(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080829
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/06 20060101AFI20230602BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20230602BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230602BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H01L27/06 311Z
H01L27/04 H
H01L29/78 301P
H01L29/78 301S
H01L29/06 301S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194351
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】319006036
【氏名又は名称】シャープ福山レーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】米元 久
(72)【発明者】
【氏名】前田 晃幸
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F038AV06
5F038BH07
5F038BH13
5F038BH15
5F038DF20
5F048AB10
5F048AC01
5F048AC06
5F048BA01
5F048BB05
5F048BB08
5F048BB16
5F048BC03
5F048BC06
5F048BC18
5F048BC20
5F048BG13
5F048CC09
5F048CC15
5F048DA01
5F048DA04
5F048DA25
5F140AA31
5F140AA38
5F140AB01
5F140AC21
5F140BA01
5F140BD05
5F140BD18
5F140BE07
5F140BE10
5F140BF01
5F140BF04
5F140BF11
5F140BF18
5F140BG08
5F140BG12
5F140BG28
5F140BG34
5F140BG52
5F140BH15
5F140BH30
5F140BK13
5F140CB04
5F140CC03
5F140CC12
5F140CE07
5F140DA08
(57)【要約】
【課題】動作電圧の異なる複数のトランジスタを混載した場合に内部素子へのサージの流入を防止可能かつコンパクトな半導体装置を実現する。
【解決手段】半導体装置(1)は、半導体基板(101)にトランジスタ(2)と保護素子(10)とを含む。保護素子(10)の耐圧は、保護素子(10)中の特定の構成における特定の距離に応じて決まり、トランジスタ(20)の耐圧よりも小さく設定される。
半導体装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと保護素子とを同一の半導体基板に含む半導体装置であって、
前記保護素子は、
前記半導体基板の表層部に形成され、ソース電極に電気的に接続される第一活性領域と、
前記半導体基板の表層部に形成され、ドレイン電極に電気的に接続される第二活性領域と、
前記半導体基板の表層部に形成され、前記第二活性領域の一部に重なる一方で前記第一活性領域には重ならない素子分離領域と、
ゲート電極を含み、前記半導体基板の表面上に形成され、前記素子分離領域の一部および前記第一活性領域の一部に重なるゲート部と、を有し、
前記第一活性領域における前記ソース電極に接続される部分の活性と、前記第二活性領域における前記ドレイン電極に接続される部分の活性とが同じであり、
前記保護素子の耐圧は、前記半導体基板の表面に沿う方向における前記素子分離領域の前記第一活性領域側の端から前記第二活性領域側の端までの距離、および、前記半導体基板の表面に沿う方向における前記素子分離領域の前記第二活性領域側の端から前記第二活性領域の前記第一活性領域側の端までの距離、の一方または両方の設定により、前記トランジスタの耐圧よりも小さい、
半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート部は、前記素子分離領域上に形成されているゲート絶縁膜をさらに含み、
前記ゲート電極は、前記第一活性領域上、前記半導体基板上および前記ゲート絶縁膜上に一体に形成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜は、前記第二活性領域側の前記ゲート部の端部に配置される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記素子分離領域は、シャロ-トレンチアイソレーション技術で形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記トランジスタは、中高耐圧トランジスタを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トランジスタは、前記中高耐圧トランジスタよりも低い耐圧を有する低耐圧トランジスタをさらに含む、
請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記トランジスタは、前記半導体基板の表層部にドリフト領域を含み、前記ドリフト領域は、前記半導体基板の表面側に不純物のより高い濃度の領域を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路において、電源電圧を取り扱う耐圧の高いトランジスタが必要とされている。また、高効率化、チップ縮小のため、中高耐圧トランジスタの低オン抵抗化が求められている。この低オン抵抗化された中高耐圧トランジスタとしては、低耐圧素子のゲート酸化膜を用い、チャネルとなるウェルを高濃度化することにより、チャネル縮小が行われたLDMOS(Lateral Diffused MOS)、EDMOS(Extend Drain MOS)の様なトランジスタが一般的である。
【0003】
これらのトランジスタでは、静電気放電(ESD)サージの様な高電圧が印加された場合、ゲートが開いていない状態では強制的に耐圧以上の電圧が付加される。このため、低抵抗領域にサージ電流が集中して流れ、破壊が発生することがある。したがって、このようなサージへの対策が求められる。
【0004】
サージへの対策としては、例えば、ウェルコンタクト用のN+拡散とソースP+拡散の各幅を調整することにより、高耐圧能動素子の特性を維持しつつ、ESDサージに対して保護する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、サージへの対策としては、電源-接地間にPNP型の保護素子を配置する技術が知られている。この技術では、接地電位パッドに印加された正電位、負電位のそれぞれの静電パルスに対して、別々に保護素子を設ける必要がないため、レイアウト面積の増大が抑えられる。さらに、電源電位パッドに印加されたESDも放電することが可能とされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-27622号公報
【特許文献2】特開2008-60349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、保護素子と内部素子の耐圧が同じとなるため、ESDサージが内部素子にも流れ、内部回路を破壊する可能性がある。
【0008】
特許文献2に記載の技術では、特許文献1に記載の技術と同様に、ESDサージが内部素子にも流れ、内部回路を破壊する可能性がある。また、特許文献2に記載の技術では、電源からのマイナスサージを高い電圧で逃がすことになる。そのため、発熱が大きくなり、素子サイズを大きくする必要がある。
【0009】
本発明の一態様は、動作電圧の異なる複数のトランジスタを混載した場合に内部素子へのサージの流入を防止可能かつコンパクトな半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る半導体装置は、トランジスタと保護素子とを同一の半導体基板に含む半導体装置であって、前記保護素子は、前記半導体基板の表層部に形成され、ソース電極に電気的に接続される第一活性領域と、前記半導体基板の表層部に形成され、ドレイン電極に電気的に接続される第二活性領域と、前記半導体基板の表層部に形成され、前記第二活性領域の一部に重なる一方で前記第一活性領域には重ならない素子分離領域と、ゲート電極を含み、前記半導体基板の表面上に形成され、前記素子分離領域の一部および前記第一活性領域の一部に重なるゲート部と、を有し、前記第一活性領域における前記ソース電極に接続される部分の活性と、前記第二活性領域における前記ドレイン電極に接続される部分の活性とが同じであり、前記保護素子の耐圧は、前記半導体基板の表面に沿う方向における前記素子分離領域の前記第一活性領域側の端から前記第二活性領域側の端までの距離、および、前記半導体基板の表面に沿う方向における前記素子分離領域の前記第二活性領域側の端から前記第二活性領域の前記第一活性領域側の端までの距離、の一方または両方の設定により、前記トランジスタの耐圧よりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、動作電圧の異なる複数のトランジスタを混載した場合に内部素子へのサージの流入を防止可能かつコンパクトな半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る半導体装置の素子構造を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態における保護素子の構造を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第一の状態を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第二の状態を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第三の状態を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第四の状態を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第五の状態を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第六の状態を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第七の状態を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第八の状態を模式的に示す図である。
【
図11】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第九の状態を模式的に示す図である。
【
図12】本発明の第一の実施形態における保護素子の製造過程における第十の状態を模式的に示す図である。
【
図13】本発明の第一の実施形態の保護素子およびトランジスタの電流電圧特性の一例を模式的に示す図である。
【
図14】本発明の第一の実施形態の保護素子における距離Aと保護素子の耐圧との関係の一例を模式的に示す図である。
【
図15】本発明の第一の実施形態の保護素子における距離Bと保護素子の耐圧との関係の一例を模式的に示す図である。
【
図16】本発明の第二の実施形態におけるトランジスタの素子構造による耐圧とオン抵抗との関係の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔本発明の実施形態の概要〕
以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付するが、同じ構成が複数ある場合、個々の構成を区別して示すために符号にアルファベットをさらに付けて示すことがある。また、「~」はその両端を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0014】
〔第一の実施形態〕
[半導体装置の構成]
本発明の第一の実施形態における半導体装置1は、
図1に示されるように、保護素子10とトランジスタ20とを有している。保護素子10とトランジスタ20とは、同一の半導体基板101に形成されている。保護素子10は、例えばESD保護素子であり、トランジスタ20は、内部素子である。トランジスタ20は、例えば中高耐圧トランジスタであり、40~100V程度の耐圧を有する。
【0015】
[保護素子の構成]
図1および
図2に示されるように、半導体基板101内部には、ウェル領域105、ドリフト領域107、N型拡散層113、素子分離領域102、LDD(低濃度拡散層)領域117およびP+領域119が半導体基板101の底面側からこの順で半導体基板101の内部に形成されている。半導体基板101は、例えばP型の半導体基板である。ウェル領域105は、N-の領域であり、半導体基板101の表層部に形成されている。
【0016】
ドリフト領域107は、P-の領域であり、半導体基板101の表層部におけるウェル領域105内に形成されている。N型拡散層113は、N-の領域であり、半導体基板101の表層部におけるウェル領域105内に形成されている。N型拡散層113は、半導体基板101の表面に沿う方向(以下、「表面方向」とも言う)において、ドリフト領域107とは離れた位置にある。素子分離領域102は、ドリフト領域107およびN型拡散層113よりも半導体基板101の表面側に形成されている。
【0017】
素子分離領域102は、例えば酸化物(SiO2)で構成されている。素子分離領域102は、半導体基板101の表層部に三つ形成されている。素子分離領域102Aは、表面方向における一端側においてN型拡散層113とウェル領域105とに跨って形成されている。素子分離領域102Bは、表面方向におけるドリフト領域107の一端部とドリフト領域107の一端側に隣接するウェル領域105の部分とに跨って形成されている。素子分離領域102Cは、表面方向におけるドリフト領域107の他端部とドリフト領域107の他端側に隣接するウェル領域105の部分とに跨って形成されている。
【0018】
LDD領域117は、P-の領域であり、N型拡散層113内の表層部に形成されている。LDD領域117は、素子分離領域102Aにその他端側で隣接して配置されている。
【0019】
P+領域119は、二つ形成されている。P+領域119Aは、LDD領域117内の表層部に形成されている。P+領域119Aは、素子分離領域102Aにその他端側で隣接して配置されている。P+領域119Bは、ドリフト領域107内の表層部に形成されている。P+領域119Bは、素子分離領域102Bと素子分離領域102Cとの間に形成されており、素子分離領域102Bにはその他端側で隣接し、素子分離領域102Cにはその一端側で隣接している。
【0020】
半導体基板101の表面上には、ゲート酸化膜110および114、ポリシリコン層115、層間絶縁膜121および電極123がこの順で配置されている。ゲート酸化膜110は、半導体基板101の表面上であって表面方向における素子分離領域102Bの他端部においてウェル領域105と素子分離領域102Bとに跨って形成されている。ゲート酸化膜114は、半導体基板101の表面上であって表面方向におけるゲート酸化膜110以外の部分に形成されている。
【0021】
ポリシリコン層115は、例えば多結晶シリコンで構成されている。ポリシリコン層115は、ゲート酸化膜110および114上であって、表面方向におけるゲート酸化膜110の他端からLDD領域117の他端までの位置に形成されている。ポリシリコン層115の各側面は、GPサイドウォール118で覆われている。GPサイドウォール118は、例えば酸化物で形成されている。
【0022】
層間絶縁膜121は、例えば酸化物で構成されている。電極123は、層間絶縁膜121上に二つ形成されている。電極123Aは、P+領域119Aの上方に位置し、電極123Bは、P+領域119Bの上方に位置している。電極123Aは、例えばソース電極であり、電極123Bは、例えばドレイン電極である。
【0023】
層間絶縁膜121は、電極123とP+領域119とを連通するコンタクトホール122を有している。コンタクトホール122は、電極123およびP+領域119に対応して二つ形成されており、コンタクトホール122Aは、電極123AとP+領域119Aとを連通し、コンタクトホール122Bは、電極123BとP+領域119Bとを連通する。
【0024】
保護素子10において、N型拡散層113およびP+領域119は、半導体基板101の表層部に形成され、ソース電極に電気的に接続される第一活性領域に該当する。また、ドリフト領域107およびP+領域119は、半導体基板101の表層部に形成され、ドレイン電極に電気的に接続される第二活性領域に該当する。さらに、素子分離領域102Bは、半導体基板の表層部に形成され、第二活性領域の一部に重なる一方で第一活性領域には重ならない位置に形成されている。また、ポリシリコン層115はゲート電極に該当し、ゲート酸化膜110およびポリシリコン層115は、半導体基板101の表面上に形成され、素子分離領域102の一部および第一活性領域の一部に重なるゲート部に該当している。さらに、P+領域119Aは、第一活性領域においてソース電極に接続されており、P+領域119Bは、第二活性領域においてドレイン電極に接続されており、いずれも同じP+の活性を有している。
【0025】
また、ゲート酸化膜110は、素子分離領域102B上に形成されており、ポリシリコン層115は、第一活性領域上、半導体基板101の表面上およびゲート酸化膜110上に一体に形成されている。さらに、ゲート酸化膜110は、第二活性領域側のゲート部の端部に配置されている。
【0026】
[トランジスタの構成]
トランジスタ20は、ドリフト領域112、N型拡散領域120およびコンタクトホール122Cをさらに有する点以外は、前述の保護素子10と同様の構成を有している。
【0027】
ドリフト領域112は、P-の領域であり、半導体基板101の表層部にドリフト領域107と重なって形成されている。ドリフト領域112は、表面方向においてドリフト領域107よりも幅広に、しかしながらN型拡散層113とは離れて形成されている。このような構造により、トランジスタ20は半導体基板101の表層部にドリフト領域107、112を含み、当該ドリフト領域は、半導体基板101の表面側に不純物のより高い濃度の領域を有している。
【0028】
N型拡散領域120は、半導体基板101の表層部におけるLDD領域117内に形成されている。N型拡散領域120は、表面方向において、素子分離領域102AとP+領域119Aとの間に形成されている。
【0029】
コンタクトホール122Cは、層間絶縁膜121を貫通して、電極123AとN型拡散領域120とを連通している。
【0030】
[製造方法]
図3から
図12は、保護素子10の製造過程の状態を模式的に示す図である。なお、トランジスタ20は、保護素子10と異なる構成以外は、保護素子10と同様に同一基板上に製造され得る。
【0031】
まず、
図3に示すように、半導体基板101の表面に、STI(シャロ-トレンチアイソレーション)技術を用いて深さ0.3~1.0μmの素子分離領域102を形成する。素子分離領域102は、半導体基板101の表面において平坦な面を有しており、CVD膜を埋め込んで形成するため、当該面の端には、周知のLOCOSプロセスのようなバーズビーグ(bird’s beak)を有さない。このように、素子分離領域102はSTIで形成されている。
【0032】
次いで、
図4に示すように、半導体基板101の表面に犠牲酸化膜103を膜厚10~30nmで形成する。次いで、フォトリソグラフィーを用いてレジストマスク104を作製する。次いで、レジストマスク104を介してN型不純物、例えばP(リンイオン)、をドーズ量6.0×10
12~1×10
13ions/cm
2、エネルギー80~3000KeVでイオン注入し、1000~1200℃で熱処理する。こうして、N-のウェル領域105を形成する。
【0033】
次いで、
図5に示すように、レジストマスク106を介して、P型不純物、例えばB(ボロンイオン)、をドーズ量6.0×10
12~1×10
13ions/cm
2、エネルギー100~1000KeVでイオン注入し、1000~1100℃で熱処理する。こうして、ウェル領域105の表層部にP-のドリフト領域107を形成する。
【0034】
なお、ドリフト領域107を形成するためのイオン注入の条件は、保護素子10の耐圧仕様に応じて適宜に調整することが可能である。また、素子分離領域102は、ウェル領域105とドリフト領域107の形成後に作製してもよい。
【0035】
次いで、
図6に示すように、犠牲酸化膜103上にSiN膜108を膜厚50~200nmで形成する。次いで、レジストマスク109を形成して、SiN膜108および犠牲酸化膜103をエッチングする。次いで、800~1100℃の温度の酸素雰囲気中にてP型の半導体基板101上に膜厚20~100nmのゲート酸化膜110を形成する。
【0036】
なお、SiN膜108および犠牲酸化膜103のエッチングは、ドライエッチングおよびウェットエッチングのどちらの手法を用いてもよい。
【0037】
また、ゲート酸化膜110は、犠牲酸化膜103およびSiN膜108の形成に代えて、CVD(化学気相成長)法により形成した酸化膜から形成してもよい。この場合、周知のCVD法により、半導体基板101の表面に当該酸化膜を膜厚20~100nmで形成する。次いで、ゲート酸化膜110を形成する領域を覆うようにレジストマスクを形成し、レジストマスクで覆われていない領域をドライエッチングまたはウェットエッチングしてゲート酸化膜110を形成する。
【0038】
ここまでの製造過程は、保護素子10およびトランジスタ20のいずれも同様である。
【0039】
次いで、
図7に示すように、レジストマスク111を形成する、次いで、レジストマスク111を介してN型不純物、例えばB(ボロンイオン)、をドーズ量6.0×10
12~8×10
12ions/cm
2、エネルギー100~250KeVでイオン注入し、900℃~1100℃で熱処理する。こうして、トランジスタ20の製造領域において、ドリフト領域107の表層側にP-のドリフト領域(
図1の符号112)を形成する。保護素子10には、オン抵抗の低減は通常要求されない。よって、保護素子10の製造領域では、
図7に示されるように、ドリフト領域112は形成されない。
【0040】
なお、上記のイオン注入は、トランジスタ20の耐圧仕様に応じて適宜に調整することが可能である。また、ドリフト領域112の形成は、イオン注入のみを複数回注入する多段注入により形成しても問題ない。
【0041】
次いで、
図8に示すように、N型拡散層113を、周知の多段注入もしくは、周知のドライブウェルによって、ウェル領域105における表層部における半導体基板101の表面方向においてゲート酸化膜110から離れた位置に形成する。次いで、犠牲酸化膜103を除去する。次いで、800~900℃の温度で、酸素雰囲気中にて酸化を行い、3~15nmの低耐圧トランジスタ用のゲート酸化膜114を形成する。なお、ゲート酸化膜114はCVD法により形成した誘電膜であってもよい。同一基板上に5V以下のトランジスタを作製する場合では、N型拡散層113は、PMOSのウェルと兼用することができる。
【0042】
次いで、
図9に示すように、ゲート電極となる厚さ100~200nmのポリシリコン層115をCVD法にてゲート酸化膜110上から堆積させる。ポリシリコン層115は、半導体基板101の表面方向においてゲート酸化膜110からN型拡散層113に至る所定の領域に形成される。ポリシリコン層115は、トランジスタ20のゲート電極となる。トランジスタ20のゲート電極は、それぞれ、トランジスタの耐圧による種類に応じた所定のパターンでパターニングされる。
【0043】
次いで、
図10に示すように、レジストマスク116を介して低耐圧トランジスタ部のP型のイオン種を低濃度でイオン注入し、LDD領域117を形成する。LDD領域117は、レジストマスク116、ポリシリコン層115および素子分離領域102をマスクとして、N型拡散層113の表層部に形成される。ショートチャネル抑制のためにN型イオン種を用いたHalo注入をLDD領域117の形成と同時に行ってもよい。
【0044】
次いで、
図11に示すように、全面に厚さ100nmの酸化膜をCVD法により堆積させ、次いで全面エッチバックを行い、ゲート電極の側壁となるGPサイドウォール118を形成する。当該酸化膜は、誘電膜であってもよい。
【0045】
次いで、
図12に示すように、トランジスタ20のソース・ドレイン領域用のB(ボロンイオン)をドーズ量1.0×10
15~5.0×10
15ions/cm
2、エネルギー2~10KeV、でイオン注入し、P+領域119を形成する。P+領域119は、素子分離領域102をマスクとして、LDD領域117およびドリフト領域107の表層部に形成される。P+領域119は、トランジスタ20のソース領域またはドレイン領域になる。
【0046】
中高耐圧トランジスタであるトランジスタ20を作製する場合では、P+領域119の形成後、ウェルコンタクト領域用のAs(砒素イオン)をドーズ量1.0×10
15~5.0×10
15ions/cm
2、エネルギー2~10KeV、の条件でイオン注入する。こうして、LDD領域117の表層部にN型拡散領域(
図1の符号120)をさらに形成する。N型拡散領域は、所定のP+領域119に隣接して形成される。
【0047】
なお、ゲート電極、および、ソースまたはドレイン領域については、周知の技術によりシリサイドを形成して低抵抗化することも可能である。この場合、好ましくは、保護素子10に対して、ESDサージの集中を緩和するために、素子分離領域102B、102Cの端部から1μm以上3μm以下の距離を離し、シリサイドを形成する。
【0048】
次いで、例えばP-SiOをCVD法によりゲート酸化膜114およびポリシリコン層115上に堆積させる。次いで、CMP(化学機械研磨)法により平坦化し、1000nmの厚さの層間絶縁膜121を形成する。次いで層間絶縁膜121にコンタクトホール122を形成し、周知の技術により層間絶縁膜121上に電極123を形成する。こうして、
図1に示されるような保護素子10およびトランジスタ20が同一の半導体基板101上に作製される。
【0049】
[半導体装置における電気特性]
<保護素子およびトランジスタの電流電圧特性>
保護素子10およびトランジスタ20の電流電圧特性を説明する。
図13は、保護素子10およびトランジスタ20の電流電圧特性の一例を模式的に示す図である。
図13中の線A1は保護素子10の電流電圧特性を表し、
図13中の線Bはトランジスタ20の電流電圧特性を表し、点Xは保護素子の耐圧を表す。
【0050】
保護素子10およびトランジスタ20に逆方向に流れる電流は、いずれも電源電圧までは実質的に一定である。トランジスタ20は、線Bで示されるように、トリガ電圧を超える電圧が印加されると電圧の増加に伴って流れる電流も増加する。保護素子10は、線A1で示されるように、トリガ電圧未満の電圧が印加されると電圧の増加に伴って流れる電流も増加する。ESDサージの場合、蓄積された電荷が放出される為、デバイスに電流が流れ込むことになる。保護素子10に過剰な電流Ixが印加されると、保護素子10のPN結合は、線A1上の点Xの電圧Vxにおいて破壊される。トランジスタ20においても同様であり、トランジスタ20にトリガ電圧を超える過剰な電圧が印加されるような電流が流れ込むと、PN結合が破壊され得る。
【0051】
半導体装置1において、保護素子10は、例えばトランジスタ20とは電源側が共通であり、出力側は、外部に接続される。したがって、トランジスタ20に至る配線に、静電気あるいは落雷によって過剰な電流、電圧が急激に印加された場合、過剰な電流、電圧はトランジスタ20に先立って保護素子10に供給される。電流Ixを超えない範囲において、保護素子10の電流電圧特性は可逆的である。よって、半導体装置1において、トランジスタ20は、保護素子10によって、トランジスタ20にはトランジスタ20となるHVPMOSのトリガ電圧以下での電圧(最大Vx)しかかからないので、急激な電気の供給による破壊から守られる。
【0052】
<保護素子による第一の耐圧制御>
半導体装置1において、保護素子10の耐圧は、
図2の矢印Aで示す距離によって、トランジスタ20の耐圧よりも小さくなるように設定される。当該距離Aは、素子分離領域の半導体基板101の表面方向における第一活性領域側の端から第二活性領域側の端までの距離である。当該距離Aは、より具体的には、保護素子10におけるドレイン側の第二活性領域とゲート、ソースを含む第一活性領域との間の素子分離領域の幅、すなわち素子分離領域102Bの幅である。
【0053】
当該距離Aは、素子分離領域102Bの幅として特定可能な値であればよく、半導体基板101における特定の位置、例えば素子分離領域102Bの半導体基板101の表面の位置における幅、であってよい。素子分離領域102Bの位置および形状は、半導体装置1の断面観察により確認することが可能である。より詳しくは、半導体装置1の断面において、酸化膜をエッチング(薬液によるウェットエッチング、またはドライエッチング)することにより、素子分離領域102Bがエッチングされ、段差部が形成される。当該距離Aは、半導体装置1の断面における当該段差部において、SEM等によって測定することが可能である。
【0054】
図14は、保護素子10における距離Aと保護素子10の耐圧との関係の一例を模式的に示す図である。
図14における線A2は、距離Aと保護素子10へ印加される電圧との間における保護素子10の耐圧の挙動を示している。保護素子10の耐圧は、距離Aと電圧との間において直線的な正の相関性を有している。なお、この場合、素子分離領域102Bの半導体基板101の表面方向におけるN型拡散層113側の端の位置は一定としている。
【0055】
距離Aを十分に小さくすると、保護素子10の電流電圧特性における電流の立ち上がりの電圧がより小さくなる、これは、以下に示す理由によると考えられる。すなわち、距離Aを十分に小さくすると、N型拡散層113(N-)とP+領域119B(P+)間に広がる空乏層の幅が狭くなる。このため、電界強度=電圧/空乏層幅の関係から、P+領域119B(P+)端での電界強度が強くなる。またアバランシェ崩壊を起こす臨界電界強度(Ecri)は一定であり、電界強度はEcriを超える電圧で耐圧が決まる。このため、距離Aを十分に小さくすると電界強度が高くなるので、結果として耐圧が低下する。
【0056】
よって、トランジスタ20への過電流を保護素子10へより流しやすくなり、一方で耐圧Xの電流、電圧値も小さくなることから保護素子10が過電流によって破壊されやすくなる。距離Aを大きくすると、保護素子10の電流電圧特性における電流の立ち上がりの電圧がより大きく、トランジスタ20のトリガ電圧により近くなる。よって、トランジスタ20へ過電流が流れる可能性が高まり、保護素子10の機能が実質的に不十分になることがある。
【0057】
距離Aによる保護素子10の電流電圧特性は、距離Aのみを変更した半導体装置による実験値の測定、あるいは保護素子10の材料の種類と層構造の幾何学的な情報とに基づく演算、などによって決定することが可能である。たとえば、上記の半導体装置1であれば、保護素子10の耐圧は、距離Aが1.0~4.0μmの範囲で好適に調整することが可能である。
【0058】
<保護素子による第一の耐圧制御>
半導体装置1において、保護素子10の耐圧は、
図2の矢印Bで示す距離によって、トランジスタ20の耐圧よりも小さくなるようにも設定される。当該距離Bは、半導体基板101の表面方向における素子分離領域の第二活性領域側の端から第二活性領域の第一活性領域側の端までの距離である。当該距離Bは、より具体的には、表面方向における保護素子10のドレイン側の第二活性領域からドリフト領域107の一端までの距離、すなわち素子分離領域102Bの他端からドリフト領域107までの距離である。
【0059】
当該距離Bは、素子分離領域102Bの他端からドリフト領域107の一端までの距離として特定可能な値であればよく、半導体基板101における特定の位置、例えば半導体基板101の表面の位置における上記の距離、であってよい。素子分離領域102Bおよびドリフト領域107の位置および形状は、半導体装置1の断面観察により確認することが可能である。より詳しくは、半導体装置1の断面において、ドリフト領域107(P-拡散)もしくはウェル領域105(N-拡散)をウェットエッチングすることにより、P-拡散とN-拡散との間に段差ができる。このため、当該距離Bは、半導体装置1の断面における当該段差から素子分離領域102Bの他端までの距離として、SEM等による当該断面の観察によって測定することが可能である。
【0060】
あるいは、距離Bは、周知のSCM(走査型静電容量顕微鏡法)によりコントラストを付ける、EDX(エネルギー分散型X線分析)により上記断面の元素分布を確認することによっても測定することが可能である。
【0061】
図15は、保護素子10における距離Bと保護素子10の耐圧との関係の一例を模式的に示す図である。
図15における線A3は、距離Aと保護素子10へ印加される電圧との間における保護素子10の耐圧Xの挙動を示している。保護素子10の耐圧Xは距離Bと電圧との間において直線的な正の相関性を有している。なお、この場合、ドリフト領域107の半導体基板101の表面方向におけるN型拡散層113側の端の位置は一定としている。
【0062】
すなわち、距離Bを十分に小さくすると、保護素子10の電流電圧特性における電流の立ち上がりの電圧がより小さくなる。これは、以下に示す理由によると考えられる。距離Bを十分に小さくすると、例えばドリフト領域107の一端をP+領域119B側により近づけると、P型拡散側(ドリフト領域107およびP+領域119B)でのP型不純物の濃度勾配がより急になる。このため、P型拡散部での空乏層の広がりが狭くなる。その結果、ドリフト領域107(P-)による電界緩和が弱くなり、電界強度が強くなる。したがって、アバランシェ崩壊を起こしやすくなる。
【0063】
よって、トランジスタ20への過電流を保護素子10へより流しやすくなり、一方で耐圧Xの電流、電圧値も小さくなることから保護素子10が過電流によって破壊されやすくなる。距離Bを大きくすると、保護素子10の電流電圧特性における電流の立ち上がりの電圧がより大きく、トランジスタ20のトリガ電圧により近くなる。よって、トランジスタ20へ過電流が流れる可能性が高まり、保護素子10の機能が実質的に不十分になることがある。
【0064】
距離Bによる保護素子10の電流電圧特性は、距離Bのみを変更した半導体装置による実験値の測定、あるいは保護素子10の材料の種類と層構造の幾何学的な情報とに基づく演算、などによって決定することが可能である。たとえば、上記の半導体装置1であれば、保護素子10の耐圧は、距離Bが0.5~6.0μmの範囲で好適に調整することが可能である。
【0065】
本実施形態において、保護素子10の耐圧は、距離Aのみによって設定されてもよいし、距離Bのみによって設定されてもよいし、これらの距離の両方によって設定されてもよい。
【0066】
[本実施形態の主な作用効果]
上記の説明から明らかなように、半導体装置1は、MOS型の中高耐圧トランジスタを有する低電圧トランジスタ混載の半導体装置に関する。半導体装置1は、中高耐圧PMOSトランジスタに寄生して存在する横型PNPトランジスタ構造を利用して構成され得る。そして、ドリフトの長さ(A)を調整することで、または、ウェル領域105とドリフト領域107の距離(B)を調整することで、あるいはこれらの両方を調整することで、保護素子10の耐圧を電源電圧とトランジスタ20の耐圧以下に耐圧の調整可能である。よって、このような半導体装置1の作動によって、内部能動素子であるトランジスタ20への負荷をかけることがない。
【0067】
また、半導体装置1では、例えば電源端子にドレイン、接地端子にソース、ゲート、ウェルを接続する。このため、電源-接地間のESDノイズに対して、当該ノイズの電圧(トリガー電圧)により保護素子10に流れた電流によって、保護素子10がPNPバイポーラ動作する。このため、破壊電流耐量が通常低いダイオードより、ESD保護構造の縮小が可能となり、当該保護構造を小さくすることができる。
【0068】
保護素子10は、トランジスタ20よりも簡略な構成を有する。よって、保護素子10は、トランジスタ20の構造から、ドリフト領域112を除去し、素子分離領域102Aの表面方向における寸法を調整し、ソース拡散(P+領域119A)をP+のみに変更することで、製造工程の追加なく製造することが可能である。よって保護素子10は、トランジスタ20と同一の半導体基板101に容易に製造することができる。
【0069】
また、保護素子10は、トランジスタ20に電圧の負荷をかけない高耐圧のESD保護素子となり得る。従来技術(先行特許)は、ウェルコンタクト用のN+拡散とソースP+拡散の各幅を調整することにより、能動素子の特性を維持しつつ、ESDサージに対して保護できる技術となっている。この場合、素子全体の破壊電流耐量は、ソース側のGP端にN+を配置しないPMOS構造(PNP動作のみ)と比較して、PMOSに寄生して存在する横型PNP(ドレインP+・P-/N-body/ソースP+)動作の電流と、P+Diode(P+/P-/Nbody・N+)動作の電流の和となる。そのため、トランジスタの電流耐量は低下する。
【0070】
保護素子の耐圧とトランジスタの耐圧とが同じである。そのため、ESDサージがトランジスタにも流れることになり、トランジスタの内部回路(PN接合など)が破壊される可能性がある。また、トランジスタにおけるソース側のP+拡散領域の幅が減ることから、実効電力Wが減少し、オン抵抗が増加する。
【0071】
第一の実施形態においては、保護素子10のドレイン拡散の構造の調整およびドリフト幅の調整により、保護素子10のトリガ電圧の調整を行う。よって、保護素子10のトリガ電圧をトランジスタ20のそれ以下に設定可能である。したがって、第一の実施形態によれば、トランジスタ20の内部回路に電圧負荷をかけることのないESD保護素子を提供できる。また、保護素子10がトランジスタ20などの能動素子の特性に与える影響を実質的になくすことができる。さらには、保護素子10を同一の半導体基板101に作製する際の工程の追加も必要としない。また、保護素子10は、そのサイズをダイオードよりも小さくすることができる。
【0072】
また、半導体装置1は、従来の半導体装置に比べて、トランジスタ20の表面方向における幅をより小さくすることが可能である。トランジスタ20の内部回路の破壊は、通常、過電流による発熱により、この発熱量は、電流と電圧の積に比例する。よって、電圧が高い場合では破壊電流値は低くなる。また、ESDサージでは総電荷量Qが半導体装置1に流入するので、同じ電流値dQ/dtであれば、電流を流せるようにするために、トランジスタ20の幅を大きくする必要がある。そのため、トランジスタ20のサイズが大きくなる。仮に、破壊電流値を1、保護素子10のトリガ電圧が60V、従来技術のそれが80Vとすると、破壊する熱量が同じ場合であれば、保護素子10のサイズ(幅)は1×60/80=0.75となる。すなわち、この場合では、保護素子10の幅は、従来の半導体装置のそれにおける0.75倍となる。
【0073】
上記の説明から明らかなように、本発明の第一の実施形態によれば、高圧の電源電圧からトランジスタの耐圧間で動作する高耐圧半導体装置が提供され得る。
【0074】
〔第二の実施形態〕
第一の実施形態では、トランジスタ20の製造では、ドリフト領域107の形成およびドリフト領域112の形成、の二つの工程を含んでいる。本実施形態では、トランジスタ20がドリフト領域112を有さず、ドリフト領域107が表面方向においてより第一活性領域側まで延在している。本実施形態の半導体装置は、それ以外は第一の実施形態のそれと同じに構成されている。
【0075】
本実施形態において、トランジスタ20のドリフト領域107は、表面方向において素子分離領域102Bを超えた領域まで拡散するようにドリフト領域107作製のためのイオン注入を行うことにより形成される。
【0076】
図16は、本発明の実施形態におけるトランジスタのドリフト領域の構造の耐圧とオン抵抗との関係の一例を模式的に示す図である。
図16中、実線は、第二の実施形態、すなわちドリフト領域を一回のイオン流入のみで構成した(ドリフト領域107のみを有する)場合におけるトランジスタの耐圧とオン抵抗との関係を示している。
図16中の点線は、第一の実施形態、すなわちドリフト領域を二回のイオン流入のみで構成した(ドリフト領域107、112の両方を有する)場合におけるトランジスタの耐圧とオン抵抗との関係を示している。
【0077】
本実施形態では、ドリフト領域が一回のイオン注入で形成されることから、製造の簡素化の観点から効果的である。
【0078】
一方、第一の実施形態のように、ドリフト領域を二回のイオン注入で形成する場合では、ドリフト領域の表面に近いほど不純物の濃度が高まる。よって、トランジスタのオン抵抗をより低減することが可能である。
【0079】
〔その他の実施形態〕
第一の実施形態では、保護素子10と中高耐圧トランジスタとしてのトランジスタ20とが同一の半導体基板101に作製された形態を示した。本発明の実施形態では、半導体基板上に特性、耐圧の異なる2種類以上のトランジスタを混載してもよい。たとえば本発明の実施形態では、中高耐圧トランジスタに加えて、低耐圧トランジスタを半導体基板101にさらに混載してもよい。低耐圧トランジスタは、5V以下の耐圧を有する。
【0080】
この場合、半導体装置は、低耐圧トランジスタに対応する第一の保護素子と、中高耐圧トランジスタに対応する第二の保護素子とを有していてもよいし、低耐圧トランジスタおよび中高耐圧トランジスタの両方に対応する保護素子を有していてもよい。
【0081】
本発明の実施形態では、素子分離領域は、STI技術以外の技術を用いて製造されてもよい。たとえば、素子分離領域は、シリコン局所酸化法(LOCOS)によって製造されてもよい。なお、STI技術で素子分離領域を作製することは、素子分離領域の表面方向における寸法をより精密に制御する観点から好適である。
【0082】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る半導体装置(1)は、トランジスタ(20)と保護素子(10)とを同一の半導体基板(101)に含む半導体装置であって、保護素子は、半導体基板の表層部に形成され、ソース電極に電気的に接続される第一活性領域と、半導体基板の表層部に形成され、ドレイン電極に電気的に接続される第二活性領域と、半導体基板の表層部に形成され、第二活性領域の一部に重なる一方で第一活性領域には重ならない素子分離領域(102)と、ゲート電極を含み、半導体基板の表面上に形成され、素子分離領域の一部および第一活性領域の一部に重なるゲート部と、を有し、第一活性領域におけるソース電極に接続される部分の活性と、第二活性領域におけるドレイン電極に接続される部分の活性とが同じであり、保護素子の耐圧は、半導体基板の表面に沿う方向における素子分離領域の第一活性領域側の端から第二活性領域側の端までの距離(A)、および、半導体基板の表面に沿う方向における素子分離領域の第二活性領域側の端から第二活性領域の第一活性領域側の端までの距離(B)、の一方または両方の設定により、トランジスタの耐圧よりも小さい。
【0083】
上記の構成によれば、内部素子と保護素子とを同様の工程で製造することが可能となり、保護素子中の構成の位置あるいは寸法によって保護素子の耐圧を内部素子の耐圧に応じて適切に設定することが可能である。よって、上記の構成によれば、動作電圧の異なる複数のトランジスタを混載した場合に内部素子へのサージの流入を防止可能かつコンパクトな半導体装置を実現することができる。
【0084】
本発明の態様2に係る半導体装置は、上記態様1において、ゲート部が素子分離領域上に形成されているゲート絶縁膜をさらに含み、ゲート電極が第一活性領域上、半導体基板上およびゲート絶縁膜上に一体に形成されていてもよい。
【0085】
上記の構成によれば、ゲート電流のリークを低減させる観点からより一層効果的である。
【0086】
本発明の態様3に係る半導体装置は、上記態様2において、ゲート絶縁膜が第二活性領域側のゲート部の端部に配置されていてもよい。
【0087】
上記の構成によれば、ゲート電流のリークを低減させる観点からより一層効果的である。
【0088】
本発明の態様4に係る半導体装置は、上記態様1~3のいずれかにおいて、素子分離領域がSTI技術で形成されていてもよい。
【0089】
上記の構成によれば、素子分離領域をより精密に製造することが可能であり、保護素子の耐圧を精密に設定する観点からより一層効果的である。
【0090】
本発明の態様5に係る半導体装置は、上記態様1~4のいずれかにおいて、トランジスタが中高耐圧トランジスタを含んでもよい。
【0091】
上記の構成によれば、内部素子における駆動の容易化、省電力化などの観点からより一層効果的である。
【0092】
本発明の態様6に係る半導体装置は、上記態様5において、トランジスタが中高耐圧トランジスタよりも低い耐圧を有する低耐圧トランジスタをさらに含むであってもよい。
【0093】
上記の構成によれば、種々の内部素子が同一の半導体基板に混載された半導体装置を構成する観点からより一層効果的である。
【0094】
本発明の態様7に係る半導体装置は、上記態様1~6のいずれかにおいて、トランジスタは、半導体基板の表層部にドリフト領域を含み、ドリフト領域は、半導体基板の表面側に不純物のより高い濃度の領域を有していてもよい。
【0095】
上記の構成によれば、内部素子のオン抵抗を低減させる観点からより一層効果的である。
【0096】
本発明の実施形態に係る半導体装置によれば、回路内部の中高耐圧能動素子の性能を変えず、工程、回路の追加無く、電源電圧以上かつ中高耐圧能動素子の耐圧以下に、トリガ電圧、ホールド電圧を持つ縮小した中高耐圧用のESD保護素子を提供することが可能となる。
【0097】
また、上述のような構成によれば、複数種の内部素子を混載した半導体装置におけるESDサージに対する保護を適切、簡易かつより省スペースで実現可能である。これにより、産業と技術革新の基盤の構築への貢献が期待され持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0098】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 半導体装置
10 保護素子
20 トランジスタ
101 半導体基板
102 素子分離領域
103 犠牲酸化膜
104、106、109、111、116 レジストマスク
105 ウェル領域
107、112 ドリフト領域
108 SiN膜
110、114 ゲート酸化膜
113 N型拡散層
115 ポリシリコン層(ゲート電極)
117 LDD領域
118 GPサイドウォール
119 P+領域
120 N型拡散領域
121 層間絶縁膜
122 コンタクトホール
123 電極