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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008086
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ワーク加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/03 20060101AFI20230112BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20230112BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20230112BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20230112BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/352
B23K26/142
B23K26/16
B23Q17/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111359
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 清
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
【テーマコード(参考)】
3C029
4E168
【Fターム(参考)】
3C029CC10
4E168AB01
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB22
4E168FC01
4E168FC04
4E168JB04
4E168KA16
(57)【要約】
【課題】直前より以前のワークの加工済領域を検査しつつ、同一のワークの次の加工予定領域に加工を行うことができるワーク加工装置を提供する。
【解決手段】本発明のワーク加工装置は、ワークの中心軸が予め設定された基準軸と同軸となるように前記ワークを位置決めして保持するワーク保持部と、前記ワーク保持部で保持された前記ワークの外周面に対して表面加工を行って加工済領域を設ける表面加工部と、前記基準軸を中心とする仮想円を定義した際、前記表面加工部に対して前記仮想円の周方向位相差を有するよう配置され、前記ワークの前記外周面の前記加工済領域を撮像して前記加工済領域が予め設定された基準条件を満たすように設けられたか否かを検査する検査部と、前記周方向位相差が維持される前記表面加工部及び前記検査部と、前記ワークとを前記基準軸を中心に相対回動させる相対回動部と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの中心軸の周りの外周面を加工するワーク加工装置であって、
前記ワークの前記中心軸が、予め設定された基準軸と同軸となるように前記ワークを位置決めして保持するワーク保持部と、
前記ワーク保持部で保持された前記ワークの前記外周面に対して表面加工を行って加工済領域を設ける表面加工部と、
前記基準軸を中心とする仮想円を定義した際、前記表面加工部に対して前記仮想円の周方向位相差を有するよう配置され、前記ワークの前記外周面の前記加工済領域を撮像して、前記加工済領域が予め設定された基準条件を満たすように設けられたか否かを検査する検査部と、
前記周方向位相差が維持される前記表面加工部及び前記検査部と、前記ワークとを前記基準軸を中心に相対回動させる相対回動部と、
を備えることを特徴とする、
ワーク加工装置。
【請求項2】
前記表面加工部は、前記ワークの前記外周面の周方向の異なる位置に複数の前記加工済領域を設けるようになっており、
前記周方向に隣接する複数の前記加工済領域の前記周方向における位相差を加工済領域位相差と定義した際、
前記表面加工部及び前記検査部の前記周方向位相差は、前記加工済領域位相差と同じか、又は、前記加工済領域位相差の整数倍であることを特徴とする、
請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記表面加工部は、前記相対回動部により前記ワークを前記加工済領域位相差に対応する角度だけ相対回動させる度に、前記ワークの前記外周面に対して表面加工を行って前記加工済領域を設けるようになっており、
前記検査部は、前記表面加工部が前記加工済領域を設けている間に、これよりも前に設けられた前記加工済領域を撮像して前記基準条件を満たすように設けられたか否かを検査することを特徴とする、
請求項2に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記表面加工部で表面加工が行われる前記ワークの前記外周面の領域又はその近傍領域に送風する送風部を備えることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記送風部によって送風される風の流れ方向は、前記検査部と前記ワークの間に介在する前記加工済領域を撮像するための撮像領域から離れる方向に設定されることを特徴とする、
請求項4に記載のワーク加工装置。
【請求項6】
前記表面加工部での表面加工の際、前記送風部で吹き飛ばされる屑を集塵する集塵部を備えることを特徴とする、
請求項4又は5に記載のワーク加工装置。
【請求項7】
前記ワークを前記ワーク保持部に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置による搬送経路の上流側に配置され、前記ワークの前記外周面の外観検査を行う検査装置と、
を備えることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項8】
前記ワークはバルブシートであることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項9】
前記表面加工部と前記検査部の相対位置を変更して前記周方向位相差を変更する位相差変更機構を備えることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【請求項10】
前記表面加工部及び/または前記検査部を、前記基準軸を中心に旋回させることで前記周方向位相差を変更する旋回テーブルを有することを特徴とする、
請求項1~9のいずれか一項に記載のワーク加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外周面を加工するワーク加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークをレーザー加工すると共に、ワークの検査を行うレーザー加工装置として、第1方向にそれぞれ互いに独立に移動可能に構成された複数のステージと、前記第1方向に直交する第2方向に移動可能に構成され、前記複数のステージのうち一のステージに保持された第1のワークを加工する加工手段と、前記加工手段とは独立して前記第2方向に移動可能に構成され、前記複数のステージのうち他のステージに保持された第2のワークを検査する検査手段と、を有するレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレーザー加工装置により、例えば、ワークの複数領域にレーザー加工及び加工済領域の検査を行う場合、まず、加工対象のワークが設置された所定のステージの近傍に加工手段を位置させ、加工対象のワークの複数領域の全てにレーザー加工を行う。そして、加工手段を別の位置に移動させ、加工対象のワークが設置された所定のステージの近傍に検査手段を位置させ、ワークの複数の加工済領域の全てに対して検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-061280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークの複数の加工箇所の一部に不具合があっても、そのワークは、検査では不合格として扱われる。しかしながら、特許文献1に記載のレーザー加工装置では、途中のレーザー加工に不具合が生じたとしてもその不具合はその後の検査でしか判明しないため、継続してワークの複数領域の全てにレーザー加工を行う。つまり、途中のレーザー加工に不具合が生じようが生じまいが、特許文献1に記載のレーザー加工装置では、一律に、継続してワークの複数領域の全てにレーザー加工を行うことになり、処理効率が悪い。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、直前より以前のワークの加工済領域を検査しつつ、同一のワークの次の加工予定領域に加工を行うことができるワーク加工装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワーク加工装置は、ワークの中心軸の周りの外周面を加工するワーク加工装置であって、前記ワークの前記中心軸が、予め設定された基準軸と同軸となるように前記ワークを位置決めして保持するワーク保持部と、前記ワーク保持部で保持された前記ワークの前記外周面に対して表面加工を行って加工済領域を設ける表面加工部と、前記基準軸を中心とする仮想円を定義した際、前記表面加工部に対して前記仮想円の周方向位相差を有するよう配置され、前記ワークの前記外周面の前記加工済領域を撮像して、前記加工済領域が予め設定された基準条件を満たすように設けられたか否かを検査する検査部と、前記周方向位相差が維持される前記表面加工部及び前記検査部と、前記ワークとを前記基準軸を中心に相対回動させる相対回動部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のワーク加工装置において、前記表面加工部は、前記ワークの前記外周面の周方向の異なる位置に複数の前記加工済領域を設けるようになっており、前記周方向に隣接する複数の前記加工済領域の前記周方向における位相差を加工済領域位相差と定義した際、前記表面加工部及び前記検査部の前記周方向位相差は、前記加工済領域位相差と同じか、又は、前記加工済領域位相差の整数倍であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のワーク加工装置において、前記表面加工部は、前記相対回動部により前記ワークを前記加工済領域位相差に対応する角度だけ相対回動させる度に、前記ワークの前記外周面に対して表面加工を行って前記加工済領域を設けるようになっており、前記検査部は、前記表面加工部が前記加工済領域を設けている間に、これよりも前に設けられた前記加工済領域を撮像して前記基準条件を満たすように設けられたか否かを検査することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のワーク加工装置は、更に、前記表面加工部で表面加工が行われる前記ワークの前記外周面の領域、又はその近傍領域に送風する送風部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のワーク加工装置において、前記送風部によって送風される風の流れ方向は、前記検査部と前記ワークの間に介在する前記加工済領域を撮像するための撮像領域から離れる方向に設定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のワーク加工装置は、更に、前記表面加工部での表面加工の際、前記送風部で吹き飛ばされる屑を集塵する集塵部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のワーク加工装置は、更に、前記ワークを前記ワーク保持部に搬送する搬送装置と、前記搬送装置による搬送経路の上流側に配置され、前記ワークの前記外周面の外観検査を行う検査装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のワーク加工装置において、前記ワークはバルブシートであることを特徴とする。また、本発明のワーク加工装置において、前記ワーク保持部は、前記バルブシートを保持するものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のワーク加工装置は、更に、前記表面加工部と前記検査部の相対位置を変更して前記周方向位相差を変更する位相差変更機構を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のワーク加工装置は、更に、前記表面加工部及び/または前記検査部を、前記基準軸を中心に旋回させることで前記周方向位相差を変更する旋回テーブルを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワーク加工装置によれば、直前より以前のワークの加工済領域を検査しつつ、同一のワークの次の加工予定領域に加工を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置の正面図である。
図2】本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置の平面図である。
図3】(A)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート保持部の斜視図である。(B)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート保持部の平面図である。
図4】(A),(B)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート保持部の断面図であり、動作するバルブシート保持部を時系列に並べたものである。(C),(D)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート保持部の平面図であり、バルブシートの内周面側からバルブシートを押圧して保持するように動作するバルブシート保持部を時系列に並べたものである。(E),(F)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート保持部の平面図であり、バルブシートの外周面側からバルブシートを押圧して保持するように動作するバルブシート保持部を時系列に並べたものである。
図5】(A),(B)は、それぞれ本発明の第一実施形態におけるバルブシート保持部の変形例の平面図である。
図6】(A)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置のバルブシート保持部の周囲の一部領域の平面図である。(B)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置のバルブシート保持部と送風部付近を拡大した拡大図である。
図7】(A)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置で加工されたバルブシートの斜視図である。(B)は、(A)のG-G矢視断面図である。
図8】本発明の第一実施形態におけるバルブシートの粗面領域の平面図である。
図9】本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置の変形例である。
図10】本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置の位相差変更機構によりレーザー照射部の検査部に対する相対位置が変更される様子を示す図である。
図11】(A)~(D)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置によりバルブシートに粗面領域を設けつつ、粗面領域の検査を行う様子を時系列に並べた図である。
図12】(A)~(D)は、本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置の変形例によりバルブシートに粗面領域を設けつつ、粗面領域の検査を行う様子を時系列に並べた図である。
図13】本発明の第二実施形態におけるバルブシート加工装置の平面図である。
図14】(A)は、本発明の第二実施形態におけるバルブシート加工装置のレーザー照射部及び検査部の通過領域を示す平面である。(B)は、本発明の第二実施形態におけるバルブシート加工装置のレーザー照射部及び検査部の通過領域を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のワーク加工装置は、ワークの中心軸の周りの外周面の加工予定領域を加工するものである。加工予定領域は、ワーク加工装置により加工されて加工済領域となる。本発明の実施形態では、ワークをバルブシート100とし、バルブシート100の中心軸104の周りの外周面101の加工済領域を、凹凸部102を有する粗面領域103とし(図7参照)、ワーク加工装置をバルブシート加工装置1として説明する。ただし、ワークは、バルブシート100に限定されるものではなく、例えば、環状の環状体、円盤状の円盤体、板状の板状体、柱状の柱状体、筒状の筒状体、及び、以上のものが組み合わさった形状の構造体のいずれであってもよい。また、加工予定領域への加工態様は、粗面領域103を設ける態様のみならず、その他の全ての加工態様が本発明の範囲に含まれる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1図14は発明を実施する形態の一例であって、図中、図1及び図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わすものとする。
【0020】
<第一実施形態>
主として図1及び図2を参照して、本発明の第一実施形態におけるバルブシート加工装置1を以下説明する。本実施形態におけるバルブシート加工装置1は、バルブシート100の外周面101に凹凸部102を有する粗面領域103(図7参照)を設けるものである。そして、本実施形態におけるバルブシート加工装置1は、例えば、バルブシート100の製造ラインの外観検査工程よりも下流側の最終工程に配置されることが想定されるが、これに限定されるものではなく、最終工程よりも前の工程に配置されてもよい。
【0021】
本実施形態におけるバルブシート加工装置1は、バルブシート保持部(ワーク保持部)2と、表面加工部(レーザー加工部)3と、検査部4と、相対回動部5と、送風部6と、集塵部7と、位相差変更機構8と、制御部9と、操作部10と、ディスプレイ11と、以上の各部を収容するケース12と、を備える。また、ケース12の内外を通過するようにして、バルブシート100を、バルブシート保持部2に対して搬入・搬出する搬送装置(図示しない)を備える。
【0022】
なお、以下の説明において、説明の便宜上、ケース12の高さ方向をZ軸方向とし、ケース12の幅方向をX軸方向とし、ケース12の奥行き方向をY軸方向とした仮想空間を定義し、適宜、それらを説明に用いるものとする。
【0023】
ケース12は、図1に示すように、ケース12の高さ方向(Z軸方向)に沿って3つの収容部(第一収容部120、第二収容部121、第三収容部122)を有する。ケース12の高さ方向の中段の第一収容部120には、バルブシート保持部2、レーザー加工部3の一部(レーザー照射部30)、検査部4、相対回動部5、送風部6の送風管61、集塵部7の集塵管71、位相差変更機構8、及びバルブシート検出部29が収容される。第一収容部120は、側面の一部(図1では紙面手前側の側面)が外部に開放されており、そこからバルブシート100が搬入・搬出される。また、第一収容部120は、図2に示すように、レーザー加工部3でバルブシート100の外周面101にレーザーを照射する際にレーザーが通過するレーザー通過領域R1と、検査部4でバルブシート100の外周面101に設けられた粗面領域103を撮像するための撮像領域R2と、を内部に有する。第一収容部120のレーザー通過領域R1及び撮像領域R2を介して、バルブシート100の外周面101に対するレーザー加工処理及び検査処理(撮像処理)が行われる。
【0024】
また、図1に示すように、ケース12の高さ方向の最下段の第二収容部121には、送風部6の送風源60、集塵部7の集塵本体部70、レーザー加工部3の残りの部分(レーザー制御部31)が収容される。ケース12の高さ方向の最上段の第三収容部122には、各部を制御する制御部9、各種の操作を受け付ける操作部10、及び、各種データや操作に関する情報が表示されるディスプレイ11が収容される。
【0025】
<バルブシート保持部(ワーク保持部)>
主として図3及び図4を参照してバルブシート保持部(ワーク保持部)2について説明する。バルブシート保持部2は、環状のバルブシート100の中心軸104が予め設定された基準軸2Aと同軸となるようにバルブシート100を位置決めして保持するものである。なお、基準軸2Aは、図1及び図3(A)に示すように、Z軸方向に平行である。バルブシート保持部2は、図3(A)に示すように、例えば、XY平面に平行な平面に沿う3方向からバルブシート100を径方向に支持する3つのチャック片20と、チャック片移動機構21と、を有する。
【0026】
図3(A)に示すように、チャック片20は、バルブシート100を載置するための載置面22AをZ軸方向の上面側に有する載置台部22と、載置面22AからZ軸方向の上方側に凸となる凸部23と、を有する。載置台部22と凸部23は、別部材で構成されてもよいし、一体形成されていてもよい。別部材の場合、凸部23は、載置台部22に取り付けられる。
【0027】
図3(B)に示すように、XY平面に平行な平面上に基準軸2Aを中心とする仮想円Kを定義した際、各載置台部22は、それぞれ基準軸2Aから仮想円Kの径方向に等距離で、且つ隣接する載置台部22のそれぞれの径方向に延在する中心線22C同士の成す角が等角(120°)となるようにチャック片移動機構21上に配置される。結果、図3(B)に示すように、XY平面に平行な平面上において、各載置台部22における各凸部23に外接する外接円は、基準軸2Aを中心としたものになる。
【0028】
チャック片移動機構21は、3つのチャック片20を仮想円Kの径方向に同時に往復移動可能に構成される。図4(A),(B)に示すように、例えば、チャック片移動機構21は、シリンダ25と、シリンダ25内をZ軸方向に沿って往復移動可能なピストン26と、ピストン26に従動してZ軸方向に沿って往復移動可能なカム27と、ストッパ27Aと、カム27により押圧されて仮想円Kの径方向の外側に移動し得る3つの移動片27Bと、シリンダ25に圧力を供給する(図示しない)圧力供給部と、チャック片案内部28と、を有する。
【0029】
カム27は、Z軸方向に沿って前進すると、3つの移動片27Bを、3つのチャック片20のZ軸方向の下方側から同時に押圧して、3つの移動片27Bを仮想円Kの径方向の外側に移動させるように構成される。3つの移動片27Bのそれぞれには、チャック片20が固定される。なお、移動片27Bとチャック片20は、別部材で構成されてもよいし、一体形成されていてもよい。そして、チャック片20は、移動片27Bと共に移動する。チャック片案内部28は、移動片27Bを仮想円Kの径方向に案内する。圧力供給部は、例えば、エアコンプレッサーを有し、ピストン前進側エア供給管、及びピストン後退側エア供給管を通じてシリンダ25内にエアを供給する。なお、圧力供給部は、エアにより圧力を与えるものではなく、流体により圧力を与えるものであってもよい。
【0030】
ピストン26がZ軸方向に沿って前進するように圧力供給部からシリンダ25内に圧力が供給されると、カム27もピストン26と共に前進し、3つの移動片27Bを同時に押圧して、チャック片案内部28に沿って仮想円Kの径方向の外側に移動させる。ストッパ27Aは、カム27の進行方向の前方側に配置される。カム27は、自身の先端がストッパ27Aに達するまで前進する。逆に、ピストン26が後退するように圧力供給部からシリンダ25内に圧力が供給されると、カム27もピストン26と共に後退する。この際、3つの移動片27Bは、(図示しない)復元機構によりチャック片案内部28に沿って同時に仮想円Kの径方向の内側に移動して、初期位置に戻る。
【0031】
また、バルブシート保持部2の周囲には、図1及び図2に示すように、バルブシート検出部29が配置される。バルブシート検出部29は、バルブシート保持部2でバルブシート100が保持されていることを検出するものである。バルブシート検出部29でバルブシート100が保持されていることが検出されない場合、後述するレーザー加工部3及び検査部4は、動作しないように制御部9で制御される。
【0032】
<バルブシート保持部でのバルブシートの保持動作>
次に、図4(C)~(F)を参照して、バルブシート保持部2でのバルブシート100の保持動作について説明する。まず、図4(C)に示すように、チャック片移動機構21により、3つのチャック片20の凸部23より径方向の外側の載置面22A上の領域にバルブシート100が載置できるような位置(基準軸2Aを中心とする3つの凸部23の外接円の径がバルブシート100の内径よりも小さくなる位置)に3つのチャック片20を位置させる。その状態において、バルブシート100が3つの載置台部22のそれぞれの載置面22Aに載置されるようにバルブシート100を設置する。
【0033】
次に、チャック片移動機構21により3つのチャック片20を仮想円Kの径方向の外側(図4(C)の矢印方向参照)に移動させる。移動の際、図4(D)に示すように、3つのチャック片20のそれぞれの凸部23が、バルブシート100の内周面105に接触して、バルブシート100を内側から外側に向かって3方向に押圧する。そして、3つのチャック片20のそれぞれの凸部23の外接円は、基準軸2Aを中心とするものである。このため、3つの凸部23がバルブシート100を3方向から押圧する状態になると、バルブシート100は、基準軸2Aを基準として芯出しされた状態となって、バルブシート100の中心軸104が基準軸2Aと同軸となる。このように、チャック片20が、バルブシート100の内周面105側を支持すると、バルブシート100の外周面101の全体が開放される。これにより、後述するレーザー加工部3による加工の際に、凸部23を含むチャック片20が邪魔にならないので、加工の自由度が高められる。また、後述する送風部6による外周面101に沿う風の流れが淀まないため、加工中の塵埃がバルブシート100の外周面101(チャック片20)に滞留することが抑制される。
【0034】
なお、以上では、凸部23がバルブシート100の内周面105側からバルブシート100を押圧してバルブシート100の芯出しを行うことにより、バルブシート100の位置決めを行った。本発明はこの態様に限定されるものではなく、図4(E),(F)に示すように、基準軸2Aを中心とする3つの凸部23の内接円の径がバルブシート100の外径よりも大きくなる位置に3つのチャック片20を位置させた状態でバルブシート100を載置台部22に載置した後に、チャック片20を仮想円Kの径方向の内側に移動させることでバルブシート100の外周面101を3方向に押圧してバルブシート100の芯出しを行うことにより、バルブシート100の位置決めを行ってもよい。
【0035】
チャック片20の載置台部22の長手方向の長さ、載置面22A上における凸部23の位置、凸部23の形状、チャック片移動機構21でのチャック片20の移動範囲は、バルブシート100の外径、又は、内径に応じて様々な態様が想定される。また、バルブシート保持部2は、凸部23の位置を載置面22A上に沿って変更可能な変更機構を有するように構成されてもよい。このように構成されれば、例えば、図4(C),(D)に示す位置の凸部23を、図4(E),(F)に示すような位置に変更することができる。
【0036】
また、図5(A)に示すように、バルブシート保持部2は、複数の孔201を有する台座部200と、エア吸気部(図示しない)と、を有するように構成されてもよい。複数の孔201は、台座部200にバルブシート100を載置したと仮定した際、バルブシート100の下に位置するように、バルブシート100の形状に沿って配列されるように設けられる。なお、図5(A)に示すように、複数の孔201は、第一の径を有するバルブシート100に対応して配列された第一グループ203A、第二の径を有するバルブシート100に対応して配列された第二グループ203Bを有するように、バルブシート100の径に応じて複数グループ設けられてもよい。エア吸気部(図示しない)は、複数の孔201を通じて吸気流を生成する。エア吸気部(図示しない)は、複数の孔201のグループ別に、吸気流を生成するよう構成されてもよい。以上のように、バルブシート保持部2が構成されると、バルブシート100は、エアで吸着されて台座部200で保持される。なお、バルブシート保持部2は、エア吸着を用いてバルブシート100を台座部200で保持するその他の構成であってもよい。
【0037】
また、図5(B)に示すように、バルブシート保持部2は、台座部200と、台座部200の所定の領域に磁力を発生させる磁力生成部(図示しない)と、を有するように構成されてもよい。磁力生成部(図示しない)は、台座部200にバルブシート100を載置したと仮定した際、バルブシート100の下に位置し、且つバルブシート100の形状に沿う環状領域にのみ磁力を発生させる。ただし、環状領域の中心は、基準軸2Aと一致する。バルブシート100の形状に沿う環状領域は、図5(B)に示すように、バルブシート100の径に応じて複数設けられてもよい(図5(B)の環状領域F1,F2参照)。また、磁力生成部(図示しない)は、台座部200全面又は環状領域に磁力を発生する永久磁石で構成されてもよいが、バルブシート保持部2からバルブシート100を取り外す際、脱磁する装置により脱磁を行う。なお、バルブシート保持部2は、磁力を用いてバルブシート100を台座部200で保持するその他の構成であってもよい。
【0038】
なお、上記2つのバルブシート保持部2の変形例の場合、更に、バルブシート100の中心軸104が基準軸2Aと同軸となるような芯出し機構(図示しない)を設けることが好ましい。エアで吸着される場合でも磁力で吸着される場合でも、より精度良くバルブシート100の芯出しを行うことができるからである。
【0039】
<表面加工部(レーザー加工部)>
主として図1及び図6を参照して表面加工部3について説明する。表面加工部3は、バルブシート保持部2で保持されたバルブシート100(ワーク)の外周面101に対して表面加工を行って加工済領域を設けるものである。本実施形態において表面加工部3は、図6(A)に示すように、第一収容部120の予め設定されたレーザー通過領域R1を介してバルブシート100の外周面101に対してレーザー照射を行って、バルブシート100の外周面101に粗面領域103を設けるものである。この意味で、本実施形態において表面加工部3は、便宜上、レーザー加工部3と呼ぶこととする。レーザー加工部3は、図1に示すように、レーザー照射部30と、レーザー制御部31と、を有する。
【0040】
図6(A)に示すように、レーザー照射部30は、レーザー照射口30Aを有し、レーザー照射口30Aからレーザーを照射する。そして、レーザー照射部30(レーザー照射口30A)は、レーザー通過領域R1を介して、バルブシート保持部2で保持されたバルブシート100の外周面101に(例えば、バルブシート保持部2で保持されたバルブシート100の径方向、又は、仮想円Kの径方向)対向する位置に配置される。また、レーザー照射部30は、レーザー通過領域R1の範囲内で、バルブシート100の外周面101におけるレーザーの照射位置を変位させるレーザー走査機構(図示しない)を有する。このレーザー走査機構によって、バルブシート100を移動させることなく、所望の粗面領域103を形成できる。
【0041】
なお、レーザー通過領域R1は、レーザー照射部30(レーザー照射口30A)とバルブシート保持部2で保持されたバルブシート100の間に介在する3次元空間の領域であり、バルブシート100の外周面101に粗面領域103を設けるに当たって、レーザーが通り得る領域である。従って、レーザー通過領域R1には、レーザーの通過を遮るものが設けられない。
【0042】
レーザー制御部31は、レーザー照射部30の動作を制御する。具体的にレーザー制御部31は、(図示しない)外部端末から受信した加工データに基づいて、加工データの通りに、バルブシート100の外周面101にレーザーが照射されるように、レーザー照射部30の動作を制御する。本実施形態では、加工データは、以下において説明する粗面領域103に関するものになる。
【0043】
また、レーザー加工部3には、レーザー通過領域R1となる筒状空間の周壁を構成する遮光カバー32が設けられる。なお、遮光カバー32は、設けられなくてもよく、そのようなもの本発明の範囲に含まれる。
【0044】
また、本発明のバルブシート加工装置1において表面加工部3は、レーザー加工部3に限定されるものではない。例えば、表面加工部3は、ショットブラストをバルブシート100の外周面101に吹き付けてバルブシート100の外周面101を加工するショットブラスト加工部(図示しない)により構成されてもよいし、切削工具等の工具を用いてバルブシート100の外周面101に表面加工(例えば、切削加工)を行うようなものにより構成されてもよい。また、表面加工部3における表面加工は、以下で説明する粗面領域103を設ける加工のみならず、特定の模様を設ける加工を含むその他の全ての加工を含む。
【0045】
<粗面領域>
次に、図7を参照して、粗面領域103について説明する。粗面領域103は、シリンダヘッドにバルブシート100を圧入した際、バルブシート100とシリンダヘッドとの接合力を高め、バルブシート100がシリンダヘッドから抜け落ちることを防止するものである。粗面領域103は、図7(A)に示すように、バルブシート100の外周面101の一部の領域を構成する。本実施形態において粗面領域103は、図7(A)に示すように、バルブシート100の外周面101に垂直な方向(バルブシート100の径方向)から見て、例えば、三角形状に形成される。なお、ここで言う三角形状は、厳密な意味での三角形状に限定されるものではなく、例えば、三角形の頂角に相当する部分が丸みを帯びていてもよいし、三角形の各辺には曲線が含まれていてもよい。なお、粗面領域103は、外周面101に垂直な方向から見たときの形状はどのような形状であってもよく、例えば、四角形状、半円形状、星型形状が一例として挙げられる。
【0046】
また、粗面領域103は、図7(A)に示すように、バルブシート100の周方向Lに沿って複数設けられてもよい。粗面領域103が複数設けられる場合、各粗面領域103は、バルブシート100の周方向Lに沿って等間隔に配置され、隣接する粗面領域103のそれぞれは、同一の周方向位相差を有する。なお、後述するレーザー加工部3と検査部4の周方向位相差と用語を区別するため、以下において、隣接する粗面領域103の周方向位相差を粗面領域位相差(加工済領域位相差:以下同様)と呼ぶこととする。本実施形態では、粗面領域位相差が90度に設定される。なお、本発明はこれに限定されず、各粗面領域103は、バルブシート100の周方向Lに沿って不等間隔に配置され、隣接する粗面領域103は、選択される粗面領域103の隣接対によって異なる周方向位相差を有してもよい。
【0047】
粗面領域103は、図7(B)に示すように、凹凸部102を有する。凹凸部102は、バルブシート100の外周面101上に形成される凹凸部分である。粗面領域103の凹凸部102は、図7(B)に示すように、複数の凸部102Aと、バルブシート100の中心軸方向Mにおいて凸部102Aに隣接する複数の凹部102Bとにより構成される。凸部102Aは、粗面領域103以外のバルブシート100の外周面(以下、基準外周面と呼ぶ。)101Aを基準としてバルブシート100の径方向に凸となる部分である。凹部102Bは、基準外周面101Aを基準としてバルブシート100の径方向に凹む部分である。凸部102Aと凹部102Bとは、バルブシート100の中心軸方向に沿って交互に並ぶ。
【0048】
<レーザー加工部による粗面領域の形成方法>
図8を参照して、バルブシート100の外周面101に垂直な方向から見て、三角形状の粗面領域103が形成される場合を例にとって、レーザー加工部3で粗面領域103を形成する場合について説明する。
【0049】
まず、レーザー照射部30は、レーザー制御部31の制御の下、三角形状の粗面領域103の底辺103Eの端点103EAを始点として、底辺103Eの端点103EBまで、レーザー走査機構によりバルブシート100の周方向Lの正方向にレーザーの照射位置を変位させる。これにより、バルブシート100の外周面101がレーザー加工されて、最下段の周方向Lに延びる溝状の凹部102B1が設けられる。
【0050】
次に、レーザー照射部30は、最下段の凹部102B1からバルブシート100の中心軸方向Mの正方向側に所定距離Δh、端点103EBよりもバルブシート100の周方向Lの負方向側に所定距離Δtだけずれた第一位置J1を始点として、端点103EAよりもバルブシート100の周方向Lの正方向側に所定距離Δtだけずれた第二位置J2まで、レーザー走査機構によりバルブシート100の周方向Lの負方向にレーザーの照射位置を変位させる。これにより、バルブシート100の外周面101がレーザー加工されて、最下段から一つ上の周方向Lに延びる溝状の凹部102B2が設けられる。なお、レーザー照射部30は、第二位置J2を始点として第一位置J1までレーザー走査機構によりバルブシート100の周方向Lの正方向にレーザーの照射位置を変位させてもよい。
【0051】
最下段の凹部102B1と最下段から一つ上の凹部102B2が設けられる過程で、最下段の凹部102B1と最下段から一つ上の凹部102B2の間にバルブシート100の材料が飛び散る。飛び散った材料がバルブシート100の基準外周面101Aに盛られて、それが最下段の周方向Lに延びる凸部102A1となる。
【0052】
つまり、レーザー照射部30は、上記に習って、バルブシート100の外周面101における仮想三角形(粗面領域103に対応する三角形)の辺上に位置する始点と終点の間を、バルブシート100の周方向Lの正方向又は負方向に沿ってレーザーの照射位置を変位させながら、バルブシート100の外周面101に対して周方向Lに延びる溝状の凹部(又は凸部)のレーザー加工を行う。そして、レーザー照射部30は、終点まで行ったら、バルブシート100の中心軸方向Mの正方向側にレーザーの照射位置を変位させ、そこから折り返して、バルブシート100の周方向Lの正方向又は負方向に沿ってレーザーの照射位置を変位させる。なお、レーザー照射部30は、終点まで行ったら、バルブシート100の中心軸方向Mの正方向側にレーザーの照射位置を所定距離だけ変位させつつ、直前の始点側の仮想三角形の辺上に戻って、バルブシート100の周方向Lの正方向又は負方向に沿ってレーザーの照射位置を変位させてもよい。以上のことを、三角形状の粗面領域103の頂点103Fに至るまで繰り返すと、三角形状の粗面領域103が設けられる。なお、上記では、底辺103Eを起点として頂点103Fに向かって加工されて三角形状の粗面領域103が設けられたが、頂点103Fを起点として底辺103Eに向かって加工されて三角形状の粗面領域103が設けられてもよい。また、粗面領域103が三角形以外の他の形状の場合でも、上記に習って粗面領域103はレーザー加工部3により設けられる。
【0053】
<検査部>
図1図2及び図6を参照して検査部4について説明する。検査部4は、第一収容部120の撮像領域R2を介して粗面領域103を撮像して、粗面領域103が予め設定された基準条件を満たすように設けられたか否かを検査するものである。検査部4は、例えば、図2に示すように、撮像部40と、解析部41と、判定部42と、を有する。
【0054】
図2及び図6(A)に示すように、撮像部40は、レンズ40Aを有し、撮像領域R2を介して粗面領域103を撮像して、撮像データを生成する。そして、撮像部40(レンズ40A)は、撮像領域R2を介してバルブシート100の外周面101に対向する位置に配置される。本実施形態では、撮像部40(レンズ40A)は、撮像領域R2を介して(例えば、バルブシート保持部2で保持されたバルブシート100の径方向、又は、仮想円Kの径方向)においてバルブシート100に対向する位置に配置される。
【0055】
なお、図6(A)に示すように、撮像領域R2は、撮像部40(レンズ40A)とバルブシート保持部2で保持されたバルブシート100の間に介在する3次元空間の領域であり、バルブシート100の外周面101の粗面領域103を撮像可能な領域である。従って、撮像領域R2には、バルブシート100の外周面101に粗面領域103の撮像を邪魔する障害物が無い。
【0056】
解析部41は、撮像データに基づいて、粗面領域103を解析する。解析結果として、例えば、バルブシート100の外周面101における粗面領域103の位置、形状、大きさに関するデータが得られる。そのデータの具体的内容として、例えば、粗面領域103が三角形状の場合、三角形状の底辺の長さ、バルブシート100の外周面101における底辺の位置、三角形状の高さ、三角形状の頂点のバルブシート100の外周面101における位置、底辺に対する三角形状の頂点の相対位置などが一例として挙げられる。
【0057】
判定部42は、解析部41で解析されたデータが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する。予め設定された基準条件とは、解析されたデータに対応するものである。例えば、三角形状の底辺の長さに関して言えば、底辺の長さの上限閾値と下限閾値であり、三角形状の高さに関して言えば、高さの上限閾値と下限閾値である。判定部42で基準条件を満たすと判定されたバルブシート100は、検査を合格したものとして扱われ、製品として出荷される。一方、判定部42で基準条件を満たさないと判定されたバルブシート100は、レーザー加工部3による加工途中であっても破棄される。これにより、レーザー加工部3によるバルブシート100に対する無駄な加工をなくすことができるため、効率的にバルブシート100の加工を行うことができる。
【0058】
また、図6(A)に示すように、バルブシート加工装置1をZ軸方向から平面視した際、バルブシート100の周方向を基準として、検査部4(撮像部40)は、レーザー加工部3(レーザー照射部30)に対して、相対回動方向Nの下流側に向かって所定の周方向位相差θを有する位置に配置される。なお、周方向位相差θの検査部4における基準は、例えば、撮像部40のレンズ40Aの光軸40ABであり、周方向位相差θのレーザー加工部3における基準は、例えば、レーザー照射口30Aから照射されるレーザーの光軸30ABである。これらの光軸40AB,30ABは、Z方向の基準軸2Aと交差するように予め位置決めされる。XY平面に平行な平面上において、これらの光軸40AB,30ABの成す角が周方向位相差θとなる。この周方向位相差θは、バルブシート100の各粗面領域103の粗面領域位相差に一致することが好ましい。後述するが、周方向位相差θを粗面領域位相差に一致させれば、相対回動部5で、バルブシート100(バルブシート保持部2)が、粗面領域位相差だけ相対回動されると、事前にレーザー加工で加工済みとなった粗面領域103のいずれかが、相対回動方向Nの下流側の撮像領域R2に停止する。当然ながら、バルブシート100の外周面101における次の加工予定領域Qは、レーザー通過領域R1に同時に停止する。そして、検査部4による粗面領域103の検査と、レーザー加工部3による加工予定領域Qに対するレーザー加工を同時に行うことができる。なお、本実施形態では、周方向位相差θと粗面領域位相差が90度で一致している。これにより、レーザー加工部3で新たに加工された粗面領域103は、次の相対回転で撮像領域R2に直ちに位置決めされる。一方、この周方向位相差θは、粗面領域位相差の整数倍であってもよく、例えば、本実施形態では、180度または270度であっても良いが、その分だけ検査タイミングが遅れることになる。
【0059】
<相対回動部>
図1を参照して相対回動部5について説明する。相対回動部5は、周方向位相差θが維持されるレーザー加工部3(レーザー照射部30)及び検査部4と、バルブシート保持部2(バルブシート100)とを、基準軸2Aを中心に相対回動させるものである。本実施形態では、レーザー加工部3及び検査部4が静止した状態で、相対回動部5によりバルブシート保持部2を回動させる。結果、相対回動部5は、バルブシート保持部2と一緒にバルブシート100を回動させる。
【0060】
本実施形態において相対回動部5は、軸部50と、軸側回動部51と、を有する。軸部50の中心軸は、基準軸2Aと同軸となる。バルブシート保持部2は、自身の中心軸と軸部50の中心軸が同軸となるように軸部50に固定される。軸側回動部51は、制御部9の制御の下に、基準軸2Aを中心に軸部50を回動させる。本実施形態において軸側回動部51は、例えば、軸部50を粗面領域位相差だけ回動させて所定時間停止した後に、再び、粗面領域位相差だけ回動させて所定時間停止するように動作するように制御部9により動作を制御される。上記所定時間の間に、レーザー加工処理や検査処理が行われる。そして、レーザー加工処理や検査処理が終了すると、軸側回動部51は回動する。
【0061】
<送風部>
図1図6及び図9を参照して送風部6について説明する。送風部6は、少なくともレーザー加工部3がバルブシート100の外周面101にレーザー加工を行う間、レーザー通過領域R1に送風を行うものである。本実施形態では、送風部6は、特に、レーザー通過領域R1に含まれ、且つレーザー加工対象となるバルブシート100の外周面101の加工予定領域Q又はその近傍領域に向けて送風を行う。送風される加工予定領域Q又はその近傍領域は、レーザー通過領域R1と交わる。送風により、レーザー加工の際に出る屑を吹き飛ばす。吹き飛ばした屑は、集塵部7の集塵管71を通じて集塵本体部70で集塵される。
【0062】
ただし、検査部4の撮像部40で粗面領域103を撮像中に、送風部6により吹き飛ばした屑が撮像領域R2に飛んでいくことを防止する必要がある。このため、送風部6によって生じる風の流れ方向は、加工予定領域Qに向かいつつ、撮像領域R2(ここに待機している粗面領域103)から離れる方向に設定されることが好ましい。
【0063】
図6(A)に示すように、バルブシート保持部2で保持されるバルブシート100をZ軸方向から平面視した際、送風部6は、X軸方向においてレーザー通過領域R1よりも撮像領域R2側(バルブシート100の相対回動方向Nの下流側)を起点として、レーザー通過領域R1に向かって(バルブシート100の相対回動方向Nの上流側に向かって)送風する。より詳細には、レーザーの光軸30ABよりも相対回動方向Nの下流側領域、かつ、バルブシート100の外周面101の加工予定領域Qの中心の接線Xよりもレーザー照射部30(レーザー通過領域R1)側の領域を起点として、バルブシート100の加工予定領域Q又はその近傍領域に向かう方向に送風を行う。これにより、送風方向は、図6(B)に示すように、接線Xに対して径方向外側から内側に向かって、所定の傾きα(ただし、0°<α<90°)を持って交差する。
【0064】
また、送風部6は、図9に示すように、バルブシート保持部2で保持されるバルブシート100をY軸方向から立面視した際、Z軸方向においてレーザー通過領域R1(またはレーザーの光軸30AB)よりも鉛直上方(Z軸上側)側から加工予定領域Q又はその近傍領域に向かいつつ、撮像領域R2から鉛直下方(Z軸下方)側に離れる方向に送風を行ってもよい。また、送風部6は、上記立面視した際の点線で示すように、Z軸方向においてレーザー通過領域R1(またはレーザーの光軸30AB)よりも上方側領域であり、且つ、レーザー通過領域R1(またはレーザーの光軸30AB)よりも検査部4(撮像領域R2)側領域を起点として、加工予定領域Q又はその近傍領域に向かう方向に送風を行ってもよい。
【0065】
以上のような送風部6は、図1に示すように、例えば、送風源60と、送風管61と、送風側バルブ62と、を有する。送風源60は、例えば、コンプレッサや送風機で構成される。そして、送風源60は、例えば、ケース12の第二収容部121に収容される。送風管61は、途中に送風側バルブ62が介在しており、送風源60に接続される。送風側バルブ62は、制御部9で開閉を制御される。送風管61は、開口がバルブシート100の外周面101の加工予定領域Q又はその近傍領域を向き、上記説明したような方向に送風できるような姿勢でケース12の第一収容部120に配置される。
【0066】
<集塵部>
図1図2図6及び図9を参照して集塵部7について説明する。集塵部7は、送風部6の送風で吹き飛ばされるレーザー加工の際に出る屑を集塵するものである。集塵部7は、図6に示すように、自身の開口71Aが加工予定領域Qを介して送風管61の開口61Aに対向する集塵管71を有する。本実施形態において集塵管71の開口71Aは、加工予定領域Qを介して検査部4(撮像部40)側を向くように配置される。そして、集塵管71の開口71Aと検査部4(撮像部40)の間には、バルブシート保持部2が介在する。
【0067】
なお、本実施形態において集塵管71は、図9に示すように、バルブシート保持部2で位置決めされた状態で保持されるバルブシート100をY軸方向から立面視した際、自身の開口71Aがバルブシート保持部2よりもZ軸方向の下方側に位置しつつ、レーザー通過領域R1に含まれるバルブシート100の外周面101の加工予定領域Q又はその近傍領域を介して送風管61の開口61Aに対向するような姿勢で配置されてもよい。
【0068】
また、集塵部7は、図1に示すように、集塵管71に繋がり、自身の内部に吸引する方向の気流を生成する集塵本体部70を有する。集塵本体部70を動作させると、集塵本体部70の内部に向かう吸気流が生成される。結果、集塵管71の開口71Aから加工の際に生じる屑が入り込み、集塵本体部70の内部に屑が収容される。集塵本体部70は、例えば、ケース12の第二収容部121に収容される。
【0069】
<位相差変更機構>
図10を参照して位相差変更機構8について説明する。位相差変更機構8は、レーザー加工部3(レーザー照射部30)と検査部4の相対位置を変更して、レーザー加工部3(レーザー照射部30)と検査部4の周方向位相差θを変更するものである。
【0070】
本実施形態では、位相差変更機構8は、検査部4を固定した状態で、レーザー加工部3のレーザー照射部30を、基準軸2Aを中心とする仮想円Kの周方向に旋回させるものである。これにより、レーザー加工部3のレーザー照射部30の検査部4に対する相対位置が変更され、上記周方向位相差θが変更される。
【0071】
具体的に位相差変更機構8は、例えば、レーザー照射部30が載置される旋回テーブル80を有する。この旋回テーブル80は、基準軸2Aを中心とする仮想円Kの周方向に旋回する。結果、旋回テーブル80を旋回させても、レーザー照射部30によるレーザーの光軸30ABは、常に、基準軸2Aを交差する姿勢を維持できる。なお、旋回テーブル80の移動を自動化するために、特に図示しない移動機構を設けるようにしてもよい。なお、ここでは、旋回テーブル80によってレーザー照射部30を旋回させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、旋回テーブル80によって検査部4を旋回させることで、周方向位相差θを自在に変更できるようにしてもよい。また、位相差変更機構8は、レーザー加工部3(レーザー照射部30)と検査部4の相対位置を変更して周方向位相差θを変更できる上記以外の全ての構成をも含む。
【0072】
また、レーザー照射部30が旋回テーブル80で旋回されて、レーザー通過領域R1が変更される場合でも、送風部6の送風管61は、送風管61の開口61Aが、レーザー通過領域R1に含まれる加工予定領域Q又はその近傍領域を向くような姿勢を取れるように構成されることが好ましい。この場合、送風管61は、自身の姿勢を変更可能に変形する第一変形機構を有するように構成されてもよい。送風管61は、第一変形機構により湾曲変形、折り曲げ変形等されて姿勢を変更することができる。結果、送風管61は、第一変形機構により自身の開口61Aが、レーザー通過領域R1に含まれる加工予定領域Q又はその近傍領域を向くような姿勢にすることができる。また、送風管61は、自身の開口61Aの向きを変更可能に移動し得る第一移動機構により姿勢を変更されてもよい。そして、第一移動機構には、旋回テーブル80又は別の旋回テーブルが含まれ、送風管61は、旋回テーブル80又は別の旋回テーブルに固定され、レーザー照射部30と共に基準軸2Aの周りを旋回できるように構成されてもよい。
【0073】
更に、送風管61の開口61Aが向きを変える場合、集塵部7の集塵管71は、レーザー通過領域R1に含まれる加工予定領域Q又はその近傍領域を境界として、X軸方向において送風管61の開口61Aと反対側から集塵管71の開口71Aがレーザー通過領域R1に含まれる加工予定領域Q又はその近傍領域側を向くような姿勢を取れるように構成されることが好ましい。この場合、集塵管71は、自身の姿勢を変更可能に変形する第二変形機構を有するように構成されてもよい。集塵管71は、第二変形機構により湾曲変形、折り曲げ変形等されて姿勢を変更することができる。結果、集塵管71は、第二変形機構により自身の開口71Aが、レーザー通過領域R1に含まれる加工予定領域Q又はその近傍領域を向くような姿勢にすることができる。また、集塵管71は、自身の開口71Aの向きを変更可能に移動し得る第二移動機構により姿勢を変更されてもよい。そして、第二移動機構には、旋回テーブル80又は別の旋回テーブルが含まれ、集塵管71は、旋回テーブル80又は別の旋回テーブルに固定され、レーザー照射部30及び送風管61と共に基準軸2Aの周りを旋回できるように構成されてもよい。以上により、レーザー照射部30が旋回して、レーザー通過領域R1に含まれる加工予定領域Q又はその近傍領域の位置が変わっても、レーザー加工の際に生じる屑の集塵処理を引き続き行うことができる。
【0074】
<制御部>
制御部9は、バルブシート保持部2、レーザー加工部3、検査部4、相対回動部5、送風部6、集塵部7、及び位相差変更機構8の動作を制御するものである。制御部9は、図1に示すように、例えば、第三収容部122に収容される。なお、各動作タイミングについては、以下の<バルブシート加工装置の動作>で説明する。
【0075】
なお、制御部9は、CPU、RAM、ROM、及び記憶媒体等を有する計算機により構成される。CPUは、計算機内の全体の処理を司るものであり、作業領域としてRAMを使用する。ROMには、例えば、計算機を起動させるためのプログラムや、計算機の基本的な動作を実現するオペレーティングシステム(OS)や、その他の様々なプログラムが書き込まれる。記憶媒体は、様々なデータやプログラムが記憶されるものであり、例えば、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性メモリ、又は、ハードディスクドライブ(HDD)、又は、ソリッドステートドライブ(SSD)等により構成される。ROMや記憶媒体に記憶されたプログラムに従ってCPUからレーザー加工部3、検査部4、相対回動部5、送風部6、集塵部7、及び位相差変更機構8に命令が送られ、それらは動作する。具体的に計算機は、例えば、専用のコンピュータにより構成されてもよいし、汎用のパソコン(デスクトップパソコン、ラップトップパソコン)により構成されてもよい。
【0076】
<バルブシート加工装置の動作>
図11を参照して、バルブシート100に粗面領域103を設ける際のバルブシート加工装置1の動作について以下説明する。本実施形態では、バルブシート100の外周面101に4つの粗面領域103(第一粗面領域103A~第四粗面領域103D)を設ける場合を例にとって説明することとする。なお、4つの粗面領域103は、バルブシート100の外周面101の周方向に沿って90°の粗面領域位相差を付けて等間隔に設けられる。4つの粗面領域103が設けられるバルブシート100の外周面101の加工予定領域Qをそれぞれ第一加工予定領域Q1~第四加工予定領域Q4と定義する。
【0077】
バルブシート100が製造された後に、例えば、検査装置300によりバルブシート100の検査が行われる(図2参照)。なお、バルブシート100の検査とは、バルブシート100の外径・内径寸法、高さ寸法、内周面及び外周面の外観検査の少なくとも1つを含む。検査を合格したバルブシート100は、バルブシート加工装置1のバルブシート保持部2まで搬送装置(図示しない)によって搬送される。つまり、搬送装置によるバルブシート100の搬送経路の上流側には、検査装置300が備えられ、それらよりも搬送経路の下流側には、バルブシート加工装置1が備えられる。本実施形態では、バルブシート100の外周面101に対するレーザー加工が行われる前に、バルブシート100の外観検査が行われるが、このように構成すれば、寸法精度が高く、外観に問題のないバルブシート100の外周面101に対してレーザー加工が行えるため、レーザー加工の精度が高まる利点がある。
【0078】
図1及び図2に示すバルブシート検出部29でバルブシート100がバルブシート保持部2に設置されたことが検出されると、図11(A)に示すように、レーザー通過領域R1にバルブシート100の第一加工予定領域Q1が含まれる状態(以下、第一状態と呼ぶ。)になったことが制御部9で認識される。そして、制御部9は、レーザー加工部3(レーザー照射部30)にレーザー加工処理を行うべき旨の指示をする。レーザー加工部3(レーザー照射部30)は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート100の第一加工予定領域Q1対してレーザーを照射して、バルブシート100の第一加工予定領域Q1に粗面領域(以下、第一粗面領域と呼ぶ。)103Aを設ける。
【0079】
レーザー加工部3(レーザー照射部30)による第一加工予定領域Q1に対するレーザー加工処理が終了して、バルブシート100の第一加工予定領域Q1に第一粗面領域103Aが設けられると、制御部9は、相対回動部5に対して時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動して停止すべき旨の指示をする。図11(B)に示すように、相対回動部5は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート保持部2を時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動させて停止する。これにより、図11(B)に示すように、レーザー通過領域R1にバルブシート100の第二加工予定領域Q2が含まれ、バルブシート100の第一加工予定領域Q1に設けられた第一粗面領域103Aが撮像領域R2に含まれる状態(以下、第二状態と呼ぶ。)になる。
【0080】
図11(B)に示すように、第二状態になると、制御部9は、レーザー加工部3(レーザー照射部30)に対して、第二加工予定領域Q2に対するレーザー加工処理を行うべき旨の指示と共に、検査部4に対して第一粗面領域103Aの検査処理を行うべき旨の指示をする。レーザー加工部3(レーザー照射部30)は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート100の第二加工予定領域Q2対してレーザーを照射して、バルブシート100の第二加工予定領域Q2に粗面領域(以下、第二粗面領域と呼ぶ。)103Bを設ける。レーザー加工部3(レーザー照射部30)が第二粗面領域103Bを設けている間に、検査部4は、制御部9からの指示を受けて、撮像部40で第一粗面領域103Aを撮像して、第一粗面領域103Aが基準条件を満たしているか否かの検査を行う。なお、検査部4が検査処理を行うタイミングは、レーザー加工部3(レーザー照射部30)がレーザー加工処理を行っている間のいずれかであることが好ましいが、レーザー加工処理を行うタイミングと同時であることがより好ましい。
【0081】
第一粗面領域103Aが基準条件を満たしていない場合、制御部9は、搬送装置(図示しない)に対してバルブシート100を廃棄すべき旨の指示を行う。搬送装置は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート100を搬送して所定の場所に廃棄する。
【0082】
なお、第一粗面領域103Aが基準条件を満たしていない場合、バルブシート100は廃棄されるため、第二粗面領域103Bを設けるタイミングは、検査部4で第一粗面領域103Aが基準条件を満たしていると判断された後でもよい。つまり、第二状態の状態になった以降は、検査部4での検査処理の方が、レーザー加工部3(レーザー照射部30)でのレーザー加工処理よりも先に行われてもよい。この場合、バルブシート100に対して無駄な加工をせずに済むメリットがあるが、検査処理が完了した後でないと、レーザー加工処理を行えない。このため、上記検査処理後のレーザー加工処理では、レーザー加工処理及び検査処理を同時に行う場合に比べて、1つのレーザー加工処理及び検査処理を終了するのに時間がかかる。
【0083】
レーザー加工処理及び検査処理が終了して、第一粗面領域103Aが基準条件を満たしていると判定部42で判定されると、制御部9は、相対回動部5に対して時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動して停止すべき旨の指示をする。図11(C)に示すように、相対回動部5は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート保持部2を時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動させて停止する。これにより、図11(C)に示すように、レーザー通過領域R1にバルブシート100の第三加工予定領域Q3が含まれ、バルブシート100の第二加工予定領域Q2に設けられた第二粗面領域103Bが撮像領域R2に含まれる状態(以下、第三状態と呼ぶ。)になる。
【0084】
図11(C)に示すように、第三状態になると、制御部9は、レーザー加工部3(レーザー照射部30)に対して、第三加工予定領域Q3に対するレーザー加工処理を行うべき旨の指示と共に、検査部4に対して第二粗面領域103Bの検査処理を行うべき旨の指示をする。レーザー加工部3(レーザー照射部30)は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート100の第三加工予定領域Q3対してレーザーを照射して、図11(C)に示すように、バルブシート100の第三加工予定領域Q3に粗面領域(以下、第三粗面領域と呼ぶ。)103Cを設ける。レーザー加工部3(レーザー照射部30)が第三粗面領域103Cを設けている間に、検査部4は、制御部9からの指示を受けて、第二粗面領域103Bが基準条件を満たしているか否かの検査を行う。なお、ここでも検査部4が検査処理を行うタイミングは、レーザー加工部3(レーザー照射部30)がレーザー加工処理を行っている間のいずれかであることが好ましいが、レーザー加工処理を行うタイミングと同時であることがより好ましい。
【0085】
第二粗面領域103Bが基準条件を満たしていない場合、制御部9は、上記と同様に、搬送装置(図示しない)に対してバルブシート100を廃棄すべき旨の指示を行う。搬送装置は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート100を廃棄する。レーザー加工処理及び撮像処理が終了して、第二粗面領域103Bが基準条件を満たしていると判定部42で判定されると、制御部9は、相対回動部5に対して時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動して停止すべき旨の指示をする。図11(D)に示すように、相対回動部5は、制御部9からの指示を受けて、バルブシート保持部2を更に時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動させて停止する。これにより、図11(D)に示すように、レーザー通過領域R1にバルブシート100の第四加工予定領域Q4が含まれ、バルブシート100の第三加工予定領域Q3に設けられた第三粗面領域103Cが撮像領域R2に含まれる状態(以下、第四状態と呼ぶ。)になる。
【0086】
第四状態においては、上記第二状態、及び第三状態において行われた処理と同様の処理が行われて、バルブシート100の第四加工予定領域Q4に粗面領域(以下、第四粗面領域と呼ぶ。)103Dが設けられると共に、第三粗面領域103Cに対する検査処理が行われる。そして、第四状態でのレーザー加工処理及び検査処理が問題無く終了すると、バルブシート保持部2は、相対回動部5により時計回りに粗面領域位相差90°だけ回動し、レーザー通過領域R1にバルブシート100の第一粗面領域103Aが含まれ、バルブシート100の第四粗面領域103Dが撮像領域R2に含まれる状態(以下、第五状態と呼ぶ。)になる。なお、第五状態は、図示しない。第五状態では、レーザー加工部3の加工予定領域に既に第一粗面領域103Aが設けられているため、レーザー加工部3によるレーザー加工処理は行われず、第四粗面領域103Dに対する検査部4による検査処理だけが行われる。最終的に、検査部4でバルブシート100の第四加工予定領域Q4に設けられた第四粗面領域103Dが基準条件を満たしていると判定部42で判定された場合、そのバルブシート100は、出荷可能な製品として搬送装置により所定の場所に搬送される。
【0087】
なお、上記とは異なり、周方向位相差θが粗面領域位相差の整数倍であってもよい。この場合、図12(A)~(D)に示すように、周方向位相差θが粗面領域位相差90°の2倍の180°である場合、レーザー加工部3で第三粗面領域103Cが設けられる際に、検査部4では、レーザー加工部3で最初に設けられた第一粗面領域103Aの検査処理が行われる。つまり、周方向位相差θが粗面領域位相差の整数倍である場合、レーザー加工部3で粗面領域を設けつつ、同じタイミングで、検査部4では、直前よりも前にレーザー加工部3で設けられた粗面領域を検査する。このような態様も本発明に範囲に含まれる。
【0088】
<第二実施形態>
図13及び図14を参照して、本発明の第二実施形態におけるバルブシート加工装置1について説明する。本実施形態におけるバルブシート加工装置1は、第一実施形態におけるバルブシート加工装置1と異なり、相対回動部5は、バルブシート保持部2を回動させず、レーザー照射部30及び検査部4を、基準軸2Aを中心に旋回(回動)させる。そして、相対回動部5は、レーザー照射部30と検査部4の周方向位相差θを維持したまま、レーザー照射部30及び検査部4を、基準軸2Aを中心に旋回(回動)させる。
【0089】
本実施形態における相対回動部5は、図13に示すように、旋回テーブル55と、旋回テーブル駆動部56と、を有する。旋回テーブル55は、レーザー照射部30と検査部4が周方向位相差θを有する位置及び姿勢で、レーザー照射部30及び検査部4を保持する。
【0090】
図14(B)に示すように、旋回テーブル駆動部56は、基準軸2Aを中心に旋回テーブル55を旋回させるものである。旋回テーブル駆動部56は、基準軸2Aと同軸の駆動軸を有するモーターを含む旋回側回動部57と、旋回側回動部57から基準軸2Aを中心とする円の径方向に延在すると共に、旋回テーブル55に繋がる径方向延在部58と、を有する。
【0091】
以上のように構成される本実施形態における相対回動部5は、バルブシート保持部2と共にバルブシート100を固定した状態で、レーザー照射部30と検査部4の周方向位相差θを維持しつつ、レーザー照射部30及び検査部4を、基準軸2Aを中心に旋回(回動)させる。なお、上記相対回動部5の構成は、一例であって、レーザー照射部30と検査部4の周方向位相差θを維持しつつ、レーザー照射部30及び検査部4を、基準軸2Aを中心に旋回(回動)させることができるその他の構成も本発明の範囲に含まれる。
【0092】
また、相対回動部5は、レーザー照射部30と検査部4の周方向位相差θを維持したまま、レーザー照射部30及び検査部4を、基準軸2Aを中心に旋回(回動)させつつ、バルブシート保持部2をバルブシート100と一緒に回動させてもよい。
【0093】
なお、本実施形態では、レーザー照射部30と検査部4が基準軸2Aを中心に旋回(回動)される。このため、レーザー照射部30と検査部4が旋回する際、送風部6の送風管61と、集塵部7の集塵管71は、レーザー照射部30と検査部4に干渉しないように構成される必要がある。つまり、送風部6の送風管61と、集塵部7の集塵管71は、レーザー照射部30と検査部4が旋回する際に通過し得る通過領域U(図14(A),(B)参照)を避けて配置される必要がある。例えば、送風部6の送風管61と、集塵部7の集塵管71が、旋回するレーザー照射部30及び検査部4に干渉しないように、バルブシート加工装置1をY軸方向から立面視した際、図14(B)に示すように、送風部6の送風管61は、通過領域U(レーザー照射部30及び検査部4)よりもZ軸方向の上方側に配置される必要がある。また、集塵部7の集塵管71は、通過領域U(レーザー照射部30及び検査部4)よりもZ軸方向の下側上方側に配置される必要がある。また、図14(A)に示すように、バルブシート加工装置1をZ軸方向から平面視した際、送風部6の送風管61と、集塵部7の集塵管71は、通過領域Uよりも外側の領域に配置されてもよい。
【0094】
また、送風部6の送風管61及び集塵部7の集塵管71は、レーザー照射部30と検査部4との間の相対位置を維持したまま、レーザー照射部30及び検査部4と共に、相対回動部5により基準軸2Aを中心に旋回(回動)されるように構成されてもよい。この場合、送風部6の送風管61と、集塵部7の集塵管71は、上記旋回テーブル55に固定されることが好ましい。
【0095】
尚、本発明のワーク加工装置、及びワーク加工装置の一例であるバルブシート加工装置1は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、各実施形態のそれぞれの各構成要素を適宜組み合わせたもの全てが本発明の範囲に含まれ、且つ本発明の要旨を逸脱しない範囲内においてそれらに種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
1 バルブシート加工装置
2 バルブシート保持部
2A 基準軸
3 レーザー加工部
4 検査部
5 相対回動部
6 送風部
7 集塵部
8 位相差変更機構
9 制御部
30 レーザー照射部
31 レーザー制御部
40 撮像部
41 解析部
42 判定部
50 軸部
51 軸側回動部
55 旋回テーブル
56 旋回テーブル駆動部
57 旋回側回動部
58 径方向延在部
60 送風源
61 送風管
62 送風側バルブ
70 集塵本体部
71 集塵管
100 バルブシート
101 外周面
102 凹凸部
103 粗面領域
300 検査装置
K 仮想円
L バルブシートの周方向
M バルブシートの中心軸方向
R1 レーザー通過領域
R2 撮像領域
S 加工予定領域
θ 周方向位相差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14