(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008076
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B43M 11/06 20060101AFI20230112BHJP
B43M 11/02 20060101ALI20230112BHJP
B43M 11/00 20060101ALI20230112BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B43M11/06
B43M11/02
B43M11/00 A
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111336
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】野村 亮太
(57)【要約】
【課題】ヘッド部を保護することができ、ヘッド部を露出させた使用姿勢において使用者がヘッド部を好適に視認し得る構成を備えたディスペンサを提供する。
【解決手段】ディスペンサである転写具は、ヘッド部である転写ヘッドWを保護する三次元的な形状をなすヘッドカバーBを備えたものである。ヘッドカバーBが、平面視において転写具本体Aに対して少なくとも横方向に位相がずれるように移動して転写ヘッドWを露出させた使用姿勢(U)を採り得るものとなっている。ヘッドカバーBは、転写具本体Aに対して、横回転可能に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部を保護する三次元的な形状をなすヘッドカバーを備えたディスペンサであって、
前記ヘッドカバーが、平面視においてディスペンサ本体に対して少なくとも横方向に位相がずれるように移動して前記ヘッド部を露出させた使用姿勢を採り得るものであるディスペンサ。
【請求項2】
前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体に対して回転可能に設けられている請求項1記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体に対して接離動作可能に支持されたものであり、且つ、前記ディスペンサ本体に対して近接する方向に付勢されている請求項1又は2記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体における上側の部位において回転可能に係り合っている請求項1、2又は3記載のディスペンサ。
【請求項5】
前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体に対して左右に回転可能に構成されている請求項1、2、3又は4記載のディスペンサ。
【請求項6】
前記ディスペンサ本体に対する前記ヘッドカバーの動きを案内するガイド機構が設けられている請求項1、2、3、4又は5記載のディスペンサ。
【請求項7】
前記ガイド機構が、前記ヘッドカバー又は前記ディスペンサ本体の何れか一方に設けられた突出部と、他方に設けられ前記突出部が当接し得る突設部当接部とを備えたものである請求項6記載のディスペンサ。
【請求項8】
前記突出部が前記ヘッドカバーに設けられたものであり、前記突出部当接部が前記ディスペンサ本体に設けられた案内溝である請求項7記載のディスペンサ。
【請求項9】
前記ヘッド部が、転写物を被転写面に転写させるものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のディスペンサ。
【請求項10】
前記転写物が糊である請求項9記載のディスペンサ。
【請求項11】
前記ディスペンサ本体が、先端部に前記ヘッド部が配設されたリフィルと、このリフィルにおける前記ヘッド部以外の部位を内部に収容し得る本体ケースとを備えている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載のディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転写ヘッドに対するゴミの付着等を抑制するために、キャップによって転写ヘッドをフルカバーできるように構成した転写具が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところが、従来のキャップは、転写具本体に対して縦方向に回転する構成をなしていた。そのため、従来のものでは、ペンケース等の収納具内においてキャップに対して外力が作用した場合には、当該キャップが勝手に開いてしまい、転写ヘッドを露出させてしまうという不具合があった。
【0004】
また、従来の転写具では、転写ヘッドを露出させる際に、キャップが転写具本体に対して縦方向に回転するとともに転写ヘッドの上側に退避するようになっている。そのため、従来のものでは、転写具本体の上側に退避したキャップが、使用者から見た場合の転写ヘッドに対する視認性を損なうものとなっていた。
【0005】
なお、以上の事情は、転写物を転写し得る転写具に限られたものでは無く、ヘッド部を通じて内容物を外部に出すことができるディスペンサ全般においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、ヘッド部を保護することができ、ヘッド部を露出させた使用姿勢において使用者がヘッド部を好適に視認し得る設計の自由度に優れたディスペンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、ヘッド部を保護する三次元的な形状をなすヘッドカバーを備えたディスペンサであって、前記ヘッドカバーが、平面視においてディスペンサ本体に対して少なくとも横方向に位相がずれるように移動して前記ヘッド部を露出させた使用姿勢を採り得るものであるディスペンサである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体に対して回転可能に設けられている請求項1記載のディスペンサである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体に対して接離動作可能に支持されたものであり、且つ、前記ディスペンサ本体に対して近接する方向に付勢されている請求項1又は2記載のディスペンサである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体における上側の部位において回転可能に係り合っている請求項1、2又は3記載のディスペンサである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記ヘッドカバーが、前記ディスペンサ本体に対して左右に回転可能に構成されている請求項1、2、3又は4記載のディスペンサである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記ディスペンサ本体に対する前記ヘッドカバーの動きを案内するガイド機構が設けられている請求項1、2、3、4又は5記載のディスペンサである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記ガイド機構が、前記ヘッドカバー又は前記ディスペンサ本体の何れか一方に設けられた突出部と、他方に設けられ前記突出部が当接し得る突設部当接部とを備えたものである請求項6記載のディスペンサである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記突出部が前記ヘッドカバーに設けられたものであり、前記突出部当接部が前記ディスペンサ本体に設けられた案内溝である請求項7記載のディスペンサである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記ヘッド部が、転写物を被転写面に転写させるものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のディスペンサである。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記転写物が糊である請求項9記載のディスペンサである。
【0019】
請求項11に記載の発明は、前記ディスペンサ本体が、先端部に前記ヘッド部が配設されたリフィルと、このリフィルにおける前記ヘッド部以外の部位を内部に収容し得る本体ケースとを備えている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載のディスペンサである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、ヘッド部を保護することができ、ヘッド部を露出させた使用姿勢において使用者がヘッド部を好適に視認し得る設計の自由度に優れたディスペンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図11】同実施形態におけるヘッドカバー支持部の説明用拡大図。
【
図12】同実施形態における軸部材の説明用拡大図。
【
図20】同実施形態におけるガイド機構の要部説明図。
【
図21】同実施形態におけるガイド機構の要部説明図。
【
図22】同実施形態におけるガイド機構の要部説明図。
【
図23】同実施形態におけるガイド機構の要部説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~23を参照して説明する。
【0023】
この実施形態は、本発明を、転写物である糊(図示せず)を用紙等の被転写面Zに対して転写するためのディスペンサである転写具に適用したものである。
【0024】
転写具は、先端部に糊を転写するためのヘッド部たる転写ヘッドWを有したディスペンサ本体たる転写具本体Aと、転写具本体Aに対して横方向に回転可能、且つ、接離動作可能に支持され転写ヘッドWを覆い隠す形状を有したヘッドカバーBとを備えている。
【0025】
転写具には、転写具本体Aに対するヘッドカバーBの動きを案内するガイド機構Cが設けられている。ヘッドカバーBは、転写具本体AとヘッドカバーBとの間に設けられたガイド機構Cに案内されて転写ヘッドWを被覆する被覆姿勢(Y)と、被覆姿勢(Y)に対して約90°横方向に旋回し転写ヘッドWを露出させた使用姿勢(U)との間で姿勢変更し得るものとなっている。
【0026】
以下、転写具について詳述する。
【0027】
<<転写具本体A>>
転写具本体Aは、内部にリフィルEが収容される収容空間sが形成された本体ケースDと、本体ケースDに対して回転可能に支持されるとともにヘッドカバーBに対して係合し得る軸部材Jと、先端部に転写ヘッドWが配設されたリフィルEと、本体ケースDとリフィルEとの間に設けられ繰り出しリールe2と巻き取りリールe3とを連動させる連動機構Fを備えている。リフィルEは、糊が添着された転写テープPを保持したものである。
【0028】
<本体ケースD>
本体ケースDには、内部に転写テープPを保持したリフィルEを収容し得る収容空間sが形成されている。本体ケースDは、リフィルEの左右に位置する左右の側壁h1、h2と、左右の側壁h1、h2における周縁部間に配設されリフィルEにおける上側、下側、及び、後側を覆う周壁Hsを備えている。
【0029】
本体ケースDの先端部には、転写テープPを転写ヘッドWの転写ローラーw1に導出するとともに当該転写ローラーw1を経由した転写テープPを本体ケースDの内部に導入するための開口部kが設けられている。本体ケースDの開口部kの前には、転写ヘッドWにおける転写ローラーw1を含んだ前部分が配設されている。換言すれば、転写ヘッドWの前部分は、本体ケースDよりも前に配設されている。本体ケースDは、リフィルEに設けられた転写ヘッドW以外の部位を収容空間sに収容し得るようになっている。
【0030】
本体ケースDは、リフィルEの左側、及び、リフィルEの上側・下側・後側の各主要部分を覆う主ケース部Hと、リフィルEの右側を覆うカバー部Iとを備えている。カバー部Iは、収容空間sを開閉し得るように主ケース部Hに対して着脱可能な構成をなしている。
【0031】
[主ケース部H]
主ケース部Hは、収容空間sに収容されたリフィルEにおける左側、上側、下側、及び、後側を覆う形態をなしている。すなわち、主ケース部Hは、起立姿勢をなす左の側壁h1と、左の側壁h1における周縁部から当該左の側壁h1に対して略直交する方向に延設された上壁h3、下壁h4、及び、後壁h5とによって構成された周壁Hsとを備えている。
【0032】
左の側壁h1の内面側には、リフィル本体e1に設けられたボスe12に嵌合する取付用の凸部h11と、巻き取りリールe3を位置決めする巻き取りリールe3位置決め突起h12と、クラッチ部材f2を介して繰り出しリールe2を支持し得る繰り出しリールe2支持軸h13を備えている。
【0033】
周壁Hsには、カバー部Iに設けられた複数の着脱用の係合爪tに対応させて、これら係合爪tが係合し得る凹陥状又は貫通孔状をなした係合部vが設けられている。
【0034】
周壁Hsを構成する上壁h3の前部には、ヘッドカバーBを支持するためのヘッドカバー支持部1が設けられている。
【0035】
以下、転写具本体Aに配設されたヘッドカバー支持部1について詳述する。
【0036】
ヘッドカバー支持部1は、外面側から見た場合に略左右対称形状をなしている。ヘッドカバー支持部1は、斜め前上方向を向く略フラットな上向面である上向き摺接面部1sと、上向き摺接面部1sよりも下に位置した溝底面を有してなり上向き摺接面部1sに対して下方に凹ませることにより設けられた概略E字状をなす突出部当接部である第一案内溝11と、第一案内溝11よりも前における左右方向中央部に連設され第一案内溝11の溝底面と略面一の溝底面を有した前後方向に案内可能な第二案内溝12と、第二案内溝12の前端部から左右方向に延設され後方に向かって漸次外側に位置するように形成された左右一対の前向き湾曲壁13と、第二案内溝12及び前向き湾曲壁13の前に配設され第二案内溝12の溝底面と略面一をなす位置決め面部14と、第一案内溝11よりも後の左右方向中央部に穿設され軸部材Jの取付時において当該軸部材Jの下端に設けられた下の抜け止め鍔j1が上から下に通過し得る大きさに形成された通過孔15と、通過孔15の前に連設され軸部材Jにおける下の抜け止め鍔j1の上に隣設された被保持軸部j2と係合して当該被保持軸部j2を有した軸部材Jを回転可能に保持し得る軸保持孔16と、上向き摺接面部1sの後端縁に後方に向かって凸をなすように湾曲した形状に突設された後縁突起部17とを備えている。
【0037】
ヘッドカバー支持部1に設けられた第一案内溝11、及び、第二案内溝12は、転写具本体Aに対して相対移動可能に支持されたヘッドカバーBの動きを案内するガイド機構Cを構成するものである。
【0038】
第一案内溝11は、ヘッドカバーBに突設された突出部22と係わり合うことにより、軸部材Jを介して転写具本体Aに対して横回転可能、且つ、接離動作可能に支持されたヘッドカバーBにおける被覆姿勢(Y)と使用姿勢(U)との間の全動作を規定し得るものとなっている。
【0039】
第一案内溝11は、左右方向中央部に設けられ前後方向に延びてなる前後案内溝部111と、前後案内溝部111の前端部から左方向及び右方向に分岐して延びてなる左中間案内溝部112及び右中間案内溝部113と、左中間案内溝部112の後端部及び右中間案内溝部113の後端部に連設され後方に向かって漸次左右方向中央部寄りに位置するように延びてなる左後端案内溝部114及び右後端案内溝部115とを備えている。
【0040】
左中間案内溝部112は、後方に向かって漸次左外方に位置するように延びた形状をなしている。右中間案内溝部113は、後方に向かって漸次右外方に位置するように延びた形状をなしている。
【0041】
左後端案内溝部114の後端部n、及び、右後端案内溝部115の後端部nは、ヘッドカバーBが使用姿勢(U)を採る際に、突出部22が位置する箇所になっている。すなわち、左後端案内溝部114の後端部n、及び、右後端案内溝部115の後端部nは、突出部22を案内し得る後の終端部になっている。
【0042】
なお、左後端案内溝部114及び右後端案内溝部115は、後端部nの直前までは後方に向かって漸次左右方向中央部寄りに位置するよう緩やかに遷移し得る形状をなしている。そして、左後端案内溝部114及び右後端案内溝部115は、後端部nの直前において左右方向中央部寄りに大きく位置変更し得るように屈曲した形状をなしている。
【0043】
換言すれば、左後端案内溝部114及び右後端案内溝部115における後端部nの前には、突出部22を左右方向中央部寄りに大きく位置変更させる屈曲部mが隣設されている。
【0044】
第二案内溝12は、ヘッドカバーBに突設された補強リブ3rの両側部と係わり合うことにより軸部材Jを介して転写具本体Aに対して回転可能且つ接離動作可能に支持されたヘッドカバーBの動きの一部、すなわち、転写具本体Aの長手方向に沿ったヘッドカバーBにおける前後方向の進退動作を補助的に規定し得るものとなっている。
【0045】
位置決め面部14は、ヘッドカバーBに突設された補強リブ3rの下面と摺接し得る部位をなしている。位置決め面部14は、転写具本体Aに対するヘッドカバーBの上下方向の姿勢を安定させる役割を担っている。
【0046】
なお、ヘッドカバー支持部1における収容空間sを臨む内面には、側端部においてカバー部Iの収容空間s側への落ち込みを抑制するとともに下端部において転写ローラーw1を経由した転写テープPの添着を抑制し得る左右方向に延びた突起18が前後に対をなして設けられている。
【0047】
[カバー部I]
カバー部Iは、収容空間sに収容されたリフィルEにおける右側を覆う形態をなしている。すなわち、カバー部Iは、起立姿勢をなす右の側壁h2と、右の側壁h2における周縁部から当該右の側壁h2に対して略直交する方向に延設された鍔部htを備えている。カバー部Iにおける鍔部htの端部は、主ケース部Hにおける周壁Hsの端部に突合するようになっている。
【0048】
鍔部htにおける上部の前後二箇所、後部の一箇所、及び、下部の前後二箇所には、係合爪tが設けられている。鍔部htに設けられた各係合爪tが主ケース部Hの周壁Hsに設けられた係合部vに係合することにより、カバー部Iが主ケース部Hに対して着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0049】
<軸部材J>
軸部材Jは、合成樹脂により一体に形成されたものである。軸部材Jは、ヘッドカバー支持部1に対して回転可能に支持されている。軸部材Jは、軸心がヘッドカバー支持部1の上向き摺接面部1sに対して略直交する方向に延びるように立設されている。軸部材Jは、弾性体であるばねGを介してヘッドカバーBに連結されており、後で詳述するように、ヘッドカバーBの転写具本体Aに対する回転に連動して回転し得るように構成されている。
【0050】
軸部材Jは、下端部に設けられた下の抜け止め鍔j1と、下の抜け止め鍔j1の上に配設されヘッドカバー支持部1に設けられた軸保持孔16に係合し得る被保持軸部j2と、被保持軸部j2の上に配設され被保持軸部j2よりも大径に設定された位置決め軸部j3と、位置決め軸部j3の上に配設され位置決め軸部j3よりも小径をなしヘッドカバーBに設けられた軸挿通孔24及び軸通路25に係合し得るヘッドカバー係合軸部j4と、ヘッドカバー係合軸部j4の上に配設されヘッドカバーBに設けられた軸挿通孔24よりも大径に設定された上の抜け止め鍔j5を備えている。
【0051】
下の抜け止め鍔j1は、軸部材Jがヘッドカバー支持部1に対して上方に抜け出すことを規制するためのものである。下の抜け止め鍔j1は、ヘッドカバー支持部1に設けられた通過孔15よりも小径に設定されているとともにヘッドカバー支持部1に設けられた軸保持孔16よりも大径に設定されている。
【0052】
位置決め軸部j3には、軸部材Jの軸心に対して直交する方向に突出しヘッドカバーBのばね収容凹所23に配設されたばねGの一端部を保持し得る第一のばね保持突起j6が設けられている。
【0053】
上の抜け止め鍔j5は、軸部材JがヘッドカバーBに対して下方に抜け出すことを規制するためのものである。上の抜け止め鍔j5は、ヘッドカバーBに設けられた軸挿通孔24よりも大径に設定されている。
【0054】
軸部材Jは、下の抜け止め鍔j1をヘッドカバーBの軸挿通孔24及びヘッドカバー支持部1の通過孔15に通過させた後に、当該通過孔15内に位置させた被軸保持部j2を隣設された軸保持孔16に移動させて当該軸保持孔16に保持させることにより、ヘッドカバー支持部1に対して回転可能に支持されるようになっている。
【0055】
<リフィルE>
リフィルEは、基部を構成するリフィル本体e1と、リフィル本体e1に回動可能に支持された繰り出しリールe2と、繰り出しリールe2よりも前に配設されリフィル本体e1に回動可能に支持された巻き取りリールe3と、リフィル本体e1の前端部に設けられたヘッド部たる転写ヘッドWとを具備してなるものである。繰り出しリールe2には転写テープPが巻回保持されており、繰り出しリールe2から導出された転写テープPは、転写ヘッドWを経由して巻き取りリールe3に繋がったものとなっている。
【0056】
[リフィル本体e1]
リフィル本体e1は、巻き取りリールe3、及び、繰り出しリールe2の側部たる右側部に配された全体として板状をなすリフィルベースe11と、リフィルベースe11に突設され繰り出しリールe2及び巻き取りリールe3を回動可能に支持する図示しない支軸とを主体に構成されている。
【0057】
[繰り出しリールe2]
繰り出しリールe2は、転写テープPが繰り出されるものである。繰り出しリールe2は、一面側に糊が添着された転写テープPを巻装したものである。繰り出しリールe2は、転写テープPが巻装される円筒状の胴部e21と、巻装された転写テープPの横ずれを防止するための左右のフランジ部e22とを有している。
【0058】
繰り出しリールe2における胴部e21の内側には、周方向に所定の間隔を空けて複数の内リブr1が設けられている。内リブr1は、クラッチ部材f2の外側に設けられた外リブr2と係わり合うようになっている。
【0059】
[巻き取りリールe3]
巻き取りリールe3は、繰り出しリールe2から繰り出された後に転写ヘッドWを経由した転写テープPを巻き取るものである。
【0060】
巻き取りリールe3は、連動機構Fにより、転写具の使用すなわち転写テープPに添着した糊を用紙等に転写する操作に連動して転写テープPを巻き取るものである。巻き取りリールe3は、糊を被転写面Zに転写した後の転写テープPを巻装する円筒状の胴部e31と、巻き取った転写テープPの横ずれを防止するための左右のフランジ部e32とを有している。左のフランジ部e32よりも外側には、連動機構Fを構成する第二の中間ギアf5に噛合する図示しない巻き取りギアが一体に設けられている。
【0061】
[転写ヘッドW]
転写ヘッドWは、転写物である糊を用紙等の被転写面Zに対して転写させるものである。転写ヘッドWは、左右方向に延びてなる転写ローラーw1と、転写ローラーw1を回転可能に支持し得る支持体w2とを備えている。
【0062】
支持体w2は、側面視において略三角形状をなし前端部において転写ローラーw1の両端部を回転可能に保持する左右の支持側壁w3を備えている。支持体w2の後端部は、リフィル本体e1に接続している。
【0063】
<連動機構F>
連動機構Fは、リフィルEと本体ケースDとの間に設けられている。連動機構Fは、使用者による転写操作により生じた繰り出しリールe2のトルクを巻き取りリールe3に対して適切に伝達するためのものである。
【0064】
連動機構Fは、リフィルEに回転可能に保持された繰り出しリールe2と、繰り出しリールe2と一体的に回転し本体ケースDの繰り出しリール支持軸h13に支持されたクラッチ部材f2と、クラッチ部材f2に対して回転可能に支持された繰り出しギアf1と、クラッチ部材f2に対して繰り出しギアf1が摺動回転し得るようにクラッチ部材f2に対して繰り出しギアf1を押圧するクラッチバネf3と、繰り出しギアf1と噛合する第一の中間ギアf4と、第一の中間ギアf4及び巻き取りギアに噛合する第二の中間ギアf5と、第二の中間ギアf5に噛合する巻き取りギアを主体に構成されたものである。
【0065】
繰り出しギアf1と繰り出しリールe2との間には、クラッチ部材f2及びクラッチバネf3を備えたクラッチfcが設けられている。クラッチfcは、転写テープPに過度の引っ張り力が作用しないようにするための既知の構成のものである。
【0066】
<<ヘッドカバーB>>
ヘッドカバーBは、転写ヘッドWを保護する三次元的な形状をなすものである。ヘッドカバーBは、転写具本体Aに対して左右に回転可能に構成されているだけでなく、転写具本体Aに対して接離し得るように直線的に動作可能に構成されている。
【0067】
ヘッドカバーBは、本体ケースDと協働して、転写ヘッドWの全体を外部から埃やゴミが侵入し得る隙間が形成されないように覆うことができる立体的形状のものである。
【0068】
ヘッドカバーBは、平面視において、転写具本体Aに対して左右の双方に回転可能に設けられている。すなわち、ヘッドカバーBは、先端部3tが転写具本体Aの左側又は右側の何れか一方のみに位置するように転写具本体Aに対して回転し得るだけでなく先端部3tが転写具本体Aの他方にも位置するように転写具本体Aに対して回転し得るものとなっている。
【0069】
転写具本体Aに対するヘッドカバーBの左右の回転方向は、使用者が、自分の利き腕等に基づいて任意に選択できるようになっている。例えば、使用者が右手で転写具を操作する場合には、ヘッドカバーBを転写具本体に対して左に回転(ヘッドカバーBの先端部3tが転写具本体Aにおける左の側壁h1の外側に位置するように回転)させて使用すれば、転写ヘッドWを視認し易いため好適である。使用者が左手で転写具を操作する場合には、ヘッドカバーBを転写具本体に対して右に回転(ヘッドカバーBの先端部3tが転写具本体Aにおける右の側壁h2の外側に位置するように回転)させて使用すれば、転写ヘッドWを視認し易いため好適である。
【0070】
ヘッドカバーBは、転写具本体Aに対して接離動作可能に支持されたものであり、且つ、ヘッドカバーBと転写具本体Aとの間に介設された弾性体であるコイル状のばねGにより転写具本体Aに対して常に近接する方向に付勢されている。換言すれば、ヘッドカバーBは、ガイド機構Cに案内される所定の位置において、ばねGの付勢力に抗して転写具本体Aから離間する方向に移動可能な構成をなしている。
【0071】
ヘッドカバーBは、転写具本体Aにおける上側の部位、すなわち、本体ケースDの上壁h3の前部に設けられたヘッドカバー支持部1において回転可能に係り合っている。
【0072】
ヘッドカバーBは、平面視において先端部3tを転写具本体Aの前に位置させて当該先端部3tにおいて転写ヘッドWを被覆する被覆姿勢(Y)と、平面視において転写具本体Aに対して少なくとも横方向に位相がずれるように移動して転写ヘッドWを使用可能な状態に露出させた使用姿勢(U)を採り得るものである。つまり、この実施形態のヘッドカバーBは、転写ヘッドWを開閉し得るべく転写具本体Aに対して横回転可能に構成されている。
【0073】
また、ヘッドカバーBは、ヘッドカバーBが被覆姿勢(Y)と使用姿勢(U)との間で姿勢変更する過程において先端部3tが転写ヘッドWに近接した近接位置(Q)と、先端部3tが近接位置(Q)の場合よりも転写ヘッドWから離れて位置する離間位置(R)との間で転写具本体Aに対して接離動作可能に構成されている。
【0074】
つまり、ヘッドカバーBは、転写具本体Aに設けられた軸部材Jに対して回転可能に構成されているだけでなく、被覆姿勢(Y)と使用姿勢(U)との間で姿勢変更する過程において転写ヘッドWに対して衝突しないように、軸部材Jに対して近接位置(Q)と離間位置(R)との間で進退動作可能に支持されている。
【0075】
ヘッドカバーBは、後で詳述するガイド機構Cに案内されて、転写具本体Aに対して進退動作及び回転動作が行われ、転写ヘッドWを被覆する被覆姿勢(Y)と転写ヘッドWから退避した使用姿勢(U)との間で姿勢変更し得るものとなっている。
【0076】
ヘッドカバーBは、転写具本体Aに設けられたヘッドカバー支持部1と係わり合う本体係合部2と、本体係合部2に対して片持ち的に支持され被覆姿勢(Y)において転写ヘッドWの前側、左右側、及び、上下側を覆い得る形状をなす先端部3tを有したヘッドカバー本体3とを備えたものである。ヘッドカバーBを構成する本体係合部2及びヘッドカバー本体3は合成樹脂により一体に形成されている。
【0077】
<本体係合部2>
本体係合部2は、ヘッドカバー支持部1に設けられた上向き面である上向き摺接面部1sに摺接し得る下向き面である下向き摺接面部21と、下向き摺接面部21から下方に向かって突設されヘッドカバー支持部1に設けられた第一案内溝11に係合し得る突出部22と、突出部22よりも後に配設され下向き摺接面部21よりも上においてばねGを収容し得るように上方に向かって凹んだ形状をなすばね収容凹所23と、ばね収容凹所23の前端部に上下方向に貫設されヘッドカバーBと転写具本体Aとの間に介設された軸部材Jが挿入される軸挿通孔24と、ばね収容凹所23を臨む位置に設けられ軸挿通孔24の後に連設された軸通路25と、ばね収容凹所23の後端部に突設さればね収容凹所23に収容されたばねGの他端部を保持し得る第二のばね保持突起26とを備えている。
【0078】
本体係合部2は、左右方向中央部に左右両側部よりも上方に隆起した前後方向に長手をなす隆起部2rが形成されている。ばね収容凹所23、軸挿通孔24、軸通路25、及び、第二のばね保持突起26は、それぞれ隆起部2rに関連した箇所に設けられている。
【0079】
突出部22は、ヘッドカバー支持部1に設けられた突出部当接部たる第一案内溝11に係合し、ヘッドカバーBの動きを案内するガイド機構Cを構成するものである。
【0080】
<ヘッドカバー本体3>
ヘッドカバー本体3は、被覆姿勢(Y)において、先端部3tに形成された転写ヘッド配設空間sp内に転写ヘッドWを位置させ得るものとなっている。
【0081】
ヘッドカバー本体3は、被覆姿勢(Y)において、転写ヘッドWの前側、左右側、及び、上下側を覆い得る先端部3tと、先端部3tの下端部から後方に向かって延設された下延出部3sとを備えている。
【0082】
先端部3tは、内部に転写ヘッド配設空間spが形成されている。先端部3tは、被覆姿勢(Y)において転写ヘッドWの左右両側に配された左右の側壁31と、左右の側壁31の前端部間に設けられ被覆姿勢(Y)において転写ヘッドWの前側に配された前壁32と、左右の側壁31の下端部間に設けられ被覆姿勢(Y)において転写ヘッドWの下側に配された下壁33と、左右の側壁31の上端部間に設けられ被覆姿勢(Y)において転写ヘッドWの上側に配された上壁34とを備えている。
【0083】
転写ヘッド配設空間spは、先端部3tを構成する左右の側壁31、前壁32、下壁33、及び、上壁34によって囲まれている。先端部3tは、転写ヘッド配設空間spを形成するとともに後方に開放した形態をなしている。
【0084】
下延出部3sは、下壁33の後端部から斜め下後方に向かって延出した下壁延出部分35と左右の側壁31の下部から斜め下後方に向かって延出した側壁延出部分36とを備えたものである。下壁延出部分35と側壁延出部分36は一体に連設されている。
【0085】
先端部3t、及び、下延出部3sに形成された開口端部、すなわち、左右の側壁31の後端部、下壁延出部分35における後端部、及び、左右の側壁延出部分36の上端部及び後端部は、被覆姿勢(Y)において、本体ケースDにおける開口部kの開口端縁keに突合し得るものとなっている。
【0086】
なお、ヘッドカバーBには、本体係合部2と当該本体係合部2に片持ち支持されたヘッドカバー本体3との間に亘って前後方向に延びてなるレール状をなす補強リブ3rが配設されている。
【0087】
補強リブ3rは、ヘッドカバーBの内面側すなわち転写ヘッド配設空間sp側に突出するように形成されている。補強リブ3rは、ヘッドカバー支持部1に設けられた第二案内溝12に係合し、転写具本体Aに対するヘッドカバーBの前後方向の動きを規定し得る一役を担っている。
【0088】
<<ガイド機構C>>
転写具には、転写具本体Aに対するヘッドカバーBの動きを、転写ヘッドWを被覆する被覆姿勢(Y)と転写ヘッドWから退避した使用姿勢(U)との間で案内するガイド機構Cが設けられている。ガイド機構Cは、ヘッドカバーBに設けられた突出部22及び補強リブ3rと、転写具本体Aに設けられ突出部22が当接し得る突設部当接部である第一案内溝11、及び、補強リブ3rが当接し得る第二案内溝12とを備えたものである。
【0089】
ガイド機構Cは、転写具本体Aを構成する軸部材JとヘッドカバーBとの間に介設されたばねGにより、ヘッドカバーBが転写具本体Aに対して近接する方向に付勢されている。
【0090】
<<ヘッドカバーBの作動説明>>
本実施形態の転写具について、被覆姿勢(Y)にあるヘッドカバーBを使用姿勢(U)に姿勢変更する際の動作(ヘッドカバーBを転写具本体Aに対して左方向に回転させた場合)の一例を説明すれば次のとおりである。
【0091】
まず、
図1、
図4~8、
図20等に示すように、ヘッドカバーBは、被覆姿勢(Y)において、本体ケースDとの協働により転写ヘッドWの周囲を略隙間なく覆っている。このとき、ヘッドカバーBは、被覆姿勢(Y)をなしている。また、ヘッドカバーBは、軸部材Jとの間に介設されたばねGに付勢されて転写具本体Aに対して近接した近接位置(Q)に位置したものとなっている。
【0092】
次いで、
図13、
図14、及び、
図21に示すように、使用者の手指による操作(例えば、ヘッドカバーBの隆起部2rを前方に押す操作)により、ヘッドカバーBを、ばねGの付勢力に抗して前方に移動させる。転写具本体Aに支持された軸部材Jのヘッドカバー係合軸部j4は、ヘッドカバーBの前方への移動に伴って、軸挿通孔24内から軸通路25内に相対移動する。このとき、ヘッドカバーBの突出部22は、前後案内溝部111に案内されて後から前に移動する。これと同時に、ヘッドカバーBの補強リブ3rは、第二案内溝12に案内されて後から前に移動する。その結果、ヘッドカバーBは、近接位置(Q)から離間位置(R)に移動することになる。転写ヘッドWは、ヘッドカバーBが離間位置(R)に位置変更することにより、ヘッドカバーBの先端部3tを構成する左右の側壁31に側方から覆われない位置に相対移動し、側面視において視認可能な状態になっている。なお、ヘッドカバーBが前進し得る限界位置は、第一、第二のばね保持突起j6、26の先端部同士が突合することにより規定されている。
【0093】
続いて、
図15及び
図22に示すように、使用者の手指による操作により、ばねGの付勢力に抗して離間位置(R)に移動されたヘッドカバーBを軸部材J回りに左方向(先端部3tが左の側壁h1の外面側に移動する方向)に回転する。ばねGを介してヘッドカバーBに連結された軸部材Jは、ヘッドカバーBの回転に伴ってヘッドカバー支持部1に対して回転するようになっている。このとき、ヘッドカバーBの突出部22は、左中間案内溝部112を中央部から左方向に移動する。ヘッドカバーBは、離間位置(R)に位置しつつ回転するため、先端部3tに設けられた左右の側壁31が転写ヘッドWに対して衝突することなく左方向に回転し得るものとなっている。
【0094】
しかる後に、
図16、
図17、及び、
図23に示すように、使用者の手指による操作により、ヘッドカバーBをさらに左方向に回転させる。このとき、ヘッドカバーBの突出部22は、左後端案内溝部114に案内されて、最終的に後端部nに終着するようになっている。ヘッドカバーBの突出部22は、左後端案内溝部114を後方に移動しつつヘッドカバー支持部1における左右方向中央部側に徐々に近接し、後端部nに到着する直前に屈曲部mを通過するようになっている。以上の作動を経て、ガイド機構Cにより案内されたヘッドカバーBは、離間位置(R)から近接位置(Q)に位置変更するとともに被覆姿勢(Y)から使用姿勢(U)に姿勢変更することになる。
【0095】
ヘッドカバーBの突出部22は、屈曲部mを通過して第一案内溝11の後端部nに位置するものとなっているため、突出部22の逆方向への移動が屈曲部mによって適切に規制されることになる。そのため、ヘッドカバーBは、ばねGによる付勢力と相まって、使用姿勢(U)に適切に保持されるものとなっている。
【0096】
使用姿勢(U)にあるヘッドカバーBを被覆姿勢(Y)に位置変更する際の動作は、前述した順序の逆の順序を経て行われることになる。
【0097】
また、
図18に示すように、ヘッドカバーBを右方向(先端部3tが右の側壁h2の外面側に移動する方向)に回転させて使用姿勢(U)に姿勢変更する操作も、前述した手順に準じて行うことができるものとなっている。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係るディスペンサたる転写具は、ヘッド部たる転写ヘッドWを保護する三次元的な形状をなすヘッドカバーBを備えたものである。そして、ヘッドカバーBが、平面視においてディスペンサ本体たる転写具本体Aに対して少なくとも横方向に位相がずれるように移動して転写ヘッドWを露出させた使用姿勢(U)を採り得るものである。
【0099】
このため、少なくとも、転写ヘッドWを保護することができ、転写ヘッドWを露出させた使用姿勢(U)において使用者が転写ヘッドWを好適に視認し得る構成を採る設計の自由度に優れた転写具を提供することができるものとなる。
【0100】
つまり、ヘッドカバーBが平面視において横方向に位相がずれるように移動して転写ヘッドWを露出させた使用姿勢(U)を採り得るものとなっている。このため、この実施形態の転写具であれば、使用姿勢(U)においてヘッドカバーBが転写ヘッドWの横に位置し得る設計を好適に行うことができるものとなる。この実施形態の転写具であれば、転写ヘッドWを上側から見る使用者は、当該転写ヘッドWをヘッドカバーBに邪魔されることなく好適に視認し得るものとなる。
【0101】
ヘッドカバーBが、転写具本体Aに対して回転可能に設けられている。このため、転写ヘッドWに対する視認性の向上を比較的簡単な構成により実現し得るものとなっている。
【0102】
ヘッドカバーBが、転写具本体Aに対して接離動作可能に支持されたものであり、且つ、転写具本体Aに対して近接する方向に付勢されている。このため、ヘッドカバーBは、転写ヘッドWが露出する方向に動き難いものとなるだけでなく使用者の手指によって転写具本体Aに対して離間する方向の操作を容易に行い得るものとなっている。
【0103】
ヘッドカバーBが、転写具本体Aにおける上側の部位において回転可能に係り合っている。このため、ヘッドカバーBを回転可能に支持し得る構成を、転写テープPとの誤接着を避けつつ設けやすいものとなり、転写具本体Aが大型化することを好適に抑制し得るものとなっている。
【0104】
ヘッドカバーBが、転写具本体Aに対して左右に回転可能に構成されている。このため、使用者の転写具を操作する利き腕等に対応して、ヘッドカバーBを左回転させるか又は右回転させるかを任意に設定することができるものとなっている。
【0105】
転写具本体Aに対するヘッドカバーBの動きを案内するガイド機構Cが設けられている。このため、転写ヘッドWに対してヘッドカバーBが干渉しない動作をガイド機構Cの案内により好適に実現し得るものとなっている。
【0106】
ガイド機構Cが、ヘッドカバーBに設けられた突出部22と、転写具本体Aに設けられ突出部22が当接し得る突出部当接部たる第一案内溝11とを備えたものである。このため、突出部22及び第一案内溝11を設けた構成により、ガイド機構Cを好適に実現し得るものとなっている。
【0107】
転写具本体Aが、先端部に転写ヘッドWが配設されたリフィルEと、リフィルEにおける転写ヘッドW以外の部位を内部に収容し得る本体ケースDとを備えている。このため、交換可能なリフィルEを用いることにより、継続的な使用に適した転写具を提供することができるものとなっている。
【0108】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0109】
ディスペンサは、ヘッド部を通じて内容物を出すことができるものであればよく、転写具に限られるものではない。
【0110】
ディスペンサによって出すことができる内容物としては、インクや修正剤等の液体や、接着剤等のゲル状のものや、粉体やテープ等の固形状のものであってもよい。
【0111】
ヘッド部は、転写ヘッドに限られるものではない。ヘッド部は、インクや修正剤等の液体を塗布し得る刷毛状のものや液体を含浸し得る棒状ないし柱状のものであってもよい。
【0112】
なお、転写ヘッドは、転写テープを被転写面に押し付ける機能を発揮するものであればよく、本実施形態に示されるものに限られるものではない。転写ヘッドとしては、例えば、板面を利用して被転写面に対して転写テープを押し付けるようにした板状部材等を挙げることができる。
【0113】
転写具は、転写物を転写対象物に転写し得るものであればどのようなものであってもよい。換言すれば、転写物は、本実施形態に示された糊に限られるものではなく、例えば、修正用の修正剤(修正テープ)や装飾用の装飾剤(装飾テープ)であってもよい。
【0114】
更に、転写ヘッドは、必ずしも転写テープを被転写面に対して押し付けるものに限られるものではなく、例えば、転写ローラーを直接的に被転写面に添着させることにより、インクや糊を塗布するものであってもよい。
【0115】
転写具本体を構成する転写ヘッドは、本実施形態で示された構成に限定されるものではない。すなわち、上述した実施形態では、転写物を保持した交換部品であるリフィルに転写ヘッドが設けられており、そのリフィルと本体ケースによって転写具本体が構成されていたが、このようなものには限られない。例えば、転写ヘッドは、リフィル側ではなく本体ケース側にあらかじめ固定されたものであってもよい。
【0116】
転写具は、上述した実施形態で示したような、リフィル交換可能タイプのものに限られるものではなく、転写テープが無くなった場合は以後使用できなくなるいわゆるディスポーザブルタイプのものであってもよい。
【0117】
ガイド機構は、上述した実施形態に示されたようなカム作用を利用したものには限られず、種々のものが考えられる。他のガイド機構として、例えば、一端をディスペンサ本体に対して回動可能に支持させるとともに他端をヘッドカバーに対して回動可能に支持させたリンクを用いるようにしてもよい。
【0118】
ガイド機構は、ディスペンサ本体に突出部を形成し、ヘッドカバーにその突出部に係わり合う突出部当接部を設けるようにしてもよい。
【0119】
ヘッドカバーと転写具本体との間に配設される弾性体は種々の構成のものを適用することができる。
【0120】
ヘッドカバーと転写具本体との間にばねを配設しないものであってもよい。
【0121】
ヘッドカバーは、ヘッド部を一部分だけを覆うものであってもよい。すなわち、ヘッドカバーは、転写具本体を構成する部位との協働によってヘッド部を完全に覆わない構成のものであってもよい。
【0122】
図24~26に示すように、ヘッドカバーBに設けられた隆起部2rの後端部に、後方に向かって凸をなすように隆起した凸部2tを配設してもよい。ヘッドカバーBの後端部に、隆起部2rよりも幅寸法が短く設定された凸部2tを形成することにより、使用者の手指が掛かり易いものとなっている。かかる構成のものであれば、ヘッドカバーBを転写具本体Aに対して回転させるための使用者による操作性に優れたものとなっている。
【0123】
また、
図25及び
図26に示すように、転写具本体Aにおけるヘッドカバー支持部1の上向き摺接面部1sに、ヘッドカバーBの下向き摺接面部21に摺接し得る摺接突起1tを設けるようにしてもよい。摺接突起1tは、上向き摺接面部1sよりも上方に突出したものであり、上向き摺接面部1sにおける前部及び後部に設けられている。ヘッドカバー支持部1の軸保持孔16よりも前及び後に設けられている前部及び後部の各摺接突起1tは、それぞれ、軸部材J回りに回転するヘッドカバーBの回転方向に沿うように延びている。ヘッドカバー支持部1に摺接突起1tを設けることにより、ヘッドカバーBに対して摺接する面積が低減されることになるため、ヘッドカバーBの円滑な動きが向上し得るものとなっている。
【0124】
なお、前述した実施形態では、ヘッドカバー支持部1は、専ら本体ケースDの主ケース部H側に設けられていたが、このようなものに限られるものではない。
【0125】
例えば、
図24~26に示すように、ヘッドカバー支持部1の一部をカバー部I側に設けるように構成したものであってもよい。
【0126】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0127】
A…転写具本体(ディスペンサ本体)
B…ヘッドカバー
W…転写ヘッド(ヘッド部)
C…ガイド機構
(Y)…被覆姿勢
(U)…使用姿勢