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2023-80712冷媒分配器及びこの冷媒分配器を備える熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080712
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】冷媒分配器及びこの冷媒分配器を備える熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/42 20210101AFI20230602BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20230602BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F25B41/42
F28F9/02 301C
F28F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194199
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】武市 久史
(72)【発明者】
【氏名】金 鉉永
(72)【発明者】
【氏名】伊野波 亮
(72)【発明者】
【氏名】富田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】田島 一繁
(72)【発明者】
【氏名】中川 忠紘
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲哉
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065DA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数本の伝熱管に供給される冷媒を適切な供給量に分配し、簡単に組み立てられるようにする。
【解決手段】主管から分岐した複数本の分岐管から冷媒が流れ込む複数本の第1流路と、第1流路それぞれから分岐するとともに、冷媒を伝熱管に導く複数本の第2流路とを備える冷媒分配器において、複数本の分岐管が接続されるとともに、第1流路に沿って延びる外側部材10と、外側部材10に閉塞されて第1流路を形成する複数本の溝、及び、これらの溝に開口する複数の連通穴が形成された第1板状部材21と、連通穴及び伝熱管を連通するとともに、第1流路から連通穴を通過した冷媒を伝熱管に導く複数本のスリット31Sが形成されたスリット板31と、第1板状部材21とともにスリット板31を挟み込むとともに、スリット31Sを塞いで第2流路を形成する第2板状部材22とを備えるようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管を通過した冷媒を複数本の伝熱管に分配するものであり、主管から分岐した複数本の分岐管から前記冷媒が流れ込む複数本の第1流路と、前記第1流路それぞれから分岐するとともに、前記冷媒を前記伝熱管に導く複数本の第2流路とを備える冷媒分配器において、
前記複数本の分岐管が接続されるとともに、前記第1流路に沿って延びる外側部材と、
前記外側部材に閉塞されて前記第1流路を形成する複数本の溝、及び、これらの溝に開口する複数の連通穴が形成された第1板状部材と、
前記連通穴及び前記伝熱管を連通するとともに、前記第1流路から前記連通穴を通過した冷媒を前記伝熱管に導く複数本のスリットが形成されたスリット板と、
前記第1板状部材とともに前記スリット板を挟み込むとともに、前記スリットを塞いで前記第2流路を形成する第2板状部材とを備える、冷媒分配器。
【請求項2】
前記外側部材が、前記第1板状部材側及び前記第2板状部材側の両側に設けられており、
前記第2板状部材が、当該第2板状部材側の前記外側部材に閉塞されて前記第1流路を形成する複数本の溝、及び、これらの溝に開口する複数の連通穴が形成されている、請求項1記載の冷媒分配器。
【請求項3】
前記複数本の伝熱管が、上下多段に設けられており、
前記第1流路が、上下方向に延びており、
前記第2流路が、前記第1流路から分岐しつつ少なくとも一部が水平方向に延びている、請求項1又は2記載の冷媒分配器。
【請求項4】
前記複数本の伝熱管それぞれに対応する仕切空間に仕切られており、前記仕切空間それぞれに前記第2流路が接続されるヘッダをさらに備える、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項5】
前記ヘッダが、筒状をなし、軸方向に沿って設けられた挿込穴を有し、
前記スリット板が、前記ヘッダに向かって突出するとともに、前記挿込穴に挿し込まれる突出部を有している、請求項4記載の冷媒分配器。
【請求項6】
前記突出部が、前記第2流路の下流側を形成するとともに、前記ヘッダの軸方向に沿って多段に設けられており、
それぞれの前記突出部が、前記伝熱管それぞれに対応して設けられている、請求項5記載の冷媒分配器。
【請求項7】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材の間に、複数枚の前記スリット板が積層されている、請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項8】
前記第2流路が、途中で水平方向に分岐する一対の分岐流路を有し、それら分岐流路の一方が上方に向かい、他方が下方に向かう、請求項1乃至7のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項9】
前記複数の連通穴の一部又は全部が、異なる大きさである、請求項1乃至8のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の冷媒分配器を備える、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒分配器及びこの冷媒分配器を備える熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器としては、特許文献1に示すように、蒸発器性能を向上させるべく、多穴扁平管等の複数本の細径管を利用したものがある。
【0003】
このような細径管を利用して大型の室外機を構成する場合、細径管の長尺化に伴う圧力損失の極大化が問題となり、これを解決するためには、細径管の利用本数を多くするための多パス化が必要となる。
【0004】
ところが、このような多パス化した構成であると、それぞれのパスに対する偏流の影響で性能が低下するリスクが増大することから、それぞれのパスに均等分流することが重要になることがある。
【0005】
また、多パス化した構成を大型の上吹き室外機に適用すると、多数本の細径管が上下多段に並び設けられ、高さ方向のサイズが大きくなるので、高さ方向に沿った風速分布が生じる。これにより、ファンに近い上部では風速が速く、その分熱交換を効率良く行うことができ、一方で、ファンから遠い下部では風速が遅く、多量の冷媒を供給したところで全てを熱交換できるとは限らない。
【0006】
このことから、それぞれの細径管に供給するべき必要な冷媒量は、風速分布に応じて異なるので、効率的な熱交換を行うためには、それぞれの細径管に適切な冷媒量を供給する必要がある。
【0007】
しかしながら、従来の分配器において、細径管に供給される冷媒を所望の供給量に分配しようとすると、部品点数が多くなり、例えば部品間のシール性を担保する箇所が増えるなどして、組み立てが煩雑化するといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6639648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題を一挙に解決すべくなされたものであり、複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配できるようにしつつも、簡単に組み立てることができるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る冷媒分配器は、主管から分岐した複数本の分岐管から前記冷媒が流れ込む複数本の第1流路と、前記第1流路それぞれから分岐するとともに、前記冷媒を前記伝熱管に導く複数本の第2流路とを備える冷媒分配器において、前記複数本の分岐管が接続されるとともに、前記第1流路に沿って延びる外側部材と、前記外側部材に閉塞されて前記第1流路を形成する複数本の溝、及び、これらの溝に開口する複数の連通穴が形成された第1板状部材と、前記連通穴及び前記伝熱管を連通するとともに、前記第1流路から前記連通穴を通過した冷媒を前記伝熱管に導く複数本のスリットが形成されたスリット板と、前記第1板状部材とともに前記スリット板を挟み込むとともに、前記スリットを塞いで前記第2流路を形成する第2板状部材とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
このように構成された冷媒分配器であれば、第2流路を形成するスリットが、連通穴及び伝熱管を連通しているので、この連通穴を例えばそれぞれの伝熱管に応じた適切なサイズにすることで、各伝熱管に供給される冷媒を適切な供給量に分配することができる。
しかも、外側部材に第1板状部材を重ね合わせ、この第1板状部材と第2板状部材とでスリット板を挟み込むことで第1流路及び第2流路が形成されるので、各部材を厚み方向に積層させながら押圧することで、各部材の間のシール性を担保することができ、且つ、組み立ても簡単である。
【0012】
前記外側部材が、前記第1板状部材側及び前記第2板状部材側の両側に設けられており、前記第2板状部材が、当該第2板状部材側の前記外側部材に閉塞されて前記第1流路を形成する複数本の溝、及び、これらの溝に開口する複数の連通穴が形成されていることが好ましい。
これならば、この冷媒分配器により多くの分岐管を接続することができ、冷媒をより多くのパスに分流することができる。
【0013】
前記複数本の伝熱管が、上下多段に設けられており、前記第1流路が、上下方向に延びており、前記第2流路が、前記第1流路から分岐しつつ少なくとも一部が水平方向に延びていることが好ましい。
これならば、本発明に係る冷媒分配器を大型の上吹き室外機に適用することができる。これにより、複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を例えば風速分布に応じて適切な供給量に分配することが可能となり、本発明による作用効果をより顕著に発揮させることができる。
【0014】
前記複数本の伝熱管それぞれに対応する仕切空間に仕切られており、前記仕切空間それぞれに前記第2流路が接続されるヘッダをさらに備えることが好ましい。
これならば、冷媒が互いに仕切られた仕切空間から伝熱管に流れ込むので、分流させた冷媒を合流させることなく、それぞれの伝熱管に所望の供給量の冷媒を供給することができる。
【0015】
前記ヘッダが、筒状をなし、軸方向に沿って設けられた挿込穴を有し、前記スリット板が、前記ヘッダに向かって突出するとともに、前記挿込穴に挿し込まれる突出部を有していることが好ましい。
このような構成であれば、ヘッダに対するスリット板の取り付けが簡単である。
【0016】
より具体的な実施態様としては、前記突出部が、前記第2流路の下流側を形成するとともに、前記ヘッダの軸方向に沿って多段に設けられており、それぞれの前記突出部が、前記伝熱管それぞれに対応して設けられている態様を挙げることができる。
【0017】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材の間に、複数枚の前記スリット板が積層されていることが好ましい。
このように複数枚のスリット板を用いることにより、1枚のスリット板を用いる場合と比べて、より多くの第2流路を形成することができたり、1本の第2流路をさらに複数本に分岐させたりすることができ、第2流路の自由度を向上させることができる。
【0018】
前記第2流路が、途中で水平方向に分岐する一対の分岐流路を有し、それら分岐流路の一方が上方に向かい、他方が下方に向かうことが好ましい。
このような構成であれば、一対の分岐流路が第2流路を途中で水平方向に分岐させたものであるので、これら一対の分岐流路に均等分流することができる。
【0019】
前記複数の連通穴の一部又は全部が、異なる大きさであることが好ましい。
これならば、複数本の伝熱管に供給する冷媒を、例えば風速分布に応じた適切な供給量にすることができる。
【0020】
また、本発明に係る熱交換器は、上述した冷媒分配器を備えることを特徴とするものであり、このような熱交換器によれば、上述した冷媒分配器と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配することができ、しかも簡単に組み立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態における冷媒分配器を備える熱交換器の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態における冷媒分配器を上方から視た模式図。
図3】同実施形態における冷媒分配器の分解斜視図。
図4】同実施形態における外側部材の構成を示す模式図。
図5】同実施形態における第1板状部材の構成を示す模式図。
図6】同実施形態におけるスリット板の構成を示す模式図。
図7】同実施形態における第1流路及び第2流路の構成を示す模式図。
図8】同実施形態におけるヘッダの構成を示す模式図。
図9】その他の実施形態における第2流路の構成を示す模式図。
図10】その他の実施形態における第2流路の構成を示す模式図。
図11】その他の実施形態における第2流路の構成を示す模式図。
図12】その他の実施形態における第2流路の構成を示す模式図。
図13】その他の実施形態における第2流路の構成を示す模式図。
図14】その他の実施形態における第2流路の構成を示す模式図。
図15】その他の実施形態における冷媒分配器の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る冷媒分配器の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る冷媒分配器100は、図1に示すように、空気調和機の熱交換器Xを構成するものであり、例えば大型の上吹き型の室外機に用いられるものである。ただし、本発明に係る冷媒分配器100は、横吹き型の室外機に用いられても良いし、室内機に用いられても良い。
【0025】
この熱交換器Xは、図1に示すように、多数本の細径管(伝熱管)Tと、熱交換器Xに流入する冷媒を多数本の細径管Tに分配する冷媒分配器100とを備えたものであり、ここでは複数本の細径管Tたる多穴扁平管が上下多段に並び設けられている。
【0026】
冷媒分配器100は、図1及び図2に示すように、熱交換器Xの上流側に設けられた主管Zを流れる冷媒を、上述した複数本の細径管Tに分配するものであり、ここでは主管Zから分岐した複数本の分岐管Z1が接続されるものである。
【0027】
この冷媒分配器100は、図1及び図2に示すように、上述した分岐管Z1が接続される外側部材10と、上述した上下多段に設けられた細径管Tが接続されるヘッダHとを具備し、分岐管Z1から冷媒が流れ込む複数本の第1流路L1と、これらの第1流路L1それぞれから分岐するとともに、冷媒を細径管Tに導く複数本の第2流路L2とを備える。
【0028】
より具体的に説明すると、図1図3に示すように、第1流路L1は、ここでは鉛直方向(上下方向)に沿って延びるものであり、外側部材10に第1板状部材21を取り付けることにより形成されている。
また、第2流路L2は、ここでは少なくとも一部が水平方向に沿って延びるものであり、第1板状部材21及び第2板状部材22でスリット板31、32、33を挟み込むことにより形成されている。
【0029】
以下、各部材について詳しく述べる。
【0030】
<外側部材10>
外側部材10は、図1及び図2に示すように、上述した分岐管Z1が接続されるものであり、第1流路L1に沿って延びる長尺状のものである。
【0031】
本実施形態の外側部材10は、図4に示すように、上下方向に沿って延びるものであり、その下端部の複数箇所に分岐管Z1が接続される接続ポート10Pが設けられている。
【0032】
この外側部材10は、厚み方向に貫通する複数本のスリット10Sが形成されている。これらのスリット10Sは、後述する第1板状部材21の櫛状部213が挿し込まれるものであり、ここでは上下方向に沿って延びる複数本のスリット10Sが水平方向に並び設けられており、これらの複数本のスリット10Sが、上下多段に形成されている。
【0033】
本実施形態では、図1図3に示すように、上述した外側部材10が、後述する第1板状部材21、スリット板31、32、33、及び第2板状部材22を挟み込むように、これらの厚み方向両側に設けられている。
【0034】
<第1板状部材21>
第1板状部材21は、図5左側に示すように、複数本の溝211と、これらの溝211に開口する複数の連通穴212が形成されたものである。
【0035】
この第1板状部材21は、図2に示すように、上述した外側部材10に取り付けられるものであり、より具体的には、外側部材10における第1板状部材21を向く内向き面11に形成された凹部12に嵌め込まれる。
【0036】
このように第1板状部材21が外側部材10に取り付けられることにより、複数本の溝211それぞれが外側部材10の内向き面11により塞がれて第1流路L1が形成される。
【0037】
これら複数本の溝211は、外側部材10の下端部に形成された接続ポート10Pに連通しており、これにより、分岐管Z1を流れる冷媒が接続ポート10Pを介して第1流路L1に流れ込む。
【0038】
そして、第1流路L1は連通穴212を介して第2流路L2と連通しており、これにより、第1流路L1を流れる冷媒が、連通穴212を通過して、第2流路L2に流れ込む。
【0039】
この連通穴212は、上述した溝211の底面に開口するとともに、複数本の第2流路L2それぞれに対応する位置に形成されている。
【0040】
本実施形態では、図5右側に示すように、それぞれの溝211の長手方向に沿って、複数個の連通穴212が例えば等間隔に形成されている。
【0041】
かかる構成において、一の溝211に形成された連通穴212と、別の溝211に形成された連通穴212とは、長手方向(上下方向)に沿った位置が互いに異なり、言い換えれば、互いに異なる高さに形成されている。
【0042】
これらの連通穴212は、一部又は全部が互いに異なる大きさであっても良く、例えば、上方に位置する連通穴212の方が、下方に位置する連通穴212よりも大きくしてある。
【0043】
また、本実施形態の第1板状部材21は、図5左側に示すように、外側部材10に向かって突出する複数本の櫛状部213を有している。これらの櫛状部213は、上述した外側部材10のスリット10Sに挿し込まれるものであり、ここでは上下方向に沿って延びる複数本の櫛状部213が水平方向に並び設けられており、これらの複数本の櫛状部213が、上下多段に形成されている。このように櫛状部213をスリット10Sに差し込むことで、第1流路L1のリークを製造工程でチェックできるようにしてある。
【0044】
<スリット板31、32、33>
スリット板31、32、33は、図6に示すように、少なくとも一部が水平方向に延びる複数本のスリット31S、32S、33Sが形成されたものである。
【0045】
これらのスリット31S、32S、33Sは、上述した第1板状部材21の連通穴212と、後述するヘッダHの仕切空間Sとを連通して、第1流路L1から連通穴212を通過した冷媒を細径管Tに導く第2流路L2を形成するものである。
【0046】
本実施形態の冷媒分配器100は、複数枚のスリット板31、32、33を備えており、これらのスリット板31、32、33が積層されるとともに、各スリット板31、32、33のスリット31S、32S、33Sが重なり合って第2流路L2が形成される。
【0047】
より具体的に説明すると、ここでは厚み方向に積層される3枚のスリット板(以下、これらを第1スリット板31、第2スリット板32、及び第3スリット板33ともいう)が設けられている。
【0048】
第1スリット板31は、図6左側に示すように、上下方向に延びる長尺状をなすものである。この第1スリット板31は、上述した第1板状部材21及び第2板状部材22に挟み込まれるものであり、ここでは第1板状部材21側に配置されている。
【0049】
この第1スリット板31には、第1板状部材21の連通穴212に連通する複数本の第1スリット31Sが形成されている。
【0050】
本実施形態の第1スリット板31は、一方の長辺に複数の突出部311が上下多段に設けられている。そして、この突出部311を第1スリット31Sが貫通するように形成されており、言い換えれば、突出部311に第1スリット31Sが開口している。
【0051】
これらの第1スリット31Sは、上下多段に設けられており、上流側端部が連通穴212に臨むとともに水平方向に延びる水平部31Tと、この水平部31Tの下流側端部から下方に向かって傾斜する傾斜部31Uと、傾斜部31Uの下流側端部から水平方向に延びるとともに上述した突出部311を貫通する終端部31Vとからなる。
【0052】
第2スリット板32は、図6右側に示すように、上述した第1スリット板31とよく似た形状のものであり、第1スリット31Sにおける傾斜部31Uの傾斜方向を下方から上方に向けた形状をなす。
【0053】
具体的にこの第2スリット板32は、上下方向に延びる長尺状をなし、上述した第1板状部材21及び第2板状部材22に挟み込まれるものであり、ここでは第2板状部材22側に配置されている。
【0054】
この第2スリット板32には、後述する第2板状部材22の連通穴222に連通する複数本の第2スリット32Sが形成されている。
【0055】
本実施形態の第2スリット板32は、一方の長辺に複数の突出部321が上下多段に設けられている。そして、この突出部321を第2スリット32Sが貫通するように形成されており、言い換えれば、突出部321に第2スリット32Sが開口している。
【0056】
これらの第2スリット32Sは、上下多段に設けられており、上流側端部が連通穴212に臨むとともに水平方向に延びる水平部32Tと、この水平部32Tの下流側端部から上方に向かって傾斜する傾斜部32Uと、傾斜部32Uの下流側端部から水平方向に延びるとともに上述した突出部321を貫通する終端部32Vとからなる。
【0057】
第3スリット板33は、図6中央に示すように、上下方向に延びる長尺状をなすものであり、第1スリット31S及び第2スリット32Sに挟み込まれる。この第3スリット板33には、第1スリット31S及び第2スリット32Sと重なり合う第3スリット33Sが形成されている。
【0058】
ここでの第3スリット板33は、上述した第1スリット板31及び第2スリット板32と同様に、一方の長辺に複数の突出部331が上下多段に設けられている。ただし、この突出部331を第3スリット33Sが貫通しない点において、第1スリット板31及び第2スリット板32とは相違する。
【0059】
これらの第3スリット33Sは、上下多段に設けられており、上流側端部から下流側端部に亘り水平方向に延びている。この第3スリット33Sは、閉じられた形状をなしており、具体的には第1スリット31Sの水平部31T及び第2スリット32Sの水平部32Tと重なり合う形状である。
【0060】
これらの第1スリット板31、第2スリット板32、及び第3スリット板33は、厚み方向に積層されて、第1スリット31S、第2スリット32S、及び第3スリット33Sが重なり合わされるとともに、それぞれのスリット板31、32、33に設けられた突出部311、321、331が重なり合わされる。
【0061】
<第2板状部材22>
第2板状部材22は、図3に示すように、第1板状部材21とともにスリット板31、32、33を挟み込むものであり、これにより第1板状部材21の内向き面214と第2板状部材22の内向き面224が、スリット板31、32、33に形成されたスリット31S、32S、33Sを塞ぎ、第2流路L2が形成される。
【0062】
本実施形態の第2流路L2は、図7に示すように、途中で水平方向に分岐して、それら一対の分岐流路L3の一方が上方に向かい、他方が下方に向かうように構成されている。
【0063】
本実施形態の第2流路L2は、分流性能の向上を図るべく、上述した水平方向の分岐箇所において、冷媒がスリット板33に形成されたスリット33Sの下流側端部に衝突するように構成されている。
具体的には、スリット板33に形成されたスリット33Sが、スリット板31、32に形成されたスリット31S、32Sよりも短く、言い換えれば、スリット板33に形成されたスリット33Sの上流側端部が、スリット板31、32に形成されたスリット31S、32Sの上流側端部よりも手前(上流側)に位置している。
【0064】
なお、第2板状部材22は、図3及び図5に示すように、第1板状部材21に対してスリット板31、32、33を挟んで対称に配置され、複数本の溝221と、これらの溝221に開口する複数の連通穴222と、外側部材10のスリット10Sに挿し込まれる櫛状部223が形成されたものであり、具体的な形状等は上述した第1板状部材21と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
<ヘッダH>
ヘッダHは、図3及び図8に示すように、上述した複数枚のスリット板31、32、33が取り付けられて第2流路L2が接続されるとともに、複数本の細径管Tが接続されるものである。
【0066】
より具体的に説明すると、ヘッダHは、筒状をなし、側周面の互いに対向する箇所に一対の切り欠きH1が形成されている。
【0067】
これら一対の切り欠きH1は、軸方向(上下方向)に多段に設けられており、それぞれの切り欠きH1に仕切板Pが差し入れられている。これにより、図7に示すように、ヘッダHの内部が、互いに独立した複数の仕切空間Sに仕切られており、それぞれの仕切空間Sに1又は複数本の細径管Tが接続されている。
【0068】
一方、ヘッダHの側周面には、図8に示すように、切り欠きH1を避ける箇所に、軸方向に沿って設けられた複数の挿込穴H2が形成されており、この挿込穴H2に厚み方向に積層された複数枚のスリット板31、32、33が挿し込まれて取り付けられる。
【0069】
ここで、第1スリット板31、第2スリット板32、及び第3スリット板33には、上述した通り、長辺に複数の突出部311、321、331が設けられており、これらのスリット板31、32、33を重ね合わせることにより、複数の突出部311、321、331が重なり合う。
【0070】
そして、この実施形態では、図4に示すように、上述した外側部材10の長辺にも複数の突出部13が設けられており、一対の外側部材10により複数枚のスリット板31、32、33を挟み込むことで、外側部材10に形成された突出部13と、スリット板31、32、33に形成された突出部311、321、331とが重なり合い、これらの重なり合った突出部13、311、321、331が挿込穴H2に挿し込まれる。
【0071】
これにより、複数本の第2流路L2それぞれが、途中で水平方向に分岐し、それらの分岐流路L3それぞれが、上方又は下方に傾斜した後、上記の重なり合った突出部13、311、321、331を貫通して、ヘッダHの所定箇所に位置する仕切空間Sに接続される。
【0072】
次に、本実施形態の冷媒分配器100の組み立て方の一例について説明する。
【0073】
まず、第3スリット板33を第1スリット板31及び第2スリット板32で挟み込み、これら複数枚のスリット板31、32、33を第1板状部材21及び第2板状部材22で挟み込み、さらにこれらを外側から一対の外側部材10で挟み込む。
【0074】
このように、外側部材10、第1板状部材21、スリット板31、32、33、及び第2板状部材22を積層させることにより、複数本の第1流路L1が形成されるとともに、これらの第1流路L1から分岐した複数本の第2流路L2が形成される。
【0075】
そして、上述した各部材を積層した状態で、これらを一括して、複数本の細径管Tが接続されたヘッダHに取り付けるとともに、主管Zから分岐された分岐管Z1を外側部材10の接続ポート10Pに接続する。
【0076】
これにより、分岐管Z1を流れる冷媒は、第1流路L1及び第2流路L2を流れながら多数本のパスに分流されて、それぞれが所定の細径管Tに流れ込む。
【0077】
このように構成された冷媒分配器100によれば、第2流路L2から細径管Tに流れ込む冷媒の流量が、この第2流路L2に連通する連通穴212の大きさに応じて変えることができるので、この連通穴212を例えばそれぞれの細径管Tに応じた適切なサイズにすることで、各細径管Tに供給される冷媒を適切な供給量に分配することができる。
これにより、本実施形態のように冷媒分配器100を大型の上吹き室外機に適用する場合、複数本の細径管Tそれぞれに供給される冷媒を例えば風速分布に応じて適切な供給量に分配することが可能となり、熱交換効率の向上を図れる。
【0078】
しかも、外側部材10に第1板状部材21を重ね合わせ、この第1板状部材21と第2板状部材22とでスリット板31、32、33を挟み込むことで第1流路L1及び第2流路L2が形成されるので、各部材を厚み方向に積層させながら押圧することで、各部材の間のシール性を担保することができ、且つ、組み立ても簡単である。
【0079】
また、外側部材10が、第1板状部材21側及び第2板状部材22側の両側に設けられているので、冷媒分配器100により多くの分岐管Z1を接続することができ、冷媒をより多くのパスに分流することができる。
【0080】
さらに、ヘッダHの内部に形成された仕切空間Sそれぞれに第2流路L2が接続されており、冷媒が互いに仕切られた仕切空間Sから細径管Tに流れ込むので、分流させた冷媒を合流させることなく、それぞれの細径管Tに所望の供給量の冷媒を供給することができる。
【0081】
そのうえ、外側部材10及びスリット板31、32、33が、ヘッダHの挿込穴H2に挿し込まれる複数の突出部13、311、321、331を有しているので、外側部材10、第1板状部材21、スリット板、及び第2板状部材22が積層された状態において、これらのヘッダHへの取り付けが簡単である。
【0082】
加えて、第1板状部材21及び第2板状部材22で複数枚のスリット板31、32、33を挟み込んでいるので、1枚のスリット板を用いる場合に比べて、より多くの第2流路L2を形成することができたり、本実施形態のように1本の第2流路L2を複数本に分岐させたりすることができ、第2流路L2の自由度を向上させることができる。
【0083】
さらに加えて、第2流路L2を途中で水平方向に分岐させているので、これら一対の分岐流路L3に均等分流することができる。
【0084】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0085】
例えば、前記実施形態では、第2流路L2が途中で一度分岐するように構成されていたが、第2流路L2は、途中で複数回分岐するように構成されていても良い。
具体的には、図9に示す構成では、第2流路L2が途中で水平方向に一対の分岐流路L3に分岐して、それらの分岐流路L3それぞれが、再び途中で水平方向に分岐している。
このような構成であれば、第2流路L2に流れ込んだ冷媒を4本のパスに均等分流することができる。
なお、図9における第2流路L2は、スリット板31、32、33の幅方向を短く保つべく、分岐流路L3を途中でヘッダH側から離れる向きに変える局部L21を有しており、この局部L21を通過した後に、分岐流路L3を水平方向に分岐させている。
【0086】
また、上述したように、第2流路L2を複数回分岐させる構成において、図10に示すように、第2流路L2に設けられた局部L21が湾曲形状をなしていても良い。
これならば、局部L21での圧力損失を低減させることができる。
【0087】
さらに、第2流路L2としては、図11に示すように、冷媒が上下に蛇行する1又は複数の蛇行部L22を有していても良い。
これならば、冷媒の流れ方向を変化させることで、慣性の影響を低減させることができる。
【0088】
また、冷媒の流れ方向を変化させる別の態様としては、図12に示すように、第2流路L2は、冷媒が衝突する衝突部L23を有していても良い。
【0089】
さらに、図13に示すように、第1スリット板31に形成された第1スリット31Sと、第2スリット板32に形成された第2スリット32Sとを互いに異なる長さにしても良い。
これならば、第1スリット31S及び第2スリット32Sのうち、慣性の影響が少なく冷媒が流れにくい側のスリットを長くすることで、より均等な分流を図れる。
【0090】
また、第2流路L2としては、図14に示すように、分岐箇所の上流側に、分岐箇所の下流側よりも流路の細く例えばオリフィス状の細流路部L24を有していても良い。
これならば、細流路部L24を通過する冷媒の流速を上げることができ、混合の促進を図るとともに、より均等な分流を図れる。
【0091】
さらに、前記実施形態の冷媒分配器100は、一対の外側部材10を備えていたが、図15に示すように、スリット板34の片側にのみ設けられていても良い。
この場合、第2板状部材22は、第1板状部材21と同様の形状にする必要はなく、例えば平板部材とすることができる。
【0092】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
X ・・・熱交換器
T ・・・細径管
Z ・・・主管
Z1 ・・・分岐管
100・・・冷媒分配器
L1 ・・・第1流路
L2 ・・・第2流路
H ・・・ヘッダ
10 ・・・外側部材
10S・・・スリット
21 ・・・第1板状部材
22 ・・・第2板状部材
31 ・・・第1スリット板
31S・・・第1スリット
32 ・・・第2スリット板
32S・・・第2スリット
33 ・・・第3スリット板
33S・・・第3スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15