(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008087
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】異常行動検知システム、異常行動検知方法、及び異常行動検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20230112BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230112BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20230112BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
H04N7/18 D
H04N7/18 K
G06T7/20 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111360
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 竣
(72)【発明者】
【氏名】秋良 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉永 智明
(72)【発明者】
【氏名】垂井 俊明
【テーマコード(参考)】
5C054
5C087
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FC13
5C054FE14
5C054HA19
5C087AA02
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087DD03
5C087EE20
5C087FF02
5C087FF04
5L096CA02
5L096DA03
5L096FA09
5L096HA02
5L096HA07
5L096JA11
5L096JA13
(57)【要約】
【課題】煩雑さを要さず映像内の正常行動が異常行動として誤検知されることを防止する。
【解決手段】映像内の人物の行動から異常行動を検知する異常行動検知システムは、異常行動の検知から除外する除外行動が登録されている除外行動フィルタを格納する記憶部と、異常行動として検知された人物の行動が除外行動フィルタに登録されている除外行動に該当するか否かを判定し、該当する場合に、該人物の行動の検知結果を異常行動から正常行動へ修正する除外行動判定部とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像内の人物の行動から異常行動を検知する異常行動検知システムであって、
異常行動の検知から除外する除外行動が登録されている除外行動フィルタを格納する記憶部と、
異常行動として検知された人物の行動が前記除外行動フィルタに登録されている前記除外行動に該当するか否かを判定し、該当する場合に、該人物の行動の検知結果を異常行動から正常行動へ修正する除外行動判定部と
を有することを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常行動検知システムであって、
前記除外行動は、人物の体の部位の動きを示す行動特徴ベクトルで表され、
前記除外行動判定部は、
異常行動を検知された人物の行動における該人物の体の部位の動きを示すベクトルと、前記行動特徴ベクトルとの距離に基づいて、該人物の行動が前記除外行動に該当するか否かを判定する
ことを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の異常行動検知システムであって、
前記除外行動は、人物の体の複数の部位毎の前記行動特徴ベクトルを連結した連結行動特徴ベクトルで表され、
前記除外行動判定部は、
異常行動を検知された人物の行動における該人物の体の複数の部位の動きを示すベクトルを連結した連結ベクトルと、前記連結行動特徴ベクトルとの距離に基づいて、該人物の行動が前記除外行動に該当するか否かを判定する
ことを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載の異常行動検知システムであって、
前記除外行動は、人物の体の複数の部位毎の異常行動に関する該非を組合せた異常部位パターンを対応付けて記憶され、
前記除外行動判定部は、
異常行動を検知された人物の行動における該人物の体の複数の部位毎の異常行動に関する該非の組合せパターンと、前記異常部位パターンとの距離に基づいて前記除外行動フィルタに登録されている前記除外行動を絞り込む
ことを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項5】
請求項4に記載の異常行動検知システムであって、
前記除外行動は、さらに人物の向きを示す人物向きを対応付けて記憶され、
前記除外行動判定部は、
前記異常部位パターンとの距離に基づいて前記除外行動フィルタに登録されている前記除外行動を絞り込む際に、異常行動と検知された人物の行動における該人物の向きと一致する前記人物向きに対応する前記除外行動に絞り込み、前記連結ベクトルと、絞り込んだ前記除外行動の何れかの前記連結行動特徴ベクトルとの距離に基づいて、該人物の行動が前記除外行動に該当するか否かを判定する
ことを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項6】
請求項5に記載の異常行動検知システムであって、
前記組合せパターンと前記異常部位パターンとの距離が第1の所定値以下であり、かつ、前記連結ベクトルと絞り込んだ前記除外行動の何れかの前記連結行動特徴ベクトルとの距離が第2の所定値以下である場合に、前記人物の行動が前記除外行動に該当すると判定する
ことを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の異常行動検知システムであって、
前記除外行動を前記除外行動フィルタに登録する除外行動フィルタ登録部を有し、
前記除外行動は、人物の体の複数の部位毎の異常行動に関する該非を組合せた異常部位パターン、該人物の体の向きを示す人物向き、及び、該人物の体の部位の動きを示す行動特徴ベクトルを含み、
前記除外行動フィルタ登録部は、
映像内の人物の行動に基づく前記除外行動を登録する際、前記除外行動フィルタに登録されている前記除外行動を、前記異常部位パターンに基づいて、又は、前記異常部位パターン及び前記人物向きに基づいて絞り込んだ該人物の行動と同一行動の候補を画面に出力し、ユーザによって該候補から選択された同一行動を前記除外行動フィルタに登録する
ことを特徴とする異常行動検知システム。
【請求項8】
映像内の人物の行動から異常行動を検知する異常行動検知システムが実行する異常行動検知方法であって、
前記異常行動検知システムは、
異常行動の検知から除外する除外行動が登録されている除外行動フィルタを格納する記憶部を有し、
異常行動として検知された人物の行動が前記除外行動フィルタに登録されている前記除外行動に該当するか否かを判定し、
該当する場合に、該人物の行動の検知結果を異常行動から正常行動へ修正する
各処理を有することを特徴とする異常行動検知方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れか1項に記載の異常行動検知システムとしてコンピュータを機能させるための異常行動検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常行動検知システム、異常行動検知方法、及び異常行動検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラによって撮影した画像に映った人物の行動を記録し、通常の行動と異なる異常行動をした場合に、異常発報を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の従来技術では、正常行動パターンとの差異から異常行動を検知する方式であるため、事前に想定されなかった正常行動についても正常行動パターンとの差異が生じ、異常行動として誤検知されてしまうという問題がある。
【0005】
この問題を回避するため、誤検知した正常行動を指定して除外できることが望ましい。しかし、2次元姿勢検知ベースの行動検知は人物の各部位の位置情報しか持たず情報量が少ないため、1つの除外行動を定義するだけでは異なる向きの同じ正常行動を同一の除外行動として認識するのは難しく、それらを逐一別の正常行動として定義するという煩雑さがある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、煩雑さを要さず映像内の正常行動が異常行動として誤検知されることを防止する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様では、映像内の人物の行動から異常行動を検知する異常行動検知システムであって、異常行動の検知から除外する除外行動が登録されている除外行動フィルタを格納する記憶部と、異常行動として検知された人物の行動が前記除外行動フィルタに登録されている前記除外行動に該当するか否かを判定し、該当する場合に、該人物の行動の検知結果を異常行動から正常行動へ修正する除外行動判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、煩雑さを要さず映像内の正常行動が異常行動として誤検知されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る異常行動検知システムの概要の説明図。
【
図2】実施形態に係る異常行動検知システムの構成例を示すブロック図。
【
図3】実施形態に係る異常行動検知システムの検知結果保存テーブルのデータ構造例を示す図。
【
図4】実施形態に係る異常行動検知システムの除外行動フィルタ保存テーブルのデータ構造例を示す図。
【
図5】実施形態に係る異常行動検知システムの異常行動検知処理例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る異常行動検知システムの除外行動登録処理例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態に係る異常行動検知システムの除外行動フィルタ登録部のUI(User Interface)例を示す図。
【
図8】実施形態に係る異常行動検知システムを実現するコンピュータのハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明を限定するものではなく、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態や各形態の一部又は全部を組合せた形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でもよい。
【0011】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0012】
後出の実施形態の説明では、既出の実施形態との差分を中心に説明し、重複部分の説明は適宜省略する。また本明細書においてテーブル形式で表される情報は、テーブル形式に限らず他のデータ形式で表されてもよい。
【0013】
(異常行動検知システム2の概要)
先ず
図1を参照して、本実施形態に係る異常行動検知システム2の概要を説明する。
図1は、実施形態に係る異常行動検知システム2の概要の説明図である。異常行動検知システム2は、
図1に示すように、カメラ10で撮影された映像から、不審な行動をした人物を検知するためのものである。同じ行動でも場所によっては異常行動として扱う場合と扱わない場合があり、検知結果を異ならせたい場合がある。
【0014】
例えば、「走る」という行為が一律に異常行動とシステム判定される場合でも、屋外で走る行為を異常行動でないとし、屋内で走る行為を異常行為として取り扱いたい事例がある。そこで、異常行動検知システム2は、
図1の(a)に示すように映像内において屋外で走った人物110は異常行動をしていない人物とし、
図1の(b)に示すように映像内において屋内で走った人物111は異常行動している人物とするように、人物110の行動を異常行動から正常行動へと検知結果を修正する。
【0015】
(異常行動検知システム2の構成)
次に
図2を参照して、実施形態に係る異常行動検知システム2の構成を説明する。
図2は、実施形態に係る異常行動検知システム2の構成例を示すブロック図である。異常行動検知システム2は、記憶部20、計算部21、及び除外行動フィルタ登録部22を含んで構成される。
【0016】
記憶部20は、検知モデル201、検知結果保存テーブル202、除外行動フィルタ保存テーブル203を格納する記憶デバイスである。
【0017】
検知モデル201は、行動検知部211が後述する「人物部位位置検知処理」で用いる人物部位位置検知モデル2011、後述する「特徴量異常値推定処理」で用いる特徴量異常値推定モデル2012、及び、異常部位判定部212が後述する「異常部位判定処理」で用いる異常部位判定モデル2013を含む。これらのモデルは、ニューラルネットワークなどの機械学習モデルで設計され、予め学習されている。
【0018】
(検知結果保存テーブル202)
次に
図3を参照して、本実施形態に係る検知結果保存テーブル202を説明する。
図3は、実施形態に係る異常行動検知システム2の検知結果保存テーブル202のデータ構造例を示す図である。検知結果保存テーブル202は、行動ID301、行動特徴ベクトル302、異常値303、異常部位パターン304を含んで構成される。
【0019】
行動ID301は、各行動の識別情報であり、正の整数値が格納される。行動特徴ベクトル302は、連続フレーム中の対象人物の行動の特徴量を示し、b個(bは1以上の整数)の部位の位置の変位から抽出した各部位(本実施形態では頭、左腕、右腕、左手、右手、左肘、右肘、左足、右足の部位数b=9)のd次元(dは2以上の整数)の実ベクトル(頭3021、左腕3022、・・・)を連結したbd次元の実ベクトルが格納される。行動特徴ベクトル302は、人物の体の複数の部位毎の行動特徴ベクトルを連結した連結行動特徴ベクトルである。
【0020】
異常値303は、異常度を示す実数値が入る。異常値303は、行動特徴ベクトル302を入力とした特徴量異常値推定モデル2012の出力である。異常部位パターン304は、異常値303が閾値τ以上(異常行動)判定された場合に、各部位の実ベクトル(頭3021、左腕3022、・・・)のそれぞれを特徴量異常値推定モデル2012の入力とし、各部位の異常値が閾値τ以上の場合に異常1、閾値τ未満の場合に正常0とする2値の整数値で、各部位の動きが異常か否かを示す。異常値303が閾値τ未満で正常行動と判定された場合には、異常部位パターン304にはNull値が格納される。
【0021】
(除外行動フィルタ保存テーブル203)
次に
図4を参照して、本実施形態に係る除外行動フィルタ保存テーブル203を説明する。
図4は、実施形態に係る異常行動検知システムの除外行動フィルタ保存テーブル203のデータ構造例を示す図である。除外行動フィルタ保存テーブル203は、異常部位パターン401、人物向き402、除外行動種類ID403、及び行動特徴ベクトル(行動ID)404を含んで構成される。除外行動とは、異常行動の検知から除外する対象外の行動をいう。
【0022】
異常部位パターン401は、各部位の異常の有無を表す2値(例えば0及び1)での表現を全部位について並べたベクトルで表される。異常部位パターン401は、除外対象の行動の異常部位のパターンをベクトル化したものであり、異常部位パターン304と同様である。
【0023】
人物向き402は、人物の向いている方向の角度の値を格納する。この角度は、人物向き推定部213によって推定される角度であり、本実施形態では0度、45度、90度の45度間隔の離散値である。除外行動種類ID403は、除外行動の種類毎に定義されるフィルタIDを格納する。
【0024】
行動特徴ベクトル(行動ID)404は、検知結果保存テーブル202に保存されている異常部位パターン401及び人物向き402に該当する代表的な行動特徴ベクトル302(
図3)に対応する行動ID301(
図3)を任意数だけ格納する。ある人物の行動特徴ベクトルが除外行動フィルタ保存テーブル203に保存されている異常部位パターン401に対応する行動特徴ベクトル(行動ID)404に一致(又は類似)し、かつ人物向きが除外行動フィルタ保存テーブル203に保存されている人物向き402と一致する場合に、異常検知と判定された異常値が正常値に変更される。
【0025】
なお
図4の除外行動フィルタ保存テーブル203において、1行目と2行目に対して、異常部位パターン401と人物向き402が異なるにもかかわらず同一の除外行動種類IDが付与されているのは、左腕と右腕の異常部位は、人物向きを90度だけ回転させると、同一の異常部位と見なせるためである。
【0026】
計算部21は、プロセッサ及びメモリを含んで構成され、行動検知部211、異常部位判定部212、人物向き推定部213、及び除外行動判定部214を有する。
【0027】
行動検知部211は次の2種類の処理を行う。1つは、人物部位位置検知モデル2011を用いて、カメラ10で撮影された最新フレームから人物及び各部位の位置(人物部位位置情報)を検知する処理(人物部位位置検知処理)である。もう1つは、カメラ10で撮影された映像の連続フレーム中の特定の人物の人物部位位置情報から行動特徴ベクトルを抽出し、特徴量異常値推定モデル2012を用いて、行動特徴ベクトルから異常値を推定する処理(特徴量異常値推定処理)である。検知された行動特徴ベクトル、及び、推定された異常値は、検知結果保存テーブル202に保存される。
【0028】
異常部位判定部212は、ある人物の行動が異常と判定された場合に、どの部位の動きが異常を起こしているかを、異常部位判定モデル2013を用いて特定する(異常部位判定処理)。各部位の異常判定に関する該非の組合せを異常部位パターンと呼ぶ。
【0029】
人物向き推定部213は、行動検知部211が検知した人物の部位位置から人物の向いている方向を推定する。人物の向いている方向は、例えば、行動検知部211が検知した両肩の位置を結ぶ直線の垂線の方向から求められる。人物向きは離散値であり、例えば0度、45度、90度など45度間隔の値のいずれかである。各人物には、両肩を結ぶ線に対する垂線の角度と最も近い値がその人物向きとして割り当てられる。
【0030】
除外行動判定部214は、入力された行動が異常検知の対象外の行動か否かを判定する。すなわち除外行動判定部214は、行動検知部211がある行動を異常と判定した場合に、異常部位判定部212で特定された異常部位及び人物向き推定部213で推定された向きに該当する除外行動フィルタ保存テーブル203に登録されている除外行動の何れかの行動に該当するかを後述のように判定し、異常値を正常値へ変更する。
【0031】
なお除外行動判定部214は、除外行動判定及び正常値への変更の際に用いる異常部位パターンの距離の閾値θ、行動特徴ベクトルの距離の閾値η、及び、除外対象と判定された場合の異常値から変更する正常値mを保有している。異常部位パターンの距離としては、ハミング距離等が用いられる。行動特徴ベクトルの距離としては、ユークリッド距離やコサイン類似度などが用いられる。
【0032】
除外行動フィルタ登録部22は、除外行動の行動特徴ベクトル(行動ID)を除外行動フィルタ保存テーブル203に登録する。除外行動フィルタ登録部22は、UI(User Interface)を出力する表示装置(不図示)を備える。
【0033】
(異常行動検知処理)
次に
図5を参照して、本実施形態に係る異常行動検知処理を説明する。
図5は、実施形態に係る異常行動検知システム2の異常行動検知処理例を示すフローチャートである。先ず行動検知部211は、フレーム画像がカメラ10から取得されると(S501)、フレーム画像の単フレーム解析を行う(S502)。単フレーム解析として、最新フレーム中の人物の位置、人物の部位位置の特定、及び連続フレーム間での同一人物の位置の対応付けが行われる。
【0034】
行動検知部211は、ある人物Pが最新フレームから過去に連続してフレームn以上(nは所定正整数)に亘って検知されていた場合(S503YES)、人物Pに対して異常行動検知処理を行う(S504)。異常行動検知処理では、行動検知部211は、人物部位位置検知処理によって連続フレーム内の人物Pの人物部位位置情報を検知し、人物部位位置情報を基に、特徴量異常値推定処理によって人物Pの行動特徴ベクトルFを抽出し、行動特徴ベクトルFに基づいて異常値Vを推定する。行動特徴ベクトルFは、人物Pの体の複数の部位の動きを示すベクトルを連結した連結ベクトルである。
【0035】
次に異常部位判定部212は、S504で推定された異常値Vが閾値τ以上であれば(S505YES)、人物Pについて異常部位判定処理を行い(S506)、閾値τ未満であれば(S505NO)、S510へ処理を移す。S506では、異常部位判定部212は、S504で抽出した行動特徴ベクトルFを部位単位のベクトルへ分解し、部位単位の特徴量異常値推定処理によって部位毎の異常値を計算する。異常値が閾値τ以上である部位に1を割り当て、異常値が閾値τ未満である部位に0を割り当てた2値の組合せである異常部位パターンAが、後述のS510で検知結果保存テーブル202に格納される。
【0036】
次に人物向き推定部213は、S505で異常値Vが閾値τ以上と判定された人物Pの向きDを推定する(S507)。次に除外行動判定部214は、除外行動フィルタ保存テーブル203を参照し、人物Pの異常部位パターンAとの距離が閾値θ未満の異常部位パターン401を持ち、人物向きDと一致する人物向き402を持つレコードの行動特徴ベクトル(行動ID)404を候補として絞り込む。「異常部位パターンAと異常部位パターン401との距離が閾値θ未満」とすることで、完全一致ではなくある程度の類似性を許容するマージンを取ることができる。
【0037】
そして除外行動判定部214は、行動特徴ベクトルFと、絞り込んだ行動特徴ベクトル(行動ID)404に対応する行動特徴ベクトル302(
図3)のうちの何れかとの距離が閾値η以下であれば(S508YES)、人物Pの行動が異常判定からの除外対象の行動と判定し、異常値303の欄に格納されている異常値を正常値m(mは所定正数)に修正する(S509)。「行動特徴ベクトルFと行動特徴ベクトル302のうちの何れかと距離が閾値η以下」とすることで、完全一致ではなくある程度の類似性を許容するマージンを取ることができる。異常値303の欄の値が異常値から正常値へ修正されることで、該当の行動の検知結果が異常行動から正常行動へと修正される。
【0038】
一方、除外行動判定部214は、行動特徴ベクトルFと、抽出した行動特徴ベクトル(行動ID)404に対応する行動特徴ベクトル302(
図3)のうちの何れもとの距離が閾値ηより大であれば(S508NO)、S510へ処理を移す。
【0039】
次に計算部21は、本異常行動検知処理で計算された行動特徴ベクトルF、異常値V(または修正された正常値m)、及び異常部位パターンAを、検知結果保存テーブル202に保存する(S510)。
【0040】
本異常行動検知処理の説明では、異常検知対象外の除外行動が異常部位パターン及び人物向き毎に定義されている場合について述べたが、人物向きが無い場合もありえる。その場合はS507の処理はスキップされ、S508では人物の向きの一致は考慮されない。
【0041】
(除外行動登録処理)
さて上記では、異常行動として検知された人物の行動を、除外行動フィルタ保存テーブル203に基づいて正常行動へ修正する例を説明した。以下では、除外行動フィルタ保存テーブル203のレコードの作成について説明する。
図6は、実施形態に係る異常行動検知システム2の除外行動登録処理例を示すフローチャートである。
【0042】
先ず除外行動フィルタ登録部22は、表示装置(不図示)に表示されたUI7(
図7)において、除外したい異常行動の入力を受付ける(S601)。次に除外行動フィルタ登録部22は、除外したい異常行動の異常部位パターン及び人物向きを検索条件として指定し、除外行動フィルタ保存テーブル203から該当する行動を検索する(S602)。
【0043】
次に除外行動フィルタ登録部22は、S602で指定した検索条件に該当する除外行動が除外行動フィルタ保存テーブル203に存在するか否かを判定する。除外行動フィルタ登録部22は、S602で指定した検索条件に該当する除外行動が除外行動フィルタ保存テーブル203に存在する(S603YES)場合には、検索条件で絞り込まれた同一行動の候補を表示装置に表示し、この候補からユーザによって選択された行動と同じ除外行動種類IDをS601で入力された除外したい異常行動に対して割り当て(S604)、S606へ処理を移す。
【0044】
一方、除外行動フィルタ登録部22は、S602で指定した検索条件に該当する除外行動が除外行動フィルタ保存テーブル203に存在しない(S603NO)場合には、S601で入力された除外したい異常行動に対して新規の除外行動種類IDを付与し(S605)、S606へ処理を移す。S606では、除外したい異常行動の異常部位パターン401、人物向き402、除外行動種類ID403、及び行動特徴ベクトル(行動ID)404を、除外行動フィルタ保存テーブル203に保存する。
【0045】
(異常行動検知システム2の除外行動フィルタ登録部22のUI)
次に
図7を参照して、除外行動フィルタ登録部22のUI7を説明する。
図7は、実施形態に係る異常行動検知システム2の除外行動フィルタ登録部22のUI7例を示す図である。UI7は、表示装置(不図示)に表示され、選択フレーム701、検索条件702、検索ボタン703、検索結果ウィンドウ704、該当行動選択ボタン705を含んで構成される画面である。
【0046】
選択フレーム701には、行動検知部211の推定による異常値に基づいて異常行動と判定された行動のうち、異常行動から選択された「除外したい行動」が識別表示(
図7の例では枠線表示)される。選択フレーム701は、映像のフレーム毎に異常行動と判定された行動を、フレームを前後(“進”及び“戻”)させながら選択できるように表示し、ユーザによる行動の選択を受け付ける。以上がS601(
図6)に対応する。
【0047】
検索条件702は、「異常部位パターン」及び「別向きのみ」の2つの検索条件を含む。「異常部位パターン」の検索条件には、選択フレーム701で選択された行動の持つ異常部位が設定されている。
図7の枠線囲みの部分では、人物は、“左手”、“右手”、“左肘”、“右肘”の異常部位が白抜き丸で識別表示されているが、これに対応して「異常部位パターン」において“左手”、“右手”、“左肘”、“右肘”が設定されている。検索条件702の「異常部位パターン」へ手動入力して異常部位パターンの検索条件を修正できる。「別向きのみ」の検索条件には、同一の向きの人物を除外するか否かを設定できる。「別向きのみ」の検索条件にチェックを入れ、別向きの人物に絞ることで、同一の向きの人物の除外行動の重複設定を避けることができる。検索ボタン703は、検索条件702に設定された検索条件で除外行動フィルタ保存テーブル203を検索する際に押下される。なお検索条件として「異常部位パターン」のみが指定されてもよい。以上がS602(
図6)に対応する。
【0048】
検索結果ウィンドウ704は、検索結果が表示される。検索結果は、検索条件に合致する異常行動の映像であり、映像格納部(不図示)から対応する映像として取得されたものである。ユーザは、選択フレーム701で選択した行動と同じと判断する行動が検索結果ウィンドウ704に存在すれば選択する。検索結果ウィンドウ704における“選択”の矩形囲み部分が、選択フレーム701で選択した行動と同じとユーザが判断する行動である。無ければ、何も選択しない。以上がS603(
図6)に対応する。
【0049】
該当行動選択ボタン705は、“あり”と“なし”の2種類のボタンを含む。除外行動フィルタ登録部22は、“あり”が選択された場合には、検索結果ウィンドウ704で選択した行動と同じ除外行動種類ID403を付与して、除外行動フィルタ保存テーブル203に異常部位パターン、人物向き、及び行動特徴ベクトル(行動ID)を登録する。以上がS604及びS606(
図6)に対応する。
【0050】
除外行動フィルタ登録部22は、“なし”が選択された場合には、選択フレーム701で選択された行動に対して新しい除外行動種類ID403を付与して、除外行動フィルタ保存テーブル203に異常部位パターン、人物向き、及び行動特徴ベクトル(行動ID)を登録する。以上がS605及びS606(
図6)に対応する。
【0051】
本実施形態では、検知除外が難しい異常行動に関して、除外行動フィルタ保存テーブル203に保存されている異常部位パターン401や人物向き402の共通性に着目して候補を絞った上で特徴量(行動特徴ベクトル(行動ID)404)の類似性に基づいて検知除外の該非を判定する。よって時系列画像に映った不審人物を検知する異常行動検知システムにおいて、除外行動フィルタで定義する情報量を減らしつつ検知精度が向上する。また、向きが異なるだけの同一の異常行動を手動で対応付けする際にも、異常部位パターン401の共通性に基づいて候補を絞ることで、別向きの同一の異常行動の紐付けの作業量を軽減することができる。
【0052】
(異常行動検知システム2を実現するコンピュータ500のハードウェア)
図8は、実施形態に係る異常行動検知システム2を実現するコンピュータ500のハードウェア構成例を示す図である。コンピュータ500では、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ510、RAM(Random Access Memory)などのメモリ520、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)などのストレージ530、ネットワークI/F(Inter/Face)540、入出力装置550(例えばキーボード、マウス、タッチパネル、ディスプレイ等)、及び周辺装置560が、バスを介して接続されている。
【0053】
コンピュータ500において、異常行動検知システム2を実現するためのプログラムがストレージ530から読み出されプロセッサ510及びメモリ520の協働により実行されることで、各システムが実現される。あるいは、異常行動検知システム2を実現するためのプログラムは、ネットワークI/F540を介した通信により非一時的な記憶装置を備えた外部のコンピュータから取得されてもよい。あるいは異常行動検知システム2を実現するためのプログラムは、非一時的記録媒体に記録され、媒体読み取り装置によって読み出されることで取得されてもよい。
【0054】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換え、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、構成の追加、削除、置換、統合、又は分散をすることが可能である。また、実施形態で示した構成及び処理は、処理効率又は実装効率に基づいて適宜分散、統合、又は入れ替えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
2:異常行動検知システム、20:記憶部、22:除外行動フィルタ登録部、203:除外行動フィルタ保存テーブル、211:行動検知部、212:異常部位判定部、213:人物向き推定部、214:除外行動判定部