IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ヴイテックの特許一覧

<>
  • 特開-射出成形品 図1
  • 特開-射出成形品 図2
  • 特開-射出成形品 図3
  • 特開-射出成形品 図4
  • 特開-射出成形品 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080862
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】射出成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20230602BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20230602BHJP
   B62D 25/08 20060101ALN20230602BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/03
B62D25/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194399
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598059675
【氏名又は名称】株式会社ヴイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】歌川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】河村 祥之
(72)【発明者】
【氏名】河上 泰章
(72)【発明者】
【氏名】田子 剛志
【テーマコード(参考)】
3D203
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB38
3D203CA56
3D203CA82
4F202AH17
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK15
4F206AH17
4F206AM32
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】厚肉部と薄肉部を有する射出成形品の薄肉部に樹脂を行き渡たらせる。
【解決手段】遮蔽部材18は、射出成形品であり、中央部に厚肉部34、周縁部に厚肉部34より板厚の薄い薄肉部32を有する。薄肉部32は、厚肉部34に隣接し、厚肉部34から延びる主リブ40と、主リブ間を連絡する連絡リブ42を有する。樹脂は、成形型の厚肉部34に対応するキャビティから薄肉部32に対応するキャビティに送られ、薄肉部32のキャビティ内では、主リブ40に対応するキャビティを通ることで、周縁まで早期に送られる。主リブ40の間の部分には連絡リブ42に対応するキャビティを通って樹脂が送られる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板厚の厚肉部と、
前記厚肉部に隣接して設けられ、前記第1の板厚よりも薄い第2の板厚の薄肉部と、
を有し、
前記薄肉部には、前記厚肉部から延びる主リブと、前記主リブ間を連絡する連絡リブとが設けられている、
射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形品、特に板厚の異なる部分を有する射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に乗用車のウインドシールドの前方には、ウインドシールド前縁に隣接して車両左右方向に延び、左右のピラーに連結するカウルが配置されている。また、カウルは、フードの後縁部の下方に位置し、フードとの間に、ワイパ関連部品を配置する車両左右方向に延びた空間を形成するよう窪んで形成されている。カウルには、客室内に空気を導入するための空気導入口が設けられている。エンジン室内の暖まった空気が空気導入口に送られることを阻止するために、カウル内には遮蔽部材が配置される。
【0003】
下記特許文献1には、カウル(11)内に配置された遮蔽部材(6)が示されている。遮蔽部材(6)は、剛な遮蔽板(7)と遮蔽板(7)の周囲を囲むように設けられたゴムシート(8)とを有する。なお、上記の( )内の符号は下記特許文献1にて用いられた符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-67329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示された遮蔽部材は複数の部品からなり、部品同士を組み立てる工程が必要となるなど、製造コストが高い。射出成形によれば、一体の部品として製造することができる。遮蔽部材は、大きな強度は必要としないので板厚を薄くすることが望ましいが、板厚を薄くすると、部材周縁まで樹脂が行き渡らない、また異なる方向から流れてきた樹脂の境界にウェルドラインが発生するなどの問題が発生する。
【0006】
本発明は、射出成形品の板厚を薄くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る射出成形品は、第1の板厚の厚肉部と、厚肉部に隣接して設けられ、第1の板厚よりも薄い第2の板厚の薄肉部とを有し、薄肉部には、厚肉部から延びる主リブと、主リブ間を連絡する連絡リブとが設けられている。
【発明の効果】
【0008】
成形型によって形成された主リブに対応するキャビティによって薄肉部の縁まで樹脂を送り込むことができ、また主リブの間の部分にも連絡リブに対応するキャビティにより樹脂を送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両の車体前部、特にウインドシールド前縁付近を示す図である。
図2】カウル内に配置される遮蔽部材を示す図である。
図3図2に示す遮蔽部材を別の方向から見た状態を示す図である。
図4】遮蔽部材を側方視した図であり、図5に示す断面の位置を示す図である。
図5】遮蔽部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、車両の前部、特にウインドシールド10の前縁に隣接して配置されるカウルトップパネルまたはカウル12を示す図である。カウル12は、ウインドシールド10の前縁に沿って車両の左右方向に延び、左右の端がそれぞれ左右のピラー14(左ピラーのみ示す。)に結合されている。カウル12は、車両の前後方向において中央部が窪んでいる。カウル12内には、客室内に外気を導入するための空気導入口が設けられている。この空気導入口から、エンジン室16で暖まった空気が客室内に送られることを阻止するために、カウル12内に遮蔽部材18が設けられている。遮蔽部材18は、カウル12の、車両左右方向に延びる窪みに沿って流れる暖まった空気をせき止め、暖気が空気導入口に達しないようにしている。
【0011】
図2,3は、遮蔽部材18を示す斜視図であり、図3は、図2中の矢印Y1の方向から見上げたときの遮蔽部材18を示している。遮蔽部材18は、一体に形成された射出成形品であり、特に二色成形品である。図2,3において、灰色で示す部分がポリプロピレン(PP)製の部分であり、その他の部分がPPよりも柔軟性のあるオレフィン系サーモプラスチック(TPO)製である。
【0012】
射出成形においては、成形型により形成された空洞(キャビティ)に樹脂を送り込み、硬化させて製品を製造する。射出ゲートから送り込まれた樹脂は、キャビティ内を流れて、キャビティ全体に行き渡る。樹脂が流れる流路はキャビティであるが、以下では、簡単のために、樹脂が流れるキャビティの部分を、対応する製品の部分の名称を用いて説明する。例えば、「樹脂が○○部を通る/流れる。」「樹脂を○○部に送る。」は、樹脂が製品の○○部に対応するキャビティを通る/流れること、樹脂を製品の○○部に対応するキャビティに送ることを表す。
【0013】
遮蔽部材18は、水平に配置され、略長方形の外形の基板20と、基板20の一方の辺縁から上方に延びる上側壁22と、反対側の辺縁から下方に延びる下側壁24を含む。より具体的には、上側壁22は、基板20の長方形の一方の長辺から上方に延び、下側壁24は、基板20の他方の長辺から下方に延びている。遮蔽部材18は、基板20から斜め下方に延びる固定脚26を有し、固定脚26の端部に形成された固定突起28をカウル12の固定穴にスナップフィットすることによってカウル12に固定されている。基板20は、PP製の格子状のフレーム30を有し、フレーム30により基板20の剛性が担保されている。上側壁22および下側壁24の形状は、これらの縁が、カウル12を上方から覆うカウルルーバー(不図示)およびカウル12に接触するように形成されている。
【0014】
遮蔽部材18は、空気の流れをせき止める目的で設けられたものであり、高い強度は必要とせず、軽量化のために薄肉化が求められる。また、カウル12およびカウルルーバーの内壁面との間のシール性を高めるためには柔軟性が必要であり、このために、特に周縁部を薄肉とすることが好ましい。図3に示されるように、概略的に、上側壁22および下側壁24は、基板20に近い部分では板厚が厚く、基板20から離れた部分では板厚が薄い。また、基板20の、上側壁22および下側壁24が設けられていない辺縁、つまり長方形の短辺にも板厚が薄い部分が設けられている。これにより、TPO製の上側壁22および下側壁24の全体の剛性と、周縁部の柔軟性を担保している。遮蔽部材18の周縁に設けられた板厚の薄い部分を薄肉部32、中央の板厚の厚い部分を厚肉部34と記す。
【0015】
基板20の、図3に示される面、つまり下面には、射出成形時に樹脂の流路となる送給リブ36が縦横に延びている。射出成形時、送給リブ36に対して樹脂が供給され、送給リブ36から厚肉部34に、更に薄肉部32に供給される。成形型に形成される射出ゲートは、送給リブ36上の2箇所のゲート対向部38に対向し、ここから樹脂が送り込まれる。ゲート対向部38は、基板20の短手方向の全体にわたって延びる送給リブ36の、上側壁22側の端部に形成され、送り込まれた樹脂は、ここから上側壁22に送られると共に、送給リブ36を通って下側壁24にも送られる。さらに、上側壁22には、基板20の長手方向に延びる送給リブ36を介してゲート対向部38が設けられていない短手方向の送給リブ36からも樹脂が供給される。
【0016】
図4は、遮蔽部材18を図2,3において矢印Y2で示された方向から見た状態を示す図であり、図5の(a)~(d)は、それぞれ図4に示すA-A線、B-B線、C-C線、D-D線による断面図である。
【0017】
上側壁22および下側壁24は、基板20に近い部分が厚肉部34となっており、周縁部が薄肉部32となっている。薄肉部32には、厚肉部34から上側壁22および下側壁24の周縁に向けて延びる主リブ40と、主リブ40の間を連絡するように延びる連絡リブ42が形成されている。薄肉部32の、主リブ40および連絡リブ42が設けられた部分の厚さは、厚肉部34より薄いが、リブが設けられていない部分(以下、一般厚部分と記す。)より厚くなっている。樹脂が主リブ40および連絡リブ42を流れるときは、一般厚部分を流れるときよりも流路抵抗が小さい。このため、低い射出圧力でも樹脂を周縁まで、より早期に送ることができる。
【0018】
射出成形時、射出ゲートから送り込まれた樹脂は、直接または送給リブ36を介して厚肉部34に送られ、更に厚肉部34から薄肉部32に送られる。薄肉部32内では、樹脂は、厚肉部34から一般厚部分を流れると共に、主リブ40および連絡リブ42を流れ、これらのリブからその周囲へと流れる。薄肉部32の一般厚部分は、流路が狭く樹脂の流れが遅くなるが、薄肉部32の送り込まれた樹脂は、主リブ40を通ることにより、薄肉部32の周縁に向けて早期に送られる。これにより、周縁部に樹脂が到達せずに空隙が生じることを避けることができる。また、主リブ40から連絡リブ42に流れることにより、主リブ40の間の部分にも、樹脂が早期に送られる。早期に送られることで、樹脂の温度の低下が抑制され、異なる方向から流れてきた樹脂がぶつかる部分に生じるウェルドラインの発生を抑制することができる。
【0019】
カウル12内の遮蔽部材18を射出成形により一体に形成することで、部品点数および組立工数等を削減することができる。また、遮蔽部材18の一部、特に周縁部を薄くすることで、遮蔽部材18の軽量化に寄与し、また薄肉化により柔軟性が増すことで、遮蔽部材18の周縁の、カウル12やカウルルーバーなど周囲の部材への密着性が構造する。遮蔽部材18の周縁の薄肉部32には、厚肉部34から延びる主リブ40が設けられ、主リブ40を通って樹脂が末端まで早期に送られる。さらに、主リブ40間を連絡する連絡リブ42を設けることにより、主リブ40の間の部分にも樹脂が早期に送られる。
【0020】
上述の実施形態においては、射出成形品として、カウル12内に配置される遮蔽部材を例に挙げたが、本発明は他の射出成形品についても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
10 ウインドシールド、12 カウル、18 遮蔽部材、20 基板、22 上側壁、24 下側壁、26 固定脚、30 フレーム、32 薄肉部、34 厚肉部、36 送給リブ、38 ゲート対向部、40 主リブ、42 連絡リブ。
図1
図2
図3
図4
図5