操作によってフィン15を直感的に操作可能になるとともに、操作部20の操作に応じてフィン15が回動すると、それに連動してバルブ30を回動させることができるので、フィン15とバルブ30とを共通の操作部20によって操作可能になり、構成を簡素化できる。
【0051】
また、バルブ30により通気路5を閉じた状態では、空調風が通気路5を流れないため、フィン15を回動させる必要がない。そのため、フィン15を回動させる操作部20を利用してバルブ30の開閉を連動させる構成としても、操作部20によるフィン15の操作に不都合が生じることはない。
【0052】
リンク35を、フィン15の回動方向に沿う方向に移動可能とし、バルブ30を、リンク35の移動に伴いリンク連結部38にリンク35側から加わる外力により回動されるように構成することで、リンク35によって、フィン15の回動にバルブ30の回動を容易に連動させることができる。
【0053】
リンク35は、リンク連結部38に連結されるバルブ側連結部37の穴部37aをリンク連結部38の長手方向と交差する方向に長手状に形成することで、穴部37aの長さに応じて、リンク35によってフィン15側からの外力をバルブ30のリンク連結部38に伝達するタイミングを設定できる。したがって、バルブ30が通気路5を開閉するために必要となる操作部20の操作量つまりフィン15の振り角を、簡素な構成で容易に調整できる。
【0054】
フィン15をケース体3の長手方向である左右方向に複数配置し、バルブ30を、長手方向に沿って長手状に配置することで、薄型の風向調整装置1を構成できる。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、薄型、小型で、シンプルなデザインの風向調整装置1を提供できる。
【0056】
次に、第2の実施の形態について、
図5ないし
図9を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
本実施の形態は、リンク35が、フィン15に対し、間接的に連結されているものである。
【0058】
図示される例では、リンク35は、バルブ側連結部37の穴部37aが、リンク連結部38の外径寸法より僅かに大きい丸穴状に形成されている。また、フィン側連結部41には、連結体であるジョイント45が連結されている。ジョイント45を介して、リンク35がフィン15と連結されている。
【0059】
ジョイント45は、通気路5に位置する。ジョイント45は、リンク35のフィン側連結部41と回動可能に連結される第一連結体連結部である第一ジョイント連結部47を一端部である後端部に有する。フィン側連結部41と第一ジョイント連結部47とは、一方が凹部、他方が凸部である。本実施の形態では、フィン側連結部41が凹部、第一ジョイント連結部47が球状の凸部として形成されている。フィン側連結部41は、バルブ側連結部37の穴部37aの貫通方向に対して交差または直交する上下方向に貫通された穴部41aを有する。
【0060】
また、ジョイント45は、フィン15のリンク側連結受け部42と回動可能に連結される第二連結体連結部である第二ジョイント連結部48を他端部である前端部に有する。リンク側連結受け部42と第二ジョイント連結部48とは、一方が凹部または穴部、他方が凸部または軸部である。本実施の形態では、リンク側連結受け部42が円柱状の軸部、第二ジョイント連結部48が丸穴状の穴部として形成されている。図示される例では、リンク側連結受け部42は、フィン15の回動軸線上に位置する。本実施の形態において、リンク側連結受け部42は、回動部16と同軸状に形成されている。リンク側連結受け部42は、回動部16の基端部に位置し、リンク側連結受け部42から回動部16が同軸状に突出している。
【0061】
さらに、ジョイント45は、第一ジョイント連結部47と第二ジョイント連結部48との間に、カム連結部49が形成されている。カム連結部49を基準として、第一ジョイント連結部47と第二ジョイント連結部48とが互いに反対側に位置する。ジョイント45は、平面視で、第一ジョイント連結部47と第二ジョイント連結部48との一方とカム連結部49とを結ぶ仮想線に対し、第一ジョイント連結部47と第二ジョイント連結部48との他方がその線上に位置しないように配置されている。つまり、ジョイント45は、屈曲状に形成されている。
【0062】
カム連結部49には、第一カム部材51が取り付けられている。第一カム部材51は、開口部53を有する。開口部53に、ジョイント45が挿通されており、第一カム部材51に対して上流側すなわちバルブ30側である後側に第一ジョイント連結部47が位置し、第一カム部材51に対して下流側すなわちフィン15側である前側に第二ジョイント連結部48が位置する。
【0063】
第一カム部材51は、カム連結部49を回動可能に受けるカム連結受け部54を有する。カム連結部49とカム連結受け部54とは、一方が凹部または穴部、他方が凸部または軸部である。本実施の形態において、カム連結部49が円柱状の軸部、カム連結受け部54が穴部である。カム連結受け部54は、開口部53に位置している。
【0064】
また、第一カム部材51には、一端部である後端部に第一カム部55が形成され、他端部である前端部に第二カム部56が形成されている。第一カム部55と第二カム部56とは、互いに離れて位置する。第一カム部55と第二カム部56とは、カム連結受け部54を基準として互いに反対側に位置する。本実施の形態において、第一カム部55及び第二カム部56は、円柱状に形成された軸部である。第一カム部55及び第二カム部56は、互いに平行に配置されている。第一カム部55及び第二カム部56は、それぞれ第一カム部材51の上部に位置する。
【0065】
本実施の形態において、第一カム部55は、第一カム部材51の左側に位置し、第二カム部56は、第一カム部材51の右側に位置する。
【0066】
第一カム部55及び第二カム部56は、第二カム部材61に接続される。第二カム部材61は、第一カム部材51に対し上方にて通気路5に位置する。第二カム部材61は、第一カム部55及び第二カム部56を受ける第一カム受け部63及び第二カム受け部64を有する。第一カム部55及び第二カム部56と第一カム受け部63及び第二カム受け部64との接続関係により、ジョイント45がフィン15と連動して回動される位置、すなわちバルブ30を回動させる外力をフィン15の回動により発生させるフィン15の回動範囲(回動角度)、つまり操作部20の操作範囲が設定される。第一カム部材51と第二カム部材61とにより、フィン15の回動とバルブ30の回動とを連動させるタイミングを設定するタイミング設定部が構成されている。
【0067】
本実施の形態において、第一カム受け部63及び第二カム受け部64は、第二カム部材61に形成され第一カム部55及び第二カム部56が挿入されてこれら第一カム部55及び第二カム部56の位置を規制するカム穴である。第一カム受け部63及び第二カム受け部64は、第二カム部材61を貫通していてもよいし、凹部として形成されていてもよい。本実施の形態において、第一カム受け部63は、第二カム部材61の左側に位置し、第二カム受け部64は、第二カム部材61の右側に位置する。
【0068】
第一カム受け部63は、前後方向に長穴状に形成されている。第一カム受け部63は、内縁部において、第一カムストッパ部63aを一端部である後端部に備え、第一カムストッパ部63aの両側に、第一ガイド部63bと第二ガイド部63cとが前後方向に延びて連なっているとともに、他端部である第一ガイド部63bの前端部に第二カムストッパ部63dが形成され、第二カムストッパ部63dと第二ガイド部63cとが連続部63eにより連なっている。
【0069】
第一カムストッパ部63a及び第二カムストッパ部63dは、第一カム部材51の第一カム部55を受け止めるストッパ部である。
【0070】
第一ガイド部63b及び第二ガイド部63cは、第一カム部材51の第一カム部55を、第一カム部材51の回動に伴いガイドする部分である。第一ガイド部63b及び第二ガイド部63cは、左側に凸状の円弧状に湾曲して形成されている。図示される例では、第一ガイド部63bが第一カムストッパ部63aの左側に前後方向に延びて連なり、第二ガイド部63cが第一カムストッパ部63aの右側に前後方向に延びて連なっている。第一ガイド部63bは、第二ガイド部63cよりも前側に延びている。
【0071】
第二カム受け部64は、前後方向に長穴状に形成されている。第二カム受け部64は、第一カム受け部63よりも前後方向に短く形成されている。第二カム受け部64は、内縁部において、第一カムストッパ部64aを一端部である後端部に備え、第一カムストッパ部64aの一側である右側に第一ガイド部64bが前後方向に延びて連なり、第一ガイド部64bの前端部に第二ガイド部64cが前後方向に延びて連なり、他端部である第二ガイド部64cの前端部に第二カムストッパ部64dが左側に延びて形成され、第二カムストッパ部64dと第一カムストッパ部64aとが連続部64eにより連なっている。第一ガイド部64bは、右側に凸状の円弧状に湾曲して形成されている。第一ガイド部64bは、第二ガイド部63cと同心円上に位置する。第二ガイド部64cは、後側に凸状の円弧状に形成されている。
【0072】
第一カムストッパ部64a及び第二カムストッパ部64dは、第一カム部材51の第二カム部56を受け止めるストッパ部である。
【0073】
第一ガイド部64b及び第二ガイド部64cは、第一カム部材51の第二カム部56を、第一カム部材51の回動に伴いガイドする部分である。
【0074】
そして、本実施の形態の風向調整装置1は、操作部20の操作に応じて、フィン15による左右方向の配風と、下流側フィン24による上下方向の配風と、の組み合わせにより、任意方向への空調風の吹き出しが可能となる。上下方向の配風については、第1の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
【0075】
図8(b)に示すように、操作部20が下流側フィン24の左右方向の中央部にある場合、つまりフィン15が中立位置にある場合、空調風は通気路5内をフィン15の整流面に沿って吹出口9へと直進し、ケース体3の軸方向つまり通気路5の通気方向に沿って吹出口9から正面方向に吹き出す。
【0076】
また、
図8(a)に示すように、操作部20を中立位置から下流側フィン24に沿って左側にスライドさせると、操作部20に連結されているフィン15の下流側が左側に移動し、フィン15が回動部16を中心として図中の時計回り方向に回動する。
図8(a)には、操作部20が左側の規制部25に接触するまで移動した、左側への最大スライド状態、つまりフィン15を左側に最大に振った状態(左側最大振り角位置、例えば左35°)を示す。そこで、空調風は通気路5内をフィン15の整流面に沿って左方向に整流され、吹出口9から左方向に吹き出す。
【0077】
なお、フィン15が時計回り方向に回動することに伴い、リンク側連結受け部42も回動部16を中心として時計回り方向に移動するため、リンク側連結受け部42に対して第二ジョイント連結部48が連結されているジョイント45が時計回り方向へ、第一カム部材51が反時計回り方向へ回動しようとするが、第一カム部材51の第二カム部56が第二カム部材61の第二カム受け部64の第一カムストッパ部64aに当接していることで、第一カム部材51の回動が規制されるため、この第一カム部材51に対して回動中心となるカム連結部49が保持されているジョイント45は、カム連結部49を中心としてフィン15の下流側に対して相対的に反時計回り方向に回動する。したがって、ジョイント45は、フィン15が中立位置にある場合と同じ姿勢及び位置を維持することで、リンク35は、その移動範囲全体において、バルブ側連結部37の穴部37aに挿通されたバルブ30のリンク連結部38に対して前後方向には外力を与えない。そのため、フィン15の回動にバルブ30が連動せず、バルブ30が通気路5を開いた状態を維持する。
【0078】
一方、
図8(c)に示すように、操作部20を中立位置から下流側フィン24に沿って右側にスライドさせると、操作部20に連結されているフィン15の下流側が右側に移動し、フィン15が回動部16を中心として図中の反時計回り方向に回動する。そこで、空調風は通気路5内をフィン15の整流面に沿って右方向に整流され、吹出口9から右方向に吹き出す。
【0079】
なお、フィン15が反時計回り方向に回動することに伴い、リンク側連結受け部42も回動部16を中心として反時計回り方向に移動するため、リンク側連結受け部42に対して第二ジョイント連結部48が連結されているジョイント45が反時計回り方向へ、第一カム部材51が時計回り方向へ回動しようとする。第一カム部材51については、第一カム部55が第二カム部材61の第一カム受け部63の第二ガイド部63cに沿って第一カムストッパ部63aまで移動し、第二カム部56が第二カム部材61の第二カム受け部64の第一ガイド部64bに沿って移動するように回動し、第一カム部55が第一カムストッパ部63aに当接すると、第一カム部材51の回動が規制されるため、この第一カム部材51に対して回動中心となるカム連結部49が保持されているジョイント45は、カム連結部49を中心としてフィン15の下流側に対して相対的に時計回り方向に回動する。したがって、ジョイント45は、フィン15が中立位置にある場合と同じ姿勢及び位置を維持することで、リンク35は、その移動範囲全体において、バルブ側連結部37の穴部37aに挿通されたバルブ30のリンク連結部38に対して前後方向には外力を与えない。そのため、フィン15の回動にバルブ30が連動せず、バルブ30が通気路5を開いた状態を維持する。
【0080】
そして、
図8(c)に示す状態から、
図8(d)に示すように、操作部20をさらに下流側フィン24に沿って右側にスライドさせると、フィン15のさらなる回動に伴って第一カム部材51の第一カム部55が第二カム部材61の第一カム受け部63の第一ガイド部63bに沿って第二カムストッパ部63dまで移動し、第二カム部56が第二カム部材61の第二カム受け部64の第二ガイド部64cに沿って第二カムストッパ部64dまで移動するように回動する。そのため、ジョイント45と連結されているリンク35のバルブ側連結部37がバルブ30のリンク連結部38に対して前後方向に干渉し、リンク連結部38を下流側すなわち前側へと引っ張ることで、フィン15の回動にバルブ30が連動して回動し、その回動角度に応じて通気路5を閉じる。
図8(d)には、操作部20が右側の規制部25に接触するまで移動した、右側への最大スライド状態、つまりフィン15を右側に最大に振った状態(右側最大振り角位置、例えば右82°)を示す。少なくともこの状態では、バルブ30が通気路5を完全または略完全に閉じる位置となる。
【0081】
このように、第2の実施の形態によれば、ケース体3にて通気路5に回動可能に配置されたフィン15の回動に、ケース体3にて通気路5にフィン15と交差する方向に回動可能に配置されたバルブ30の回動を連動させるなど、第1の実施の形態と同様の構成を有することで、部品点数を抑制しつつ性能を向上できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0082】
また、ジョイント45、第一カム部材51及び第二カム部材61を用いて、リンク35によってフィン15側からの外力をバルブ30のリンク連結部38に伝達するタイミングを設定するため、バルブ30が通気路5を開閉するために必要となる操作部20の操作量つまりフィン15の振り角を、第一カム受け部63及び第二カム受け部64の形状に応じて、きめ細かく調整できる。
【0083】
なお、上記の各実施の形態において、フィン15を右方向に所定角以上振ったときにバルブ30が回動するように連動させる構成としたが、これに限らず、各部の配置や形状を左右反転することで、フィン15を左方向に所定角以上振ったときにバルブ30が回動するように連動させるようにしてもよい。
【0084】
また、風向調整装置1は、横型のものとしたが、長手方向を上下方向とした縦型のものであっても、同様に構成できる。その場合、フィン15を上下方向に回動可能とし、バルブ30を左右方向に回動させるなど、上記の各実施の形態の配置を正面から見て90°回転させることで、上記の各実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【0085】
さらに、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 風向調整装置
3 ケース体
5 通気路
15 フィン
20 操作部
30 バルブ
35 リンク
38 リンク連結部