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特開2023-80841負荷駆動回路、表示ドライバ、表示装置及び半導体装置
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  • 特開-負荷駆動回路、表示ドライバ、表示装置及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080841
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】負荷駆動回路、表示ドライバ、表示装置及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20230602BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20230602BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
G09G3/20 623B
G09G3/3275
G09G3/20 623R
G09G3/20 670A
G09G3/36
G09G3/20 612T
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194370
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土 弘
【テーマコード(参考)】
5C006
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
5C006AA16
5C006AA22
5C006AC26
5C006AF46
5C006AF51
5C006AF53
5C006AF54
5C006AF65
5C006AF68
5C006AF73
5C006AF81
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BC16
5C006BF04
5C006BF14
5C006BF24
5C006BF25
5C006BF31
5C006BF33
5C006BF46
5C006EA01
5C006EB01
5C006FA41
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD14
5C080DD22
5C080FF11
5C080GG11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080KK20
5C380AB34
5C380BA11
5C380BA21
5C380CA17
5C380CF26
5C380CF41
5C380CF51
5C380CF52
5C380CF54
5C380CF61
5C380CF64
5C380DA06
5C380DA49
5C380GA04
5C380GA07
5C380HA13
(57)【要約】
【目的】出力電流の異常を高感度、高精度、及び高速に検知することが可能な負荷駆動回路、表示ドライバ、表示装置及び半導体装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、第1及び第2の出力段トランジスタからなるプッシュプル出力段を有する出力アンプと、出力アンプが出力した出力電流の異常を検知する検知回路と、を含む。検知回路は、第1の出力段トランジスタに流れる電流をミラーした第1及び第2の電流、第2の出力段トランジスタに流れる電流をミラーした第3及び第4の電流を夫々生成し、第1及び第3の電流を第1の出力ノードで結合し、第1の出力ノードの電圧を第1の電圧として出力すると共に、第2及び第4の電流を第2の出力ノードで結合し、第2の出力ノードの電圧を第2の電圧として出力する結合回路と、第1及び第2の電圧に基づき異常又は正常を表す判定信号を出力する判定回路と、を含む。結合回路は、基準状態時において第3の電流が第1の電流より大きく、第2の電流が第4の電流より大となるように第1~第4の電流を夫々生成する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電型の異なる第1及び第2の出力段トランジスタで構成されるプッシュプル出力段を有し、前記プッシュプル出力段から出力された出力電流を負荷に出力する出力アンプと、
前記出力電流の異常を検知する検知回路と、を含み、
前記検知回路は、
前記第1及び第2の出力段トランジスタの一方に流れる電流に対するミラー電流である第1及び第2の電流を夫々生成すると共に、前記第1及び前記第2の出力段トランジスタの他方に流れる電流に対するミラー電流である第3及び第4の電流を夫々生成し、前記第1の電流及び前記第3の電流を第1の出力ノードで結合して前記第1の出力ノードに生じた電圧を第1の電圧として出力すると共に、前記第2の電流及び前記第4の電流を第2の出力ノードで結合して前記第2の出力ノードに生じた電圧を第2の電圧として出力する結合回路と、
前記第1及び前記第2の電圧に基づき、前記出力電流が所定範囲内で安定化する基準状態から変動したか否かを検知し、前記変動を検知した場合には異常、前記変動を検知しなかった場合には正常を表す判定信号を出力する判定回路と、を含み、
前記結合回路は、前記基準状態時において前記第3の電流が前記第1の電流より大きく且つ前記第2の電流が前記第4の電流より大きくなるように前記第1~前記第4の電流を夫々生成することを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項2】
前記結合回路は、
前記第1の電流を前記第1の出力ノードに送出すると共に前記第1の出力ノードから前記第3の電流を引き抜くことで、前記第1の電流と前記第3の電流とを結合し、
前記第2の電流を前記第2の出力ノードに送出すると共に前記第2の出力ノードから前記第4の電流を引き抜くことで、前記第2の電流と前記第4の電流とを結合することを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動回路。
【請求項3】
前記判定回路は、前記第1の電圧に基づく論理値及び前記第2の電圧に基づく論理値が互いに異なる場合には正常、一致した場合には異常と判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷駆動回路。
【請求項4】
前記検知回路は、活性化又は非活性化を指示する制御信号を受け、前記制御信号が前記活性化を指示する場合に自身の検知動作を行う一方、前記制御信号が前記非活性化を指示する場合には前記検知動作を停止させる活性・非活性切換回路を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の負荷駆動回路。
【請求項5】
前記結合回路は、
前記第1及び前記第3の電流を夫々生成する、互いに導電型の異なる第1のトランジスタ回路対と、
前記第2及び前記第4の電流を夫々生成する、互いに導電型の異なる第2のトランジスタ回路対と、を含み、
前記第1のトランジスタ回路対のうち前記第1の電流を生成する一方のトランジスタ回路は少なくとも1個のトランジスタからなり、前記第3の電流を生成する他方のトランジスタ回路は並列に接続された複数のトランジスタからなり、
前記第2のトランジスタ回路対のうち前記第4の電流を生成する一方のトランジスタ回路は少なくとも1個のトランジスタからなり、前記第2の電流を生成する他方のトランジスタ回路は並列に接続された複数のトランジスタからなり、
前記複数のトランジスタは、制御信号により活性又は非活性に制御するトランジスタ数の割合が可変に設定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の負荷駆動回路。
【請求項6】
前記結合回路は、
前記第1及び前記第3の電流を夫々生成する、互いに導電型の異なる第1のトランジスタ回路対と、
前記第2及び前記第4の電流を夫々生成する、互いに導電型の異なる第2のトランジスタ回路対と、を含み、
前記第1のトランジスタ回路対のうち前記第1の電流を生成する一方のトランジスタ回路は少なくとも1個のトランジスタからなり、前記第3の電流を生成する他方のトランジスタ回路は並列に接続された少なくとも1個のトランジスタと第1の電流源からなり、
前記第2のトランジスタ回路対のうち前記第4の電流を生成する一方のトランジスタ回路は少なくとも1個のトランジスタからなり、前記第2の電流を生成する他方のトランジスタ回路は並列に接続された少なくとも1個のトランジスタと第2の電流源からなり、
前記第1及び第2の電流源は、制御信号により電流値が可変に設定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の負荷駆動回路。
【請求項7】
第1の電源電圧範囲を構成する第1の基準電位及び第1の電源電位と、前記第1の電源電圧範囲より小さい第2の電源電圧範囲を構成するとともに前記第1の電源電圧範囲内に設けられた第2の基準電位及び第2の電源電位を有し、
前記第1の出力段トランジスタ及び前記第2の出力段トランジスタは、前記第1の基準電位及び前記第1の電源電位に基づき夫々が出力する電流を生成し、
前記検知回路は、前記第1の出力段トランジスタ及び前記第2の出力段トランジスタから出力された電流に対するミラー電流対を前記第2の基準電位及び前記第2の電源電位に基づいて生成する電流折返部を含み、 前記結合回路は、前記第2の基準電位及び前記第2の電源電位に基づき、前記電流折返部で生成された前記ミラー電流対から前記第1~第4の電流を生成することを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載の負荷駆動回路。
【請求項8】
k(kは2以上の整数)個の前記出力アンプを含み、
前記検知回路は、
前記k個の前記出力アンプの各々で生成される、夫々が前記第1及び第2の出力段トランジスタの前記一方に流れる電流に対する第1のミラー電流、及び前記第1及び第2の出力段トランジスタの前記他方に流れる電流に対する第2のミラー電流からなるk個のミラー電流対の各々を順次選択する選択スイッチを含み、
前記選択スイッチで選択された前記ミラー電流対における前記第1のミラー電流に対するミラー電流として前記第1及び前記第2の電流を夫々生成し、前記第2のミラー電流に対するミラー電流として前記第3及び前記第4の電流を夫々生成することを特徴とする請求項1~7のいずれか1に記載の負荷駆動回路。
【請求項9】
前記出力アンプは、前記負荷が接続される出力端を有し、
前記出力アンプの前記第1の出力段トランジスタは、第1の電源電位をソースで受け、ドレインが前記出力端に接続されており、前記第2の出力段トランジスタは、第1の基準電位をソースで受け、ドレインが前記出力端に接続されており、
前記結合回路は、
前記第1の電流を生成する第1のトランジスタと、
前記第2の電流を生成する第2のトランジスタと、
前記第3の電流を生成する第3のトランジスタと、
前記第4の電流を生成する第4のトランジスタと、を含み、
前記第1のトランジスタは、前記第1の電源電位をソースで受け、ゲートが前記第1の出力段トランジスタのゲートに接続されており、ドレインが前記第1の出力ノードに接続されており、
前記第2のトランジスタは、前記第1の電源電位をソースで受け、ゲートが前記第1の出力段トランジスタのゲートに接続されており、ドレインが前記第2の出力ノードに接続されており、
前記第3のトランジスタは、前記第1の基準電位をソースで受け、ゲートが前記第2の出力段トランジスタのゲートに接続されており、ドレインが前記第1の出力ノードに接続されており、
前記第4のトランジスタは、前記第1の基準電位をソースで受け、ゲートが前記第2の出力段トランジスタのゲートに接続されており、ドレインが前記第2の出力ノードに接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1に記載の負荷駆動回路。
【請求項10】
前記出力アンプは、前記負荷が接続される出力端を有し、
前記出力アンプの前記第1の出力段トランジスタは、前記第1の電源電位をソースで受け、ドレインが前記出力端に接続されており、前記第2の出力段トランジスタは、前記第1の基準電位をソースで受け、ドレインが前記出力端に接続されており、
前記検知回路は、
前記第1の電源電位をソースで受け、ゲートが前記第1の出力段トランジスタのゲートに接続されており、ドレインが第3のノードに接続されている第1のミラー電流生成トランジスタと、
前記第1の基準電位をソースで受け、ゲートが前記第2の出力段トランジスタのゲートに接続されており、ドレインが第4のノードに接続されている第2のミラー電流生成トランジスタと、
前記第2の電源電位をソースで受け、ゲート及びドレインが前記第4のノードに接続されている第1の折返トランジスタと、
前記第2の基準電位をソースで受け、ゲート及びドレインが前記第3のノードに接続されている第2の折返トランジスタと、を含み、
前記結合回路は、
前記第1の電流を生成する第1のトランジスタと、
前記第2の電流を生成する第2のトランジスタと、
前記第3の電流を生成する第3のトランジスタと、
前記第4の電流を生成する第4のトランジスタと、を含み、
前記第1のトランジスタは、前記第2の電源電位をソースで受け、ゲートが前記第4のノードに接続されており、ドレインが前記第1の出力ノードに接続されており、
前記第2のトランジスタは、前記第2の電源電位をソースで受け、ゲートが前記第4のノードに接続されており、ドレインが前記第2の出力ノードに接続されており、
前記第3のトランジスタは、第2の基準電位をソースで受け、ゲートが前記第3のノードに接続されており、ドレインが前記第1の出力ノードに接続されており、
前記第4のトランジスタは、前記第2の基準電位をソースで受け、ゲートが前記第3のノードに接続されており、ドレインが前記第2の出力ノードに接続されていることを特徴とする請求項7に記載の負荷駆動回路。
【請求項11】
請求項1~7に記載の前記負荷駆動回路をk(kは2以上の整数)個含み、k個の前記負荷駆動回路から出力されたk個の前記出力電流を表示パネルのk個のデータ線に夫々出力しつつ、前記判定信号を外部に出力することを特徴とする表示ドライバ。
【請求項12】
請求項8に記載の前記負荷駆動回路を含み、前記負荷駆動回路の前記k個の前記出力アンプの各々から出力されたk個の前記出力電流を表示パネルのk個のデータ線に夫々出力しつつ、前記判定信号を外部に出力することを特徴とする表示ドライバ。
【請求項13】
前記表示パネルに表示する画像を表す映像信号を受け、
前記検知回路は、前記映像信号における各フレームのブランキング期間において活性化して前記出力電流の異常を検知する検知動作を行うことを特徴とする請求項11又は12に記載の表示ドライバ。
【請求項14】
請求項11~13に記載の前記表示ドライバを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項15】
導電型の異なる第1及び第2の出力段トランジスタで構成されるプッシュプル出力段を有し、前記プッシュプル出力段から出力された出力電流を負荷に出力する出力アンプと、前記出力電流の異常を検知する検知回路と、を含む半導体装置であって、
前記検知回路は、
前記第1及び第2の出力段トランジスタの一方に流れる電流に対するミラー電流である第1及び第2の電流を夫々生成すると共に、前記第1及び第2の出力段トランジスタの他方に流れる電流に対するミラー電流である第3及び第4の電流を夫々生成し、前記第1の電流及び前記第3の電流を第1の出力ノードで結合して前記第1の出力ノードに生じた電圧を第1の電圧として出力すると共に、前記第2の電流及び前記第4の電流を第2の出力ノードで結合して前記第2の出力ノードに生じた電圧を第2の電圧として出力する結合回路と、
前記第1及び前記第2の電圧に基づき、前記出力電流が所定範囲内で安定化する基準状態から変動したか否かを検知し、前記変動を検知した場合には異常、前記変動を検知しなかった場合には正常を表す判定信号を出力する判定回路と、を含み、
前記結合回路は、前記基準状態時において前記第3の電流が前記第1の電流より大きく且つ前記第2の電流が前記第4の電流より大きくなるように前記第1~前記第4の電流を夫々生成することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を駆動する駆動電流(電圧)を生成する負荷駆動回路、当該負荷駆動回路を含む表示ドライバ、当該表示ドライバを含む表示装置、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主要な表示装置として、表示パネルに液晶や有機ELを用いたアクティブマトリクス駆動方式の表示装置が一般的に知られている。
【0003】
表示パネルには、ガラスやプラスチックなどの絶縁性透明基板上に、2次元画面の垂直方向に夫々伸張する複数のデータ線と、2次元画面の水平方向に夫々伸張する複数のゲート線と、が交叉して配置されている。更に、複数のデータ線と、複数のゲート線との各交叉部には、データ線及びゲート線に接続されている画素部が形成されている。各画素部はTFT(薄膜トランジスタ)スイッチと画素電極を備え、ゲート線に供給されるゲート信号によりTFTスイッチがオンの時に、データ線に供給されている階調データ信号がTFTを介して画素電極に供給される。
【0004】
液晶表示装置の表示パネルは、薄膜半導体回路が形成された半導体基板と、面全体に対向電極を形成した対向基板との間に液晶デバイスを封入した構成からなる。液晶表示装置は、表示パネルの背面に設けられたバックライトの透過率を液晶印加電圧で制御することで階調表示が行われる。カラー表示は、LEDバックライトとカラーフィルターの組合せにより、画素毎にRGBの3原色を画素毎に割り当て、3原色の色合成により実現される。
【0005】
一方、有機EL表示装置の表示パネルは、薄膜半導体回路及び画素部毎に有機EL素子が形成された半導体基板で構成され、各画素部では、画素電極に供給された階調データ信号を電流変換して有機EL素子に供給する画素回路が形成される。有機EL表示装置は、各画素部の有機EL素子に供給された電流により有機EL素子の発光強度が制御されることで階調表示が行われる。カラー表示は、画素毎に割り当てられたRGBの3原色の有機EL素子の発光、あるいは単色の有機EL素子の発光とカラーフィルターの組合せによる3原色の色合成により実現される。
【0006】
このような表示装置には、上記した表示パネルと共に、当該表示パネルを負荷として駆動する負荷駆動回路として、以下のゲートドライバ及びデータドライバが含まれている。
【0007】
ゲートドライバは、各画素行単位でTFTスイッチを順次オンに制御する水平走査信号をゲート線に供給する。
【0008】
データドライバは、各画素の輝度レベルに対応したアナログ電圧値を有する階調信号を生成し、これを1水平走査期間単位のデータパルスとしてデータ線に供給する。
【0009】
図1は、アクティブマトリクス型の表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【0010】
図1に示す表示装置は、絶縁性基板上に水平方向に配線されたゲート線GL1~GLr、垂直方向に配線されたデータ線DL1~DLm、各ゲート線とデータ線との交差部にマトリックス上に配置された画素部154を備えた表示パネル150と、コントローラ130とを含む。なお、表示パネル150上には、各ゲート線を駆動するゲートドライバ110、及び各データ線を駆動する表示ドライバとしてのデータドライバ120が設けられている。コントローラ130は、これらゲートドライバ110及びデータドライバ120の出力タイミングを調整する。
【0011】
ゲートドライバ110は、コントローラ130から信号群GSが供給され、信号群GSに基づき、各ゲート線へ供給する走査信号を出力する。データドライバ120は、コントローラ130からCLK、制御信号及び映像データ信号等をまとめた映像データ信号VDSが供給され、この映像データ信号VDSに基づき、各データ線へ供給する階調信号を出力する。
【0012】
尚、データドライバ120は、通常シリコンLSIで形成され、表示パネル150の端部にCOG(Chip On Glass)やCOF(Chip On Film)で実装される。データドライバ120が複数の個別ICで構成される場合、各々が駆動を担うデータ線に対応した映像データ信号VDSが、コントローラ130から各データドライバICへ供給される。データドライバ120が単一または少数のICの場合には、コントローラ130がデータドライバ120に内蔵される場合もあり、その場合は、外部からコントローラ130へ供給される信号群が直接データドライバ120へ供給される。
【0013】
ところで、近年、表示パネルの高解像度化が進み、画素ピッチの縮小に伴い配線幅や配線間隔の縮小化が図られており、それに伴い、表示パネルの故障リスクが高くなっている。
【0014】
よって、近年、ゲートドライバ、データドライバ及びコントローラの実装後において、表示パネルの異常や故障を検知する機能の搭載要求が高まっている。また、車載向け表示パネルでは、表示画像のフリーズ状態を避けるため、表示パネルの異常を速やかに検知する機能が要求されている。
【0015】
そこで、外部に検査装置を必要とすることなく、表示パネルの欠陥や不良状態を検出及び判定する回路をデータドライバに内蔵した液晶表示装置が提案されている(例えば特許文献1の図1図4参照)。この液晶表示装置は、通常動作モード及び検査モードの切替回路及びコンパレータを含み、更に、検査モード時において、データ線に供給した信号電圧と、予め設定した基準電圧とをコンパレータで比較した比較結果に基づき、表示パネルが正常か異常かを判定する判定回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000-275610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1に記載の液晶表示装置では、データドライバに含まれている出力アンプで表示パネルのデータ線を駆動しながら、当該出力アンプの出力端の電圧を検知しているため、特に表示パネル内のデータ線と他の配線間との間で生じる小規模な短絡等の異常を高感度に検知するのが困難であった。
【0018】
また、当該液晶表示装置の判定回路(例えば特許文献1の図4)は、基準電圧を生成する抵抗素子や上記したコンパレータで構成されているので、抵抗素子のばらつきやコンパレータを構成するトランジスタの閾値電圧のばらつき等により、検知精度にばらつきが生じやすい。
【0019】
更に、上記した通常動作モード及び検査モードの切替回路や判定回路として、上記した出力アンプと同じ電源電圧、つまり論理回路の電源電圧よりも高い電圧で動作する回路を採用することになるので、チップサイズが増加し、コスト高を招くという問題があった。
【0020】
そこで、本発明は、装置規模の増大を抑えて、負荷を駆動すべく当該負荷に出力する電流の異常を高感度、高精度、及び高速に検知することが可能な負荷駆動回路、当該負荷駆動回路を複数備えた表示ドライバ、当該表示ドライバを含む表示装置、及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る負荷駆動回路は、導電型の異なる第1及び第2の出力段トランジスタで構成されるプッシュプル出力段を有し、前記プッシュプル出力段から出力された出力電流を負荷に出力する出力アンプと、前記出力電流の異常を検知する検知回路と、を含み、前記検知回路は、前記第1の出力段トランジスタに流れる電流に対するミラー電流である第1及び第2の電流を夫々生成すると共に、前記第2の出力段トランジスタに流れる電流に対するミラー電流である第3及び第4の電流を夫々生成し、前記第1の電流及び前記第3の電流を第1の出力ノードで結合して前記第1の出力ノードに生じた電圧を第1の電圧として出力すると共に、前記第2の電流及び前記第4の電流を第2の出力ノードで結合して前記第2の出力ノードに生じた電圧を第2の電圧として出力する結合回路と、前記第1及び前記第2の電圧に基づき、前記出力電流が所定範囲内で安定化する基準状態から変動したか否かを検知し、前記変動を検知した場合には異常、前記変動を検知しなかった場合には正常を表す判定信号を出力する判定回路と、を含み、前記結合回路は、前記基準状態時において前記第3の電流が前記第1の電流より大きく且つ前記第2の電流が前記第4の電流より大きくなるように前記第1~前記第4の電流を夫々生成することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る表示ドライバは、上記した負荷駆動回路をk(kは2以上の整数)個含み、k個の前記負荷駆動回路から出力されたk個の前記出力電流を表示パネルのk個のデータ線に夫々出力しつつ、前記判定信号を外部に出力することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る表示装置は、上記した表示ドライバを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る半導体装置は、導電型の異なる第1及び第2の出力段トランジスタで構成されるプッシュプル出力段を有し、前記プッシュプル出力段から出力された出力電流を負荷に出力する出力アンプと、前記出力電流の異常を検知する検知回路と、を含む半導体装置であって、前記検知回路は、前記第1及び第2の出力段トランジスタの一方に流れる電流に対するミラー電流である第1及び第2の電流を夫々生成すると共に、前記第1及び第2の出力段トランジスタの他方に流れる電流に対するミラー電流である第3及び第4の電流を夫々生成し、前記第1の電流及び前記第3の電流を第1の出力ノードで結合して前記第1の出力ノードに生じた電圧を第1の電圧として出力すると共に、前記第2の電流及び前記第4の電流を第2の出力ノードで結合して前記第2の出力ノードに生じた電圧を第2の電圧として出力する結合回路と、前記第1及び前記第2の電圧に基づき、前記出力電流が所定範囲内で安定化する基準状態から変動したか否かを検知し、前記変動を検知した場合には異常、前記変動を検知しなかった場合には正常を表す判定信号を出力する判定回路と、を含み、前記結合回路は、前記基準状態時において前記第3の電流が前記第1の電流より大きく且つ前記第2の電流が前記第4の電流より大きくなるように前記第1~前記第4の電流を夫々生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、抵抗素子やコンパレータを用いない簡素な検知回路の構成で、装置規模を大規模化することなく、負荷に出力される電流の異常を高速、高精度、高感度にて検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】アクティブマトリクス型の表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図2A】第1の実施例による負荷駆動回路100の構成を示す回路図である。
図2B】負荷駆動回路100に含まれる判定回路60の判定動作を示す図である。
図3】負荷駆動回路100による異常電流の検知動作の一例を説明するための図である。
図4A】第2の実施例による負荷駆動回路100Aの構成を示す回路図である。
図4B】負荷駆動回路100Aに含まれる判定回路60の判定動作を示す図である。
図5】第3の実施例による負荷駆動回路100Bの構成を示す回路図である。
図6】第4の実施例による結合回路50Aの構成を示す回路図である。
図7】結合回路50Aの変形例としての結合回路50Bの構成を示す回路図である。
図8】負荷駆動回路100Bを含むデータドライバ120_1を備えた表示装置の構成を示すブロック図である。
図9】データドライバ120_1の構成を示すブロック図である。
図10】データドライバ120_1においてデータ線の異常電流の検知を行うタイミングの一例を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0027】
図2Aは、本発明の第1の実施例による負荷駆動回路100の構成例を示す回路図である。
【0028】
図2Aに示す負荷駆動回路100は、半導体装置としての半導体ICチップに構成されており、例えば液晶又は有機EL表示パネルのデータ線のような容量性の負荷90を駆動する回路である。なお、負荷90としては、表示パネル以外の負荷素子や、各種の機能を実現する電気回路等の負荷回路であってもよい。
【0029】
負荷駆動回路100は、負荷駆動電圧生成回路VGC、出力アンプ10、及び検知回路40を含む。負荷駆動電圧生成回路VGC、出力アンプ10及び検知回路40は、AVDD電源端子を介して負荷駆動用の電源電位AVDDを受けると共に、AVSS電源端子を介して負荷駆動用の接地電位AVSSを受ける。
【0030】
負荷駆動電圧生成回路VGCは、負荷90を駆動する電圧値を有する駆動電圧AMPINを生成し、これを出力アンプ10に供給する。出力アンプ10は、出力端子P1の電圧が上記した駆動電圧AMPINと等しくなるように、出力電流を出力端子P1を介して、当該出力端子P1に接続されている負荷90に送出する。
【0031】
検知回路40は、出力アンプ10が容量性の負荷90に送出した出力電流が、出力安定状態であるか否かを検知する。つまり、検知回路40は、出力アンプ10の出力端の電圧が駆動電圧AMPINに対応した電圧値と一致しているが故に、当該出力電流がゼロの状態を含むゼロ近傍の所定範囲内で安定化する状態(以下、基準状態とも称する)から変動しているか否かを検知する。検知回路40は、出力電流における、基準状態(出力安定状態)からの変動を検知した場合には異常、当該変動を検知しなかった場合には正常を表す判定信号JDを出力する。
【0032】
出力アンプ10は、互いに導電型の異なる第1及び第2のトランジスタとしてのPch(以下、Pchと称する)のトランジスタ11、及びNch(以下、Nchと称する)のトランジスタ12で構成されるプッシュプル出力段と、差動段15と、を有する。
【0033】
差動段15は、駆動電圧AMPINを自身の非反転入力端(+)で受け、出力端子P1の電圧(出力電圧と称する)を自身の反転入力端(―)で受けるオペアンプである。
【0034】
差動段15は、駆動電圧AMPINと出力電圧との差分に対応したレベルを有する信号PG及びNGを生成する。すなわち、差動段15は、駆動電圧AMPINが出力電圧より高く且つその差が大きいほど低いレベルを有する信号PGを生成し、駆動電圧AMPINが出力電圧より低く且つその差が大きいほど高いレベルを有する信号NGを生成する。差動段15は、当該信号PGをノードn1を介してトランジスタ11のゲートに供給すると共に、信号NGをノードn2を介してトランジスタ12のゲートに供給する。
【0035】
プッシュプル出力段を為すトランジスタ11(以下、出力段トランジスタ11とも称する)のソースには負荷駆動用の電源電位AVDDが印加されており、ドレインがノードn0、出力端子P1及びトランジスタ12のドレインに接続されている。出力段トランジスタ11のソースには接地電位AVSSが印加されている。出力段トランジスタ11は、自身のゲートで受けた信号PGに対応した出力電流を自身のドレインを介してノードn0に送出する。
【0036】
プッシュプル出力段を為すトランジスタ12(以下、出力段トランジスタ12とも称する)のソースには負荷駆動用の接地電位AVSSが印加されており、ドレインが出力端子P1及び出力段トランジスタ11のドレインに接続されている。出力段トランジスタ12は、自身のゲートで受けた信号NGに対応した出力電流をノードn0から引き抜く。
【0037】
当該プッシュプル出力段では、出力段トランジスタ11が電源電位AVDDに基づき出力端子P1に送出する電流(充電電流)と、出力段トランジスタ12が出力端子P1から接地電位AVSSの端子側に引き抜く電流(放電電流)と、について一方が増加作用を生じるとき、他方が減少作用を生じる、いわゆるプッシュプル動作が行われる。
【0038】
上記した構成により、充電電流から放電電流を差し引いた出力電流が、ノードn0及び出力端子P1を介して負荷90に送出される。これにより、ノードn0には駆動電圧AMPINを有する出力駆動信号が生成され、当該出力駆動信号によって負荷90が駆動される。
【0039】
検知回路40は、活性・非活性切換回路20、結合回路50及び判定回路60を含む。
【0040】
活性・非活性切換回路20は、互いに相補的にオン状態及びオフ状態のうちの一方の状態に設定されるスイッチ21及び23と、互いに相補的にオン状態及びオフ状態のうちの一方の状態に設定されるスイッチ22及び24と、を含む。活性・非活性切換回路20は、各種の動作制御を促す制御信号CNTを受ける。
【0041】
ここで、検知回路40の活性化を促す制御信号CNTを受けた場合には、活性・非活性切換回路20は、スイッチ21及び22をオン状態、スイッチ23及び24をオフ状態に設定する。これにより、出力アンプ10のノードn1が結合回路50のノードn5と接続されると共に、当該出力アンプ10のノードn2が結合回路50のノードn6と接続され、検知回路40が活性(イネーブル)状態となり、後述する出力電流の検知動作を行う。
【0042】
一方、検知回路40の非活性化を促す制御信号CNTを受けた場合には、活性・非活性切換回路20は、スイッチ23及び24をオン状態、スイッチ21及び22をオフ状態に設定する。これにより、ノードn5には負荷駆動用の電源電位AVDDが印加され、ノードn6には負荷駆動用の接地電位AVSSが印加されると共に、ノードn1及びn5間の接続、並びにノードn2及びn6間の接続が共に遮断される。これにより、検知回路40が非活性(ディスエイブル)状態となり、後述する出力電流の検知動作を停止する。
【0043】
なおノードn7とAVSS電源端子間及びノードn8とAVDD電源端子間に、スイッチ23、24と連動してオン状態又はオフ状態に設定されるスイッチを更に設けてもよい。
【0044】
結合回路50は、第1のトランジスタとしてのPchのトランジスタ51、第2のトランジスタとしてのPchのトランジスタ52、第3のトランジスタとしてのNchのトランジスタ53、及び第4のトランジスタとしてのNchのトランジスタ54で構成される。トランジスタ51及び52各々のソースには電源電位AVDDが印加されており、夫々のゲートがノードn5に接続されている。トランジスタ51のドレインはノードn7を介してトランジスタ53のドレインと接続されている。トランジスタ52のドレインはノードn8を介してトランジスタ54のドレインと接続されている。トランジスタ53及び54各々のゲートはノードn6に接続されており、夫々のソースには接地電位AVSSが印加されている。
【0045】
かかる構成により、結合回路50では、トランジスタ51及び53により、出力アンプ10の出力段トランジスタ11及び12に流れる電流に対する第1のミラー電流対(I1、I3)が生成される。更に、トランジスタ52及び54により、出力アンプ10の出力段トランジスタ11及び12に流れる電流に対する第2のミラー電流対(I2、I4)が生成される。
【0046】
つまり、トランジスタ51は、出力段トランジスタ11に流れる電流に対するミラー電流を含むソースタイプの第1の電流I1を生成し、トランジスタ52は、出力段トランジスタ11に流れる電流に対するミラー電流を含むソースタイプの第2の電流I2を生成する。トランジスタ53は、出力段トランジスタ12に流れる電流に対するミラー電流を含むシンクタイプの第3の電流I3を生成し、トランジスタ54は、出力段トランジスタ12に流れる電流に対するミラー電流を含むシンクタイプの第4の電流I4を生成する。
【0047】
ここで、結合回路50では、第1の電流I1と第2の電流I2とをノードn7にて結合、つまり、第1の電流I1をノードn7に送出すると共に第3の電流I3をノードn7から引き抜く。これにより、結合回路50では、ノードn7に生じた電圧を第1の電圧O1として出力する。
【0048】
更に、結合回路50では、第2の電流I2と第4の電流I4とをノードn8にて結合、つまり第2の電流I2をノードn8に送出すると共に第4の電流I4をノードn8から引き抜く。これにより、結合回路50では、このノードn8に生じた電圧を第2の電圧O2として出力する。
【0049】
つまり、ノードn7が結合回路50の第1の出力ノードとなり、ノードn8が結合回路50の第2の出力ノードとなる。
【0050】
尚、トランジスタ51~54は、出力電流の基準状態(出力安定状態)時において、第3の電流I3が第1の電流I1より大となり、且つ第4の電流I4が第2の電流I2より小さくなるように、夫々の電流出力能力が設定されたものが用いられる。
【0051】
判定回路60は、第1及び第2の電圧(O1、O2)を受け、第1及び第2の電圧の論理値に基づき、出力アンプ10の出力電流に対する基準状態(出力安定状態)からの変動の有無及び方向を検知する。そして、判定回路60は、その検知した変動の有無及び方向に基づき、出力アンプ10の出力電流が正常であるか異常であるのかの判定、並びに異常である場合には、出力段トランジスタ11及び12のうちのいずれに異常な電流が流れたのかを判定する。判定回路60は、その判定結果を示す判定信号JDを出力する。なお、判定回路60は、ロジック回路用の電源電位VDD及び接地電位VSSで動作するロジック回路にて構成されている。
【0052】
図2Bは、図2Aに示す負荷駆動回路100において、第1及び第2の電圧(O1、O2)に基づく判定回路60の判定動作を示す図である。
【0053】
図2Bに示すように、判定回路60は、第1及び第2の電圧O1及びO2によって表される2値の論理値(L又はH)が互いに異なる場合には正常を示す判定信号JDを出力する。一方、電圧O1及びO2によって表される論理値が異なる場合、例えば両者が共に論理値Lである場合には、判定回路60は、出力アンプ10の出力段トランジスタ12によって出力される出力電流に異常が生じていることを示す判定信号JDを出力する。また、電圧O1及びO2によって表される論理値が共にHである場合には、判定回路60は、出力アンプ10の出力段トランジスタ11によって出力される出力電流に異常が生じていることを示す判定信号JDを出力する。
【0054】
以下に、図2A及び図2Bに示す負荷駆動回路100の動作について更に詳細に説明する。
【0055】
図2Aに示すように、結合回路50のトランジスタ51及び52と、出力段トランジスタ11は、互いにソース及びゲートに供給される電圧が等しい。よって、トランジスタ51、52は出力段トランジスタ11に流れる電流に対応したミラー電流I1、I2を生成する。同様に、トランジスタ53及び54と出力段トランジスタ12は、互いにソース及びゲートに供給される電圧が等しい。よって、トランジスタ53、54は、出力段トランジスタ12に流れる電流に対応したミラー電流I3、I4を生成する。そして、トランジスタ51及び53で生成する電流I1、I3が、出力段トランジスタ11及び12に流れる電流に対する第1のミラー電流対を構成する。また、トランジスタ52及び54で生成する電流I2、I4が、出力段トランジスタ11及び12に流れる電流に対する別の第2のミラー電流対を構成する。
【0056】
結合回路50内で生成される4つの電流I1、I2、I3、I4は、出力段トランジスタ11の電流をミラーしたソースタイプの電流I1、I2と、出力段トランジスタ12の電流をミラーしたシンクタイプの電流I3、I4で構成される。結合回路50は、第1出力端(ノードn7)でソースタイプの電流I1とシンクタイプの電流I3を結合して電圧O1を出力し、第2出力端(ノードn8)でソースタイプの電流I2とシンクタイプの電流I4を結合して電圧O2を出力する。
【0057】
結合回路50において、電流I1、I2、I3、I4は、出力アンプ10の基準状態において、
I1<I3、且つ、I2>I4
となるように、トランジスタ51~54各々の電流出力能力が設定される。
【0058】
これにより、基準状態では、結合回路50の第1出力端(ノードn7)の電圧はローレベル(AVSS)、第2出力端(ノードn8)の電圧はハイレベル(AVSS)となり、出力電圧(O1、O2)の論理値は(L、H)となる。
【0059】
ここで、出力アンプ10から負荷90へ異常電流が流れた場合、出力段トランジスタ11及び12の一方の電流が増加し、他方の電流が減少する。この場合、結合回路50から出力される電圧(O1、O2)は、(L、L)又は(H、H)となる。
【0060】
判定回路60は、結合回路50から出力される2つの電圧(O1、O2)を受け、その電圧(O1、O2)の論理値に基づき、出力アンプ10の出力電流が基準状態から変動したかどうかを判定し、判定信号JDを出力する。
【0061】
判定回路60は、図2Bに示すように、結合回路50の出力電圧(O1、O2)の論理値に基づき判定を行う。判定回路60は、電圧(O1、O2)が(L、H)のとき、基準状態と判定する。一方、電圧(O1、O2)が(L、L)のときは、判定回路60は、出力段トランジスタ12の電流の所定量以上の増加を検知して異常と判定し、電圧(O1、O2)が(H、H)のときは、出力段トランジスタ11の電流の所定量以上の増加を検知して異常と判定する。
【0062】
次に、結合回路50において、基準状態における電流I1、I2、I3、I4各々の大きさの設定について説明する。
【0063】
基準状態における電流I1、I2、I3、I4の電流値の比は、例えばトランジスタ51、52、53、54のチャネル幅比で設定できる。前述したように基準状態時には、出力段トランジスタ11及び12に夫々流れる電流(m・Io)、いわゆるアイドリング電流は共に等しい。
【0064】
ここで、トランジスタ51~54各々のチャネル幅は、検知回路40の電流消費を抑えるために、以下のように設定されている。
【0065】
例えば、出力段トランジスタ11を、所定のチャネル幅Wpを有するトランジスタがm個(mは1以上の整数)並列に接続されて構成された合計チャネル幅(m・Wp)のトランジスタとした場合、トランジスタ51及び52各々のチャネル幅は、チャネル幅Wpを目安としたチャネル幅とする。また、出力段トランジスタ12を、所定のチャネル幅Wnを有するトランジスタがm個並列に接続されて構成された合計チャネル幅(m・Wn)のトランジスタとした場合、トランジスタ53及び54各々のチャネル幅は、チャネル幅Wnを目安としたチャネル幅とする。これにより検知回路40の各電流を、出力段トランジスタ11及び12に流れる電流のm分の1程度に抑える。
【0066】
具体的には、トランジスタ51及び54のチャネル幅をそれぞれWp及びWnとし、トランジスタ53のチャネル幅をWnより大きいWn+とし、トランジスタ52のチャネル幅をWpより大きいWp+とする。
【0067】
これにより、基準状態における電流I1、I2、I3、I4の電流値の大小関係を、
I1<I3、且つ、I2>I4
に設定することができる。
【0068】
なお、チャネル長については、閾値電圧を揃えるためにも同じ導電型のトランジスタ同士のチャネル長は同一が好ましい。
【0069】
また、電流I1とI3の大きさ、及び、電流I2とI4の大きさの設定は、出力段トランジスタ11、12に流れる電流における基準状態からの変動を検知する感度や精度を考慮して設定する。すなわち、出力段トランジスタ11、12の電流が基準状態から変動し、実際の電流I1、I3が基準状態での電流の大小関係であるI1<I3を逆転してI1>I3に変化した場合、又は、実際の電流I2、I4が基準状態での電流の大小関係であるI2>I4を逆転してI2<I4に変化した場合に、電圧(O1、O2)の論理値が基準状態の値から変化し、判定回路60で異常と判定される。
【0070】
なお、製造上の素子ばらつきや一定範囲内の環境温度等による軽微な変動に対しては、基準状態での電流の大きさを、I1<I3、且つ、I2>I4とすることで、基準状態の範囲内に設定することができる。
【0071】
次に、図2Aに示す検知回路40による効果について説明する。
【0072】
検知回路40は、プッシュプル出力段を構成する出力段トランジスタ11、12に流れる電流のミラー電流を生成し、ソースタイプとシンクタイプのミラー電流同士を結合させ、その結合点から出力電圧(O1、O2)を取り出す構成を採用している。
【0073】
したがって、出力アンプ10から負荷90へ異常電流が流れた場合、出力段トランジスタ11、12の一方の電流が増加し、他方の電流が減少する。それと同時に出力段トランジスタ11、12のミラー電流も同様の電流変化を生じる。このため、基準状態での電流I1とI3、及び、電流I2とI4に比較的大きな電流差を設定していても、異常電流が流れた場合には、速やかに出力電圧(O1、O2)が、判定結果を示す論理値(L、L)又は(H、H)の状態に遷移する。
【0074】
このため、検知回路40は、トランジスタの製造ばらつき等の影響が小さく、高感度、高精度、且つ高速応答にて出力電流の異常を検知することが可能である。なお、図2Aに示す検知回路40では、出力段トランジスタ11、12に流れる電流の電流量が基準状態から変動したか否かを検知して、2ビットのデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換回路を実現している。
【0075】
次に、図2Aに示す負荷駆動回路100による異常電流の検知動作の一例について、図3を参照しつつ説明する。
【0076】
なお、図3に示す一例では、負荷駆動回路100の構成及び各トランジスタのサイズは図2Aに示すものと同一とする。更に、図3に示す一例では、負荷90を表示パネルのデータ線(容量性負荷)とし、当該表示パネルに生じたクラック等により、負荷90のデータ線が、隣接する負荷(又は周辺の配線)99と短絡している。この短絡により、負荷90のデータ線から短絡部を介して隣接するデータ線または電源系の配線に電流が放出される。このとき、出力段トランジスタ11、12各々の電流のうちで、出力段トランジスタ11の電流が基準状態時と比べて増加し、出力段トランジスタ12の電流が減少する。よって、検知回路40が活性化している場合、出力段トランジスタ11の電流をミラーしているトランジスタ51、52の電流I1、I2も増加し、出力段トランジスタ12の電流をミラーしているトランジスタ53、54の電流I3、I4は減少する。
【0077】
この際、基準状態時での電流I1~I4の大小関係は、
I1<I3、I2>I4
であったが、異常電流が発生したことにより、電流I1とI3の大きさが逆転して
I1>I3
となり、電流I2と電流I4との差は更に拡大する。これにより、結合回路50の出力電圧(O1、O2)は(H、H)となり、判定回路60は異常を示す判定信号JDを出力する。
【0078】
尚、図3では、負荷90のデータ線から短絡部を介して、隣接する負荷99のデータ線に電流が放出された事例を説明したが、逆に短絡部を介して負荷90のデータ線に電流が流れ込む事例では、基準状態時に比べて、出力段トランジスタ11の電流が減少し、出力段トランジスタ12の電流が増加する。このとき結合回路50では、電流I3、I4が増加し、電流I1、I2は減少する。したがって結合回路50の出力電圧(O1、O2)は(L、L)となり、判定回路60は異常を示す判定信号JDを出力する。
【0079】
なお、容量性負荷を想定した図1図2Aに示す負荷駆動回路100とは異なり、電源アンプのような基準状態時に出力アンプ10が負荷90へ定常電流を出力する駆動回路の場合には、基準状態時における出力段トランジスタ11、12の電流は同一ではない。しかしながら、この場合にも、出力段トランジスタ11、12の電流に対するミラー比を調整して、結合回路50の基準状態時における電流I1、I2、I3、I4の電流の大きさを、
I1<I3、I2>I4
となるようにトランジスタ51~54各々の電流出力能力を設定することで、基準状態での出力電流の変動(異常電流)を検知することが可能である。
【0080】
また、負荷駆動回路100では、活性・非活性切換回路20を設け、所定の検知動作期間のみ検知回路40を活性化させることで、検知回路40の電流消費を最小限に抑えることができる。
【0081】
以上、詳述したように、負荷駆動回路100は、導電型の異なる第1及び第2の出力段トランジスタ11及び12で構成されるプッシュプル出力段を含む出力アンプ10と共に、出力アンプ10が負荷に出力した出力電流の異常を検知する検知回路40を備えている。当該検知回路40は、以下の結合回路50及び判定回路60を含む。
【0082】
つまり、結合回路50は、第1の出力段トランジスタ11に流れる電流に対するミラー電流である第1及び第2の電流(I1、I2)を夫々生成すると共に、第2の出力段トランジスタ12に流れる電流に対するミラー電流である第3及び第4の電流(I3、I4)を夫々生成する。そして、当該結合回路50は、第1の電流(I1)及び第3の電流(I3)を第1の出力ノード(n7)で結合し、この第1の出力ノード(n7)に生じた電圧を第1の電圧(O1)として出力する。更に、結合回路50は、第2の電流(I2)及び第4の電流(I4)を第2の出力ノード(n8)で結合し、この第2の出力ノード(n8)に生じた電圧を第2の電圧(O2)として出力する。なお、結合回路50では、出力電流が所定範囲内で安定化する基準状態時において第3の電流(I3)が第1の電流(I1)より大きく且つ第2の電流(I2)が第4の電流(I4)より大きくなるように、これら第1~第4の電流を夫々生成する。判定回路60は、上記した第1及び前記第2の電圧(O1、O2)に基づき、出力電流が所定範囲内で安定化する基準状態から変動したか否かを検知し、変動を検知した場合には異常、変動を検知しなかった場合には正常を表す判定信号JDを出力する。
【0083】
この際、プッシュプル出力段の第1及び第2の出力段トランジスタ11及び12に流れる電流は、一方が増加すれば他方は減少する。よって、判定信号JDの生成元となるミラー電流(I1、I3)の結合点(n7)の電圧(O1)、及びミラー電流(I2、I4)の結合点(n8)の電圧(O2)は、出力アンプ10から出力される出力電流に追従して、迅速に、その判定結果(電流異常有り又は無し)を表す論理値に遷移する。
【0084】
更に、上記した結合回路50の構成によれば、第1~第4の電流(I1~I4)を夫々生成するトランジスタの製造ばらつき等の影響が小さくなる。
【0085】
よって、負荷駆動回路100によれば、抵抗素子やコンパレータを用いて電流異常の判定を行う場合に比べて、出力電流の異常を、高感度、高精度、及び高速に検知することが可能となる。
【実施例0086】
図4Aは、本発明の第2の実施例による負荷駆動回路100Aの構成を示す回路図である。
【0087】
図4Aに示す負荷駆動回路100Aは、半導体装置としての半導体ICチップに構成されており、負荷駆動電圧生成回路VGC、出力アンプ10、及び検知回路40A(ミラー電流生成部41及び42を含む)を含む。
【0088】
負荷駆動電圧生成回路VGCは、負荷90を駆動する電圧値を有する駆動電圧AMPINを生成し、これを出力アンプ10に供給する。
【0089】
図4Aに示す出力アンプ10及び検知回路40Aは、AVDD電源端子を介して負荷駆動用の電源電位AVDDを受けると共に、AVSS電源端子を介して負荷駆動用の接地電位AVSSを受ける。更に、検知回路40Aは、VDD電源端子を介してロジック回路用の電源電位VDDを受けると共に、VSS電源端子を介してロジック回路用の接地電位VSSを受ける。なお、一般的には、負荷駆動用の接地電位AVSS及びロジック回路用の接地電位VSSは共通電位とされるが、用途に応じて異なる電源電位としてもよい。
【0090】
各電源電位の大小関係は、例えば、
AVSS≦VSS<VDD≦AVDD
とする。
【0091】
尚、図4Aでは、出力アンプ10を表す破線の領域内にミラー電流生成部41及び42が記載されているが、両者は検知回路40Aに含まれる要素である。
【0092】
出力アンプ10は、図2Aに示す構成と同様に、プッシュプル出力段としての出力段トランジスタ11及び12と、オペアンプからなる差動段15と、を含み、その動作は図2Aに示すものと同様であるので説明を省く。
【0093】
検知回路40Aは、図2Aに示す検知回路40をロジック回路用の電源で動作可能にしたものであり、活性・非活性切換回路20、電流折返し部30、ミラー電流生成部41及び42、結合回路50及び判定回路60を含む。
【0094】
ミラー電流生成部41は、自身のソースに電源電位AVDDが印加されており、且つゲートがノードn1に接続されているPchのトランジスタ13で構成される。尚、トランジスタ13のドレインはノードn3を介して検知回路40Aに接続されている。
【0095】
ミラー電流生成部42は、自身のソースに接地電位AVSSが印加されており、且つゲートがノードn2に接続されているNchのトランジスタ14で構成される。尚、トランジスタ14のドレインはノードn4を介して検知回路40Aに接続されている。
【0096】
図4Aに示す活性・非活性切換回路20の回路構成は、図2Aに示すものと同一である。ただし、図4Aに示す構成では、活性・非活性切換回路20のスイッチ21は、トランジスタ14のドレイン(ノードn4)と、トランジスタ51、52の共通ゲート(ノードn5)との間に接続され、スイッチ22は、トランジスタ13のドレイン(ノードn3)とトランジスタ53、54の共通ゲート(ノードn6)との間に接続される。スイッチ23は、VDD電源端子と、トランジスタ51、52の共通ゲート(ノードn5)との間に接続され、スイッチ24は、VSS電源端子と、トランジスタ53、54の共通ゲート(ノードn6)との間に接続される。
【0097】
活性・非活性切換回路20は、活性化を指示する制御信号CNTを受けたときは、スイッチ21、22が共にオン、スイッチ23、24が共にオフとされる。これにより、ミラー電流生成部41を構成するトランジスタ13のドレインが、ノードn3及びスイッチ22を介してノードn6と接続されると共に、ミラー電流生成部42を構成するトランジスタ14のドレインが、ノードn4及びスイッチ21を介してノードn5と接続され、検知回路40Aがイネーブル状態となる。
【0098】
一方、非活性化を促す制御信号CNTを受けた場合には、スイッチ21、22が共にオフ、スイッチ23、24が共にオンとされる。これにより、ミラー電流生成部41を構成するトランジスタ13及びミラー電流生成部42を構成するトランジスタ14各々のドレインと、結合回路50との間の接続が遮断され、検知回路40Aがディスエイブル状態となる。
【0099】
電流折返し部30は、第1の折返トランジスタとしてのPchのトランジスタ31、及び第2の折返トランジスタとしてのNchのトランジスタ32を含む。トランジスタ31は、ソースにロジック回路用の電源電位VDDが印加されており、且つゲート及びドレインがノードn5に接続されている。トランジスタ32は、ソースにロジック回路用の接地電位VSSが印加されており、且つゲート及びドレインがノードn6に接続されている。
【0100】
結合回路50は、図2Aに示す結合回路50と同様に、Pchのトランジスタ51及び52と、Nchのトランジスタ53及び54と、を含む。尚、図4Aに示す結合回路50では、トランジスタ51~54同士の接続は図2Aに示すものと同一であるものの、トランジスタ51及び52各々のソースにはロジック回路用の電源電位VDDが印加されており、トランジスタ53及び54各々のソースにはロジック回路用の接地電位VSSが印加されている。
【0101】
判定回路60は、第1及び第2の電圧(O1、O2)を受け、第1及び第2の電圧の論理値に基づき、出力アンプ10の出力電流が基準状態(出力安定状態)から変動したか否かを検知する。そして、判定回路60は、その検知した変動の有無に基づき、出力アンプ10の出力電流が正常であるか異常であるのかの判定、並びに異常である場合には、出力段トランジスタ11及び12のうちのいずれに異常な電流が流れたのかを判定する。判定回路60は、その判定結果を示す判定信号JDを出力する。
【0102】
図4Bは、図4Aに示す負荷駆動回路100Aにおいて、第1及び第2の電圧O1及びO2に基づく判定回路60の判定動作を示す図である。
【0103】
図4Bに示すように、判定回路60は、第1及び第2の電圧O1及びO2によって表される2値の論理値(L又はH)が互いに異なる場合には正常を示す判定信号JDを出力する。
【0104】
一方、電圧O1及びO2によって表される論理値が異なる場合、例えば両者が共に論理値Lである場合には、判定回路60は、出力アンプ10の出力段トランジスタ11によって出力される出力電流に異常が生じていることを示す判定信号JDを出力する。また、電圧O1及びO2によって表される論理値が共にHである場合には、判定回路60は、出力アンプ10のトランジスタ12によって出力される出力電流に異常が生じていることを示す判定信号JDを出力する。
【0105】
以下に、図4A図4Bに示す負荷駆動回路100Aの動作について更に詳細に説明する。尚、負荷90及び出力アンプ10は図2Aに示すものと同一であり、その詳細な動作説明は省略する。
【0106】
ミラー電流生成部41、42は出力段トランジスタ11、12と同じAVDD及びAVSS電源端子間に設けられる。一方、ミラー電流生成部41、42以外の検知回路40Aの主要構成は、出力段トランジスタ11、12と異なる電源端子間に設けることができる。図4Aでは、電流折返し部30、結合回路50及び判定回路60は、電源電位VDDを受けるVDD電源端子と接地電位VSSを受けるVSS電源端子間に設けられている。
【0107】
ミラー電流生成部41を構成するトランジスタ13は、自身のゲートに、出力段トランジスタ11のゲートと同様に、差動段15から出力された信号PGを受け、自身のドレインから出力段トランジスタ11から出力される電流に対応したソースタイプのミラー電流Iaをノードn3に出力する。
【0108】
ミラー電流生成部42を構成するトランジスタ14は、自身のゲートに、出力段トランジスタ12のゲートと同様に、差動段15から出力された信号NGを受け、ノードn4から自身のドレインを介して、出力段トランジスタ12に流れる電流に対応したシンクタイプのミラー電流IbをAVSS電源端子に流す。
【0109】
尚、このような出力段トランジスタ11、12の電流に対するミラー電流対(Ia、Ib)のミラー比は1以下に設定するのが望ましい。これにより、検知回路40Aの電流消費を抑えることができる。具体的には、出力段トランジスタ11、12のチャネル幅に対して、トランジスタ13、14のチャネル幅を小さく設定する。
【0110】
ここで、検知回路40Aが活性状態である場合には、ミラー電流生成部41で生成されるソースタイプの電流Iaは、ノードn3及びスイッチ22を介してトランジスタ32のドレインに供給され、結合回路50のトランジスタ53、54の電流I3、I4へミラーされる。トランジスタ32、53及び54は、ソース同士、ゲート同士が共通接続されたカレントミラーを構成している。すなわち、トランジスタ32は、ミラー電流生成部41に流れるソースタイプの電流IaをVSS電源端子で折り返し、シンクタイプの電流I3、I4にミラーする電流折返し部を構成している。
【0111】
ミラー電流生成部42で生成されるシンクタイプの電流Ibは、ノードn4及びスイッチ21を介してトランジスタ31に流れ、結合回路50のトランジスタ51、52の電流I1、I2へミラーされる。トランジスタ31、51、52は、ソース同士、ゲート同士が共通接続されたカレントミラーを構成している。すなわち、トランジスタ31は、ミラー電流生成部42に流れるシンクタイプの電流IbをVDD電源端子で折り返し、ソースタイプの電流I1、I2にミラーする電流折返し部を構成している。
【0112】
結合回路50は、電流折り返し部30を構成するトランジスタ31、32と同様に、VDD電源端子とVSS電源端子間に4つのトランジスタ51、52、53、54で構成される。図4Aの結合回路50は、図2Aと同様に、トランジスタ51、53のドレイン同士が共通接続されたノードn7が結合回路50の第1出力端とされ、電圧O1を出力する。またトランジスタ52、54のドレイン同士が共通接続されたノードn8が結合回路50の第2出力端とされ、電圧O2を出力する。
【0113】
また結合回路50における基準状態時での電流I1、I2、I3、I4各々の大きさの設定についても、図2Aと同様に、出力アンプ10の基準状態時において、
I1<I3、且つ、I2>I4
となるように、例えばトランジスタ51~54各々のトランジスタのサイズを決定している。各トランジスタのサイズに応じてトランジスタ51~54各々の電流出力能力が設定される。
【0114】
具体的には、トランジスタ51、54のチャネル幅をそれぞれWp及びWnとし、トランジスタ53のチャネル幅をWnより大きいWn+とし、トランジスタ52のチャネル幅をWpより大きいWp+とする。
【0115】
すなわち、図4Aに示す結合回路50は、供給される電源電位VDD、接地電位VSS以外は、図2Aの結合回路50と同様な構成を有する。但し、図2Aに示す結合回路50とは異なり、図4Aの結合回路50で生成されるソースタイプの電流I1、I2は、出力段トランジスタ12の電流に対するミラー電流として生成され、シンクタイプの電流I3、I4は、出力段トランジスタ11の電流に対するミラー電流として生成される。
【0116】
図4Aに示す構成では、判定回路60もVDD電源端子とVSS電源端子間に設けられる。判定回路60は、図2Aと同様に、結合回路50から出力される2つの電圧(O1、O2)を受け、当該電圧(O1、O2)の論理値に基づき、出力アンプ10の出力電流が基準状態から変動したかどうかを判定し、その判定結果を示す判定信号JDを出力する。
【0117】
ただし、図4Aに示す判定回路60は、図2Aの判定回路60に対して、異常電流発生箇所(出力段トランジスタ11、12)と異常判定の論理値の状態(図4Bの状態2、状態3)の対応関係が逆となる。
【0118】
このように、図4Aに示す構成では、ミラー電流生成部41、42を除く検知回路40Aの主要構成部は、図2Aに示す検知回路40の電源電圧範囲(AVDD~AVSS)よりも小さい電源電圧範囲(VDD~VSS)で実現できる。例えば、液晶表示装置に用いる場合、負荷駆動用の電源電位AVDD及び接地電位AVSSはそれぞれ18V及び0Vが供給され、ロジック回路用の電源電位VDD及び接地電位VSSは1.8V及び0Vが供給される。よって、トランジスタ31、32、51~54、スイッチ21~24をロジック回路と同じ低耐圧素子で実現できるため、低消費電力化や省面積化が可能となる。
【実施例0119】
図5は、本発明の第3の実施例による負荷駆動回路100Bの構成を示すブロック図である。
【0120】
図5に示す負荷駆動回路100Bは、半導体装置としての半導体ICチップに構成されており、複数の負荷(データ線負荷)を駆動する複数の出力アンプに対して1個の検知回路40Bを備えた構成を有する。ただし、図5では図示されていないが、検知回路40Bに含まれるミラー電流生成部41及び42については、図4Aに示される接続形態にて、出力アンプ毎に設けられている。
【0121】
具体的には、図5に示すように、負荷駆動回路100Bは、複数の負荷(データ線負荷)90_1、90_2、90_3、…、90_k(kは2以上の整数)を出力端子P1、P2、P3、…、Pkを介して駆動する出力アンプ10_1、10_2、10_3、…、10_kを備える。尚、出力アンプ10_1~10_k各々の構成は、図4Aに示す出力アンプ10の構成と同様である。
【0122】
更に、検知回路40Bでは、活性・非活性切換回路20に代えて活性・非活性切換回路20Bが用いられている。
【0123】
活性・非活性切換回路20Bは、図4Aに示す活性・非活性切換回路20と同様にスイッチ23及び24を含む。ただし、活性・非活性切換回路20Bでは、図4Aに示すスイッチ21及び22に代えて、選択スイッチ21_1~21_k、22_1~22_kが用いられている。
【0124】
以下に、各出力アンプ10を代表して図5に示す出力アンプ10_1と、出力アンプ10_1に関与する回路について説明する。
【0125】
出力アンプ10_1は、図4Aに示す出力アンプ10と同様に、差動段15と出力段トランジスタ11及び12を備える。
【0126】
更に、出力アンプ10_1には、出力段トランジスタ11、12に流れる電流のミラー電流対を生成するミラー電流生成部41及び42(図5では図示せず)と、ミラー電流生成部41及び42で生成されたミラー電流対のノードn5、n6への供給を制御(選択)する選択スイッチ21_1、21_2が接続されている。
【0127】
負荷駆動回路100Bでは、上記した構成を出力アンプ毎に備えている。
【0128】
ノードn5、n6は、各出力アンプ10_1~10_kに接続されているミラー電流生成部41、42からのミラー電流対を受ける共通ノードである。
【0129】
ここで、検知回路40Bの活性時において、各出力アンプ10_1、10_2、…、10_kに接続されている選択スイッチ(21_1、22_1)、(21_2、22_2)、…、(21_k、22_k)のいずれか1組の選択スイッチがオンとされるとき、その選択スイッチに対応する出力アンプ10の出力電流の変動有無を検知回路40Bで検知することができる。
【0130】
ノードn5に供給されたシンクタイプの電流は、検知回路40Bの電流折返し部30及び結合回路50において、トランジスタ31、51及び52により、ソースタイプの電流I1、I2へ変換される。同様に、ノードn6に供給されたソースタイプの電流は、トランジスタ32、53及び54により、シンクタイプの電流I3、I4へ変換される。結合回路50及び判定回路60の動作及び作用は、図4A及び図4Bと同様である。
【0131】
活性・非活性切換回路20Bの各スイッチは、制御信号CNTにより制御され、検知回路40Bの活性、非活性の制御、及び、出力電流の変動の有無を検知する出力アンプの選択が行われる。
【0132】
具体的には、制御信号CNTによって検知回路40Bの活性が指示されるとき、スイッチ23、24は共にオフ、選択スイッチ(21_1、22_1)、(21_2、22_2)、…、(21_k、22_k)のいずれか1組がオンに制御される。各選択スイッチをオンにするタイミングをずらして選択することにより、出力アンプ10_1~10k各々の出力電流の状態を順次検知することが可能である。検知回路40Bの非活性が指示されるときは、スイッチ23、24は共にオン、選択スイッチ(21_1、22_1)、(21_2、22_2)、…、(21_k、22_k)は全てオフとされる。
【0133】
以上詳述したように、図5に示す負荷駆動回路100Bは、複数の負荷90_1~90_kを夫々個別に駆動する複数の出力アンプ10_1~10_kを備え、これら複数の出力アンプ10_1~10_kに対して1系統の検知回路40Bを備えた構成である。
【0134】
負荷駆動回路100Bでは、活性・非活性切換回路20Bを用いることで、複数の出力アンプに対して選択的に各出力アンプの出力電流の変動を検知することができる。この際、負荷駆動回路100Bでは、複数の出力アンプ各々の電流異常を、共有の1系統の検知回路40Bだけで検出ができるので、省面積化を図ることができる。
【0135】
更に、検知回路40Bの電流折返し部30、結合回路50、判定回路60及び活性・非活性切換回路20Bのスイッチ23、24は、各出力アンプの電源電圧範囲(AVDD~AVSS)よりも低いロジック回路の電源電圧範囲(VDD~VSS)で構成することができるので、更なる省面積化を図ることが可能である。
なお、必要に応じて、各出力アンプのノードn3、n4と検知回路40Bのノードn5、n6の間に各選択スイッチと直列形態でクランプ素子を備えてもよい。クランプ素子は、例えば検知回路40Bのノードn5、n6の電位がロジック回路用の電源電圧範囲内にクランプされるように設けられる。例えば、各出力アンプのノードn3、n4と各選択スイッチの間にクランプ素子を設ける場合、各選択スイッチもロジック回路の電源電圧範囲(VDD~VSS)で構成することができる。
【実施例0136】
図6は、図2A図4A及び図5に示す結合回路50の他の具体例である結合回路50Aの構成を示す回路図である。
【0137】
図6において、ノードn5にはソースタイプの電流I1、I2を生成する電圧が供給され、ノードn6にはシンクタイプの電流I3、I4を生成する電圧が供給される。
【0138】
尚、結合回路50Aでは、電流I1、I2、I3、I4の各々が、出力アンプの基準状態時において、
I1<I3、且つ、I2>I4
となるように、各トランジスタの電流出力能力が設定される。
【0139】
結合回路50Aは、基準状態時においてソースタイプの固定電流量の電流I1を出力するPchのトランジスタ51及びシンクタイプの固定電流量の電流I4を出力するNchのトランジスタ54と、基準状態時においてソースタイプの電流I2を出力する回路52A、及びシンクタイプの電流I3を出力する回路53Aと、を備えている。なお、回路52Aは、制御信号CNTAに基づき電流I2の電流量が調整可能であり、回路53Aは、制御信号CNTAに基づき電流I3の電流量が調整可能である。これにより、結合回路50Aを含む検知回路は、出力アンプ10の出力電流が基準状態(出力安定状態)から異常状態へ切り替わる境界値、すなわち検知感度を制御信号CNTAにより調整可能である。
【0140】
尚、図6に示すトランジスタ51及び54は、図4Aに示す結合回路50のトランジスタ51及び54と同一である。
【0141】
以下に回路52A及び回路53Aについて説明する。
【0142】
回路52Aは、ロジック回路用の電源電位VDDを受けるVDD電源端子、及びノードn8間に、互いに直列接続されたPchのトランジスタ及びスイッチの組を並列形態で複数個設けた構成である。並列形態の複数のPchのトランジスタ52a_1、52a_2、…、は、各ソースに電源電位VDDが供給され、各ゲートがノードn5に共通接続されており、ノードn5の電圧に応じたミラー電流をそれぞれ生成する。並列形態の複数のスイッチ57_1、57_2、…、の各々は、外部から供給された制御信号CNTAにて示される電流比に基づきオン、オフが制御される。この際、複数のスイッチ57_1、57_2、…、のうちで、当該電流比に基づきオンに制御されたスイッチに接続されているトランジスタの合成電流が電流I2として設定される。すなわち、複数のスイッチ57_1、57_2、…、のオンオフ制御により、活性又は非活性に制御するPchのトランジスタ52a_1、52a_2、…、の割合を可変に設定することで、電流I4に対する電流I2の電流量の比を最適に調整することができる。
【0143】
回路53Aは、ロジック回路用の接地電位VSSを受けるVSS電源端子、及びノードn7間に、互いに直列接続されたNchのトランジスタ及びスイッチの組を並列形態で複数個設けた構成である。並列形態の複数のNchのトランジスタ53a_1、53a_2、…、は、各ソースに接地電位VSSが供給され、各ゲートがノードn6に共通接続され、ノードn6の電圧に応じたミラー電流をそれぞれ生成する。並列形態の複数のスイッチ55_1、55_2、…、の各々は外部から供給された制御信号CNTAにて示される電流比に基づきオン、オフが制御される。この際、複数のスイッチ55_1、55_2、…、のうちで、当該電流比に基づきオンに制御されたスイッチに接続されているトランジスタの合成電流が電流I3として設定される。すなわち、複数のスイッチ55_1、55_2、…、のオンオフ制御により、活性又は非活性に制御するNchのトランジスタ53a_1、53a_2、…、の割合を可変に設定することで、電流I1に対する電流I3の電流量の比を最適に調整することができる。
【0144】
以下に、図6に示す各トランジスタにおける電流出力能力の設定の具体例を説明する。
【0145】
例えば、チャネル幅Wpでゲートがノードn5に接続されたPchのトランジスタの電流出力能力と、チャネル幅Wnでゲートがノードn6に接続されたNchのトランジスタの電流出力能力とが等しいとする。
【0146】
結合回路50Aのソースタイプの電流I1を生成するPchのトランジスタ51のチャネル幅をWp、シンクタイプの電流I4を生成するNchのトランジスタ54のチャネル幅をWnとする。
【0147】
ソースタイプの電流I2を生成する回路52Aは、チャネル幅WpのPchのトランジスタの3個分の合成電流を生成するように、制御信号CNTAによって制御される。
【0148】
シンクタイプの電流I3を生成する回路53Aは、チャネル幅WnのNchのトランジスタの3個分の合成電流を生成するように、制御信号CNTAによって制御される。
【0149】
これにより、基準状態時の電流I1、I2、I3、I4各々の電流量の比を、
I1:I3=1:3
I2:I4=3:1
に設定することができる。ここで電流I1に対する電流I3の電流量の比、及び、電流I4に対する電流I2の電流量の比の差が大きい設定の場合、出力アンプ10の出力電流が異常状態に切り替わる境界値が高くなる。また、上記電流量の比の差が小さい設定の場合、出力アンプ10の出力電流が異常状態に切り替わる境界値が低くなる。上記電流量の比を調整することにより、最適な検知感度の調整が可能となる。
【0150】
図7は、図6に示す結合回路50Aの変形例としての結合回路50Bの構成を示す回路図である。
【0151】
結合回路50Bでは、図6に示す構成と同様に、ノードn5にはソースタイプの電流I1、I2を生成する電圧が供給され、ノードn6にはシンクタイプの電流I3、I4を生成する電圧が供給される。
【0152】
また、結合回路50Bでは、電流I1、I2、I3、I4の各々が、出力アンプの基準状態時において、
I1<I3、且つ、I2>I4
となるように、各トランジスタの電流出力能力が設定される。
【0153】
結合回路50Bは、基準状態時におけるソースタイプの電流I1が固定値に設定されているPchのトランジスタ51、シンクタイプの電流I4が固定値に設定されているNchのトランジスタ54、基準状態時におけるソースタイプの電流I2、シンクタイプの電流I3各々の電流量を個別に可変調整できる回路52B及び53Bを備えている。
【0154】
尚、図6に示すトランジスタ51及び54は、図4Aに示す結合回路50のトランジスタ51及び54と同一である。
【0155】
そこで、以下に回路52B及び53Bの構成について説明する。
【0156】
回路52Bは、ロジック回路用の電源電位VDDを受けるVDD電源端子、及びノードn8間に、Pchのトランジスタ52及び可変電流源58が並列形態で設けられた構成を有する。
【0157】
トランジスタ52は、ソースに電源電位VDDが供給され、ゲートがノードn5に接続され、ノードn5の電圧に応じたミラー電流を生成する。
【0158】
可変電流源58は、外部から供給された制御信号CNTBにて示される電流比に基づき電流量が制御され、当該電流量を有する電流をVDD電源端子及びノードn8間に流す。これにより、トランジスタ52と可変電流源58の合成電流が電流I2の電流量として設定される。すなわち、可変電流源58の電流制御により、電流I4の電流量と電流I2の電流量との差を最適に設定することができる。
【0159】
回路53Bは、ロジック回路用の接地電位VSSを受けるVSS電源端子、及びノードn7間に、Nchのトランジスタ53及び可変電流源59が並列形態で設けられた構成を有する。
【0160】
トランジスタ53は、ソースに接地電位VSSが供給され、ゲートがノードn6に接続され、ノードn6の電圧に応じたミラー電流を生成する。
【0161】
可変電流源59は、制御信号CNTにて示される電流比に基づき電流量が制御され、当該電流量を有する電流をノードnt及びVSS電源端子間に流す。これにより、トランジスタ53と可変電流源59の合成電流が電流I3の電流量として設定される。すなわち、可変電流源59の電流制御により、電流I1の電流量と電流I3の電流量との差を最適に設定することができる。
【0162】
以下に、図7に示す構成における電流出力能力の設定の具体例を説明する。
【0163】
例えば、チャネル幅Wpでゲートがノードn5に接続されているPchのトランジスタの電流出力能力と、チャネル幅Wnでゲートがノードn6に接続されているNchのトランジスタの電流能力が等しいとする。結合回路50Bのソースタイプの電流I1を生成するトランジスタ51のチャネル幅をWp、シンクタイプの電流I4を生成するトランジスタ54のチャネル幅をWnとする。ソースタイプの電流I2を生成する回路52Bでは、トランジスタ52のチャネル幅をWpとする。シンクタイプの電流I3を生成する回路53Bでは、トランジスタのチャネル幅をWnとする。
【0164】
これにより、基準状態時の電流I1、I3の電流量の差が可変電流源59の電流量で決定し、電流I2、I4の電流量の差が可変電流源58の電流量で決定する。図7においても、電流I1に対する電流I3の電流量の比、及び、電流I4に対する電流I2の電流量の比を調整することにより、図6と同様に最適な検知感度の調整が可能となる。
【0165】
なお、図6及び図7の各結合回路において、基準状態時における電流I1とI3の電流量の差、及び電流I2とI4の電流量の差は、各トランジスタの製造ばらつきや一定範囲内の環境温度等による軽微な変動が基準状態の範囲に収まるように設定されることが好ましい。
【0166】
また、図6及び図7の各結合回路において、電流I1、I4をそれぞれ生成するトランジスタ51、54を便宜上単一トランジスタで記載しているが、基準状態時の電流I1、I2、I3、I4の電流量の比が適切に設定される限り、複数のトランジスタで構成しても構わない。また各トランジスタサイズについても図6及び図7の記載に限定されるものではない。
【実施例0167】
次に、図5に示す負荷駆動回路100Bを表示装置に適用した場合の具体例について説明する。
【0168】
図8は、当該負荷駆動回路100Bを含むデータドライバ120_1を備えた表示装置の構成を示すブロック図である。
【0169】
図8に示す表示装置は、絶縁性基板上に水平方向に配線されたゲート線GL1~GLr(rは2以上の整数)、垂直方向に配線されたデータ線DL1~DLk(kは2以上の整数)、各ゲート線とデータ線との交差部にマトリックス上に配置された画素部154を備えた表示パネル150と、コントローラ130とを含む。なお、表示パネル150上には、各ゲート線を駆動するゲートドライバ110、及び各データ線を駆動するデータドライバ120_1が設けられており、コントローラ130は、これらゲートドライバ110及びデータドライバ120_1の出力タイミングを調整する。
【0170】
ゲートドライバ110は、コントローラ130から信号群GSが供給され、信号群GSに基づき、各ゲート線へ供給する走査信号を出力する。
【0171】
データドライバ120_1には、コントローラ130からCLK、各種の制御信号及び映像データ信号等を含む映像データ信号VDSが供給され、当該映像データ信号VDSに基づき、データ線DL1~DLkへ供給する階調信号を出力する。
【0172】
尚、データドライバ120_1は、通常シリコンLSIで形成され、表示パネル150の端部にCOG(Chip On Glass)やCOF(Chip On Film)で実装される。データドライバ120_1が複数の個別ICで構成される場合、各々が駆動を担うデータ線に関与する各種制御信号を含む映像データ信号VDSが、コントローラ130から各データドライバICへ供給される。データドライバ120_1が単一または少数のICの場合には、コントローラ130がデータドライバ120_1に内蔵される場合もあり、その場合には、外部からコントローラ130へ供給される信号群が直接データドライバ120_1へ供給される。
【0173】
図9は、データドライバ120_1の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0174】
図9に示すように、データドライバ120_1は、制御コア部80、タイミング制御部81、データラッチ82、レベルシフタ83、階調電圧生成部84、デコーダ部85、マルチプレクサ86、出力増幅部87、及び検知回路40Bを含む。また、データドライバ120_1は、外部からロジック回路用の電源電圧、データ線(負荷)駆動用の電源電圧を受ける。ロジック回路用の電源電圧は、制御コア部80、タイミング制御部81、データラッチ82及び検知回路40Bに供給され、負荷駆動用の電源電圧は、レベルシフタ83、階調電圧生成部84、デコーダ部85、マルチプレクサ86及び出力増幅部87に供給される。
【0175】
制御コア部80は、外部から供給されるシリアル形態の映像データ信号VDSを受ける。映像データ信号VDSは、クロックCLKや各種信号群、設定情報も含めてシリアル化された信号である。制御コア部80は、映像データ信号VDSに対してシリアル/パラレル変換処理を施し、当該映像データ信号VDSから、映像データPDの系列、クロックCLK、各種信号群(水平同期信号、垂直同期信号、及び各種制御信号等)及び設定情報を分離抽出する。
【0176】
制御コア部80は、水平同期信号、垂直同期信号に基づき、基準タイミング信号LOAD、及び極性反転信号POLを生成する。制御コア部80は、クロックCLK、基準タイミング信号LOAD、及び設定情報SEIをタイミング制御部81に供給する。また、制御コア部80は、映像データPDの系列、設定情報SEI及び極性反転信号POLをデータラッチ82に供給する。また、制御コア部80は、ガンマ設定情報STDを階調電圧生成部84に供給し、極性反転信号POLをマルチプレクサ86に供給し、前述した制御信号CNTを検知回路40Bに供給する。なお制御信号CNTは、図6又は図7の結合回路に対応した制御信号CNTA又はCNTBを含んでもよい。
【0177】
タイミング制御部81は、基準タイミング信号LOAD、クロックCLK、及び設定情報SEIに基づき、データドライバ120_1の出力端子P1~Pkの各々から出力する階調信号のタイミングを制御するラッチ出力タイミング信号群を生成し、データラッチ82に供給する。
【0178】
データラッチ82は、ラッチ出力タイミング信号群に従って、1水平走査ライン分のk個の画素に夫々対応した出力毎に、映像データPDの系列中からk個の映像データPDを取り込み、これらを映像データQ1~Qkとしてレベルシフタ83に供給する。
【0179】
レベルシフタ83は、映像データQ1~Qk各々の信号レベルの振幅を個別にレベルシフトするk個のレベルシフト回路を含む。レベルシフト回路は、映像データQ1~Qkの各々に対して、夫々の信号レベルの振幅をそれよりも大きな高振幅にレベルシフトしたデジタル映像データJ1~Jkを生成し、デコーダ部85に供給する。
【0180】
階調電圧生成部84は、ガンマ設定情報STDに基づき画素の原色(赤、緑、青)毎に、その原色に対応したガンマ変換特性に沿った電圧値を有する複数の正極性の階調電圧群POS及び負極性の階調電圧群NEGを生成し、夫々をデコーダ部85に供給する。
【0181】
デコーダ部85は、デジタル映像データJ1~Jkの各々を個別に、アナログの電圧値に変換するk個のデコーダを含む。これらk個のデコーダは、正極性の階調電圧群POS又は負極性の階調電圧群NEGを用いて、デジタル映像データJ1~Jkの各々を、その映像データ片によって表される輝度に対応した正極性又は負極性のアナログの諧調電圧に変換し、得られたk個のアナログ階調信号をマルチプレクサ86に供給する。
【0182】
マルチプレクサ86は、極性反転信号POLに基づき、k個のアナログ階調信号の系列における配列、例えば偶数番目と奇数番目の入れ替えを変更したk個のアナログ階調信号を出力増幅部87に供給する。
【0183】
出力増幅部87は、図5に示すように、夫々が図4Aに示す回路構成(41、42を含む)を有する出力アンプ10_1~10_kを含む。出力アンプ10_1~10_kは、マルチプレクサ86から供給されたk個のアナログ階調信号を個別に増幅したk個の階調信号を出力端子P1~Pkを介してデータ線DL1~DLkに夫々出力する。
【0184】
検知回路40Bは、図5に示すように、活性・非活性切換回路20Bと共に、夫々が図4に示す内部構成を有する1系統分の電流折返し部30及び結合回路50を含む。
【0185】
出力アンプ10_1~10_kの各々には出力段トランジスタ11及び12の電流をミラーするミラー電流生成部41および42が接続されており、各ミラー電流生成部で生成されたミラー電流対のうち活性・非活性切換回路20Bで選択されたミラー電流対が検知回路40Bの結合回路50に送られ、出力アンプの基準状態時に対する出力電流の変動有無を検知し正常又は異常を判定する。
【0186】
検知回路40Bに対する活性、非活性の制御、及び、活性・非活性切換回路20Bの選択制御は、制御コア部80からの制御信号CNTにより制御される。また検知回路40Bの判定信号JDは制御コア部80に供給される。なお、検知回路40Bにより出力アンプの出力電流の異常が判定されたときに、例えば使用者への異常検知通知や表示装置の停止等を行う場合は、判定信号JDに基づき制御コア部80が外部のコントローラへその旨を示す信号FBを出力するようにしてもよい。
【0187】
なお、上記した構成を有機EL表示装置のデータドライバへ適用する場合には、図9に示す極性反転信号POL及びマルチプレクサ86を削除する。
【0188】
図10は、データドライバ120_1において、データ線の異常電流の検知を行うタイミングの一例を表すタイミングチャートである。
【0189】
図10には、1画面の書換期間に対応する1フレーム期間T0-T1のタイミングを示している。1フレーム期間は垂直同期信号(Vsyn)により規定される。1フレーム期間の開始直後の期間T0-t0に、各種設定信号を反映させるブランキング期間を有し、ブランキング期間後の映像データアクティブ期間t0―tkに映像データに対応したアナログ階調信号が1水平期間(1H)単位でデータ線へ出力される。また、ゲートドライバ110から出力される走査信号により、映像データアクティブ期間t0―tkにて、1水平期間のタイミング(Hsyn)と連動してゲート線を順次選択し、それ以外の期間ではゲート線非選択状態とされる。
【0190】
図8に示すデータドライバ120_1に搭載した検知回路40Bは、例えばブランキング期間T0-t0間内の異常検知期間ta―tbに活性化され、検知動作が行われる。異常検知期間ta―tbに、活性・非活性切換回路20Bにより、検知対象のデータ線に接続される出力アンプを順次選択するように制御してもよい。あるいは、1フレーム期間内の異常検知期間に選択する出力アンプは少数とし、1フレーム期間毎に、異なる出力アンプを順次選択して複数フレーム期間で全データ線の異常電流の有無を検知するようにしてもよい。
【0191】
図8に示すデータドライバ120_1の構成によれば、データ線への異常電流を検知することで表示パネルの不具合発生を検知する機能をデータドライバに搭載することが可能となる。
【符号の説明】
【0192】
10 出力アンプ
20、20B 活性・非活性切換回路
40、40A、40B 検知回路
50、50A、50B 結合回路
60 判定回路
100、100A、100B 負荷駆動回路
120_1 データドライバ

図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10