(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080675
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】車両用フレームの接合構造
(51)【国際特許分類】
B62D 31/02 20060101AFI20230602BHJP
B62D 21/03 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
B62D31/02 A
B62D21/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194146
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】有藤 康
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA19
3D203BA07
3D203BB53
3D203CA52
3D203CA66
3D203CA73
3D203CB03
3D203CB12
3D203CB19
(57)【要約】
【課題】接合部の部材の製造誤差を吸収する車両用フレームの接合構造を提供する。
【解決手段】ボデー側部材4とシャシー側フレーム5とを接合する構造において、ボデー側部材4とシャシー側フレーム5の何れか一方に延長部材23を嵌合し、延長部材23をボデー側部材4とシャシー側フレーム5の何れか他方の部材に突き合わせてボデー側部材4とシャシー側フレーム5とを延長部材23を介して溶接接合することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー側部材とシャシー側部材とを接合する構造において、
前記ボデー側部材と前記シャシー側部材の何れか一方の部材に延長部材を嵌合し、
前記延長部材を前記ボデー側部材と前記シャシー側部材の何れか他方の部材に突き合わせて前記ボデー側部材と前記シャシー側部材とを前記延長部材を介して溶接接合することを特徴とする、
車両用フレームの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フレームの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バスの車体構造は、大きく分けて床下にあるシャシフレームと、このシャシフレームの上に載っているボデー側部材とに分けられる。ボデー側部材とシャシフレームとは溶接にて固定している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボデー側部材及びシャシフレームは、主に角パイプで構成されている。ボデー側部材とシャシフレーム側部材とを一体的に接合する場合、ボデー側の角パイプの車両内側の側面にシャシフレームの角パイプの端面を突き合わせて溶接により接合している。ボデー側の角パイプは、デザイン性の観点から、例えばピラーのように上下方向に延びる角パイプが車両外側にふくらむ湾曲した形状となっており、シャシフレームの角パイプとの突き合わせ部において隙間が発生し易い。このように突き合わせ部における隙間が大きいと、溶接の信頼性が維持できず、接合部の強度が低下するおそれがある。また、突き合わせ部の隙間が大きいまま溶接すると、ボデー側の角パイプが車両内側にひずむため、ボデーの外観が悪くなったり、扉の固定箇所がずれたりするおそれがある。そのため、角パイプの寸法精度を高く保つ必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、接合部における部材の製造誤差を吸収することができる車両用フレームの接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る車両用フレームの接合構造は、ボデー側部材とシャシー側部材とを接合する構造において、前記ボデー側部材と前記シャシー側部材の何れか一方の部材に延長部材を嵌合し、前記延長部材を前記ボデー側部材と前記シャシー側部材の何れか他方の部材に突き合わせて前記ボデー側部材と前記シャシー側部材とを前記延長部材を介して溶接接合することを特徴とする。
【0008】
このように構成された車両用フレームの接合構造は、接合部における部材の製造誤差を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用フレームの接合構造を適用した車両の骨格構造の概略斜視図である。
【
図2】
図1の骨格構造における接合部分を前方から見た概略図である。
【
図3】
図2の接合部分の一部を拡大した概略斜視図である。
【
図4】第1変形例の延長部材を適用した接合部分の概略斜視図である。
【
図5】延長部材の(a)第2変形例、及び、(b)第3変形例、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、前後とは車両の進行方向、上下とは車両の車高方向、左右とは車両の車幅方向を示しているものとして、以下説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用フレームの接合構造を適用した車両の骨格構造の概略斜視図である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る車両用フレームの接合構造1(以下単にフレーム接合構造1という)が適用される車両2はバスである。車両2は、箱型の車体3を有し、
図1に示すように、車体3の前面、後面、上面、及び両側面の骨格を形成するボデー側部材4と、車体3の床下にて骨格を形成するシャシー側フレーム(シャシー側部材)5と、を有している。シャシー側フレーム5は、ボデー側部材4の内側に収容できる大きさを有し、ボデー側部材4は、シャシー側フレーム5に溶接により固定されている。
【0013】
ボデー側部材4は、車体両側面において、上下方向に延在するピラー10として、車両2の前面と両側面との境界に設けられるフロントピラー11、及び、後面と両側面との境界に設けられるリアピラー12と、フロントピラー11及びリアピラー12の間に前方から順に、第1ピラー131、第2ピラー132、第3ピラー133、第4ピラー134、第5ピラー135、第6ピラー136、第7ピラー137が設けられている。また、ボデー側部材4は、上面においてこれら各ピラー10の上端の間において、左右方向に延在するルーフクロスメンバ14と、上面と両側面との境界において前後方向に延在するサイドルーフレール15と、下面と両側面との境界において前後方向に延在するサイドボトムレール16と、を有している。そして、車両2の左側面には、前方のフロントピラー11および第1ピラー131との間、及び、中央付近の第4ピラー134と第5ピラー135との間、にそれぞれ乗降口用の開口部が設けられている。
【0014】
シャシー側フレーム5は、前方から後方に延在する2本のセンターレール21と、左右方向に延在しセンターレール21と交差するクロスメンバ22を有している。また、シャシー側フレーム5は、左右の第5ピラー135の間に、車両2の下部に設けられるシャシーとの仕切りを形成する仕切り構造と、当該仕切り構造から左右の第5ピラー135まで延在する第1梁部材221及び第2梁部材222とを有している。クロスメンバ22、第1梁部材221及び第2梁部材222は、断面矩形の筒形状をなした、いわゆる金属の角パイプである。本実施形態のフレーム接合構造1は、例えば、第5ピラー135と、第1梁部材221及び第2梁部材222の結合部分や、クロスメンバ22と各ピラー10との接合部分等、ボデー側部材4の部材の面にシャシー側フレーム5の部材の端部が突き合わされて溶接接合される部分に適用される。以下の説明においては、上下に位置する第1梁部材221及び第2梁部材222と、第5ピラー135とが溶接接合される部分を例に、フレーム接合構造1を説明する。
【0015】
図2は、
図1の骨格構造における接合部分の断面図である。具体的には、車両右側の第5ピラー135と第1梁部材221及び第2梁部材222との接合領域(
図1に示す領域A)を、後方から見た垂直断面図である。また、
図3は、
図2の接合部分の一部を拡大した概略斜視図である。具体的には、車両右側の第5ピラー135と第2梁部材222との接合領域(
図2に示す領域B)を左後方から見た斜視図である。車両左側にも左右対称の接合領域が設けられるが、以下、車両右側について説明し、車両左側については同様であるため説明を省略する。
【0016】
シャシー側フレーム5は、前後方向及び左右方向の長さが、ボデー側部材4の内側に収容されることができる長さである。一方、ボデー側部材4は、両側面が車両外側に膨らむように緩やかに湾曲している。第1梁部材221及び第2梁部材222は、左右方向にほぼ同じ長さ、かつ、第5ピラー135の左右の下端間に収まる左右方向の長さを有している。そして、第5ピラー135は、
図2に示すように、上方に行くにつれて右方(車両外側方向)に緩やかに湾曲している。そのため、第1梁部材221の右端面221Rは、第5ピラー135の車両内側の面、即ち左端面135Lから最大で距離L1離れており、左端面135Lとの間に隙間G1が形成されている。一方、第1梁部材221の上方に位置する第2梁部材222の右端面222Rは、左端面135Lから距離L1より大きい距離L2離れており、左端面135Lとの間に隙間G2が形成されている。
【0017】
第1梁部材221及び第2梁部材222の右端には、延長部材23がそれぞれ嵌合されている。延長部材23は、
図2及び
図3に示すように、第1梁部材221及び第2梁部材222より一回り大きい断面矩形の筒形状で、筒の長さ(開口面間の距離)は、各開口端を溶接する際に相互に熱の影響を受けず、かつ、隙間G1及び隙間G2に対して十分大きい長さを有している。また、延長部材23の右端は、少なくともその一部が第5ピラー135の左端面135Lに接するよう配置されている。なお、延長部材23と第5ピラー135の左端面135Lとの隙間がある場合でも、母材である第5ピラー135や延長部材23の板厚の厚み程度以下である。
【0018】
延長部材23は、隙間G1、G2を埋めるように配置され、各延長部材23は、右端部の外周が第5ピラー135に、左端部の内周が第1梁部材221及び第2梁部材222にそれぞれ溶接により接合されている。つまり、第5ピラー135と第1梁部材221及び第2梁部材222は、延長部材23を介して連結されている。
【0019】
溶接前において、延長部材23は第1梁部材221及び第2梁部材222に沿って摺動可能である。延長部材23を溶接するまでの手順としては、ボデー側部材4をシャシー側フレーム5に対して定位置に配置する際に、一旦、延長部材23を第1梁部材221及び第2梁部材222の車両内側まで通しておく。ボデー側部材4をシャシー側フレーム5に対して定位置に配置した後に、延長部材23を第5ピラー135の左端面135L側に接するまで移動させる。そして、第5ピラー135と延長部材23の右端部の外周面、及び、延長部材23の左端部と第1梁部材221及び第2梁部材222の外周面、をそれぞれ全周に亘って溶接して固定する。
【0020】
以上のように構成された分割構造を採用するフレーム接合構造1は、延長部材23によりシャシー側フレーム5の製造誤差を吸収できるため、シャシー側フレーム5の製造寸法精度を高める必要がない。そして、高剛性の要求される車両のボデーとシャシーとの溶接接合部において、延長部材23によりボデー側部材4が実質的にシャシー側フレーム5に近づきこれらの接合部の隙間が小さくなるため、溶接の信頼性を維持しながら、接合部の強度が向上することができる。また、隙間が小さいことで、溶接による引張応力でボデー側部材4及びボデー側部材4に取り付けられるボデープレートがひずむのを防止することができる。さらに、シャシー側フレーム5の主部材である角パイプより一回り大きい部材を用いることで溶接長が長くなるため、高剛性の要求される溶接接合部の強度を向上することができる。
【0021】
以上で本発明に係る車両用フレームの接合構造の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図4は、第1変形例の延長部材を適用した接合部分の概略斜視図である。具体的には、
図3の延長部材23を、形状の異なる延長部材123で置き換えた場合の接合部分の概略斜視図である。上記実施形態において、延長部材23の各面は平坦であったが、
図3の第1変形例の延長部材123に示すように各面について左右方向に傾斜を持たせた台形形状であってもよい。具体的には、第1変形例の延長部材123は、四角錘台形状において傾斜面でない対向する大小の平坦面を第2梁部材222が貫通可能な孔を有する中空四角錘台形状であり、車両2に取り付けられた状態で、
図4に示すように、第5ピラー135側に大きい平坦面が対向して配置される。これにより、延長部材123のみで、ガセットプレートを用いて補強する場合と同様の補強作用を持つため、最小限の追加部品でコストを削減しつつ、溶接接合部の強度向上を図ることができる。
【0023】
また、延長部材はその他の形状であっても構わない。例えば、
図5(a)に示す第2変形例の延長部材223のように、側面を上下方向に延長した形状でもよい。また、
図5(b)に示す第3変形例の延長部材323ように、側面を上下方向に延長し、かつ、側面を凹型(又は凸型)に変形させた形状でもよい。第2変形例の延長部材223及び第3変形例の延長部材323は、例えば、金属製の角パイプをプレス成型により加工して形状を変えて製作される。これにより、延長部材223又は延長部材323と、第5ピラー135との溶接長が長くなり、固定強度が向上し、更なる補強を図ることができる。
【0024】
また、上記実施形態において、車両2はバスであったが、溶接接合される骨格構造を有する他の車両であっても良い。
【0025】
また、フレーム接合構造1を、車両2におけるその他の2つの部材について、一方の部材の面と他方の部材の端部とを突き合わせて溶接接合して固定する部分に適用しても良い。
【0026】
また、上記実施形態において、延長部材23の第5ピラー135に対向する端部を前方から見た垂直断面は上下垂直な直線であったが、第5ピラー135の左端面135Lの形状に合わせて曲線としてもよい。これにより、延長部材23と第5ピラー135との隙間がより小さくなるため、溶接の信頼性と結合部の剛性が向上する。
【符号の説明】
【0027】
1、1’ :フレーム接合構造
2 :車両
3 :車体
4 :ボデー側フレーム
5 :シャシー側フレーム
11(10) :フロントピラー
12(10) :リアピラー
131~137(10) :第1ピラー ~ 第7ピラー
14 :ルーフクロスメンバ
15 :サイドルーフレール
16 :サイドボトムレール
21 :センターレール
22 :クロスメンバ
23、123、223、323 :延長部材
135L :左端面
221 :第1梁部材
221R :右端面
222 :第2梁部材
222R :右端面