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特開2023-80883雨水排水ポンプ制御装置、雨水排水システム、雨水排水方法、およびプログラム
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  • 特開-雨水排水ポンプ制御装置、雨水排水システム、雨水排水方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080883
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】雨水排水ポンプ制御装置、雨水排水システム、雨水排水方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20230602BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20230602BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
F04B49/06 321A
E03F5/22
F04B49/06 321B
F04D15/00 H
F04D15/00 G
F04D15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194432
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】時本 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】山中 理
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 啓太
(72)【発明者】
【氏名】平岡 由紀夫
【テーマコード(参考)】
2D063
3H020
3H145
【Fターム(参考)】
2D063DC06
3H020AA05
3H020BA06
3H020BA14
3H020BA21
3H020CA04
3H020CA07
3H020DA04
3H020DA22
3H020EA04
3H020EA12
3H145AA12
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA19
3H145BA35
3H145BA41
3H145CA09
3H145CA14
3H145DA05
3H145DA36
3H145EA15
3H145EA38
(57)【要約】
【課題】 排水ポンプの起動と停止を効率的に行えるようにすること。
【解決手段】 実施形態の雨水排水ポンプ制御装置は、雨水排水施設内のポンプ井に設置される可変速の排水ポンプを起動させる水位を示す第1の起動水位および停止させる水位を示す第1の停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、前記第1の起動水位および前記第1の停止水位に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う可変速ポンプ動的制御部を具備する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水排水施設内のポンプ井に設置される可変速の排水ポンプを起動させる水位を示す第1の起動水位および停止させる水位を示す第1の停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、前記第1の起動水位および前記第1の停止水位に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う可変速ポンプ動的制御部を具備する、雨水排水ポンプ制御装置。
【請求項2】
前記ポンプ井の水位目標値と現在水位との偏差に応じて、前記可変速の排水ポンプに対する流量指令値に相当するポンプ流量を演算するポンプ流量演算部を更に具備し、
前記可変速ポンプ動的制御部は、前記ポンプ流量に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する、
請求項1に記載の雨水排水ポンプ制御装置。
【請求項3】
前記ポンプ井に設置される固定速の排水ポンプを起動させる水位を示す第2の起動水位および停止させる水位を示す第2の停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の前記流入量予測値に応じて変動させ、前記第2の起動水位および前記第2の停止水位に従って前記固定速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う固定速ポンプ動的制御部を更に具備する、
請求項1又は2に記載の雨水排水ポンプ制御装置。
【請求項4】
前記可変速ポンプ動的制御部および前記固定速ポンプ動的制御部は、一部の機能が共通化されている、
請求項3に記載の雨水排水ポンプ制御装置。
【請求項5】
雨水排水施設内のポンプ井に設置される可変速の排水ポンプおよび固定速の排水ポンプと、
前記可変速の排水ポンプを起動させる水位を示す第1の起動水位および停止させる水位を示す第1の停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、前記第1の起動水位および前記第1の停止水位に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う可変速ポンプ動的制御部と、
前記固定速の排水ポンプを起動させる水位を示す第2の起動水位および停止させる水位を示す第2の停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の前記流入量予測値に応じて変動させ、前記第2の起動水位および前記第2の停止水位に従って前記固定速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う固定速ポンプ動的制御部と
具備する、雨水排水システム。
【請求項6】
可変速ポンプ動的制御部により、雨水排水施設内のポンプ井に設置される可変速の排水ポンプを起動させる水位を示す起動水位および停止させる水位を示す停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、前記起動水位および前記停止水位に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行うことを含む、雨水排水方法。
【請求項7】
コンピュータに、
雨水排水施設内のポンプ井に設置される可変速の排水ポンプを起動させる水位を示す起動水位および停止させる水位を示す停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、前記起動水位および前記停止水位に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う機能を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、雨水排水ポンプ制御装置、雨水排水システム、雨水排水方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年増加する集中豪雨や局所的な大雨(いわゆるゲリラ豪雨)による浸水被害を回避するため、雨水対策が求められている。この状況に対して、国土交通省は、雨水幹線等の浸水対策施設の整備などのハード対策に加えて、雨量情報等の観測データの活用といったソフト対策(ソフトウェア面での対策)による浸水対策事業を推進している。このような背景のもと、これまでに、ソフト対策として、雨水排水施設であるポンプ場内で雨水を貯蔵するポンプ井への雨水流入量の予測に基づく排水ポンプ動的制御技術(「雨水ポンプダイナミック制御技術」ともいう。)が開発されてきた。
【0003】
排水ポンプ動的制御技術は、ポンプ場内のポンプ井へ流入する雨水の流入量を予測し、予測した雨水流入量予測値に応じて、排水ポンプの起動水位および停止水位を可変にし、その変化する起動水位および停止水位に従って、排水ポンプの起動と停止を効率的に行う技術である。この技術により、浸水リスクの抑制やポンプの起動停止回数の低減が見込まれる。
【0004】
一方、一部の地方自治体では、従来の排水ポンプ制御である、ポンプ井水位を見ながら、排水ポンプごとにあらかじめ定められた設定水位により起動や停止を行う水位設定制御を採用していることから、ポンプのチャタリング(不必要なポンプの起動・停止)が発生し、ポンプの起動停止回数が増加する、といった問題がある。これに対し、上述の排水ポンプ動的制御技術を適用することで、浸水リスクを抑制しつつポンプ起動停止回数を低減することが可能であるが、適用対象は、固定速ポンプを採用する雨水排水施設に限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6261960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、固定速ポンプを採用する雨水排水施設のほか、可変速ポンプを採用する雨水排水施設も増えつつある。こうしたことから、可変速ポンプを採用する雨水排水施設においても、排水ポンプの起動と停止を効率的に行い、浸水リスクの抑制やポンプの起動停止回数の低減を図れるようにすることが望まれる。
【0007】
発明が解決しようとする課題は、排水ポンプの起動と停止を効率的に行うことを可能にする、雨水排水ポンプ制御装置、雨水排水システム、雨水排水方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の雨水排水ポンプ制御装置は、雨水排水施設内のポンプ井に設置される可変速の排水ポンプを起動させる水位を示す第1の起動水位および停止させる水位を示す第1の停止水位を、前記ポンプ井へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、前記第1の起動水位および前記第1の停止水位に従って前記可変速の排水ポンプの実流量を決定する制御を行う可変速ポンプ動的制御部を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る雨水排水システムの構成の一例を示す図。
図2】ポンプ実流量制御部5の構成の一例を示す図。
図3】可変速ポンプ動的制御部21Aおよび固定速ポンプ動的制御部21Bの一部の機能が共通化された構成の一例を示す図。
図4】雨水排水ポンプ制御装置10による動作の一例を示すフローチャート。
図5図4に示される動作をより詳細にした処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0011】
(システムの構成)
図1に、実施形態に係る雨水排水システムの構成の一例を示す。
【0012】
実施形態の雨水排水システムが適用される雨水排水施設内(ポンプ場内)には、雨水を貯蔵するポンプ井100が設けられる。ポンプ井100には、可変速の排水ポンプ101(以下、「可変速ポンプ101」と呼ぶ)および固定速の排水ポンプ102(以下、「固定速ポンプ102」と呼ぶ)が設置される。また、ポンプ井100には、雨水が流入する雨水流入部103、および、ポンプ井100の現在水位を計測する水位計104が備えられる。計測された現在水位のデータは、後述する雨水排水ポンプ制御装置10(以下、「ポンプ制御装置10」と略称する場合がある)へ送られる。
【0013】
実施形態の雨水排水システムは、雨水排水ポンプ制御装置10、可変速ポンプ101、固定速ポンプ102、水位計104等を含む。
【0014】
(雨水排水ポンプ制御装置10の構成)
雨水排水ポンプ制御装置10は、例えばコンピュータとして構成される。雨水排水ポンプ制御装置10に備えられる各種の機能は、コンピュータに実現させるためのプログラムとして構築される。
【0015】
(可変速ポンプ101の動作を制御する機能)
雨水排水ポンプ制御装置10は、可変速ポンプ101の動作を制御する機能として、演算部1、ポンプ流量演算部2、および可変速ポンプ動的制御部21Aを有する。なお、演算部1およびポンプ流量演算部2は、可変速ポンプ動的制御部21Aに含まれるように構成されてもよい。
【0016】
可変速ポンプ動的制御部21Aは、排水ポンプ動的制御技術(雨水ポンプダイナミック制御技術)を用いて構築された機能である。可変速ポンプ動的制御部21Aは、可変速ポンプ101を起動させる水位を示す第1の起動水位および停止させる水位を示す第1の停止水位を、ポンプ井100へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、第1の起動水位および第1の停止水位に従って可変速ポンプ101の実流量を決定する制御を行う。ここでいう実流量とは、可変速ポンプ101の制御に実際に適用される流量を指し、当該流量を決定する過程で使用されるポンプ流量(後述)とは区別される。可変速ポンプ動的制御部21Aでの具体的な制御は、例えば特許第6261960号公報に記載される手法を用いて実現してもよい。
【0017】
演算部1は、ポンプ井100の水位目標値と現在水位との偏差を出力する。ポンプ流量演算部2は、ポンプ井100の水位目標値と現在水位との偏差に応じて、可変速ポンプ101に対する流量指令値に相当するポンプ流量を演算する。
【0018】
具体的には、ポンプ流量演算部2は、ポンプ井100の水位目標値とポンプ井100に設置された水位計104により計測されたポンプ井100の現在水位とに基づき、式(1)のPI制御により可変速ポンプ101の流量(ポンプ流量)を演算する。
【0019】
MV=K(e+1/TI∫edt) ・・・式(1)
ここで、式(1)中の各パラメータは、次のように定義される。
【0020】
e:偏差(本例では、水位目標値-現在水位)
MV:操作信号(本例では、ポンプ流量)
:比例ゲイン
I:積分時間
なお、式(1)の偏差eの計算では、ポンプ井100の水位目標値は、流入量予測値を用いて決定されてもよい。例えば、流入量予測値が大きい場合は、式(1)の偏差eにおいて、ポンプ井100の水位目標値を低く、流入量予測値が少ない場合は、式(1)の偏差eにおいて、ポンプ井100の水位目標値を高くする。なお、ポンプ井100の水位目標値の決定は、この例に限らず、別の手法を用いて決定してもよい。
【0021】
可変速ポンプ動的制御部21Aは、ポンプ流量に従って可変速ポンプ101の実流量を決定し、決定した実流量でポンプ井100内の雨水が排出されるように(またはその排出が停止されるように)可変速ポンプ101を制御する。
【0022】
可変速ポンプ動的制御部21Aは、ポンプ起動停止水位設定部(第1のポンプ起動停止水位設定部)3A、ポンプ起動停止指令決定部(第1のポンプ起動停止指令決定部)4A、およびポンプ実流量制御部(第1のポンプ実流量制御部)5を含む。図2に、ポンプ実流量制御部5の構成の一例を示す。ポンプ実流量制御部5は、ポンプ実流量決定部11およびポンプ運転部12を含む。
【0023】
ポンプ起動停止水位設定部3Aは、流入量予測値を用いて、第1の起動水位および第1の停止水位を設定する。
【0024】
ポンプ起動停止指令決定部4Aは、第1の起動水位および第1の停止水位のそれぞれと現在水位とを比較し、比較した結果に応じて可変速ポンプ101を起動するか停止するかを決定し、起動または停止を示すポンプ起動停止指令を出力する。例えば、現在水位が第1の起動水位以上であれば、可変速ポンプ101を起動すると決定し、一方、現在水位が第1の停止水位以下であれば、可変速ポンプ101を停止すると決定する。
【0025】
ポンプ実流量制御部5は、ポンプ起動停止指令に従い、ポンプ流量に応じた実流量でポンプ井100内の雨水が排出されるように(またはその排出が停止されるように)可変速ポンプ101を制御する。すなわち、ポンプ実流量制御部5は、ポンプ起動停止指令決定部4Aで決定したポンプ起動停止指令に応じて、可変速ポンプ101を起動する場合は、ポンプ流量演算部2で演算したポンプ流量を、可変速ポンプ101を停止する場合は、流量0m3/sを、ポンプ実流量として決定する。この決定は、図2中のポンプ実流量決定部11により行われる。これにより、ポンプ実流量制御部5で決定したポンプ実流量で可変速ポンプ101が運転され、雨水流入部103からポンプ井100へ流入し、ポンプ井100に貯留している雨水が河川へ排水される。上記運転は、図2中のポンプ運転部12により行われる。
【0026】
(固定速ポンプ102の動作を制御する機能)
また、雨水排水ポンプ制御装置10は、固定速ポンプ102の動作を制御する機能として、固定速ポンプ動的制御部21Bを有する。
【0027】
固定速ポンプ動的制御部21Bは、排水ポンプ動的制御技術(雨水ポンプダイナミック制御技術)を用いて構築された機能である。固定速ポンプ動的制御部21Bは、固定速ポンプ102を起動させる水位を示す第2の起動水位および停止させる水位を示す第2の停止水位を、ポンプ井100へ流入する雨水の流入量予測値に応じて変動させ、第2の起動水位および第2の停止水位に従って固定速ポンプ102の実流量を決定する制御を行う。ここでいう実流量とは、固定速ポンプ102の制御に実際に適用される流量を指し、当該流量を決定する過程で使用されるポンプ定格流量(後述)とは区別される。固定速ポンプ動的制御部21Bでの具体的な制御は、例えば特許第6261960号公報に記載される手法を用いて実現してもよい。
【0028】
固定速ポンプ動的制御部21Bは、ポンプ起動停止水位設定部(第2のポンプ起動停止水位設定部)3B、ポンプ起動停止指令決定部(第2のポンプ起動停止指令決定部)4B、およびポンプ実流量制御部(第2のポンプ実流量制御部)6を含む。図2に、ポンプ実流量制御部6の構成の一例を示す。ポンプ実流量制御部6は、ポンプ実流量決定部11およびポンプ運転部12を含む。
【0029】
ポンプ起動停止水位設定部3Bは、流入量予測値を用いて、第2の起動水位および第2の停止水位を設定する。
【0030】
ポンプ起動停止指令決定部4Bは、第2の起動水位および第2の停止水位のそれぞれと現在水位とを比較し、比較した結果に応じて固定速ポンプ102を起動するか停止するかを決定し、起動または停止を示すポンプ起動停止指令を出力する。例えば、現在水位が第2の起動水位以上であれば、固定速ポンプ102を起動すると決定し、一方、現在水位が第2の停止水位以下であれば、固定速ポンプ102を停止すると決定する。
【0031】
ポンプ実流量制御部6は、ポンプ起動停止指令に従い、ポンプ定格流量を実流量としてポンプ井100内の雨水が排出されるように(またはその排出が停止されるように)固定速ポンプ102を制御する。すなわち、ポンプ実流量制御部6は、ポンプ起動停止指令決定部4Bからのポンプ起動停止指令に応じて、固定速ポンプ102を起動する場合は、固定速ポンプ102の定格流量を、固定速ポンプ102を停止する場合は、流量0m3/sを、ポンプ実流量として決定する。この決定は、図2中のポンプ実流量決定部11により行われる。これにより、ポンプ実流量制御部6で決定したポンプ実流量で固定速ポンプ102が運転され、雨水流入部103からポンプ井100へ流入し、ポンプ井100に貯留している雨水が河川へ排水される。上記運転は、図2中のポンプ運転部12により行われる。
【0032】
なお、本実施形態では、可変速ポンプ101および固定速ポンプ102の両方が設置された雨水排水施設を対象とする構成を例示しているが、これに限定されず、例えば可変速ポンプ101が設置されている一方で固定速ポンプ102が設置されていない雨水排水施設を対象として発明を実施してもよい。その場合は、図1中において、固定速ポンプ102および固定速ポンプ動的制御部21B(ポンプ起動停止水位設定部3B、ポンプ起動停止指令決定部4B、およびポンプ実流量制御部6を含む)が存在しないものとして扱えばよい。
【0033】
また、図1に示される構成において、可変速ポンプ動的制御部21Aおよび固定速ポンプ動的制御部21Bの一部の機能が共通化されていてもよい。
【0034】
図3に、可変速ポンプ動的制御部21Aおよび固定速ポンプ動的制御部21Bの一部の機能が共通化された構成の一例を示す。
【0035】
図1に示したポンプ起動停止水位設定部3A,3Bは、設定の対象が異なるが、処理に共通性があるため、図3のように1つのポンプ起動停止水位設定部3として構成することができる。同様に、図1に示したポンプ起動停止指令決定部4A,4Bも、処理に共通性があるため、図3のように1つのポンプ起動停止指令決定部4として構成することができる。図3のように構成することにより、処理の効率化を図ることができる。
【0036】
次に、図4のフローチャートと図5のフローチャートを参照して、雨水排水ポンプ制御装置10による動作の一例を説明する。
【0037】
図4に示されるように、雨水排水ポンプ制御装置10においては、可変速ポンプ101と固定速ポンプ102のそれぞれに対して、ポンプ実流量が決定され(ステップS1)、決定されたポンプ実流量を用いて該当するポンプの運転が行われる(ステップS2)。
る。
【0038】
図5に、図4に示される動作をより詳細にした処理手順の一例を示す。
【0039】
図4の場合と同様、以下に示す一連の処理は、可変速ポンプ101と固定速ポンプ102のそれぞれに対して行われる。
【0040】
最初に、ポンプ毎に、流入量予測値を用いて起動水位および停止水位を設定する処理が行われる(ステップS11)。
【0041】
次に、ポンプ毎に、起動水位および停止水位のそれぞれと現在水位とを比較し、比較した結果に応じて当該ポンプを起動するか停止するかを決定し、起動または停止を示すポンプ起動停止指令を出力する処理が行われる(ステップS12)。
【0042】
制御の対象が固定速ポンプ102である場合(ステップS13のYES)、ポンプ定格流量を実流量とし(ステップS21)、ポンプ起動停止指令が起動を示す場合は(ステップS22のYES)、ポンプ定格流量で固定速ポンプ102を起動する処理が行われる(ステップS23)。一方、ポンプ起動停止指令が停止を示す場合は(ステップS22のNO)、流量0m3/sで固定速ポンプ102を停止する処理が行われる(ステップS24)。
【0043】
一方、ステップS13において、制御の対象が可変速ポンプ101である場合は(ステップS13のNO)、ポンプ井100の水位目標値とポンプ井100に設置された水位計104により計測されたポンプ井100の現在水位とに基づき、PI制御により可変速ポンプ101の流量(ポンプ流量)を演算する処理が行われる(ステップS31)。そして、ポンプ流量を実流量とし(ステップS32)、ポンプ起動停止指令が起動を示す場合は(ステップS33のYES)、演算したポンプ流量で可変速ポンプ101を起動する処理が行われる(ステップS34)。一方、ポンプ起動停止指令が停止を示す場合は(ステップS33のNO)、流量0m3/sで可変速ポンプ101を停止する処理が行われる(ステップS35)。
【0044】
実施形態によれば、可変速ポンプを採用するポンプ場においても、従来の排水ポンプ制御と比較して、浸水リスクの抑制やポンプの起動停止回数の低減を図ることが可能となる。
【0045】
例えば、ポンプ起動停止水位設定部3A,ポンプ起動停止水位設定部3Bにより可変速ポンプ101,固定速ポンプ102のそれぞれの起動水位および停止水位を設定した上で、固定速ポンプ102の流量を決定することに加えて、ポンプ井100の水位目標値とポンプ井100に設置された水位計104により計測されたポンプ井100の現在水位に基づくPI制御を行うことにより、可変速ポンプ101のポンプ流量を決定することができる。決定したポンプ流量を用いて可変速ポンプ101の実流量を制御することで、適切なタイミングで必要最小限のポンプの起動や停止を行い、適切な流量で可変速ポンプ101および固定速ポンプ102を運転することが可能となり、可変速ポンプ101および固定速ポンプ102を採用するポンプ場において、従来の排水ポンプ制御と比較して、浸水リスクの抑制やポンプの起動停止回数の低減が可能となる。
【0046】
以上詳述したように、実施形態によれば、排水ポンプの起動と停止を効率的に行うことができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…演算部、2…ポンプ流量演算部、3,3A,3B…ポンプ起動停止水位設定部、4,4A,4A…ポンプ起動停止指令決定部、5,6…ポンプ実流量制御部、11…ポンプ実流量決定部、12…ポンプ運転部、21A…可変速ポンプ動的制御部、21B…固定速ポンプ動的制御部、100…ポンプ井、101…可変速ポンプ、102…固定速ポンプ、103…雨水流入部、104…水位計。
図1
図2
図3
図4
図5