(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080665
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】メタルボンド砥石
(51)【国際特許分類】
B24D 3/10 20060101AFI20230602BHJP
B24D 3/06 20060101ALI20230602BHJP
B24D 3/02 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B24D3/10
B24D3/06 Z
B24D3/02 310A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194133
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116781
【氏名又は名称】旭ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】中根 由統
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
(72)【発明者】
【氏名】中 正規
(72)【発明者】
【氏名】高鍋 隆一
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BB02
3C063BC02
3C063BC09
3C063BD04
3C063BG07
3C063BH03
3C063FF08
3C063FF20
(57)【要約】
【課題】金属結合材の破砕又は摩耗による自生発刃作用を適切に発現させることにより良好な切れ味を維持する。
【解決手段】メタルボンド砥石1は、金属結合材5に複数の砥粒6及び複数の気孔7が分散された砥粒層3を備える。砥粒層3における複数の気孔7の気孔率は、40%以上99%以下である。複数の気孔7のそれぞれは、球状に形成されている。複数の気孔7は、二以上の気孔7が連通されてなる連通気孔71と、他の気孔7と連通されない独立気孔72と、2μm以上10μm以下の孔径を有する微小気孔73と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属結合材に複数の砥粒及び複数の気孔が分散された砥粒層を備え、
前記砥粒層における前記複数の気孔の気孔率は、40%以上99%以下である、
メタルボンド砥石。
【請求項2】
前記複数の気孔のそれぞれは、球状に形成されている、
請求項1に記載のメタルボンド砥石。
【請求項3】
前記複数の気孔の真球度の平均は、0.2以上である、
請求項2に記載のメタルボンド砥石。
【請求項4】
前記複数の気孔は、二以上の前記気孔が連通されてなる連通気孔を有する、
請求項1~3の何れか一項に記載のメタルボンド砥石。
【請求項5】
前記連通気孔は、孔径が10μm以上2000μm以下の互いに連通された二以上の前記気孔を含む、
請求項4に記載のメタルボンド砥石。
【請求項6】
前記砥粒層を補強するために前記連通気孔に設けられた補強部を更に有する、
請求項4又は5に記載のメタルボンド砥石。
【請求項7】
前記補強部は、前記連通気孔を形成する前記砥粒層の内表面の少なくとも一部と接続されるように、前記連通気孔の少なくとも一部に充填されている、
請求項6に記載のメタルボンド砥石。
【請求項8】
前記補強部は、樹脂を含む、
請求項6又は7に記載のメタルボンド砥石。
【請求項9】
前記複数の気孔は、他の前記気孔と連通されない独立気孔を有する、
請求項1~8の何れか一項に記載のメタルボンド砥石。
【請求項10】
前記独立気孔の平均孔径は、2μm以上100μm以下である、
請求項9に記載のメタルボンド砥石。
【請求項11】
前記複数の気孔は、2μm以上10μm以下の孔径を有する微小気孔を有する、
請求項1~10の何れか一項に記載のメタルボンド砥石。
【請求項12】
前記砥粒層における前記微小気孔の気孔率は、0.01%以上10%以下である、
請求項11に記載のメタルボンド砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属結合材に複数の砥粒が分散されたメタルボンド砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のメタルボンド砥石としては、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されたメタルボンド砥石は、砥粒と金属結合材との容積比が砥粒55~65%であるのに対し金属結合材35~45%であり、砥石中の容積率が25~35%である連通気孔を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたメタルボンド砥石では、連続気孔を含んでいるため、砥石の破砕又は摩耗による自生発刃作用を発現させることができる。しかしながら、連続気孔の気孔率が25~35%であるため、砥石の破砕又は摩耗の促進が十分ではなく、良好な切れ味を維持することが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、金属結合材の破砕又は摩耗による自生発刃作用を適切に発現させることにより良好な切れ味を維持することができるメタルボンド砥石を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るメタルボンド砥石は、金属結合材に複数の砥粒及び複数の気孔が分散された砥粒層を備え、砥粒層における複数の気孔の気孔率は、40%以上99%以下である。このメタルボンド砥石では、砥粒層における複数の気孔の気孔率が40%以上99%以下であることで、砥粒層としての強度を確保しつつ、金属結合材の破砕又は摩耗による自生発刃作用を適切に発現させることができる。このため、良好な切れ味を維持することができる。
【0007】
複数の気孔のそれぞれは、球状に形成されていてもよい。このメタルボンド砥石では、複数の気孔のそれぞれが球状に形成されていることで、砥粒層の強度、及び砥粒層の自生発刃作用を発現させるための自生サイクルをコントロールしやすくなる。
【0008】
複数の気孔の真球度の平均は、0.2以上1.0以下であってもよい。このメタルボンド砥石では、複数の気孔の真球度の平均が0.2以上1.0以下であることで、砥粒層の強度、及び砥粒層の自生発刃作用を発現させるための自生サイクルをコントロールしやすくなる。
【0009】
複数の気孔は、二以上の気孔が連通されてなる連通気孔を有してもよい。このメタルボンド砥石では、二以上の気孔が連通されてなる連通気孔を有することで、切屑の排出性が向上して、気孔が切屑により目詰まりするのを抑制することができる。
【0010】
連通気孔は、孔径が10μm以上2000μm以下の互いに連通された二以上の気孔を含んでもよい。このメタルボンド砥石では、連通気孔が、孔径が10μm以上2000μm以下の互いに連通された二以上の気孔を含むことで、砥粒層としての強度を確保し、切屑の排出性を向上し、連通気孔の周囲の破砕又は摩耗による自生サイクルの短期化を図ることができる。これにより、高い切れ味の維持を図ることができる。
【0011】
砥粒層を補強するために連通気孔に設けられた補強部を更に有してもよい。このメタルボンド砥石では、砥粒層を補強するための補強部が連通気孔に設けられていることで、連通気孔により低下する砥粒層の強度を向上することができる。
【0012】
補強部は、連通気孔を形成する砥粒層の内表面の少なくとも一部と接続されるように、連通気孔の少なくとも一部に充填されていてもよい。このメタルボンド砥石では、補強部が連通気孔を形成する砥粒層の内表面の少なくとも一部と接続されるように連通気孔の少なくとも一部に充填されていることで、連通気孔の周囲の過度な破砕又は摩耗を抑制することができる。
【0013】
補強部は、樹脂を含んでもよい。このメタルボンド砥石では、補強部が樹脂を含むことで、補強部を容易に形成することができる。
【0014】
複数の気孔は、他の気孔と連通されない独立気孔を有してもよい。このメタルボンド砥石では、他の気孔と連通されない独立気孔を有することで、砥粒層の強度低下を抑制しつつ、金属結合材の破砕等による自生発刃作用を適切に発現させることができる。
【0015】
独立気孔の平均孔径は、2μm以上100μm以下であってもよい。このメタルボンド砥石では、独立気孔の平均孔径が2μm以上100μm以下であることで、砥粒層としての強度を確保し、独立気孔の周囲の破砕又は摩耗による自生サイクルの短期化を図ることができる。これにより、高い切れ味の維持を図ることができる。
【0016】
複数の気孔は、2μm以上10μm以下の孔径を有する微小気孔を有してもよい。このメタルボンド砥石では、複数の気孔が2μm以上10μm以下の孔径を有する微小気孔を有することで、金属結合材の微小な破砕又は摩耗を促進することができる。これにより、砥粒層の自生発刃作用を発現させるための自生サイクルをコントロールしやすくなる。
【0017】
砥粒層における微小気孔の気孔率は、0.01%以上10%以下であってもよい。このメタルボンド砥石では、砥粒層における微小気孔の気孔率が0.01%以上10%以下であることで、砥粒層としての強度を確保しつつ、金属結合材の微小な破砕又は摩耗を促進することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属結合材の破砕又は摩耗による自生発刃作用を適切に発現させることにより良好な切れ味を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(a)は、本実施形態のメタルボンド砥石の一例を示す平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すメタルボンド砥石の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)のII-II線における砥粒層の一部を示す模式端面図である。
【
図3】
図3は、変形例の砥粒層の一部を示す、
図2に対応する模式端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るメタルボンド砥石1は、一例として、台金2と、台金2に固着された砥粒層3と、を備える。このメタルボンド砥石1は、円板状の台金2の周縁に円環状の砥粒層3が形成されたホイール型のメタルボンド砥石である。但し、メタルボンド砥石1の形状、大きさ、用途等は、特に限定されるものではない。また、メタルボンド砥石1は、台金2を備えず、砥粒層3のみで構成されていてもよい。
【0022】
メタルボンド砥石1の砥粒層3は、金属結合材5に複数の砥粒6及び複数の気孔7が分散されて構成されている。
【0023】
金属結合材5は、複数の砥粒6を保持するものであり、金属材料により形成されている。金属結合材5を形成する金属材料としては、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ag(銀)、Sn(錫)、W(タングステン)等の金属、又はこれらの金属のうちの少なくとも一部を含む合金が用いられる。この合金としては、例えば、Cu-Ag-Ti合金、Cu-Sn-Ti合金、Ni-Cr合金、Cu-Sn合金が用いられる。
【0024】
砥粒6としては、例えば、ダイヤモンド、CBN等の超砥粒が用いられる。また、砥粒6としては、例えば、#325から#30000の間の任意の粒度のものを用いることができる。砥粒層3には、例えば、WA(ホワイトアランダム)、GC(グリーンカーボランダム)等のフィラーが添加されていてもよい。
【0025】
複数の気孔7は、砥粒層3に形成された孔である。つまり、砥粒層3は、複数の気孔7により多孔質となっている。複数の気孔7の一部は、砥粒層3の表面に位置しており、複数の気孔7の残りの一部は、砥粒層3の内部に位置している。砥粒層3における複数の気孔7の気孔率は、40%以上99%以下である。なお、砥粒層3における複数の気孔7の気孔率としては、用途や目的によって適切な自生サイクルを得られる気孔率を選択することができる。例えば、当該気孔率は、70%以上90%以下であってもよく、40%以上60%以下であってもよい。砥粒層3における複数の気孔7の気孔率は、砥粒層3における複数の気孔7の占める割合の百分率である。砥粒層3における複数の気孔7の気孔率は、例えば、砥粒層3の任意の断面における、砥粒層3の面積に対する複数の気孔7の合計面積の割合の百分率とすることができる。
【0026】
複数の気孔7のそれぞれは、球状に形成されている。この球状には、真球状のほか、扁球状や凹凸を有する変形球状等の様々な球状が含まれる。複数の気孔7の真球度の平均は、例えば、0.2以上1.0以下であってもよく、0.5以上1.0以下であってもよく、0.7以上1.0以下であってもよい。気孔7の真球度は、例えば、最大直径に対する最小直径の割合である。つまり、最大直径が200μmであり最小直径が100μmであるの気孔7の真球度は、0.5となる。複数の気孔7の真球度の平均は、例えば、砥粒層3の任意の断面に露出した複数の気孔7のそれぞれの真球度の平均とすることができる。この場合、砥粒層3の任意の断面に露出した気孔7は、当該断面により一部が切り取られているため、例えば、残っている部分の形状から切り取られた部分の形状を補間することで、真球度を計測してもよい。補間としては、周知の様々な手法を採用することができる。
【0027】
複数の気孔7は、二以上の気孔7が連通されてなる連通気孔71を有する。つまり、連通気孔71は、互いに連通された二以上の気孔7により構成されている。砥粒層3は、複数の連通気孔71を有する。連通気孔71は、例えば、隣り合う気孔7が一部において重なることにより形成されている。この場合、例えば、隣り合う気孔7と重なっていない部分の形状から隣り合う気孔7と重なっている部分の形状を円弧により補間することで、連通気孔71を構成する各気孔7の真球度を計測してもよい。連通気孔71を構成する気孔7の数は、特に限定されるものではない。連通気孔71は、用途や目的によって適切な自生サイクルを得られる孔径の気孔7を含んでもよい。例えば、連通気孔71は、孔径が10μm以上2000μm以下の互いに連通された二以上の気孔7を含んでもよく、孔径が10μm以上1000μm以下の互いに連通された二以上の気孔7を含んでもよく、孔径が10μm以上100μm以下の互いに連通された二以上の気孔7を含んでもよい。連通気孔71を構成する二以上の気孔7の孔径は、例えば、砥粒層3の任意の断面に露出した連通気孔71の各気孔7において、隣り合う気孔7と重なっている部分の形状を円弧により補間し、各気孔7の孔径を計測することにより求めることができる。各気孔7の孔径は、例えば、気孔7の最大直径とすることができる。
【0028】
複数の気孔7は、他の気孔7と連通されない独立気孔72を有する。独立気孔72は、一つの気孔7により構成されている。砥粒層3は、複数の独立気孔72を有する。独立気孔72の平均孔径は、例えば、2μm以上100μm以下であってもよく、2μm以上50μm以下であってもよく、50μm以上100μm以下であってもよい。独立気孔72の平均孔径は、例えば、砥粒層3の任意の断面に露出した独立気孔72のそれぞれの孔径を計測し、これらの計測結果の平均を算出することにより求めることができる。この場合、砥粒層3の任意の断面に露出した独立気孔72は、当該断面により一部が切り取られているため、例えば、残っている部分の形状から切り取られた部分の形状を補間することで、孔径を計測してもよい。補間としては、周知の様々な手法を採用することができる。
【0029】
複数の気孔7は、微小気孔73を有する。微小気孔73は、孔径が2μm以上10μm以下の気孔7である。なお、微小気孔73は、孔径が2μm以上4μm以下の気孔7であってもよく、孔径が5μm以上10μm以下の気孔7であってもよい。微小気孔73の孔径は、例えば、微小気孔73の最長直径とすることができる。砥粒層3は、複数の微小気孔73を有する。微小気孔73は、連通気孔71を構成する一部の気孔7であってもよく、独立気孔72であってもよい。
【0030】
砥粒層3における微小気孔73の気孔率は、例えば、0.01%以上10%以下であってもよく、0.01%以上5%以下であってもよく、5%以上10%以下であってもよい。この気孔率は、砥粒層3における微小気孔73の占める割合の百分率である。砥粒層3における微小気孔73の気孔率は、例えば、砥粒層3の任意の断面における、砥粒層3の面積に対する微小気孔73の合計面積の割合であってもよい。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るメタルボンド砥石1では、砥粒層3における複数の気孔7の気孔率が40%以上であることで、金属結合材5の破砕又は摩耗による自生発刃作用を適切に発現させることができる。一方、砥粒層3における複数の気孔7の気孔率が99%以下であることで、砥粒層3としての強度を確保することができる。つまり、砥粒層3における複数の気孔7の気孔率が40%以上99%以下であることで、砥粒層3としての強度を確保しつつ、金属結合材5の破砕又は摩耗による自生発刃作用を適切に発現させることができる。このため、良好な切れ味を維持することができる。砥粒層3における複数の気孔7の気孔率が70%以上90%以下、又は40%以上60%以下であることで、これらの効果が更に高まる。
【0032】
また、このメタルボンド砥石1では、複数の気孔7のそれぞれが球状に形成されていることで、砥粒層3の強度、及び砥粒層3の自生発刃作用を発現させるための自生サイクルをコントロールしやすくなる。
【0033】
また、このメタルボンド砥石1では、複数の気孔7の真球度の平均が0.2以上1.0以下であることで、砥粒層3の強度、及び砥粒層3の自生発刃作用を発現させるための自生サイクルをコントロールしやすくなる。複数の気孔7の真球度の平均が0.5以上1.0以下、又は0.7以上1.0以下であることで、これらの効果が更に高まる。
【0034】
また、このメタルボンド砥石1では、複数の気孔7が互いに連通された連通気孔71を有することで、切屑の排出性が向上して、気孔7が切屑により目詰まりするのを抑制することができる。
【0035】
また、このメタルボンド砥石1では、連通気孔71が、孔径が10μm以上の互いに連通された二以上の気孔7を含むことで、切屑の排出性を向上し、砥粒層3としての強度を確保することができる。一方、連通気孔71が、孔径が2000μm以下の互いに連通された二以上の気孔7を含むことで、連通気孔71の周囲の破砕又は摩耗による自生サイクルの短期化を図ることができる。つまり、連通気孔71が、孔径が10μm以上2000μm以下の互いに連通された二以上の気孔7を含むことで、砥粒層3としての強度を確保し、切屑の排出性を向上し、連通気孔71の周囲の破砕又は摩耗による自生サイクルの短期化を図ることができる。これにより、高い切れ味の維持を図ることができる。連通気孔71が、10μm以上1000μm以下、又は10μm以上100μm以下の互いに連通された二以上の気孔7を含むことで、これらの効果が更に高まる。
【0036】
また、このメタルボンド砥石1では、他の気孔7と連通されない独立気孔72を有することで、砥粒層3の強度低下を抑制しつつ、金属結合材5の破砕等による自生発刃作用を適切に発現させることができる。
【0037】
また、このメタルボンド砥石1では、独立気孔72の平均孔径が2μm以上であることで、砥粒層3としての強度を確保することができる。一方、独立気孔72の平均孔径が100μm以下であることで、独立気孔72の周囲の破砕又は摩耗による自生サイクルの短期化を図ることができる。つまり、独立気孔72の平均孔径が2μm以上100μm以下であることで、砥粒層3としての強度を確保し、独立気孔72の周囲の破砕又は摩耗による自生サイクルの短期化を図ることができる。これにより、高い切れ味の維持を図ることができる。独立気孔72の平均孔径が2μm以上50μm以下、又は50μm以上100μm以下であることで、これらの効果が更に高まる。
【0038】
また、このメタルボンド砥石1では、複数の気孔7が2μm以上10μm以下の孔径を有する微小気孔73を有することで、金属結合材5の微小な破砕又は摩耗を促進することができる。これにより、砥粒層3の自生発刃作用を発現させるための自生サイクルをコントロールしやすくなる。複数の気孔7が2μm以上4μm以下、又は5μm以上10μm以下の孔径を有する微小気孔73を有することで、これらの効果が更に高まる。
【0039】
また、このメタルボンド砥石1では、砥粒層3における微小気孔73の気孔率が0.01%以上であることで、金属結合材5の微小な破砕又は摩耗を促進することができる。一方、砥粒層3における微小気孔73の気孔率が10%以下であることで、砥粒層3としての強度を確保することができる。つまり、砥粒層3における微小気孔73の気孔率が0.01%以上10%以下であることで、砥粒層3としての強度を確保しつつ、金属結合材5の微小な破砕又は摩耗を促進することができる。砥粒層3における微小気孔73の気孔率が0.01%以上5%以下、又は5%以上10%以下であることで、これらの効果が更に高まる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0041】
例えば、
図3に示すように、メタルボンド砥石は、砥粒層3Aを補強するために連通気孔71に設けられた補強部9を有してもよい。補強部9の素材は、特に限定されないが、補強部9は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、液体樹脂等の樹脂、無機材や金属粉を添加したコート材、液体ガラス、めっきなどを含んでもよい。補強部9が樹脂を含むことで、補強部9を容易に形成することができる。砥粒層3Aを補強するための補強部9が連通気孔71に設けられていることで、連通気孔71により低下する砥粒層3Aの強度を向上することができる。
【0042】
補強部9は、例えば、連通気孔71を形成する砥粒層3Aの内表面31の少なくとも一部と接続されるように、砥粒層3Aの連通気孔71の少なくとも一部に充填されていてもよい。補強部9が内表面31の少なくとも一部と接続されるように連通気孔71の少なくとも一部に充填されていることで、連通気孔71の周囲の過度な破砕又は摩耗を抑制することができる。
図3に示す変形例の砥粒層3Aでは、一例として、補強部9は、連通気孔71の全部に充填されている。
【0043】
また、上記実施形態では、複数の気孔が、連通気孔、独立気孔、及び微細気孔の全てを有するものとして説明したが、複数の気孔は、連通気孔、独立気孔、及び微細気孔の全てを有していなくてもよく、連通気孔、独立気孔、及び微細気孔の一部のみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…メタルボンド砥石、2…台金、3…砥粒層、3A…砥粒層、5…金属結合材、6…砥粒、7…気孔、9…補強部、31…内表面、71…連通気孔、72…独立気孔、73…微小気孔。