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  • 特開-不織布 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080690
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/26 20120101AFI20230602BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230602BHJP
   D04H 5/03 20120101ALI20230602BHJP
   D06M 15/09 20060101ALI20230602BHJP
   B32B 21/10 20060101ALI20230602BHJP
   D06M 15/59 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
D04H1/26
D04H3/16
D04H5/03
D06M15/09
B32B21/10
D06M15/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194170
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
4F100
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AJ06A
4F100AK01A
4F100AK53A
4F100BA02
4F100CA30A
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100EC07
4F100JB09A
4F100JK01A
4F100YY00A
4L033AA02
4L033AB07
4L033AC11
4L033AC15
4L033CA05
4L033CA57
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB06
4L047BA04
4L047BA08
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA19
4L047CB01
(57)【要約】
【課題】 ドライ、ウエットいずれの状態で使用しても、紙粉が抑制され、且つ、十分な吸液性も維持されていると共に、滑らかさや拭取り性にも優れた不織布を提供する。
【解決手段】 エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウエブを必須に含んで形成されている不織布であって、前記パルプ繊維ウエブの坪量が70g/mより高く140g/m以下であり、前記パルプ繊維ウエブが湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子を含有し、前記湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)であり、前記パルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して、前記湿潤紙力剤の添加量が0.35重量%以上であり、且つ、前記アニオン系水溶性高分子の添加量が0.1重量%以上0.8重量%以下であり、前記パルプ繊維ウエブのMD方向での剛性が、JIS L 1096に基づく角度45°カンチレバー法に準拠して測定した長さが、70mm以上120mm以下であり、吸水量(T.W.A.)が300g/m以上である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウエブを必須に含んで形成されている不織布であって、
前記パルプ繊維ウエブの坪量が70g/mより高く140g/m以下であり、
前記パルプ繊維ウエブが湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子を含有し、前記湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)であり、
前記パルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して、前記湿潤紙力剤の添加量が0.35重量%以上であり、且つ、前記アニオン系水溶性高分子の添加量が0.1重量%以上0.8重量%以下であり、
前記パルプ繊維ウエブのMD方向での剛性が、JIS L 1096に基づく角度45°カンチレバー法に準拠して測定した長さが、70mm以上120mm以下であり、
吸水量(T.W.A.)が300g/m以上である、ことを特徴とする不織布。
【請求項2】
JIS P 8151、ISO 8791 4、TAPPI T 555に準拠して測定した圧縮率が12.5%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
不織布の滑らかさ評価の指標としてのKES_MMDの値が0.0120以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の不織布。
【請求項4】
前記アニオン系水溶性高分子はカルボキシメチルセルロース(CMC)である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
スパンボンド不織布を更に含み、前記パルプ繊維ウエブが前記スパンボンド不織布上に積層され一体化された複合型となっている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の不織布。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の不織布の製造方法であって、
前記パルプ繊維ウエブに水流を吹き付けて水流交絡処理する水流交絡工程と、
前記水流交絡工程後、前記湿潤紙力剤および前記アニオン系水溶性高分子を前記パルプ繊維ウエブに添加する添加工程を少なくとも含む、ことを特徴とする不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維を必須に含んで形成されている不織布、例えばパルプ繊維ウエブだけで形成されている不織布やパルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型の不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型の不織布は、パルプ繊維に基づく吸液性とスパンボンド不織布に基づく強度との両方を具備してなるので、ウエスなどの工業用ワイパー、或いは手ぬぐい、タオルなどの対人用のワイパー等の様々な用途で広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1で開示するように、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを重ねた後に、高圧のウォータジェット(水流)を吹き付ける水流交絡処理によって一体化されている。ここでスパンボンド不織布は強度に優れるので製造された複合型不織布の裏打ち層的な機能を果たす。一方、パルプ繊維ウエブは優れた吸液機能を備えている。よって、このような複合型不織布は、水性、油性のいずれの液体に対しても吸収性が良好なパルプ繊維ウエブと、強度に優れるスパンボンド不織布との利点を併有している優れた複合型不織布として消費者に提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2533260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記複合型の不織布はパルプ繊維ウエブを含んでいるので使用したときの吸液性に優れるという特徴を有するのであるが、ドライ、ウエットいずれの使用時においてもパルプ繊維ウエブからの紙粉(微細繊維)の脱落が改善すべき問題として認識されている。
これに関しては従来、湿式法やプレス処理を行うことで紙粉の脱落を抑制できることが知られているが、パルプ繊維ウエブの吸液性能が低下する等の新たな問題が生じてしまう。
また、薬品により紙粉を抑制する技術も確立されつつあるが不織布自体が硬くなるので、触感がチクチクするなどの肌ざわり(以下、「滑らかさ」と称す)が劣り、人体などの払拭には適さず使用できる範囲が掃除用などに限られるなどの問題があった。また、硬くなった不織布はクッション性が乏しくなり、拭き心地や拭き取りやすさ(拭き取り性)が劣るものになってしまう。更には、剛性が高過ぎる不織布は製造工程での折り加工などでの操業性が悪くなるという点でも問題となる。
そして、当然に、パルプ繊維ウエブだけで形成した不織布の場合にも、同様に上記問題が生じることになる。
【0006】
よって、本発明の目的は、ドライ、ウエットいずれの状態で使用しても、紙粉が抑制され、且つ、十分な吸液性も維持されていると共に、滑らかさ、拭取り性そして加工時の操業性にも優れた不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、エアレイド方式で製造されたパルプ繊維ウエブを必須に含んで形成されている不織布であって、
前記パルプ繊維ウエブの坪量が70g/mより高く140g/m以下であり、
前記パルプ繊維ウエブが湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子を含有し、前記湿潤紙力剤はポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)であり、
前記パルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して、前記湿潤紙力剤の添加量が0.35重量%以上であり、且つ、前記アニオン系水溶性高分子の添加量が0.1重量%以上0.8重量%以下であり、
前記パルプ繊維ウエブのMD方向での剛性が、JIS L 1096に基づく角度45°カンチレバー法に準拠して測定した長さが、70mm以上120mm以下であり、
吸水量(T.W.A.)が300g/m以上である、ことを特徴とする不織布により達成できる。
【0008】
そして、JIS P 8151、ISO 8791 4、TAPPI T 555に準拠して測定した圧縮率が12.5%以上であるものが好ましい。
更に、不織布の滑らかさ評価の指標としてのKES_MMDの値が0.0120以下であるのが好ましい。
【0009】
また、前記アニオン系水溶性高分子はカルボキシメチルセルロース(CMC)であるのが好ましい。
【0010】
また、スパンボンド不織布を更に含み、前記パルプ繊維ウエブが前記スパンボンド不織布上に積層され一体化された複合型とすることもできる。
【0011】
上記目的は、上述したいずれかに記載の不織布の製造方法であって、
前記パルプ繊維ウエブに水流を吹き付けて水流交絡処理する水流交絡工程と、
前記水流交絡工程後、前記湿潤紙力剤および前記アニオン系水溶性高分子を前記パルプ繊維ウエブに添加する添加工程を少なくとも含む、ことを特徴とする不織布の製造方法によっても達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明にドライ、ウエットいずれの状態で使用しても、紙粉が抑制され、且つ、十分な吸液性も維持されていると共に、滑らかさ、拭取り性そして加工時の操業性にも優れた不織布を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る不織布を製造するのに好適な装置について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る不織布について説明する。
本発明者等は、相対的に高めの所定範囲に坪量を設定したパルプ繊維ウエブに、所定以上の湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子を含有させ、MD方向(ウエブ製造時の機械方向、すなわち製造時の搬送方向)での剛性が、JIS L 1096に基づく角度45°カンチレバー法に準拠して測定した長さが所定範囲にあり、更に吸液量が300g/mであるように設計した不織布は、繊維脱落(紙粉)を抑制しつつ、十分な吸液性も維持でき、更に滑らかさ、拭取り性そして加工時の操業性にも優れることを確認して本発明に至ったものである。
本発明に係るパルプ繊維ウエブを必須に含んで形成されている不織布は、パルプ繊維ウエブのみで形成されている不織布としてもよいし、パルプ繊維ウエブと共にスパンボンド不織布を含んで複合型にした不織布としてもよい。
【0015】
上記したパルプ繊維ウエブの坪量は70g/mより高く140g/m以下とするのが好ましい。坪量が70g/m以下であるとカンチレバー値が低下してペラペラとした感触の不織布になってしまう。逆に、坪量が上限の140g/mを上回ると厚さが増し過ぎてしまい、例えばワイパーとして使用したときに角の部分を拭き取る際などでの追従性が悪くなってしまう。
【0016】
そして、湿潤紙力剤はパルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して0.35重量%以上で添加し、且つ、アニオン系水溶性高分子はパルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して0.1重量%以上0.8重量%以下で添加するのが好ましい。そして、パルプ繊維絶乾重量に対して湿潤紙力剤の添加量が0.35~2.00重量%であり、且つ、アニオン系水溶性高分子の添加量が0.2~0.7重量%とするのがより好ましい。湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子の添加量が多量となり、上記の範囲を超えると製造装置の汚れが顕著となり、製造工程での安定的な不織布の供給、搬送が困難になってしまう。
上記湿潤紙力剤としては、製紙工程において湿潤紙力剤として知られているポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を用いるのが好ましい。そして、上記アニオン系水溶性高分子としてはカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いるのが好ましい。
【0017】
本発明に係る不織布は、パルプ繊維ウエブ側に湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子を含有していることで、一般的に知られる湿潤紙力剤の自己架橋によるセルロース(パルプ繊維)への耐水性付与と、アニオン系水溶性高分子によるセルロース間(パルプ繊維間)の水素結合の強化のみならず、湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子同士も架橋構造を取ることによって、湿潤紙力剤が効果的に機能(作用)して、パルプ繊維の脱落を効果的に抑止しつつ、吸水性能も維持できる。
【0018】
そして、更に、本発明のパルプ繊維ウエブはMD方向での剛性を所定範囲内に収まるように設定することによって加工時の操業性が向上する。
JIS L 1096に基づく角度45°としたカンチレバー法に準拠して測定した長さが、70mm以上120mm以下となるようにパルプ繊維ウエブを設定するのが好ましい。ここで、カンチレバー法による測定値は、パルプ繊維ウエブの表裏の平均値とする。
カンチレバー法の測定値が70mmを下回ると柔軟性に劣りペラペラとした不織布なって、拭き取り性の悪いものになってしまう。逆に、測定値が120mmを超えて大きくなると不織布が剛直となり、加工し難くなる。そして、拭き取り時において柔軟性に劣る不織布になってしまう。
パルプ繊維ウエブのMD方向での剛性は、例えばスパンボンドの種類や坪量、使用する薬品の種類や添加率、パルプの種類、繊維配向により調整することができる。
【0019】
また、不織布の圧縮率はJIS P 8151、ISO 8791 4、TAPPI T 555に準拠して測定した圧縮率が12.5%以上に設定するのが好ましい。不織布の圧縮率は、例えば、ABB社の測定装置「L&W PPS Tester」によって測定できる。
上記圧縮率(Compressibility)は、1MPa圧力下での測定値に対する2MPaの圧力下での測定値の低減率で示される。すなわち、次式で求めることができる。
Compressibility(%)=(1MPa圧力での測定値-2MPa圧力での測定値)÷1MPa圧力での測定値×100
ここでは圧力が低い時と高い時に押しつぶされる度合いが計算されている。上記測定装置に準備された測定モードにも入っている。
圧縮率の数字が大きいと、圧縮割合が大きくなり、不織布の緩衝性が高く、硬い物質に対する拭き心地が良化する。ただし、圧縮率の数値が20より大きくなると緩衝性が高くなりすぎ、拭き取りの対象物によっては、拭き取りやすさが悪化する場合がある。
上記のように圧縮率が12.5%以上となっている不織布は適度のクッション性が緩衝性となり拭き取りやすさの向上に寄与する。
【0020】
そして、本発明のパルプ繊維ウエブでは、不織布の滑らかさを判断する指標としてのKES(Kawabata Evaluation System)_MMDの値が0.0120以下となるように設定してある。KES_MMD値は、より好ましくは0.0100以下とすることが好ましい。
KES(ケス)は川端季雄博士が開発したシステムで、人がものに触れたときに感じる感覚「滑らかさなど(「風合い」とも称される)」を見分けるのに有効な指標で、主観的であいまいな物性判断をだれにでも共有できる客観的な数値データの置き換えたもので、不織布の滑らかさを計測できる技術である。
本発明では、KESのMMD(摩擦係数の平均偏差)をパルプ繊維ウエブの滑らかさの評価に用いている。このKES_MMDは、摩擦係数の変動の度合いを示しており、値が高いと摩擦係数の変動が大きく、滑らかな箇所、そうでない箇所が多いことになる。一方、値が低いと摩擦係数の変動が小さく、ある程度は均一な表面、つまり滑らかであると言える。均一な面とすることで、毛羽立ち等のチクチク感が低減していると考えられる。
KES_MMD値は、例えばカトーテック株式会社製の「KES-SE(摩擦感テスター)」により測定することができ、パルプ繊維ウエブに例えばカレンダー処理を施して表面が均一となるように均すことによってKES_MMD値が0.0120以下より好ましくは0.0100以下となるように調整できる。
【0021】
以下、本発明の好適形態の不織布として、パルプ繊維ウエブと共にスパンボンド不織布を含んで形成される、複合型の不織布について説明する。
複合型の不織布を製造するのに好適な製造装置を、図1を参照して説明する。
複合型不織布の製造装置1の概略構成を説明する。図1に示す製造装置1は、上流側にパルプ繊維ウエブを供給するためのエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向MDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、脱水処理を行うためのサクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型の不織布(以下、複合型不織布WPとも称する)を巻き取るための巻取装置8が設けてある。
なお、図1では、スパンボンド不織布供給装置3を配置し、スパンボンド不織布を使用した複合型の不織布とした好適例を示している。しかし、これに限らず、スパンボンド不織布を用いず搬送ワイヤ上に直接にパルプ繊維を供給する設備に設計変更すれば、パルプ繊維ウエブのみによる不織布を得ることも可能である。
【0022】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0023】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記のように、エアレイド装置2は乾式でパルプ繊維ウエブを供給できる装置設備であり、湿式抄紙法を応用し湿式でパルプ繊維ウエブを製造する装置よりも設備コストを抑制できる。また、エアレイド装置2ではパルプの解繊から分散、降下まで閉鎖系空間となっており異物の混入が防止されているので、湿式抄紙法でパルプ繊維ウエブを供給する場合と比較して、異物の混入を圧倒的に低く抑えることができる。
【0024】
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、図1では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0025】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0026】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、前述したように、設計されたスパンボンド不織布SWが製造に伴って巻き取られてロール状とされており、これがスパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
【0027】
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウエブ)が下流側へと搬送される。
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウエブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布に含まれるパルプ繊維ウエブPFWの坪量は例えば70.0g/mより高く140.0g/m以下であり、従来の一般的な複合型不織布よりもパルプ繊維ウエブの坪量が高めの範囲に設定されている。そして、スパンボンド不織布SWの坪量は例えば10.0~40.0g/mであり、製造される複合型不織布(スパンボンド不織布SW+パルプ繊維ウエブPFW)は例えば80.0g/mより高く、180.0g/m以下となる。パルプ繊維ウエブの搬送速度やパルプ繊維ウエブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布のパルプ繊維ウエブPFWの坪量を確認することで、坪量が所望の範囲となるように設定すればよい。パルプ繊維ウエブの搬送速度は例えば150~300m/minとするのが好ましい。
【0028】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
【0029】
なお、図1では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
【0030】
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図1で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向MDに沿って多段(図1では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、図1では、搬送方向MDに対して直角な方向(ウエブの幅方向CD)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
【0031】
上記水流交絡処理をする際の噴流の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1~30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0032】
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体化が促進される。
【0033】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向MDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の複合型不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
【0034】
そこで、図1で示すように、水流交絡装置5の下流側にはパルプ繊維ウエブに残留する水分を吸引除去する脱水処理、その後に乾燥処理を行って、複合型不織布WPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように複合型不織布WPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水処理、乾燥処理を行うと効率よく複合型不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の複合型不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した複合型不織布を製造できる。
しかしながら、先に指摘したように、複合型不織布WP上のパルプ繊維ウエブから離脱する微細なパルプ繊維(紙粉)を確実に抑止できる複合型不織布とする必要がある。そのため、本製造装置1には、パルプ繊維の脱落を抑止するための薬剤を添加するための添加装置9が配置されている。
【0035】
サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の複合型不織布を下側から脱水する。搬送される複合型不織布WPを間にして、サクション装置6の上方には、湿潤紙力剤を添加するための添加装置9が配設されている。
上記添加装置9は、水流交絡装置5で複合化された後の複合型不織布WPの上側、すなわちパルプ繊維ウエブPWFから湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子とを混合した混合添加剤を添加する。複合化が完了した複合型不織布のパルプ繊維ウエブ表面に混合添加剤を外側から添加するので、混合添加剤が効率的に作用してパルプ繊維同士を接続する機能を果たす。添加装置9より下流では乾燥処理されるので、添加された混合添加剤が洗い流されて流出するなどの無駄もない。
また、下側にはサクション装置があるので、混合添加剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのに優位であり、これによってパルプ繊維の脱落を更に確実に抑止することができる。添加は、スプレー塗布とすることにより、噴霧液状となった混合添加剤がパルプ繊維ウエブ内に浸透するのにより一層優位となる。そして、添加装置9では、製造される複合型不織布WPの状態を確認して、混合添加剤の量をコントロールすることも容易に行える。
なお、上記添加装置9で混合添加剤がスプレー塗布される際のパルプ繊維ウエブPWF部分の水分(添加装置9に進入する直前の入口水分%)は120~400%となるように調整しておくのが好ましい。
【0036】
また、混合添加剤のスプレー塗布後、10秒以内に脱水処理しておくのが好ましい。すなわち、上記図1により説明したように混合添加剤をスプレー塗布した直下で脱水してもよいし、スプレー塗布から少し離れた位置(搬送時間10秒以内の位置)で脱水処理してもよい。要するに、混合添加剤をスプレー塗布した際のパルプ繊維ウエブPWF内部への薬液の浸透拡散状態を確認して、最適な時間(ただし、スプレー塗布後10秒以内)を適宜に決定すればよい。
上記添加装置9としては、スプレー塗布、サイズプレス、ロールコーティング、グラビアコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング等、公知の装置を用いて混合添加剤を添加することできる。ここで特に限定はされないが、スプレー塗布が好ましい。
なお、上述した添加装置9は湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子とを予め混合した混合添加剤をパルプ繊維ウエブPWFに塗布する場合を好適な一例として説明したものであるが塗布の形態はこれに限らない。上記湿潤紙力剤と上記アニオン系水溶性高分子とを個別に、パルプ繊維ウエブPWFに塗布するようにしてもよい。このように個別とする場合の添加装置9は、湿潤紙力剤を塗布する第1の塗布装置とアニオン系水溶性高分子を塗布する第2の塗布装置との両方を備えた装置として構成する。ここで、第1の塗布装置と第2の塗布装置とが同時にそれぞれの薬剤(湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子)を塗布するようにしてもよいし、ウエブの搬送方向で第1の塗布装置と第2の塗布装置とを若干、前後にずらした位置で塗布するようにしてもよい。この場合もスプレー塗布を採用するのが好ましい。
【0037】
前記パルプ繊維ウエブPWFにおける上記は湿潤紙力剤とアニオン系水溶性高分子とのそれぞれについて、その固形分で換算した添加量が、パルプ繊維ウエブPWFのパルプ繊維絶乾重量に対して所定範囲となるように添加するのが好ましい。具体的には、好ましくは、前記湿潤紙力剤の添加量はパルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して0.35重量%以上であり、また、前記アニオン系水溶性高分子の添加量はパルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して0.1重量%以上、0.8重量%以下とする。より好ましくは、湿潤紙力剤の添加量はパルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して0.35~2.00重量%、且つ、アニオン系水溶性高分子の添加量はパルプ繊維ウエブのパルプ繊維絶乾重量に対して0.2~0.7重量%とする。
上記にように添加する薬剤の上限を定めることで製造装置に堆積し汚れが悪化する、という不都合を抑制できる。
また、スプレー塗布する場合には、前記混合添加剤は好ましくは濃度0.1~2.5%、より好ましくは0.7~1.5%とし、好ましくは吐出圧力0.1~1.5Mpa、より好ましくは、0.3~0.8Mpaとしてパルプ繊維ウエブPWFにスプレー塗布する。圧力が低いと、搬送されているパルプ繊維ウエブによって起こされる風により混合添加剤が飛び散ってしまい、歩留りが低下することで、効果的に紙粉脱落を抑制できない。一方で、圧力が高すぎると、搬送されているパルプ繊維ウエブの紙面で跳ね返りが発生して、この場合も歩留りが悪化することで、紙粉脱落の抑制効果が劣る。
そして、上記湿潤紙力剤としては、上記したとおり、製紙工程において湿潤紙力剤として知られているポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を用いることが好ましい。この湿潤紙力剤のポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)の固形分濃度は、10~40wt%であり、より好ましくは20~30wt%である。湿潤紙力剤として他にメラミン樹脂等を用いることができる。
また上記アニオン系水溶性高分子としては、上記したとおりカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いるのが好ましい。上記2種類を使用することにより繊維脱落を効果的に抑止でき、十分な吸水性を備えた複合型不織布を得ることができる。
【0038】
そして、上記サクション装置6及び添加装置9の下流には、更に乾燥装置7が設置されており、混合添加剤がスプレー塗布されたパルプ繊維ウエブPWFを備える複合型不織布WPが乾燥処理される。ここでの乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。図1で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合型不織布WPは乾燥後に巻取装置8のロール81に巻取られる。
以上で説明したように、製造装置1により、本発明に係るパルプ繊維脱落が少なく、十分な吸水性を維持している複合型の不織布を得ることができる。完成した不織布の厚さは、例えば40.0~140.0g/mの坪量に対し、0.30mm以上0.70mm以下となっていることが好ましい。
なお、図1で示したように、カレンダー装置CAを乾燥装置7と巻取装置8との間に更に配置して、パルプ繊維ウエブにカレンダー処理を施せるようして設計してもよい。パルプ繊維ウエブにカレンダー処理を施すことにより、前述した不織布の滑らかさが増すように調整できる。カレンダー処理は別に設けたカレンダー装置で行ってもよいが、図1に示したオンライン配置とした方が、設備コストおよび製造コストの面から有利である。
【0039】
(実施例)
以下、本発明に係る不織布を、スパンボンド不織布を含む複合型の不織布とした場合の実施例および比較例について説明する。
複合型の不織布のパルプ繊維ウエブに添加する、湿潤紙力剤をポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)およびアニオン系水溶性高分子をボキシメチルセルロース(CMC)とし、それぞれの添加量、そして坪量、角度45°カンチレバー法による測定値(表裏の平均値)、KES_MMD値を、表1に示す通りとした実施例1~7の複合型の不織布、並びに、表2に示す通りとした比較例1~6について、紙粉量、滑らかさ、拭き取りやすさ、加工時の操業性および吸液性能(吸水量)を確認して、総合評価した。
【0040】
1)乾燥状態での拭取り後の紙粉量(目視)
紙粉の発生をモニター10人により評価した。
残留紙粉量が少なく良好である(優◎)
残留紙粉量は優の状態よりも劣り、使用不可と判断するユーザが現れるレベル(可〇)
残留紙粉量が目立ち使用するのが不適である(不可×)
2)湿潤状態での拭取り後の紙粉量(目視)
紙粉の発生をモニター10人により評価した。
残留紙粉量が少なく良好である(優◎)
残留紙粉量は優の状態よりも劣り、使用不可と判断するユーザが現れるレベル(可〇)
残留紙粉量が目立ち使用するのが不適である(不可×)
【0041】
3)不織布を折り加工した際の加工時の操業性を評価し、ここで加工時の操業性が優れると評価をされたものはJIS L 1096に基づく角度45°カンチレバー法に準拠して測定した長さが70mm以上120mm以下の範囲にあり、適度の剛性を備える不織布であった。
加工時の操業性について、複合型不織布を折る工程中における折られた複合型不織布の折りズレの幅を評価した。評価は下記の基準で行った。
折りズレの幅が10mm以内(可〇)
折りズレの幅が10mm以上あり、かつ発生頻度が5%以上(不可×)
【0042】
4)不織布の拭取り時の拭きやすさを官能検査により評価し、ここで拭き取りやすいとの評価をされたものは、圧縮率が12.5%以上で適度なクッション性を備えた不織布であった。
適度な緩衝性を持ちながら、角部などにも追従して拭き取りやすいワイパー(優◎)
優評価品よりもクッション性が劣るが、問題なく使用可能な範囲のワイパー(可〇)
クッション性が劣ることで拭きごたえに劣る(劣×)
【0043】
5)不織布の触り心地(肌ざわり)を官能検査により評価し、ここで触り心地の評価が可〇とされたものは、滑らかさの指標であるKES_MMD値が0.0120以下であり、特に触り心地が優◎と評価されていたものはKES_MMD値が0.0100以下であった。
触った時の感触が滑らかでチクチクした肌ざわりがない(優◎)
触った時のチクチクした肌ざわりが軽減されている(可〇)
触った時にチクチクとした肌ざわりが感じられる(劣△)
【0044】
6)吸液性能は不織布から試験片を作成して吸水量を評価した。
吸水量(T.W.A.)は次のように求めた。まず、不織布を75×75mmの正方形に切断して試料片を作製し、乾燥重量を測定した。次に、この試料片を蒸留水中に2分間浸漬した後、水蒸気飽和状態の容器中で、試料片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(100%RH)で吊るし、30分放置して水切り後の重量を測定した。水切りには、ペーパータオルを3×38mmにカットして使用した。そして、測定値を試料片1m当たりの保水量(g/m)に換算し求めた。300g/m未満である不織布は吸水性能に劣るものであった。
【0045】
7)総合評価
上記1)~6)の評価項目に対し、×と判断されて紙粉の目立つもの、カンチレバー測定値が所定範囲70mm以上120mm以下から外れて(加工時の操業性が悪いもの)、KES_MMDの値が0.0120を超えたもの(滑らかさが劣り触り心地の評価が(劣△)のもの)或いは吸水性能が劣るもの、いずれかである場合には総合評価で×であり、採用するのが好ましくない不織布とした。
上記に対して、評価項目に悪い評価がなく、総合評価◎あるいは〇のものは使用に適した不織布と判断した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
上記表1に示すように、上記実施例1~7では、不織布でのパルプ繊維ウエブの坪量が70g/mより高く140g/m以下で、湿潤紙力剤(PAE)の添加量が0.35重量%以上、アニオン系水溶性高分子(CMC)の添加量が0.1重量%以上0.8重量%以下であり、MD方向での剛性が角度45°カンチレバー法での測定値が70mm以上120mm以下であり、吸水量(T.W.A.)が300g/m以上であった。実施例1~7の不織布は、乾燥状態、湿潤状態いずれの状態で使用しても、紙粉が抑制され、且つ、十分な吸液性も維持されていると共に、滑らかさや拭き取り性そして加工時の操業性にも優れた不織布となっている。なお、実施例3~6ではカレンダー処理を施している。
【0049】
一方、比較例1~7では、紙粉量が目立つ、滑らかさ、拭き取り性、加工時の操業性に劣る、或いは吸液性能が劣る、いずれかに相当して総合評価が×となり、ユーザに提供する不織布とするのが困難となっている。
比較例1は、アニオン系水溶性高分子の添加がないので湿潤状態での紙粉が目立っている。また、KES_MMDの値が0.0120を上回っており、滑らかさに劣る。
比較例2は、坪量が80g/mを下回っており、カンチレバー法での測定値が70mmよりも小さい値となり、その結果、加工時の操業性の評価が劣るものとなっている。
比較例3は、坪量が140g/mを超えており、カンチレバー法での測定値が120mmを大きく超えた値となり、その結果、加工時の操業性の評価が劣るものとなっている。また、KES_MMDの値が0.0120を上回っており、滑らかさに劣る。
比較例4は湿潤紙力剤(PAE)の添加量が多く乾燥状態での紙粉量が目立つもの、比較例5はアニオン系水溶性高分子の添加量が高めでカンチレバー法での測定値が高くなり加工時の操業性の評価が劣るもの、また比較例6は坪量が69.8g/mであって70.0g/mよりも低く、吸水性能に欠けるものとなっている。
そして、比較例7は、坪量が80g/mを下回っており、カンチレバー法での測定値が70mmよりも小さい値であり、その結果、加工時の操業性の評価が劣るものとなっている。更に、カレンダー条件が強いことで密度が上がり圧縮率が低くなることで、拭取り時の拭きやすさで劣る不織布となっている。
【0050】
上記した実施例は、湿潤紙力剤およびアニオン系水溶性高分子を所定量添加したパルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とによる複合型の不織布について紙粉量の抑制効果、吸水性保持性能、拭き取り性、滑らかさ、そして加工時の操業性について示したものであるが、パルプ繊維ウエブだけで形成した不織布についても同様の効果を期待することができるのは言うまでもない。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 複合型不織布の製造装置
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
9 添加装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW スパンボンド不織布
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合型不織布
MD 搬送方向
CD 幅方向
CA カレンダー装置
図1