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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080662
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194128
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】黄 強翔
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
(72)【発明者】
【氏名】白川 純一
(72)【発明者】
【氏名】新垣 亮
(72)【発明者】
【氏名】香川 大地
【テーマコード(参考)】
5G363
【Fターム(参考)】
5G363AA11
5G363AA12
5G363BA01
5G363DA13
5G363DA20
5G363DC10
(57)【要約】
【課題】ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】配線部材10は、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが撚られたツイスト線20と、前記ツイスト線20が融着固定されたベース部材30と、を備える。前記ツイスト線20のうち前記第1線状伝送部材21Aと前記第2線状伝送部材21Bとが前記ベース部材30上に横に並んだ部分が横並び部分24において、前記第1線状伝送部材21Aと前記第2線状伝送部材21Bとがそれぞれ前記ベース部材30に融着されて横並び融着部分50が形成される。前記横並び融着部分50を含む第1半周期区間28Aの長さD1が、前記第1半周期区間28Aの隣の第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lよりも長い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とが撚られたツイスト線と、
前記ツイスト線が融着固定されたベース部材と、
を備え、
前記ツイスト線のうち前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが前記ベース部材上に横に並んだ部分が横並び部分とされ、縦に並んだ部分が縦並び部分とされたとき、
前記横並び部分と前記縦並び部分とが、前記ツイスト線の延在方向に沿って交互に延在しており、
連続する2つの前記縦並び部分の間が前記ツイスト線における撚りの半周期区間とされ、
前記横並び部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とがそれぞれ前記ベース部材に融着されて横並び融着部分が形成され、
前記横並び融着部分を含む第1半周期区間の長さが、前記第1半周期区間の隣の第2半周期区間の長さよりも長い、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記横並び融着部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが並列方向に離れている、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記横並び融着部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが、互いに平行に、直線状に延びている、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第2半周期区間において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが前記ベース部材上に配置されつつ前記ベース部材に融着されていない、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記横並び融着部分における前記第1線状伝送部材の融着部分の長さ寸法は、前記第1線状伝送部材の幅寸法よりも長く、
前記横並び融着部分における前記第2線状伝送部材の融着部分の長さ寸法は、前記第2線状伝送部材の幅寸法よりも長い、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の線状伝送部材がまとめられた集合線がベース部材に固定されている配線部材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-36523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ツイスト線がより強固にベース部材に融着固定されることが望まれている。
【0005】
そこで、ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とが撚られたツイスト線と、前記ツイスト線が融着固定されたベース部材と、を備え、前記ツイスト線のうち前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが前記ベース部材上に横に並んだ部分が横並び部分とされ、縦に並んだ部分が縦並び部分とされたとき、前記横並び部分と前記縦並び部分とが、前記ツイスト線の延在方向に沿って交互に延在しており、連続する2つの前記縦並び部分の間が前記ツイスト線における撚りの半周期区間とされ、前記横並び部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とがそれぞれ前記ベース部材に融着されて横並び融着部分が形成され、前記横並び融着部分を含む第1半周期区間の長さが、前記第1半周期区間の隣の第2半周期区間の長さよりも長い、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかる配線部材を示す平面図である。
図2図2図1の部分拡大図である。
図3図3は実施形態1にかかる配線部材を示す側面図である。
図4図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5はツイスト線を融着するための準備工程を示す説明図である。
図6図6はツイスト線の融着工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とが撚られたツイスト線と、前記ツイスト線が融着固定されたベース部材と、を備え、前記ツイスト線のうち前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが前記ベース部材上に横に並んだ部分が横並び部分とされ、縦に並んだ部分が縦並び部分とされたとき、前記横並び部分と前記縦並び部分とが、前記ツイスト線の延在方向に沿って交互に延在しており、連続する2つの前記縦並び部分の間が前記ツイスト線における撚りの半周期区間とされ、前記横並び部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とがそれぞれ前記ベース部材に融着されて横並び融着部分が形成され、前記横並び融着部分を含む第1半周期区間の長さが、前記第1半周期区間の隣の第2半周期区間の長さよりも長い、配線部材である。横並び融着部分を含む第1半周期区間の長さが、第1半周期区間の隣の第2半周期区間の長さよりも長いことによって、横並び融着部分を長くすることが容易となる。これにより、ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる。
【0012】
(2)(1)の配線部材において、前記横並び融着部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが並列方向に離れていてもよい。これにより、融着時に第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とが重なることが抑制され、第1線状伝送部材及び第2線状伝送部材のそれぞれをより強固にベース部材に融着固定することができる。
【0013】
(3)(1)又は(2)の配線部材において、前記横並び融着部分において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが、互いに平行に、直線状に延びていてもよい。これにより、横並び融着部分において、第1線状伝送部材及び第2線状伝送部材のそれぞれがベース部材と強固に融着されやすくなり、ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材において、前記第2半周期区間において、前記第1線状伝送部材と前記第2線状伝送部材とが前記ベース部材上に配置されつつ前記ベース部材に融着されていなくてもよい。これにより、ツイスト線における複数の横並び部分のうちの一部がベース部材に融着されることによって、融着工程が簡易となる。この場合でも、横並び融着部分を長くすることができることによって、ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材において、前記横並び融着部分における前記第1線状伝送部材の融着部分の長さ寸法は、前記第1線状伝送部材の幅寸法よりも長く、前記横並び融着部分における前記第2線状伝送部材の融着部分の長さ寸法は、前記第2線状伝送部材の幅寸法よりも長くてもよい。これにより、ツイスト線をより強固にベース部材に融着固定することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる配線部材について説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、本明細書における「垂直」は、厳密に垂直な状態のみでなく、概ね垂直な状態も含まれる。概ね垂直とは、例えば2つの方向の成す角度が80度以上90度未満、好ましくは85度以上90度未満の状態である。また、本明細書における「平行」は、厳密に平行な状態のみでなく、概ね平行な状態も含まれる。概ね平行とは、例えば2つの方向の成す角度が10度以下、好ましくは5度以下の状態である。
【0018】
図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す平面図である。図2図1の部分拡大図である。図3は実施形態1にかかる配線部材10を示す側面図である。図3図2と同様の範囲にある配線部材10を示している。図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【0019】
配線部材10は、ツイスト線20とベース部材30とを備える。配線部材10は、追加線状伝送部材40をさらに備える。ベース部材30に、ツイスト線20及び追加線状伝送部材40が融着固定されている。
【0020】
ツイスト線20は、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとを含む。第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが撚られている。第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとは同じ種類の線状伝送部材である。第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとの区別が不要な場合、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bをまとめて線状伝送部材21と呼ぶことがある。
【0021】
線状伝送部材21は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材21は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0022】
線状伝送部材21は、伝送線本体22と、伝送線本体を覆う被覆層23とを有する。ここでは、線状伝送部材21が一般電線21(以下、単に電線21と呼ぶ)であるものとして説明する。電線21は、伝送線本体22としての芯線22と、芯線22を覆う被覆層23としての絶縁被覆23とを有する。電線21に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、線状伝送部材21に適用可能である。
【0023】
芯線22は、1本又は複数本の素線で構成される。素線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導体で形成される。芯線22が複数本の素線で構成される場合、複数本の素線は撚られていてもよい。絶縁被覆23は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線22の周囲に押出成形されるなどして形成される。ここでは電線21は、横断面が円形のいわゆる丸電線である。
【0024】
ツイスト線20の少なくとも一部がベース部材30上に配置されている。ここでは、ツイスト線20の中間部を含む一部がベース部材30上に配置されている。ツイスト線20の端部は、ベース部材30の端部からベース部材30の外側に延び出ている。
【0025】
ベース部材30は、主面32上にツイスト線20が融着固定される部材である。主面32上にツイスト線20が融着固定されることによって、当該ツイスト線20が主面32において所定の経路に沿って保持される。つまり、ベース部材30は、ツイスト線20を所定の経路に沿って保持する主面32を有する部材であるともいえる。ベース部材30は、上記のようにツイスト線20を融着固定するための主面32を有する部材であればよく、シート状に形成されていてもよいし、立体的な形状に形成されていてもよい。
【0026】
ここでは、ベース部材30は、偏平なフラット部分を有する部材、より具体的には、曲げ可能なシート部材30であるものとして説明する場合がある。シート部材30に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、ベース部材30に適用可能である。
【0027】
シート部材30を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材30は、好ましくはPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート部材30は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織シート等であってもよい。シート部材30は、金属などの材料を含むこともあり得る。シート部材30は、好ましくは、厚み方向において容易に曲る柔軟性を有する。シート部材30は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0028】
なお、本実施形態では、主面32上には、上記ツイスト線20とは別に、追加線状伝送部材40が固定される。追加線状伝送部材40は、線状伝送部材21と同様に、電気又は光等を伝送する線状の部材であってもよいし、ツイスト線20と同様の部材であってもよい。ここでは、追加線状伝送部材40は、芯線41及び絶縁被覆42を有する一般電線40(以下、単に電線40と呼ぶ)であるものとして説明する。電線40に関する各説明は、適用不可能な構成を除き、追加線状伝送部材40に適用可能である。追加線状伝送部材40は、主面32上に複数本固定されていてもよいし、省略されてもよい。
【0029】
電線40も、主面32上に融着固定される。電線40が主面32上に融着固定された部分は、融着部分54である。ここでは、電線40は、ツイスト線20と並列状態で主面32に固定される。電線40とツイスト線20とは途中で分岐して別々の経路に沿って固定されてもよい。電線40の全体とツイスト線20の全体とが、主面32上において別々の経路に沿って固定されてもよい。
【0030】
主面32上にツイスト線20と電線40とが固定される構成を前提とすると、ベース部材30は、主面32上に、少なくとも1つのツイスト線20と少なくとも1つの電線40(追加線状伝送部材40)とを偏平な状態に保つ部材であると考えることができる。さらに、ベース部材30が平たいフラット部を有し、そのフラット部の主面32上に少なくとも1つのツイスト線20と少なくとも1つの電線40(追加線状伝送部材40)とが固定される構成を前提とする。この場合、配線部材10は、ツイスト線20と電線40(追加線状伝送部材40)とを偏平な状態に保つ偏平な部分を備える配線部材10であると考えることができる。さらに、ベース部材30が曲げ可能なシート部材30であることを前提とする。この場合、配線部材10は、ツイスト線20と電線40(追加線状伝送部材40)とを偏平な状態に保つ偏平な配線部材10であり、かつ、配設対象となる表面形状に応じて変形可能な配線部材10であると考えることができる。
【0031】
ツイスト線20は延在方向に沿って第1電線21A及び第2電線21Bの位置関係が変わりつつ、延在する。ツイスト線20のうちシート部材30の主面32上に配設された部分が、当該主面32に対して直交する方向から観察されたとき、ツイスト線20の延在方向に沿って横並び部分24と縦並び部分25とが交互に現れる。横並び部分24は、第1電線21A及び第2電線21Bがシート部材30上で並列状態に配置された部分である。縦並び部分25は、第1電線21A及び第2電線21Bがシート部材30の主面32上に積み重なるように縦に並んだ部分である。なお、横並び部分24と縦並び部分25との間は、電線21の位置関係を変えるためのシフト部分26ととらえることができる。
【0032】
連続する2つの横並び部分24において、第1電線21Aの位置と第2電線21Bの位置とは左右に入れ替わっている。同様に、連続する2つの縦並び部分25において、第1電線21Aの位置と第2電線21Bの位置とは上下に入れ替わっている。ある縦並び部分25と、当該縦並び部分25から、横並び部分24、縦並び部分25、及び横並び部分24を経た縦並び部分25とにおいて、第1電線21Aの位置と第2電線21Bの位置とが同じであり、この間がツイスト線20における撚りの1周期である。ここでは、ツイスト線20において、連続する3つの縦並び部分25の間が撚りの1周期区間であり、連続する2つの縦並び部分25の間が撚りの半周期区間である。
【0033】
横並び部分24では、主面32上において、第1電線21A及び第2電線21Bが横並びとなっているため、第1電線21A及び第2電線21Bのそれぞれがシート部材30の主面32上に接触し得る位置に存在している。横並び部分24において、横並びとなった第1電線21A及び第2電線21Bがそれぞれシート部材30に融着固定されることによって、横並び融着部分50が形成されている。横並び部分24においては、第1電線21A及び第2電線21Bが横並びとなっているため、シート部材30の主面32上に安定して接触し得る。このため、第1電線21A及び第2電線21Bが安定してシート部材30の主面32上に融着固定され易い。
【0034】
横並び融着部分50において、第1電線21Aとシート部材30とが融着された部分を第1融着部分51と呼び、第2電線21Bとシート部材30とが融着された部分を第2融着部分52と呼ぶことがある。横並び融着部分50は、第1融着部分51と第2融着部分52とを有しているととらえることもできる。第1融着部分51及び第2融着部分52は、通常、同じ長さとされる。第1融着部分51及び第2融着部分52は、わずかに異なる長さとされてもよい。
【0035】
ツイスト線20の延在方向において、横並び部分24は、間隔をあけて線状に並んで複数設けられる。複数の横並び部分24のうち1つのみに横並び融着部分50が形成されてもよいし、複数の横並び部分24のうちの複数に横並び融着部分50が設けられてもよい。後者の場合、複数の横並び部分24に対して横並び融着部分50が設けられない箇所を介さずに連続的に横並び融着部分50が設けられてもよいし、複数の横並び部分24毎に横並び融着部分50が設けられてもよい。ここでは図1に示すように複数の横並び部分24のうち互いに連続しない複数箇所の横並び部分24に横並び融着部分50が設けられている。
【0036】
横並び融着部分50を含む半周期区間を第1半周期区間28Aとする。また、第1半周期区間28Aの隣の半周期区間を第2半周期区間28Bとし、以下、第1半周期区間28Aから離れるに従い、第3半周期区間28C、第4半周期区間28Dとする。第2半周期区間28B、第3半周期区間28C、第4半周期区間28Dは、通常、第1半周期区間28Aの両側にそれぞれ存在する。なお、第1半周期区間28Aがシート部材30の端部にある場合であって、ツイスト線20の端部がシート部材30の端部に近い部分に設けられる場合、ツイスト線20の端部側において、第2半周期区間28B、第3半周期区間28C、第4半周期区間28Dが設けられない場合もある。
【0037】
ここでは第1半周期区間28Aの一方側及び他方側の2つの第2半周期区間28Bそれぞれにおいて、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとがベース部材30上に配置されつつベース部材30に融着されていない。第1半周期区間28Aの一方側の第3半周期区間28C及び第4半周期区間28Dにおいても、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとがベース部材30上に配置されつつベース部材30に融着されていない。
【0038】
図2及び図3において、寸法D1が、第1半周期区間28Aの長さである。寸法D2L、D2Rが、第2半周期区間28Bの長さである。寸法D3L、D3Rが、第3半周期区間28Cの長さである。寸法D4Rが、第4半周期区間28Dの長さである。なお、第2半周期区間28Bの長さの符号L及び符号Rは、第1半周期区間28Aの一方側及び他方側のいずれの第2半周期区間28Bかを示している。第3半周期区間28C及び第4半周期区間28Dについても同様である。
【0039】
第1半周期区間28Aの長さD1が、第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lよりも長い。ここでは第1半周期区間28Aの長さD1が、第1半周期区間28Aの一方側及び他方側の2つの第2半周期区間28Bそれぞれの長さD2R、D2Lよりも長い。第1半周期区間28Aの長さD1が、第1半周期区間28Aの一方側及び他方側の2つの第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lのうち少なくとも一方の長さよりも長ければよい。
【0040】
ここでは、第1半周期区間28Aの長さD1が、第3半周期区間28Cの長さD3R、D3Lよりも長い。ここでは第1半周期区間28Aの長さD1が、第1半周期区間28Aの一方側及び他方側の2つの第3半周期区間28Cそれぞれの長さD3R、D3Lよりも長い。第1半周期区間28Aの長さD1が、第1半周期区間28Aの一方側及び他方側の2つの第3半周期区間28Cの長さD3R、D3Lのうち少なくとも一方の長さよりも長ければよい。
【0041】
ここでは、第1半周期区間28Aの長さD1が、第4半周期区間28Dの長さよりも長い。ここでは第1半周期区間28Aの長さD1が、第1半周期区間28Aの一方側の第4半周期区間28Dの長さD4Rよりも長い。第1半周期区間28Aの長さが、第1半周期区間28Aの他方側の第4半周期区間28Dの長さよりも長くてもよい。
【0042】
ここでは、第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lが、第3半周期区間28Cの長さD3R、D3Lよりも短い。第1半周期区間28Aの長さD1を長くした分、第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lが短くなったためである。第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lが、第3半周期区間28Cの長さD3R、D3Lと同じであってもよい。例えば、ツイスト線20の撚り戻しを行うことによって、第1半周期区間28Aの長さD1を長くしても、第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lが短くなることを抑制できる。
【0043】
第1半周期区間28Aの長さD1が、ツイスト線20における全半周期区間の長さの平均よりも長くてもよい。ツイスト線20における全半周期区間の長さの平均は、ツイスト線20の製造時に設定される撚りピッチ(1周期区間の長さ)の半分(以下、半ピッチと呼ぶ)と近い値となる。かかる撚りピッチは、特に限定されるものではないが、例えば25mmから40mmとされてもよい。
【0044】
第1半周期区間28Aの長さD1は、第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lの3倍以下であってもよく、2倍以下であってもよく、1.5倍以下であってもよい。また、第1半周期区間28Aの長さD1は、半ピッチの3倍以下であってもよく、2倍以下であってもよく、1.5倍以下であってもよい。例えば、第1半周期区間28Aの長さD1は、半ピッチの1.2倍などであってもよい。第1半周期区間28Aの長さD1が長くなりすぎないことによって、ツイスト線20に求められる耐ノイズ性を確保することができる。
【0045】
図2に示すように、ここでは、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが、互いに平行に、直線状に延びている。第2半周期区間28Bにおける横並び部分24よりも、第1半周期区間28Aにおける横並び部分24が直線に近い。横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aがベース部材30と接触する長さ、及び、第2線状伝送部材21Bがベース部材30と接触する長さが長くなっている。
【0046】
第2半周期区間28Bの長さの符号L及び符号Rは、第1半周期区間28Aの一方側及び他方側のいずれの第2半周期区間28Bかを示している。第3半周期区間28C及び第4半周期区間28Dについても同様である。
【0047】
図4に示すように、ここでは、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが並列方向に離れている。図4において、寸法L1が、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとの間隔である。なお、図4において、寸法L2は、電線21の幅寸法(ここでは直径)である。寸法L3が、ツイスト線20と電線40との間隔である。寸法L4が電線40同士の間隔である。例えば、寸法L1は、寸法L2以下であってもよい。寸法L1は、寸法L3以下であってもよい。寸法L1は、寸法L4以下であってもよい。
【0048】
なお、横並び融着部分50が設けられない横並び部分24においては、第1電線21A及び第2電線21Bは相互に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。
【0049】
図3において、寸法WD1が、横並び融着部分50における電線21の融着部分の長さ寸法である。横並び融着部分50における電線21の融着部分51、52の長さ寸法WD1は、電線21の幅寸法L2よりも長い。なお、横並び融着部分50における第1電線21Aの融着部分の長さ寸法は、第2電線21Bの融着部分の長さ寸法と同じである。電線21の融着部分51、52の長さ寸法は、電線40の融着部分54の長さ寸法よりも長くてもよい。
【0050】
横並び融着部分50における融着固定の状態を形成するにあたって、超音波融着、加熱加圧融着、熱風融着、高周波融着など種々の融着手段を採用することができる。またこれらの手段によって融着固定の状態が形成されると、電線21とシート部材30とは、その手段による融着固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波融着によって融着固定の状態が形成されると、電線21とシート部材30とは、超音波融着による融着固定の状態とされる。融着固定の状態を形成した部分(電線21とシート部材30との固定部分)を融着部分、このうち、超音波融着による固定部分を超音波融着部分、加熱加圧融着による固定部分を加熱加圧融着部分等と称してもよい。
【0051】
融着固定において、電線21の被覆に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、シート部材30に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。これらの場合において、溶けた方の樹脂が他方の外面にくっついた状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。また、融着固定において、電線21の被覆に含まれる樹脂とシート部材30に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。この場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、電線21の被覆とシート部材30とが、同じ樹脂材料など相溶しやすい樹脂を含む場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0052】
ここでは、電線21とシート部材30とが、超音波融着されたものとして説明する。電線21とシート部材30との固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、上記した各種融着固定にも適用可能である。
【0053】
なお、電線40の固定構成についても、上記ツイスト線20をシート部材30に固定するのと同様の構成が適用され得、例えば、超音波融着によって固定する構成が採用され得る。
【0054】
ツイスト線20の端部、電線40の端部には、図2に示すように、電気コネクタ、光コネクタ等の接続部材60が設けられてもよい。当該接続部材60を介して配線部材10が電気部品、光部品に接続されることで、配線部材10が複数の電気部品同士、光部品同士を接続する配線部材10となる。
【0055】
<製造方法>
図5はツイスト線20を融着するための準備工程を示す説明図である。図6はツイスト線20の融着工程を示す説明図である。
【0056】
ここでは、ツイスト線20をベース部材30に超音波融着機80によって、超音波融着する例で説明される。超音波融着機80は、ホーン82及びアンビル84を有する。ツイスト線20は、アンビル84に保持される。
【0057】
図5において、実線で示されるツイスト線20は、融着前のツイスト線20である。融着前のツイスト線20は、一様なピッチで連続する。図5において、二点鎖線の円で示される領域は、ツイスト線20のうち融着予定部分27を示している。融着予定部分27が、アンビル84に保持される。図5において、二点鎖線で示されるツイスト線20は、アンビル84に保持された状態が示されている。
【0058】
アンビル84には、2つの溝85が形成されている。2つの溝85は、仕切86によって隔てられている。第1電線21A及び第2電線21Bは、2つの溝85それぞれに分かれて保持される。このとき、溝85の長さ寸法が、融着予定部分27における横並び部分24の長さ寸法よりも長い。このため、ツイスト線20は、融着予定部分27における横並び部分24の長さ寸法が長くされて、アンビル84に保持される。このとき、ツイスト線20のうち融着予定部分27となる一部が撚り戻されてもよい。これにより、融着予定部分27の隣の半周期区間が短くなることが抑制される。
【0059】
第1電線21A及び第2電線21Bがアンビル84に保持されたら、図6に示すように、シート部材30を配置する。シート部材30は第1電線21A及び第2電線21Bを覆うように配置される。そして、シート部材30の外側にホーン82を当て、ホーン82を介して、シート部材30と電線21との接触部分に超音波振動エネルギーを付与する。これにより、シート部材30と電線21との接触部分が融着される。
【0060】
第1電線21A及び第2電線21Bが、アンビル84に保持された状態でシート部材30と融着されることによって、第1電線21A及び第2電線21Bのうちアンビル84に保持された長さに応じた長さの分、シート部材30と融着されることができる。これにより、横並び融着部分50を含む第1半周期区間28Aの長さを第2半周期区間28Bの長さよりも長くできる。また、第1電線21A及び第2電線21Bが並列方向に離れた状態でシートに融着される。また、第1電線21A及び第2電線21Bが平行に直線状にシートに融着される。
【0061】
複数の横並び融着部分50が設けられる場合、複数の横並び部分24のそれぞれに対して超音波融着が行われ、1つずつ横並び融着部分50が形成されてもよい。また、横並び部分24のピッチの整数倍の間隔で突出する複数の加圧部を有するホーン82又はアンビル84が用いられ、複数の横並び部分24に対して一括して超音波融着が行われ、複数の横並び融着部分50を同時に形成されてもよい。また、ホーン82及びアンビル84の少なくとも一方が、ツイスト線20に沿って移動させられて、対象となる横並び部分24でホーン82及びアンビル84の加圧及び超音波振動エネルギーの付与が行われて、複数の横並び融着部分50が順次に形成されてもよい。
【0062】
<効果等>
このように構成された配線部材10によると、横並び融着部分50を含む第1半周期区間28Aの長さD1が、第1半周期区間28Aの隣の第2半周期区間28Bの長さD2R、D2Lよりも長いことによって、横並び融着部分50を長くすることが容易となる。これにより、ツイスト線20をより強固にベース部材30に融着固定することができる。
【0063】
また、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが並列方向に離れている。これにより、融着時に第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが重なることが抑制され、第1線状伝送部材21A及び第2線状伝送部材21Bのそれぞれをより強固にベース部材30に融着固定することができる。
【0064】
また、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが、互いに平行に、直線状に延びている。これにより、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21A及び第2線状伝送部材21Bのそれぞれがベース部材30と強固に融着されやすくなり、ツイスト線20をより強固にベース部材30に融着固定することができる。
【0065】
また第2半周期区間28Bにおいて、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとがベース部材30上に配置されつつベース部材30に融着されていない。これにより、ツイスト線20における複数の横並び部分24のうちの一部がベース部材30に融着されることによって、融着工程が簡易となる。この場合でも、横並び融着部分50を長くすることができることによって、ツイスト線20をより強固にベース部材30に融着固定することができる。
【0066】
また、横並び融着部分50における第1線状伝送部材21Aの融着部分の長さ寸法は、第1線状伝送部材21Aの幅寸法よりも長い。横並び融着部分50における第2線状伝送部材21Bの融着部分の長さ寸法は、第2線状伝送部材21Bの幅寸法よりも長い。これにより、ツイスト線20をより強固にベース部材30に融着固定することができる。
【0067】
[付記]
これまで、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが並列方向に離れているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが並列方向に接していてもよい。
【0068】
またこれまで、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが、互いに平行に、直線状に延びているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、横並び融着部分50において、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとが、互いに異なる向きに延びていてもよい。
【0069】
またこれまで、第2半周期区間28Bにおいて、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとがベース部材30上に配置されつつベース部材30に融着されていないものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。第2半周期区間28Bにおいても、第1線状伝送部材21Aと第2線状伝送部材21Bとがベース部材30に融着されていてもよい。この場合でも、半周期区間が長い第1半周期区間28Aが設けられることによって、横並び融着部分50が長い部分を設けることができる。
【0070】
またこれまで、横並び融着部分50における第1線状伝送部材21Aの融着部分の長さ寸法は、第1線状伝送部材21Aの幅寸法よりも長く、横並び融着部分50における第2線状伝送部材21Bの融着部分の長さ寸法は、第2線状伝送部材21Bの幅寸法よりも長いものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、横並び融着部分50における第1線状伝送部材21Aの融着部分の長さ寸法は、第1線状伝送部材21Aの幅寸法と同じかそれよりも短くでもよい。例えば、横並び融着部分50における第2線状伝送部材21Bの融着部分の長さ寸法は、第2線状伝送部材21Bの幅寸法と同じかそれよりも短くてもよい。
【0071】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
10 配線部材
20 ツイスト線
21 電線(線状伝送部材)
21A 第1電線(第1線状伝送部材)
21B 第2電線(第2線状伝送部材)
22 芯線(伝送線本体)
23 絶縁被覆(被覆層)
24 横並び部分
25 縦並び部分
26 シフト部分
27 融着予定部分
28A 第1半周期区間
28B 第2半周期区間
28C 第3半周期区間
28D 第4半周期区間
30 シート部材(ベース部材)
32 主面
40 電線(追加線状伝送部材)
41 芯線
42 絶縁被覆
50 横並び融着部分
51 第1融着部分
52 第2融着部分
54 融着部分
60 接続部材
80 超音波融着機
82 ホーン
84 アンビル
85 溝
86 仕切
図1
図2
図3
図4
図5
図6