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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080722
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230602BHJP
   C09C 1/40 20060101ALI20230602BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20230602BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230602BHJP
【FI】
C09D201/00
C09C1/40
C09C1/36
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194217
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳也
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA22
4J037AA25
4J037AA27
4J037DD05
4J037DD09
4J037FF02
4J038EA011
4J038HA161
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038NA01
4J038NA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ミリ波、近赤外波のいずれであっても、黒の下地において発色性の高い塗膜を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のコアシェル構造のフィラーを含有する塗膜であって、該フィラーは、屈折率1.3~1.9の無機酸化物Aをコアとし、金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bから選択される少なくとも一種の化合物をシェルとしており、該塗膜の赤外線の光線透過率は60%以上、及びミリ波の透過率は70%以上であり、以下の条件1を満たす塗膜。
(条件1)L値が4の基材の上に塗装された場合の塗膜のFI値が5~40であり、かつCIE1976L色空間で定義されるLが20~60、Cが1.5~30である。FI値は、下記式(1)によって算出される。L15°、L45°、L110°は、多角度測色計によって測定した15°、45°、110°の値を示す。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のコアシェル構造のフィラーを含有する塗膜であって、該ファイラーは、屈折率1.3~1.9の無機酸化物Aをコアとし、金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bから選択される少なくとも一種の化合物をシェルとしており、該塗膜の赤外線の光線透過率は60%以上及びミリ波の透過率は70%以上であり、以下の条件1を満たす塗膜。
(条件1)
値が4の基材の上に塗装された場合の塗膜のFI値が5~40であり、かつCIE1976L色空間で定義されるLが20~60、Cが1.5~30である。
FI値は、下記式(1)によって算出される。L15°、L45°、L110°は、多角度測色計によって測定した15°、45°、110°の値を示す。
【数1】
式(1)
【請求項2】
前記無機酸化物Aが、アルミナ、天然マイカおよび合成マイカから選択され、前記金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bが酸化チタンである、請求項1記載の塗膜。
【請求項3】
前記無機酸化物Aが、ガラス、アルミナ、天然マイカおよび合成マイカから選択され、前記金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bが銀である、請求項1記載の塗膜。
【請求項4】
前記フィラーの平均アスペクト比が10~100であり、前記フィラーの体積平均粒子径が5~200μmであり、前記シェルの厚みが0.4~200nmである請求項1~3いずれかに記載の塗膜。
【請求項5】
前記金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bの屈折率が、2.0~3.0である請求項1~4いずれかに記載の塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線、ミリ波等を透過する塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転化技術の開発が盛んにおこなわれているが、自動運転化を可能にするためにはミリ波レーダーや赤外レーダー等のセンサを自動車の各部に設置する必要がある。現在、赤外レーダーには赤外線透過性の観点から透明カバーが使用され、これまでは、めっき調のデザインが主流であった。
一方で、加飾性(着色性)を付与させるために、赤外線透過する着色顔料や干渉パール顔料を用いる方法も検討されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-060698号公報
【特許文献2】特開2004-198617号公報
【特許文献3】特開2019-168264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサに取り付けられる透明カバーの奥は暗室になっているため、その表面に形成された塗膜は黒を下地にした外観になることから、透明カバーの表面に意匠性の高い塗膜を形成するためには、発色性の高い塗膜が必要となる。しかしながら、黒の下地では、白色の下地に比べ発色性が得られにくいという課題があった。特に、ミリ波、近赤外波の両方を透過するレーダーでの要望が強かった。
【0005】
本発明は、ミリ波、近赤外波のいずれであっても、黒の下地でおいて発色性の高い塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、下記によって達成された。
【0007】
1. 少なくとも1種のコアシェル構造のフィラーを含有する塗膜であって、該フィラーは、屈折率1.3~1.9の無機酸化物Aをコアとし、金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bから選択される少なくとも一種の化合物をシェルとしており、該塗膜の赤外線の光線透過率は60%以上及びミリ波の透過率は70%以上であり、以下の条件1を満たす塗膜。
(条件1)
値が4の基材の上に塗装された場合の塗膜のFI値が5~40であり、かつCIE1976L色空間で定義されるLが20~60、Cが1.5~30である。
FI値は、下記式(1)によって算出される。L15°、L45°、L110°は、多角度測色計によって測定した15°、45°、110°の値を示す。
【0008】
【数1】
式(1)
2. 前記無機酸化物Aが、アルミナ、天然マイカおよび合成マイカから選択され、前記無機酸化物Bが酸化チタンである、前記1記載の塗膜。
3. 前記無機酸化物Aが、ガラス、アルミナ、天然マイカおよび合成マイカから選択され、前記金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bが銀である、前記1記載の塗膜。
4. 前記フィラーの平均アスペクト比が10~100であり、前記フィラーの体積平均粒子径が5~200μmであり、前記シェルの厚みが0.4~200nmである前記1~3いずれかに記載の塗膜。
5. 前記金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bの屈折率が、2.0~3.0である前記1~4いずれかに記載の塗膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、黒の下地であっても発色性の高い塗膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のFI値を算出するための式(1)の概念を示す図である。
図2】本発明の実施態様の一つである自動車用近赤外センサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<塗膜>
本発明の塗膜は、少なくとも1種のコアシェル構造のフィラーを含有する塗膜であって、該フィラーは、屈折率1.3~1.9の無機酸化物Aをコアとし、金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bから選択される少なくとも一種の化合物をシェルとしており、該塗膜の赤外線の光線透過率は60%以上及びミリ波の透過率は70%以上であり、以下の条件1を満たすことを特徴とする。
(条件1)
値が4の基材の上に塗装された場合の塗膜のFI値が5~40であり、かつCIE1976L色空間で定義されるLが20~60、Cが1.5~30である。Cは、√(|a|+|b|)で定義される。
FI値は、下記式(1)によって算出される。L15°、L45°、L110°は、多角度測色計によって測定した15°、45°、110°の値を示す。
【0012】
【数2】
式(1)
【0013】
<コアシェル構造のフィラー>
本発明のフィラーは、コアシェル構造を有しており、平均アスペクト比(平均粒子径/平均厚み)は10~100の扁平構造であり、体積平均粒子径は5~200μmであることが好ましく、10~50μmがより好ましい。シェルの屈折率はコアの屈折率よりも大きい。
【0014】
フィラーを構成するコアは、無機酸化物Aからなり、屈折率nは1.3~1.9である。例えば、ガラス(n:1.50~1.80)、酸化アルミニウム(n:1.68~1.76)、天然マイカ(n:1.59)、合成マイカ(n:1.54)等が挙げられる。酸化アルミニウム、合成マイカであることが好ましい。コアの体積平均粒子径は、5~200μmであることが好ましく、10~50μmがより好ましい。コアの平均アスペクト比が10~100であることが好ましい。
【0015】
フィラーを構成するシェルは、金属および屈折率n:1.9を超える無機酸化物Bから選択される少なくとも一種の化合物からなる。金属としては銀、無機酸化物Bとしては、酸化チタン(n:2.50~2.74[ルチル型])、酸化ジルコニウム(n:2.20)、酸化錫(n:2.00)等が挙げられ、酸化チタンであることが好ましい。
【0016】
シェルは複数層あってもよく、その複数層の中に金属および屈折率1.9を超える無機酸化物Bから選択される少なくとも一種の化合物からなる層が少なくとも一層あればよい。屈折率は、2.0~3.0であることが好ましい。シェルの厚みは、0.4~200nmであることが好ましい。
【0017】
本発明のフィラーは、公知の材料を使用することができ、例えばメタシャインPSシリーズ、GPシリーズ、RCシリーズ、TCシリーズ、KCシリーズ(以上、日本板硝子(株)製)、XirallicT60シリーズ(メルク(株)製)、TWINCLEPEARLX、XA、XB、XC、XD、XE(日本光研工業(株)製)、クロマシャイン(東洋アルミ(株)製)等を使用することができる。
本発明のフィラーは、塗膜の0.1~5質量%含有し、好ましくは1~4質量%である。
【0018】
フィラーの顔料が0.1質量%より少ないと発色性が得られにくく、5質量%を超えると赤外線透過性やミリ波透過性が低くなる傾向がある。更には、本発明のフィラーは塗膜中に2種類以上混合することもでき、その混合比を調整することにより、様々な色調を表現することができる。
【0019】
<条件1>
条件1は、本発明の塗膜の観察角度によって色彩が変化するフリップフロップ性の程度を表す指標である。
本発明の塗膜は、L値が4の基材の上に塗装された場合、FI値が5~40であり、かつCIE1976L色空間で定義されるLが20~60、Cが1.5~30である。
FI値は、下記式(1)によって算出される。L15°、L45°、L110°は、多角度測色計によって測定した15°、45°、110°の値を示す。
【0020】
【数3】
式(1)
【0021】
FI値は、図1に示すように、塗膜1の表面に対して光が入射角45゜(該表面の垂線から45゜傾けた角度)入射したときの、受光角(正反射方向から光源側への傾き角度)45゜の反射光(45゜反射光)の明度指数L*45°と、受光角15゜の反射光(15゜反射光)の明度指数L*15°と、受光角110゜の反射光(110゜反射光)の明度指数L*110°とに基づいて式(1)によって求められる値である。
値が4であれば基材の材質に特に限定はないが、例えばABS板を使用することができる。
【0022】
FI値が5~40であり、好ましくは10~35であり、より好ましくは15~35である。CIE1976L色空間で定義されるLが20~60であり、好ましくは25~50である。Cが1.5~30であり、好ましくは3.0~30であり、より好ましくは5.0~30である。FI値は、多角度測色計によって測定することができ、例えばBYK-mac i(BYK-gardner社製)によって測定することができる。
【0023】
赤外線の光線透過率は60%以上であり、75%以上が好ましい。
ミリ波の透過率は70%以上であり、85%以上が好ましい。なお、ミリ波の透過率と減衰率との関係は以下の式(A)で示される。
式(A):減衰率(db)=20×log10(透過率(%)/100)
【0024】
<塗膜のフィラー以外の成分>
≪バインダー樹脂≫
本発明の塗膜は、フィラーをバインダー中に分散させた形態を有している。バインダーとしては、一般に知られている塗膜形成用のバインダー樹脂を使用することができる。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを使用でき、複数の樹脂が混合されていてもよい。
【0025】
硬化剤を使用することもでき、例えば、アルコキシメチロールメラミン樹脂、イソシアネート化合物又はブロックイソシアネート化合物、ポリ酸無水物やポリエポキシ化合物などを添加したり、溶剤の揮発時に膜を形成するポリマー(ニトロセルロース樹脂や高分子アクリル樹脂など)や空気中の酸素や湿気と反応して膜を形成するポリマー(アルキド樹脂など)を添加することもできる。
【0026】
バインダー樹脂の含有量は塗膜を形成する成分に対して、10~60質量%が好ましく、20~45質量%が更に好ましい。
【0027】
≪その他の成分≫
上記した成分以外にも、塗料業界で通常使用される添加剤、例えば、顔料、溶剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、消泡剤、表面調整剤、湿潤分散剤、レオロジーコントロール剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、防腐剤等を本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0028】
[顔料]
顔料としては、特に限定されず、塗料業界において一般的に使用される着色顔料(例えば、白色顔料)、防錆顔料、体質顔料等が挙げられる。
【0029】
着色顔料、防錆顔料、及び体質顔料の具体例としては、酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、縮合リン酸アルミニウム、メタホウ酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウム等の無機顔料や、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリン、ナフトールレッド、キナクリドンレッド、ベンズイミダゾロンイエロー、ハンザイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、及びジオキサジンバイオレット等の有機顔料が挙げられる。顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明のフィラーと併用する顔料の含有量は塗膜を形成する成分に対して、20質量%以下である。
【0031】
[溶媒]
溶媒としては有機溶媒が好ましく、ポリマー樹脂や硬化剤を溶解又は分散させ得る溶剤、例えば、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などを使用することができる。なお、溶剤は有機系溶剤に限定されず、無機系溶剤として水などを使用してもよい。
【0032】
<塗膜の製造方法>
本発明の塗膜は、フィラー、バインダー樹脂等を含有した塗料を、対象物に塗布、乾燥することによって製造することができる。塗布方法は特に限定されず、例えばエアスプレー塗布、エアレススプレー塗布、静電塗布、ロールコーター塗布、フローコーター塗布、ディップ塗布等を挙げることができる。
本発明の塗膜は、5~100μmの厚みであり、好ましくは8~20μmである。
【0033】
<塗膜の使用>
本発明の塗膜は、電磁波に対し透過性を有することから電磁波レーダー周辺の塗装用塗膜として優れている。電磁波としては波長が1~10mmのミリ波、0.83μm~3μmの近赤外線に有効である。
【0034】
本発明の塗膜の使用について、図2に示すような自動車用近赤外センサへの適用を例に説明する。
センサは、内部が黒色の筐体に近赤外発信機、受信機が収められており、発信・受信が同一方向の開口部からされるように配置されている。開口部には、カバーが取り付けられており、一般には意匠が施されている。
【0035】
カバーは、透明な樹脂、例えばポリカーボネート、シクロオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチレンテレフタレート等が使用できる。カバー表面は、耐傷性を持たせるためにハードコート層が設けられていることが好ましい。カバーの厚みは、1~4mmである。
【0036】
本発明の塗膜は、意匠性を施すために、カバーの裏面に配される。センサ内部が透けて見えないように、塗膜の発信機・受信機側には、隠蔽するための黒色層が設けられている。この黒色層の外側に配された塗膜の意匠は、白色層に比べ発色性が得られにくいが、本発明の塗膜は背面に黒色層が存在しても発色性が高く、優れた意匠性を創出することができる。
【実施例0037】
以下、具体的な例をもって、本発明を説明する。
<1.主剤、硬化剤の調製>
表1に示すように、容器にアクリル樹脂溶液1を48質量部、アクリル樹脂溶液2を18質量部、沈降防止剤7.5質量部、消泡剤0.02質量部、表面調整剤1.0質量部、キシレン10.0質量部、メチルエチルケトン15.5質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、主剤を調製した。
次に、ポリイソシアネート溶液1を17質量部、キシレン5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3質量部を順次仕込み、公知の製造方法により、硬化剤を調製した。
【0038】
表1に記載の原料は次の通りである。
1)アクリル樹脂溶液1(商品名:アクリディックWAU-139、DIC社製、不揮発分62.5質量%、水酸基価(溶液)50mg KOH/g、酸価(溶液)6mg KOH/g、Tg50℃)
2)アクリル樹脂溶液2(商品名:アクリディックAU-7005、DIC社製、不揮発分55質量%、水酸基価(溶液)38mg KOH/g、酸価(溶液)5.5mg KOH/g、Tg90℃)
3)粘性調整剤(商品名:BYK-410、BYK社製、不揮発分55質量%)
4)消泡剤(商品名:フローレンAC300、共栄社化学社製、アクリル系消泡剤、不揮発分77質量%)
5)表面調整剤(商品名:ディスパロンLC-915、楠本化成社製、ビニル系重合物とシリコーンとの混合物溶液、不揮発分10質量%)
6)ポリイソシアネート溶液1(商品名:スミジュールN-75、住化コベストロウレタン社製、不揮発分75質量%、NCO含有量16.5%、HDIビウレット)
【0039】
<2.評価用塗料の調製>
表2に従い、前記主剤を100.02質量部、前記硬化剤25質量部、コアシェル型フィラー1を1.17質量部、希釈溶剤35質量部を混合し、評価用塗料A-1を調製した。評価用塗料A-2~A-13についても同様に表2又は表3の配合に従い調製した。
また、表4に従い、前記主剤を100.02質量部、前記硬化剤25質量部、有機顔料分散液1を14.63質量部、希釈溶剤35質量部を混合し、評価用塗料B-1を調製した。評価用塗料B-2~B-5については表4の配合に従い調製した。
【0040】
表2~表4に記載の光輝顔料又は着色顔料は以下の通りである。
・コアシェル型フィラー1:メタシャイン ST-1018RYJ3(日本板硝子社製)
・コアシェル型フィラー2:Xirallic T60-20WNT(メルク社製)
・コアシェル型フィラー3:TWINCLEPEARL YXD-SO(日本光学工業社製)
・有機顔料分散液1:CZ-306(D)(イソインドリノン顔料分散液、日弘ビックス株式会社製、顔料濃度8質量%、固形分濃度20質量%)
・コアシェル型フィラー4:メタシャイン ST-1018RRJ3(日本板硝子社製)
・コアシェル型フィラー5:Xirallic T60-21WNT(メルク社製)
・コアシェル型フィラー6:TWINCLEPEARL RXD-SO(日本光学工業社製)
・有機顔料分散液2:CZ-115(D)(ジケトピロロピロール顔料分散液、日弘ビックス株式会社製、顔料濃度7質量%、固形分濃度20質量%)
・コアシェル型フィラー7:メタシャイン ST-1018RBJ3(日本板硝子社製)
・コアシェル型フィラー8:Xirallic T60-23WNT(メルク社製)
・コアシェル型フィラー9:TWINCLEPEARL BXD-SO(日本光学工業社製)
・有機顔料分散液3:CZ-661(D)(フタロシアニン顔料分散液、日弘ビックス株式会社製、顔料濃度8質量%、固形分濃度20質量%)
・コアシェル型フィラー10:メタシャイン ST-1018RGJ3(日本板硝子社製)
・コアシェル型フィラー11:Xirallic T60-24WNT(メルク社製)
・有機顔料分散液4:CZ-401(D)(フタロシアニン顔料分散液、日弘ビックス株式会社製、顔料濃度10質量%、固形分濃度5質量%)
・コアシェル型フィラー12:Xirallic T60-10WNT(メルク社製)
・コアシェル型フィラー13:メタシャイン ME-2025PSRE(日本板硝子社製)
・酸化チタン分散液:CZ-051(D)(日弘ビックス株式会社製、顔料濃度15質量%、固形分濃度25質量%)
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
<3.塗膜の形成方法>
評価用塗料A-1~A-13、評価用塗料B-1~B-5について、黒色ABS板(大きさ70×150×2mm、L値4、TP技研株式会社製)に、乾燥膜厚が15μmになるようにスプレー塗装にて垂直塗装、80℃で30分間セッティングし、実施例1~13、比較例1~5の塗装板を作製した。
【0046】
<4.塗膜性能の評価>
≪4-1 赤外線透過率の測定≫
分光スペクトルを紫外可視近赤外分光光度計V-770(日本分光株式会社製)によって測定し、λ=780~1000nmの透過率の平均値を計算した。測定結果を表5~9に示す。
【0047】
≪4-2 ミリ波透過率の測定≫
ミリ波透過率はフリースペース法を用いて次の通り評価した。
送受信アンテナを対向して配置し、その中心に実施例及び比較例で得られた塗膜が形成された基材を設置した。そして、信号発生器から出力した信号を送信側アンテナに入力し、受信側アンテナが到達した信号から透過減衰量を測定した。
評価基準は次のとおりである。70%以上は、実用的に問題がないレベルである。
○:76GHzにおけるミリ波透過率が85%以上である
△:76GHzにおけるミリ波透過率が70%以上~85%未満である
×:76GHzにおけるミリ波透過率が70%未満である
【0048】
≪4-3 塗膜のFI値の測定≫
「BYK-mac i」(商品名、BYK-gardner社製)によって測定した15°、45°、110°の値を用いて算出した。測定結果を表5~9に示す。
【0049】
≪4-4 CIE1976L色空間で定義されるL*、*、の測定≫
測定は、三刺激値直読式色差計「CR400」(コニカミノルタ社製)を用いて、光源としてC光源を用い、視野角2°、拡散照明受光方式(d/0)にて実施した。測定結果を表5~9に示す。
【0050】
≪4-5 G値の測定≫
「BYK-mac i」(商品名、BYK-gardner社製)によって測定した。測定結果を表5~9に示す。
【0051】
≪4-6 発色性の評価(目視)≫
実施例1~13、比較例1~5の塗装板において、目視にて発色性の評価を行った。
評価基準を以下に示す。評価結果を表5~9に示す。△以上が、実用上問題ないレベルである。
○:有彩色の色味がはっきりと認められる。
△:有彩色の色味が認められる。
×:有彩色の色味はほとんど感じられない。
【0052】
≪4-7 光輝感の評価≫
実施例1~13、比較例1~5の塗装板において、目視にて光輝感の評価を行った。
評価基準を以下に示す。評価結果を表5~9に示す。△以上が、実用上問題ないレベルである。
○:光輝感がはっきりと認められる。
△:光輝感が認められる。
×:光輝感はほとんど感じられない。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
表5~9から判るように、本発明の塗膜は、ミリ波、赤外波のいずれの透過率も高く、その上で意匠性も維持されている。
【符号の説明】
【0059】
1:L値が4の基材
2:塗膜
3:正反射光
4:15°反射光
5:45°反射光
6:入射光
7:110°反射光

100:自動車用近赤外センサ
101:発信機
102:センサ
103:暗箱
104:隠蔽層
105:加飾層
106:本発明の塗膜
107:透明樹脂カバー
108:ハードコート層
↑ :出射波
↓ :受信波
図1
図2