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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080896
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】カバー及びブリーザ装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20230602BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194452
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 茂
(72)【発明者】
【氏名】石川 明寛
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA00
(57)【要約】
【課題】エアブリーザの排気時に油が吐き出されないようにすることができる。
【解決手段】タンクに形成された吸排気孔を覆うようにタンクに設けられたエアブリーザの底面である第1底面に、タンクの内部に突出するように設けられるカバーは、第1底面に設けられる板状の上板と、有底筒形状のカバー本体と、を備える。カバー本体は、一方の端が第2底面により覆われており、他方の端が覆われていない開口端であり、当該開口端が上板に設けられている。上板には、第1底面に設けられた底面孔とカバー本体の中空部とを連通させる上孔が設けられており、カバー本体の側面には、横孔が設けられている。カバー本体の中空部には、横孔の軸に沿って見たときに少なくとも一部が横孔と重なるように邪魔板が設けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに形成された吸排気孔を覆うように前記タンクに設けられたエアブリーザの底面である第1底面に、前記タンクの内部に突出するように設けられるカバーであって、
前記第1底面に設けられる板状の上板と、
有底筒形状のカバー本体と、を備え、
前記カバー本体は、一方の端が第2底面により覆われており、他方の端が覆われていない開口端であり、当該開口端が前記上板に設けられており、
前記上板には、前記第1底面に設けられた底面孔と前記カバー本体の中空部とを連通させる上孔が設けられており、
前記カバー本体は、側面に横孔が設けられており、
前記カバー本体の中空部には、前記横孔の軸に沿って見たときに少なくとも一部が前記横孔と重なるように邪魔板が設けられている
ことを特徴とするカバー。
【請求項2】
前記カバー本体の中心軸に沿った第1方向において、前記邪魔板の下端は前記横孔と前記第2底面との間に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記邪魔板は、前記側面の内側に設けられた筒状部を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー。
【請求項4】
前記邪魔板は、前記上板に設けられた筒状の部材であり、
前記上孔は、前記邪魔板の中空部と前記底面孔とを連通させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー。
【請求項5】
前記第2底面には、前記カバー本体の中心軸に沿って見たときに前記上孔と重ならない位置に下孔が設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項6】
前記第2底面は、中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に低くなるように傾斜しており、
前記下孔は、前記側面に隣接して設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のカバー。
【請求項7】
タンクに形成された吸排気孔を覆うように前記タンクに設けられたエアブリーザと、
請求項1から6のいずれか一項に記載のカバーと、
を備えたことを特徴とするブリーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー及びブリーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入口部と、出口部と、入口部と出口部とを連通する第1の通路と、第1の通路中に設けられて、入口部から出口部に向かって流れる空気と燃料との混合物から燃料を分離するエレメントユニットとを備えるブリーザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5835966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧式アクチュエータを使用する建設車両や作業機械には、タンクと、このタンクに貯留された作動油を油圧ポンプから吐出して油圧式アクチュエータを作動させる油圧回路とが設けられている。そして、特許文献1に示すように、油圧式アクチュエータの作動に伴ってタンク内の油面が上昇又は下降するため、油面より上の空気層の圧力を一定の範囲内に維持するようにエアブリーザがタンク上部に設けられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、図9に示すように建設車両(すなわち、タンク)が傾いたとき、タンク120内の油量や稼働状況等によっては、タンク120内に貯留された油が跳ねてエアブリーザ110に当たる場合がある。油が跳ねると同時にエアブリーザ110が排気を行うと、跳ねた油が排気される空気(図9矢印参照)に巻き込まれ、エアブリーザ110が空気と共に油を吐き出すおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、エアブリーザの排気時に油を吐き出さないようにすることができるカバー及びブリーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るカバーは、例えば、タンクに形成された吸排気孔を覆うように前記タンクに設けられたエアブリーザの底面である第1底面に、前記タンクの内部に突出するように設けられるカバーであって、前記第1底面に設けられる板状の上板と、有底筒形状のカバー本体と、を備え、前記カバー本体は、一方の端が第2底面により覆われており、他方の端が覆われていない開口端であり、当該開口端が前記上板に設けられており、前記上板には、前記第1底面に設けられた底面孔と前記カバー本体の中空部とを連通させる上孔が設けられており、前記カバー本体は、側面に横孔が設けられており、前記カバー本体の中空部には、前記横孔の軸に沿って見たときに少なくとも一部が前記横孔と重なるように邪魔板が設けられていることを特徴とする。また、本発明に係るブリーザ装置は、例えば、タンクに形成された吸排気孔を覆うように前記タンクに設けられたエアブリーザと、カバーと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るカバー及びブリーザ装置によれば、タンクの内部に突出するように、エアブリーザの底面である第1底面に上板とカバー本体を有するカバーが設けられている。第1底面に上孔が設けられた板状の上板が設けられており、有底筒形状のカバー本体の開口端が上板に設けられている。したがって、カバー本体の底面がタンクの油面から跳ねた油を遮る。また、カバー本体の側面に横孔が設けられており、カバー本体の中空部には邪魔板が設けられており、横孔の軸に沿って見たときに邪魔板の少なくとも一部が横孔と重なる。したがって、邪魔板が横孔から入る油を遮る。これにより、エアブリーザの排気時に油を吐き出さないようにすることができる。なお、上板とカバー本体とは、一体でもよいし別部品でもよい。
【0009】
前記カバー本体の中心軸に沿った第1方向において、前記邪魔板の下端は前記横孔と前記第2底面との間に位置してもよい。これにより、横穴の軸に沿って見たときに横孔が邪魔板と完全に重なり、横孔からカバー本体の内部空間に入った油がより確実に邪魔板で遮られる。
【0010】
前記邪魔板は、前記側面の内側に設けられた筒状部を有してもよい。また、前記邪魔板は、前記上板に設けられた筒状の部材であり、前記上孔は、前記邪魔板の中空部と前記底面孔とを連通させてもよい。これにより、様々な方向(例えば、第1方向に沿って見たときに横孔の軸に対して傾いた方向)から横孔を通過した油を邪魔板で遮ることができる。
【0011】
前記第2底面には、前記カバー本体の中心軸に沿って見たときに前記上孔と重ならない位置に下孔が設けられていてもよい。これにより、カバー本体の内部に入った油を下孔から排出することができる。また、タンクの油面から跳ねた油が下孔からカバー本体の内部に入ったとしても、それが上孔からエアブリーザに流入しないようにし、エアブリーザの排気時に油の吐き出しを防ぐことができる。
【0012】
前記第2底面は、中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に低くなるように傾斜しており、前記下孔は、前記側面に隣接して設けられていてもよい。これにより、カバーの内部に入った油を下孔から確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアブリーザの排気時に油を吐き出さないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態であるブリーザ装置1及びブリーザ装置1が設けられたタンク50の概略を示す図である。
図2】ブリーザ装置1の概略を示す断面図である。
図3】カバー20の概略を示す斜視図である。
図4】タンク50が振動して傾いた様子を模式的に示す図である。
図5】変形例に係るカバー20A、20Bの概略を示す断面図である。
図6】ブリーザ装置2の概略を示す断面図である。
図7】変形例に係るカバー20D、20E、20Fの概略を示す断面図である。
図8】変形例に係るカバー20G、20Hの概略を示す断面図である。
図9】従来のエアブリーザ110の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の一実施形態であるブリーザ装置1及びブリーザ装置1が設けられたタンク50の概略を示す図である。図1では、断面を示すハッチングを省略している。
【0016】
以下、鉛直方向をz方向とし、水平方向をx方向及びy方向とする。x方向及びy方向は直交する。図1では、タンク50が水平方向に沿った面に載置されている。
【0017】
タンク50は、図示しない作業機械(例えば、油圧装置)に設置されるものであり、この油圧装置へ供給する作動油の油圧回路内に設けられ、作動油を貯留する。油圧回路において、作動油は、油圧装置を通ってタンク50へ導入される。タンク50は、内部が空洞となっており、サクションストレーナ、リターンフィルタ等が設けられる。
【0018】
なお、本実施の形態では、タンク50は作動油を貯留する作動油タンクであるが、タンクの種類やタンクが貯留する油はこれに限られない。例えば、タンクは、燃料を貯留する燃料タンクであってもよい。
【0019】
タンク50は、油が貯留されるタンク本体51と、タンク本体51の上端の開口を覆う蓋52とを有する。蓋52には、吸排気孔52aが形成される。
【0020】
ブリーザ装置1は、主として、エアブリーザ10と、カバー20とを備える。エアブリーザ10は、吸排気孔52aを覆うように蓋52の上側に設けられている。カバー20は、タンク50(タンク本体51)の内部に突出するようにエアブリーザ10の底面に設けられている。
【0021】
図2は、ブリーザ装置1の概略を示す断面図である。図3は、カバー20の概略を示す斜視図である。
【0022】
エアブリーザ10は、主として、基部11と、エレメントユニット12と、上蓋13と、バルブ14とを有する。
【0023】
基部11は、蓋52に設けられる基部本体11aと、取付部11b、11cを有する。取付部11b、11cは、基部本体11aに設けられており、基部本体11aを介して蓋52に設けられる。これにより、基部11が吸排気孔52aを覆う。
【0024】
取付部11bは、基部本体11aの内側に設けられた円板状の部材である。基部本体11a及び取付部11bの中空部には取付部11cが挿入されている。取付部11cは、筒状の筒状部11dと、筒状部11dの上側(+z側)に形成された板状部11eを有する。
【0025】
板状部11eの上側(+z側)にはエレメントユニット12が設けられており、エレメントユニット12には上蓋13が設けられている。板状部11eには、筒状部11dの内側の空間S1と、エレメントユニット12の中空部S2とを連通する孔11fが設けられている。
【0026】
エレメントユニット12は、主として、第1エレメント12aと、第2エレメント12bと、プレート12c、12dとを有する。第1エレメント12a及び第2エレメント12bは筒状であり、第1エレメント12aの外側に第2エレメント12bが設けられている。第1エレメント12aの内側の空間が中空部S2である。第1エレメント12aと第2エレメント12bとは離間しており、第1エレメント12aと第2エレメント12bとの間が空間S3である。
【0027】
第1エレメント12aは、空気と霧状の油との混合物が通過する際に空気を通過させるとともに、霧状の油を分離する機能を有する。分離された霧状の油は、互いにくっついて油滴となり、第1エレメント12aを通過した外側、すなわち空間S3に落ちる。
【0028】
第2エレメント12bは、空気を通過させる性質と、撥油性質とを有する。したがって、第2エレメント12bは、表面で油を弾き分離して落とす。また、第2エレメント12bは、空気中に含まれるダストなどの固体の異物を捕集する機能を有している。異物を含む空気が第2エレメント12bを通過すると、空気のみが第2エレメント12bを通過し、固体の異物は第2エレメント12bの内部に捕集される。
【0029】
第1エレメント12a及び第2エレメント12bの下端をそれぞれ覆うプレート12cは板状部11eに設けられており、第1エレメント12a及び第2エレメント12bの上端をそれぞれ覆うプレート12dには上蓋13が設けられている。
【0030】
第1エレメント12aの内周面には第1内筒12eが設けられており、第2エレメント12baの内周面には第2内筒12fが設けられている。第1内筒12e及び第2内筒12fの全域には、複数の貫通孔が形成されている。また、第2エレメント12bの外側には外筒12gが設けられている。外筒12gの全域には複数の貫通孔が形成されている。なお、第1内筒12e、第2内筒12f及び外筒12gは必須ではない。
【0031】
取付部11cにはバルブ14が設けられており、バルブ14は中空部S2に挿入されている。バルブ14は、タンク50内の圧力値が所定の閾値以上になると開き、閾値以上でないときは閉じている。図2では、バルブ14が閉じている状態を示している。バルブ14が閉じていると空間S1と中空部S2とが連通せず、バルブ14が開くと空間S1と中空部S2とが連通する。
【0032】
筒状部11dの中空部11gは、エアブリーザ10の底面10aに設けられた底面孔である。バルブ14が開いた状態では、中空部11gは、エアブリーザ10の内部(空間S1、中空部S2等)とカバー20の内部の空間S5(タンク50の内部の空間S7、図1参照)とを連通する。
【0033】
カバー20は、底面10aに設けられており、吸排気孔52aを介してタンク50(タンク本体51)の内部に突出するように設けられている。カバー20は、主として、上板21と、カバー本体22と、邪魔板23とを有する。
【0034】
上板21は、板状であり、底面10aに設けられている。上板21は、エアブリーザ10と蓋52とに挟持されている。上板21には上孔21aが設けられており、上孔21aは中空部11gとカバー本体22の中空部(空間S5)とを連通する。
【0035】
カバー本体22は、有底筒形状であり、底面22aと側面22bとを有する。カバー本体22の一方の端は底面22aにより覆われており、他方の端は覆われていない開口端22zである。この開口端22zは、上板21に設けられている。
【0036】
底面22aには、下孔22eが複数設けられている。下孔22eは、カバー本体22の中心軸ax(z方向、本発明の第1方向に相当)に沿って見たときに上孔21aと重ならない位置に設けられており、カバー本体22の中空部(空間S5)とタンク50の内部(空間S7、図1参照)を連通する。本実施の形態では、下孔22eは丸孔であり、底面22aに4カ所均等間隔で設けられている。ただし、下孔22eの形状及び数はこれに限られない。
【0037】
底面22aの上面22dは、中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に低くなるように傾斜している。上面22dは、例えば円錐形状であり、中心軸axと交差する位置(中央)の高さが最も高く、側面22b(周縁)に近づくにつれて徐々に低くなる。下孔22eは、上面22dが低くなった部分、すなわち側面22bに隣接して設けられている。
【0038】
側面22bには、横孔22cが複数設けられている。横孔22cは、カバー本体22の中空部(空間S5)とタンク50の内部(空間S7、図1参照)を連通する。本実施の形態では、横孔22cは丸孔であり、側面22bに4カ所均等間隔で設けられている。ただし、横孔22cの形状及び数はこれに限られない。
【0039】
カバー本体22の中空部(側面22bの内側)には、邪魔板23が設けられている。邪魔板23及び側面22bは円筒形状であり、邪魔板23は側面22bの内側に側面22bと平行に配置されている。なお、邪魔板23及び側面22bは、円筒形状に限られず、角筒等の筒状であればよい。
【0040】
邪魔板23は上孔21aを覆うように設けられており、上孔21aは中空部11gと邪魔板23の中空部(空間S6)とを連通する。
【0041】
本実施の形態では、邪魔板23の内周面23aの直径と上孔21aの内径とは略同一であり、内周面23aが上孔21aと略同一面となる。なお、内周面23aの内径はこれに限られず、内周面23aの内径が上孔21aの内径より大きくても小さくてもよい。ただし、圧力損失が高くならないように、内周面23aの内径を上孔21aの内径以上とすることが好ましい。
【0042】
横孔22cの軸axcに沿って見たときに、邪魔板23は、少なくとも一部が横孔22cと重なる。本実施の形態では、邪魔板23の下端23bが横孔22cの下端と略同じ高さに位置し、横孔22cのほとんどが邪魔板23と重なる。
【0043】
図2の太矢印は、空気の流れを示す。タンク50内の圧力が閾値以上になると、バルブ14が開き、タンク50内(空間S6)の空気が横孔22cからカバー20の内部(空間S5)に流入する。空間S5の空気は、下端23bの開口から空間S6に流入し、上孔21aを通過して空間S1に流入し、その後中空部S2に流入する。中空部S2に流入した空気は、エレメントユニット12(第1エレメント12a、空間S3及び第2エレメント12b)を通過して外部空間(空間S4)に放出される。
【0044】
図4は、タンク50が振動して傾いた様子を模式的に示す図である。タンク50が振動して油面Sが波立っても、油Oが底面22aで遮られてエアブリーザ10には入らない。したがって、エアブリーザ10の排気時に油Oが巻きこまれない。
【0045】
また、油Oが跳ねることで、横孔22cから空間S5に油Oが入ってしまうことも考えられる。この場合には、図4の二点鎖線矢印で示すように、油Oが邪魔板23に遮られ、空間S6に流入しないため、エアブリーザ10の排気時に油Oが巻きこまれない。また、邪魔板23に遮られた油Oは、図4の二点鎖線矢印で示すように、下孔22eから空間S6に排出される。
【0046】
図2の説明に戻る。底面22aの上面22dが、中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に低くなるように傾斜するため、邪魔板23に遮られた油Oは、図2の二点鎖線矢印で示すように、上面22d上を下孔22eに向けて流れて下孔22eから排出される。
【0047】
本実施の形態によれば、エアブリーザ10の底面10aにカバー20を設け、底面22aが油面Sから跳ねる油Oを遮り、邪魔板23が横孔22cから入る油Oを遮ることで、エアブリーザ10により排気される空気に跳ねた油Oが巻き込まれず、エアブリーザ10の排気時に油を吐き出さないようにすることができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、邪魔板23を筒状として上板21に設け、上孔21aが空間S6と空間S1とを連通し、横孔22cの軸axcに沿って見たときに横孔22cが邪魔板23と重なるようにすることで、横孔22cから空間S5に入った油Oがより確実に邪魔板23で遮られる。特に、邪魔板23が筒状であるため、様々な方向(例えば、z方向に沿って見たときに軸axcに対して傾いた方向)から横孔22cを通過した油Oを邪魔板23で遮ることができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、上面22dを中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に低くなるように傾斜させ、側面22bに隣接した低い位置に下孔22eを設けることで、邪魔板23に遮られた油Oを下孔22eから確実に排出することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、吸排気孔52aがタンク50の上面(蓋52)に形成されており、エアブリーザ10が蓋52の上側に設けられていたが、吸排気孔52aやエアブリーザ10の位置はこれに限られない。例えば、タンク本体51の側面(蓋52の近傍が望ましい)に吸排気孔を設け、タンク本体の側面外側にエアブリーザを設けてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、横孔22cの軸axcに沿って見たときに邪魔板23の下端23bが横孔22cの下端と略同じ高さに位置し、横孔22cのほとんどが邪魔板23と重なったが、邪魔板23の高さはこれに限られない。軸axcに沿って見たときに、邪魔板23の少なくとも一部が横孔22cと重なればよい。ただし、中心軸axに沿った方向(本発明の第1方向に相当)において邪魔板23の下端が横孔22cと底面22aとの間に位置するようにし、軸axcに沿って見たときに横孔22cが邪魔板23と完全に重なることが望ましい。これにより、横孔22cから空間S5に入った油Oを邪魔板23で確実に遮ることができる。
【0052】
また、本実施の形態では、側面22bのz方向の中心近傍に横孔22cが設けられているが、横孔22cの位置はこれに限られない。例えば、側面22bの上板21近傍に横孔22cを設けてもよい。邪魔板23が設けられている場合には、側面22bをできるだけ高い位置(上板21に近い位置)に設けることで、横孔22cから空間S5に入った油Oがより確実に邪魔板23で遮られる。
【0053】
また、本実施の形態では、上面22dが中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に低くなるように傾斜したが、上面22dの形状はこれに限られない。例えば、上面22dが、中央近傍から周縁に近づくにつれて徐々に高くなるような傾斜してもよい。この場合には、下孔22eを上面22dの低い部分、すなわち中心軸axと交差する中央近傍に設けることで、邪魔板23に遮られた油Oを下孔22eから確実に排出することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、底面22aに下孔22eが設けられているが、下孔22eは必須ではない。例えば、側面22bの底面近傍に孔を設け、この孔から油Oを排出してもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、邪魔板23が円筒形状(直径が一定)であったが、邪魔板の形状はこれに限られない。図5(A)、(B)は、筒状の邪魔板の変形例に係るカバー20A、20Bの概略を示す断面図である。カバー20A、20Bは、カバー20と同様に、底面10aに設けられ、吸排気孔52aに挿入されている。
【0056】
図5(A)に示すように、カバー20Aは、主として、上板21Aと、カバー本体22Aとを有する。カバー本体22Aは、上板21Aの下側に設けられている。
【0057】
上板21Aは、板状であり、底面10aに設けられている。上板21Aには、下向き(底面22aに向けて)に突出する筒状の邪魔板21cが設けられている。邪魔板21cは、側面22bの内側に配置されている。上板21Aには、中空部11gと邪魔板21cの中空部とを連通する上孔21bが設けられている。
【0058】
カバー本体22Aは、有底筒形状であり、底面22aと、側面22bと、上板22fとを有する。上板22fは、側面22bの底面22aにより覆われていない開口端に設けられており、上板21Aに重ねて設けられる。側面22bの中空部に邪魔板21cが挿入される。
【0059】
邪魔板21cは、底面22aに近づくにつれて直径が小さくなる円錐台筒状である。中心軸axに沿った方向において、邪魔板21cの下端21dは、横孔22cと底面22aとの間に位置する。したがって、軸axcに沿って見たときに横孔22cが邪魔板21cと完全に重なり、横孔22cから空間S5に入った油Oを邪魔板21cで遮ることができる。また、邪魔板21cで遮られた油Oが上面22dの高い位置に落下するため、油Oを上面22dに沿って流して、下孔22eから排出することができる。
【0060】
図5(B)に示すように、カバー20Bは、主として、上板21Bと、カバー本体22Aとを有する。カバー本体22Aは、上板21Bの下側に設けられている。
【0061】
上板21Bは、板状であり、底面10aに設けられている。上板21Bには、下向きに突出する筒状の邪魔板21eが設けられている。邪魔板21eは、側面22bの内側に配置されている。上板21Aには、中空部11gと邪魔板21eの中空部とを連通する上孔21fが設けられている。
【0062】
邪魔板21eは、カバー本体22Aの内部に挿入されており、底面22aに近づくにつれて直径が大きくなる円錐台筒状である。中心軸axに沿った方向において、邪魔板21eの下端21gは、横孔22cと底面22aとの間に位置する。したがって、軸axcに沿って見たときに横孔22cが邪魔板21eと完全に重なり、横孔22cから空間S5に入った油Oを邪魔板21eで遮ることができる。また、邪魔板21eで遮られた油Oは下孔22e近傍に落下し、下孔22eから排出される。
【0063】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態は、筒状の邪魔板23が上板21に設けられていたが、邪魔板が設けられる位置や邪魔板の形状はこれに限られない。
【0064】
本発明の第2の実施の形態は、邪魔板がカバー本体の側面に設けられた形態である。以下、第2の実施の形態に係るカバー及びブリーザ装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0065】
図6は、ブリーザ装置2の概略を示す断面図である。ブリーザ装置2は、主として、エアブリーザ10と、カバー20Cとを備える。カバー20Cは、吸排気孔52aを介してタンク50の内部に突出するようにエアブリーザ10の底面10aに設けられている。
【0066】
カバー20Cは、上板21Cと、底面22aと側面22bと邪魔板22iとを有するカバー本体22Bと、を備える。カバー20Cでは、上板21Cとカバー本体22Bとは一体である。側面22bの一方の端は底面22aにより覆われており、他方の端(開口端)は板状の上板21Cに設けられている。上板21Cには上孔22hが設けられており、上孔22hは中空部11g(空間S1)と空間S5とを連通する。
【0067】
カバー本体22Bの中空部には、邪魔板22iが設けられている。カバー本体22Bは4個の邪魔板22iを有し、邪魔板22iは横孔22cを覆うように横孔22c毎にそれぞれ設けられている。
【0068】
邪魔板22iは、中心軸axを含む面で切断したときの断面形状がL字形状であり、上板21Cと略平行な板状部22jと、側面22bと略平行な板状部22kとを有する。板状部22jは側面22bに設けられており、板状部22kは上端が板状部22jに設けられている。
【0069】
図6の太矢印で示すように、タンク50内の圧力が閾値以上になりバルブ14が開くと、タンク50内(空間S7)の空気が横孔22cから空間S5に流入する。空間S5の空気は、下端22lの開口部から上孔22hを通過して空間S1に流入し、中空部S2、エレメントユニット12を通過して空間S4に放出される。
【0070】
中心軸axに沿った方向において、邪魔板22i(板状部22k)の下端22lは、横孔22cと底面22aとの間に位置する。したがって、軸axcに沿って見たときに横孔22cが板状部22kと完全に重なり、横孔22cから空間S5に入った油Oを板状部22kで遮ることができる。また、横孔22cの上側に板状部22jが設けられているため、横孔22cから斜め上向きに入った油O(図6の二点鎖線矢印参照)を板状部22jで遮ることができる。邪魔板22iに遮られた油Oは、下孔22eから空間S7に排出される。
【0071】
本実施の形態によれば、エアブリーザ10の底面10aにカバー20Cを設け、底面22aが油面Sからはねる油Oを遮り、邪魔板22iが横孔22cから入る油Oを遮ることで、エアブリーザ10により排気される空気に跳ねた油Oが巻き込まれず、エアブリーザ10の排気時に油を吐き出さないようにすることができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、側面22bに設けられた邪魔板22iが断面L字形状であったが、邪魔板の形状はこれに限られない。図7(A)、(B)、(C)は、それぞれ、変形例に係るカバー20D、20E、20Fの概略を示す断面図である。カバー20D、20E、20Fは、カバー20Cと同様に、底面10aに設けられ、吸排気孔52aに挿入されている。
【0073】
図7(A)に示すように、カバー20Dは、上板21Cと、底面22aと側面22bと邪魔板22mとを有するカバー本体22Cと、を備える。カバー本体22Cの内部には、複数(ここでは、4個)の邪魔板22mが設けられている。邪魔板22mは、板状であり、横孔22c毎にそれぞれ設けられている。
【0074】
中心軸axに沿った方向において、邪魔板22mの下端22nは、横孔22cと底面22aとの間に位置する。したがって、軸axcに沿って見たときに横孔22cが邪魔板22mと完全に重なり、横孔22cから空間S5に入った油Oを邪魔板22mで遮ることができる。
【0075】
図7(B)に示すように、カバー20Eは、上板21Cと、底面22aと側面22bと邪魔板22oとを有するカバー本体22Dと、を備える。邪魔板22oは、カバー本体22Dの中空部に設けられており、底面22aに近づくにつれて内径が小さくなる円錐台筒状である。邪魔板22oは、側面22bの内側に設けられている。
【0076】
中心軸axに沿った方向において、邪魔板22oの下端22pは、横孔22cと底面22aとの間に位置する。したがって、軸axcに沿って見たときに横孔22cが邪魔板22oと完全に重なり、横孔22cから空間S5に入った油Oを邪魔板22oで遮ることができる。
【0077】
なお、図7では、邪魔板22m、22oが側面22bと上板21Cとが重なる角部に設けられているが、邪魔板22mが設けられる位置は、これに限られず、図7(A)、(B)に示す位置よりも底面22a寄りの側面22bに設けられていてもよい。
【0078】
図7(C)に示すように、カバー20Fは、上板21Cと、底面22aと側面22bと邪魔板22qとを有するカバー本体22Eと、を備える。邪魔板22qは、カバー本体22Eの中空部に設けられており、上板21Cと平行な板状部22rと、筒状の筒状部22sとを有する。本変形例では、板状部22rは円環形状であり、筒状部22sは円筒形状である。筒状部22sは、上端が板状部22rに設けられており、側面22bの内側に配置されている。
【0079】
中心軸axに沿った方向において、筒状部22sの下端22tは、横孔22cと底面22aとの間に位置する。したがって、軸axcに沿って見たときに横孔22cが筒状部22sと完全に重なり、横孔22cから空間S5に入った油Oを筒状部22sで遮ることができる。また、横孔22cの上側に板状部22rが設けられているため、横孔22cから斜め上向きに入った油Oを板状部22rで遮ることができる。
【0080】
また、本実施の形態では、側面22bは直径が変化しない円筒形状であったが、側面22bの形状はこれに限られない。図8(A)、(B)は、それぞれ、変形例に係るカバー20G、20Hの概略を示す断面図である。カバー20、20HGは、カバー20Cと同様に、底面10aに設けられ、吸排気孔52aに挿入されている。
【0081】
図8(A)に示すように、カバー20Gは、上板21Cと、底面22u、側面22v、邪魔板22xを有するカバー本体22Fと、を備える。側面22vの一方の端は底面22uにより覆われており、他方の端は覆われていない開口端である。この開口端は、上板21Cに設けられている。底面22uには下孔22eが設けられている。
【0082】
側面22vは、底面22uに近づくにつれて内径が小さくなる円錐台筒状である。側面22vには、横孔22wが設けられている。横孔22wは、カバー本体22Fの中空部(空間S5)と空間S7(図1参照)を連通する。側面22vはz方向に対して傾いており、横孔22wの中心軸axwは水平方向に対して傾いている。
【0083】
カバー本体22Fの中空部には、邪魔板22xが設けられている。邪魔板22xは、板状、ここでは円環形状であり、側面22vに設けられている。邪魔板22xは水平方向に略沿っているが、中心軸axwが水平方向に対して傾いているため、中心軸axwに沿って見たときに横孔22wの少なくとも一部が邪魔板22xと重なる。したがって、横孔22wからカバー20Gの中空部(空間S5)に入った油Oは邪魔板22xで遮られる。ただし、油Oを遮る効果を高くするためには、邪魔板22xに隣接して横孔22wを設け、中心軸axwに沿って見たときに横孔22wが完全に邪魔板22xと重なるようにすることが望ましい。
【0084】
図8(B)に示すように、カバー20Hは、上板21Cと、底面22u、側面22v、邪魔板22yを有するカバー本体22Gと、を備える。カバー本体22Gの中空部には、邪魔板22yが設けられている。
【0085】
邪魔板22yは、板状(ここでは円環形状)の板状部22yaと、筒状(ここでは円筒形状)の筒状部22ybとを有する。板状部22yaは側面22vに設けられている。筒状部22ybは、上端が板状部22yaに設けられており、側面22vの内側に配置されている。
【0086】
中心軸axに沿った方向において、筒状部22ybの下端22ycは、横孔22wと底面22uとの間に位置する。したがって、軸axwに沿って見たときに横孔22wが邪魔板22yと完全に重なり、横孔22wから空間S5に入った油Oを邪魔板22yで確実に遮ることができる。
【0087】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0088】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略直交」とは、厳密に直交の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0089】
また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0090】
1、2 :ブリーザ装置
10 :エアブリーザ
10a :底面
11 :基部
11a :基部本体
11b、11c:取付部
11d :筒状部
11e :板状部
11f :孔
11g :中空部
12 :エレメントユニット
12a :第1エレメント
12b :第2エレメント
12ba :第2エレメント
12c、12d:プレート
12e :第1内筒
12f :第2内筒
12g :外筒
13 :上蓋
14 :バルブ
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20H:カバー
21、21A、21B、21C:上板
21a、21b:上孔
21c、21e:邪魔板
21d :下端
21f :上孔
21g :下端
22、22A、22B、22C、22D、22E、22F:カバー本体
22a、22u:底面
22b、22v:側面
22c、22w:横孔
22d :上面
22e :下孔
22f:上板
22h :上孔
22i :邪魔板
22j、22k、22r、22ya:板状部
22l、22t:下端
22m、22o、22q、22x、22y:邪魔板
22n、22p、22yc:下端
22s、22yb:筒状部
22z :開口端
23 :邪魔板
23a :内周面
23b :下端
50 :タンク
51 :タンク本体
52 :蓋
52a :吸排気孔
110 :エアブリーザ
120 :タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9