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特開2023-80713冷媒分配器及びこの冷媒分配器を備える熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080713
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】冷媒分配器及びこの冷媒分配器を備える熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/42 20210101AFI20230602BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20230602BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F25B41/42
F28F9/02 301A
F28F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194201
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】武市 久史
(72)【発明者】
【氏名】金 鉉永
(72)【発明者】
【氏名】伊野波 亮
(72)【発明者】
【氏名】富田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】田島 一繁
(72)【発明者】
【氏名】中川 忠紘
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲哉
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065DA13
(57)【要約】
【課題】複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配できるようにする。
【解決手段】主管Zを通過した冷媒を複数本の伝熱管Tに分配する冷媒分配器100であって、主管Zから分岐した複数本の分岐管Z1が接続されるとともに、互いに独立した少なくとも2本の分配流路Lと、複数本の伝熱管Tが接続されるとともに、これらの伝熱管Tに対応する複数の仕切空間Sに仕切られたヘッダカバーHとを備え、一方の分配流路Lが、所定数の仕切空間Sに冷媒を供給し、他方の分配流路Lが、所定数の仕切空間Sに冷媒を供給することなく、それら所定数の仕切空間Sとは異なる位置にある仕切空間Sに冷媒を供給するように構成した。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管を通過した冷媒を複数本の伝熱管に分配する冷媒分配器であって、
前記主管から分岐した複数本の分岐管が接続されるとともに、互いに独立した少なくとも2本の分配流路と、
前記複数本の伝熱管が接続されるとともに、これらの伝熱管に対応する複数の仕切空間に仕切られたヘッダカバーとを備え、
一方の前記分配流路が、所定数の前記仕切空間に冷媒を供給し、
他方の前記分配流路が、前記所定数の仕切空間に冷媒を供給することなく、前記所定数の仕切空間とは異なる位置にある前記仕切空間に冷媒を供給するように構成されている、冷媒分配器。
【請求項2】
前記分配流路と前記仕切空間とを連通させる複数の開口が列状に形成された開口形成部材を備え、
前記開口形成部材の前記開口が列状に形成れている穴区間の上流側に、これらの開口に向かう冷媒の流れを付勢する助走区間が設けられている、請求項1記載の冷媒分配器。
【請求項3】
前記複数の開口の一部又は全部が、互いに異なる大きさである、請求項2記載の冷媒分配器。
【請求項4】
前記助走区間の長さが、前記分配流路の水力直径の10倍以上である、請求項2又は3記載の冷媒分配器。
【請求項5】
前記分配流路が、冷媒を下方から上方に向かって流す、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項6】
前記分配流路が、前記分岐管それぞれに対応した複数の分割領域に分割されており、前記分岐管から対応する前記分割領域に流入した冷媒が、複数の前記仕切空間に供給される、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項7】
前記ヘッダカバーを複数の前記仕切空間に仕切る複数枚の仕切板を備え、
前記仕切板が、前記分配流路を複数の前記分割領域に仕切っている、請求項6記載の冷媒分配器。
【請求項8】
前記一方の分配流路を複数の前記分割領域に仕切る前記仕切板と、前記他方の分配流路を複数の前記分割領域に仕切る前記仕切板とが、互いに線対称な形状である、請求項7記載の冷媒分配器。
【請求項9】
前記分配流路が、前記分岐管から流入した冷媒が突き当たる窪み部を有する、請求項1乃至8のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項10】
前記分配流路が、流路幅が狭まる絞り部を有している、請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項11】
前記分配流路が、前記分岐管から冷媒が流入する流入方向と、前記仕切空間に冷媒が流出する流出方向とが交差するように構成されている、請求項1乃至10のうち何れか一項に記載の冷媒分配器。
【請求項12】
請求項1乃至11のうち何れか一項に記載の冷媒分配器を備える、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒分配器及びこの冷媒分配器を備える熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器としては、特許文献1に示すように、蒸発器性能を向上させるべく、多穴扁平管等の複数本の細径管を利用したものがある。
【0003】
このような細径管を利用して大型の室外機を構成する場合、細径管の長尺化に伴う圧力損失の極大化が問題となり、これを解決するためには、細径管の利用本数を多くするための多パス化が必要となる。
【0004】
ところが、このような多パス化した構成であると、それぞれのパスに対する偏流の影響で性能が低下するリスクが増大することから、それぞれのパスに均等分流することが重要になることがある。
【0005】
また、多パス化した構成を大型の上吹き室外機に適用すると、多数本の細径管が上下多段に並び設けられ、高さ方向のサイズが大きくなるので、高さ方向に沿った風速分布が生じる。これにより、ファンに近い上部では風速が速く、その分熱交換を効率良く行うことができ、一方で、ファンから遠い下部では風速が遅く、多量の冷媒を供給したところで全てを熱交換できるとは限らない。
【0006】
このことから、それぞれの細径管に供給するべき必要な冷媒量は、風速分布に応じて異なるので、効率的な熱交換を行うためには、それぞれの細径管に適切な冷媒量を供給する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す分配器は、ヘッダに流入してから分岐穴までの距離が短く、分流比が安定しにくい。また、ひとつの分岐穴を通過後に複数の高さの伝熱管に流入するため、風速分布に応じたきめ細かな分流調整ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6213362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題を一挙に解決すべくなされたものであり、複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配できるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る冷媒分配器は、主管を通過した冷媒を複数本の伝熱管に分配する冷媒分配器であって、前記主管から分岐した複数本の分岐管が接続されるとともに、互いに独立した少なくとも2本の分配流路と、前記複数本の伝熱管が接続されるとともに、これらの伝熱管に対応する複数の仕切空間に仕切られたヘッダカバーとを備え、一方の前記分配流路が、所定数の前記仕切空間に冷媒を供給し、他方の前記分配流路が、前記所定数の仕切空間に冷媒を供給することなく、前記所定数の仕切空間とは異なる位置にある前記仕切空間に冷媒を供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
このように構成された冷媒分配器であれば、他方の分配流路を流れる冷媒は、所定数の仕切空間とは異なる位置にある仕切空間に供給されるので、この供給先の仕切空間までを通り越す間を冷媒の助走区間とすることができる。
このように助走区間を設けることにより、気液冷媒の偏流を起こりにくくすることができ、気液冷媒の流れが安定化するので、複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配することが可能となる。
【0012】
前記分配流路と前記仕切空間とを連通させる複数の開口が列状に形成された開口形成部材を備え、前記開口形成部材の前記開口が列状に形成れている穴区間の上流側に、これらの開口に向かう冷媒の流れを付勢する助走区間が設けられていることが好ましい。
これならば、開口形成部材に設けた助走区間により、気液冷媒の偏流を起こりにくくすることができるうえ、開口の大きさを適宜設定することにより、それぞれの伝熱管に供給する冷媒の供給量を例えば風速分布に応じて異ならせたり、それぞれの伝熱管に均等分流させたりすることができる。
【0013】
上述した作用効果、すなわち複数本の伝熱管に冷媒を適切な供給量に分配できるといった作用効果がより顕著に発揮される実施態様としては、前記複数の開口の一部又は全部が、互いに異なる大きさであることが好ましい。
このような構成であれば、上下多段に並び設けられた伝熱管それぞれに供給する冷媒を、風速分布に応じた適切な冷媒量に制御することができ、ひいては熱交換性能の向上を図れる。
【0014】
冷媒の偏流をより起こりにくくするためには、前記助走区間の長さが、前記分配流路の水力直径の10倍以上であることが好ましい。
【0015】
上述した作用効果をより顕著に発揮される実施態様としては、前記分配流路が、冷媒を下方から上方に向かって流す態様を挙げることができる。
【0016】
より具体的な実施態様としては、前記分配流路が、前記分岐管それぞれに対応した複数の分割領域に分割されており、前記分岐管から対応する前記分割領域に流入した冷媒が、複数の前記仕切空間に供給される態様を挙げることができる。
これならば、それぞれの分岐管から分割領域に流入した冷媒を、偏流が起こりにくくしつつ仕切空間に供給することができる。
【0017】
前記ヘッダカバーを複数の前記仕切空間に仕切る複数枚の仕切板を備え、前記仕切板が、前記分配流路を複数の前記分割領域に仕切っていることが好ましい。
これならば、仕切板を仕切空間の仕切りとして用いるとともに、分割領域の仕切りとしても兼用しているので、部品点数の削減を図れる。
【0018】
前記一方の分配流路を複数の前記分割領域に仕切る前記仕切板と、前記他方の分配流路を複数の前記分割領域に仕切る前記仕切板とが、互いに線対称な形状であることが好ましい。
これならば、仕切板を表裏反転させることで、一方の分配流路及び他方の分配流路の双方に用いることができ、部品点数のさらなる削減を図れる。
【0019】
前記分配流路が、前記分岐管から流入した冷媒が突き当たる窪み部を有することが好ましい。
これならば、窪み部に突き当たって跳ね返る冷媒により、分岐管から流入する冷媒の慣性力を打ち消すことができる。
【0020】
前記分配流路が、流路幅が狭まる絞り部を有していることが好ましい。
これならば、絞り部に近い位置にある伝熱管に冷媒が流れすぎることを防ぐことができる。
【0021】
前記分配流路が、前記分岐管から冷媒が流入する流入方向と、前記仕切空間に冷媒が流出する流出方向とが交差するように構成されていることが好ましい。
これならば、冷媒の流入方向の慣性力の大小に関わらず、流出方向には予め設計した量の冷媒を流すことが容易になる。
【0022】
また、本発明に係る熱交換器は、上述した冷媒分配器を備えることを特徴とするものであり、このような熱交換器によれば、上述した冷媒分配器と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0023】
このように構成した本発明によれば、複数本の伝熱管それぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態における冷媒分配器を備える熱交換器の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態における冷媒分配器の分解斜視図。
図3】同実施形態におけるヘッダカバーの構成を示す模式図。
図4】同実施形態における流路形成部材の構成を示す模式図。
図5】同実施形態における流路形成部材の構成を示す模式図。
図6】同実施形態における開口形成部材の構成を示す模式図。
図7】同実施形態における冷媒分配器の構成を示す模式図。
図8】同実施形態における分配流路の構成を示す模式図。
図9】同実施形態における分配流路の断面積に関する実験データ。
図10】同実施形態における仕切板の構成を示す模式図。
図11】その他の実施形態における分配流路の構成を示す模式図。
図12】その他の実施形態における分配流路の構成を示す模式図。
図13】その他の実施形態における冷媒分配器の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る冷媒分配器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
本実施形態に係る冷媒分配器100は、図1に示すように、空気調和機の熱交換器Xを構成するものであり、例えば大型の上吹き型の室外機に用いられるものである。ただし、本発明に係る冷媒分配器100は、横吹き型の室外機に用いられても良いし、室内機に用いられても良い。
【0027】
熱交換器Xは、多数本の伝熱管たる細径管Tと、熱交換器Xに流入する冷媒を多数本の細径管Tに分配する冷媒分配器100とを備えたものであり、ここでは複数本の細径管Tたる多穴扁平管が上下多段に並び設けられている。
【0028】
冷媒分配器100は、図1及び図2に示すように、熱交換器Xの上流側に設けられた主管Zを流れる冷媒を、上述した複数本の細径管Tに分配するものであり、上流側に主管Zから分岐した複数本の分岐管Z1が接続されるとともに、下流側に多数本の細径管Tが接続される。
【0029】
より具体的に説明すると、冷媒分配器100は、図1及び図2に示すように、細径管Tが接続されるヘッダカバーHと、分岐管Z1が接続される流路形成部材10と、ヘッダカバーH及び流路形成部材10の間に介在する開口形成部材20とを備えている。
【0030】
以下、各部材について詳細を述べる。
【0031】
<ヘッダカバーH>
ヘッダカバーHは、図3(A)、(B)に示すように、複数枚の仕切板Pにより、細径管Tが接続される複数の仕切空間Sに仕切られるものである。
【0032】
このヘッダカバーHは、細径管Tの配列方向(ここでは、上下方向)に沿って延びる長尺状のものであり、長手方向と直交する断面形状が例えば半円形状などの部分円形状をなす。このように、ヘッダカバーHを断面部分円形状にすることにより、断面矩形状のものに比べて耐圧強度が向上し、薄肉化による軽量化や低コスト化を図れる。ただし、ヘッダカバーHの形状はこれに限らず、長手方向と直交する断面形状が例えば矩形状、三角形状、又は多角形状をなすものなどであっても良い。
【0033】
ヘッダカバーHの外周面には、図3(A)に示すように、仕切板Pが挿し込まれる第1スリットt1と、細径管が挿し込まれる第2スリットt2とが形成されている。具体的は、複数の第1スリットt1が、ヘッダカバーHの長手方向(ここでは、上下方向)に沿って例えば等間隔などの所定間隔で多段に設けられており、互いに隣り合う第1スリットt1の間それぞれに第2スリット2が設けられている。
【0034】
そして、図3(B)に示すように、このヘッダカバーHを後述する開口形成部材20に取り付けるとともに、複数の第1スリットt1それぞれに仕切板Pを差し込むことで、ヘッダカバーHの内部が互いに独立した複数の仕切空間Sに仕切られる。そして、第2スリットt2を介して仕切空間Sのそれぞれに1又は複数本の細径管Tが接続される。
【0035】
<流路形成部材10>
流路形成部材10は、図4に示すように、後述する開口形成部材20に取り付けられることで冷媒が供給される分配流路Lを形成するものであり、図1に示すように、複数本の分岐管Z1が接続される。
【0036】
この流路形成部材10は、細径管Tの配列方向(ここでは、上下方向)に沿って延びる長尺状のものであり、後述する開口形成部材20に取り付けられることで、この開口形成部材20と流路形成部材10とに挟まれたスペースが分配流路Lとして形成される。
【0037】
より具体的に説明すると、この流路形成部材10は、図4に示すように、開口形成部材20に対向する面を凹ませてあり、この凹み11が開口形成部材20に塞がれることで分配流路Lが形成される。なお、分配流路Lの形状は特に限定されるものではないが、例えば、流れ方向と直交する断面形状が矩形状又は部分円形状をなすものを挙げることができ、ここでの分配流路Lは、冷媒を下方から上方に向かって流す流路である。
【0038】
本実施形態では、図4に示すように、一対の流路形成部材10により、互いに独立した2本の分配流路Lが形成されている。以下では、これらを区別する場合に、一対の流路形成部材10の一方を第1流路形成部材10aといい、他方を第2流路形成部材10bという。また、第1流路形成部材10aが形成する分配流路Lを第1分配流路Laといい、第2流路形成部材10bが形成する分配流路Lを第2分配流路Lbという。
【0039】
第1流路形成部材10aは、図5に示すように、分岐管Z1が取り付けられる流入口10Pを有しており、この流入口10Pに分岐管Z1を流れる冷媒が流入する。本実施形態では、複数の流入口10Pが、第1流路形成部材10aの長手方向に沿って、例えば所定間隔で設けられている。なお、所定間隔は、等間隔であっても良いし、例えば上方に向かうにつれて徐々に長くなる又は短くなるような規則的に変わる間隔であっても良い。
【0040】
第2流路形成部材10bは、図5に示すように、第1流路形成部材10aとは別の分岐管Z1が取り付けられる流入口10Qを有しており、この流入口10Qに分岐管Z1を流れる冷媒が流入する。本実施形態では、複数の流入口10Qが、第2流路形成部材10bの長手方向に沿って、例えば所定間隔で設けられている。なお、所定間隔は、等間隔であっても良いし、例えば上方に向かうにつれて徐々に長くなる又は短くなるような規則的に変わる間隔であっても良い。
【0041】
上述した構成において、図5に示すように、第1流路形成部材10aの流入口10Pと、第2流路形成部材10bの流入口10Qとは、互いに異なる高さに設けられており、言い換えれば、上下方向に沿った位置が互い違いとなるような千鳥状に配置されている。ただし、第1流路形成部材10aの流入口10Pのうち最下部に位置するものと、第2流路形成部材10bの流入口10Qのうち最下部に位置するものとは、同じ又はほぼ同じ高さに設けられている。
【0042】
<開口形成部材20>
開口形成部材20は、図2及び図6に示すように、上述したヘッダカバーHと流路形成部材10との間に介在するものであり、分配流路Lと仕切空間Sとを連通させる複数の開口Oが形成されたものである。
【0043】
この開口形成部材20は、細径管Tの配列方向(ここでは、上下方向)に沿って延びる長尺状のものである。
【0044】
より具体的に説明すると、この開口形成部材20は、長尺板状のものであり、一方の面にはヘッダカバーHが取り付けられる第1取付箇所21が設けられており、他方の面には流路形成部材10が取り付けられる第2取付箇所22が設けられている。
【0045】
第1取付箇所21は、ヘッダカバーHの周方向両端部である自由端部が嵌め込まれる例えば凹部であり、第2取付箇所22は、流路形成部材10の幅方向両端部である自由端部が嵌め込まれる凹部である。ただし、第1取付箇所21や第2取付箇所22の形状はこれに限らず適宜変更して構わない。
【0046】
本実施形態の開口形成部材20には、第1分配流路La及び仕切空間Sを連通する開口Oである第1開口Oaと、第2分配流路Lb及び仕切空間Sを連通する開口Oである第2開口Obとが形成されている。
【0047】
第1開口Oaは、第1流路形成部材10aの凹み11に臨む位置に設けられており、ここでは、列状に配置された複数個の第1開口Oaからなる第1開口群O1が、上下方向に沿って所定間隔で複数群設けられている。
【0048】
1つの第1開口群O1に着目した場合、この第1開口群O1を構成する複数の第1開口Oaは、互いに同じ大きさであっても良いし、一部又は全部が互いに異なる大きさであっても良い。
これらの第1開口Oaを互いに異なる大きさにする場合、上流側から下流側に向かって徐々に小さく又は大きくしても良く、大きさを規則的に変えても良いし、不規則に変えても良い。また、第1開口群O1のうち最も上流側(すなわち一番下)に位置する第1開口Oaをその他の第1開口Oaよりも大きくしても良い。
【0049】
第1開口Oaの径寸法(直径)に関してより詳細に述べると、第1分配流路Laの断面積と第1開口Oaの断面積の比率が2%以上60%以下の範囲内であることが好ましく、5%以上40%以下の範囲内であることが更に好ましい。また、一部又は全部の第1開口Oaの径寸法が異なる場合は、第1分配流路Laの断面積と第1開口Oaの平均断面積の比率が10%以上30%以下の範囲内であることが好ましい。
このような断面積比率であれば、第1分配流路Laから第1開口Oaを流れる冷媒に、十分な圧力損失がかかり、かつ、第1分配流路Laと第1開口Oaの圧力損失のバランスを適切に保つことができる。
【0050】
第2開口Obは、第1開口Oaから開口形成部材20の幅方向に離れた箇所であって、第2流路形成部材10bの凹み11に臨む位置に設けられており、ここでは、列状に配置された複数個の第2開口Obからなる第2開口群O2が、上下方向に沿って所定間隔で複数群設けられている。
【0051】
1つの第2開口群O2に着目した場合、この第2開口群O2を構成する複数の第2開口Obは、互いに同じ大きさであっても良いし、一部又は全部が互いに異なる大きさであっても良い。
これらの第2開口Obを互いに異なる大きさにする場合、上流側から下流側に向かって徐々に小さく又は大きくしても良く、大きさを規則的に変えても良いし、不規則に変えても良い。また、第2開口群O2のうち最も上流側(すなわち一番下)に位置する第2開口Obをその他の第2開口Obよりも大きくしても良い。
【0052】
第2開口Obの径寸法(直径)に関してより詳細に述べると、第2分配流路Lbの断面積と第2開口Obの断面積の比率が2%以上60%以下の範囲内であることが好ましく、5%以上40%以下の範囲内であることが更に好ましい。また、一部又は全部の第1開口Obの径寸法が異なる場合は、第2分配流路Lbの断面積と第2開口Obの平均断面積の比率が10%以上30%以下の範囲内であることが好ましい。
このような断面積比率であれば、第2分配流路Lbから第2開口Obを流れる冷媒に、十分な圧力損失がかかり、かつ、第2分配流路Lbと第2開口Obの圧力損失のバランスを適切に保つことができる。
【0053】
これらの第1開口群O1と第2開口群O2とは、図6に示すように、互いに異なる高さに設けられており、言い換えれば、上下方向に沿った位置が互い違いとなるような千鳥状に配置されている。すなわち、互いに隣り合う第1開口群O1の間に、第2開口群O2を構成する第2開口Obの高さ位置が設定されており、互いに隣り合う第2開口群O2の間に、第1開口群O1を構成する第1開口Oaの高さ位置が設定されている。
【0054】
上述した構成において、図7(A)、(B)に示すように、開口形成部材20の一方の面にヘッダカバーHを取り付けて、ヘッダカバーHの第1スリットt1に仕切板Pを差し込むことにより、複数の仕切空間Sが形成され、開口形成部材20の他方の面に一対の流路形成部材10を取り付けることにより、互いに独立した2つの分配流路Lが形成される。
【0055】
そして、本実施形態の冷媒分配器100は、図8に示すように、上述した2つの分配流路Lのうち、一方の分配流路Lが、所定数の仕切空間Sに冷媒を供給し、他方の分配流路Lが、これら所定数の仕切空間Sに冷媒を供給することなく、これら所定数の仕切空間Sを通り越した位置にある仕切空間Sに冷媒を供給するように構成されている。
なお、図8では、説明の便宜上、ヘッダカバーH、流路形成部材10、及び開口形成部材20が分離された状態において、分配流路Lを表現してある。
【0056】
より具体的に説明すると、上述した開口形成部材20には、図8に示すように、開口Oが列状に形成されている穴区間W1と、この穴区間W1の上流側に設定されており、開口Oに向かう冷媒の流れを付勢する助走区間W2とが設けられている。
【0057】
この助走区間W2は、開口Oが形成されていない区間であり、言い換えれば、互いに隣り合う穴区間W1の間に設定された区間である。
【0058】
助走区間W2の長さは、分配流路Lの水力直径の10倍以上であることが好ましく、同水力直径の20倍以上であることがより好ましい。
なお、ここでいう助走区間W2の長さは、流入口10P、10Qから、この流入口10P、10Qに流入した冷媒が流出する開口Oのうち最も上流側に位置する開口Oまでの離間距離であり、より詳細には、流入口10P、10Qの中心から、この流入口10P、10Qに対して最も上流側に位置する開口Oの中心までの離間距離である。
【0059】
なお、分配流路Lの断面積は、8mm以上16mm以下であることが好ましい。何故ならば、分配流路Lの断面積が16mmを超えると、冷媒が低流速のときに気液分離がおきて、分流特性が悪くなることが懸念され、分配流路Lの断面積が8mmを下回ると、冷媒が高流速のときに圧力損失が大きくなりすぎて、圧力変動による分流特性の悪化を招く懸念があるからである(図9参照)。
【0060】
分配流路Lの断面積が上述した8mm以上16mm以下である場合、助走区間W2は、1mm以上100mm以下であることが好ましく、5mm以上100mm以下であることがより好ましい。
助走区間W2をこの範囲に収めることにより、流入口10P、10Qに対して最も上流側に位置する開口Oに冷媒が流れ過ぎることを抑制することができ、流入口10P、10Qに流入する冷媒量にかかわらず、安定した分配比を得ることが可能となる。
【0061】
本実施形態では、上述したように、第1開口Oa及び第2開口Obそれぞれが列状に配置されていることから、図8に示すように、第1開口Oaが列状に形成されている穴区間W1が第1穴区間W1aとして設定されており、互いに隣り合う第1穴区間W1aの間の助走区間W2が第1助走区間W2aとして設定されている。
【0062】
また、第2開口Obが列状に形成されている穴区間W1が第2穴区間W1bとして設定されており、互いに隣り合う第2穴区間W1bの間の助走区間W2が第2助走区間W2bとして設定されている。
【0063】
そして、第1助走区間W2aと第2助走区間W2bとは、互いに異なる高さに設けられており、言い換えれば、上下方向に沿った位置が互い違いとなるような千鳥状に配置されている。
【0064】
第1助走区間W2aと第2助走区間W2bとは、互いに同じ長さであっても良いし、互いに異なる長さであっても良い。また、複数の第1助走区間W2aは、それぞれ互いに同じ長さであっても良いし、一部又は全部が互いに異なる長さであってもよい。複数の第2助走区間W2bに関しても、それぞれ互いに同じ長さであっても良いし、一部又は全部が互いに異なる長さであってもよい。
【0065】
かかる構成において、本実施形態の分配流路Lは、図8に示すように、複数の分割領域Dに分割されており、分割領域Dはそれぞれ、1つの穴区間W1と、この穴区間W1に対応する助走区間W2とに臨んでいる。
【0066】
分割領域Dは、それぞれが1つの流入口10P、10Qに連通しており、言い換えれば、それぞれが1本の分岐管Z1に対応して設けられている。
【0067】
この構成により、分岐管Z1から対応する分割領域Dに流入した冷媒が、分割領域Dを下方から上方に向かって流れた後、開口形成部材20に形成された複数の開口Oを介して複数の仕切空間Sに供給される。
【0068】
本実施形態では、図8に示すように、上述した仕切板Pが、第1分配流路Laを複数の第1分割領域Daに分割するとともに、第2分配流路Lbを複数の第2分割領域Dbに分割している。
【0069】
この仕切板Pは、分配流路Lの途中を塞ぐことで、その上流側と下流側とを別々の分割領域に分割しており、具体的には、分配流路Lに挿し込まれて塞ぐ塞ぎ部P1を有している。
【0070】
より具体的に説明すると、これらの仕切板Pとしては、図10に示すように、第1分配流路La及び第2分配流路Lbの両方を閉塞する第1の仕切板Pa、第1分配流路Laを閉塞するとともに第2分配流路Lbを開放する第2の仕切板Pb、第1分配流路Laを開放するとともに第2分配流路Lbを閉塞する第3の仕切板Pc、及び第1分配流路La及び第2分配流路Lbの両方を開放する第4の仕切板Pdが用いられている。
【0071】
そして、ここでは第1分配流路Laを複数の第1分割領域Daに分割する第2の仕切板Pbと、第2分配流路Lbを複数の第2分割領域Dbに分割する第3の仕切板Pcとが、表裏を反転させた形状である。すなわち、第2の仕切板Pbと、第3の仕切板Pcとが、互いに線対称な形状であり、言い換えれば双方が互いに鏡像対称な形状をなす。
【0072】
このように構成された冷媒分配器100によれば、2本の分配流路Lのうち、一方の分配流路Lが、所定数の仕切空間Sに冷媒を供給し、他方の分配流路Lが、それら所定数の仕切空間Sを通り越した位置にある仕切空間Sに冷媒を供給するので、この供給先の仕切空間Sまでを冷媒の助走区間W2とすることができる。
このように助走区間W2を設けることにより、気液冷媒の偏流を起こりにくくすることができ、気液冷媒の流れが安定化するので、細径管Tにも適切な供給量に分配することができ、ひいては複数本の細径管Tそれぞれに供給される冷媒を適切な供給量に分配することが可能となる。
【0073】
仮に、上述した助走区間W2が設けられていない構成であると、気液冷媒のうち液冷媒の殆どが上方の仕切空間Sまでは到達しにくく、下方の仕切空間Sに流れ込んでしまい、これによる偏流が生じる。
これに対して、本実施形態のように助走区間W2を設けるとともに、この助走区間W2によって気液冷媒の流れを上向きに方向転換することにより、液冷媒には上向きの慣性力が与えられる。これにより、液冷媒が、下方の仕切空間Sのみならず、上方の仕切空間Sにも流れ込むようになり、その結果、偏流を起こりにくくすることができる。
【0074】
また、それぞれの穴区間W1に形成された開口Oの大きさを適宜設定することにより、それぞれの細径管Tに供給する冷媒の供給量を例えば風速分布に応じて異ならせたり、それぞれの細径管Tに均等分流させたりすることができる。
【0075】
さらに、ヘッダカバーHを複数の仕切空間Sに仕切る複数枚の仕切板Pが、分配流路Lを複数の分割領域Dに仕切っているので、仕切板Pを仕切空間Sの仕切りとして用いるとともに、分割領域Dの仕切りとしても兼用しており、部品点数の削減を図れる。
【0076】
そのうえ、第1分配流路Laを複数の第1分割領域Daに仕切る仕切板Pbと、第2分配流路Lbを複数の第2分割領域Dbに仕切る仕切板Pcとが、表裏を反転させたものであるので、部品点数のさらなる削減を図れる。
【0077】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0078】
例えば、分配流路Lとしては、図11に示すように、分岐管Z1から流入した冷媒が突き当たる窪み部L1を有することが好ましい。
これならば、窪み部L1に突き当たって跳ね返る冷媒により、分岐管Z1から流入する冷媒の慣性力を打ち消すことができる。
なお、ここでは流路形成部材10の下端部に接続された分岐管Z1に対して、窪み部L1を形成しているが、その他の分岐管Z1に対しても窪み部L1を形成しても構わない。その場合、助走区間W2を前記実施形態で述べた長さよりも短くしても良い。
【0079】
また、分配流路Lは、図12(A)に示すように、流路幅が狭まる絞り部L2を有していても良い。
これならば、絞り部L2に近い位置にある細径管Tに冷媒が流れすぎることを防ぐことができる。
なお、ここでは流路形成部材10の下端部に接続された分岐管Z1に対して、絞り部L2を形成しているが、その他の分岐管Z1に対しても絞り部L2を形成しても構わない。その場合、助走区間W2を前記実施形態で述べた長さよりも短くしても良い。
【0080】
さらに、分配流路Lは、図12(B)に示すように、分岐管Z1から冷媒が流入する流入方向と、仕切空間Sに冷媒が流出する流出方向とが交差するように、傾斜部L3を設けても良い。
これならば、冷媒の流入方向の慣性力の大小に関わらず、流出方向には予め設計した量の冷媒を流すことが容易になる。
なお、ここでは流路形成部材10の下端部に接続された分岐管Z1に対して、傾斜部L3を設けているが、その他の分岐管Z1に対しても傾斜部L3を形成しても構わない。その場合、助走区間W2を前記実施形態で述べた長さよりも短くしても良い。
【0081】
前記実施形態では、一対の流路形成部材10により2本の分配流路Lを形成していたが、3つ以上の流路形成部材10を用いて3本以上の分配流路Lを形成しても良い。
【0082】
開口形成部材20は、前記実施形態ではヘッダカバーHと流路形成部材10との間に介在するものであったが、図13に示すように、ヘッダカバーH及び流路形成部材10の両方が、開口形成部材20の一方の面に取り付けられても良い。
この場合、仕切板Pとしては、同図13に示すように、2本の分配流路Lのうちの一方のみに連通する流路穴P2を有しているものを挙げることができる。
【0083】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
100・・・冷媒分配器
X ・・・熱交換器
T ・・・細径管
Z ・・・主管
Z1 ・・・分岐管
H ・・・ヘッダカバー
P ・・・仕切板
S ・・・仕切空間
10 ・・・流路形成部材
L ・・・分配流路
20 ・・・開口形成部材
O ・・・開口
W1 ・・・穴区間
W2 ・・・助走区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13