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特開2023-80848カバーフィルム付き装飾フィルム並びにその製造方法及び施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080848
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】カバーフィルム付き装飾フィルム並びにその製造方法及び施工方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20230602BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230602BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20230602BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J201/00
B32B27/16
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194381
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】中山 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】細梅 雅史
(72)【発明者】
【氏名】石川 晴悟
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK25D
4F100AK25G
4F100AK51B
4F100CA02B
4F100CA02H
4F100CB05D
4F100CB05G
4F100CC032
4F100CC03B
4F100EA021
4F100EA022
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EJ121
4F100EJ122
4F100EJ12A
4F100EJ422
4F100EJ42B
4F100EJ551
4F100EJ552
4F100EJ55A
4F100EJ911
4F100EJ912
4F100EJ913
4F100EJ91A
4F100EJ91E
4F100EJ932
4F100EJ93B
4F100EJ93C
4F100GB71
4F100HB00C
4F100HB00H
4F100JK09B
4F100JK12B
4F100JK15B
4F100JL14A
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA01
4J004CC03
4J004FA01
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040MB03
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】表面層としてポリウレタン層を有する装飾フィルムであって、クレータなどの欠陥が少ない表面品質の高いカバーフィルム付き装飾フィルムを提供する。
【解決手段】一実施態様のカバーフィルム付き装飾フィルムは、(a)第1面及び第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層であって、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、ポリウレタン層と、(b)コロナ処理又はプラズマ処理された表面を有する、除去可能なカバーフィルムであって、除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面がポリウレタン層の第1面に接触している、除去可能なカバーフィルムと、(c)第1面及び第1面の反対側の第2面を有するベース層であって、ベース層の第1面がポリウレタン層の第2面に接触している、ベース層と、(d)ベース層の第2面に接触している接着層とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層であって、前記少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、ポリウレタン層と、
(b)コロナ処理又はプラズマ処理された表面を有する、除去可能なカバーフィルムであって、前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面が前記ポリウレタン層の前記第1面に接触している、除去可能なカバーフィルムと、
(c)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有するベース層であって、前記ベース層の前記第1面が前記ポリウレタン層の前記第2面に接触している、ベース層と、
(d)前記ベース層の前記第2面に接触している接着層と
を含む、カバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項2】
前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面の表面張力が40mN/m以上である、請求項1に記載のカバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項3】
前記除去可能なカバーフィルムの剥離力が0.15~1.0N/50mmである、請求項1又は2に記載のカバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項4】
前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面の反対側の表面の表面張力が40mN/m未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項5】
前記除去可能なカバーフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項6】
前記ベース層が、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、アクリル樹脂及びポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項7】
前記ベース層が加飾層を含む多層構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルム。
【請求項8】
巻回された請求項1~7のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルムを含むロール。
【請求項9】
(a)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有するベース層を提供する工程、
(b)前記ベース層の前記第1面の上に、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層を形成する工程であって、前記少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含み、前記ベース層の前記第1面が前記ポリウレタン層の前記第2面に接触している、工程、
(c)除去可能なカバーフィルムを提供する工程、
(d)前記除去可能なカバーフィルムの表面をコロナ又はプラズマで処理する工程、
(e)前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面が前記ポリウレタン層の前記第1面に接触するように、前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の上に積層する工程、及び
(f)前記ベース層の前記第2面の上に接着層を形成して、カバーフィルム付き装飾フィルムを得る工程
を含む、カバーフィルム付き装飾フィルムを製造する方法。
【請求項10】
前記除去可能なカバーフィルムの前記表面の表面張力が40mN/m以上となるように、前記除去可能なカバーフィルムの前記表面がコロナ又はプラズマで処理される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(e)の後、23℃で48時間保管した後に前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層から剥離したときに、前記除去可能なカバーフィルムの剥離力が0.15~2.0N/50mmである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記除去可能なカバーフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(g)前記接着層の形成後に、前記カバーフィルム付き装飾フィルムをロール状に巻き取る工程を更に含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有するベース層を提供する工程、
(b)前記ベース層の前記第1面の上に、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層を形成する工程であって、前記少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含み、前記ベース層の前記第1面が前記ポリウレタン層の前記第2面に接触している、工程、
(c)除去可能なカバーフィルムを提供する工程、
(d)前記除去可能なカバーフィルムの表面をコロナ又はプラズマで処理する工程、
(e)前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面が前記ポリウレタン層の前記第1面に接触するように、前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の上に積層する工程、
(f)前記ベース層の前記第2面の上に接着層を形成する工程、及び
(h)前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の前記第1面から除去する工程
を含む、装飾フィルムを製造する方法。
【請求項15】
前記除去可能なカバーフィルムの前記表面の表面張力が40mN/m以上となるように、前記除去可能なポリエチレンテレフタレートカバーフィルムの前記表面がコロナ又はプラズマで処理される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(e)の後、23℃で48時間保管した後に前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層から剥離したときに、前記除去可能なカバーフィルムの剥離力が0.15~2.0N/50mmである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルムを基材に適用すること、及び
その後、前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の前記第1面から除去すること
を含む、装飾フィルムを施工する方法。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか一項に記載のカバーフィルム付き装飾フィルムの前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の前記第1面から除去して、装飾フィルムを得ること、及び
前記装飾フィルムを基材に適用すること
を含む、装飾フィルムを施工する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバーフィルム付き装飾フィルム並びにその製造方法及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装の代わりに装飾フィルムを自動車の車体、部品などに貼り付けて、これらの外観を装飾することが知られている。
【0003】
特許文献1(特開2013-039724号公報)は、「透明材料層および着色接着剤層を含む車輌塗装代替フィルムであって、前記着色接着剤層が、(i)(a)アクリルポリオールと、(b)前記アクリルポリオールに分散している着色剤であって、有機顔料と無機顔料の組み合わせ、有機顔料とアルミ光輝材の組み合わせ、有機顔料とマイカ光輝材の組み合わせ、無機顔料とアルミ光輝材の組み合わせ、無機顔料とマイカ光輝材の組み合わせ、およびアルミ光輝材とマイカ光輝材の組み合わせ、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される着色剤とを含む着色剤プレミックスと、(ii)接着性ポリマーとを含み、接着性ポリマー/(接着性ポリマー+アクリルポリオール)で表される固形分質量比が25%以上である、車輌塗装代替フィルム」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2007-297569号公報)は、「ポリウレタン樹脂からなるトップコート層と、前記トップコート層の表面側に設けられたキャリヤフィルムとを有する装飾層形成フィルムであって、前記ポリウレタン樹脂は、(1)イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体もしくはアダクト体又はこれらの両者を全ポリイソシアネートに対して0.5当量以上含有するポリイソシアネート、及び(2)カプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール又はその混合物からなり、かつ平均分子量が1000以下であるポリエステルポリオールを全ポリオールに対して0.4当量以上含有するポリオールを含み、前記ポリイソシアネートと前記ポリオールの当量比が0.7~2.0であるポリウレタン樹脂組成物からなることを特徴とする装飾層形成フィルム」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-039724号公報
【特許文献2】特開2007-297569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反応性ポリウレタン組成物の硬化物は、優れた耐久性を有することから、外装用途の装飾フィルムの表面層(トップ層)に有利に使用することができる。しかし、反応性ポリウレタン組成物を用いて表面層を形成すると、装飾フィルムの外観に問題が生じる、例えばクレータ状の欠陥(へこみ)が発生する場合がある。反応性ポリウレタン組成物は、一般に、装飾フィルムの表面層形成工程中の加熱処理だけでは完全に硬化せず、加熱処理後もポリウレタンの硬化反応が継続して徐々に進行する。加熱処理後に装飾フィルム又は表面層を有する中間部材をロールとして巻取ると、装飾フィルム又は中間部材の間にエアが噛み込まれる場合がある。噛み込まれたエアが完全に硬化していない柔らかい表面層を圧迫する結果、表面層にクレータ状の欠陥が生じるものと考えられる。
【0007】
図3A図3Dを参照して、装飾フィルムの製造においてクレータ欠陥が発生する機構を説明する。図3Aには、装飾フィルムの中間部材の概略断面図が示されている。中間部材30aは、カバーフィルム12a、装飾フィルムの表面層となるポリウレタン層14a、ベース層16a、及びベース層16aを支持する工程フィルム32aを有する積層体である。カバーフィルム12aは、完全に硬化していない柔らかい表面を有するポリウレタン層14aを保護する目的で積層されている。
【0008】
中間部材30aは、次工程までの間、一旦ロールに巻き取られて保管される。図3Bには、ロールに巻き取られて重なり合った中間部材の概略断面図が示されている。ロールへの巻取り時に、上側の中間部材30bの工程フィルム32bと下側の中間部材30aのカバーフィルム12aの間にエア40が噛み込まれる。完全に硬化していない柔らかい表面を有するポリウレタン層14aは、エア40によりカバーフィルム12aを介して圧迫されて変形し、クレータ42がポリウレタン層14aに形成される。
【0009】
別工程で接着層を形成した後、中間部材がロールから巻き出され、工程フィルムが除去され、ベース層の上に接着層が積層される。図3Cには、接着層が積層されたカバーフィルム付き装飾フィルムの概略断面図が示されている。カバーフィルム付き装飾フィルム10aは、中間部材のベースフィルム16aの下面に接着層18aが積層されている。接着層18aはライナー20aで保護されている。カバーフィルム付き装飾フィルム10aにおいて、カバーフィルム12aは剛性を有するため元々の形状に復元しているが、ポリウレタン層14aは、変形した状態で完全硬化しており、クレータ42がそのまま残っている。
【0010】
その後、施工時にカバーフィルム付き装飾フィルムからカバーフィルムが除去される。図3Dには、カバーフィルムが除去された装飾フィルムの概略断面図が示されている。装飾フィルムのポリウレタン層14aに形成されたクレータ42は、装飾フィルム表面の欠陥として視認される。
【0011】
クレータの発生を防止又は抑制する方法として、加熱処理時に反応性ポリウレタン組成物の硬化反応をより進行させて、ポリウレタン層の硬度を高めることが挙げられる。反応性ポリウレタン組成物の硬化反応を進行させる手段としては、加熱処理の温度をより高温にする、加熱処理の時間を長くする(例えば、連続式オーブンのライン速度を低下させる)、触媒の使用量を増やす、などが挙げられる。
【0012】
しかし、ポリウレタン層の硬度を高めると、ポリウレタン層の上にカバーフィルムを積層するまでにポリウレタン層の表面の粘着性が低下し、カバーフィルムがポリウレタン層の表面に良好に密着しない場合があった。カバーフィルムの密着が不良であると、カバーフィルムが装飾フィルムの製造時、運搬時、又は使用時に脱落してしまうおそれがある。
【0013】
本開示は、表面層としてポリウレタン層を有する装飾フィルムであって、クレータなどの欠陥が少ない表面品質の高いカバーフィルム付き装飾フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一実施態様によれば、
(a)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層であって、前記少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、ポリウレタン層と、
(b)コロナ処理又はプラズマ処理された表面を有する、除去可能なカバーフィルムであって、前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面が前記ポリウレタン層の前記第1面に接触している、除去可能なカバーフィルムと、
(c)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有するベース層であって、前記ベース層の前記第1面が前記ポリウレタン層の前記第2面に接触している、ベース層と、
(d)前記ベース層の前記第2面に接触している接着層と
を含む、カバーフィルム付き装飾フィルムが提供される。
【0015】
本開示の別の実施態様によれば、
(a)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有するベース層を提供する工程、
(b)前記ベース層の前記第1面の上に、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層を形成する工程であって、前記少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含み、前記ベース層の前記第1面が前記ポリウレタン層の前記第2面に接触している、工程、
(c)除去可能なカバーフィルムを提供する工程、
(d)前記除去可能なカバーフィルムの表面をコロナ又はプラズマで処理する工程、
(e)前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面が前記ポリウレタン層の前記第1面に接触するように、前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の上に積層する工程、及び
(f)前記ベース層の前記第2面の上に接着層を形成して、カバーフィルム付き装飾フィルムを得る工程
を含む、カバーフィルム付き装飾フィルムを製造する方法が提供される。
【0016】
本開示の更に別の実施態様によれば、
(a)第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有するベース層を提供する工程、
(b)前記ベース層の前記第1面の上に、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層を形成する工程であって、前記少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含み、前記ベース層の前記第1面が前記ポリウレタン層の前記第2面に接触している、工程、
(c)除去可能なカバーフィルムを提供する工程、
(d)前記除去可能なカバーフィルムの表面をコロナ又はプラズマで処理する工程、
(e)前記除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された前記表面が前記ポリウレタン層の前記第1面に接触するように、前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の上に積層する工程、
(f)前記ベース層の前記第2面の上に接着層を形成する工程、及び
(h)前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の前記第1面から除去する工程
を含む、装飾フィルムを製造する方法が提供される。
【0017】
本開示の更に別の実施態様によれば、
上記カバーフィルム付き装飾フィルムを基材に適用すること、及びその後、前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の前記第1面から除去することを含む、装飾フィルムを施工する方法が提供される。
【0018】
本開示の更に別の実施態様によれば、上記カバーフィルム付き装飾フィルムの前記除去可能なカバーフィルムを前記ポリウレタン層の前記第1面から除去して、装飾フィルムを得ること、及び前記装飾フィルムを基材に適用することを含む、装飾フィルムを施工する方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、表面層としてポリウレタン層を有する装飾フィルムであって、クレータなどの欠陥が少ない表面品質の高いカバーフィルム付き装飾フィルムを提供することができる。
【0020】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施態様のカバーフィルム付き装飾フィルムの概略断面図である。
図2】別の実施態様のカバーフィルム付き装飾フィルムの概略断面図である。
図3A】装飾フィルムの製造においてクレータ欠陥が発生する機構の説明図である。
図3B】装飾フィルムの製造においてクレータ欠陥が発生する機構の説明図である。
図3C】装飾フィルムの製造においてクレータ欠陥が発生する機構の説明図である。
図3D】装飾フィルムの製造においてクレータ欠陥が発生する機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、必要に応じて図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0023】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0024】
本開示において「硬化」には、一般的に「架橋」と呼ばれる概念も包含される。
【0025】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0026】
本開示において「透明」とは、JIS K 7375:2008に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%以上であることをいい、望ましくは約85%以上、又は約90%以上であってよい。平均透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、約100%未満、約99%以下、又は約98%以下とすることができる。
【0027】
本開示において「半透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約40%以上、約80%未満であることをいい、望ましくは約75%以下であってよい。
【0028】
一実施態様のカバーフィルム付き装飾フィルムは、
(a)第1面及び第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層であって、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、ポリウレタン層と、
(b)コロナ処理又はプラズマ処理された表面を有する、除去可能なカバーフィルムであって、除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面がポリウレタン層の第1面に接触している、除去可能なカバーフィルムと、
(c)第1面及び第1面の反対側の第2面を有するベース層であって、ベース層の第1面がポリウレタン層の第2面に接触している、ベース層と、
(d)ベース層の第2面に接触している接着層と
を含む。
【0029】
図1に、一実施態様のカバーフィルム付き装飾フィルムの概略断面図を示す。カバーフィルム付き装飾フィルム10は、除去可能なカバーフィルム12、ポリウレタン層14、ベース層16、及び接着層18を含む。除去可能なカバーフィルム12のコロナ処理又はプラズマ処理された表面122は、ポリウレタン層14の第1面(図1では上側の表面)に接触している。ベース層16の第1面(図1では上側の表面)は、ポリウレタン層14の第2面(図1では下側の表面)に接触している。接着層18は、ベース層16の第2面(図1では下側の表面)に接触している。カバーフィルム付き装飾フィルム10は、任意の要素としてライナー20を更に含んでもよい。
【0030】
ポリウレタン層は、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含む。少なくとも部分的に架橋したポリウレタンは、ポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含む。本開示において「部分的に架橋した」とは、架橋反応に関与するポリオールの反応部位及び架橋剤の反応部位の一部が反応して架橋を形成しているが、ポリオール及び架橋剤の両方について依然として架橋反応が可能な反応部位が残存している状態を意味する。一方で「完全に架橋した」とは、架橋反応に関与するポリオールの反応部位及び架橋剤の反応部位の少なくとも一方が、架橋反応により完全に消費された状態であるか、ポリウレタンの架橋が高度に進行した結果、架橋反応にもはや関与できない状態を意味する。例えば、ポリオールとイソシアネート架橋剤の当量比(NCO/OH)が1未満である反応性ポリウレタン組成物においては、ポリオールの水酸基が残存していても、イソシアネート架橋剤のイソシアナト基が完全に消費されていれば、ポリウレタンは完全に架橋している。
【0031】
ポリウレタン層は、反応性ポリウレタン組成物などのポリウレタン層組成物を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによってベース層の第1面の上又はライナーに塗布し、必要に応じて加熱することによって形成することができる。ライナーの上に形成したポリウレタン層は、ポリウレタン層の第2面がベース層の第1面に接触するように、ベース層の上に熱ラミネート又は転写ラミネート(ベース層の第1面がポリウレタン層に対して接着性を有する場合)することができる。加熱温度は、例えば、約40℃以上、約50℃以上、又は約60℃以上、約140℃以下、約120℃以下、又は約100℃以下とすることができる。加熱時間は、例えば、約1分以上、約2分以上、又は約5分以上、約1時間以下、約30分以下、又は約20分以下とすることができる。
【0032】
反応性ポリウレタン組成物は、1液硬化型(湿気硬化型、ブロックイソシアネート型など)であってもよく、2液硬化型であってもよい。一実施態様では、反応性ポリウレタン組成物は、ポリオールとイソシアネート架橋剤とを含む2液硬化型組成物である。
【0033】
ポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、炭素原子数2~20の低分子ポリオールと脂肪族多価カルボン酸又は芳香族多価カルボン酸との縮合物(例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート)などのポリエステルポリオール;及びポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート、ポリ(1,4-ジメチルシクロヘキシレン)カーボネート、ポリジエチレングリコールカーボネート、ポリテトラエチレングリコールカーボネート、ポリジプロピレングリコールカーボネートなどのポリカーボネートポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールからはポリエステル系ポリウレタンが形成される。ポリカーボネートポリオールからはポリカーボネート系ポリウレタンが形成される。
【0034】
ポリエステルポリオールを構成する炭素原子数2~20の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、及びメチルペンタンジオールアジペートが挙げられる。
【0035】
ポリオールは、任意の成分として、上記の炭素原子数2~20の低分子ポリオール;メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリル酸ジエステルなどの水酸基非含有(メタ)アクリレートと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメタクリル酸モノエステルなどの水酸基含有(メタ)アクリレートとの共重合物である(メタ)アクリルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、ソルビトール、スクロースなどの糖類のプロピレンオキシド付加物、エチレンジアミンなどの活性水素を有する化合物のプロピレンオキシド付加物などのポリエーテルポリオールを更に含んでもよい。
【0036】
ポリオールは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
イソシアネート架橋剤としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、トランス及び/又はシス-1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI、H12MDIなどとも呼ばれる)などの脂環式ポリイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;及びそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体又はアダクト変性体が挙げられる。イソシアネート架橋剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ポリオールとイソシアネート架橋剤との当量比(NCO/OH)は、約0.5以上、約0.7以上、又は約0.9以上、約2.5以下、約2.0以下、又は約1.5以下とすることができる。
【0039】
反応性ポリウレタン組成物は触媒を含んでもよい。触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、及びトリエチレンジアミンが挙げられる。触媒の使用量は、通常、ポリオール及びイソシアネート架橋剤の合計100質量部を基準として、約0.005質量部以上、約0.5質量部以下である。
【0040】
反応性ポリウレタン組成物は、水系であっても有機溶剤系であってもよい。水系の場合、ポリカルボジイミド、アジリジン、オキサゾリンなどによって更に架橋することもできる。水系反応性ポリウレタン組成物は、ポリカーボネートポリオールと、ポリカルボジイミド、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート及び/又はアジリジンとの組み合わせを含むことが好ましい。有機溶剤系反応性ポリウレタン組成物は、ポリカプロラクトンジオール及びポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネート三量体(イソシアヌレート体)との組み合わせを含むことが好ましい。
【0041】
ポリウレタン層は、必要に応じて、ベンゾトリアゾール、Tinuvin(登録商標)99-2(BASFジャパン株式会社、日本国東京都中央区)、Tinuvin(登録商標)1130(BASFジャパン株式会社)などの紫外線吸収剤、Tinuvin(登録商標)292(BASFジャパン株式会社)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)などの添加剤を含んでもよい。紫外線吸収剤、又はヒンダードアミン光安定化剤を用いることによって、ベース層が加飾層又は着色剤を含む場合、変色、退色、劣化などを有効に防止することができる。ポリウレタン層はハードコート材、光沢付与剤などを含んでもよい。ポリウレタン層は、目的とする外観を提供するために、透明であってもよく、半透明であってもよい。ポリウレタン層は透明であることが有利である。
【0042】
ポリウレタン層の厚さは様々であってよいが、一般に、約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約60μm以下である。複雑な形状の物品に対して装飾フィルムを適用する場合、ポリウレタン層は薄い方が形状追従性の観点から有利であり、例えば、約80μm以下、又は約60μm以下であることが望ましい。一方、物品に高い耐光性又は耐候性を付与する場合、ポリウレタン層は厚い方が有利であり、例えば約5μm以上、又は約10μm以上であることが望ましい。
【0043】
カバーフィルム付き装飾フィルムにおいては、除去可能なカバーフィルムのポリウレタン層への密着性、すなわちカバーフィルム付き装飾フィルムの製造中、運搬中又は作業中に脱落しないことと、除去可能なカバーフィルムの剥離性、すなわちカバー付き装飾フィルムの施工時又は施工後に容易に除去できることのバランスが求められる。本開示では、そのようなバランスを達成するための手段として、除去可能なカバーフィルムの表面にコロナ処理又はプラズマ処理を行う。
【0044】
除去可能なカバーフィルムは、ポリウレタン層に含まれるポリウレタンが完全に架橋するまでの期間、更には装飾フィルムの製造中、運搬中又は使用中にポリウレタン層の表面を保護する、又はそのようなポリウレタン層に除去可能なカバーフィルムの平滑な表面を転写することによりポリウレタン層の表面品質を高めることに寄与する。除去可能なカバーフィルムは、装飾フィルムの製造時、運搬時、又は使用時の支持体としても利用することができる。
【0045】
除去可能なカバーフィルムとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、又はフッ素系ポリマーの樹脂フィルムを使用することができる。
【0046】
除去可能なカバーフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、ポリウレタン層の破損を効果的に防止し、ポリウレタン層の表面品質を維持又は向上させることができる。
【0047】
ポリエチレンテレフタレートフィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが有利である。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、高い破断時伸び及び引張強度を有するため、ポリウレタン層の破損を効果的に防止し、ポリウレタン層の表面品質を維持又は向上させることができる。
【0048】
ポリウレタン層の第1面と接触する、除去可能なカバーフィルムの表面には、コロナ処理又はプラズマ処理が施されている。コロナ処理及びプラズマ処理は、ポリウレタン層の形成時に架橋が比較的進行したポリウレタンを含むポリウレタン層に対しても、カバーフィルム付き装飾フィルムの製造時、運搬時及び使用時には脱落しない程度であり、かつカバーフィルム付き装飾フィルムの施工時には除去可能な程度である密着性を、除去可能なカバーフィルムに付与することができる。
【0049】
一実施態様では、コロナ処理及びプラズマ処理は、除去可能なカバーフィルムの表面を清浄化することができる。これにより、除去可能なカバーフィルムとポリウレタン層の間に巻き込まれる異物を低減する、あるいはなくすことができ、その結果、ポリウレタン層の表面品質をより高めることができる。
【0050】
一実施態様では、コロナ処理及びプラズマ処理は、ロールから巻出されることにより除去可能なカバーフィルムの表面に帯電した静電気を除去して、埃、塵などの異物が除去可能なカバーフィルムの表面に付着することを防止できる。これにより、除去可能なカバーフィルムとポリウレタン層の間に巻き込まれる異物を低減する、あるいはなくすことができ、その結果、ポリウレタン層の表面品質をより高めることができる。
【0051】
コロナ処理は、樹脂フィルムの表面改質に一般に使用されるコロナ処理装置を用いて行うことができる。コロナ処理装置としては、例えば、GXR50(Sherman Treaters Ltd.、英国オックスフォードシャー州テーム)、及びTEG-4AX(春日電機株式会社、日本国神奈川県川崎市)が挙げられる。コロナ処理の条件は特に限定されないが、例えば、印加電力を1kW~5kW、コロナ処理時間を0.05秒間~5秒間、周波数を10kHz~20kHzとすることができる。コロナ処理中の放電は、連続的であってもよく、間欠的であってもよい。
【0052】
プラズマ処理は、樹脂フィルムの表面改質に一般に使用されるプラズマ処理装置を用いて行うことができる。プラズマ処理装置としては、例えば、大気圧プラズマ処理装置、及び減圧プラズマ装置が挙げられる。プラズマ処理の条件は特に限定されないが、例えば、プラズマガスを窒素ガス、又はヘリウム、アルゴンなどの希ガスとし、電力を0.5kW~4kW、プラズマガスの供給量を毎分50リットル~毎分150リットル、プラズマ処理装置内の圧力を大気圧、プラズマ処理時間を0.05秒間~5秒間とすることができる。
【0053】
除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面の表面張力は、約40mN/m以上であることが好ましい。上記表面張力は、約44mN/m以上、又は約46mN/m以上であることがより好ましい。除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面の表面張力は、一般に、約60mN/m以下であることが好ましい。上記表面張力は、約58mN/m以下、又は約56mN/m以下であることがより好ましい。
【0054】
除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面の反対側の表面は、コロナ処理又はプラズマ処理を有さなくてもよい。一実施態様では、除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面の反対側の表面の表面張力は、約40mN/m未満、約39mN/m以下、又は約38mN/m以下である。
【0055】
除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面に、ポリウレタン層の表面に形状を転写するための表面加工が施されていてもよい。表面加工としては、例えば、マット加工、エンボス加工、及びサンドブラスト加工が挙げられる。除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面の反対側の表面に、易滑性、剥離性などを付与するための表面処理が施されていてもよい。
【0056】
除去可能なカバーフィルムの厚さは、約5μm以上、約10μm以上、又は約25μm以上、約150μm以下、約100μm以下、又は約80μm以下とすることができる。
【0057】
ベース層としては、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、又はフッ素系ポリマーの樹脂フィルムを使用することができる。ベース層は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、及びポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。この実施態様では、装飾フィルムを、手貼り、真空圧空成形(DVT、Dual Vacuum Thermoforming)法、又は真空成形(VT、Vacuum Thermoforming)法を用いて、曲面を有する物品に対して優れた形状追従性で施工することができる。
【0058】
ベース層は着色されていてもよい。着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、アルミ光輝材、及びマイカ光輝材、並びにこれらの2種以上のブレンドが挙げられる。着色剤は、有機顔料と無機顔料の組み合わせ、有機顔料とアルミ光輝材の組み合わせ、有機顔料とマイカ光輝材の組み合わせ、無機顔料とアルミ光輝材の組み合わせ、無機顔料とマイカ光輝材の組み合わせ、及びアルミ光輝材とマイカ光輝材の組み合わせ、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択されることが好ましい。着色剤の上記組み合わせを使用することにより、様々な種類の色調を有する装飾フィルムを得ることができ、それにより、デザイン上の高度な要求に応えることができる。
【0059】
有機顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、及びキナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料が挙げられる。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄、及びカーボンブラックが挙げられる。アルミ光輝材としては、例えば、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウムフレーク、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク、及び着色アルミニウムフレークが挙げられる。マイカ光輝材としては、例えば、フレーク状の、二酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物で被覆されたマイカ、及び合成マイカが挙げられる。
【0060】
着色剤の含有量は、ベース層の質量を基準として約1質量%以上、約2質量%以上、又は約5質量%以上、約80質量%以下、約75質量%以下、又は約66質量%以下とすることができる。
【0061】
一実施態様では、ベース層は加飾層を含む多層構造を有する。図2に示す別の実施態様のカバーフィルム付き装飾フィルム10において、ベース層16はベースフィルム162及び加飾層164を含む多層構造を有している。
【0062】
ベースフィルムとしては、ベース層について説明した上記の樹脂フィルムを使用することができる。ベースフィルムの厚さは、約10μm以上、約500μm以下であることが好ましく、約30μm以上、約300μm以下であることがより好ましく、約80μm以上、約200μm以下であることが更に好ましい。
【0063】
加飾層としては、例えば、着色層(カラー層)、パターンフィルム(柄フィルム)、及びメタリック層が挙げられる。具体的には、加飾層は、金属調外観(メタリック、シルバーメタリックなど)、自動車外板塗装色(メタリック、白パール、パールマイカ、ソリッドなどの塗装色)、模様、ロゴ、絵柄などを装飾フィルムに付与する層、コーティング、フィルム、又は金属蒸着膜とすることができる。
【0064】
一実施態様では、加飾層は着色層である。着色層は、一般にバインダー樹脂と着色剤とを含む。
【0065】
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、及びポリエステルが挙げられる。バインダー樹脂は熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性アクリル樹脂を含むことがより好ましい。この実施態様では、装飾フィルムを、手貼り、真空圧空成形(DVT、Dual Vacuum Thermoforming)法、又は真空成形(VT、Vacuum Thermoforming)法を用いて、曲面を有する物品に対して優れた形状追従性で施工することができる。
【0066】
着色剤は、着色されたベース層について説明したものと同じである。着色剤の含有量は、着色層の質量を基準として約1質量%以上、約2質量%以上、又は約5質量%以上、約80質量%以下、約75質量%以下、又は約67質量%以下とすることができる。
【0067】
着色層は、バインダー樹脂と、着色剤と、必要に応じて溶剤とを含む着色層組成物を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコート、グラビアコートなどによりベースフィルムの上に塗布し、必要に応じて加熱することによって形成することができる。
【0068】
着色層の厚さは様々であってよいが、一般に、約1μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約60μm以下である。着色層の厚さを約10μm以上とすることで、下地色を隠蔽して所望の装飾外観を提供することができる。高い形状追従性を必要とする場合、着色層は薄い方が有利であり、例えば、約80μm以下、又は約60μm以下であることが望ましい。
【0069】
ベース層の厚さは、約10μm以上、約500μm以下であることが好ましく、約30μm以上、約300μm以下であることがより好ましく、約80μm以上、約200μm以下であることが更に好ましい。装飾フィルムを自動車の側面の下側又は正面に使用する場合の耐飛石性を考慮すると、ベース層の厚さは約80μm以上であることが好ましい。装飾フィルムを被着体の表面に保護テープとして一時的に設ける場合を除くと、曲面への貼り付け時にしわが入りにくいことから、ベース層の厚さは約30μm以上であることが好ましい。装飾フィルムが厚すぎると曲面への追従性が損なわれる傾向があり、また、経済性の観点からも、ベース層の厚さは約300μm以下であることが有利である。ベース層が多層構造を有する場合、ベース層の厚さは各層の合計厚さを意味する。
【0070】
接着層は、一般に使用される、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系、シリコーン系、又は酢酸ビニル系の接着剤を含む。接着層は、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤組成物を用いて形成することができる。接着層は感圧接着層であってもよい。
【0071】
接着層は、白色顔料、黒色顔料、又はそれらの混合物などの無彩色顔料、黄色顔料、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料、オレンジ色顔料などの有彩色顔料、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。白色顔料を含む接着層は、被着体表面(下地)を隠蔽する隠蔽層としても機能する。白色顔料としては、白色度が高いことから二酸化チタンを用いることが好ましい。
【0072】
接着層は、接着剤組成物を用いて形成することができる。具体的には、ベース層の第2面の上に接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱することにより、接着層を形成することができる。あるいは、別のライナー上に接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱して接着層を形成し、ベース層の第2面の上に接着層を転写ラミネートすることもできる。例えば、接着層は、接着剤組成物を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによりベース層又はライナーに塗布し、必要に応じて加熱することにより、形成することができる。ライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。
【0073】
接着層の厚さは様々であってよいが、一般に、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下である。被着体表面の凹凸に接着層が追従し、かつ剥がれを起こしにくい高い接着力を得るためには、接着層の厚さは約20μm以上であることが好ましい。装飾フィルムを延伸して貼り付けた後に、高温環境下でフィルムが収縮して装飾フィルムの端部において接着剤がはみ出す現象を軽減するためには、接着層の厚さは約50μm以下であることが好ましい。
【0074】
装飾フィルムは接着層を保護するライナーを有してもよい。ライナーとして、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、このようなプラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、一般に約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下である。
【0075】
接着層は、一般に平坦な接着面を形成するが、凹凸接着面を形成してもよい。この凹凸接着面には、接着層の接着面に、接着剤を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部とが形成され、被着体に接着された状態で被着体表面と接着面との間に凹部が画する外部と連通した連通路が形成される接着面を含む。凹凸接着面を形成する方法の一例を以下説明する。
【0076】
所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱して、接着層を形成する。これにより、接着層のライナーと接する面(これが装飾フィルムにおける接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着面に所定の構造(ポジ構造)を有する凹凸接着面を形成する。接着面の凹凸は、前述したように、被着体に凸部が接着した際に連通路が形成可能な溝を含むように予め設計される。
【0077】
接着層の溝は、装飾フィルムを物品に貼り付ける際に気泡残りを防止できる限り、一定形状の溝を規則的パターンに沿って接着面に配置して規則的パターンの溝を形成してもよく、不定形の溝を配置し不規則なパターンの溝を形成してもよい。複数の溝が互いに略平行に配置されるように形成される場合、溝の配置間隔は10~2000μmであることが好ましい。溝の深さ(接着面からベース層の方向に向かって測定した溝の底までの距離)は、通常約10μm以上、約100μm以下である。溝の形状も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、溝の形状を、接着面に垂直な方向の溝の断面において、略矩形(台形を含む)、略半円形、又は略半楕円形とすることができる。
【0078】
カバーフィルム付き装飾フィルムは、例えば、以下の工程を含む方法によって製造することができる。
(a)第1面及び第1面の反対側の第2面を有するベース層を提供する工程
(b)ベース層の第1面の上に、第1面及び第1面の反対側の第2面を有し、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンを含むポリウレタン層を形成する工程であって、少なくとも部分的に架橋したポリウレタンがポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンのうち少なくとも1つを含み、ベース層の第1面がポリウレタン層の第2面に接触している、工程
(c)除去可能なカバーフィルムを提供する工程
(d)除去可能なカバーフィルムの表面をコロナ又はプラズマで処理する工程
(e)除去可能なカバーフィルムのコロナ処理又はプラズマ処理された表面がポリウレタン層の第1面に接触するように、除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層の上に積層する工程
(f)ベース層の第2面の上に接着層を形成して、カバーフィルム付き装飾フィルムを得る工程
【0079】
工程(a)に提供されるベース層として上記のものを使用することができる。ベース層は、その第2面に支持体として工程フィルムを有する状態で提供されてもよい。
【0080】
工程(b)のポリウレタン層の形成は上記のとおり行うことができる。ポリウレタン層に含まれるポリウレタンは少なくとも部分的に架橋している。工程(b)の完了時に、ポリウレタンは完全架橋していないことが好ましい。この実施態様では、工程(e)において、除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層により強固に密着させることができる。
【0081】
工程(c)の除去可能なカバーフィルムとして上記のものを使用することができる。
【0082】
工程(d)のコロナ処理又はプラズマ処理は上記のとおり行うことができる。一実施態様では、コロナ処理又はプラズマ処理は、除去可能なカバーフィルムの表面の表面張力が約40mN/m以上となるように行われる。コロナ処理又はプラズマ処理の完了後、好ましくは1時間以内、より好ましくは10分以内に工程(e)が行われる。工程(d)と工程(e)が連続プロセスとして行われることがより好ましい。
【0083】
工程(e)の除去可能なカバーフィルムの積層は、ポリウレタンが完全架橋する前に行うことが好ましい。ポリウレタンが部分的に架橋した状態で除去可能なカバーフィルムを積層することにより、除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層により強固に密着させることができる。
【0084】
一実施態様では、工程(e)の後、23℃で48時間保管した後に除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層から剥離したときに、除去可能なカバーフィルムの剥離力は約0.15~約2.0N/50mmである。剥離力は、実施例に記載されたカバーフィルム付き装飾フィルムの剥離力の測定方法と同じ条件で決定される。
【0085】
工程(e)の後、23℃で48時間保管した後に測定される剥離力は、工程(b)において形成されたポリウレタン層に含まれるポリウレタンの架橋反応が、工程(e)の完了時点でどの程度進行していたかを示す指標として利用することができる。具体的には、ポリウレタンの架橋反応が初期段階にあると、ポリウレタン層内部の凝集力が低いために、ポリウレタン層と除去可能なカバーフィルムとの間の界面剥離ではなくポリウレタン層の凝集破壊が生じて、上記剥離力が見かけ上低く測定される。ポリウレタンの架橋反応が進行するにつれて、ポリウレタン層内部の凝集力が、ポリウレタン層と除去可能なカバーフィルムとの間の界面剥離力を上回り、ポリウレタン層と除去可能なカバーフィルムとの間で界面剥離が生じるが、ポリウレタン層の内部及び表面は依然として柔らかく、ポリウレタン層の表面の粘着性が高すぎるために、剥離力は高く測定される。ポリウレタンの架橋反応が更に進行すると、ポリウレタン層の表面の粘着性が低下するのに伴い剥離力は低下する。このとき、ポリウレタン層の表面はコロナ処理又はプラズマ処理されたカバーフィルムが良好に密着するだけの粘着性を有しており、ポリウレタン層の硬度はクレータなどの表面欠陥を抑制することができる程度に高められている。ポリウレタンが完全架橋に近づくと剥離力は更に低下して、除去可能なカバーフィルムがポリウレタン層の表面に十分な力で密着しなくなる。
【0086】
上記剥離力が約0.15~約2.0N/50mmとなるように、ポリウレタン層組成物の材料及び配合、工程(b)におけるポリウレタン層の形成条件、及び工程(d)におけるコロナ処理又はプラズマ処理の条件を選択することにより、ポリウレタン層の硬度を適度に高めつつ、除去可能なカバーフィルムのポリウレタン層への密着を確保することができる。これにより、ポリウレタン層におけるクレータなどの表面欠陥の発生を抑制し、カバーフィルム付き装飾フィルムの製造時、運搬時及び使用時の除去可能なカバーフィルムの脱落を防止することができる。
【0087】
工程(f)の接着層の形成は上記のとおり行うことができる。接着層を被覆する剥離ライナーを有する状態でカバーフィルム付き装飾フィルムを得てもよい。
【0088】
カバーフィルム付き装飾フィルムの製造方法は、任意に以下の工程(g)を更に含んでもよい。
(g)接着層の形成後に、カバーフィルム付き装飾フィルムをロール状に巻き取る工程
【0089】
工程(g)では、通常のフィルム製造に使用される巻取装置を用いて、巻芯の周りにカバーフィルム付き装飾フィルムを巻回することができる。この実施態様では、装飾フィルムの表面品質を低下させることなく、カバーフィルム付き装飾フィルムをロール形態で保管及び運搬することができる。
【0090】
一実施態様では、工程(f)の後に、以下の工程(h)を含むことにより、装飾フィルムが製造される。
(h)除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層の第1面から除去する工程
【0091】
工程(h)は、巻取装置を用いて連続的にカバーフィルムを剥離すること、又は裁断された装飾フィルムから手作業でカバーフィルムを剥離することを含む。
【0092】
カバーフィルム及びライナーの厚さを除く装飾フィルムの総厚は、約25μm以上、約80μm以上、又は約150μm以上、約600μm以下、約400μm以下、又は約350μm以下とすることができる。
【0093】
一実施態様では、カバーフィルム付き装飾フィルムにおける除去可能なカバーフィルムの剥離力は、約0.15N/50mm以上、約0.2N/50mm以上、約0.25N/50mm以上、約1.0N/50mm以下、約0.8N/50mm以下、又は約0.5N/50mm以下である。剥離力は実施例に記載の方法によって決定される。
【0094】
カバーフィルム付き装飾フィルムは、巻回されたロールの形態であってもよい。この実施態様において、巻回されることで重なった2枚の装飾フィルムの間にエアが噛み込まれた場合であっても、装飾フィルムの表面品質を維持することができる。
【0095】
一実施態様の装飾フィルムの施工方法は、カバーフィルム付き装飾フィルムを基材に適用すること、及びその後、除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層の第1面から除去することを含む。この実施態様では、ポリウレタン層が除去可能なカバーフィルムによって保護されているため、装飾フィルムの表面品質を維持しつつ、圧着治具などを用いて除去可能なカバーフィルムの上から装飾フィルムを基材に押し付けることにより装飾フィルムを強固に接着することができる。
【0096】
別の実施態様の装飾フィルムの施工方法は、カバーフィルム付き装飾フィルムの除去可能なカバーフィルムをポリウレタン層の第1面から除去して、装飾フィルムを得ること、及び装飾フィルムを基材に適用することを含む。この実施態様では、装飾フィルムの適用前に除去可能なカバーフィルムを除去することにより、装飾フィルムが本来有する形状追従性を発揮させることができる。そのため、角部、曲面、凹凸形状などの3次元表面を有する基材に対して装飾フィルムを優れた形状追従性で適用することができる。
【0097】
本開示の装飾フィルムは、塗装代替フィルムとして好適に使用することができる。例えば、本開示の装飾フィルムを、車両の本体(ルーフ、ドア、ボンネットなどを含む)若しくはその一部分、又は車両の構成部品(例えば、バンパー、ルーフモールディング、サイドガードモール、ピラーなど)に適用することができる。車両としては、トラック、バス、乗用車などの自動車、オートバイ、スクーターなどの二輪車、自転車、電車、遊覧船、ヨット、モーターボートなどの船舶などが挙げられる。
【実施例0098】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0099】
ポリウレタン層組成物に使用した原料を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
比較例1
比較例1のカバーフィルム付き装飾フィルムを以下の手順で作製した。
【0102】
(1)表2に記載の組成を有する黒色顔料含有アクリル組成物を、工程フィルムとして厚さ80μmのポリプロピレンフィルムに支持された、厚さ150μm熱可塑性ポリウレタンフィルム(シーダム株式会社、日本国大阪府大阪市)の上に塗布し、80℃の連続式オーブン内で5分間加熱し、乾燥厚さ23μmの着色層を熱可塑性ポリウレタンフィルムの上に形成して、着色層及びベースフィルムを含む多層構造を有するベース層を作製した。
【0103】
【表2】
【0104】
(2)表3に記載の組成で調製した固形分76.5質量%のポリウレタン層組成物を、(1)で形成したベース層の着色層側に塗布し、80℃の連続式オーブン内で3分20秒間加熱して、乾燥厚さ25μmの、少なくとも部分的に架橋したポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンを含む、ポリウレタン層を形成した。
【0105】
【表3】
【0106】
(3)ポリウレタン層の形成直後に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートカバーフィルムをポリウレタン層の表面に積層した。
【0107】
(4)2-エチルヘキシルアクリレート及びアクリル酸を含むアクリル系感圧接着剤を、シリコーン被覆ポリエチレンテレフタレート剥離ライナー上に塗布し、80℃の連続式オーブン内で5分間加熱して、乾燥厚さ35μmの感圧接着層を形成した。
【0108】
(5)(3)で形成した積層体から工程フィルムを除去し、ベース層のベースフィルム側と(4)で形成した感圧接着層とが接触するように積層して、カバーフィルム付き装飾フィルムを作製した。
【0109】
比較例2
ポリウレタン層の形成時に連続式オーブン内での加熱時間を8分20秒間に変更した以外は、比較例1と同様の手順でカバーフィルム付き装飾フィルムを作製した。
【0110】
例1
ポリエチレンテレフタレートカバーフィルムを積層直前に以下の条件でプラズマ処理したこと以外は、比較例2と同様の手順でカバーフィルム付き装飾フィルムを作製した。
プラズマ処理装置:AP-T04-R1400(積水化学工業株式会社、日本国大阪府大阪市)
流量:100L/分
電圧:360V
電流:3.5A
【0111】
例2
ポリエチレンテレフタレートカバーフィルムを積層直前に以下の条件でコロナ処理したこと以外は、比較例2と同様の手順でカバーフィルム付き装飾フィルムを作製した。
コロナ処理装置:GX50R(Sherman Treaters Ltd.、英国オックスフォードシャー州テーム)
出力:2kW
【0112】
例3
例2と同様の手順で例3のカバーフィルム付き装飾フィルムを作製した。
【0113】
例4
コロナ処理の出力を3kWに変更した以外は、例2と同様の手順でカバーフィルム付き装飾フィルムを作製した。
【0114】
表面品質(クレータ欠陥)
例1~例4及び比較例1~比較例2のカバーフィルム付き装飾フィルムからカバーフィルムを除去した後、目視にて、きょう雑物測定図表(製造:国立印刷局、販売:株式会社朝陽会、日本国埼玉県草加市)と比較して、大きさ0.3mm以上に相当するクレータ個数をカウントした。
【0115】
剥離力
カバーフィルム付き装飾フィルムを幅50mm、長さ200mmに切断して試料を作製した。オートグラフAGS-X 500N(株式会社島津製作所、日本国京都府京都市)を用いて、室温(23℃)、剥離速度200mm/分でカバーフィルムを180度剥離した。2回測定して得られた測定値の平均を剥離力(N/50mm)とした。
【0116】
表面張力
水系表面張力試薬であるEnerDyne(登録商標)Pen(Enercon Industries Corp.、米国ウィスコンシン州メノモニーフォールズ)を用いて表面張力を評価した。
【0117】
例1~例4及び比較例1~比較例2のカバーフィルム付き装飾フィルムの詳細及び評価結果を表4に示す。表4の積層後日数とは、表面張力及び剥離力の測定が、カバーフィルムの積層後何日目で行われたかを意味する。
【0118】
【表4-1】
【0119】
【表4-2】
【0120】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0121】
10、10a カバーフィルム付き装飾フィルム
12、12a、12b 除去可能なカバーフィルム
122 コロナ処理又はプラズマ処理された表面
14、14a、14b ポリウレタン層
16、16a、16b ベース層
162 ベースフィルム
164 加飾層
18、18a 接着層
20、20a ライナー
30a、30b 中間部材
32a、32b 工程フィルム
40 エア
42 クレータ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D